以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
まず、複数のノズルを備えるインクジェット記録装置の画像記録時のインク吐出補正について説明し、その後、インクジェット記録装置の構成について説明する。なお、以下の実施形態では、複数のノズルを有する記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に所望の画像を形成するインクジェット記録装置に本発明が適用される場合を例示するが、本発明はインクジェット記録装置に限定されるものではない。
(ノズルの吐出性能)
図1は、ノズルからインクを吐出させるために入力される入力画像データ(入力濃度データ)と、記録媒体に形成されるインクドットの出力濃度(出力濃度データ)との関係を示す。図1において、横軸は、階調値に基づく入力画像データを示し、縦軸は、ノズルから吐出されるインクにより記録媒体上に実際に形成されるインクドットの出力濃度を示す。
ここでいう該当ノズルから吐出されたインクドットの出力濃度とは、該当ノズルから一回に吐出されるインクドットの濃度のみならず、複数回で吐出されたインクドット郡、例えば、該当ノズルから吐出された記録媒体との相対移動方向に並ぶインクドット列、が現す平均濃度であってもよい。すなわち、ハーフトーン処理などを用い、連続的な濃度変化をインクドットの濃度及び個数によって表現する手法も含まれる。
インクを吐出する各ノズルは、その吐出性能に応じて「正常ノズル」と「異常濃度ノズル」とに分けられる。
ここでいう「正常ノズル」は、入力画像データに対して正常量(適正量)のインクを吐出することが可能なノズル(図1の「Ga」参照)と、入力画像データに対して正常量のインクを吐出させることはできないがシェーディング補正処理(吐出補正処理)によって正常量のインクを吐出させることが可能なノズル(図1の「Gb」参照)とを含む概念である。
一方、「異常濃度ノズル」は、吐出濃度(吐出量)を増大させるシェーディング補正処理(吐出補正処理)によっても正常量のインクを吐出させることが不可能なノズル(図1の「Gc」参照)を指し、具体的には後述の低濃度ノズルや経時変動ノズル等が異常濃度ノズルに含まれる(後述の図7〜図9参照)。
なお、以下の実施形態では、インクを全く吐出することができなくなったノズル(不吐出ノズル)のみを検出することは行われていないが、そのような不吐出ノズルは「異常濃度ノズル」として検出され処理されることとなる。
ここでいうシェーディング補正処理及び不吐出補正処理の具体的な内容については後述するが、シェーディング補正処理(吐出補正処理)は、対象ノズルから吐出させるインク濃度(インク量)を調整して本来の吐出量より多量のインクが吐出されるように、駆動制御信号の波形や大きさを補正する処理が含まれ、対象ノズルからインクを吐出させる制御が伴う。通常は、吐出性能の衰退によりインク吐出量が低減するため、このようなシェーディング補正処理はインク吐出量を増大させる処理となるが、対象ノズルから過剰量のインクが吐出される場合のシェーディング補正処理はインク吐出量を低減させる処理となる。
一方、不吐出補正処理は、異常濃度ノズルと判断される対象ノズルを不吐出ノズルとして扱う補正であって、そのような対象ノズルからインクを吐出しないようにするとともに、当該対象ノズルの周辺ノズルから吐出されるインクの吐出制御によって、この不吐出扱いされる対象ノズルの画像記録がカバーされるように、対象ノズル及びその周辺ノズルに対応する駆動素子に加えられる駆動制御信号の波形や大きさを補正する処理が含まれる。
上述の従来技術では、正常ノズル(Ga、Gb)に対しては通常のシェーディング補正処理によって対応可能であったが、シェーディング補正処理(吐出補正処理)によって正常量のインクを吐出させることが不可能な異常濃度ノズル(Gc)に対しては適切に対応することができず、そのような異常濃度ノズルによる記録画像の乱れを防ぐことができなかった。
以下の実施形態は、従来技術では対応することができなかったそのような異常濃度ノズルを、吐出ノズルとして扱うのではなく不吐出ノズルとして扱うことによって、画像品質を向上させるともに補正処理を簡素化するものである。なお、以下の一連の補正処理は、主としてインクジェット記録装置の制御部において行われる。
(補正データ算出の概要)
図2は、ノズルの吐出性能の補正処理の一例を示すフローチャートである。
本実施形態では、テストチャート(記録濃度パターン)が用いられて、対象ノズルが正常ノズルか異常濃度ノズルかの判断が行われる。すなわち、階調濃度を変化させたパッチ(テストチャート)用の入力画像データに基づく駆動制御信号がノズルの各々に対応する駆動素子(例えば後述の共通電極156、個別電極157及びアクチュエータ158からなる圧電駆動素子)に入力され(図2のS10)、この入力画像データに基づいて各ノズルからインクが吐出されて記録媒体にテストチャートが出力記録される(S12)。
図3は、記録媒体116に記録されたテストチャートの一例を示す図である。図3では、記録ヘッドが所謂ラインヘッドである場合のテストチャートが示されており、記録媒体116の略全幅にわたって設けられる記録ヘッドのノズルの各々からインクが吐出されてテストチャートが形成される例が示されている。図3には、記録ヘッドの複数のノズルによって形成されるノズル列の方向(ノズル列方向)とノズル列の幅(ノズル列幅)とが示されており、図3の上方から下方に向かって段階的に濃度階調値が大きくなるようにインクドットが連続的に記録されることで複数段のテストチャートが形成されており、ノズル列方向の濃度は略一定となっている。
記録媒体にこのようなテストチャートが記録されると、このテストチャートに基づいて各ノズルの出力濃度が取得される(図2のS14)。具体的な取得プロセスについては後述するが、テストチャート(スキャン画像)の各位置におけるOD(Optical Density)値が求められ、このテストチャートのOD値から各位置に対応する記録素子(ノズル等)毎の出力記録濃度を示す出力濃度データが取得される。なおテストチャートは、後述の印字検出部によって読み取られて取得されるようになっている。
そして、このようにして求められる出力濃度データと入力画像データとに基づいて、ノズル毎の特性曲線(テスト特性曲線)が求められる(S16)。
図4は、ノズルの特性曲線を示すグラフであり、縦軸は出力濃度データを示し、横軸は入力画像データを示し、原点0から縦方向に離れるに従って出力濃度が濃くなり(出力量が増大し)、横方向に離れるに従って入力画像データの濃度階調が大きくなる。図4に示すように、テストチャートから求められるノズルの特性曲線(テスト特性曲線)Gtは、外乱等のために、入力画像データに対して正常量(適正量)のインクをノズルから吐出する場合に得られる特性曲線(適正特性曲線)Gaから多少ずれた曲線を描くのが通常であり、図4の矢印で示されるようにノズル間で出力濃度値のばらつきが見られる。
このように、テスト特性曲線Gt及び適正特性曲線Gaは、いずれも記録素子(インク吐出アクチュエータ)に入力される入力濃度データと記録素子の出力濃度データとに基づいており、テスト特性曲線Gtは記録素子の記録情報を表し、適正特性曲線Gaは記録素子の適正時(正常時)の特性情報を表す。
このようにして求められる各ノズルのテスト特性曲線Gtは適正特性曲線Gaと比較され、その比較結果に応じて、対象ノズルの吐出制御に対する補正処理内容が、シェーディング補正処理(吐出補正処理)と不吐出補正処理との間で切り換えられる。すなわち、対象ノズルのテスト特性曲線Gtと適正特性曲線Gaとの比較結果から対象ノズルが正常ノズルか否かが判定され(図2のS18)、対象ノズルが正常ノズルの場合(S18のYES)、シェーディング補正処理のためのシェーディング情報に補正データが反映され(S20)、対象ノズルが正常ノズルではない異常濃度ノズルの場合(S18のNO)、不吐出補正処理のための不吐出情報に補正データが反映される(S22)。
そして、印刷用の入力画像データがホストコンピュータ等から入力されると、ノズル毎に割り当てられる上述のシェーディング情報や不吐出情報に基づいて補正処理が行われ、濃度ムラを解消した高品質の印刷用画像が記録媒体に記録される。
(正常ノズル及び異常濃度ノズルの判定)
次に、対象ノズルが正常ノズルか異常濃度ノズルかの判定手法(図2のS18)の具体例について説明する。
図5は、対象ノズルが正常ノズルか異常濃度ノズルかの判定手法の一例を示すフローチャートである。図6〜図9はノズルのテスト特性曲線例を示し、図6は対象ノズルが正常ノズル(適正ノズル)である場合を示し、図7は対象ノズルが低濃度ノズルである場合を示し、図8は対象ノズルの吐出性能が経時的に変動する場合を示し、図9は対象ノズルのテスト特性曲線が単調増加曲線ではない場合を示す。
図2のS18に関して上述したように、本実施形態では、対象ノズルのテスト特性曲線Gtと適正特性曲線Gaとの比較結果から対象ノズルが正常ノズルか否かが判定されるようになっており、具体的には、以下のようにして判定が行われる。
まず、テストチャートから得られる各ノズルの出力濃度データと所定の臨界濃度値(臨界濃度データ)Dcとが比較される(図5のS30)。図7に示すように、対象ノズルのテスト特性曲線Gtの出力濃度データが臨界濃度値Dcに達しない場合(S30のYES)、当該対象ノズル及び対応駆動素子はインクを吐出しない不吐出記録素子として扱われ、不吐出補正処理が行われる(S38)。
臨界濃度値Dcは、適正特性曲線Gaの特性情報に基づいて予め定められる値であり、例えば適正特性曲線Gaの出力濃度データを基準にして視覚上における画像品質を損なわない境界値に基づく値を臨界濃度値Dcとして採用することもできる。
一方、対象ノズルのテスト特性曲線Gtの出力濃度データが臨界濃度値Dcに達している場合(S30のNO)、対象ノズルの出力濃度データの経時的な変動に基づいて補正処理の内容が切り換えられる(S32)。すなわち、経時的に取得されるテスト特性曲線Gtの複数のデータが、ノズル毎の吐出情報(記録情報)として磁気媒体等の記憶装置に記憶される。図8に示す例では、直近で取得されたn回目に計測されるテスト特性曲線Gtnの出力濃度データと過去に取得されたテスト特性曲線(図8には、インク吐出性能の経時的な劣化が小さい初回に取得されたテスト特性曲線Gt1が示されている)の出力濃度が相互に比較され、入力画像データに基づく両者の差が算出される。経時的に取得されるテスト特性曲線Gt間において出力濃度の差が所定値以上となっている場合(図5のS32のYES)、当該対象ノズル及び対応駆動素子はインクを吐出しない不吐出記録素子として扱われ、不吐出補正処理が行われる(S38)。
一方、対象ノズルの経時的な出力濃度差が所定値よりも小さい場合(S32のNO)、テスト特性曲線が単調増加曲線か否かが判定される(S34)。ここでいう、単調増加曲線とは、入力画像データの階調値の増大とともに出力濃度も増大する(濃くなる)増加曲線であって、入力画像データの階調値が増大しているにもかかわらず出力濃度が減少する(薄くなる)部分(例えば図9の「R」部分参照)を含まない曲線を指す。具体的には、入力画像データに対する出力濃度データの微分値が求められ、この微分値から対象ノズルの出力濃度データが入力画像データと共に増大しているか否かが求められる。このような微分値から対象ノズルの出力濃度データが入力画像データと共に増大しておらず、テスト特性曲線が単調増加曲線ではないと判定される場合(図5のS34のYES)、当該対象ノズル及び対応駆動素子はインクを吐出しない不吐出記録素子として扱われ、不吐出補正処理が行われる(S38)。なお「経時的に取得されるテスト特性曲線」とは、ある時間をおいて取得されるテスト特性曲線のことであり、その時間間隔は特に限定されるものではない。
一方、テスト特性曲線が単調増加曲線であると判定される場合(S34のNO)、対象ノズル及びその対応駆動素子は正常量のインクを吐出することが可能な吐出記録素子として扱われ、当該対象ノズル及びその対応駆動素子の吐出制御に対してはシェーディング補正処理が行われる(S36)。
なお、図5〜9に示した判定方法は一例に過ぎず、他の判定を更に加えたり、上記判定(図5のS30、S32及びS34)のいずれか一又は複数の判定を省略することも可能である。
例えば図7に示す例では臨界濃度値Dcが所定値であったが、図10に示すように臨界濃度値Dcを入力画像データに応じて変えてもよい。入力画像データに応じて変動するこのような臨界濃度値Dcの値を、例えば適正特性曲線Gaの特性情報の出力濃度値と臨界濃度値Dcとの差が全ての入力画像データにおいて一定となるように定めることもできる。このように、適正特性曲線Gaの特性情報に基づく所定範囲にテストチャートから得られるテスト特性曲線の出力濃度データが含まれているか否かに応じて、対象ノズルの補正処理の内容を切り換えることもできる。なお、このような所定範囲を定める際に、上限の臨界濃度値及び下限の臨界濃度値を適正特性曲線Gaの特性情報に基づいて定めてもよい。
(不吐出補正処理及びシェーディング補正処理)
次に、不吐出補正処理について図11を参照して説明する。
図11は、不吐出補正処理の一例を示す図であり、対象ノズルが不吐出ノズルの場合に図3のノズル列方向に関して左右両隣のノズル(図11の「不吐出左隣ノズル」及び「不吐出右隣ノズル」)からのインク吐出濃度を補正する例が示されている。図11において、横軸はノズル列方向に並設される複数のノズルの各々を表し、縦軸はノズルから吐出されるインク出力濃度(インク量)を表す。
本例の不吐出補正処理は、図11に示すように、不吐出ノズルである対象ノズルからインクを吐出させないように(すなわち対象ノズルの出力濃度が「0.0」となるように)対応駆動素子が制御されるとともに、対象ノズルの隣接ノズルから本来の吐出量より多くのインク量を吐出して当該隣接ノズルの出力濃度が増大するように対応駆動素子(圧電駆動素子等)が制御される。このような制御情報は、不吐出情報として記憶され、補正処理実行時に参照される。なお、この時に隣接ノズルから吐出されるインク色は、対象ノズルから吐出されるインク色と同色である。
図11に示す不吐出補正処理では、不吐出補正処理が行われる前の左右両隣のノズルから吐出されるインク出力濃度が1.0で表され、不吐出補正処理後に左右両隣のノズルから吐出されるインク出力濃度が「不吐出補正濃度」と表示されており、不吐出補正処理によって増大した対象ノズルの隣接ノズルのインク出力濃度が「補正量」(例えば「1.5」の補正比率)と表示されている。
なお図11では、不吐出補正処理に基づく隣接ノズルに対するインク出力濃度の補正量は隣接ノズル間で均等であるが、対象ノズルに隣接するノズル及びそれらの駆動素子に対する補正量は必要に応じて適宜決定可能である。例えば、不吐出補正処理後に左右両隣のノズルから吐出されるインク出力濃度の比率を1.0〜2.0の範囲で適宜選定することも可能である。
また、対象ノズルに隣接するノズル以外のノズル(周辺ノズル)を用いて不吐出補正処理を行ってもよい。対象ノズルを挟んだ両側における、好ましくは対象ノズルを中心として180度の角度位置におけるノズルを隣接ノズル(周辺ノズル)として用いた不吐出補正処理を行うことで、不吐出ノズルとして扱われる対象ノズルの記録を両側から補うことができる。
また、ノズルから出力されるインクドットの着弾位置に関して幅方向(ノズル列方向)に誤差があるような場合には、この打滴位置誤差(着弾位置誤差)を加味して補正比率(補正量)を算出してもよい。例えば、隣接ノズルから吐出されるインクの記録媒体上における着弾位置が、このような打滴位置誤差のために、対象ノズルから吐出されるインクの本来の着弾位置(適正吐出時の着弾位置)から離れてしまう場合には通常時より補正比率を増加させてもよい。また逆に、隣接ノズルから吐出されるインクの記録媒体上における着弾位置が、打滴位置誤差のために対象ノズルから吐出されるインクの本来の着弾位置に近づいてしまう場合には補正比率を通常時より低減させてもよい。
この補正比率(補正量)に基づく不吐出補正は、不吐出扱いされる対象ノズルの周辺ノズルからの代替打滴数を増減させるように画像データを変更する処理、若しくは、周辺ノズルから吐出されるインク滴サイズを増減させる処理によって行われる。
なお、本例における「隣接ノズル」又は「周辺ノズル」は、記録媒体上に形成されるインクドットに関し、対象ノズルによって記録されるインクドットに対して記録媒体上で隣接するインクドット又は周辺に存在するインクドットを形成するノズルである。したがって、記録ヘッドにおいてノズル列が一列に形成される場合には、記録ヘッドにおいて対象ノズルに対し隣接して又は周辺に配置されるノズルが隣接ノズル又は周辺ノズルであることが一般的である。また、複数のノズルが記録ヘッドにおいて後述のマトリクス配置されているような変則的な配置を有する場合、記録ヘッドにおいて対象ノズルに対し隣接して又は周辺に配置されるノズルは、必ずしも、対象ノズルに対する隣接ノズル又は周辺ノズルには該当しない。
上述のように本実施形態では、テストチャート(図3参照)から、インクを全く吐出することができなくなったノズルだけではなく、インクを吐出することは可能であるがシェーディング補正処理(吐出補正処理)によっても正常量のインクを吐出させることが不可能な異常濃度ノズル(図7〜9参照)も不吐出ノズルとして扱われる。従って、インクを吐出することが可能な異常濃度ノズル及びその対応記録素子は、インクが吐出されないように制御される一方で、その異常濃度ノズルに隣接するノズル及びその対応記録素子に対する駆動制御信号に対して図11に示されるような補正処理が行われる。
次に、シェーディング補正処理について図12を参照して説明する。図12は、シェーディング補正処理の一例を示す説明図である。
対象ノズルが正常ノズルか異常濃度ノズルかの上記判定(図5参照)において、対象ノズル及びその対応駆動素子を正常記録素子(吐出記録素子)として扱うと判定される場合、その対象ノズルに対してはシェーディング補正処理が行われる(図5のS36参照)。
図12のS200に示されるように、スキャナの画素位置(濃度測定位置)とノズル位置との対応関係を示す解像度変換曲線が予め測定されると共に記憶されており、この解像度曲線に従って、テストチャートのスキャン画像における各濃度測定位置(例えば400dpiの解像度)が、記録ヘッドにおける対応ノズルの位置(例えば1200dpiの解像度)に変換される。
このようにして求められるノズル位置と、当該ノズル位置に対応するテストチャートにおける濃度測定値(出力濃度値)D1とが図12のS202に示されるように対応づけられ、予め定められ記憶されている目標濃度値D0と濃度測定値(出力濃度値)D1との差分が算出される。ここで用いられる目標濃度値D0は、対象ノズルから吐出させるインク濃度の目標値であり、必要に応じて適宜決定することが可能である。例えば、予め定められたノズル範囲から吐出されるインクの平均濃度を算出して目標濃度値D0として記憶しておいてもよい。
そして図12のS204に示されるように、予め実験的に求められた画素値と濃度値との対応関係を示す画素値−濃度値曲線に従って、濃度測定値(出力濃度値)D1及び目標濃度値D0(S204の「濃度値」)に対応する出力画素値(S204の「画素値」)P0、P1が求められる。そして、この出力画素値の差分量(P0−P1)は、ノズル位置毎の濃度補正値として記憶され(シェーディング情報)(図12のS206)、補正処理実行時に参照される。
図12の例では、対象ノズルからの打滴数(画素値)を増減させる補正処理が示されているが、対象ノズルから吐出されるインク滴サイズを増減させる処理が用いられてもよい。
なお、上述の不吐出補正処理及びシェーディング補正処理は例示に過ぎず、他の不吐出補正処理及びシェーディング補正処理を行ってもよい。
(補正処理と画像出力)
上記のようにして求められるシェーディング情報及び不吐出情報に基づく補正処理が、ノズル毎に、所望画像形成用の入力画像データに対して施されることで、濃度ムラを効果的に解消した高品質の画像を記録媒体に形成することができる。上記の補正処理は、ハーフトーン処理を伴う画像出力時にも有効である。
図13及び図14は、ハーフトーン処理を伴う画像出力処理の一例を示すフローチャートである。
図13及び図14に示される各例では、所望の画像を形成するための入力画像データが入力され、その入力画像データに基づいて所謂ハーフトーン処理が行われて、ハーフトーン処理後のデータに基づいて画像出力が行われる点で共通している(図13のS50、S54及びS56、図14のS60、S62及びS66)。しかしながら、上記の補正処理(シェーディング補正処理、不吐出補正濃度)の実施されるタイミングがハーフトーン処理の前か後かの点で、図13及び図14の各々に示される例は異なる。すなわち、上記の補正処理(シェーディング補正処理、不吐出補正濃度)は、図13に示すようにハーフトーン処理前に行われてもよいし、図14に示すようにハーフトーン処理後に行われてもよい。ハーフトーン処理の演算の煩雑さを考慮すれば、図14に示すようにハーフトーン処理後に上記の補正処理(シェーディング補正処理、不吐出補正濃度)を実施したほうが、演算処理が簡単になり、処理時間を短縮することが可能である。
なお、上記の補正処理(シェーディング補正処理、不吐出補正濃度)の補正値の算出タイミングは任意であり、例えば画像出力毎に記録媒体の余白部にテストチャートを出力して上記の補正値の算出を行ったり、定期メンテナンスやユーザーからの指示があったときに上記の補正値の算出を行ってもよい。
また、正常ノズル及び異常濃度ノズルの検出はテストチャートの出力毎に行ってもよい。また、異常濃度ノズルとして検出されたノズルの情報(不吐出情報)を記憶デバイスに保持しておき、それ以降の検出時には不吐出情報を参照して過去に異常濃度ノズルとして検出されたノズルについては異常濃度ノズルとして扱うことで、正常ノズルか異常濃度ノズルかの検出処理を省略することも可能である。但し、一旦異常濃度ノズルと判定されたノズルであってもヘッドクリーニングや画像記録等により吐出性能を回復することもあるので、テストチャートの出力毎に正常ノズルか異常濃度ノズルかの検出処理を行ったほうが、的確な補正処理を行うことができる。
(補正処理の効果)
このように、記録媒体に出力された濃度測定用テストチャートを測定しその測定結果に基づいて濃度補正(シェーディング補正)を行うとき、各ノズルの入力値−出力画像濃度の特性曲線を作成し、その各ノズルの特性曲線の特徴に対して予め定めた条件を満たした場合、そのノズルは不吐出ノズルと設定され、さらにそのノズルに対応する画像を白として(すなわちインクを吐出せずに画像形成のためのインクドットを形成せずに)周辺ノズルによって不吐出補正を行う。
すなわち本実施形態によれば、対象ノズルの吐出性能に関する特性曲線に基づいて、「正常ノズル扱い」及び「不吐出ノズル扱い」の間で補正内容が切り換えられる。これにより、従来技術では対応が難しかった異常濃度ノズル(不吐出ノズルではないがシェーディング補正処理によっても十分な濃度のインクを吐出することができないノズル)に対しても適切な補正処理を行うことができ、画像品質の乱れを効果的に防ぐことができる。
特に、異常濃度ノズルを不吐出ノズルとして扱うことにより、適切な補正処理を行うことができるだけではなく、補正量の演算処理を簡単化することができる。
また、ノズルからのインク吐出量低減による濃度ムラ検出と不吐出ノズルの検出とが切り分けられて各々別個の検出処理として行われる従来技術とは異なり、本実施形態では、テストチャートを用いた単一処理によって、不吐出ノズルの存在による濃度ムラ及びインク吐出量低減による濃度ムラの両者に対応することが可能である。特に本実施形態では、対象ノズルがインクを全く吐出することができない不吐出ノズルか否かの検出を行う必要がなく、また従来技術のようなVTFやPSFを利用したコンボリューション積分のような複雑な演算を必要とはしないため、補正処理を簡便に行うことができる。
なお、対象ノズルがインクを全く吐出することができない不吐出ノズルか否かの検出を、上記の修正処理とは別個に付加的に適宜実施することも可能である。
(インクジェット記録装置の構成)
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成について説明する。なお、上記の説明と重複する内容については、以下省略する。
図15は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置を適用したインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、本実施形態に係るインクジェット記録装置110は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)112K,112C,112M,112Yを有する記録ヘッド112と、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録媒体たる記録紙(記録媒体)116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、記録ヘッド112のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122と、記録ヘッド112による印字結果を読み取る印字検出部124と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とを備えている。
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド112K,112C,112M,112Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部114は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図16では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録媒体(メディア)を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部118から送り出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッター(第1のカッター)128が設けられており、該カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター128は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙116は、ベルト搬送部122へと送られる。ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも記録ヘッド112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図15に示したとおり、ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において記録ヘッド112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによって記録紙116がベルト133上に吸着保持される。なお、吸引吸着方式に代えて、静電吸着方式を採用してもよい。
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図20の符号188)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図15上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図15の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。ベルト清掃部136の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組合せなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、ベルト搬送部122に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において記録ヘッド112の上流側には、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
記録ヘッド112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、当該インクジェット記録装置110が対象とする記録紙116の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図16参照)。
したがって、複数のノズル151によって形成されるノズル列は、記録ヘッド112において、記録媒体116の記録範囲の全幅に対応する範囲に配置されている。そして、記録ヘッド112は、記録媒体116との一回の相対移動によって、記録媒体116の記録範囲の全域に対して所望の画像を記録することができるシングルパス方式を採用している。
ヘッド112K,112C,112M,112Yは、記録紙116の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド112K,112C,112M,112Yが記録紙116の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
ベルト搬送部122により記録紙116を搬送しつつ各ヘッド112K,112C,112M,112Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド112K,112C,112M,112Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙116と記録ヘッド112を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
図15に示した印字検出部124は、記録ヘッド112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。各色のヘッド112K,112C,112M,112Yにより印字されたテストチャート又は実技画像が印字検出部124により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
なお、本実施形態の印字検出部124は、上述のテストチャート(図3参照)を読み取るようになっている。
印字検出部124の後段には後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置110では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。また、図15には示さないが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
(ヘッドの構造)
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド112K,112C,112M,112Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号150によってヘッドを示すものとする。
図17(a)は、ヘッド150の構造例を示す平面透視図であり、図17(b)は、図17(a)の一部の拡大図である。また、図17(c)はヘッド150の他の構造例を示す平面透視図であり、図18は1つの液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室ユニット)の構成を示す断面図(図17(a)の18−18線に沿う断面図)である。
記録紙116上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド150におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド150は、図17(a)及び図17(b)に示したように、インク吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録紙116の送り方向と略直交する方向に記録紙116の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図17(a)の構成に代えて、図17(c)に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙116の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており(図17(a)及び図17(b)参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図18に示したように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
圧力室152の一部の面(図18において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
なお本実施形態の各記録素子は、共通電極156、個別電極157、アクチュエータ158及びノズル151を含んで構成される。
上述した構造を有するインク室ユニット153を図19に示すように主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が一例で1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図19に示すようなマトリクス状に配置されたノズル151を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル151−11、151−12、151−13、151−14、151−15、151−16を1つのブロックとし(他にはノズル151−21、…、151−26を1つのブロック、ノズル151−31、…、151−36を1つのブロック、…として)、記録紙116の搬送速度に応じてノズル151−11、151−12、…、151−16を順次駆動することで記録紙116の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットからなるライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(あるいは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録紙116の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ158の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
(制御系の説明)
図20は、インクジェット記録装置110のシステム構成を示すブロック図である。
図20に示すように、インクジェット記録装置110は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、記憶デバイス175、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置110の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及び記憶デバイス175の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する駆動制御信号を生成する。
記憶デバイス175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(不吐出検出用テストチャート及び濃度測定用テストチャートのデータを含む)などが格納されている。記憶デバイス175は、ROMのような書き換え不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段であってもよい。
画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従って後乾燥部142等のヒータ189を駆動するドライバである。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データ(多値の入力画像のデータ)から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ184に供給してヘッド150の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図20において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174や記憶デバイス175と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド150のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド150の各ノズル151に対応するアクチュエータ158を駆動するための駆動制御信号を出力する。ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
こうして、ヘッドドライバ184から出力された駆動制御信号がヘッド150に加えられることによって、該当するノズル151からインクが吐出される。記録紙116の搬送速度に同期してヘッド150からのインク吐出を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
上記のように、プリント制御部180における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動制御信号波形に基づき、ヘッドドライバ184を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
印字検出部124は、図15で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録紙116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部180及びシステムコントローラ172に提供する。
プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部124から得られる情報に基づいてヘッド150に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
(補正処理に関する制御系)
次に、シェーディング補正処理及び不吐出補正処理に関連する制御構成について、図21を参照して説明する。図21は、補正処理に関連する制御構成を示す機能ブロック図である。
図21に示す補正処理制御部100は、上述のシェーディング補正処理及び不吐出補正処理を制御するユニットであり、図20のシステムコントローラ172、プリント制御部180、画像メモリ174、記憶デバイス175、画像バッファメモリ182、及び他の機器類によって構成されている。補正処理制御部100に含まれる下記の各部は、機能的な構成によって捉えられており、これらのハード機器類が単独で又は複数組み合わされて実現される。
補正処理制御部100は、出力データ読取部30、ノズル判別部36、補正演算部40、スキャナ制御部56及びヘッドドライバ184を含んで構成されている。出力データ読取部30はノズル位置特定部32及び測定濃度計測部34を含み、補正演算部40はシェーディング補正処理部42及び不吐出補正処理部44を含み、データ出力部50は補正用画像出力部52及び印刷用画像出力部54を含む。
印字検出部124は、記録素子毎に形成される記録濃度を示すテストチャート(図3参照)をスキャンすることによって各記録素子の出力濃度データ(画像読み取りデータ)を取得する濃度情報取得手段として機能する。この印字検出部124は、取得したテストチャートの画像読み取りデータを出力データ読取部30に送信する。
出力データ読取部30は、印字検出部124から送られてくるテストチャートの画像読み取りデータに基づいて、記録素子毎の記録濃度を示す出力濃度データを取得する濃度情報取得手段として機能する。この出力データ読取部30は、テストチャートにおける測定位置から対応ノズルの位置を求めるノズル位置特定部32と、テストチャートにおける測定位置のインク出力濃度を検出する測定濃度計測部34とを含む。
ノズル判別部36は、テストチャートに基づいて出力データ読取部30が取得した出力濃度データから記録素子毎の吐出情報(記録情報)を求める特性演算手段として機能する。具体的には、出力データ読取部30から送られてくる記録素子毎の出力濃度データと、データ出力部50から送られてくるテストチャート出力用の入力画像データとに基づいて、ノズル判別部36はノズル毎の吐出情報(テスト特性曲線Gt)を求める。
またノズル判別部36は、予め定められる記録素子の正常時の特性情報(適正特性曲線Ga)を記憶する特性記憶手段として機能するとともに、この特性情報と記録素子毎の吐出情報と比較してこの比較結果に応じて、対象記録素子の吐出制御に対する補正処理の内容を切り換える補正処理切り換え手段としても機能する。具体的には、ノズル判別部36は、対象記録素子を正常記録素子(吐出記録素子)として扱う吐出補正処理(シェーディング補正処理)と、対象記録素子を異常濃度記録素子(不吐出記録素子)として扱う不吐出補正処理との間で、対象記録素子の吐出制御に対する補正処理の内容を切り換えるようになっている。この切り替えの基準は、吐出情報と特性情報との比較結果に応じて、吐出補正処理(シェーディング補正処理)によって対象記録素子から正常量のインクを吐出させることが可能な場合には対象記録素子の吐出制御に対する補正処理の内容を吐出補正処理とする。また、吐出補正処理によって対象記録素子から正常量の液体を吐出させることが不可能な場合には対象記録素子の吐出制御に対する補正処理の内容を不吐出補正処理とする。
ノズル判別部36は、例えば図7或いは図10に示すように、吐出情報の出力濃度データ(Gt)と、特性情報に基づく所定の臨界濃度データDcとの比較結果に応じて補正処理の内容を切り換えることができる。すなわちノズル判別部36は、吐出情報の出力濃度データが、特性情報に基づく所定の範囲に含まれているか否かに応じて補正処理の内容を切り換えることができる。またノズル判別部36は、図8に示すように、経時的に取得された複数の出力濃度データ同士の比較結果に応じて補正処理の内容を切り換えることもできる。さらにノズル判別部36は、図9に示すように、吐出情報から導かれる入力濃度データに対する出力濃度データのテスト特性曲線が単調増加するか否かに応じて補正処理の内容を切り換えることもできる。
補正演算部40は、ノズル判別部36によって切り換えられた補正処理の内容に従って、吐出情報及び特性情報(テスト特性曲線及び適正特性曲線)に基づき対象記録素子の吐出制御に対する補正を行う補正手段として機能する。なお、吐出情報及び特性情報は、ノズル判別部36から補正演算部40に送られてくる。
補正演算部40のシェーディング補正処理部42は、ノズル判別部36においてシェーディング補正処理に切り換えられた記録素子に対して図12に示すような適切なシェーディング補正処理が行われるようにシェーディング補正値を演算する。また補正演算部40の不吐出補正処理部44は、ノズル判別部36において不吐出補正処理に切り換えられた記録素子に対して図11に示すような適切な不吐出補正処理が行われるように不吐出補正値を演算する。
データ出力部50は、補正演算部40によって切り換えられる補正処理の内容(シェーディング補正処理、不吐出補正処理)に基づいて対象記録素子の吐出制御に対する補正を行う補正手段として機能する。このデータ出力部50の補正用画像出力部52は、記録媒体にテストチャートを形成するための入力画像データを出力する。またデータ出力部50の印刷用画像出力部54は、所望の画像を記録媒体に形成するための入力画像データを出力する。
補正用画像出力部52は、所望画像の印刷毎に、或いはホストコンピュータ186を介したユーザーからの指示に基づいて、テストチャート形成用の入力画像データをヘッドドライバ184に発信する。なお、テストチャートを記録する際には、印字検出部124を制御するスキャナ制御部56に対してデータ出力部50からテストチャートの記録が行われることが通知され、スキャナ制御部56は、この通知に基づいて、記録されるテストチャートのスキャン画像が取得されるように印字検出部124を制御してもよい。またテストチャート形成用の入力画像データは、ノズル判別部36に通知され、ノズル判別部36における対象ノズルが正常ノズルか異常濃度ノズルかの判定に用いられる。
印刷用画像出力部54は、ホストコンピュータ186から送られてくる所望画像の記録に関する入力画像データに対して、補正演算部40から送られてくる補正情報に基づくシェーディング補正処理又は不吐出補正処理を記録素子毎に行って、そのような補正が施された入力画像データをヘッドドライバ184に出力する。
ヘッドドライバ184は、データ出力部50から送られてくる入力画像データに基づく駆動制御信号をヘッド150(アクチュエータ158等)及びヘッド150の駆動に関係する各種機器類に送り、データ出力部50から送られてくる入力画像データに基づく画像を記録媒体に形成する。このようにして、補正判定用のテストチャートやユーザーが所望する印刷画像が記録媒体に記録されることとなる。
なお、本実施形態ではインクジェット記録装置110内に印字検出部(スキャナ)124を設けたが、テストチャート読み取り用の印字検出部をインクジェット記録装置110とは別に設けるようにしてもよい。
また、入力濃度データの処理は、インクジェット記録装置110とは別体の画像処理装置により行うようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、本発明をインクジェット記録装置に適用した場合について説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。即ち、本発明は、インクジェット記録装置以外の形式の画像記録装置、例えば、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタについても適用可能である。