JP5373357B2 - 常圧カチオン可染性共重合ポリエステル及び繊維 - Google Patents
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Description
すなわち本発明は、主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成される共重合ポリエステルであり、該共重合ポリエステルを構成する酸成分中に、スルホイソフタル酸の金属塩(A)及び下記化学式(I)で表される化合物(B)を、
下記数式(1)及び(2)を同時に満足するように共重合された共重合ポリエステルであり、
3.0≦A+B≦5.0 ・・・(1)
0.2≦B/(A+B)≦0.7 ・・・(2)
[上記数式中、Aは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とするスルホイソフタル酸の金属塩の共重合量(モル%)、Bは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とする上記化学式(I)で表される化合物(B)の共重合量(モル%)を表す。]
チタン化合物と下記化学式(II)で表されるリン化合物
との反応生成物、原子量50以下のアルカリ土類金属元素及びアンチモン元素を、下記数式(3)〜(6)を同時に満足するように含有することを特徴とする共重合ポリエステルであり、当該発明により上記課題を解決することができる。
5≦MALK≦50 ・・・(3)
10≦MSb≦50 ・・・(4)
10≦MTi≦50 ・・・(5)
20≦(MSb+MTi)≦90 ・・・(6)
[上記数式中、MALK,MSb,MTiはそれぞれ、前記共重合ポリエステルを構成する全酸成分の総モル量に対するアルカリ土類金属元素、アンチモン元素、上記のポリエステル製造用触媒として用いるチタン元素の量を示し、単位はミリモル%である。]
本発明に使用される共重合ポリエステルとは、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール成分とを重縮合反応せしめて得られるエチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルであり、共重合成分としてスルホイソフタル酸の金属塩(A)、及び下記化学式(I)で表される化合物(B)を、下記数式(1)及び(2)を同時に満足する状態で含有する共重合ポリエステルである。
3.0≦A+B≦5.0 (1)
0.2≦B/(A+B)≦0.7 (2)
[上記数式中、Aは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とするスルホイソフタル酸の金属塩の共重合量(モル%)、Bは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とする上記化学式(I)で表される化合物(B)の共重合量(モル%)を表す。]
本発明における共重合ポリエステルとはエチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルであり、主たる繰り返し単位とは共重合ポリエステルを構成する全繰り返し単位あたり80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることを指している。他の20モル%以下の範囲内で他の成分が共重合されていても良い。好ましくは90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることである。その他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸を挙げる事ができ、グリコール成分として1,2−プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビス(トリメチレングリコール)、ビス(テトラメチレングリコール)、トリエチレングリコール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジメタノールを挙げる事ができ、これらの1種以上のジカルボン酸と1種以上のグリコール成分を反応させて得られる成分を繰り返し単位として共重合されていても良い。
本発明で使用されるスルホイソフタル酸の金属塩(A)としては、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩)が例示される。必要に応じてこれら化合物のマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩を併用しても良い。また、これらのエステル形成性誘導体も好ましく例示される。エステル形成性誘導体としてはジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル、ジヘキシルエステル、ジオクチルエステル、ジデシルエステル若しくはジフェニルエステル、又は5−スルホイソフタル酸金属塩のジハロゲン化物を挙げる事ができるが、これらの中でもジメチルエステルが好ましい。これらの化合物群の中では、熱安定性、コストなどの面から、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩が好ましく例示され、特に5−ナトリウムスルホイソフタル酸又はそのジメチルエステルである5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルが特に好ましく例示される。これらの条件を満たす化合物である場合に、ポリエステル繊維とした場合の充分なカチオン可染性と充分な繊維強度の両立が可能となる。
また、上記式(I)で表される化合物(B)としては、5−スルホイソフタル酸又はその低級アルキルエステルの4級ホスホニウム塩又は4級アンモニウム塩である。4級ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩としては、リン元素又は窒素元素にアルキル基、ベンジル基又はフェニル基が結合した4級ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩が好ましく、特に4級ホスホニウム塩であることが好ましい。また、4つある置換基は同一であっても異なっていても良い。上記式(I)で表される化合物の具体例としては、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸エチルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラメチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラエチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラブチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラフェニルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩、あるいはこれらイソフタル酸誘導体のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロプルエステル、ジブチルエステル、ジへキシルエステル、ジオクチルエステル、ジデシルエステルが好ましく例示される。これらのイソフタル酸誘導体の中でも、5−スルホイソフタル酸ジメチルテトラブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルベンジルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルテトラフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルテトラメチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルテトラエチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルテトラブチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルベンジルトリメチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラメチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラエチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラブチルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩がより好ましく例示される。これらの条件を満たす化合物である場合に、ポリエステル繊維とした場合の充分なカチオン可染性と充分な繊維強度の両立が可能となる。
本発明において、ポリエステルに共重合させる上記のスルホイソフタル酸の金属塩(A)と上記の化合物(B)の合計は共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準として、(A)成分と(B)成分の和A+Bが3.0〜5.0モル%の範囲である必要がある。3.0モル%より少ないと、常圧下でのカチオン染色では十分な染着を得ることができない。一方、5.0モル%より多くなると、得られるポリエステル糸の強度が低下するため実用に適さない。さらに染料を過剰に消費するため、コスト面でも不利である。このA+Bの値は好ましくは3.2〜4.8モル%であり、より好ましくは3.3〜4.7モル%である。
また、スルホイソフタル酸の金属塩(A)と化合物(B)の成分比は上記のモル%の値にて、B/(A+B)が0.2〜0.7の範囲にある必要がある。0.2以下、つまり成分Aの割合が多い状態では、スルホイソフタル酸金属塩による増粘効果により、得られる共重合ポリエステルの重合度を上げることが困難になる。一方、0.7以上、つまり化合物(B)の割合が多い状態では、重縮合反応が遅くなり、さらに化合物(B)の比率が多くなると熱分解反応が進むため重合度を上げることが困難となる。さらに、化合物(B)の比率多くなると共重合ポリエステルの熱安定性が悪化し、溶融紡糸段階で再溶融した際の熱分解反応による分子量の低下が大きくなるため、得られるポリエステル糸の強度が低下するため、好ましくない。このB/(A+B)の値は好ましくは0.23〜0.65であり、より好ましくは0.25〜0.60である。
本発明の共重合ポリエステルには、チタン化合物と後述の化学式(II)で表されるリン化合物との反応生成物、原子量50以下のアルカリ土類金属元素及びアンチモン元素をそれぞれ所定の数式を満たすように含んでいる必要がある。その中でチタン化合物と後述の化学式(II)で表されるリン化合物との反応生成物、アンチモン元素はポリエステル製造用触媒として共重合ポリエステル中に含有されていることが好ましい。この反応生成物は後述するチタン化合物とリン化合物を混合し、化学反応させる方法により得た化合物をチタン触媒として用いることが好ましい。以下、このようにして得たチタン化合物と化学式(II)で表されるリン化合物との反応生成物を「チタン触媒」と称する。このチタン触媒を得る場合、そのチタン化合物とリン化合物の配合比、反応方法、反応条件などの製造方法が適切でないと、十分に反応が起こらず、多くの未反応のチタン化合物や未反応のリン化合物が存在してしまう。
本発明の共重合ポリエステル中に含有されている原子量50以下のアルカリ土類金属元素としては、マグネシウム元素又はカルシウム元素が含有されていることが好ましい。更に詳細には、その要件を満たすアルカリ土類金属の有機酸及び/又はその水和物、それらの化合物の残留物として含有されていることが好ましく、特に好ましくは、マグネシウム化合物の有機酸及び/又はその水和物として添加され含有されていることである。これらの条件を満たす具体的な化合物として、マグネシウム化合物としては、例えば、酢酸マグネシウム、酪酸マグネシウムなどの有機酸及びその水和物が挙げられるが、特に酢酸マグネシウムの水和物が安価に入手でき、グリコールに対する溶解性も高く、触媒調製などの取扱いが容易であるため、好ましい。これらアルカリ土類金属元素を含む化合物は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。
本発明におけるアンチモン元素からなる触媒及び上記のチタン触媒の添加量は、下記式(4)〜(6)を同時に満足する必要がある。
5≦MALK≦50 ・・・(3)
10≦MSb≦50 ・・・(4)
10≦MTi≦50 ・・・(5)
20≦(MSb+MTi)≦90 ・・・(6)
[上記数式中、MALK,MSb,MTiはそれぞれ、前記共重合ポリエステルを構成する全酸成分の総モル量に対するアルカリ土類金属元素、アンチモン元素、上記のポリエステル製造用触媒として用いるチタン元素の量を示し、単位はミリモル%である。]
本発明におけるアルカリ土類金属元素の含有量は、共重合ポリエステルを構成する全酸成分の総モル量を基準として、5〜50ミリモル%の範囲にあることが必要である。5ミリモル%未満の場合、溶融重合反応速度が不十分であり、所望の重合度に到達させるためには非常に長時間を要し、その結果として共重合ポリエステルの色相が大幅に悪化するという問題がある。また、50ミルモル%よりも多い場合、溶融重合での反応速度は速くなるものの、副反応や分解反応も進行するために得られる共重合ポリエステルの色相が大幅に悪化し、さらに耐熱性が低下し、紡糸工程での再溶融時の分子量低下が大きくなるため、得られる繊維の強度が低くなるなどの問題がある。アルカリ土類金属元素の添加量は、望ましくは6〜30ミリモル%の範囲であり、更に好ましくは7〜20ミリモル%の範囲である。
本発明におけるアンチモン元素の含有量は、共重合ポリエステルを構成する全酸成分の総モル数を基準として、10〜50ミリモル%の範囲にあることが必要である。上述のようポリエステル製造用の触媒として添加されることが通常である。その含有量が10ミリモル%未満の場合は溶融重合反応性が不足し、所定の重合度に到達させることが困難である。50ミリモル%より多い場合、溶融重合反応性は良好であるが、反応段階でアンチモン触媒(主に三酸化二アンチモン[Sb2O3]、必要ならば四酸化アンチモン[Sb2O4]、五酸化アンチモン[Sb2O5]が使われる)が還元され、金属アンチモンとして析出することによる影響が大であり、得られるポリマーの色相が黒くなる。さらに紡糸工程では析出した金属アンチモンが口金部の異物となり、曳糸性が悪化するなどの問題があるため好ましくない。好ましくは含有量が12〜30ミリモル%の範囲であることである。
また、前述のチタン触媒の添加量は、共重合ポリエステルを構成する全酸成分の総モル量を基準として、10〜50ミリモル%の範囲にあることが必要である。10ミリモル%未満の場合は溶融重合反応性が不足し、所定の重合度に到達させることが困難である。50ミリモル%より多い場合、溶融重合反応性は良好であるが、高温での耐熱性が低下し、重合後半での着色が大であり、さらに溶融紡糸工程での分子量低下が大きくなるため、得られる繊維の強度が低くなるなどの問題があり好ましくない。好ましくは含有量が25〜45ミリモル%の範囲であることである。
上記のアンチモン元素からなる触媒並びにチタン触媒は、いずれの場合も重合反応性を所望のレベルまで到達させるためには添加量を増加させる必要がある。一方単独で添加量を増加させると、前述の通り得られる共重合ポリエステルの色相悪化、異物増加などの問題が発生し好ましくない。そこで本発明の共重合ポリエステルでは、アンチモン元素と、チタン化合物と下記化学式(II)で表されるリン化合物の反応生成物由来として含まれるチタン元素の含有量の合計を、共重合ポリエステルを構成する全酸成分の総モル量を基準として20〜90ミリモル%の範囲にする必要がある。20ミリモル%未満の場合は溶融重合反応性が不足し、所望の重合度のポリエステルを得る事ができない。一方、90ミリモル%を越える場合は得られる共重合ポリエステルの色相が悪化、異物量が増大するなどの問題が発生し好ましくない。
上記チタン化合物とリン化合物との反応生成物と、原子量50以下のアルカリ土類金属元素を含む化合物は、重縮合反応時に存在していればよい。このため触媒の添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程又はエステル交換工程、液相重縮合工程等のいずれの工程で行ってもよい。また、触媒全量を一括添加しても、複数回に分けて添加してもよい。更に、反応生成物とアルカリ土類金属も同時に添加しても、別々に添加しても良い。またアンチモン元素を含む化合物は主に重縮合触媒、その他の目的をも果たすので、重縮合反応終了時までに添加・存在していれば良い。
本発明の共重合ポリエステルの固有粘度(溶媒:オルトクロロフェノール、測定温度:35℃)は0.55〜1.00dL/gの範囲であることが好ましい。固有粘度が0.55dL/g以下である場合、得られるポリエステル繊維の強度が不足し、一方、1.00dL/g以上とする場合、溶融粘度が高くなりすぎて溶融成形が困難になるため好ましくなく、また、溶融重合法に引続いて固相重合法により共重合ポリエステルの重縮合工程での生産コストが大幅に増大するため好ましくない。常圧カチオン可染性ポリエステルの固有粘度としては、0.60〜0.90dL/gの範囲が更に好ましい。共重合ポリエステルの固有粘度を0.55〜1.00dL/gの範囲するためには、溶融重合を行う際の最終の重合温度、重合時間を調整したり、溶融重合法のみでは困難な場合には固相重合を行って適宜調整することができる。本発明においては、スルホイソフタル酸の金属塩(A)及び化合物(B)を上記数式(1)及び(2)を満たすようにポリエチレンテレフタレートに対して共重合を行うことで上述のような手法により固有粘度を0.55〜1.00dL/gにすることが可能となる。
本発明における共重合ポリエステル中に含有されるジエチレングリコールは、2.5重量%以下であることが好ましい。より好ましくは2.2重量%以下、更により好ましくは1.85〜2.2重量%である。一般にカチオン可染性ポリエステルを初めとする共重合ポリエステルを製造する際には、ポリエステルの製造工程において副生するジエチレングリコール(DEG)量を抑制するために、DEG抑制剤として少量のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、水酸化テトラアルキルホスホニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアミンなどの少なくとも1種類を、使用するカチオン可染性モノマー(本発明の場合はスルホイソフタル酸の金属塩(A)及び化合物(B)の全モル量)に対して、1〜20モル%程度を添加することが好ましい。この添加量及び重縮合反応の温度、真空度(減圧度)、重縮合時間等を適宜設定する事で上記の含有量にすることができる。
本発明における共重合ポリエステルの製造は特に限定されず、スルホイソフタル酸の金属塩(A)及び化合物(B)を請求項1に記載の条件を満たすように使用することに留意する他は、通常知られているポリエステルの製造方法が用いられる。すなわち、テレフタル酸とエチレングリコールの直接エステル化反応させる、あるいはテレフタル酸ジメチルに代表されるテレフタル酸のエステル形成性誘導体とエチレングリコールとをエステル交換反応させて低重合体を製造する。次いでこの反応生成物を重縮合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることにより製造される。スルホイソフタル酸を含有する芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル誘導体(スルホイソフタル酸の金属塩(A)及び化合物(B))を共重合する方法についても通常知られている製造方法を用いる事ができる。これらの化合物の反応工程への添加時期は、エステル交換反応又はエステル化反応の開始当初から重縮合反応の開始までの任意の時期に添加することができる。他に本発明の共重合ポリエステルの製造に用いるチタン触媒、アルカリ土類金属元素を含む化合物、アンチモン元素を含む化合物の添加時期等については既に説明したとおりである。このような操作を行うことによって本発明の共重合ポリエステルを製造することができる。
また、本発明における共重合ポリエステルは、必要に応じて少量の添加剤、例えば酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤又は艶消し剤などを含んでいても良い。特に酸化防止剤、艶消し剤などは特に好ましく添加される。
本発明における共重合ポリエステルの製糸方法は、特に制限は無く、従来公知の方法が採用される。すなわち、乾燥した共重合ポリエステルを270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の引取り速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られるポリエステル繊維の強度も十分なものであると共に、安定して巻取りを行うこともできる。さらに、上述の方法で得られた未延伸糸若しくは部分延伸糸を、延伸工程にて1.2倍〜6.0倍程度の範囲で延伸することが好ましい。この延伸は未延伸ポリエステル繊維を一旦巻き取ってから行ってもよく、一旦巻き取ることなく連続的に行ってもよい。また、紡糸時に使用する口金の形状についても特に制限は無く、円形、三角形・四角形等の多角形、3以上の多葉形、C型断面、H型断面、X型断面、又はこれらの断面形状に更に中空を有する断面のいずれであってもよい。
乾燥したポリエステルサンプルを走査型電子顕微鏡(日立計測器サービス株式会社製S570型)にセットし、これに連結したエネルギー分散型X線マイクロアナライザー(XMA、株式会社堀場製作所製EMAX−7000)を用いてポリエステル中の各元素の濃度を求めた。
共重合ポリエステル試料を100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ型粘度計を用いて測定した値から求めた。
粒状のポリマーサンプルを160℃×90分乾燥機中で熱処理し、結晶化させた後、カラーマシン社製CM−7500型カラーマシンで測定した。Col−Lは70以上を可、Col−bは15以下を可とした。
ポリマーサンプルをトリフルオロ酢酸/重水素化クロロホルム=1/1混合溶媒に溶解後、日本電子(株)製JEOL A−600 超伝導FT−NMRを用いて核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定して、そのスペクトルパターンから常法に従って、各プロトン量により定量した。特にイソフタル酸骨格由来の水素原子に着目した。また上記のエネルギー分散型X線マイクロアナライザーを用いた測定による硫黄元素含有量、リン元素含有量も参考にした。
ヒドラジンヒドラート(抱水ヒドラジン)を用いてポリエステル試料チップを分解し、この分解生成物中のジエチレングリコールの含有量をガスクロマトグラフィー(ヒューレットパッカード社製(HP6850型))を用いて測定した。
得られたポリエステル繊維を常法に従い丸編みの編み物を作成し、この編み物をCATHILON BLUE CD−FRLH)0.2g/L、CD−FBLH0.2g/L(いずれも保土ヶ谷化学株式会社製のカチオン可染性染料)、硫酸ナトリウム3g/L、酢酸0.3g/Lの染色液中にて100℃で1時間、浴比1:50で染色を行い、次式により染着率を求めた。
染着率=(OD0−OD1)/OD0 ×100
OD0:染色前の染液の576nmの吸光度
OD1:染色後の染液の576nmの吸光度
本発明の実施例では、染着率98%以上のものを可染性良好と判断した。
エチレングリコール525.6重量部とモノブチルホスフェート4.4重量部を入れて混合攪拌した中に、チタンテトラブトキシドのエチレングリコール溶液68.4重量部(チタン元素の濃度で1重量%、酢酸を溶液重量に対して1重量%添加)をゆっくり添加し、徐々に昇温して120℃の温度で1時間攪拌保持したのち、得られた懸濁液を室温まで放冷した(この溶液中でリンとチタンのモル比は2.0であった。以下、この溶液を「TM2触媒液」と略す)。この液100mLを100mLメスシリンダーに採取し24時間静置しても、液中に触媒粒子は浮遊、分散したままで、底部に沈殿・凝結はしなかった。以下、このチタン/リン反応生成物を含む溶液をTM2触媒液と称する。
テレフタル酸ジメチル100重量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル3.0重量部とエチレングリコール60重量部の混合物に、酢酸ナトリウム三水和物0.12重量部、酢酸マグネシウム0.01重量部を攪拌機、精留塔等を備えたエステル交換反応槽に添加し、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールをエステル交換反応槽外に留出させながらエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを留出した時点でエステル交換反応を終了させた。
実施例1において、各触媒組成などを表1の通り変更して共重合ポリエステルを得た。結果を表1に示す。実施例3では酢酸マグネシウムの代わりに酢酸カルシウムを用い、比較例1においてはアルカリ土類金属化合物を用いず、酢酸ナトリウム三水和物のみでエステル交換反応を行った。比較例1、2、5については、反応時間が240分経過しても所定攪拌電力に到達しなかったため反応性不良と判断して反応を打ち切り、実施例1と同様にチップ化し、更に溶融紡糸を行いポリエステル繊維も製造した。結果を表1、表2に示した。
Claims (9)
- 主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成される共重合ポリエステルであり、該共重合ポリエステルを構成する酸成分中に、スルホイソフタル酸の金属塩(A)及び下記化学式(I)で表される化合物(B)を、
下記数式(1)及び(2)を同時に満足するように共重合された共重合ポリエステルであり、
3.0≦A+B≦5.0 ・・・(1)
0.2≦B/(A+B)≦0.7 ・・・(2)
[上記数式中、Aは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とするスルホイソフタル酸の金属塩の共重合量(モル%)、Bは共重合ポリエステルを構成する全酸成分を基準とする上記化学式(I)で表される化合物(B)の共重合量(モル%)を表す。]
チタン化合物と下記化学式(II)で表されるリン化合物
との反応生成物、原子量50以下のアルカリ土類金属元素及びアンチモン元素を、下記数式(3)〜(6)を同時に満足するように含有することを特徴とする共重合ポリエステル。
5≦MALK≦50 ・・・(3)
10≦MSb≦50 ・・・(4)
10≦MTi≦50 ・・・(5)
20≦(MSb+MTi)≦90 ・・・(6)
[上記数式中、MALK,MSb,MTiはそれぞれ、前記共重合ポリエステルを構成する全酸成分の総モル量に対するアルカリ土類金属元素、アンチモン元素、上記のポリエステル製造用触媒として用いるチタン元素の量を示し、単位はミリモル%である。] - アルカリ土類金属がマグネシウム、カルシウムであることを特徴とする請求項1記載の共重合ポリエステル。
- チタン化合物がチタンテトラアルコキシドであることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項記載の共重合ポリエステル。
- チタン化合物とリン化合物とのモル比(P/Ti)が1.5〜3.0の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の共重合ポリエステル。
- 該共重合ポリエステルの固有粘度が0.55〜1.00dL/gの範囲である請求項1〜4のいずれか1項記載の共重合ポリエステル。
- 該共重合ポリエステル中のジエチレングリコール含有量が2.5重量%以下である請求項1〜5のいずれか1項記載の共重合ポリエステル。
- スルホイソフタル酸の金属塩が、5−ナトリウムスルホイソフタル酸である請求項1〜6のいずれか1項記載の共重合ポリエステル。
- 上記化合物(B)が、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩である請求項1〜7のいずれか1項記載の共重合ポリエステル。
- 請求項1〜8のいずれか1項記載の共重合ポリエステルを溶融紡糸して得られる共重合ポリエステル繊維。
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