以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図7を参照して、本発明の一実施形態によるロボット100の構造について説明する。なお、本実施形態では、垂直多関節型の産業用ロボットに本発明を適用した例について説明する。
図1および図2に示すように、ロボット100は、6つの関節部を有する6軸(S軸、L軸、U軸、R軸、B軸およびT軸)の垂直多関節型ロボットである。ロボット100は、旋回ベース1と、アーム支持部2と、下腕部3と、上腕部4と、手首部5と、手先部6とを備えている。
旋回ベース1は、下面が設置面(床面や走行台車の設置面など)に固定され、上面側でアーム支持部2を水平面内で回転可能に支持している。旋回ベース1とアーム支持部2とは、減速機7aを介して連結され、図示しないモータによってアーム支持部2を旋回ベース1に対して水平面内で相対的に回転(旋回)させるように構成されている。これにより、旋回ベース1とアーム支持部2との間でS軸(旋回軸)の関節部が構成されている。
アーム支持部2は、旋回ベース1上に設置され、下腕部3および上腕部4を含むロボット100のアーム全体を支持するように構成されている。アーム支持部2は、上方に延びるように設けられた下腕取付部21で減速機7bを介して下腕部3を回転可能に支持している。また、下腕取付部21と下腕部3とは、水平方向に対向するようにして水平な回転軸(L軸)周りに相対回転可能に連結されている。そして、下腕部3は、減速機7bに接続されたL軸モータ22によって、下腕取付部21(アーム支持部2)に対して垂直面内で前傾または後傾するように旋回駆動されるように構成されている。これにより、アーム支持部2と下腕部3との間でL軸(下腕軸)の関節部が構成されている。
下腕部3は、下端部でアーム支持部2によって前後方向に旋回可能に支持されている一方、上端部で上腕部4を旋回可能に支持するように構成されている。下腕部3は、上端部で上腕部4と水平方向に対向するようにして、減速機7cを介して連結されている。そして、上腕部4は、減速機7cに接続された図示しないモータによって、下腕部3に対して垂直面内で上下方向に旋回駆動されるように構成されている。これにより、下腕部3と上腕部4との間でU軸(上腕軸)の関節部が構成されている。
上腕部4は、一端(根本部)側の第1上腕部41で下腕部3によって上下方向に旋回可能に支持されている一方、他端(先端部)側の第2上腕部42で手首部5を支持するように構成されている。第1上腕部41は、減速機7d(図1参照)を介して第2上腕部42に連結されており、第2上腕部42を連結軸(R軸)周りに回転可能に支持するように構成されている。そして、第2上腕部42は、減速機7dに接続された図示しないモータによって回転駆動されるように構成されている。これにより、第1上腕部41と第2上腕部42との間で、第2上腕部42から先端側の手首部5および手先部6を回転させるR軸(手首回転軸)の関節部が構成されている。
手首部5は、上腕部4(第2上腕部42)の先端に回動可能に支持されている。手首部5は、減速機7eと、減速機7eに接続された図示しないモータとを内蔵している。そして、手首部5は、減速機7eに接続された図示しないモータによって、上腕部4(第2上腕部42)に対して連結軸(B軸)周りに回動可能なように構成されている。これにより、第2上腕部42と手首部5との間で、手首部5を回動させるB軸(手首曲げ軸)の関節部が構成されている。
手先部6は、手首部5の先端に設けられ、手首部5と手先部6との連結方向に延びる回転軸(T軸)周りに回転可能なように手首部5に支持されている。手先部6は、減速機7fを介して手首部5と連結されている。そして、手先部6は、減速機7fに接続された図示しないモータによって、手首部5に対して回転軸(T軸)周りに回転されるように構成されている。これにより、手首部5と手先部6との間で、手先部6を回転させるT軸(手先回転軸)の関節部が構成されている。また、手先部6の先端部は、平坦な円盤形状に形成され、この先端部にたとえば溶接トーチやハンドなどのエンドエフェクタを装着可能となっている。
ここで、6軸(S軸、L軸、U軸、R軸、B軸およびT軸)の各関節部にそれぞれ配置された減速機7a〜7fには、ギアが噛み合い位置を移動させながら回転するように構成された減速機が組み込まれている。そして、本実施形態では、各関節部において支持側部材に対する回動側部材の相対的な回転位置が所定の位置にあるとき、その関節部の減速機の回転角度位置が所定の回転角度位置となるように、減速機7a〜7fがそれぞれ組み付けられている。
ここで、支持側部材とは、各軸の関節部について、それぞれ旋回ベース1(S軸)、アーム支持部2(L軸)、下腕部3(U軸)、第1上腕部41(R軸)、第2上腕部42(B軸)、手首部5(T軸)を指す。これらの各部は、それぞれ、本発明の「第1構成部材」の一例である。また、回動側部材とは、各軸の関節部について、それぞれアーム支持部2(S軸)、下腕部3(L軸)、第1上腕部41(U軸)、第2上腕部42(R軸)、手首部5(B軸)、手先部6(T軸)を指す。これらの各部は、それぞれ、本発明の「第2構成部材」の一例である。したがって、下腕部3は、L軸の関節部に関して回動側部材(第2構成部材)であるが、U軸の関節部に関して支持側部材(第1構成部材)である。
次に、本実施形態のロボット100のL軸の関節部における、アーム支持部2、減速機7bおよび下腕部3の構造について詳細に説明する。なお、L軸以外の各軸(S軸、U軸、R軸、B軸およびT軸)の関節部の構造も同様であるので、説明は省略する。
まず、減速機7bの構造について説明する。図3に示すように、本実施形態では、減速機7bは、平歯車減速機構を有する第1段減速部70aと、内部に偏心ギア(遊星歯車)77aおよび77bが設けられた差動式減速機構を有する第2段減速部70bとの2段減速式の減速機構を有している。なお、偏心ギア77aおよび77bは、本発明の「外歯遊星歯車」の一例である。
減速機7bは、第1段減速部70aおよび第2段減速部70bを収容する筒状のケース71と、減速機7bにより減速された回転を出力する出力側部材72と、L軸モータ22の出力軸と連結された入力ギア73とを含んでいる。ケース71は、アーム支持部2に固定的に取り付けられており、出力側部材72が、下腕部3に固定的に取り付けられている。これにより、入力ギア73から伝達されたL軸モータ22の出力軸の回転が減速機7bで減速され、出力側部材72を介して下腕部3に伝達されるように構成されている。この結果、アーム支持部2およびアーム支持部2に固定されたケース71に対して、下腕部3および出力側部材72が相対的に回転する。なお、ケース71は、本発明の「固定側部材」の一例である。
図4に示すように、第1段減速部70aは、上述の入力ギア73と、入力ギア73にそれぞれ噛み合う3つのスパーギア(平歯車)74とから構成されている。入力ギア73は、減速機7b(ケース71)の中心軸(L軸)上に配置され、一端がL軸モータ22の出力軸と連結され、軸受75により回転可能に支持されている。また、入力ギア73の他端が3つのスパーギア74とそれぞれ噛み合うように設けられている。3つのスパーギア74は、入力ギア73の歯数よりも多い互いに同一の歯数を有している。これにより、第1段減速部70aでは、入力ギア73と各スパーギア74との歯数比分の減速が行われるように構成されている。
図3に示すように、第2段減速部70bは、3つのスパーギア74の回転軸を構成する3つのクランク軸76(図4参照)と、各クランク軸76の2つの偏心部76aおよび76bに取り付けられた2枚の偏心ギア77aおよび77bと、ケース71の内周面に設けられ偏心ギア77a(77b)と噛み合う内歯歯車78とから構成されている。なお、クランク軸76は、本発明の「回転軸」の一例である。
3つのクランク軸76は、スパーギア74の取り付けられた一端側の軸部76cを出力側部材72によって、他端の軸部76dを保持部材79によって、それぞれ軸受を介して回転可能に支持されている。この軸部76cおよび76dの間に2つの偏心部76aおよび76bが軸方向に並ぶように形成されている。
図5に示すように、偏心ギア77aは、3つのクランク軸76のそれぞれの偏心部76aに転がり軸受80を介して取り付けられた平板状の外歯歯車である。偏心ギア77aには、入力ギア73が通る中心の孔部77cと、偏心部76aに転がり軸受80を介して外嵌めされる3つの取付孔部77dと、出力側部材72の後述する連結部72aが通る3つの連結孔部77eとが形成されている。これにより、偏心ギア77aは、3つの取付孔部77dに係合する3つの偏心部76aの偏心回転に応じて偏心回転するように構成されている。なお、図3に示すように、偏心ギア77bは、クランク軸76の偏心部76bに取り付けられており、偏心ギア77aと同一形状を有する。また、偏心部76bは偏心部76aと180度位相が異なる。
図5に示すように、内歯歯車78は、ピン歯78aを用いたピン歯車からなり、偏心ギア77aおよび77bが部分的に噛み合うように構成されている。ピン歯78aは、ケース71の内周面に周方向に等間隔(等回転角度間隔)で並べて配置されている。ここで、内歯歯車78の歯数(ピン歯78aの数)は、偏心ギア77a(77b)の歯数よりも1つだけ多くなるように構成されている。このため、偏心ギア77a(77b)は、内歯歯車78(ピン歯78a)との噛み合い位置を回転方向に移動させながら偏心回転し、クランク軸76が1回転すると内歯歯車78(ピン歯78a)と偏心ギア77a(77b)との歯数差1歯分だけ自転するように構成されている。
図3および図5に示すように、出力側部材72は、クランク軸76の軸部76cを支持するとともに、偏心ギア77a(77b)の連結孔部77e内を通る連結部72aによって保持部材79と連結されている。なお、図3に示すように、出力側部材72および保持部材79は、それぞれ軸受72bおよび軸受79aを介してケース71の内周部に回転可能に支持されている。そして、クランク軸76の回転によって偏心ギア77a(77b)が自転すると、クランク軸76自体が中心軸(L軸)周りに回転する。この結果、クランク軸76の軸部76cを支持する出力側部材72と、クランク軸76の軸部76dを支持する保持部材79とが、偏心ギア77a(77b)の自転に伴って一体的に回転する。このようにして、第2段減速部70bでは、偏心回転の結果1歯分ずつ自転する偏心ギア77a(77b)の自転が取り出され、歯数分だけ減速された回転(自転)が出力側部材72に伝達されるように構成されている。
このような構成により、減速機7bでは、入力ギア73の回転が第1段減速部70aおよび第2段減速部70bによって2段階に減速され、出力側部材72に出力される。また、図4に示すように、減速機7bのケース71には、ボルト固定用の孔部71cが多数設けられたフランジ部71aが形成されている。そして、図3に示すように、このフランジ部71aのアーム支持部2側の表面によって環状のケース取付面71bが構成されている。また、図4に示すように、出力側部材72の表面(下腕部3側の表面)には平坦な出力側取付面72cが形成され、ボルト固定用の孔部72dが多数形成されている。なお、ケース取付面71bおよび出力側取付面72cは、それぞれ、本発明の「取付面」の一例である。
一方、図6に示すように、アーム支持部2の下腕取付部21には、減速機7bのフランジ部71aのケース取付面71b(図3参照)に対応する環状の支持部側取付面21aが形成されている。環状の支持部側取付面21aには、後述する1つの支持部側位置決め部21b(穴部)と、ボルト固定用の多数の孔部21cとが形成されている。この支持部側取付面21aと減速機7bのケース取付面71bとが互いに密着した状態でボルト23(図3参照)により締結されることによって、減速機7b(ケース71)がアーム支持部2(下腕取付部21)に固定される。なお、支持部側取付面21aは、本発明の「取付面」の一例である。また、支持部側位置決め部21bは、本発明の「位置基準部」、「位置決め部」、「凹部」および、「第1位置決め部」の一例である。
ここで、図3に示すように、本実施形態では、減速機7bのケース取付面71bと、対応する支持部側取付面21aとには、それぞれ、対応するケース側位置決め部71dと、支持部側位置決め部21bとが1つずつ形成されている。これらのケース側位置決め部71dと、支持部側位置決め部21bとは、互いに回転軸方向(L軸方向)に延びる一対の凹部(穴)からなる。また、ケース側位置決め部71dと、支持部側位置決め部21bとは、位置決めピン81の一端と他端とをそれぞれに挿入(装着)することによって、互いに係合可能に構成されている。本実施形態では、支持部側位置決め部21bが環状の支持部側取付面21aの上端の位置に配置されている。このため、ケース側位置決め部71dが減速機7b(ケース71)の上端に位置する状態でのみ、減速機7bを下腕取付部21に取り付けることが可能となる。なお、ケース側位置決め部71dは、本発明の「位置基準部」、「位置決め部」、「凹部」および、「第3位置決め部」の一例である。
また、図7に示すように、下腕部3の下端には、減速機7bの出力側部材72の出力側取付面72cに対応する下腕取付面3aが形成されている。下腕取付面3aには、後述する1つの下腕側位置決め部3b(穴部)と、ボルト固定用の多数の孔部3cとが形成されている。この下腕取付面3aと減速機7bの出力側取付面72cとが互いに密着した状態でボルト(図示せず)により締結されることによって、減速機7bの出力側部材72が下腕部3に取り付けられる。なお、下腕取付面3aは、本発明の「取付面」の一例である。また、下腕側位置決め部3bは、本発明の「位置基準部」、「位置決め部」、「凹部」および、「第2位置決め部」の一例である。
本実施形態では、図3に示すように、減速機7bの出力側取付面72cと、対応する下腕取付面3aとには、それぞれ、対応する出力側位置決め部72eと、下腕側位置決め部3bとが1つずつ形成されている。これらの出力側位置決め部72eと、下腕側位置決め部3bとは、互いに回転軸方向(L軸方向)に延びる一対の凹部(穴)からなる。また、出力側位置決め部72eと、下腕側位置決め部3bとは、位置決めピン82の一端と他端とをそれぞれに挿入(装着)することによって、互いに係合可能に構成されている。図7に示すように、本実施形態では、下腕側位置決め部3bが下腕取付面3aの上端から反時計方向に略90度の位置に配置されている。このため、たとえば下腕部3が直立する図1の状態で減速機7bと下腕部3とを取り付けるとすれば、出力側位置決め部72e(図4参照)が減速機7b(ケース71)の上端から時計方向に略90度の位置に位置する状態でのみ、出力側部材72を下腕部3に取り付けることが可能となる。なお、出力側位置決め部72eは、本発明の「位置基準部」、「位置決め部」、「凹部」および、「第4位置決め部」の一例である。
さらに、本実施形態では、減速機7bのケース側位置決め部71dと出力側位置決め部72eとは、減速機7bの回転角度位置と対応づけられて形成されている。具体的には、たとえば図4に示すように、ケース側位置決め部71dと出力側位置決め部72eとの両方が上端位置(12時の位置)に配置された状態で、偏心ギア77a(77b)が下端側(上端側)で噛み合い(角度0度)、クランク軸76も一定の回転角度位置(角度0度)となるように構成されている。
これにより、アーム支持部2に対する下腕部3の相対的な回転位置をたとえば図1の位置に決めると、各位置決め部(ケース側位置決め部71dおよび支持部側位置決め部21bと、出力側位置決め部72eおよび下腕側位置決め部3bと)の係合によって減速機7bのケース71と出力側部材72との位置関係が一意に定まる。この結果、組み込まれる減速機7b内部の回転角度位置(偏心ギア77a(77b)の噛み合い位置およびクランク軸76の回転角度位置)が、アーム支持部2に対する下腕部3の相対的な位置に対応して必ず一定となるように組み込まれる。これにより、本実施形態では、アーム支持部2に対して下腕部3の相対的な回転位置が所定の位置にあるときには、L軸の関節部の減速機7bの回転角度位置が所定の回転角度位置となるように構成されている。
次に、本実施形態によるロボット100のL軸の関節部における減速機7bの組付方法について説明する。なお、ここでは、L軸のアーム支持部2に対して下腕部3が直立した状態(図1に示す状態)で減速機7bをそれぞれ取り付ける場合について説明する。また、L軸以外の他の関節部における減速機の組付方法も同様であるので説明を省略する。
まず、図3に示すように、減速機7bのケース側位置決め部71dと、アーム支持部2の支持部側位置決め部21bとに位置決めピン81の一端および他端をそれぞれ挿入して互いを係合する。支持部側取付面21aの支持部側位置決め部21bの位置(図6参照)は決まっているので、この支持部側位置決め部21bを基準に減速機7b(ケース側位置決め部71d)の位置合わせが行われる。これにより、環状の支持部側取付面21aの上端の位置に配置された支持部側位置決め部21bに対して、ケース側位置決め部71dが減速機7b(ケース71)の上端に位置する状態で係合する。その後、この係合状態で減速機7bがアーム支持部2(下腕取付部21)にボルト23(図3参照)で固定される。
次に、減速機7bの出力側部材72を時計方向に約90度回動させ、下腕部3が図1に示す姿勢に配置された状態での下腕側位置決め部3bの位置(図7参照)を基準に出力側位置決め部72eの回転位置を合わせる。すなわち、図7における下腕側位置決め部3bの位置と向かい合うように、出力側部材72の出力側位置決め部72eの位置合わせを行う。
そして、図3に示すように、下腕側位置決め部3bと出力側位置決め部72eとに位置決めピン82の一端および他端をそれぞれ挿入し、互いを係合する。ただし、図3は下腕部3が直立した姿勢(図1参照)の状態を示していない。これにより、アーム支持部2(下腕取付部21)に対する下腕部3の相対的な回転位置が図1に示す位置(下腕部3が直立する位置)において、L軸の減速機7bの回転角度位置(ケース側位置決め部71dに対する出力側位置決め部72eの回転角度位置)が常に一定となる状態で、減速機7bが組み付けられる。この結果、組み込まれる減速機7b内部の回転角度位置(偏心ギア77a(77b)の噛み合い位置およびクランク軸76の回転角度位置)が、アーム支持部2に対する下腕部3の相対的な位置(図1に示す位置)に対応して所定の回転角度位置に位置するように組み込まれる。
次に、本願発明者が鋭意検討した結果得た知見について説明する。
上述したように、本実施形態では、偏心ギア77a(77b)が内歯歯車78との噛み合い位置を移動させながら回転するように構成された減速機7bがロボット100の関節部(L軸)に組み込まれている。
ここで、本願発明者は、減速機の偏心ギアが噛み合い位置を移動させながら減速させる構造を有する場合には、偏心ギアの回転角度位置(すなわち、内歯歯車との噛み合い位置、クランク軸の回転角度)に応じて減速機の剛性(ねじり剛性)が図8(減速機A)に示すように正弦的に周期変動することに起因して、交換前のロボット(減速機A)を同一のロボット(減速機B)に交換した場合に、図8に示すように交換後の減速機Bの偏心ギアの回転角度位置が異なる際には、剛性変動のパターン(位相)が交換前後で相違し、その結果、交換前に教示していた動作に対する動作ずれが発生することを見出した。
すなわち、本実施形態におけるロボット100のL軸の減速機7bに関して検討すれば、クランク軸76の回転に伴って偏心ギア77a(77b)が内歯歯車78との噛み合い位置を周方向に移動させながら偏心回転する。このとき、クランク軸76の回転角度に応じて減速機7b自体の剛性の大きさが正弦的に変動する。L軸の減速機7bには、下腕部3から先端側の上腕部4、手首部5、手先部6、および、手先部6に取り付けられたハンド(エンドエフェクタ)やハンドによる把持物体などの荷重が作用し、減速機7bによってこの荷重を支えることになる。このため、減速機7bの剛性が変動する場合、減速機7bに作用する荷重に対する手先位置の位置ずれ量が変動することになるのである。
たとえば、図8の減速機AをL軸の減速機7bとして用いた場合には、クランク軸76が約90度の回転角度の時には減速機7bの剛性が大きいため、荷重に対する手先位置の位置ずれは小さい。一方、クランク軸76が約270度の回転角度の時には減速機7bの剛性が小さいため、荷重に対する手先位置の位置ずれは大きくなる。ただし、ロボット100の使用時にユーザが教示(ティーチング)を行う際には、クランク軸76の回転角度位置に応じた剛性変動(手先位置のずれ易さ)を反映した状態で所望の軌跡を描くように教示をするため、ロボット100単体の動作では何ら問題は発生しない。
ここで、故障時にロボットを入れ替えたり、減速機を取り替えたりした場合には、通常、減速機のクランク軸76の回転角度が交換の前後で一致しない。このため、図8の従来例(比較例)に示すように、交換前のロボットの減速機Aと交換後のロボットの減速機Bが、減速機Aに対してクランク軸76の回転角度(偏心ギアの回転角度)180度ずれた状態で組み込まれていた場合、交換の前後では剛性の大きさの差が最大でG1となる。交換前に教示したプログラムは、減速機Aの剛性変動パターン(位相)を反映しているため、減速機Bに交換した後に元の教示データを使用しても、減速機Bの剛性変動パターン(位相)と全く異なるために大きな手先位置ずれが発生してしまう可能性がある。このように、本願発明者は、ロボットの構成部材(アーム支持部および下腕部など)に対する減速機内部のギアの回転角度位置の相違が、ロボットの個体差を大きくする要因となっていることを見出した。
これに対し、本願発明者は、たとえばL軸について、上記のように各位置決め部(ケース側位置決め部71dおよび支持部側位置決め部21bと、出力側位置決め部72eおよび下腕側位置決め部3bと)の係合によって、アーム支持部2に対して下腕部3の相対的な回転位置が所定の位置にあるときには、L軸の関節部の減速機7bの回転角度位置が所定の回転角度位置となるように構成した。この結果、交換前のロボット100(L軸の減速機7b:減速機A)を同一のロボット100(L軸の減速機7b:減速機B)に交換した場合にも、図9に示すように、減速機7bのクランク軸76の回転角度を常に一致させることができる。これにより、正弦的な剛性変動のパターン(位相)が一致するため、剛性の大きさの差がクランク軸76の回転角度位置によらず一定のG2とすることができる。このとき、図9に現れる剛性の差G2は、加工精度や組付誤差などの周期的な剛性変動以外の要因に起因する個体差に相当し、剛性変動の位相が一致しない場合の剛性の大きさの差G1よりも顕著に小さい。なお、ここでは便宜的にロボット100のL軸の関節部(減速機7b)について説明したが、L軸以外の各軸についても同様である。すなわち、ロボット100を交換した場合に、交換の前後でS軸の減速機7a同士、L軸の減速機7b同士、U軸の減速機7c同士、R軸の減速機7d同士、B軸の減速機7e同士、および、T軸の減速機7f同士のそれぞれについて、回転角度位置を一致させた状態で組み付けることができるので、交換前後のロボット100の各軸について、減速機の剛性の大きさの差がクランク軸の回転角度位置によらず一定のG2とすることができる。
上述した本願発明者が得た知見に基づく効果を確認するため、本実施形態によるロボット100同士を交換して動作させた場合の交換の前後における手先位置の位置ずれ量を実際に測定した。本実施形態によるロボット100同士を交換した場合には、図9のように、減速機のクランク軸76の回転角度が一致するので、交換の前後で発生する減速機の剛性の差G2は減速機自体の個体差レベルとなる。また、比較例として、従来のロボット同士を交換して動作させた場合の交換の前後における手先位置の位置ずれ量を実際に測定した。比較例では、図8のように、減速機のクランク軸の回転角度が一致しないので、各軸の減速機のそれぞれについて、交換の前後で減速機の剛性の差が図8のG1のように大きくなる可能性がある。
この結果、比較例による測定結果では数mmのオーダーで位置ずれが発生したのに対して、実施例による測定結果では、位置ずれの大きさが0.数mmのオーダーとなることが確認された。すなわち、本実施形態によるロボット100により、位置ずれを比較例の10%程度に抑制することができた。
本実施形態では、上記のように、アーム支持部2に対する下腕部3の相対的な回転位置が所定の位置にあるとき、減速機7bの回転角度位置が所定の回転角度位置となるように位置合わせ可能な位置決め部(支持部側位置決め部21b、下腕側位置決め部3b、ケース側位置決め部71dおよび出力側位置決め部72e)を設ける。これにより、アーム支持部2に対する下腕部3の相対的な回転位置と、その回転位置における減速機7bの回転角度位置とを位置決め部(支持部側位置決め部21b、下腕側位置決め部3b、ケース側位置決め部71dおよび出力側位置決め部72e)に基づいて対応づけた状態で減速機7bを組み付けることができる。このように位置決め部(支持部側位置決め部21b、下腕側位置決め部3b、ケース側位置決め部71dおよび出力側位置決め部72e)に基づいて減速機7bの回転角度位置を位置合わせした状態で減速機7bが組み付けられたロボット100同士では、交換前と同一のロボット100(減速機7b)に同一の姿勢をとらせた場合に減速機7b内部の偏心ギア77a(77b)の回転角度位置を一致させることができる。これにより、偏心ギア77a(77b)の回転角度位置(噛み合い位置)に応じて剛性が周期的に変動する減速機7bを組み付けたロボット100間において、交換前後で減速機7bの剛性変動のパターンを一致させることができるので、ロボット100間の個体差を小さくすることができる。
また、本実施形態では、上記のように、アーム支持部2および下腕部3に対する減速機7bの偏心ギア77a(77b)の相対的な回転角度位置を予め設定された回転角度位置に位置決めするための位置決め部(支持部側位置決め部21b、下腕側位置決め部3b、ケース側位置決め部71dおよび出力側位置決め部72e)を設ける。ここで、たとえば位置基準部としてマーク(目印)などを設け、この位置基準部に基づいて減速機を組み付ける場合には、組み付け時にマーク(目印)を確認しながら組み付け作業を行う必要がある。これに対して、本実施形態のように位置決め部(支持部側位置決め部21b、下腕側位置決め部3b、ケース側位置決め部71dおよび出力側位置決め部72e)を設けることによって、組み付け時に容易に減速機7bの位置決めを行うことができる。
また、本実施形態では、上記のように、アーム支持部2に設けられた支持部側位置決め部21bと、下腕部3に設けられた下腕側位置決め部3bと、減速機7bのケース71に設けられたケース側位置決め部71dと、減速機7bの出力側部材72に設けられた出力側位置決め部72eとを設ける。このように構成することによって、アーム支持部2に対する下腕部3の相対的な回転位置を支持部側位置決め部21bと、下腕側位置決め部3bとによって位置決めすることができる。そして、その回転位置における減速機7bの回転角度位置を、支持部側位置決め部21bに対応するケース側位置決め部71dと、下腕側位置決め部3bに対応する出力側位置決め部72eとによって、常に一定の回転角度位置に位置決めすることができる。この結果、確実に、アーム支持部2および下腕部3に対する減速機7bの偏心ギア77a(77b)の相対的な回転角度位置を、予め設定された回転角度位置に位置決めすることができる。
また、本実施形態では、上記のように、支持部側位置決め部21bとケース側位置決め部71dとが互いに係合することにより、アーム支持部2と減速機7bのケース71との相対的な回転角度位置の位置決めが行われるように構成する。また、下腕側位置決め部3bと出力側位置決め部72eとが互いに係合することにより、下腕部3と減速機7bの出力側部材72との相対的な回転角度位置の位置決めが行われるように構成する。このように構成することによって、支持部側位置決め部21bとケース側位置決め部71dとを互いに係合し、下腕側位置決め部3bと出力側位置決め部72eとを互いに係合するだけで、容易に、アーム支持部2と減速機7bとの位置決めおよび下腕部3と減速機7bとの位置決めを行うことができる。
また、本実施形態では、上記のように、支持部側位置決め部21bおよびケース側位置決め部71dが、それぞれ、アーム支持部2のケース71に対する支持部側取付面21a、および、ケース71のアーム支持部2に対するケース取付面71bに設けられる。また、下腕側位置決め部3bおよび出力側位置決め部72eが、それぞれ、下腕部3の出力側部材72に対する下腕取付面3a、および、出力側部材72の下腕部3に対する出力側取付面72cに設けられる。このように構成することにより、減速機7bの組み付け時に、支持部側取付面21aと減速機7bのケース取付面71bとを合わせるだけで、支持部側位置決め部21bおよびケース側位置決め部71dによる位置決めを行うことができる。また、下腕取付面3aと減速機7bの出力側取付面72cとを合わせるだけで、下腕側位置決め部3bおよび出力側位置決め部72eによる位置決めを行うことができる。これにより、アーム支持部2と減速機7bとの位置決めおよび取り付けと、減速機7bと下腕部3との位置決めおよび取り付けとを、さらに容易に行うことができる。
また、本実施形態では、上記のように、支持部側位置決め部21bとケース側位置決め部71dとは、位置決めピン81を装着可能でかつ位置決めピン81を介して互いに係合可能な一対の凹部により構成されている。また、下腕側位置決め部3bと出力側位置決め部72eとは、位置決めピン82を装着可能でかつ位置決めピン82を介して互いに係合可能な一対の凹部により構成されている。このように構成することによって、支持部側位置決め部21bとケース側位置決め部71dとに位置決めピン81の一端と他端とをそれぞれ装着するだけの簡素な構造で、支持部側位置決め部21bとケース側位置決め部71dとを係合させることができる。同様に、下腕側位置決め部3bと出力側位置決め部72eとに位置決めピン82の一端と他端とをそれぞれ装着するだけの簡素な構造で、下腕側位置決め部3bと出力側位置決め部72eとを係合させることができる。
また、本実施形態では、上記のように、減速機7bは、第1段減速部70aと、第2段減速部70bと、第1段減速部70aおよび第2段減速部70bを収容するケース71とを含む。また、第1段減速部70aは、入力ギア73と、入力ギア73と噛み合うスパーギア74とから構成されている。また、第2段減速部70bは、偏心部76a(76b)を有しスパーギア74に連結されたクランク軸76と、内歯歯車78と、偏心部76a(76b)に係合して偏心回転し、内歯歯車78に内接して噛み合い位置を移動させながら自転する偏心ギア77a(77b)と、偏心ギア77a(77b)の自転に伴い回転する出力側部材72とから構成されている。そして、ケース71および出力側部材72には、ケース側位置決め部71dおよび出力側位置決め部72eがそれぞれ設けられている。このように構成することによって、偏心ギア77a(77b)が噛み合い位置を移動させながら回転するように構成され、2段式減速機構により高い減速比を有する減速機7bをロボット100に組み込むことができる。このような減速機7bでは、上述の通りクランク軸76(偏心ギア77a(77b))の回転角度位置に応じて剛性が周期的に変動する。本実施形態によるロボット100では、この減速機7bのケース71および出力側部材72に、ケース側位置決め部71dおよび出力側位置決め部72eをそれぞれ設けることにより、ロボット交換時にもクランク軸76(偏心ギア77a(77b))の回転角度位置を一致させることができるので、剛性変動に起因する使用時の手先位置ずれ量を抑制し、ロボット100の個体差を小さくすることができる。
また、本実施形態では、上記のように、減速機7bを組み込む際、アーム支持部2に対する下腕部3の相対的な回転位置が2台以上のロボット100間において略同一であるとき、アーム支持部2および下腕部3の間の減速機7bの回転角度位置が、2台以上のロボット100間において略同一となるように組み立てることによって、2台以上のロボット100間で、アーム支持部2に対する下腕部3の回転位置と、その回転位置における減速機7bの回転角度位置とを対応づけた状態で減速機7bを組み付けることができる。このため、交換前と同一のロボット100に同一の姿勢をとらせた場合に減速機7b内部の偏心ギア77a(77b)の回転角度位置を一致させることができる。この結果、2台以上のロボット100間において、交換前後で減速機7bの剛性変動のパターンを一致させることができるので、ロボット100間の個体差を小さくすることができる。
(第1変形例)
上記実施形態では、平歯車減速機構を有する第1段減速部70aと、差動式減速機構を有する第2段減速部70bとの2段減速式の減速機構を有した減速機7bを用いた例を示したが、図10および図11に示す第1変形例のように、減速機7bとは異なる減速機構を有する減速機207を用いてもよい。なお、ここではロボット100のL軸の関節部に減速機207を用いる例について説明するが、減速機207を他のいずれの関節部に用いてもよい。
図10に示すように、本実施形態の第1変形例によるロボット100の減速機207は、偏心部211aおよび211bを有する入力軸211と、偏心部211aおよび211bにそれぞれ転がり軸受212を介して偏心回転可能に取り付けられた2枚の偏心ギア(外歯遊星歯車)213aおよび213bと、偏心ギア213aおよび213bが内接して噛み合う内歯歯車214と、偏心ギア213a(213b)の自転に伴って回転する出力側部材215とを含んでいる。これらの入力軸211、偏心ギア213a(213b)、内歯歯車214および出力側部材215は、筒状のケース216の内部に収容されている。なお、偏心ギア213aおよび213bは、本発明の「外歯遊星歯車」の一例である。また、ケース216は、本発明の「固定側部材」の一例である。
入力軸211は、中空軸からなり、一端側を軸受217aを介して保持部材218により支持され、他端側を軸受217bを介して出力側部材215により支持されている。これにより、入力軸211は、中心軸(L軸)周りに回転可能に支持されている。入力軸211には、L軸モータ22(図3参照)の出力軸が直接または間接的に接続され、入力軸211がL軸モータ22により回転駆動されるように構成されている。偏心部211aおよび211bは、軸受217aおよび217bの間に軸方向に並んで設けられている。偏心部211aと偏心部211bとは、約180度の位相差となるように配置されている。
図11に示すように、偏心ギア213aは、中心部に取付孔213cが設けられた平板状の外歯歯車である。偏心ギア213aは、入力軸211の偏心部211aに転がり軸受212を介して取付孔213cが外嵌めされることにより、入力軸211(偏心部211a)の回転に伴い偏心回転可能に構成されている。また、偏心ギア213aには、L軸を中心とした同心円上に複数の内ローラ孔213dが形成されている。なお、図10に示すように、偏心ギア213bは偏心部211bに取り付けられており、偏心ギア213aと同一形状を有する。
図11に示すように、内歯歯車214は、ピン歯214aにより偏心ギア213aおよび213bが内接して部分的に噛み合うように構成されている。内歯歯車214の歯数(ピン歯214aの数)は、偏心ギア213a(213b)の歯数よりも1つだけ多くなるように構成されている。このため、偏心ギア213a(213b)は、内歯歯車214(ピン歯214a)との噛み合い位置を回転方向に移動させながら偏心回転し、入力軸211が1回転すると内歯歯車214(ピン歯214a)の歯数と偏心ギア213a(213b)の歯数との差分の1歯分だけ自転するように構成されている。
図10に示すように、出力側部材215は、入力軸211の他端側を軸受217bを介して支持するとともに、偏心ギア213a(213b)の内ローラ孔213d内を通る内ピン219によって保持部材218と連結されている。また、内ピン219は、中実の丸棒形状を有し、外周に内ローラ219aが嵌め込まれるとともに、この内ローラ219aの外周面が内ローラ孔213dの内周面に内接するように設けられている。なお、内ローラ孔213dの内径は、内ローラ219aの外形よりも大きくなるように形成されている。具体的には、内ローラ孔213dと内ローラ219aとは、偏心ギア213a(213b)の偏心量(偏心部211aおよび211bの偏心量)に対応した間隙が形成されるように構成されている。
これにより、図11に示すように、入力軸211の回転によって偏心ギア213a(213b)が偏心回転すると、内ピン219(内ローラ219a)には偏心回転による揺動が伝達されることなく、内ピン219(内ローラ219a)が内ローラ孔213dの内周面に内接し続ける。この結果、内ローラ孔213dの内周面と内ローラ219aの外周面との間隙によって回転の偏心成分が吸収される一方、内ピン219(内ローラ219a)が内ローラ孔213dの内周面に内接することによって、偏心ギア213a(213b)の自転成分だけが内ピン219に伝達される。これにより、偏心ギア213a(213b)の自転に伴って、内ピン219に連結された出力側部材215と保持部材218とが、内ピン219と一体的に中心軸(L軸)周りに回転する。
このようにして、減速機207では、偏心回転の結果1歯分ずつ自転する偏心ギア213a(213b)の自転が取り出され、歯数分だけ減速された回転(自転)が出力側部材215に伝達されるように構成されている。
ここで、図10に示すように、減速機207のケース216には、フランジ部216aが形成され、このフランジ部216aのアーム支持部2側の表面によって環状のケース取付面216bが構成されている。そして、ケース取付面216bには、回転軸方向(L軸方向)に延びる凹部(穴)からなるケース側位置決め部216cが形成されている。なお、ケース取付面216bは、本発明の「取付面」の一例である。また、ケース側位置決め部216cは、本発明の「位置基準部」、「位置決め部」、「凹部」、および、「第3位置決め部」の一例である。
また、出力側部材215の表面(下腕部3側の表面)には平坦な出力側取付面215aが形成されている。そして、出力側取付面215aには、回転軸方向(L軸方向)に延びる凹部(穴)からなる出力側位置決め部215bが形成されている。なお、出力側取付面215aは、本発明の「取付面」の一例である。また、出力側位置決め部215bは、本発明の「位置基準部」、「位置決め部」、「凹部」、および、「第4位置決め部」の一例である。
これにより、第1変形例による減速機207では、ケース側位置決め部216cと、アーム支持部2(下腕取付部21)の支持部側位置決め部21b(図3参照)とが、位置決めピン81(図3参照)の一端と他端とをそれぞれに挿入(装着)することによって、互いに係合可能に構成されている。また、出力側位置決め部215bと、下腕部3の下腕側位置決め部3b(図3参照)とが、位置決めピン82(図3参照)の一端と他端とをそれぞれに挿入(装着)することによって、互いに係合可能に構成されている。
さらに、減速機207のケース側位置決め部216cと出力側位置決め部215bとは、減速機207の回転角度位置と対応づけられて形成されている。したがって、ケース側位置決め部216cと出力側位置決め部215bとの相対的な位置関係によって、偏心ギア213a(213b)の回転角度位置(偏心部211a(211b)の回転角度位置)が所定の回転角度位置に定まるように構成されている。
本実施形態の第1変形例では、上記のように、減速機207は、偏心部211a(211b)を有する入力軸211と、内歯歯車214と、偏心部211a(211b)に係合して偏心回転し、内歯歯車214に内接して噛み合い位置を移動させながら自転する偏心ギア213a(213b)と、偏心ギア213a(213b)の自転に伴い回転する出力側部材215と、入力軸211、内歯歯車214、偏心ギア213a(213b)および出力側部材215を収容するケース216とを含む。そして、ケース側位置決め部216cと出力側位置決め部215bとが、ケース216と出力側部材215とにそれぞれ設けられている。このように構成することによって、偏心ギア213a(213b)が噛み合い位置を移動させながら回転するように構成された減速機207をロボット100に組み込むことができる。このような減速機207では、入力軸211(偏心ギア213a(213b))の回転角度位置に応じて剛性が周期的に変動する。第1変形例においても、この減速機207のケース216および出力側部材215に、ケース側位置決め部216cおよび出力側位置決め部215bをそれぞれ設けることにより、ロボット交換時にも入力軸211(偏心ギア213a(213b))の回転角度位置を一致させることができる。この結果、剛性変動に起因する使用時の手先位置ずれ量を抑制し、ロボット100の個体差を小さくすることができる。
(第2変形例)
また、本実施形態および上記第1変形例とは異なり、図12および図13に示す減速機307のように波動歯車減速機を用いてもよい。なお、ここではロボット100のL軸の関節部に減速機307を用いる例について説明するが、減速機307を他のいずれの関節部に用いてもよい。
図12に示すように、本実施形態の第2変形例による減速機307は、内歯311aが内周面に形成された環状の剛性内歯歯車311と、L軸モータ22の駆動に伴って回転駆動される波動発生器312と、波動発生器312の外周部分に嵌め合わされる可撓性外歯歯車313とを含んでいる。なお、剛性内歯歯車311は、本発明の「固定側部材」の一例である。また、可撓性外歯歯車313は、本発明の「出力側部材」の一例である。
図13に示すように、剛性内歯歯車311の内周面は円形形状に形成され、剛性内歯歯車311の内周面部全体に渡って内歯311aが円周方向に複数形成されている。この内歯311aの歯数は、可撓性外歯歯車313の歯数よりも2枚程度多くなるように構成されている。また、剛性内歯歯車311は、アーム支持部2の下腕取付部21に固定的に取り付けられている。
波動発生器312は、可撓性外歯歯車313の内側に配置されている。また、波動発生器312は、楕円形状の外周面を有している。具体的には、波動発生器312は、楕円形状の外周面を有する波動プラグ312aと、波動プラグ312aの外周部分に嵌め合わされた波動ベアリング312bとを含んでいる。波動プラグ312aは、L軸モータ22の駆動に伴ってL軸周りに回転されるように構成されている。また、波動ベアリング312bは、回転される楕円形状の波動プラグ312aの形状を反映するように、弾性変形可能に構成されている。
図12に示すように、可撓性外歯歯車313は、円筒形状の胴部314と、胴部314の下腕部3側の端部に配置された円板部315とにより構成されている。可撓性外歯歯車313の胴部314は、環状の剛性内歯歯車311と波動発生器312(波動ベアリング312b)の長軸側との間に挟み込まれるように配置されている。そして、可撓性外歯歯車313の胴部314の外周面に設けられた外歯が、剛性内歯歯車311の内歯311aと噛み合うように構成されている。また、可撓性外歯歯車313の胴部314は、図13に示すように、波動発生器312が回転駆動された場合に、嵌め合わされている波動発生器312(波動ベアリング312b)の外周面形状を反映するようにたわみ変形(弾性変形)されるように構成されている。つまり、胴部314は、波動発生器312の楕円形状の外周面形状に沿って楕円形状にたわみ変形される。また、可撓性外歯歯車313の円板部315には、下腕部3が取り付けられている。
このように、剛性内歯歯車311の内側に配置された胴部314が波動発生器312の楕円形状の外周面形状を反映するように楕円形状に変形されることによって、楕円形状の長手方向の両端部近傍の2箇所の外歯314aのみが、剛性内歯歯車311の内歯311aと噛み合うように構成されている。これにより、波動発生器312の回転に伴って可撓性外歯歯車313(胴部314)の外歯314aと剛性内歯歯車311の内歯311aとの噛み合わせ位置が、円周方向に移動するように構成されている。この際、可撓性外歯歯車313(外歯)の歯数が内歯311aの歯数よりも2枚程度少ないので、波動発生器312の波動プラグ312aが1回転されると、可撓性外歯歯車313が歯数の差分だけ回転される。これにより、L軸モータ22の回転運動を減速して可撓性外歯歯車313に伝達することが可能となる。この結果、可撓性外歯歯車313の円板部315に取り付けられた下腕部3が、剛性内歯歯車311が取り付けられた下腕取付部21に対してL軸周りに回動される。
ここで、減速機307の剛性内歯歯車311のアーム支持部2側の表面によって、環状の固定側取付面311bが構成されている。そして、固定側取付面311bには、回転軸方向(L軸方向)に延びる凹部(穴)からなる固定側位置決め部311cが形成されている。なお、剛性内歯歯車311の固定側取付面311bには多数のボルト固定用の孔部が形成されるが、図示を省略している。なお、固定側取付面311bは、本発明の「取付面」の一例である。また、固定側位置決め部311cは、本発明の「位置基準部」、「位置決め部」、「凹部」、および、「第3位置決め部」の一例である。
また、可撓性外歯歯車313の下腕部3側の円板部315には平坦な出力側取付面315aが形成されている。そして、出力側取付面315aには、回転軸方向(L軸方向)に延びる凹部(穴)からなる出力側位置決め部315bが形成されている。なお、可撓性外歯歯車313の円板部315には多数のボルト固定用の孔部が形成されるが、図示を省略している。なお、出力側取付面315aは、本発明の「取付面」の一例である。また、出力側位置決め部315bは、本発明の「位置基準部」、「位置決め部」、「凹部」、および、「第4位置決め部」の一例である。
これにより、第2変形例による減速機307では、固定側位置決め部311cと、アーム支持部2(下腕取付部21)の支持部側位置決め部21b(図3参照)とが、位置決めピン81(図3参照)の一端と他端とをそれぞれに挿入(装着)することによって、互いに係合可能に構成されている。また、出力側位置決め部315bと、下腕部3の下腕側位置決め部3b(図3参照)とが、位置決めピン82(図3参照)の一端と他端とをそれぞれに挿入(装着)することによって、互いに係合可能に構成されている。
さらに、減速機307の固定側位置決め部311cと出力側位置決め部315bとは、減速機307の回転角度位置と対応づけられて形成されている。したがって、固定側位置決め部311cと出力側位置決め部315bとの相対的な位置関係によって、可撓性外歯歯車313の回転角度位置(剛性内歯歯車311に対する噛み合い位置)が所定の回転角度位置に定まるように構成されている。
第2変形例では、上記のように、減速機307は、内歯311aが内周面に形成された環状の剛性内歯歯車311と、L軸モータ22の駆動に伴って回転駆動される波動発生器312と、波動発生器312の外周部分に嵌め合わされる可撓性外歯歯車313とを含む波動歯車減速機からなる。そして、固定側位置決め部311cと出力側位置決め部315bとが、剛性内歯歯車311と可撓性外歯歯車313とにそれぞれ設けられている。このように構成することによって、可撓性外歯歯車313が噛み合い位置を移動させながら回転するように構成された減速機307をロボット100に組み込むことができる。第2変形例においても、減速機307の剛性内歯歯車311および可撓性外歯歯車313に、固定側位置決め部311cおよび出力側位置決め部315bをそれぞれ設けることにより、ロボット交換時にも可撓性外歯歯車313の回転角度位置(噛み合い位置)を一致させることができる。この結果、剛性変動に起因する使用時の手先位置ずれ量を抑制し、ロボット100の個体差を小さくすることができる。
なお、今回開示された実施形態、第1変形例および第2変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態、第1変形例および第2変形例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、本発明を垂直多関節型のロボット100に適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、ギアが噛み合い位置を移動させながら回転する減速機が関節部に組み込まれたロボットであれば、ロボット100以外の他のロボットに適用してもよい。
また、上記実施形態では、L軸の関節部の減速機の組み付けを例として説明したが、上述の通り、ロボットの全ての関節部の減速機について本発明を適用することが可能である。本発明では、全ての関節部の減速機について位置基準部を設けてもよいし、一部の関節部のみについて、減速機に位置基準部を設けて所定の回転角度位置となるように組み付けてもよい。なお、上記実施形態によるロボット100の場合、減速機の剛性の差異は、荷重が作用しやすいL軸、U軸およびB軸で特に影響が大きくなる。このため、たとえば、L軸、U軸およびB軸にのそれぞれの減速機7b、7cおよび7eについてのみ、減速機に位置基準部を設けて所定の回転角度位置となるように組み付けてもよい。
また、上記実施形態では、凹部からなる位置決め部(支持部側位置決め部21b、下腕側位置決め部3b、ケース側位置決め部71dおよび出力側位置決め部72e)を設け、位置決めピンを用いて位置決め部同士を係合させるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、支持部側位置決め部21b(下腕側位置決め部3b)およびケース側位置決め部71d(出力側位置決め部72e)を、たとえば凹部と凹部に係合可能な凸部の組み合わせによって構成してもよい。また、たとえば、支持部側位置決め部21b(下腕側位置決め部3b)およびケース側位置決め部71d(出力側位置決め部72e)としてキー溝を設け、位置決め用のキー部材により係合するように構成してもよい。
また、上記実施形態では、位置決め部同士を係合させるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置決め部に代えて回転角度位置を示すマーク(目印)からなる位置基準部を設け、このマークの位置を基準として減速機の組み付けを行うように構成してもよい。この他、位置基準部として、減速機内部の偏心ギアやクランク軸の回転角度位置を視認可能な窓部を設け、偏心ギアやクランク軸の回転角度位置を直接確認しながら組み付けを行ってもよい。
また、上記実施形態では、たとえばロボット100のL軸に関して、アーム支持部2と、減速機7bのケース71と、減速機7bの出力側部材72と、下腕部3とにそれぞれ位置決め部を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば減速機7bのケース71と、出力側部材72とにのみ、位置決め部を設けてもよい。
また、上記実施形態では、アーム支持部2と、下腕部3との相対的な回転位置が図1に示す状態(下腕部3が直立する状態)で減速機7bの組み付けを行う場合について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アーム支持部2と、下腕部3との相対的な回転位置が所定の位置の場合に、減速機7bの回転角度位置が所定の回転角度位置となるように組み付ければよいので、組み付け時の回転位置はどのような位置にあってもよい。