JP5387123B2 - 摩擦ダンパー - Google Patents

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Description

本発明は、相対移動する二部材同士の間に介装されて、これら二部材同士の間の振動を減衰する摩擦ダンパーに関する。
建物の層間などに設けられ、建物の揺れを低減する減衰装置として、摩擦ダンパーが知られている。その従来型の摩擦ダンパーの構成例としては、例えば、建物の層間などにおいて互いに相対移動する一方の部材に設けられる摩擦材と、他方の部材に設けられる滑り材とを有した構成が挙げられる。そして、これら摩擦材と滑り材とは、互いに所定の圧接力で圧接されており、摺動時には、建物の層間変位の振幅によらずほぼ一定の摩擦力を生じる。そして、この摩擦力を減衰力としてエネルギー吸収して建物の揺れを低減する。
特開2000−352113号公報
しかしながら、このような従来型の摩擦ダンパーには、次のような問題がある。
大地震時には、その制震性を高めるべく、大きな減衰力を生じさせる必要があるが、そのためには、大きな摩擦力を発生させねばならず、多量の摩擦部材が必要となってコストアップを招く。
また、最大層間変位時には、建物自身が大きく変形していることから、建物には大きな内力が生じている。このような時に、更に大きな外力を変形方向と逆向きに付与すると、その分だけ、更に内力が拡大して破壊限界強度に至り易くなる。ここで、上記減衰力は、変形方向と逆向きの外力として作用する。また、上述の摩擦ダンパーは、層間変位の大きさによらず常に略一定の減衰力を発生する。つまり、上述の摩擦ダンパーによれば、建物は、最大層間変位時の厳しい内力下においても、大きな減衰力が加えられることになり、その場合、建物の破壊限界強度の大きさによっては建物が破損してしまう。それ故、特に、古い既存建物等の低強度構造体には、摩擦ダンパーの適用が困難であった。
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、古い既存建物等のような低強度構造体にも適用可能で安価な摩擦ダンパーを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
相対移動する二部材同士の間に介装されて、前記二部材同士の間の振動を減衰する摩擦ダンパーであって、
前記相対移動に係る往復の直線移動動作を、所定の軸芯を回転中心とする往復の回転動作に変換する運動変換機構と、
前記二部材のうちの一方の部材に前記軸芯周りに回転自在に支持されて、前記回転動作によって回転する回転慣性質量体と、
前記回転慣性質量体に設けられ該回転慣性質量体と一体となって回転する摩擦材と、
前記一方の部材に設けられ、前記摩擦材との摺動により前記摩擦材との間に生じる摩擦力によって前記振動を減衰する滑り材と、を備え、
前記運動変換機構によって、前記摩擦材の前記軸芯周りの回転速度は、前記直線移動動作の速度よりも増速されており、
前記回転慣性質量体は、前記直線移動動作に係る所定長をリード長として、前記軸芯周りに回転し、
前記直線移動動作の速度に応じて、前記回転慣性質量体の回転半径を増減変更する回転半径変更機構を有し、
前記回転半径変更機構は、前記回転慣性質量体に作用する遠心力の大きさに応じて、前記回転慣性質量体の回転半径を増減変更し、
前記運動変換機構には、前記一方の部材に前記軸芯周りに回転自在に支持された回転運動伝達部材が設けられ、
前記回転慣性質量体は、前記回転運動伝達部材を介して前記一方の部材に回転自在に支持され、
前記回転半径変更機構は、前記回転運動伝達部材に対する前記回転慣性質量体の回転方向への相対移動を規制しつつ、前記回転半径方向への相対移動を許容する案内部材と、前記回転慣性質量体に前記回転半径方向の向心力を付与する第1弾性部材と、を有し、
前記運動変換機構により前記直線移動動作から変換された前記回転動作に基づいて前記回転運動伝達部材が回転することにより、前記回転慣性質量体に前記回転動作が伝達され、
前記向心力と前記遠心力とが釣り合う前記回転半径方向の位置に前記回転慣性質量体が移動し、
前記滑り材と前記摩擦材とは、前記軸芯方向に互いに対向して配置され、
前記摩擦材を前記滑り材へ圧接するための第2弾性部材が、前記摩擦材と前記回転慣性質量体との間に介装されており、
前記案内部材によって、前記回転慣性質量体は、前記回転半径方向の内側の位置よりも外側の位置の方が前記滑り材の方へ押し出されるように、又はその逆になるように案内されていることを特徴とする。
また、上記構成は、回転慣性質量体を有している。そして、この回転慣性質量体の慣性力に基づく負剛性効果(詳細には後述する)は、前記直線移動動作の折り返し点に向かうに従って大きくなり、折り返し時に最大となる。よって、前記二部材やその近傍部材の自身の変形によってこれら自身に大きな内力が生じ得る前記直線移動動作の折り返し時には、回転慣性質量体の負剛性効果が減衰力を小さくする方向に作用して、実際に前記二部材等に入力される減衰力は、単純に回転方向の摩擦力のみに基づく場合の減衰力よりも小さくなる。よって、減衰力の入力に伴い前記二部材等に生じ得る内力の拡大を、特に厳しい内力状態の前記折り返し時において有効に抑制できて、その結果、当該摩擦ダンパーを、古い既存建物等の低強度構造体にも適用可能となる。
更には、上記負剛性効果は、前記二部材を具備する構造体の剛性を低くする方向に作用すると言うこともできる。よって、当該構造体の長周期化を図れ、その制震性は向上される。
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の摩擦ダンパーであって、
前記回転慣性質量体は、少なくもと二つ設けられ、
二つの前記回転慣性質量体同士は、互いに前記軸芯に関して対称に配置されていることを特徴とする。
上記請求項2に示す発明によれば、減衰力に与える重力の影響を概ね無くすことができる。詳しくは次の通りである。
上述の請求項1の構成において、前記軸芯方向を鉛直にしない場合には、重力が回転慣性質量体の可動方向たる前記回転半径方向に作用することになり、当該重力の作用分、回転慣性質量体の回転半径が、設計値からずれてしまう。
この点につき、上記請求項2の構成によれば、二つの回転慣性質量体同士は、互いに前記軸芯に関して対称に配置されている。よって、仮に一方の回転慣性質量体が重力の影響で回転半径方向の内側に移動した場合であっても、もう一方の回転慣性質量体は逆にほぼ同量だけ外側に移動しており、これら回転慣性質量体をペアで考えれば、重力が摩擦材の回転半径に与える影響は相殺されることになる。よって、上記構成によれば、重力の影響を概ね無くすことができる。
請求項3に示す発明は、請求項1又は請求項2に記載の摩擦ダンパーであって、
前記運動変換機構は、ボール状の転動体を介してナット部がねじシャフト部に螺合するボールねじ機構を有し、
前記ナット部は、前記二部材のうちの前記一方の部材に、前記軸芯周りの回転を許容されつつ前記軸芯方向の移動を規制されて支持され、
前記回転運動伝達部材は、前記ナット部を介して前記一方の部材に回転自在に支持され、
前記ねじシャフト部は、その軸芯方向が前記直線移動動作の方向に沿って配置されつつ、前記ねじシャフト部の軸芯方向の一端部は、前記二部材のうちの他方の部材に固定され、
前記ナット部の前記ねじシャフト部に対する前記リード長分の移動動作毎に、前記ナット部は一回転することを特徴とする。
上記請求項3に示す発明によれば、運動変換機構は、ボールねじ機構を有しているので、前記直線移動動作の前記回転動作への変換を円滑に行うことができる。
本発明によれば、古い既存建物等のような低強度構造体にも適用可能で安価な摩擦ダンパーを提供することができる。
第1実施形態の摩擦ダンパー20を、建物の柱梁架構3のブレース10に組み込んだ状態の側面図である。 同摩擦ダンパー20の中心縦断面図である。 図3Aは、建物の柱梁架構3における減衰力の力点部位の水平方向の変位と、当該力点部位に生じる内力との関係を示すグラフであり、図3Bは、従来の摩擦ダンパーの振動エネルギー吸収履歴特性のグラフであり、図3Cは、第1実施形態の摩擦ダンパー20の振動エネルギー吸収履歴特性のグラフである。 第2実施形態の摩擦ダンパー20aの中心縦断面図である。 第2実施形態の摩擦ダンパー20aのV−P関係のグラフである。 図6Aは、同摩擦ダンパー20aの振動エネルギー吸収履歴特性のグラフであり、図6Bは負剛性効果が小さい場合の同グラフである。 第2実施形態の摩擦ダンパー20aのばね部材47に非線形ばねを用いた場合のV−P関係のグラフである。 図8Aは、同摩擦ダンパー20aの振動エネルギー吸収履歴特性のグラフであり、図8Bは負剛性効果が小さい場合の同グラフである。 複数の線形コイルばねを並列に組み合わせて非線形ばね特性を生じさせる構成例の説明図である。 第2実施形態の摩擦ダンパー20aの変形例の中心縦断面図である。 第3実施形態の摩擦ダンパー20bの中心縦断面図である。
===第1実施形態===
図1は、第1実施形態の摩擦ダンパー20を、建物の柱梁架構3のブレース10に組み込んだ状態の側面図である。ブレース10は、柱梁架構3の対角方向を架け渡し方向として配置されている。また、ブレース10は、その長手方向たる前記架け渡し方向の略中央の位置において分断されていて、これにより、摩擦ダンパー20を介装するための隙間Gが形成されている。詳しくは、この隙間Gの一方側には、ブレース10の一方の分断端10a(「一方の部材」に相当し、以下、第1分断端10aとも言う)が位置し、同隙間Gの他方側には、ブレース10の他方の分断端10b(「他方の部材」に相当し、以下、第2分断端10bとも言う)が位置していて、これら分断端10a,10b同士は、建物の揺れに応じて前記架け渡し方向に互いに相対移動可能になっている。よって、当該隙間Gに摩擦ダンパー20が介装されつつ各分断端10a,10bに接続されると、摩擦ダンパー20には、建物の揺れに応じて分断端10a,10b同士の間の相対移動が入力される。そして、この入力された相対移動に基づいて、摩擦ダンパー20は、ブレース10の架け渡し方向の振動を減衰し、建物の揺れを低減する。
図2は、この摩擦ダンパー20の構成の説明図であり、摩擦ダンパー20の中心縦断面図である。なお、この断面図では、図の錯綜を防ぐべく、断面の一部については断面線を省略して示している。これは、以下の説明で用いる全ての中心縦断面図についても同様である。
摩擦ダンパー20は、(1)ブレース10の前記第1分断端10aと前記第2分断端10bとの間に介装されて、これら分断端10a,10b同士の相対移動に係る架け渡し方向の往復の直線移動動作を、同方向と平行な方向を回転中心軸C31とする往復の回転動作に変換するボールねじ機構30(「運動変換機構」に相当)と、(2)前記回転動作によって摩擦材50を滑り材60に対して摺動回転させて摩擦力を発生させる摩擦力発生機構40と、を有する。そして、この摩擦力を振動の減衰力として使用する。
ボールねじ機構30は、ねじシャフト部31と、ねじシャフト部31にボール状の転動体(不図示)を介して螺合するナット部33と、を有する。ねじシャフト部31は、その軸芯方向C31を架け渡し方向に平行にして配され、その軸芯方向C31の一端部31bは、適宜な連結部材32を介して、第2分断端10bに対する前記軸芯方向C31の相対移動及び軸芯C31周りの相対回転を規制されつつ第2分断端10bに連結されている。一方、ナット部33は、ベアリング35aを具備した連結部材35を介して第1分断端10aに連結されており、当該ベアリング35aの作用により、ナット部33は、第1分断端10aに対する軸芯方向C31の相対移動については規制されているが、軸芯C31周りの相対回転については許容されている。
よって、建物の揺れにより分断端10a,10b同士が架け渡し方向に相対移動すると、当該相対移動に応じて、ナット部33はねじシャフト部31の軸芯方向C31に沿って相対的に直線移動し、この直線移動動作によってナット部33は軸芯C31周りに螺合回転する。すなわち、分断端10a,10b同士の相対移動に係る直線移動動作が、軸芯C31周りの回転動作に変換されることになる。そして、この回転動作は、摩擦力発生機構40に伝達され、同機構40での摩擦力の発生を通じて振動の減衰に供される。
摩擦力発生機構40は、(1)ナット部33の外周から回転半径方向の外方に延出形成されナット部33と一体となって前記軸芯C31周りに回転する円板状のフランジ部41(「回転運動伝達部材」に相当)と、(2)フランジ部41の回転方向の所定部位に一体に設けられた略ブロック状の回転慣性質量体43と、(3)回転慣性質量体43に圧縮状態のばね部材45(「第2弾性部材」に相当)を介して設けられ、回転慣性質量体43と一体となって回転する摩擦材50と、(4)前記フランジ部41に対向されつつ、前記ベアリング35aよりも前記連結部材35における第1分断端10a側の部位に移動不能に固定された滑り材60と、を有する。
そして、滑り材60は、前記軸芯C31を円心とするドーナツ型の円板状をなし、これにより、前記軸芯C31を回転中心として回転する摩擦材50の円形の周回軌道の全周に亘り、摩擦材50に確実に当接するように構成されている。よって、ばね部材45の弾発力を圧接力として滑り材60に圧接される摩擦材50は、その周回軌道の全周に亘ってほぼ一定の摩擦力を生じ、この摩擦力により建物の揺れを有効に減衰する。
ここで、この摩擦材50の回転速度は、ボールねじ機構30のリード長L及び摩擦材50の回転半径rの調節によって、ナット部33の軸芯方向C31の直線移動動作の速度Vよりも増速されるように設定されている。詳しくは、ナット部33がねじシャフト部31に対してリード長Lだけ相対的に直線移動すると、ナット部33は軸芯C31周りに一回転し、これにより摩擦材50も一回転するが、この第1実施形態では、この一回転分の周長(=2π×r)がリード長Lよりも長くなるように摩擦材50の回転半径rが設定されている。
そして、このように設定されていれば、摩擦材50と滑り材60との摺動による実際の回転方向の摩擦力が、前記リード長Lに対する前記周長の比率(=2π×r/L)分だけ増幅されて、軸芯方向の減衰力として作用させることができる。逆に言えば、この比率による増幅分、実際の回転方向の摩擦力を、振動減衰に必要な軸芯方向の減衰力の大きさよりも小さくすることができて、これにより摩擦材50及び滑り材60の減量化を図ることができる。例えば、この比率が50倍に設定されている場合には、必要な軸芯方向の減衰力の大きさの50分の1の大きさの回転方向の摩擦力を発生させれば、前記必要な大きさの軸芯方向の減衰力を確保することができる。なお、以下では、この増幅に係る前記比率(=2π×r/L)のことを、梃子倍率と言う。
また、上述の摩擦力発生機構40は、回転慣性質量体43を有している。よって、この回転慣性質量体43の回転動作の慣性力に基づく負剛性効果により、振動減衰の際に建物に加えられる負荷を軽減できて、これにより、この摩擦ダンパー20を古い既存建物等の低強度構造体にも適用可能となる。詳しくは次の通りである。
図3Aは、建物の柱梁架構3において摩擦ダンパーにより減衰力が付与される部位(以下、力点部位と言う(図1を参照))の水平方向の変位と、当該力点部位に生じる内力との関係を示すグラフである。また、図3Bは、従来の摩擦ダンパーの振動エネルギー吸収履歴特性のグラフであり、図3Cは、第1実施形態の摩擦ダンパー20の振動エネルギー吸収履歴特性のグラフである。なお、図3B及び図3Cのどちらのグラフも縦軸には減衰力Pをとり、横軸には架け渡し方向の振動の変位量、つまり同方向の直線移動動作の動作量をとっている。
図3A中、実線で示すように、振動の最大変位時には、建物自身が大きく変形していることから、建物の各部位には大きな内力が生じている。このような時に、更に大きな外力を変形方向と逆向きに付与すると、外力が付与される前記力点部位では、その内力が、当該外力の分だけ更に拡大する。すなわち、前記力点部位の内力は、図3A中実線で示す前記力点部位自身の変形による内力に、外力により生じる内力を足し合わせたものとなる。
ここで、摩擦ダンパーの減衰力Pも、変形方向と逆向きの外力として作用する。また、従来の摩擦ダンパーの場合には、図3Bに示すように、その摩擦力たる減衰力Pの大きさは、振動に係る変位量によらず略一定である。よって、図3A中実線で示す内力に対して図3Bの減衰力Pにより生じる内力を加算してなる前記力点部位の実際の内力は、図3Aの点線のようになる。つまり、従来の摩擦ダンパーによれば、柱梁架構3の前記力点部位には、振動の最大変位時の厳しい内力下においても、大きな減衰力Pによる大きな内力が更に追加で生じることになり、その場合には、内力が拡大して当該力点部位の破壊限界強度に至り易くなる。それ故、古い既存建物等の低強度構造体には、従来の摩擦ダンパーの適用は困難である。
これに対して、第1実施形態の摩擦ダンパー20によれば、図3Cに示すように、負剛性効果に基づき、減衰力Pは、振動の最大変位に向かうに従って小さくなる。ここで、負剛性効果とは、変位するに従って、その変位方向の逆向きに付勢する力が大きくなることを言う。この第1実施形態の摩擦ダンパー20の場合には、回転慣性質量体43の回転による慣性力がその負剛性効果の元となる力である。そして、この慣性力の分だけ、摩擦材50と滑り材60との摩擦力に基づく減衰力よりも、前記力点部位に実際に付与される減衰力Pは小さくなる。
よって、図3A中実線で示す内力に対して図3Cの減衰力Pにより生じる内力を加算してなる実際の内力は、図3Aの一点鎖線のようになる。つまり、第1実施形態の摩擦ダンパー20によれば、振動の最大変位に近づくに従って減衰力Pが小さくなるので、減衰力Pの入力に伴う前記力点部位の内力の拡大を、特に厳しい内力状態の最大変位時において有効に抑制できる。その結果、当該摩擦ダンパー20を、古い既存建物等の低強度構造体にも適用可能となるのである。
ちなみに、振動の変位に比例して負剛性効果が大きくなるのは(つまり、図3Cの減衰力Pが振動の変位に比例して小さくなるのは)、通常、振動モデルの変位には、時間をパラメータとする正弦波が使用され、その場合、変位の二回微分たる加速度も正弦波となるからである。
また、この負剛性効果を更に拡大すべく、図2に示すようにフランジ部41の外周縁に沿って更に環状のリブ部41bを一体に設け、回転慣性質量体として機能させても良い。
===第2実施形態===
図4は、第2実施形態の摩擦ダンパー20aの中心縦断面図である。
上述の第1実施形態では、回転慣性質量体43及び摩擦材50は、ナット部33のフランジ部41に対する回転方向及び回転半径方向の両方向の移動が規制されていたが、この第2実施形態では、回転半径変更機構を有し、この回転半径変更機構により、回転方向の移動のみが規制され回転半径方向の移動は許容されている点で主に相違する。そして、この相違点に基づいて、この第2実施形態の摩擦ダンパー20aは、減衰力Pの大きさが振動の速度Vに応じて変化する速度依存型摩擦ダンパーとして構成されている。なお、これ以外の点は概ね第1実施形態と同じであり、以下では、同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
回転半径変更機構は、図4に示すように、回転半径方向に沿ってフランジ部41に設けられたレール42(「案内部材」に相当)を有する。そして、このレール42の案内面42aとの係合によって、回転慣性質量体43は、滑り材60との間の距離を一定に維持しつつ、回転半径方向に移動可能に案内されている。また、フランジ部41の外周縁には、当該外周縁に沿って環状に壁部41aが形成されており、この環状壁部41aと回転慣性質量体43との間には、ばね部材47(「第1弾性部材」に相当)が介装されている。そして、このばね部材47の圧縮変形の弾発力により、回転慣性質量体43には、回転半径方向の内方を向いた向心力が付与されている。よって、この向心力と、回転慣性質量体43に作用する遠心力とが釣り合う回転半径方向の位置に回転慣性質量体43は移動する。
ここで、回転慣性質量体43に作用する遠心力は、ボールねじ機構30に係る直線移動動作の速度、つまり、振動の速度Vの大小に応じて増減変化する。よって、この遠心力とばね部材47の弾発力との釣り合いによって定まる回転慣性質量体43の回転半径r1も、振動の速度Vの大小に応じて増減変化することになる。
また、前述した増幅に係る梃子倍率は、前記回転半径r1の大小によって増減し、つまり、摩擦力を梃子倍率で増幅してなる減衰力Pも、回転半径r1に応じて増減変化する。従って、この第2実施形態の構成によれば、振動の速度Vの大小に応じて減衰力Pの大きさが増減変化することとなり、かくして速度依存型摩擦ダンパーが実現される。
このような速度依存型摩擦ダンパーの減衰特性、つまり減衰力Pと振動の速度Vとの関係については、以下のような力学的検討を行うことで、詳細に把握することができる。
先ず、ばね部材47は線形ばね(つまり、ばね部材47の弾発力が撓みの一次関数の場合)であるものとし、そのばね定数をk1とし、また、ばね部材47の撓みが零であり未振動時の摩擦材50の回転半径をr0とし、振動時の摩擦材50の回転半径をr1とする。すると、回転慣性質量体43にかかる向心力Fcは、ばね部材47の復元力(弾発力)で与えられ、つまり下式1で表せる。
Fc=k1×(r1−r0) …(1)
また、振動の速度(つまり、ナット部33のねじシャフト部31に対する直線移動動作の速度のこと)をVとし、ボールねじ機構30のリード長をLとし、回転慣性質量体43の質量をm1とすると(摩擦材50やばね部材45等の質量は無視する)、回転慣性質量体43及び摩擦材50にかかる遠心力Feは、下式2で表せる。
Fe=m1×{(2π×r1/L)×V}2/r1 …(2)
そして、これら向心力Fcと遠心力Feとの力の釣り合いにより、下式3を得る。
k1×(r1−r0)=m1×{(2π×r1/L)×V}2/r1 …(3)
これをr1について解くと、下式4になる。
r1=(k1×r0)/{k1−m1×(2π/L) 2×V2} …(4)
なお、上式4の分母が零となる条件、つまりV≧√(k1/m1)×L/(2π) の場合には、r1は発散して回転半径r1は無限大となるが、この場合には、回転慣性質量体43及び摩擦材50は、それ以上回転半径r1が増えないように、前述の環状壁部41aに支持された状態となっている。
一方、摩擦ダンパー20aの減衰力Pは、摩擦材50と滑り材60の摩擦係数をμ、摩擦材50の滑り材60への圧接力をNとすると、上述の梃子倍率の考え方に基づき下式5で表せる。
P=(2π×r1/L)×(N×μ) …(5)
但し、上式5は、回転慣性質量体43及び摩擦材50が1セットの場合であり、複数セットの場合には、その減衰力は上式5の複数倍となる。例えば、図4の例では2セットなので2倍となるが、ここでは、説明の関係上、1セット、つまり1倍として説明する。
この上式5のr1に前述の式4を代入すると、下式6が得られる。
P=(k1×r0)/{k1−m1(2π/L) 2×V2}×(2π/L )×(N×μ) …(6)
そして、この式6に基づいて摩擦ダンパー20aの減衰力Pをグラフ化すると、図5のV−P関係が得られる。すなわち、上式6および図5から分かるように減衰力Pが振動の速度Vに応じて変化する速度依存型摩擦ダンパーが実現されているのがわかる。
ちなみに、このグラフ化に当たり必要なr0,k1,L,N,μの各値には、それぞれ、図5中に記載の値を使用しており、また、m1については、同図5中に示すように三水準で振っている。
図6Aには、この摩擦ダンパー20aの振動エネルギー吸収履歴特性を示している。縦軸には減衰力Pをとり、横軸には架け渡し方向の振動の変位量、つまり、同方向の直線移動動作の動作量をとっている。また、この図6Aは、減衰すべき前記振動が、時間を変数とする正弦関数の振動の場合のグラフである。また、図6A中の実線は、振動の速度Vが大きい場合であり、点線は振動の速度Vが小さい場合である。
図6Aから明らかなように、振動の速度Vが大きい場合には、大きな減衰力Pを発生し、同速度Vが小さい場合には、小さな減衰力Pを発生している。よって、この第2実施形態の摩擦ダンパー20aによれば、振動の速度Vが小さい小地震に対しては小さな減衰力Pを発生し、振動の速度Vが大きい大地震に対しては大きな減衰力Pを発生することができる。
なお、図6A中で、グラフが全体として右肩下がりになっているのは、負剛性効果の影響である。つまり、負剛性効果が小さい場合には図6Bのように略水平になる。
ところで、望ましくは、図5のV−P関係が線形になっていると良く、そのようになっていれば、一般に線形関係に基づき粘性ダンパーが制震設計し易いのと同じ理由から、当該摩擦ダンパー20aも制震設計し易いものとなる。この点につき、この第2実施形態の構成において、そのV−P関係を概ね線形にする方法としては、上述のばね部材47に対して、弾発力が撓みの二乗に比例する特性のばね部材を用いることが挙げられる。
なお、このようなばね特性のばね部材により概ね線形のV−P関係を作り出せることについては、前述したような力学的検討により、以下のように確認することができる。
先ず、図4のばね部材47は、上述したように、その弾発力が撓みの二乗に比例する非線形ばねであるものとする。また、ばね部材47の撓みが零であり未振動時の摩擦材50の回転半径をr0とし、振動時の摩擦材50の回転半径をr1とする。その場合、回転慣性質量体43にかかる向心力Fcは、ばね部材47の復元力(弾発力)で与えられ、つまり下式7で表せる。
Fc=k1×(r1−r0)2 …(7)
また、回転慣性質量体43にかかる遠心力Feは、前述の式2と同じく下式8のように表せる。
Fe=m1×{(2π×r1/L)×V}2/r1 …(8)
そして、これら向心力Fcと遠心力Feとの力の釣り合いにより、下式9を得る。
k1×(r1−r0) 2=m1×{(2π×r1/L)×V}2/r1 …(9)
これをr1で解くと、下式10になる。
r1=[k1×L2×r0+2π×{m1×π×V2+√{m1×V2×(k1×L2×r0+m1×π2×V2)}}]/(k1×L2) …(10)
一方、この摩擦ダンパー20aの減衰力Pは、摩擦材50と滑り材60の摩擦係数をμ、摩擦材50の滑り材60への圧接力をNとすると、上述の梃子倍率の考え方に基づき下式11で表せる。
P=(2π×r1/L )×(N×μ) …(11)
但し、前述したように、上式11は、回転慣性質量体43及び摩擦材50が1セットの場合であり、複数セットの場合には、その減衰力は上式11の複数倍となる。例えば、図4の例では2セットなので2倍となるが、ここでは説明の関係上、1セット、つまり1倍とする。
この上式11のr1に式10を代入すると、下式12が得られる。
P=(2π×N×μ)×[k1×L2×r0+2π×{m1×π×V2+√{m1×V2×(k1×L2×r0+m1×π2×V2)}}]/(k1×L) …(12)
そして、この式12に基づいて摩擦ダンパー20aの減衰力Pをグラフ化すると、図7のV−P関係が得られる。すなわち、V−P関係はほぼ線形関係になっている。
図8Aには、このV−P関係が略線形の摩擦ダンパー20aが奏する振動エネルギー吸収履歴特性を示している。なお、図8A中の実線は、振動の速度が大きい場合であり、点線は振動の速度が小さい場合である。図6Aとの対比からわかるように、図8Aの履歴特性のループは図6Aよりも丸みを帯びており、もって、そのV−P関係は、粘性ダンパー等の速度比例型減衰装置に近い特性を有しているのがわかる。
なお、図8A中、グラフが全体として右肩下がりになっているのは、前述したように負剛性効果の影響である。つまり、負剛性効果が小さい場合には図8Bのように略水平になる。
この弾発力が撓みの二乗に比例する非線形ばねは、皿ばねや板ばね等の特殊ばねによっても実現できるが、コイルばねによっても実現可能である。その一例としては、巻き取り径がコイルばねの軸方向に沿って変化しているようなコイルばねや、線径がコイルばねの軸方向に沿って変化しているようなコイルばね、または、軸方向の巻き取りピッチが軸方向に変化しているようなコイルばね等が挙げられる。
なお、上述の非線形ばね特性をコイルばねで作り出す方法として、剛性(ばね定数)が互いに異なる線形コイルばねを並列配置する方法を用いても良い。図9は、この方法を説明するための摩擦力発生機構40aの拡大図である。この例では、巻き取り径によって剛性を異ならせており、つまり、図中一点鎖線で示す巻き取り径が大径のコイルばね47aは低剛性のばねとして用いられ、図中点線で示す巻き取り径が中径のコイルばね47bは中剛性のばねとして用いられ、図中実線で示す巻き取り径が小径のコイルばね47cは高剛性のばねとして用いられる。
そして、初期の撓み変形においては、巻き取り径が大径の低剛性のコイルばね47aによって弾発力が付与され、中期の撓み変形においては、前記コイルばね47aの弾発力に加えて巻き取り径が中径の中剛性のコイルばね47bから弾発力が付与され、後期の撓み変形においては、これらコイルばね47a,47bの弾発力に加えて更に巻き取り径が小径の高剛性のコイルばね47cからも弾発力が付与され、これにより、上述の非線形ばね特性が実現されるようになっている。
ところで、この第2実施形態の構成において(図4を参照)、ボールねじ機構30の軸芯方向C31を鉛直にしない場合には、重力が回転慣性質量体43の可動方向たる回転半径方向に作用することになり、当該重力の作用分、回転慣性質量体43の回転半径r1が、設計値からずれてしまう。これにより、摩擦材50の回転半径r1を設計値通りに設定できずに、所期の減衰力Pを得られなくなる虞がある。
ここで、このような重力の影響を無くすためには、図4に示すように、回転慣性質量体43を少なくもと二つ設けるとともに、これら二つの回転慣性質量体43,43同士を、互いに前記軸芯C31に関して対称に対向して配置するのが望ましい。このようにすれば、仮に一方の回転慣性質量体43が重力の影響で回転半径方向の内側に移動した場合であっても、もう一方の回転慣性質量体43は逆にほぼ同量だけ外側に移動しており、これら回転慣性質量体43,43をペアで考えれば、重力が摩擦材50の回転半径r1に与える影響は相殺されることになる。よって、この構成によれば、重力の影響を概ね無くすことができる。
また、上述の第2実施形態では、レール42の案内面42aによって、回転慣性質量体43は、滑り材60との間の距離を一定に維持しつつ、回転半径方向に移動可能に案内されていたが、何等これに限るものではなく、例えば、図10に示すように、レール42bの案内面42cの形状を変えることにより、滑り材60との間の距離を、回転慣性質量体43の回転半径方向の位置に応じて変化させるようにしても良い。
詳しく説明すると、図10の例のレール42bの案内面42cは、回転半径方向の内側から外側へ向かうに従って滑り材60の方へ飛び出すような傾斜面に形成されている。これにより、回転慣性質量体43は、回転半径方向の内側から外側へ移動するに従って滑り材60の方へ押し出されるので、回転慣性質量体43と摩擦材50との間のばね部材45の弾発力の変化を通じて、摩擦材50の滑り材60への圧接力は、回転半径方向の内側の位置よりも外側の位置の方が高くなり、その結果、内側の位置の摩擦力よりも外側の位置の摩擦力の方が高くなる。つまり、上述の梃子倍率の変化に加えて、摩擦力自体も変化させることができて、これにより、振動の速度Vの変化に対する減衰力Pの変化幅を大きくすることができる。
ちなみに、場合によっては、図10の構成に関して、レール42bの案内面42cの傾斜方向を、上述とは逆にしても良い。つまり、レール42bの案内面42cが、回転半径方向の外側から内側へ向かうに従って滑り材60の方へ飛び出すような傾斜面に形成されていても良い。この場合には、回転慣性質量体43は、回転半径方向の外側から内側へ移動するに従って滑り材60の方へ押し出されるので、回転慣性質量体43と摩擦材50との間のばね部材45の弾発力の変化を通じて、摩擦材50の滑り材60への圧接力は、回転半径方向の外側の位置よりも内側の位置の方が高くなり、その結果、外側の位置の摩擦力よりも内側の位置の摩擦力の方が高くなる。
更には、上述の第1及び第2実施形態では、滑り材60と摩擦材50との間の摩擦係数μは、回転半径方向の全域に亘り一定としていたが、回転半径方向の位置に応じて摩擦係数μを異ならせ、これにより、摩擦力を変化させても良い。
===第3実施形態===
図11は、第3実施形態の摩擦ダンパー20bの中心縦断面図である。
上述の第2実施形態では、速度依存型摩擦ダンパーを実現するのに、遠心力による回転慣性質量体43及び摩擦材50の回転半径r1の変化を利用していたが、この第3実施形態では、回転半径r1は概ね固定としている。その代わりに、回転慣性質量体73の遠心力によって摩擦材50の滑り材60への圧接力を変化させ、これによる摩擦材50と滑り材60との間の摩擦力の変化を通じて、減衰力Pを変化させている。
このような遠心力に応じた圧接力の変化は、圧接力変更機構70によって行われる。圧接力変更機構70は、ナット部33の外周部にヒンジ71を介して連結されたアーム部材72を本体とする。そして、このヒンジ71により、アーム部材72は、滑り材60に対して近接・離間する方向の揺動回転動作については許容されているが、これ以外の動作については規制されている。
また、このアーム部材72には回転慣性質量体73が一体に固定されており、この回転慣性質量体73に生じる遠心力を、上述のアーム部材72の前記揺動回転動作の駆動力としている。すなわち、ナット部33の回転速度が大きくなると、回転慣性質量体73の遠心力の増大を通じて、アーム部材72を滑り材60の方へ押す方向のモーメントが大きくなり、逆に、回転速度が小さくなると、遠心力の減少を通じて前記モーメントが小さくなる。
なお、回転停止時におけるアーム部材72の動作を安定化させる目的で、図11に示すように、アーム部材72とフランジ部41とをばね部材74で連結しても良く、更には、アーム部材72自体の振動を抑えるべくアーム部材72とフランジ部41との間にオイルダンパー等の減衰部材75を介装しても良い。
一方、フランジ部41は、アーム部材72よりも軸芯方向C31の滑り材60側に位置しており、また、同フランジ部41には、アーム部材72の位置に対応させて、軸芯方向C31に沿った貫通孔41hが形成されている。そして、この貫通孔41hには、アーム部材72を摩擦材50に連結する連結部材77(図示例ではばね部材78を具備している)が挿通されており、この連結部材77を介してアーム部材72の前記モーメントが摩擦材50に伝達されて、摩擦材50は滑り材60に圧接されるようになっている。
ここで、当該モーメントは、上述したように、回転慣性質量体43に作用する遠心力によって生じ、また、遠心力はナット部33の回転速度に応じて変化し、ナット部33の回転速度は、ボールねじ機構30に係る直線移動動作の速度、つまり振動の速度Vの大小に応じて増減変化する。よって、前記モーメントに基づいて摩擦材50を滑り材60に押し付ける際の圧接力も、振動の速度Vの大小に応じて増減変化することとなり、かくして、この第2実施形態の構成によれば、振動の速度Vの大小に応じて摩擦力たる減衰力Pの大きさが増減変化する速度依存型摩擦ダンパーが実現される。
なお、この速度依存型摩擦ダンパーのV−P関係の詳細については、上述の第2実施形態の場合と同様に、以下のような力学的検討を通じて確認することができる。
先ず、回転慣性質量体73及び摩擦材50の回転半径をr1とし、回転慣性質量体73とヒンジ71との間の回転半径方向の距離をr2とすると、回転慣性質量体73にかかる遠心力F1は、下式13で表せる。
F1=m1×{(2π×r1/L)×V}2/r1
=m1×r1×{(2π/L)×V}2 …(13)
また、回転慣性質量体73とヒンジ71との軸芯方向C31の距離をr3とし、減衰部材75による減衰力を0とすると、遠心力F1は、アーム部材72を介して軸芯方向C31の圧接力Nに変換されるので、下式14に示すようなヒンジ71周りのモーメントの釣り合い式が成り立つ。そして、これをNについて解いて式15を求め、式15のF1に上式13を代入すると、圧接力Nは下式16で表せる。
F1×r3=N×r2 …(14)
N=F1×(r3/r2) …(15)
=m1×r1×(r3/r2)×{(2π/L)×V}2 …(16)
ここで、圧接力Nの力で摩擦材50が滑り材60に押し付けられ、摩擦力F2が発生する。よって、このときの摩擦係数をμとすると、摩擦力F2は下式16で表せて、この式16のNに上式16を代入すると、下式17を得る。
F2=μ×N …(16)
=μ×m1×r1×(r3/r2)×{(2π/L)×V}2 …(17)
一方、摩擦ダンパー20bの減衰力Pは、回転半径r1と摩擦力F2とから、下式18で表せる。但し、前述したように、下式18は、回転慣性質量体73及び摩擦材50が1セットの場合であり、複数セットの場合には、その減衰力は下式18の複数倍となる。例えば、図11の例では2セットなので2倍となるが、ここでは説明の関係上、1セット、つまり1倍とする。
P=(2π×r1/L )×F2 …(18)
そして、上式18のF2に式16を代入すると、下式19を得る。
P=μ×m1×r12×(r3/r2)×(2π/L)3×V2 …(19)
よって、上式19から明らかなように、そのV−P関係は、振動の速度Vに依存して減衰力Pが変化するものとなり、かくして、速度依存型摩擦ダンパーが実現されているのがわかる。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
上述の実施形態では、直線移動動作と回転動作とを相互に変換可能な運動変換機構の一例としてボールねじ機構30を用いていたが、このような運動変換を可能な機構であれば、ボールねじ機構以外の機構を適用しても良く、例えば、ラックアンドピニオン機構等を用いても良い。
上述の第2実施形態では、回転慣性質量体43に向心力を付与すべく、環状壁部41aと回転慣性質量体43との間にばね部材47を介装し、その圧縮変形の弾発力を回転慣性質量体43に付与していたが、向心力を付与可能であれば、何等これに限るものではない。例えば、ナット部33の外周面と回転慣性質量体43との間にばね部材を介装し、その引張り変形の弾発力を回転慣性質量体43の向心力として用いても良い。
上述の実施形態では、摩擦ダンパー20,20a,20bを柱梁架構3のブレース10に適用していたが、適用対象は何等これに限るものではなく、相対移動する二部材の間であれば適用可能である。
上述の第2実施形態の摩擦ダンパー20aは、回転慣性質量体43及び摩擦材50の回転半径r1を、回転慣性質量体43に作用する遠心力によって受動的に変化させるパッシブ式の摩擦ダンパー20aであったが、何等これに限るものではなく、アクティブ式の摩擦ダンパーに構成しても良い。例えば、摩擦材50を回転半径方向に移動する油圧シリンダーやモーター等のアクチュエータを設け、当該アクチュエータを制御することにより、振動の速度Vに応じて摩擦材50を回転半径方向に移動してその回転半径r1を変化させても良い。更には、上述のパッシブ式の摩擦ダンパー20aに上述のアクチュエータを追設することにより、摩擦ダンパーをセミアクティブ式に構成しても良い。
上述の実施形態では、摩擦材50及び滑り材60の素材について述べていなかったが、摺動時に両者50,60同士の間に適度な大きさの摩擦力が生じるものであれば、使用可能である。例えば、滑り材60にステンレス鋼板を用いた場合には、摩擦材50の方には、ステンレス鋼板との間で安定した摩擦係数が得られる四フッ化エチレンや超高分子量ポリエチレン(例えば、ソマライト(商品名))等が使用される。
3 柱梁架構、10 ブレース、
10a 第1分断端(一方の部材)、10b 第2分断端(他方の部材)、
20 摩擦ダンパー、20a 摩擦ダンパー、20b 摩擦ダンパー、
30 ボールねじ機構(運動変換機構)、
31 ねじシャフト部、31b 一端部、32 連結部材、
33 ナット部、35 連結部材、35a ベアリング、
40 摩擦力発生機構、40a 摩擦力発生機構、
41 フランジ部(回転運動伝達部材)、41a 環状壁部、41b リブ部、
41h 貫通孔、
42 レール(案内部材)、42a 案内面、
42b レール(案内部材)、42c 案内面、
43 回転慣性質量体、
45 ばね部材(第2弾性部材)、
47 ばね部材(第1弾性部材)、
47a コイルばね、 47b コイルばね、 47c コイルばね、
50 摩擦材、60 滑り材、
70 圧接力変更機構、
71 ヒンジ、72 アーム部材、
73 回転慣性質量体、74 ばね部材、
75 減衰部材、77 連結部材、78 ばね部材、
C31 軸芯(軸芯方向、回転中心軸)、
r 回転半径、r0 回転半径、r1 回転半径、
L リード長、V 速度、G 隙間

Claims (3)

  1. 相対移動する二部材同士の間に介装されて、前記二部材同士の間の振動を減衰する摩擦ダンパーであって、
    前記相対移動に係る往復の直線移動動作を、所定の軸芯を回転中心とする往復の回転動作に変換する運動変換機構と、
    前記二部材のうちの一方の部材に前記軸芯周りに回転自在に支持されて、前記回転動作によって回転する回転慣性質量体と、
    前記回転慣性質量体に設けられ該回転慣性質量体と一体となって回転する摩擦材と、
    前記一方の部材に設けられ、前記摩擦材との摺動により前記摩擦材との間に生じる摩擦力によって前記振動を減衰する滑り材と、を備え、
    前記運動変換機構によって、前記摩擦材の前記軸芯周りの回転速度は、前記直線移動動作の速度よりも増速されており、
    前記回転慣性質量体は、前記直線移動動作に係る所定長をリード長として、前記軸芯周りに回転し、
    前記直線移動動作の速度に応じて、前記回転慣性質量体の回転半径を増減変更する回転半径変更機構を有し、
    前記回転半径変更機構は、前記回転慣性質量体に作用する遠心力の大きさに応じて、前記回転慣性質量体の回転半径を増減変更し、
    前記運動変換機構には、前記一方の部材に前記軸芯周りに回転自在に支持された回転運動伝達部材が設けられ、
    前記回転慣性質量体は、前記回転運動伝達部材を介して前記一方の部材に回転自在に支持され、
    前記回転半径変更機構は、前記回転運動伝達部材に対する前記回転慣性質量体の回転方向への相対移動を規制しつつ、前記回転半径方向への相対移動を許容する案内部材と、前記回転慣性質量体に前記回転半径方向の向心力を付与する第1弾性部材と、を有し、
    前記運動変換機構により前記直線移動動作から変換された前記回転動作に基づいて前記回転運動伝達部材が回転することにより、前記回転慣性質量体に前記回転動作が伝達され、
    前記向心力と前記遠心力とが釣り合う前記回転半径方向の位置に前記回転慣性質量体が移動し、
    前記滑り材と前記摩擦材とは、前記軸芯方向に互いに対向して配置され、
    前記摩擦材を前記滑り材へ圧接するための第2弾性部材が、前記摩擦材と前記回転慣性質量体との間に介装されており、
    前記案内部材によって、前記回転慣性質量体は、前記回転半径方向の内側の位置よりも外側の位置の方が前記滑り材の方へ押し出されるように、又はその逆になるように案内されていることを特徴とする摩擦ダンパー。
  2. 請求項1に記載の摩擦ダンパーであって、
    前記回転慣性質量体は、少なくもと二つ設けられ、
    二つの前記回転慣性質量体同士は、互いに前記軸芯に関して対称に配置されていることを特徴とする摩擦ダンパー。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の摩擦ダンパーであって、
    前記運動変換機構は、ボール状の転動体を介してナット部がねじシャフト部に螺合するボールねじ機構を有し、
    前記ナット部は、前記二部材のうちの前記一方の部材に、前記軸芯周りの回転を許容されつつ前記軸芯方向の移動を規制されて支持され、
    前記回転運動伝達部材は、前記ナット部を介して前記一方の部材に回転自在に支持され、
    前記ねじシャフト部は、その軸芯方向が前記直線移動動作の方向に沿って配置されつつ、前記ねじシャフト部の軸芯方向の一端部は、前記二部材のうちの他方の部材に固定され、
    前記ナット部の前記ねじシャフト部に対する前記リード長分の移動動作毎に、前記ナット部は一回転することを特徴とする摩擦ダンパー。
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