JP5393186B2 - 歯科用接着キット - Google Patents
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(B)e)酸性基含有重合性単量体、およびf)水を含むプライマー
とからなることを特徴とする歯科用接着キットである。
〔A)接着材について〕
まず、はじめに(A)接着材について詳細に説明する。
a)酸性基非含有重合性単量体
本発明の接着キットにおいて、接着材に配合される重合性単量体は、酸性基非含有のものである。このため、接着材の保存中において共存する第三級アミン化合物および塩基性無機フィラーが中和されることがなく、接着材は、プライマー処理面との接触界面まで、硬化反応が十分に進行する。これに対して、接着材中に酸性基含有重合性単量体が含有されている場合には、第三級アミン化合物および塩基性無機フィラーが中和されてしまうため、接着材の使用時において重合触媒の活性が十分に発現しなくなる。
単官能重合性単量体としては、例えば、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n―ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n―ステアリル(メタ)アクリレートシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3―ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、若しくはグリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、1H,1H,3H―ヘキサフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,5H―オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,6H―デカフルオロヘキシルメタクリレート若しくは1H,1H,7H―ドデカフルオロヘプチルメタクリレート等の含フッ素(メタ)アクリレート、あるいは下記式(i)から(v)、(vi)〜(vii)で示される(メタ)アクリレート等が挙げられる。
二官能重合性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3―ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4―ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6―へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9―ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10―デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2―ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2―ビス[4―(3―(メタ)アクリロキシエトキシ)―2―ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、2,2―ビス(4―(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2―ビス(4―(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2―ビス(4―(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2―ビス(4―(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2―ビス(4―(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニルプロパン、2―(4―メタクリロキシエトキシフェニル)―2―(4―(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2―(4―(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)―2―(4―(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2―(4―(メタ)アクリロキシ
ジプロポキシフェニル―2―(4―(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4―(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、あるいは2,2−ビス(4―(メタ)アクリロキシイソプロポキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
三官能重合性単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエルスリトールトリ(メタ)アクリレートあるいはトリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
四官能重合性単量体としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、あるいはペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
b)第三級アミン化合物
本発明において、接着材には、b)第三級アミン化合物が配合される。後述の過酸化物に対し、助触媒としてb)第三級アミン化合物を組み合わせることにより、過酸化物の触媒活性を高めることができる。本発明においては、このような助触媒として作用するものであれば、公知のいかなる第三級アミン化合物を使用しても良い。このような第三級アミン化合物としては、一般に、窒素原子に芳香族基の結合した芳香族第三級アミン化合物と、脂肪族基しか結合していない脂肪族第三級アミン化合物に大別される。また、重合活性が高い観点から、芳香族第三級アミン化合物がより好ましい。
本実施の形態において、代表的な芳香族第三級アミン化合物とは、アミノ基の窒素原子に少なくとも一つ以上の芳香族基と、多くとも2つ以下の脂肪族基が結合したアミン化合物である。本実施の形態において、代表的な芳香族第三級アミン化合物としては、公知のものを特に制限なく使用できるが、特に入手容易な点から好適には下記一般式(viii)で表されるものが挙げられる。
本発明において、これら脂肪族第三級アミン化合物を具体的に例示すると、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリアリルアミン、N,N―ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N―ジエチルアミノエチルメタクリレート、N―メチルジエタノールアミン、N―エチルジエタノールアミン、N―プロピルジエタノールアミン、N―エチルジアリルアミン、N―エチルジベンジルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリ(イソプロパノール)アミン、トリ(2―ヒドロキシブチル)アミン、トリベンジルアミン等の脂肪族第三級アミン化合物等が挙げられる。
c)過酸化物
本発明において、接着材に含まれる過酸化物は特に制限されるものではなく、公知のものを使用することができる。代表的な過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等がある。
本発明において接着材には塩基性無機フィラーが含有される。これにより本発明の接着材は、歯質のプライマー処理面に塗布して硬化させた際に重合反応が高度に進行し、歯質との高い接着力が安定して発揮されるものになる。その原因は既に説明したとおりであるが、改めて説明すると次の機構によるものと推定される。すなわち、前述のとおり、接着材を歯質のプライマー処理面に塗布した場合において、その接触界面付近において、該塩基性無機フィラーがプライマー中の残存した酸を、重合触媒の構成成分である第三級アミン化合物と競合、或いは優先して中和させる。その結果、過酸化物/第三級アミン化合物系重合触媒の活性低下を効果的に抑制され、これがフィラー本来の機械的強度の向上効果と相乗的に作用して、接着材層はプライマーとの界面に至るまで高強度に硬化し、高い接着力が得られるものになると考えられる。
〔(B)プライマーについて〕
次に、(B)プライマーについて詳細に説明する。
e)酸性基含有重合性単量体
本発明の歯科用接着キットにおいて、プライマーに含まれる酸性基含有重合性単量体は、1分子中に少なくとも1つの酸性基と1つの重合性不飽和基とを有する化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。また、該酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン基、リン酸モノエステル基あるいはリン酸ジエステル基等を挙げることができる。その中でも、歯質に対する接着性が高い酸性基として、カルボキシル基、リン酸モノエステル基あるいはリン酸ジエステル基がより好ましい。さらに、接着材とプライマーとの間の物質の移動を活発化させる目的で、接着材とプライマーとの間のpH勾配をより急勾配にするため、プライマーに含まれる酸性基含有重合性単量体の酸性基は、強酸性であることが最も好ましい。そのような強酸性の酸性基としては、リン酸モノエステル基あるいはリン酸ジエステル基が最も好ましい。
f)水
歯科用接着キットのプライマーに含まれる水は、酸性基含有重合性単量体による歯質の脱灰を助ける働きを有する。該水としては、貯蔵安定性、生体適合性および接着性に有害な不純物を実質的に含まないことが好ましく、例として、脱イオン水、蒸留水等が挙げられる。水は、プライマーに含まれる重合性単量体100質量部に対して、3〜300質量部含まれることが好ましく、特に、プライマーに含まれる重合性単量体100質量部に対して5〜200質量部の水が含まれるのがより好ましい。水の添加量が3質量部未満では歯質の脱灰が不十分になる。また、300質量部より多い場合には、処理面に水が多く存在することによって十分な接着力が得られなくなる。
(1)使用した化合物とその略称
[酸性基非含有重合性単量体]
「D−2.6E」:2,2’―ビス(4―(メタクリロキシエトキシ)フェニル)プロパン
「BisGMA」:2.2’ ―ビス[4―(2―ヒドロキシ―3―メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン
「3G」:トリエチレングリコールジメタクリレート
「UDMA」:1.6―ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)―2,2,4,―トリメチルヘキサン
「HEMA」:2―ヒドロキシエチルメタクリレート
[酸性基含有重合性単量体]
「SPM」:2―メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェートおよびビス(2―メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェートを質量比2:1の割合で混合した混合物
[第三級アミン化合物]
「DMPT」:N,N―ジメチル―p―トルイジン
「DEPT」:N,N―ジ(β―ヒドロキシエチル)―p―トルイジン
[過酸化物]
「BPO」:ベンゾイルパーオキサイド
「HPO」:3,5,5―トリメチルヘキサノイルパーオキサイド
[塩基性無機フィラー]
「AO」:アルミナ粉末(平均粒径0.02μm)
「NaF」:フッ化ナトリウム(平均粒径4.0μm)
「CS」:カルシウムシリケート(平均粒径10.0μm)
「MF」:フルオロアルミノシリケートガラス粉末(トクソーアイオノマー、株式会杜トクヤマ製)を湿式の連続型ボールミル(ニューマイミル、三井鉱山株式会社製)を用いて、平均粒径0.5μmまで粉砕し、その後、粉砕粉末1gに対して20gの5.0N塩酸にてフィラー表面を20分間改質処理したもの。
(平均粒径0.5μm,24時間溶出イオン量:50meq/gフィラー ,溶出イオン種:Al3+およびLa3+)
[その他成分]
「F1」:球状シリカ―ジルコニア(平均粒径0.4μm)をγ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランにより疎水化処理したものと、不定形シリカ―ジルコニア(平均粒径3μm)γ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランにより疎水化処理したものとを質量比40:60にて混合した混合物
「F2」:ヒュームドシリカ(平均粒径0.02μm)をメチルトリクロロシランにより表面処理したもの
[揮発性の水溶性有機溶媒]
「IPA」:イソプロピルアルコール
(2)ボンディング材の接着強度測定方法
牛を屠殺し、屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去した。抜去した牛前歯を、注水下、#600のエメリーペーパーで研磨し、唇面に平行かつ平坦になるように、エナメル質および象牙質平面を削り出した。次に、削り出した平面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥させた。次に、この平面に直径3mmの穴を有する両面テープを貼り付け、さらに、厚さ0.5mmおよび直径8mmの穴を有するパラフィンワックスを、先に貼り付けられた両面テープの穴の中心に、パラフィンワックスの穴の中心をあわせて固定することで、模擬窩洞を形成した。この模擬窩洞に、プライマーを塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した。その上に接着材を塗布し、圧縮空気を5秒間吹きつけ接着表面を均一にした。5分後、さらにその上にコンポジットレジンを充填し、可視光線照射器(トクソーパワーライト、株式会社トクヤマ製)により可視光を30秒間照射して、接着試験片を作製した。
(3)セメント材の接着強度測定方法
ボンディング材の接着強度測定方法と同様に、牛歯を用意し研磨した後、牛歯平面に直径3mmの穴を有する両面テープを貼り付け、この穴に接着剤を塗布し、さらにその上にステンレス製アタッチメントを圧接することで、接着試験片を作製した。その後、ボンディング材の接着強度測定方法と同様に、引っ張り接着強度測定を行った。
(4)接着材の硬化体色調変化の評価方法
下記方法により、接着材の硬化直後と37℃1ヶ月水中保存後の硬化体の色調の変化を目視で確認した。即ち、接着材について直径15mm、厚さ1.0mmの硬化体を作製し、37℃1ヶ月保存後と硬化直後の硬化体を白い板の上に並べて置き、色変化を目視で確認した。以下に評価基準を示す。
◎:色調変化なし
○:硬化直後と並べてわずかに色調変化が確認される程度
△:目視で色調変化が確認できる
×:色調変化が明らか
(5)塩基性無機フィラーの塩基性度測定
蒸留水とエタノールを体積比1:1で混合した溶液に、リン酸を滴下し、23℃においてpHメーター(本体:イオンメーターIM20E、電極:GST―5721S、何れも東亜ディーケーケー株式会社製)測定によりpH2.50に調整し、測定用分散媒体とした。底面積706.5mm2のビーカーに、該分散溶液を20gと塩基性無機フィラーを1g入れ、23℃において、Φ8mmで長さ20mmの攪拌子を用いて、回転数200rpmで2分間攪拌した。2分間攪拌直後の分散液のpHを液に浸したpHメーターで測定し、この時の分散液のpHから、分散媒体のpH値を差し引いた値をpH差とした。各種塩基性無機フィラーにおける測定値とpH差を表1に示す。
上記分散液を、100mlのサンプル管に0.2gを計り取り、IPAを用いて1質量%に希釈したこの液をシリンジフィルターでろ過し、ろ液をICP発光分光分析を用いて、金属イオンの溶出の有無を確認し、表1に示した。
(7)接着材(ボンディング材)の調製
(a)成分として0.5gのBis−GMA、2.0gの3Gおよび2.5gのD−2.6Eを用い、(b)成分として0.4gのDEPTを用い、(d)成分として0.15gのMFを用い、これらを均一になるまで攪拌して、本発明の接着材(ボンディング材)A1−aを調整した。同様に、(a)成分として0.5gのBis−GMA、2.0gの3Gおよび2.5gのD−2.6Eを用い、(c)成分として0.4gのBPOを用い、(d)成分として0.15gのMFを用い、これらを均一になるまで攪拌して、本発明の接着材(ボンディング材)A1−bを調整した。使用直前に上記A1−aとA1−bを等量ずつ混合し、本発明の接着材A1とした。他の接着材(A2〜A12およびA14〜A18)も同様の手順で調製し、混合後の組成を表2に示した。
(8)接着材(セメント材)の調製
(a)成分として0.5gのBis−GMA、2.0gの3Gおよび2.5gのD−2.6Eを用い、(b)成分として0.4gのDEPTを用い、これらを均一になるまで攪拌し、マトリックス(I)とした。該マトリックス(I)と(d)成分として0.3gのMFおよび任意成分として15.0gのF1をメノウ乳鉢で混合し、真空下にて脱泡することにより、フィラー充填率73.7%の本発明の接着材(セメント材)A15−aを調製した。同様に(a)成分として0.5gのBis−GMA、2.0gの3Gおよび2.5gのD−2.6Eを用い、(c)成分として0.4gのBPOを用い、これらを均一になるまで攪拌し、マトリックス(II)とした。該マトリックス(II)と任意成分として15.0gのF1をメノウ乳鉢で混合し、真空下にて脱泡することにより、フィラー充填率73.5%の本発明の接着材(セメント材)A15−bを調製した。使用直前に上記A15−aとA15−bを等量ずつ混合し、本発明の接着材A15とした。
(9)プライマーの調製
(e)成分として3.0gのSPMを用い、その他の重合性単量体として2.5gのBis−GMA、1.5gの3Gおよび2.0gのHEMAを用い、(f)成分として3.0gの蒸留水、さらにその他の成分として15.0gのIPAを用い、これらを均一になるまで攪拌して、本発明のプライマーP1を調整した。他のプライマー(P2〜P6)も同様の手順で、表3に示す組成にて調製した。
表4および表5記載の接着材およびプライマーを用いて各実施例および比較例の歯科用接着キットとし、各実施例および比較例について接着試験を行った。その結果を表4および表5に示す。
Claims (4)
- (A)a)酸性基非含有重合性単量体、b)第三級アミン化合物、c)過酸化物、および
d)塩基性無機フィラーを含む接着材と、
(B)e)リン酸モノエステル基あるいはリン酸ジエステル基含有重合性単量体、およびf)水を含むプライマー
とからなることを特徴とする歯科用接着キット。 - 前記(A)接着材は、d)塩基性無機フィラーを、b)第三級アミン化合物に対して質量比で0.1倍以上含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用接着キット。
- 前記b)第三級アミン化合物が、芳香族第三級アミン化合物であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の歯科用接着キット。
- 前記d)塩基性無機フィラーが、フルオロアルミノシリケートガラスであることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の歯科用接着キット。
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