JP5376652B2 - レーザー装置及びレーザー増幅方法 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザー光源から発した超短パルスレーザーを増幅し、高強度の超短パルスレーザーを出力するレーザー装置の構成に関する。また、これに用いられるレーザー増幅方法に関する。
レーザー光は、計測や加工等、様々な分野で広く用いられているが、その中でも、短い時間で高強度のレーザー光をパルス状に発振するパルスレーザーは、様々な分野で使用されている。特にこうしたパルスレーザーの中でも、数十フェムト秒(fs:1fs=10−15s)程度以下と極端に短いパルス幅(発振時間)内でそのパワーを集中的に発する超短パルスレーザー光が近年得られるようになった。例えばレーザー加工においては、こうした超短パルスレーザー光を用いることにより、極端に短い時間内においてのみ局所的に試料に強い熱的効果を与えるため、試料全体における温度の上昇を起こさずに精密な加工ができる。従って、超短パルスレーザー光は、極めて有効である。
高強度のパルスレーザー光を得るためには、レーザー光源が発振した超短パルスレーザー光を、増幅媒質で構成されたレーザー増幅器中で増幅し、高強度とすることが必要になる。しかしながら、広く用いられている安価なCOレーザーやYAGレーザー等とは異なり、こうした超短パルスレーザーにおいては、上記のパルス幅内におけるレーザー光のピーク強度を極めて高くする必要がある。こうした場合、ピーク強度が高すぎて、レーザー増幅器にこのパルスレーザー光を入射させても正常な増幅が行われない、あるいは増幅媒質が損傷するという問題が発生する。このため、超短パルス幅で高いピーク強度をもつパルスレーザー光を得るためには特別な工夫が必要となり、例えば特許文献1に記載されるCPA(Chirped Pulse Amplification)法という手法が用いられている。CPA法においては、入射したパルスレーザー光のパルスをチャープする(光学材料の分散特性を利用してパルス幅を制御する)技術が用いられ、これによってレーザー増幅器で適切な増幅が行えるようなピーク強度とされた後に増幅が行われる。
図6は、CPA法を用いてパルスレーザー光を増幅するレーザー装置の構成及び原理を示す図である。ここで、図6上は、このレーザー装置の構成を示し、図6下の表は、図6上に示された各構成要素を通過後(図中(11)〜(14)で表示)のパルスレーザー光のパルス波形(横軸:時間)を単純化して示す。ここで発振されるパルスレーザー光の波長は、広がりをもつ。図6下の表の上段においては、このパルスレーザー光の出力エネルギーを縦軸とし、下段においては、3種類の波長(λ)毎に見たこの出力を縦軸として示している。従って、この表の上段における出力は、下段における波長毎の出力を波長について積分したものとなる。なお、この波長については、下側で短く、上側で長い3種類について模式的に示しているが、実際にはパルスレーザー光は連続的なスペクトルをもつ。
このレーザー装置においては、まず、レーザー発振器91が、図6に示される形状の増幅前のパルスレーザー光(11)を発振する。このパルスレーザー光を波長λ毎に見ても、その発振波形は図6中の(11)に示されるように、その上段の波形と下段の3種類の波形はいずれも相似形である。すなわち、パルスの立ち上がり、立ち下がりタイミングは同一である。
このパルスレーザー光がパルス伸張器92に入射する。パルス伸張器92は、例えば屈折率に正の分散特性を有する光学材料で構成され、短波長側では長波長側よりも大きな屈折率を有する。従って、短波長側では光の伝搬速度が低下するため、パルス伸張器92を通過後の出力(12)においては、短波長側でのパルスの到着は長波長側よりも遅れ、いわゆる正にチャープされた状態となる(図6中の表(12)下段)。従って、これを通過後のパルスレーザー光の出力(図6中の表(12)上段)のパルス幅は、通過前と比べて広くなる。また、単一のパルスで放射される全エネルギーは増大しないため、このパルスレーザー光のピーク強度はこれに応じて低くなる。すなわち、このパルス伸張器92を通過後には、パルスレーザー光のパルス幅が長くなり、ピーク強度が低くなる。
このパルスレーザー光は、増幅媒質で構成されたレーザー増幅器93に入射し、ここで増幅される。ここで入射するパルスレーザー光においては、レーザー発振器91から発振直後と比べてピーク強度が低下しているため、増幅媒質の損傷を発生させずに、適正に増幅を行うことができる。従って、図6中の表(13)に示されるように、レーザー増幅器93に入射前の波形を忠実に保ち、ピーク強度が増大したパルスレーザー光が得られる。この増幅は波長によらずに一様に行われるため、増幅されたパルス形状は、波長に関する積分値(上段)においても、波長毎の出力(下段)についても同様である。
次に、増幅されたパルスレーザー光は、パルス圧縮器94に入射する。パルス圧縮器94も屈折率に分散特性を有する光学材料で構成されるが、その特性はパルス伸張器92と逆、すなわち、長波長側で短波長側よりも大きな屈折率(負の分散特性)を有する。従って、これを通過後には、長波長側でのパルスの到着は、短波長側よりも遅れ、入射光を、前記と逆のいわゆる負にチャープされた状態とすることができる。従って、このパルス圧縮器94に正にチャープされたパルスレーザー光を通過させれば、パルス伸張器92で発生したパルス遅延を補償することができ、図6中の表(14)下段に示されるように、各波長毎のパルス発振タイミングを再び統一させることができる。この積分結果が図6中の表(14)上段に示す波形である。すなわち、パルス幅は再び短くなり、増幅前のパルスレーザー光(11)と等しくなっている。この際、各波長毎に増幅された出力(図6中の表(14)下段)は同一タイミングで出力されるため、そのピーク強度は高くなる。すなわち、増幅前のパルスレーザー光(11)と同じ超短パルス幅で高いピーク強度をもつパルスレーザー光(14)が出力される。
従って、CPA法を用いて、高強度の超短パルスレーザーを得ることができる。
更に、特許文献2には、上記のレーザー増幅器93において特に光パラメトリック増幅をパルスレーザー光の増幅に用いたOPCPA(Optical Parametric Chirped Pulse Amplification)法が有効であることが記載されている。この方法によれば、例えばBBO(β−BaB)結晶を増幅媒質として用いた場合に、高い増幅利得を得ると同時に、レーザー増幅器の大きさを特に小さくすることができ、装置全体をコンパクト化することができる。
特開平8−46276号公報 特開2008−299155号公報
しかしながら、こうした構成を用いた場合でも、超短パルスレーザーを発振するレーザー装置の構成は、従来より広く用いられているCOレーザーやYAGレーザー等と比べて複雑であり、その構成要素の数が多くなっていた。従って、こうしたレーザー装置は高価であった。
また、レーザー装置に限らず、光学装置がその性能を充分に発揮するためには、各構成要素間のアライメントが高精度でなされていることが必要である。構成要素の数が多い場合、アライメントを高精度で保つ必要のある箇所が増大するため、安定して高性能を発揮させることも困難となる。従って、高性能を安定して維持するという観点からも、構成を単純化することは重要である。
こうしたレーザー装置の構成が複雑となる大きな原因は、パルスの伸張を行った場合には、その後に再びパルスの圧縮を行うことが必要であることである。すなわち、パルス伸張器とパルス圧縮器を共に備えることが必要であるために、構成要素が多くなった。
従って、パルスレーザー光におけるパルスの伸張・圧縮を行うレーザー装置の構成を単純化することは困難であった。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした
本発明のレーザー装置は、レーザー光源から発したパルスレーザー光を増幅して出力するレーザー装置であって、チャープされた前記パルスレーザー光をシグナル光とし、該シグナル光と共にポンプ光が入射され、増幅された前記シグナル光と、前記シグナル光と逆方向にチャープされたアイドラー光とを出力する光パラメトリック増幅器と、屈折率に分散特性をもつ光学材料で構成され、前記光パラメトリック増幅器に入射する前の前記パルスレーザー光、及び前記アイドラー光をチャープさせるパルス伸張・圧縮器と、を具備することを特徴とする。
本発明のレーザー装置において、前記ポンプ光は、前記パルス伸張・圧縮器に入射前の前記パルスレーザー光を分岐させて生成されることを特徴とする。
本発明のレーザー装置において、前記パルス伸張・圧縮器は、前記パルスレーザー光を正にチャープすることを特徴とする。
本発明のレーザー増幅方法は、レーザー光源から発したパルスレーザー光を増幅して出力するレーザー増幅方法であって、屈折率に分散特性をもつ光学材料で構成されたパルス伸張・圧縮器に、前記パルスレーザー光を透過させることによって前記パルスレーザー光をチャープし、前記チャープされたパルスレーザー光をシグナル光とし、ポンプ光と共に光パラメトリック増幅器に入射させ、該光パラメトリック増幅器が出力したアイドラー光を、前記パルス伸張・圧縮器に透過させることによって、前記アイドラー光を前記パルスレーザー光と逆方向にチャープし、出力することを特徴とする。
本発明のレーザー増幅方法は、前記パルス伸張・圧縮器に入射前の前記パルスレーザー光を分岐させて前記ポンプ光を生成することを特徴とする。
本発明のレーザー増幅方法において、前記パルス伸張・圧縮器は、前記パルスレーザー光を正にチャープすることを特徴とする。



本発明は以上のように構成されているので、パルスレーザー光におけるパルスの伸張・圧縮を行うレーザー装置の構成を単純化することができる。
本発明の実施の形態に係るレーザー装置の構成を示す図である。 本発明の実施の形態に係るレーザー装置における各構成要素通過直後のパルスレーザー光の波形を示す図である。 実施例の構成を示す図である。 実施例の出力パルスの自己相関を測定した結果である。 実施例の出力パルスのスペクトルを測定した結果である。 CPA法を用いたレーザー装置の構成及び原理を説明した図である。
以下、本発明の実施の形態に係るレーザー装置について説明する。図1は、このレーザー装置10の構成を示す図である。このレーザー装置10においては、レーザー発振器11が発振した超短パルスレーザー光を増幅して、高強度の超短パルスレーザーを出力する。この際、以下に説明するレーザー増幅方法を用い、超短パルス幅で高いピーク強度をもつパルスレーザー光を出力する。
図2に、このレーザー装置10における各構成要素を通過後のパルスレーザー光のパルス波形(横軸:時間)を、図1中の(1)〜(5)に対応させ、単純化して示す。レーザー発振器11が発振するパルスレーザー光の波長は、広がりをもつ。図2の表の上段においては、このパルスレーザー光の出力エネルギーを縦軸とし、下段においては、これを3種類の波長(λ)毎に見た出力を縦軸として示している。従って、この表の上段における出力は、下段に示された波長毎の出力を波長について積分したものとなる。なお、この波長については、下側で短く、上側で長い3種類について模式的に示しているが、実際にはパルスレーザー光は連続的なスペクトルをもつ。以下では、このレーザー装置10の動作原理を、これらの波形に基づいて説明する。
図1において、レーザー発振器11としては、例えばチタンサファイアレーザー発振器(中心波長1020nm)が用いられる。これによって発振されるパルスレーザー光の発振パルス幅は数十fs程度であり、波長にも広がりをもつ。レーザー発振器11が発振した直後のパルスレーザー光強度及びその波長毎の強度は、図2の(1)に示され、いずれも同じタイミングで立ち上がり、立ち下がる相似形をなしている。すなわち、波長毎の出力(図2下段)で見た場合でも、立ち上がり、立ち下がりが同一タイミングとなる。このパルスレーザー光が以降で増幅され、高強度となって出力される。
このパルスレーザー光は、パルス伸張・圧縮器12に入射する。パルス伸張・圧縮器12は、屈折率に分散特性(正の分散)を有する光学材料で構成され、上記のパルスレーザー光の短波長側では、長波長側よりも大きな屈折率を有する。具体的には、この光学材料としてSF11等の光学ガラス材料を用いることができる。短波長側では屈折率が大きくなるため、光の伝搬速度が低下し、パルス伸張・圧縮器12通過後には、長波長側と比べてパルスが遅延する、いわゆる正にチャープされた状態となる。従って、これを通過後の波長毎の波形は図2(2)の下段の通りとなり、これを波長で積分した出力(図2(2)上段)におけるパルス幅は長くなる。すなわち、パルス伸張・圧縮器12を通過させることによってこのパルスレーザー光は伸張する。また、この際に、また、単一のパルスで放射される全エネルギーは増大しないため、パルスレーザー光のピーク強度は、パルス幅が伸張した分だけ低下する。以上の動作は、従来より知られるCPA法と同様である。
このパルスレーザー光は、光パラメトリック増幅器(OPA:Optical Parametric Amplifier)13に入射する。光パラメトリック増幅器13は、例えば特許文献2に記載されるものと同様であり、例えば厚さ7mm程度の非線形光学材料であるBBO(β−BaB)で構成される。OPA13は、入射光(シグナル光)と共にポンプ光を入射させることによってポンプ光のエネルギーをシグナル光に移行させ、増幅されたシグナル光と、一般的にはこれと異なる波長のアイドラー光とを出力する。従って、ポンプ光がオンとされている間だけこの増幅を行う。このポンプ光としてもパルスレーザー光を用いることができるが、そのパルス幅はここで出力する超短パルスレーザー光のパルス幅よりも長くてもよい。従って、このポンプ光は適宜設定することができ、例えば、図1中の(1)の箇所のパルスレーザー光、すなわち、伸張前のパルスレーザー光を分岐して取り出し、適宜作成して用いることもできる。なお、アイドラー光の強度もシグナル光と同程度に高くなっている。
OPA13に入射したシグナル光が正にチャープされている場合には、増幅されたシグナル光が、そのまま正にチャープされた状態で出力される。一方で、OPA30では位相整合条件が成立し、アイドラー光の偶数次数の分散の符号は、シグナル光と逆になるため、アイドラー光とシグナル光の位相が逆転するという現象が生ずる。従って、例えばA.Piskarskas、A.Stabinis、and A.Yankauskas、”Phase phenomena in parametric amplifiers and generators of ultrashort light pulses”、Soviet Physics Uspekhi、1986年、vol.29、p869に記載されているように、アイドラー光は、シグナル光とは逆に負へチャープされた形態で出力される。すなわち、OPA13からは、図2(3)に示す増幅されたシグナル光が出力されると共に、図2(4)にその波形を示すアイドラー光も出力される。増幅されたシグナル光(3)における波長毎の波形は、OPA13に入射前の波形と同様に、短波長側で遅延した状態(正にチャープされた状態)となっているが、アイドラー光(4)の波形は、これと逆に、長波長側で遅延し、パルス立ち上がり直後で短波長化した状態(負にチャープされた状態)となっている。また、アイドラー光のピーク強度も、シグナル光のピーク強度と同様に、入射光よりも高くなっている。
レーザー装置10においては、出力光を生成するために、増幅されたシグナル光(3)は用いずに、従来使用されていなかったアイドラー光(4)を用いる。
このアイドラー光は、前記と同一のパルス伸張・圧縮器12に入射する。前記と同様に、このアイドラー光においては、長波長側と比べて短波長側が遅延する。従って、図2の(5)に示すように、このアイドラー光がパルス伸張・圧縮器12を通過後の波形は正にチャープされ、長波長側でのパルスの遅延が補償される。
すなわち、このレーザー装置10においては、パルスレーザー光が先にパルス伸張・圧縮器12を通過した際に正にチャープされ、これがその後にOPA13を通過した際に、負に逆転してチャープされたアイドラー光が出力される。このアイドラー光を、同一のパルス伸張・圧縮器12が再び正にチャープすることによって、波長毎の遅延が補償され、チャープされていない状態に戻る。従って、図2(5)の下段に示すように、全ての波長におけるパルスの立ち上がりと立ち下がりは同一タイミングとなり、波長について積分した強度(図2(5)中段)におけるパルス幅は再び短くなり、レーザー発振器11が発振した直後の状態と等しくすることができる。ただし、このパルスレーザー光のピーク強度は、OPA13によって、レーザー発振器11が発振した直後よりも高くなっている。従って、このパルスレーザー光を出力として取り出せば、高出力の超短パルスレーザーを得ることができる。
以上により、このレーザー装置10によって、レーザー発振器11が発した超短パルスレーザー光を増幅し、高強度の超短パルスレーザーを出力させることができる。この際、図6に示した従来のレーザー装置90と比較して、パルス伸張器とパルス圧縮器とを兼用とした単一のパルス伸張・圧縮器12を用いているため、装置構成が単純となり、低コスト化が図れる。更に、特許文献2に記載されるように、パルスレーザー光の増幅にOPA13を用いているため、装置を小型化することもできる。
また、図6に示した従来のレーザー装置においては、その性能を発揮するためには、各構成要素間のアライメント精度を高く保つことが必要である。例えば、レーザー発振器91とパルス伸張器92間、パルス伸張器92とレーザー増幅器93間、レーザー増幅器93とパルス圧縮器94間、のぞれぞれのアライメントを正確に行い、かつこれらの精度を常に正確に保つ必要がある。ところが、こうしたアライメント精度は動作環境によって劣化しやすく、これによって本来の性能が発揮できなくなる場合がある。こうした状況は、特にこのレーザー装置を移動させて使用する場合に顕著である。
これに対して、このレーザー装置10においては、構成要素が減少した分だけ、こうした高い精度が必要な箇所が減少する。従って、このレーザー装置10を持ち運んで使用する際にも、安定して性能を発揮することができ、環境の変動に際しても安定に動作させることが可能である。
なお、上記の例では、パルスレーザー光を初めに正にチャープして伸張し、後でこれを圧縮する例につき記載した。しかしながら、逆の場合、すなわち、初めに負にチャープして後でこれを圧縮する場合(パルス伸張・圧縮器12において、パルスレーザー光の長波長側でパルス遅延を生じさせる場合)においても、同様の効果を奏することは明らかである。
この際、複数の光学素子(回折格子やプリズム等)を組み合わせることにより、正負のチャープを実現することができることが知られており、これによってパルス伸張・圧縮器12を構成することもできる。ただし、正のチャープを起こすことができる材料としては前記のSF11等を初めとした多数が用いられるのに対し、負の分散特性をもつ光学材料は一般的ではなく、特に負のチャープを実現するためには、こうした回折格子対やプリズム対が用いられる場合が多い。
従って、図6に示した従来のレーザー装置において、例えばSF11等の光学材料をパルス伸張器92に用いた場合、こうした回折格子対等を用いてパルス圧縮器94を構成することが必要になる場合が多い。こうした場合には、上記と同様に、これらの回折格子間のアライメントも更に重要になる。これに対して、上記のレーザー装置10においては、SF11等の光学材料で構成されたパルス伸張・圧縮器12のみを用いればよいため、従来のレーザー装置90と比べて、アライメント精度を維持すべき箇所は大幅に少なくなる。
(実施例)
以下では、実際に上記の構成を用いて超短パルスレーザー光を増幅させた簡単な実験結果について示す。
図3は、この実験に用いたレーザー装置の具体的構成を示す図である。レーザー発振器21はモードロックチタンサファイアレーザー発振器であり、中心波長1020nm、パルス幅57fsのパルスレーザー光を発振し、この光が増幅され、出力された。このレーザー装置においては、このパルスレーザー光が増幅され、超短パルス幅かつ高いピーク強度で出力される。このパルスレーザー光は、ビームスプリッタ22で2つに分割され、一方がOPAにおけるポンプ光、他方がシグナル光として用いられた。
ポンプ光として用いられる側のパルスレーザー光は、パルス伸張用偏波保存ファイバ23を通った後に、Yb添加YLFで構成された増幅媒質からなるレーザー増幅器24で増幅された。その後、この光は回折格子対からなるパルス圧縮器25で圧縮され、パルス幅が2psとされた後に、2倍波発生器26を通り、半分の波長(510nm)に変換された。その後、この光は、反射鏡40を介し、時間遅延調整用ライン27を通り1mm程度の大きさにダウンコリメートされ、OPA30のポンプ光とされた。このポンプ光のエネルギーは0.9mJであり、OPA30で増幅作用を充分に発揮させることができる。
シグナル光として用いられる側のパルスレーザー光は、反射鏡41を介し、厚さ50mmのSF11からなるパルス伸張・圧縮器31に入射し、正にチャープされた。この光は、反射鏡42、43を介し、OPA30のシグナル光とされた。この際、シグナル光のパルス幅は390fsまで伸張されていた。
OPA30は、厚さ7mmであるタイプIのBBO(β−BaB)結晶からなる。このOPA30に上記のポンプ光とシグナル光を交差角1.2°で入射させ、光パラメトリック増幅が行われた。ここでは、この際に発生したアイドラー光を反射鏡44、45を介して再びパルス伸張・圧縮器31に入射させ、その出力光を取り出した。
シングルショット自己相関器でこの出力光の自己相関波形を測定した結果が図4である。ここでは、比較対照として、パルス伸張・圧縮器31に入射前のアイドラー光の測定結果も同時に示している。この結果より、パルス伸張・圧縮器31によってアイドラー光のパルス圧縮が行われていることが確認できる。また、増幅の利得は3×10程度であり、1パルス当たり6μJの出力が得られた。
なお、図4の結果において、入射前のパルス半値幅が270fsであったのに対し、出力光のパルス半値幅は74fsであり、パルス伸張・圧縮器31によって圧縮はされているが、元のパルス幅(57fs)よりもわずかに広くなっている。また、シグナル光(増幅前)のスペクトルと出力光のスペクトルを測定した結果を図5に示す。この結果より、出力光が、増幅前の光と比べて40nm程度短波長化していることが確認できる。これらの差異は、上記の単純化した実験装置においては、OPA30におけるシグナル光とポンプ光の交差角度を1.2°としたことに起因する。この角度を平行(0°)に近くすることによって、出力光のパルス幅及び波長を元のパルス幅及び波長に更に近づけることが可能である。
更に、上記の単純化された実験装置においては、様々な箇所でパワーロスが生じており、これを改善することによって更なる利得の向上が見込まれる。例えば、パルス伸張・圧縮器31やOPA30等の表面に無反射コーティングを施すことにより、これらにおけるパワーロスを減少させ、より高い利得を得ることが可能である。
なお、OPA30から出力されるアイドラー光においてシグナル光から符号が反転するのは、偶数次数の分散だけであり、奇数次数の分散の符号は反転しない。従って、厳密に言えば、アイドラー光をパルス伸張・圧縮器31に通した際には偶数次数の分散のみが補償される。一方で、奇数次数の分散は補償されずに増大し、この増大した成分の寄与分だけ出力光のパルス幅・波長は元のパルス幅・波長と相違することになる。しかしながら、例えば、SF11をパルス伸張・圧縮器31に用いた場合、これによるパルス伸張を5ps程度までの範囲とする場合には、その3次の分散は2次の分散と比べて無視できる程度である。従って、この場合には、パルス幅や波長の変化を無視できる程度としてパルスレーザー光の増幅を行うことができる。
また、上記の例では、超短パルスレーザーを出力する、あるいは超短パルスレーザー光をOPCPA法を用いて増幅する場合について記載した。しかしながら、本発明は、これに限定されず、パルスレーザー光のパルス伸張・圧縮処理を行う全てのレーザー装置に対して適用できることは明らかである。すなわち、シグナル光とアイドラー光の位相が逆転するという性質を利用すれば、パルスレーザー光のパルス伸張と、アイドラー光のパルス圧縮とを単一の光学素子を用いて行うことができる。
また、上記の例では、チャープされたシグナル光と、チャープされていないポンプ光とをOPAに入射させた場合について記載したが、この構成についても、同様の効果を奏する限りにおいて任意である。例えば、シグナル光をチャープせず、ポンプ光をチャープさせて、逆方向にチャープされたアイドラー光を得ることもできる。この場合においても、ポンプ光のチャープ(パルス伸張)と、アイドラー光のパルス圧縮とを、単一の光学素子を用いて行うことが可能である。このように、シグナル光とアイドラー光の位相が逆転するという性質を利用することにより、パルス伸張及び圧縮処理を行うレーザー装置の装置構成を単純化することが可能である。
10 レーザー装置
11、21、91 レーザー発振器
12、31 パルス伸張・圧縮器
13、30 光パラメトリック増幅器(OPA)
22 ピームスプリッタ
23 パルス伸張用偏波保存ファイバ
24、93 レーザー増幅器
25、94 パルス圧縮器
26 2倍波発生器
27 時間遅延調整用ライン
40、41、42、43、44、45 反射鏡
92 パルス伸張器

Claims (6)

  1. レーザー光源から発したパルスレーザー光を増幅して出力するレーザー装置であって、
    チャープされた前記パルスレーザー光をシグナル光とし、該シグナル光と共にポンプ光が入射され、増幅された前記シグナル光と、前記シグナル光と逆方向にチャープされたアイドラー光とを出力する光パラメトリック増幅器と、
    屈折率に分散特性をもつ光学材料で構成され、前記光パラメトリック増幅器に入射する前の前記パルスレーザー光、及び前記アイドラー光をチャープさせるパルス伸張・圧縮器と、
    を具備することを特徴とするレーザー装置。
  2. 前記ポンプ光は、前記パルス伸張・圧縮器に入射前の前記パルスレーザー光を分岐させて生成されることを特徴とする請求項に記載のレーザー装置。
  3. 前記パルス伸張・圧縮器は、前記パルスレーザー光を正にチャープすることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザー装置。
  4. レーザー光源から発したパルスレーザー光を増幅して出力するレーザー増幅方法であって、
    屈折率に分散特性をもつ光学材料で構成されたパルス伸張・圧縮器に、前記パルスレーザー光を透過させることによって前記パルスレーザー光をチャープし、
    前記チャープされたパルスレーザー光をシグナル光とし、ポンプ光と共に光パラメトリック増幅器に入射させ、
    該光パラメトリック増幅器が出力したアイドラー光を、前記パルス伸張・圧縮器に透過させることによって、前記アイドラー光を前記パルスレーザー光と逆方向にチャープし、出力することを特徴とするレーザー増幅方法。
  5. 前記パルス伸張・圧縮器に入射前の前記パルスレーザー光を分岐させて前記ポンプ光を生成することを特徴とする請求項に記載のレーザー増幅方法。
  6. 前記パルス伸張・圧縮器は、前記パルスレーザー光を正にチャープすることを特徴とする請求項4又は5に記載のレーザー増幅方法。
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