JP5370446B2 - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明はポリカーボネート樹脂組成物に関する。更に詳しくは、環境汚染の原因となる臭素、塩素などを含む難燃剤又は燐系難燃剤を含有することなく、良好な難燃性を発揮し、且つ機械的強度に優れたポリカーボネート樹脂組成物に関する。
ポリカーボネート樹脂は、自動車分野、OA機器分野、電気・電子分野をはじめ工業的に広く利用されているが、OA機器、家電製品等の用途を中心に、使用する樹脂材料の難燃化の要望が強く、これらの要望に応えるために多数の難燃剤が開発検討されている。従来、ポリカーボネート樹脂の難燃化には、専ら臭素系化合物が使用され、あるいはこれに三酸化アンチモンが併用されている。しかしこのような樹脂組成物は、燃焼時に臭素ガスを発生し、環境汚染を惹起することが問題となっている。近年、臭素系化合物の使用量の減少を目的として、燐酸エステル等の燐系難燃剤を臭素化合物と併用あるいは単独で使用することが報告されているが、燐系難燃剤は、使用時に分解して、樹脂組成物の機械的強度を低下させるという欠点があり、また、環境汚染問題を完全に解消するものでもない。また、非燐系難燃材料として、特開昭51−45159号公報に芳香族ポリカーボネートに、スルホン酸塩等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の有機酸塩とポリテトラフルオロエチレンとを添加した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。また、樹脂に無機充填材を配合して機械的強度を向上させた組成物も知られている。しかしながら、近年の電気・電子分野で要求されている厳しい難燃レベルと機械的強度を充分満たす強化樹脂材料は、未だ報告されていない。
特開昭51−45159号公報
本発明の課題は、環境汚染や性能劣化をもたらす臭素系や燐系の難燃剤を使用することなく、これらの難燃剤を使用した場合と同等の厳しい難燃レベルを満たすことが出来、しかも耐衝撃性、耐熱性、成形加工性等に優れた強化難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、検討を重ね、芳香族ポリカーボネート樹脂に、特定量の有機スルホン酸金属塩、無機充填材を配合した組成物が所望の性能を有することを知り本発明を達成した。すなわち本発明の要旨は、(A)粘度平均分子量が15,000〜30,000の範囲である芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(B)ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク及び炭素繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる無機充填材1〜150重量部及び(C)有機スルホン酸金属塩0.01〜5重量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物であって、(B)無機充填材が、(B−1)ガラス繊維のチョップドストランド(CS)および(B−2)ガラス繊維のミルドファイバー(MF)からなり、CS/MFの重量比が5/95〜95/5である、或いは、(B−1)ガラス繊維のチョップドストランド(CS)および(B−3)ガラスフレーク(GFL)またはガラスビーズ(GB)からなり、CS/GFL(GB)の重量比が5/95〜95/5であり、樹脂組成物中の無機充填材の長さ(L)と直径(D)の比(L/D)が5〜40であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物に存する。本発明はまた、上記ポリカーボネート樹脂組成物に、(D)芳香族ポリカーボネートオリゴマー及び/又は(E)フッ化ポリオレフィンを配合してなる組成物にも関する。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、非リン及び非臭素系の難燃剤を用いた強化難燃材料であり、機械的強度、耐熱性及び厳しい難燃レベルを満たしている。また、成形品外観や滞留熱安定性にも優れ、各種用途、特に電気電子用途や精密部品用途に最適である。
以下、本発明につき詳細に説明する。本発明に使用される(A)芳香族ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物あるいは芳香族ジヒドロキシ化合物と少量のポリヒドロキシ化合物との混合物を、ホスゲンあるいは炭酸ジエステルと反応させることによって調製される分岐していても良い熱可塑性芳香族ポリカーボネートのホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。芳香族ポリカーボネート樹脂を調製するための重合法としては、界面重縮合法(ホスゲネーション法)、溶融重合法(エステル交換法)等の方法を採用することが出来る。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール及び4,4’−ジヒドロキシジフェニル等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、好ましくはビスフェノールAである。分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ヘプテン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン及び1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール又は5−ブロモイサチンビスフェノールなどを前記芳香族ジヒドロキシ化合物と一緒に用いればよく、これら化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物及びポリヒドロキシ化合物の全量に対して0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価芳香族ヒドロキシ化合物をm−又はp−メチルフェノール、m−またはp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール又は長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる、芳香族ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂又は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。更に、樹脂はシロキサン構造を有するポリマーでもよく、例えば、難燃性を高める目的でシロキサン構造を有するオリゴマーを共重合することが出来る。芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、15,000〜30,000であり、好ましくは16,000〜28,000である。
本発明組成物に使用されるポリカーボネート樹脂が、溶融重合法で製造された樹脂の場合、温度250℃、角速度10rad/sの条件で測定した損失角δ及び複素粘性率η*(Pa・s)が下記関係式(1)を満たすことが好ましく、より好ましくは下記関係式(2)の範囲であり、更に好ましくは下記関係式(3)の範囲である。本発明において、該Tanδ/η*-0.87の値は、ポリカーボネート樹脂の溶融粘弾性を示すパラメーターとして使用した。
Figure 0005370446
本発明組成物に使用される(B)無機充填材としては、樹脂材料の機械的強度向上や寸法安定性向上を目的として使用される公知の各種無機充填材を用いることが出来る。一例を挙げれば、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ等のガラス系フィラー;炭素繊維;タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム等の粘土鉱物;チタン酸カリウムやホウ酸アルミニウムのウイスカー;金属繊維等が挙げられる。これらの中でもガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭素繊維を用い、これらは1種又は2種以上を混合して用いることもできる。無機充填材の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、1〜150重量部であり、好ましくは5〜120重量部、とりわけ好ましくは9〜100重量部である。無機充填材の配合量が1重量部未満では補強効果が不十分であり、150重量部を超えると成形性、難燃性に難が生じる。
本発明で使用するガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス等のガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)がポリカーボネートに悪影響を及ぼさない点で好ましい。また断面の形状は、一般的な真円状の他に、真円状の繊維を平行に重ね合わせたものに代表される各種の異形断面形状のものを使用しても良い。かかるガラス繊維は、平均繊維径が1〜25μm、好ましくは5〜17μmである。平均繊維径が1μm未満のガラス繊維を使用したのでは、成形加工性が損なわれ、平均繊維径が25μmより大きいガラス繊維を使用したのでは、外観が損なわれ、補強効果も十分ではない。かかるガラス繊維は、連続的に巻き取った「ガラスロービング」や長さ1〜10mmに切りそろえた「チョップドストランド」、長さ10〜500μm程度に粉砕した「ミルドファイバー」を用いることができ、これらを併用することもできる。ガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。また、ガラスビーズとは、外径10〜100μmの球状のものであり、例えば、東芝バロティーニ社より、商品名「EGB731」として市販されており、容易に入手可能である。ガラスフレークとは、厚さ1〜20μm、一辺の長さ0.05〜1.0mmの鱗片状のものであり、例えば、日本板硝子社より、「フレカ」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。また、これらガラス系充填材は、本発明の組成物の特性を損なわない限りにおいて、樹脂との親和性を増すために、表面処理、例えばシラン処理、エポキシ処理、ウレタン処理、酸化処理等が施されていても良い。
本発明で使用する炭素繊維としては、一般にアクリル繊維、石油又は石炭系特殊ピッチ、セルロース繊維、リグニン等を原料として焼成によって製造されたものが挙げられ、耐炎質、炭素質又は黒鉛質等の種々のタイプのものがあるが、特に基材を問わない。更に、炭素繊維の導電性を改善するために表面に金属コートした炭素繊維を用いても良い。炭素繊維の表面コートに用いられる金属は、銅、ニッケル、銀、コバルト、アルミニウム、鉄等の1種以上の金属であり、金属コートの方法は公知の蒸着法やメッキ法等がある。炭素繊維の表面は、本発明組成物の特性を損なわない限りにおいて、樹脂との親和性を増すために表面処理、例えばシラン処理、エポキシ処理、ウレタン処理、酸化処理等が施されていても良い。このような炭素繊維としては、例えば、三菱化学(株)より「ダイアリード」、東邦レーヨン(株)より「ベスファイト」と言う商品名で市販されている。
(B)無機充填材、特にガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭素繊維は、本発明組成物中の長さ(L)と直径(D)の比が、5≦L/D≦40であり、好ましくは7≦L/D≦35であり、とりわけ好ましくは9≦L/D≦30である。L/Dが5未満では補強効果が少なく、L/Dが40を超えると燃焼性が悪化する傾向がある。L/Dを上記範囲に調整するには、例えば以下に示すいくつかの方法を採ることができるが、もちろん、以下の方法に限定されるものではない。
1.長さが1〜6mm程度にカットされたガラス繊維や炭素繊維のチョップドストランド(CS)と、長さが10〜500μm、好ましくは20〜200μmに粉砕されたガラス繊維や炭素繊維のミルドファイバー(MF)を併用する。CS/MFは重量比で5/95〜95/5が好ましい。
2.チョップドストランドのみを用いるが、混練強度の調整により樹脂組成物中で所望のL/Dを得る。具体的には、2軸押出機を用いて繊維フィード後のニーディング部における剪断速度が100〜1,000sec-1の条件で混練を行う。
3.長さが1〜6mm程度にカットされたガラス繊維や炭素繊維のチョップドストランドとガラスフレーク(GFL)またはガラスビーズ(GB)を併用する。CS/GFL(GB)は重量比で5/95〜95/5が好ましい。
本発明組成物中のL/Dは、以下の手順で測定することができる。
1.組成物を600〜700℃で燃焼、またはメチレンクロライドに溶解させ樹脂分を取り除き、充填材を単離する。
2.取り出した充填材をガラス上に極力重ならない様に広げ、光学顕微鏡にて40〜100倍で観察、撮影を行う。
3.得られた写真から、繊維の場合は長さと直径を、ビーズの場合は長径と短径を、フレークの場合は長辺と短辺を、ノギスにて測定しL/Dを求める。本発明では、1,000個の測定を行い加算平均を求めた。
尚、本発明では、ガラスビーズのL/Dは、ビーズの長径を短径で除した値であり、ガラスフレークのL/Dとは長辺を短辺で除した値である。
本発明で用いる(C)有機スルホン酸金属塩としては、好ましくは脂肪族スルホン酸金属塩および芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩を構成する金属としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩は、2種以上の塩を混合して使用することもできる。本発明は以下の理論に拘束されることはないが、これら有機スルホン酸金属塩は、芳香族ポリカーボネート樹脂の燃焼時に不燃ガス(二酸化炭素)を発生し、同時に分解・ゲル化による炭化層の生成を促進すると考えられる。
本発明で用いる(C)脂肪族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩が挙げられる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ金属塩、フルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜8のフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウム、およびパーフルオロブタン−スルホン酸のテトラエチルアンモニウム塩などが挙げられる。
芳香族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、芳香族スルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホン酸アルカリ土類金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられ、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩は重合体であってもよい。芳香族スルホン酸金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
有機スルホン酸金属塩の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部である。有機スルホン酸金属塩の配合量が0.01重量部未満であると充分な難燃性が得られにくく、5重量部を越えると熱安定性が低下しやすい。有機スルホン酸金属塩の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.02〜3重量部であり、より好ましくは0.03〜2重量部である。
所定量の(A)芳香族ポリカーボネート、(B)無機充填材及び(C)有機スルホン酸金属塩を配合してなる本発明の樹脂組成物から製造される成形物は、燃焼性、耐衝撃性等に優れているが、強化樹脂材料特有の外観不良(無機充填材の浮き)が生じ易い。かかる外観不良を抑えるためには、本発明組成物に更に(D)ポリカーボネートオリゴマーを配合することが好ましい。かかる(D)ポリカーボネートオリゴマーとしては、下記一般式(II)で示される繰り返し単位を有し、粘度平均分子量が1,000〜10,000のものが好ましく、2,000〜8,000のものがより好ましい。分子量が1,000未満では機械的強度が低下し、10,000を越えると外観の改良効果が小さい。
Figure 0005370446
(式(II)中、R1,R2,R3,R4は、それぞれ同一であっても異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を示す。Xは、炭素数1〜5の置換あるいは非置換のアルキレン基またはアルキリデン基、酸素原子、イオウ原子またはスルホニル基を示す。)。
本発明で使用される(D)芳香族ポリカーボネートオリゴマーは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパンで代表的に例示される芳香族二価フェノール系化合物とホスゲンで代表されるカーボネート前駆体との反応や、芳香族二価フェノールとジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応によって得られ、芳香族二価フェノール系化合物は単独で用いても混合して用いてもよい。芳香族ポリカーボネートオリゴマーの重合度の調整は、ホスゲンを用いる界面重合法では、フェノール及び/又はアルキル置換フェノールを重合系に添加して、末端封止すれば良い。ポリカーボネートオリゴマーの配合量は、配合する(B)無機充填材の種類や物性により異なるが、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、1〜50重量部であり、好ましくは2〜30重量部、とりわけ好ましくは4〜20重量部である。ポリカーボネートオリゴマーの配合量が50重量部を越えると、強度や耐熱性が不満足である。
更に本発明組成物は、滴下防止性を付与するため、(E)フッ化ポリオレフィンを配合することが好ましい。使用されるフッ化ポリオレフィンとしては、ポリオレフィンの水素原子の全てあるいは大部分がフッ素原子によって置換された構造の重合体であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレンと六フッ化プロピレンとの共重合体などが挙げられ、好ましくはポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。ポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン、即ち、重合体同士を結合して繊維状構造を形成する傾向を示すポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類され、燃焼時の滴下を防止する。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)より、テフロン6Jまたはテフロン30Jとして、あるいはダイキン化学工業(株)よりポリフロンとして市販されている(テフロンおよびポリフロンは商品名である)。フッ化ポリオレフィンの配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し5重量部を超えない量であるが、充分な滴下防止効果を得るためには、0.01〜5重量部であり、好ましくは0.02〜3重量部であり、より好ましくは0.05〜2重量部である。フッ化ポリオレフィンの配合量が0.01重量部未満であると滴下防止効果が低く難燃性が不十分となる傾向があり、5重量部を越えると押出し性、成形性が損なわれる傾向がある。
本発明組成物では、特に耐熱安定性が求められる場合には、(F)リン系熱安定剤を添加することが好ましい。リン系熱安定剤としては、公知の物を用いることができ、例えば旭電化社よりPEP−36、2112といった商品名で販売されているフォスファイト系の安定剤やリン酸系の安定剤を用いることができるが、下記一般式(I)式で表される化合物が特に好ましい。
Figure 0005370446
(式中、Rは炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基を表し、nは0〜3の整数を表す。)。具体的には、例えば旭電化社製のAX71等が挙げられる。リン系熱安定剤の添加量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜2重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜1.5重量部、とりわけ好ましくは0.02〜1重量部である。リン系熱安定剤が0.01重量部未満では耐熱安定性の改良効果が十分ではなく、2重量部を越えるとガスの発生等があり好ましくない。このような少量の配合では、難燃剤として用いられるリン系化合物によって惹起された機械的強度低下の畏れはない。
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、所望の物性を得るため、必要に応じて、その性能を著しく損なわない範囲で他の追加成分を配合してもよい。他の追加成分としては、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤等の安定剤、顔料、染料、滑剤、その他難燃剤、離型剤、摺動性改良剤等の添加剤、エラストマーなどを配合することができる。本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、また、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合することができる。芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂の種類および配合量は、成形性、耐薬品性等の性能を向上するなどの目的で、適宜選択できる。芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン及び/又HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)との混合樹脂などが挙げられる。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、HIPS、AS樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル系樹脂、HIPS、ABS樹脂などが挙げられる。芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂の配合量は、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量の50重量%未満であり、より好ましくは40重量%以下であり、最も好ましくは30重量%以下である。
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を調製する方法は特に制限はなく、例えば、全成分を一緒に溶融混練する方法、無機充填材をサイドフィードする方法などが挙げられる。本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形、押出成形などの各種成形方法により種々の成形品に成形することができる。特に、本発明の樹脂組成物は、従来のブロム系難燃剤含有組成物、あるいはリン酸エステル難燃剤含有組成物と比較して、成形加工時の熱安定性が大幅に改善されている。最近の製品の薄肉化により、より厳しい成形条件が求められているが、その様な条件下でもシルバーストリーク、パール光沢等の外観不良或いは物性の低下が抑制されている。従って、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、軽量化、小型化が求められている電子情報機器の部品などの用途に特に好適に使用される。なお、本発明樹脂組成物は、難燃剤等としてフッ素含有物を使用するが、ブロム系難燃剤に比し、使用量が少なく、環境に対する影響が小さい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を意図するものに過ぎない。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されることはない。なお、実施例および比較例においては次に記載の原材料を用いた。
(1)ポリカーボネート樹脂:ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート、商品名:ユーピロン(登録商標)S−3000、粘度平均分子量21,500、三菱エンジニアリングプラスチックス社製。(以下、「PC樹脂」と称する。)。
(2)ポリカーボネートオリゴマー:商品名AL071、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、粘度平均分子量5,000。
(3)無機充填材−1:ガラス繊維、直径13μm、長さ3mmのチョップドストランド。(以下、CSと略記する。)。
(4)無機充填材−2:ガラス繊維、直径10μm、長さ70μmのミルドファイバー。(以下、MFと略記する。)
(5)無機充填材−3:ガラスフレーク、平均径600μm。(以下、GFLと略記する。)。
(6)無機充填材−4:炭素繊維、直径7μm、長さ6mmのチョップドストランド。(以下、CFと略記する。)。
(7)有機スルホン酸金属塩:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、商品名:メガファックF114(大日本インキ社製)。
(8)リン系難燃剤:トリフェニルフォスフェート、大八化学社製。(以下、TPPと略記する。)。
(9)ポリテトラフルオロエチレン:商品名:ポリフロンF−201L、ダイキン社製。(以下、「PTFE」と略記する。)。
(10)リン系熱安定剤:商品名:AX71、旭電化社製。(下記構造を有し、m=1〜3のものの混合物)。
Figure 0005370446
実施例1〜及び比較例1〜
表−1または表−2に示す配合処方で各成分を配合し、単軸押出機VS−40(田辺プラスチック社製)によりバレル温度300℃で混練、ペレット化した。得られたペレットを120℃、5時間乾燥した後、住友重機械工業製、サイキャップM−2、型締め力75Tを用いて、シリンダー温度:300℃,金型温度:100℃の条件でサイクル1minにて各種試験片の射出成形を行い、得られた成形サンプルを用いて以下の評価を行ない、結果を表−1または表−2に示した。
実施例及び
二軸押出機TEX−30(日本製鋼所社製)を用いて、表−1または表−2に示す配合成分の内、無機充填材を除く成分を第一フィード口から、無機充填材を第二フィード口から供給し、バレル温度280℃、無機充填材フィード後の剪断速度200sec-1の条件で混練、ペレット化し、以下、実施例1と同様に成形、評価を行った。結果を表−1及び表−2に示した
成形物の評価
(1)曲げ弾性率;ISO 178による曲げ試験法に従い、三点曲げ試験を行った。
(2)熱変形温度;ISO 75に従い、1.80MPaでの熱変形温度を測定した。
(3)燃焼性;UL94垂直燃焼性試験に従い、1.6mm厚みの燃焼性試験を行った。
(4)外観;住友重機械工業製、サイキャップM−2、型締め力75Tを用いて、シリンダー温度:300℃,金型温度:100℃の条件で、80mm×40mm×3.2mmtのプレートを成形し、プレートを目視にて観察し、下記基準に基づき判断した。
〇;良好
△;若干無機充填材の浮きが見られる
×;無機充填材の浮きが激しい
(5)滞留熱安定性;ペレットを120℃、5時間乾燥した後、住友重機械工業製、サイキャップM−2、型締め力75Tを用いて、シリンダー温度:320℃,金型温度:100℃の条件でサイクル5minにて試験片の射出成形を行い(滞留成形)、成形品の分子量を測定する。同時に上記(1)の成形(通常成形)で得られた成形品の分子量を測定し、下記により求めた分子量低下値で表示した。この値が小さいほど、滞留熱安定性が良好となる。
Figure 0005370446
(6)無機充填材のL/D;ペレットをメチレンクロライドで溶解、濾過し、無機充填材を単離する。得られた無機充填材をガラス上に極力重ならないように広げ、光学顕微鏡にて40倍で観察、撮影を行う。得られた写真から、繊維の場合は長さと直径を、フレークの場合は長辺と短辺を、ノギスにてn=1000で測定し加算平均のL/Dを求めた。
Figure 0005370446
Figure 0005370446

Claims (6)

  1. (A)粘度平均分子量が15,000〜30,000の範囲である芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(B)ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク及び炭素繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる無機充填材1〜150重量部及び(C)有機スルホン酸金属塩0.01〜5重量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物であって、(B)無機充填材が、(B−1)ガラス繊維のチョップドストランド(CS)および(B−2)ガラス繊維のミルドファイバー(MF)からなり、CS/MFの重量比が5/95〜95/5であり、樹脂組成物中の無機充填材の長さ(L)と直径(D)の比(L/D)が5〜40であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. (A)粘度平均分子量が15,000〜30,000の範囲である芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(B)ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク及び炭素繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる無機充填材1〜150重量部及び(C)有機スルホン酸金属塩0.01〜5重量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物であって、(B)無機充填材が、(B−1)ガラス繊維のチョップドストランド(CS)および(B−3)ガラスフレーク(GFL)またはガラスビーズ(GB)からなり、CS/GFL(GB)の重量比が5/95〜95/5であり、樹脂組成物中の無機充填材の長さ(L)と直径(D)の比(L/D)が5〜40であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  3. (C)有機スルホン酸金属塩が、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物に、(D)粘度平均分子量が1,000〜10,000である芳香族ポリカーボネートオリゴマー1〜50重量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物に、(E)フッ化ポリオレフィン0.01〜5重量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物に、(F)下記一般式(I)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種の燐系熱安定剤を0.01〜2重量部配合してなるポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 0005370446
    {式(I)中、Rは炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基を表し、nは0〜3の整数を表す。}
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