JP5369584B2 - 耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2に記載された技術では、長時間の拡散熱処理、二相温度域での加熱、冷却処理等、製造工程が複雑となり、能率面など工業的製造においては問題を残していた。
なお、本発明が目的とする厚鋼材は、耐疲労き裂発生特性に優れるとともに、構造物用鋼材として、引張強さTS:490MPa以上の強度と、シャルピー衝撃試験(JIS Z 2242の規定に準拠)の破面遷移温度vTrsが0℃以下の高靭性を有するものとする。
まず、本発明者らが行った、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
種々の組成および製造方法で作成した種々の鋼材について、JIS Z 2273の規定に準拠して、大気中、応力比:0.1で、周波数:10Hzとするsine波形の応力を負荷する高サイクル疲労試験を実施した。そして、疲労試験における、繰返し回数が200万回で破断しなかった最大の応力振幅での最大応力σWmaxを疲労強度(200万回疲労強度)として求め、得られた疲労強度σWmaxと、静的引張試験時の0.2%耐力σ0.2との比、σWmax/σ0.2を算出した。また、使用した鋼材について、組織を観察して、軟質相の平均粒径d(μm)を測定するとともに、硬質相および軟質相のビッカース硬さをそれぞれ測定し、硬質相と軟質相との硬さ差ΔHVを算出した。
図1から、(ΔHV)2/dが400以上となる場合に、σWmax/σ0.2が0.8以上となり、耐疲労き裂発生特性が向上することがわかる。
このような組織は、圧延後の冷却条件までを考慮した適正な熱間圧延と、二相温度域への再加熱処理とを組み合わせることにより、確保できることを新規に見出した。
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)質量%で、C:0.02〜0.5%、Si:0.01〜0.55%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.2%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.1%以下、T.N:0.005%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、板厚の1/4位置の組織が、JIS G 0551(2005)の規定に準拠した線分法を用いて測定した軟質相と硬質相の境界数Bshと全境界数Btとの比、Bsh/Btの最大値が0.75以上である硬質相からなる基地中に軟質相が分散した組織で、かつ該軟質相の平均粒径d(μm)と前記硬質相のビッカース硬さと前記軟質相のビッカース硬さとの差ΔHVとが次(1)式
(ΔHV)2/d ≧ 400 ‥‥‥(1)
(ここで、ΔHV:硬質相のビッカース硬さと軟質相のビッカース硬さとの差、d:軟質相の平均粒径d(μm))
を満足する組織であることを特徴とする耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼材。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.01〜10.0%を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼材。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする厚鋼材。
(5)質量%で、C:0.02〜0.5%、Si:0.01〜0.55%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.2%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.1%以下、T.N:0.005%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材に、溶体化処理工程、熱間圧延工程、再加熱処理工程を順次施して、厚鋼材とする厚鋼材の製造方法であって、前記溶体化処理工程を、溶体化温度T(K)と溶体化処理時間t(s)とが次(2)式
t ≧ X2/exp(−24438/T)‥‥‥(2)
(ここで、t:溶体化処理時間(s)、X:(鋼素材の肉厚(m))/2、T:溶体化処理温度(K))
を満足する溶体化処理を施す工程とし、前記熱間圧延工程が、前記鋼素材に(Ac3変態点+100℃)以上の温度に再加熱し、Ac3変態点を超える温度域における累積圧下率が50%以上となる熱間圧延を施し、厚鋼材とした後、Ms点以下の温度まで空冷する工程であり、
前記再加熱処理工程が、前記熱間圧延工程を経た厚鋼材に、Ac1変態点以上Ac3変態点未満の温度域の温度まで再加熱し、ついで、10℃/s以上の冷却速度でMs点以下の温度まで冷却する再加熱冷却処理を施す工程であることを特徴とする耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材の製造方法。
(6)(5)において、前記再加熱処理工程を経た前記厚鋼材に、さらにAc1変態点未満の温度で焼戻する焼戻工程を施すことを特徴とする厚鋼材の製造方法。
(7)(5)または(6)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼材の製造方法。
(8)(5)ないし(7)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.01〜10.0%を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼材の製造方法。
(9)(5)ないし(8)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする厚鋼材の製造方法。
本発明で使用する鋼素材の製造方法は、とくに限定する必要はないが、溶鋼を、転炉等の常用の溶製法で溶製し、所定の組成に調整したのち、さらに連続鋳造法等の常用の鋳造方法でスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。
C:0.02〜0.5%
Cは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、本発明ではとくに硬質相の強度増加に寄与し、疲労強度を顕著に増加させる作用を有する。このような効果を得るためには、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.5%を超えて含有すると、延性や曲げ加工性を低下させるとともに、溶接性が低下する。このため、Cは0.02〜0.5%の範囲に限定した。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶して鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.55%を超える含有は、靭性を低下させるとともに、溶接性を低下させる。このため、Siは0.01〜0.55%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.05〜0.45%である。
Mnは、焼入れ性の向上を介し、鋼の強度を増加させるとともに、靭性を向上させる作用を有する。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Mnは0.1〜3.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.5%以上である。
Pは、耐候性を向上させる元素であるが、Pの多量含有は、靭性の劣化に繋がるため、できるだけ低減することが望ましいが、0.2%までは許容できる。このため、Pは、0.2%以下に限定した。なお、好ましくは0.1%以下である。
S:0.05%以下
Sは、鋼中では、介在物として存在し延性、靭性等を劣化させるため、できるだけ低減することが望ましいが、0.05%までは許容できる。このようなことから、Sは0.05%を上限とした。なお、好ましくは0.03%以下である。
Alは、脱酸剤として作用するとともに、結晶粒の微細化にも寄与する元素であるが、0.1%を超える過剰の含有は、靭性の低下に繋がる。このため、Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.05%以下である。
T.N:0.005%以下
T.N(全N量)は、Cと同様に、固溶強化により鋼の強度を増加させる元素であるが、過剰な含有は靭性の低下を招くため、本発明ではT.Nは0.005%以下に限定した。
Cu、Cr、Mo、Nb、V、Ti、Bはいずれも、強度を増加させる作用を有する元素であり、必要に応じて、選択して含有できる。
Cuは、固溶強化を介して鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を確保するためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超える含有は、溶接性が低下するとともに、鋼材製造時に疵が生じやすくなる。このため、含有する場合には、Cuは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.01〜1.0%である。
Moは、焼入れ性の向上や焼戻軟化抵抗の増加を介して鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果は、0.01%以上の含有で認められる。一方、2.0%を超える含有は、溶接性と靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Moは0.01〜2.0%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.01〜1.0%である。
Vは、焼戻時に炭化物として析出し、析出強化を介して鋼の強度を増加させる元素である。また、Vは、圧延・焼入れ時のオーステナイト粒を細粒化する作用も有するが、0.1%を超える含有は、靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Vは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05%以下である。
Ni:0.01〜10.0%
Niは、低温靭性を向上させる作用を有するとともに、Cu含有時にCuによる熱間脆性の発生を防止する作用を有する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果は0.01%以上の含有で認められるが、10.0%を超える含有は、鋼材コストの高騰を招くとともに、溶接性が低下する。このため、Niは含有する場合には0.01〜10.0%に限定することが好ましい。
Ca、REMはいずれも、溶接熱影響部靭性を向上させる元素であり、必要に応じて選択して1種または2種を含有できる。
Caは、溶接熱影響部靭性を向上させる元素であるが、0.01%を超える含有は、CaS介在物が増加し靭性を低下させる悪影響を及ぼす。このため、含有する場合は0.01%以下に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
疲労き裂の発生箇所は予測できないため、とくに厚鋼材の組織の異方性がないことが望ましい。そのため、本発明では、まず鋼素材に溶体化処理工程を施す。
溶体化処理工程は、鋼素材(スラブ)の成分偏析を少なくするために行うもので、本発明では、成分元素の拡散現象が生じる1173K(900℃)以上の溶体化処理温度で行うものとする。そして、さらに、本発明の溶体化処理工程では、溶体化処理温度T(K)と溶体化処理時間t(s)とが次(2)式
t ≧ X2/exp(−24438/T)‥‥‥(2)
(ここで、t:溶体化処理時間(s)、X:(鋼素材の肉厚(m))/2、T:溶体化処理温度(K))
を満足する処理とする。これにより、組織の異方性がなくなり、ほぼ等方的な組織を有する厚鋼材(製品)を得ることができる。溶体化処理温度T(K)と溶体化処理時間t(s)とが(2)式を満足しない場合には、十分な溶体化処理とはならず、最終的に得られる厚鋼板の組織の異方性をなくすことができない。成分元素の拡散距離は、処理温度と処理時間とによって変化するが、溶体化処理する鋼素材厚2X(m)と溶体化処理温度T(K)が決まれば、必要な溶体化処理時間は(2)式から導き出すことができる。なお、溶体化処理の加熱方法、冷却方法は、加熱途中、冷却途中での割れ等の発生がなければよく、とくに限定されない。なお、溶体化処理温度からの冷却は、炉冷、空冷等が例示される。
熱間圧延工程では、鋼素材を(Ac3変態点+100℃)以上の温度に再加熱し、Ac3変態点を超える温度域における累積圧下率が50%以上となる熱間圧延を施して厚鋼材とした後、Ms点以下の温度まで空冷する。熱間圧延のための再加熱温度が、(Ac3変態点+100℃)未満では、鋼素材に、所望の累積圧下率を付与する熱間圧延を施すことができなくなる。また、Ac3変態点を超える温度域における累積圧下率が50%未満では、所望の強度、靭性を確保できなくなる。このため、鋼素材に施す熱間圧延は、(Ac3変態点+100℃)以上の温度に再加熱し、Ac3変態点を超える温度域における累積圧下率が50%以上となる熱間圧延とすることが好ましい。
Ac3変態点(℃)=854−180C+44Si−14Mn−17.8Ni−1.7Cr、
ここで、C、Si、Mn、Ni、Crは各元素の含有量(質量%)である。
熱間圧延工程では、上記した熱間圧延後、Ms点以下の温度まで空冷する。これにより、フェライトに代表される軟質相中にパーライトに代表される硬質相が分散した組織を有する厚鋼材となる。
再加熱処理工程では、熱間圧延工程を経た厚鋼材に、Ac3変態点未満Ac1変態点以上の温度域(二相温度域)の温度まで再加熱し、ついで、10℃/s以上の冷却速度でMs点以下の温度まで冷却する再加熱冷却処理を施す。
軟質相中に硬質相が分散した組織を有する厚鋼材を、二相温度域の温度に加熱することにより、硬質相部分や、軟質相界面が順次オーステナイトに変態する。なお、二相温度域への加熱速度は、オーステナイトに変態しない硬質相の過度の軟化防止の観点から、0.01℃/s以上とすることが好ましい。
Ac1変態点(℃)=723−14Mn+22Si−14.4Ni+23.3Cr、
Ms点(℃)=517−300C−33Mn−22Cr−17Ni−11Mo−11Si
(ここで、C、Si、Mn、Ni、Cr、Moは各元素の含有量(質量%))
なお、本発明では、上記した再加熱処理工程後にさらに焼戻工程を行ってもよい。
上記した本発明の製造方法で得られた厚鋼材は、上記した組成を有し、さらに板厚の1/4位置の組織が、硬質相からなる基地中に軟質相が分散した組織を有する。ここでいう「硬質相」とは、ベイナイト、焼戻ベイナイト、焼戻マルテンサイト、マルテンサイトのうちの1種または2種以上をいうものとする。また、軟質相は、フェライト、ベイナイト、焼戻ベイナイトのうちの1種または2種以上をいうものとする。
(ΔHV)2/d ≧ 400 ‥‥‥(1)
(ここで、ΔHV:硬質相のビッカース硬さと前記軟質相のビッカース硬さとの差、d:軟質相の平均粒径d(μm))
を満足する組織である。
また、本発明では、上記した板厚の1/4位置以外の組織は、とくに限定されないが、溶体化処理を施すことにより、板厚方向でほぼ均質な組織となっている。
(1)組織観察
得られた厚鋼板から、少なくとも板厚の1/4位置を含むように組織観察用試験片を採取した。そして、組織観察用試験片の、圧延方向に平行な断面を観察面として鏡面研磨し、3%ナイタール腐食液によりエッチングし、板厚の1/4位置について金属組織を観察し、組織の同定を行った。なお、金属組織の観察は、光学顕微鏡(倍率:50〜400倍)を用いて、ランダムに視野数:20視野で行った。そして、各視野で、JIS G 0551(2005)の規定に準拠した線分法(切断法)を用いて、軟質相の粒径dを圧延方向と板厚方向についてそれぞれ測定し、それらの平均値を該厚鋼板の各視野における粒径とし、これら各視野における値の算術平均をその厚鋼板の軟質相の平均粒径dとした。
得られた厚鋼板から、板厚の1/4位置を含むように硬さ測定用試験片を採取した。硬さ測定用試験片の、圧延方向に平行な断面を測定面として鏡面研磨し、ビッカース硬さ計を用いて、板厚の1/4位置における硬質相と軟質相の硬さをそれぞれ測定した。なお、軟質相と硬質相の硬さ測定に当たっては、図2に示すように、K>Hとなるように、各試験片ごとに、荷重を選択して測定した。硬さ測定は、硬質相と軟質相について各10ヶ所行い、それらの値の算術平均を、各厚鋼材の軟質相の硬さ(HVs)および硬質相の硬さ(HVh)とした。そして、各厚鋼材における、硬質相と軟質相の硬さの差ΔHV(=HVh−HVs)を算出した。
得られた厚鋼板から、JIS Z 2201(1998)の規定に準拠して、引張方向が鋼板の圧延方向と直角方向となるように、全厚のJIS 5号引張試験片を採取した。引張試験は、JIS Z 2241(1998)に準拠して行い、0.2%耐力σ0.2、引張強さσTSを求め、静的引張時の引張特性を評価した。
得られた厚鋼板から、JIS Z 2242(2005)の規定に準拠して、長手方向が圧延方向に平行方向となるように、Vノッチ試験片を採取し、破面遷移温度vTrsを求め、靭性を評価した。なお、試験片は、板厚Tが20mm以上の場合は、T/4位置、板厚Tが20mm未満の場合はT/2位置から採取した。
得られた厚鋼板から、長手方向が圧延方向に直角方向となるように、JIS Z 2201(1998)の規定に準拠して全厚のJIS 5号引張試験片を採取した。これら試験片を用いて、JIS Z 2273(1978)の規定に準拠して疲労試験を実施し、疲労強度を求めた。疲労試験は、大気中にて応力比:0.1で、周波数10Hzのsine波形の応力を負荷して行い、繰返し数が200万回で破断しなかった最大の応力振幅での最大応力σwmaxを求め、疲労強度とした。図3に負荷した応力の波形を模式的に示す。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、σWmax/σ0.2が0.8未満で耐疲労き裂発生特性が低下、あるいは強度が不足、あるいは靭性が低下している厚鋼板となっている。
また、溶体化処理工程における溶体化処理時間が(2)式を満足しない厚鋼板No.13は、成分偏析が残存し、Bsh/Btが0.70未満と所望の、硬質相中に軟質相が分散した組織が形成されず、σWmax/σ0.2が0.8未満と、耐疲労き裂発生特性が低下している。
また、再加熱処理工程における再加熱温度が本発明の範囲を高く外れる厚鋼板No.15は、軟質相が形成されず、所望の組織となっていないため、耐疲労き裂発生特性が低下している。また、再加熱処理工程における再加熱温度が本発明の範囲を低く外れる厚鋼板No.16は、強度が不足し、さらにBsh/Btが0.70未満と所望の、硬質相中に軟質相が分散した組織が形成されず、また(1)式も満足されず、耐疲労き裂発生特性が低下している。
Claims (9)
- 質量%で、
C:0.02〜0.5%、 Si:0.01〜0.55%、
Mn:0.1〜3.0%、 P:0.2%以下、
S:0.05%以下 Sol.Al:0.1%以下、
T.N:0.005%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、板厚の1/4位置の組織が、JIS G 0551(2005)の規定に準拠した線分法を用いて測定した軟質相と硬質相の境界数Bshと全境界数Btとの比、Bsh/Btの最大値が0.75以上である硬質相からなる基地中に軟質相が分散した組織で、かつ該軟質相の平均粒径d(μm)と前記硬質相のビッカース硬さと前記軟質相のビッカース硬さとの差ΔHVとが下記(1)式を満足する組織であることを特徴とする耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材。
記
(ΔHV)2/d ≧ 400 ‥‥‥(1)
ここで、ΔHV:硬質相のビッカース硬さと軟質相のビッカース硬さとの差
d:軟質相の平均粒径d(μm) - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の厚鋼材。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.01〜10.0%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の厚鋼材。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の厚鋼材。
- 質量%で、
C:0.02〜0.5%、 Si:0.01〜0.55%、
Mn:0.1〜3.0%、 P:0.2%以下、
S:0.05%以下 Sol.Al:0.1%以下、
T.N:0.005%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材に、溶体化処理工程、熱間圧延工程、再加熱処理工程を順次施して、厚鋼材とする厚鋼材の製造方法であって、
前記溶体化処理工程を、溶体化処理温度T(K)と溶体化処理時間t(s)とが下記(2)式を満足する溶体化処理を施す工程とし、
前記熱間圧延工程が、前記鋼素材に(Ac3変態点+100℃)以上の温度に再加熱し、Ac3変態点を超える温度域における累積圧下率が50%以上となる熱間圧延を施し、厚鋼材とした後、Ms点以下の温度まで空冷する工程であり、
前記再加熱処理工程が、前記熱間圧延工程を経た厚鋼材に、Ac1変態点以上Ac3変態点未満の温度域の温度まで再加熱し、ついで、10℃/s以上の冷却速度でMs点以下の温度まで冷却する再加熱冷却処理を施す工程である、
ことを特徴とする耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材の製造方法。
記
t ≧ X2/exp(−24438/T)‥‥‥(2)
ここで、t:溶体化処理時間(s)、
X:(鋼素材の肉厚(m))/2、
T:溶体化処理温度(K) - 前記再加熱処理工程を経た前記厚鋼材に、さらにAc1変態点未満の温度で焼戻する焼戻工程を施すことを特徴とする請求項5に記載の厚鋼材の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項5または6に記載の厚鋼材の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.01〜10.0%を含有する組成とすることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の厚鋼材の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項5ないし8のいずれかに記載の厚鋼材の製造方法。
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