JP5362969B2 - 光学素子 - Google Patents

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Description

この発明は光学素子に関する。
透明基板の少なくとも1面に「2層以上の光学薄膜」が積層された光学素子は、従来から、偏光板や反射防止フィルタ等として広く知られている。
近来、光学薄膜の材料として「ゾルゲル材料」が提案されている(特許文献1)。ゾルゲル材料は無機材料で、堅固な薄膜を形成できるので耐環境性に優れている。即ち、成膜過程でゾルゲル材料のシロキサン結合を完全にすると「シリカガラスによる3次元骨格構造体」となる。この状態が「硬化した状態」であり、化学的に安定した極めて強固な構造であり、機械的強度も優れている。
かかる塗布膜は機械的強度に優れているので、光学素子における光学面の保護膜として適している。また、材料の組成により屈折率の調整が可能であるところから、所望の屈折率を持つ「光学的に使用できる光学薄膜」を容易に得られる利点もある。
しかしながら反面、ゾルゲル材料の薄膜は成膜の過程で「強い引っ張り応力」を発生させ易い。成膜の際、シリカガラスによる3次元骨格構造体が形成される過程で脱アルコール反応が生じ、膜の収縮が生じるためである。この問題は、ゾルゲル材料に限らず「SiOを骨格とする重縮合材料」を成膜するときの一般的な現象である。「SiOを骨格とする重縮合材料」としてはゾルゲル材料の他にHSQ(水素シルセスキオキサン)やシルセスキオキサンを挙げることができる。
「SiOを骨格とする重縮合材料」による薄膜は「加熱硬化処理」で形成される塗布膜である。例えば、ゾルゲル材料の場合であれば、材料を「ゾル状態」で膜形成面に塗布し、加熱によりゲル化して膜を形成する。成膜後、自然冷却で冷却する段階で「収縮力による強い引っ張り応力」が膜表面方向に発生する。引っ張り応力は、成膜された膜の膜厚が大きいほど大きく、膜が「引っ張り応力に耐えられない状態」になるとにクラック(亀裂)を生じ、光学素子として製品にならなくなる。
このように、クラックが生じるか否かは塗布膜の膜厚に依存し、膜厚が十分に薄ければ、膜表面方向の引っ張り応力もクラックを発生させるほどには大きくならない。
「SiOを骨格とする重縮合材料」による薄膜について、クラックが発生しない最大膜厚を便宜的に「クラック臨界厚さ」と呼ぶと、上記薄膜(塗布膜)がクラック臨界厚さを越えて厚くなると、100%ではないにしてもある適度の割合でクラックの発生するものが生じることになる。
上に説明したのは、製造段階でのクラックの発生の問題であるが、クラック発生は製造後においても問題となる。「SiOを骨格とする重縮合材料による薄膜」を形成された光学素子の実際の使用において、温度が大きく変化する環境化で使用される場合、所謂「ヒートショック」により薄膜にクラックが発生する場合がある。光学素子に形成された薄膜の厚さが「クラック臨界厚さ」に近い厚さであると、例え、素子製造の段階ではクラックが発生しなくても、実際に使用している状況下でヒートショックによりクラックを生じて素子寿命が尽きる虞がある。
「SiOを骨格とする重縮合材料による薄膜」は、上述の如く、屈折率の調整が可能であり、薄膜自体に光学機能の一部を付与する光学薄膜の場合は、大きな膜厚が求められる場合も多い。
特開平11−153788号公報
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、膜厚の大きい「SiOを骨格とする重縮合材料による薄膜」を有し、クラックの発生を有効に抑制できる新規な光学素子の実現を課題とする。
この発明の光学素子は「透明基板の少なくとも1面に、2層以上の光学薄膜が積層構造体として積層形成された光学素子」であって、以下の如き特徴を有する(請求項1)。
即ち、「透明基板」は、石英ガラス等の光学ガラスによる基板である。
積層構造体のうち、透明基板に接して形成される第1層の光学薄膜は「SiOを骨格とする重縮合材料の加熱硬化処理により形成される塗布膜」であり、その屈折率が透明基板の屈折率と異なる。そして、透明基板と逆側の面は平坦である。
この第1層の上に、第1層の膜面方向の応力を、この応力と逆向きの応力により緩和する応力緩和膜が第2層として積層形成されている。
このように、塗布膜を、透明基板と応力緩和膜により挟むことにより、加熱硬化処理により塗布膜に発生する引っ張り応力を「透明基板と上記塗布膜の接合面」および「塗布膜と応力緩和膜との接合面」に等分に配分する。
そして、配分された引っ張り応力が、積層構造体におけるクラック発生の臨界応力より小さくなるように緩和されている。
この明細書において「光学素子」は光学的に用いられるものを広く含む。例えば、保護ガラスの如きものも光学素子と称する。また、最終製品として「縦横数mm程度の小型の光学素子」を製造する場合に、最終製品を個別に製造するのではなく、1枚の大きい透明基板に最終製品となる光学素子を多数個配列して形成し、製造の最終工程において、個々の小型の光学素子を個別に分離して最終製品とすることは通常行われるところであるが、請求項1〜5における「光学素子」には、このように「最終製品となる光学素子を多数個配列して形成した大きい基板」も含まれるものとする。
透明基板は、その形態としては「平行平板」状のもののみならず、例えば、断面楔状のものやプリズム状のもの等、種々の形態のものを含む。また、透明基板は材質的には、各種の光学ガラスや石英ガラスその他、光学素子として従来から用いられているものを適宜利用できる。
「光学薄膜」は、少なくとも「光学素子に対する使用波長の光に対して透明で、1と異なる屈折率を有する薄膜」であり、上記の如く第1層は「SiOを骨格とする重縮合材料の加熱硬化処理により形成される塗布膜」であり第2層は「応力緩和膜」である。
「積層構造体」が形成されるのは透明基板の少なくとも1面であるから、透明基板の2以上の面に「別の積層構造体」が形成されていてもよい。この場合、2以上の面に形成される積層構造体は互いに同一構成のものでもよいし別構成のものでもよい。
「積層構造体におけるクラック発生の臨界応力」は、この臨界応力を超えた場合に積層構造体」にクラックが発生する限界となる応力である。
「SiOを骨格とする重縮合材料」は、前述の如く、ゾルゲル材料の他にHSQ(水素シルセスキオキサン)やシルセスキオキサン等であり、かかる材料を用いる第1層等は加熱硬化処理により形成される塗布膜として形成される。なお、「SiOを骨格とする重縮合材料」には、屈折率を調整するための微細フィラー粒子を適宜に分散させることができる。
「応力緩和膜」を構成する材料としてはSiOを好適に用いることができるほか、TiO、ZrO、CeF、ITO、ZnO、InO等を用いることができ、応力緩和膜の成膜方法は、材料に応じて、蒸着やスパッタリング、塗布等の方法を適宜に選択できる。「SiOを骨格とする重縮合材料」や、応力緩和膜の材料として上に挙げた物質は無機材料であって耐熱性や耐溶剤性に優れ、また、光学的には等方性で複屈折性がない。
請求項1記載の光学素子は「透明基板の積層構造体が形成される面に、光学機能を有する面形状が形成されている」ものであることができる(請求項2)。勿論、請求項1記載の光学素子は、このようなものに限定されるわけではなく、例えば、透明基板が平行平板状で、積層構造体が平坦な基板面に形成され、積層構造体が形成されるのとは逆の面に上記光学面が形成された構成も可能である。
「光学面」は上記の如く「光学機能を有する面形状」であり、具体的には、回折格子をなす格子形状や、構造複屈折を発現させるサブ波長構造、マイクロレンズやマイクロレンズアレイ、プリズムやプリズムアレイ等であることができる。
透明基板に形成される積層構造体は上記の如く「2層以上の光学薄膜」であるから、積層構造体を「3層以上の光学薄膜を積層」して構成することもでき、この場合「第2層をなす応力緩和膜」の上にさらに他の光学薄膜が積層される。このように第2層の上にさらに他の光学薄膜を積層する場合、請求項1または2記載の光学素子は、第2層の応力緩和膜上に更に「SiOを骨格とする重縮合材料の加熱硬化処理により形成される塗布膜と、応力緩和膜とが交互に積層形成され、最上層を応力緩和膜とした」構成とすることができる(請求項3)。
例えば、積層構造体を2層の光学薄膜の積層により形成する場合、光学素子において積層構造体が果たすべき光学機能により、積層構造体の厚さとして「A」なる厚さが要求され、これを厚さ:a1の「SiOを骨格とする重縮合材料の加熱硬化処理により形成される塗布膜」と厚さ:b1の応力緩和膜とで、A=a1+b1を満足させた積層構造体として構成することもできるが、このようにする代わりに第1層を厚さ:a11の塗布膜、第2層を厚さ:b11の応力緩和膜、第3層を厚さ:a12の塗布膜、第4層を厚さ:b12の応力緩和膜というように4層構造に形成し、A=a11+a12+b11+b12を満足させるようにすると、a11<a1、a12<a1となるから、同じ厚さ:Aの積層構造体を第1層と第2層で形成する場合よりも、4層構造とする場合には「SiOを骨格とする重縮合材料の塗布膜」である第1層と第3層の厚さが薄いことにより、第1、第3層に発生する膜表面方向の引っ張り応力が小さくなり、従って、これらの薄膜における応力を応力緩和膜により緩和することも容易である。
積層構造体の最上層は「SiO を骨格とする重縮合材料の加熱硬化処理により形成される塗布膜」とすることも考えられるが、この場合、最上層にクラックが発生しないようにするために最上層の厚さが制限されるので、最上層は応力緩和膜とすることが好ましい(請求項3)。
請求項1〜3の何れか1項に記載の光学素子は「積層構造体の最上層の上に反射防止膜が形成されている」構造とすることができる(請求項4)。反射防止膜も「光学薄膜」であるので、例えば、反射防止膜が「応力緩和膜」としての機能を有する場合には、反射防止膜を「積層構造体の一部」として積層構造体を形成することもできる。
請求項1〜4の何れか1項に記載の光学素子は、積層構造体が光学機能を有し、前記塗布膜と応力緩和膜の屈折率を前記光学機能に応じた値とすることができる(請求項5)。
ここで、応力緩和膜による「クラック発生の抑制」を説明する。
図1(a)において、符号10は透明基板、符号20は「SiOを骨格とする重縮合材料の加熱硬化処理により形成された塗布膜(以下、単に塗布膜20という。)」を示す。図1(a)は、透明基板10に成膜された塗布膜20内部の応力を説明するための図である。塗布膜20が収縮するとき、塗布膜中の一点Pに作用する力は、塗布膜20が収縮しようとする力:F1と、この収縮を阻止しようとする力:F2である。力:F2は透明基板10が塗布膜20の図の左右方向への収縮を止めようとする力である。
従って、塗布膜20におけるP点には、|F1|+|F2|の大きさの力が、塗布膜20を「膜表面に平行な方向へ引き裂こうとする力」として作用する。この力が前述の「引っ張り応力」である。この引っ張り応力は一様ではなく、その大きさが塗布膜20の厚み方向へ変化する。
図1(b)は、上記引っ張り応力が塗布膜20の厚み方向の位置に対してどのように変化するかを略示している。縦軸は膜厚方向の位置、横軸は引っ張り応力である。
塗布膜20は透明基板10の表面では透明基板10に強固に固定された状態にあり、この表面においては収縮は完全に阻止される。このため、上記引っ張り応力は透明基板10の塗布膜20との接合面で最大になる。塗布膜20の厚み方向の上方へ向かうにつれて、塗布膜20は図の左右方向への収縮が生じ、この収縮により引っ張り応力が緩和されるので、引っ張り応力は図1(b)に示すように、塗布膜20の膜厚方向へ次第に減少するように変化する。
引っ張り応力は、塗布膜20が大きくなるほど大きくなる傾向がある。引っ張り応力が増大すると、特に、透明基板10と塗布膜20との接合面に近い部分での引っ張り応力が増大し、塗布膜20の厚み方向へ「引っ張り応力の大きな差」が発生し、引っ張り応力の最大値が、図1(b)に示す「クラック発生の臨界応力GK」を超えると、塗布膜20が引っ張り力に抗し切れなくなってクラックを発生させてしまう。
図1(c)は、塗布膜20の上に応力緩和膜30を積層形成した状態を示している。従って、この場合、塗布膜20と応力緩和膜30とが「積層構造体」を構成する。
応力緩和膜30は「成膜時に膜面方向に伸張する薄膜」であり、その伸張応力を塗布膜10の表面に作用させることにより塗布膜20の収縮を緩和させる。その結果、塗布膜20における引張り応力の、膜厚方向の分布は図1(c)に示したように、膜厚の中央部で最小になり、応力緩和膜30の側に向かって増大する。
図1(b)と(c)とを比較すれば明らかなように、応力緩和膜30を設けない状態では「塗布膜20内部に生じる引っ張り応力に抗するもの」が透明基板10との接合力のみであるのに対し、応力緩和膜30を設けると、透明基板10と塗布膜20との接合力(塗布膜の収縮に抗する。)と、応力緩和膜30の伸張応力とが「塗布膜内の引っ張り応力とバランス」するのである。
応力緩和膜30を設けるか否かに拘わらず、塗布膜20に発生する引っ張り応力の総体は同じであるが、応力緩和膜30を設けることにより、透明基板との接合面に作用する引っ張り応力が、応力緩和膜30を設けない場合に比して略1/2に減少し、塗布膜内部に発生する引っ張り応力の最大値は「クラック発生の臨界応力GK」を下回る。このようにして、積層構造体におけるクラックの発生が抑制される。
以上に説明したように、この発明によれば、新規な光学素子を実現できる。
この発明の光学素子は、積層構造体における膜面方向の応力が、積層構造体全体として積層構造体におけるクラック発生の臨界応力より小さく緩和されているので、クラックの発生が有効に防止され、光学素子製造の歩留まりが向上する。また、ヒートショックによるクラック発生も防止され、光学素子の寿命が長寿命化する。
以下、発明の実施の形態を説明する。
図2にこの発明の光学素子の実施の形態を3例示す。
図2に実施の形態を示す3種の光学素子は何れも、光学機能としては「構造複屈折を発現させるサブ波長構造を持つ位相板」である。図2(a)〜(c)において、符号11は透明基板を示す。透明基板11は平行平板状であり、その片面に「断面が矩形波状の凹凸によるサブ波長構造」が形成されている。サブ波長構造は図面に直交する方向には、図示された断面形状が均一に連続するものである。また、サブ波長構造をなす矩形波状の凹凸のピッチは使用波長と同程度以下であり、凹凸の深さは0.5μm程度である。
従って、サブ波長構造の形成されている面も実質的には平坦な面と考えて良い。
図2(a)に示す実施の形態では、透明基板10の片面に形成されたサブ波長構造の上に「SiOを骨格とする重縮合材料」の加熱硬化処理により形成される塗布膜21が第1層として形成され、その上に応力緩和膜31が第2層として形成されている。
図2(b)に示す実施の形態では、透明基板10の片面に形成されたサブ波長構造の上に「SiOを骨格とする重縮合材料」の加熱硬化処理により形成される塗布膜22が第1層として形成され、その上に応力緩和膜32が第2層として形成され、さらに第3層として「SiOを骨格とする重縮合材料」の加熱硬化処理により形成される塗布膜23が形成され、その上に第4層として応力緩和膜33が形成されている。
図2(c)に示す実施の形態は、図2(b)に示す塗布膜22、応力緩和膜32、塗布膜23、応力緩和膜33による4層構造の積層構造体の表面に反射防止膜40が形成された構成である。
何れの実施の形態の場合も、透明基板11、塗布膜21、22、23、応力緩和膜31、32、33は互いに屈折率が異なり、これらの屈折率は光学素子の果たすべき光学機能に応じた値とされている
また、積層構造体における膜面方向の応力は、積層構造体全体として積層構造体におけるクラック発生の臨界応力より小さくなるように緩和されている。
このように、図2に実施の形態を示す3種の光学素子は、透明基板11の少なくとも1面に、2層以上の光学薄膜が積層構造体として積層形成された光学素子であって、積層構造体のうち、透明基板に接して形成される第1層の光学薄膜21、22は、SiOを骨格とする重縮合材料の加熱硬化処理により形成される塗布膜であり、第1層の上に、第1層の膜面方向の応力を、この応力と逆向きの応力により緩和する応力緩和膜31、32が第2層として積層形成され、第1層21、22は屈折率が透明基板11の屈折率と異なり、積層構造体における膜面方向の応力が、積層構造体全体として、積層構造体におけるクラック発生の臨界応力より小さくなるように緩和されている。
また、透明基板11の積層構造体が形成される面に、光学機能を有する面形状(断面矩形波状のサブ波長構造)が形成されている。図2(b)、(c)に実施の形態を示す光学素子は、第2層の応力緩和膜32上にさらに、SiOを骨格とする重縮合材料の加熱硬化処理により形成される塗布膜23と、応力緩和膜33とが交互に積層形成され、積層構造体の最上層が応力緩和膜である。
図2(c)に実施の形態を示す光学素子は、積層構造体の最上層の上に反射防止膜40が形成されている。そして、図2に実施の形態を示す光学素子は何れも、SiOを骨格とする重縮合材料の加熱硬化処理により形成される塗布膜21、22、23と、応力緩和膜31、32、33との屈折率が、光学機能に応じて定められている。
次に、具体的な例を、応力緩和膜のある場合と無い場合との対比により説明する。
ここで説明する光学素子は前述の「最終製品となる光学素子を多数個配列して形成した大きい基板」であり、最終製品となる光学素子は、図2(a)に即して実施の形態を説明した位相板である。
図3は、このような大きい基板を説明図的に示している。
直径:100mm、厚さ:1mmの石英ガラスを透明基板100として用意し、その平坦な面を十分に洗浄後、フォトリソグラフィとエッチングとにより5mm×5mmのサブ波長構造SWを、図に示すように上記平坦な面に多数個配列して形成した。サブ波長構造は、図2(a)に即して説明したように、ピッチがサブ波長の大きさで深さが0.5μm程度の「断面矩形波形状の凹凸構造」である。
このような透明基板100の「多数のサブ波長構造SWが配列形成された側の面」に、「SiOを骨格とする重縮合材料」としてSiOベースのゾルゲル材を、粘度:150cPのゾル状態にしてスピンコートにより塗布した。スピンコートにおける透明基板100の回転速度は1500rpmとし、30秒で塗布を終了した。
スピンコート後、透明基板100の周辺の幅:3mmの部分110を「エッジリンス」し、余分な塗布材料を除去した。このエッジリンスを行わない場合、後工程で「周辺部に盛り上がった塗布材料の部分からクラックが発生」する虞がある。
続いて、塗布されたゾルゲル材の膜に含まれる溶媒成分を除去するためのプリベークを90度Cの温度で120秒間行い、さらに、ポストベークを250度Cの温度で600秒間行って厚さ:3μmの塗布膜を得た。ここまでの工程で得られた光学素子(透明基板100の片面にサブ波長構造SWが配列形成され、サブ波長構造の配列された面に、ゾルゲル材による厚さ:3μmの塗布膜が形成されている。)を「比較品」と呼ぶ。
さらに、上記塗布膜の形成後、塗布膜上に、応力緩和膜として「SiOの膜」をスパッタリングにより厚さ:500nmの厚さに形成した。このように「SiOのスパッタリング膜による応力緩和膜」の形成された光学素子を「実施品」と呼ぶ。
上記実施品と比較品の双方について、膜形成後の冷却によるクラック発生状況およびヒートショックによるクラック発生状況を調べた。
先ず、冷却によるクラック発生状況を調べた。
比較品につき、ゾルゲル材による厚さ:3μmの塗布膜が形成された時点(ポストベーク終了時点)から比較品を室温下で自然冷却し、ポストベーク終了時点からの経過時間によるクラック発生状況を調べた。
その結果、ポストベーク終了から30分経過後では、クラックの発生は見られなかったが、1時間経過後にはクラックが発生し、時間の経過とともにクラックの成長、発生数が漸増し、クラックの成長・発生数の増加は720時間(1ヶ月)経過後に終息したが、最終製品として個別に分離される個々の位相板で、クラックの発生なしに光学素子として個別化できたものは透明基板100に配列形成された多数のサブ波長構造SWのうちで数十個に留まった。
一方、実施品に対しては、スパッタリングによる厚さ:500nmの応力緩和膜の成膜終了時点から室温下で自然冷却を開始し、自然冷却開始からの経過時間によるクラック発生状況を調べた。その結果、自然冷却開始時点から720時間を経過しても「クラックの発生」は全く見られず、透明基板100に配列形成されたサブ波長構造SWの全てを光学素子として製品化できた。
上記の自然冷却の場合、積層構造体を含めて、比較品・実施品とも温度は冷却開始後5〜10分で室温程度まで低下する。
そこで、自然冷却により室温程度まで温度が低下した比較品・実施品の双方に対し、−20度C〜+70度Cの温度差を周期:3時間でヒートショックとして繰り返して与え、ヒートショックの繰り返し回数によるクラックの発生状況を調べた。即ち、比較品・実施品をそれぞれ、―20度Cの温度下に1時間放置したのち、30分かけて+70度まで昇温させ、ついで、+70度Cの温度下に1時間放置した後、30分かけてー20度Cまで温度降下させるプロセスをヒートショックの1周期とした。ヒートショックの繰り返し回数は上記周期の繰り返し回数である。
比較品では、ヒートショックを1回与えただけでクラックが発生し、ヒートショックの繰り返し回数の増加とともに派生するクラック数が増加した。
実施品では、ヒートショックの繰り返し回数が10回でも、クラックの発生は全く無かった。
付言すると「成膜された薄膜に発生する膜表面方向の応力の大きさ」は、膜厚とともに増大する。この点に関しては、応力緩和膜も例外ではない。従って、第1層として形成される塗布膜の厚みが大きければ、塗布膜に生じる引っ張り応力も大きく、これを緩和させるのに、応力緩和膜に発生させる伸張応力も大きくする必要があり、従って、応力緩和膜の厚みも大きくしなければならない。
塗布膜の厚みや膜数(応力緩和膜と交互に積層する場合の膜数)は、光学素子において塗布膜に求められる機能、例えば、屈折率調整機能や保護機能も応じて適正に設定されるものである。従って、このように設定される塗布層の膜厚や膜数に応じて、応力緩和膜の厚みや膜数も適切に設定する必要があり、このように、塗布膜の膜厚・膜数と応力緩膜の膜厚・膜数が共に適切に設定されることにより「積層構造体における膜面方向の応力が、積層構造体全体として、積層構造体におけるクラック発生の臨界応力より小さくなるように緩和される」のである。
応力緩和膜によりクラック発生が防止されることを説明するための図である。 発明の実施の形態を説明するための図である。 発明の効果を説明するための図である。
符号の説明
10 透明基板
20 SiOを骨格とする重縮合材料の加熱硬化処理により形成される塗布膜
30 応力緩和膜

Claims (5)

  1. 光学ガラスによる透明基板の少なくとも1面に、2層以上の光学薄膜が積層構造体として積層形成された光学素子であって、
    積層構造体のうち、透明基板に接して形成される第1層の光学薄膜は、SiOを骨格とする重縮合材料の加熱硬化処理により形成される塗布膜で、上記透明基板と逆側の面は平坦であり、
    上記第1層の上記平坦な面の上に、第1層の膜面方向の応力を、この応力と逆向きの応力により緩和する応力緩和膜が第2層として積層形成され、
    第1層は、屈折率が透明基板の屈折率と異なり、
    上記塗布膜を、上記透明基板と上記応力緩和膜により挟むことにより、上記加熱硬化処理により上記塗布膜に発生する引っ張り応力を、上記透明基板と上記塗布膜の接合面、および上記塗布膜と上記応力緩和膜との接合面に等分に配分することにより、
    上記配分された引っ張り応力が、上記積層構造体におけるクラック発生の臨界応力より小さくなるように緩和されていることを特徴とする光学素子。
  2. 請求項1記載の光学素子において、
    透明基板の積層構造体が形成される面に、光学機能を有する面形状が形成されていることを特徴とする光学素子。
  3. 請求項1または2記載の光学素子において、
    第2層の応力緩和膜上にさらに、SiOを骨格とする重縮合材料の加熱硬化処理により形成される塗布膜と、応力緩和膜とが交互に積層形成され、
    積層構造体の最上層が応力緩和膜であることを特徴とする光学素子。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の光学素子において、
    積層構造体の最上層の上に反射防止膜が形成されていることを特徴とする光学素子。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の光学素子において、
    前記積層構造体が光学機能を有し、前記塗布膜および前記応力緩和膜の屈折率を、前記光学機能に応じた値とすることを特徴とする光学素子。
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