以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態に係る撮像装置(光学装置)は、例えば屈曲光学系を有する撮像装置に好適に採用されるものである。また、本実施形態に係る駆動装置は、例えば撮像装置において、光学部材の移動の際の作動音を制御するために好適に採用されるものである。最初に、本実施形態に係る撮像装置について概要を説明する。図1は、本実施形態に係る撮像装置の撮像光学系を示す概要図である。
図1に示す撮像装置は、光軸Oを屈曲させる屈曲光学系が適用されており、ズームレンズユニット部16、撮像素子82及び制御部81を備えている。ズームレンズユニット部16は、撮像装置の撮像光学系を有しており、固定レンズ105、プリズム104、移動レンズ(光学部材)90、102及び固定レンズ101を備えている。また、制御部81は、撮像装置全体の制御を行うものであり、例えばCPU(Central ProcessingUnit)62、ISP(ImageSignal Processing)60、素子駆動回路61、EEPROM(Electrically Erasable PROM)64及びドライバ65を備えている。
移動レンズ90,102には、ズーム用のアクチュエータ10、オートフォーカス(AF)用のアクチュエータ15が駆動源としてそれぞれ接続されている。各アクチュエータ10、15が駆動することによって移動レンズ90、102が光軸Oに沿って移動し、ズーム機能及びオートフォーカス機能が実現される。各アクチュエータ10,15は、ドライバ65に接続されており、ドライバ65及びCPU62によって駆動制御が行われる。
撮像素子82は、光軸O上に配設されており、ズームレンズユニット部16の撮影光学系により結像された画像を電気信号に変換する撮像手段である。撮像素子82は、例えばCCD(Charge Coupled Device image sensor)により構成され、ISP60に接続されている。
ズームレンズユニット部16へ入射された被写体106の像は、固定レンズ105、プリズム104を介して屈曲され、移動レンズ90、移動レンズ102、固定レンズ101を介して撮像素子82に到達し、ISP60及びCUP62によって画像として処理される。
ここで、移動レンズ90、102のレンズ位置は、ズームレンズユニット部16に備わる位置検出素子83,84により検出される。すなわち、各位置検出素子83,84は、レンズ位置検出手段として機能する。位置検出素子83,84は、素子駆動回路61に接続されており、素子駆動回路61によって駆動制御される。各位置検出素子83,84が検出した光強度は、素子駆動回路61を介して出力信号とされ、CPU62が有するA/D変換部63によりA/D変換される。
CPU62及びドライバ65は、A/D変換された出力信号及びEEPROM64に格納された情報等に基づいて、フィードバック的に各アクチュエータ10、15の駆動制御を行う。なお、EEPROM64には、例えば調整時の測定によって得られたズーム位置、AF位置に対する出力信号が記憶されている。このように、撮像装置のレンズ駆動手段は、位置検出手段と連携して動作可能に構成されている。
次に、上述した各構成の詳細について説明する。なお、以下では説明理解の容易性を考慮して、移動レンズ102を例に詳細を説明する。
まず、撮像装置のレンズ駆動手段から詳細を説明する。図2は、移動レンズ102の駆動装置の断面図である。図2に示す駆動装置は、圧電素子1に駆動軸2を取り付けたアクチュエータ10を有し、圧電素子1の伸縮に応じて駆動軸2を往復移動させ、駆動軸2に摩擦係合される被駆動部材3を駆動軸2に沿って移動させる装置である。
圧電素子1は、駆動信号の入力により伸縮可能な電気機械変換素子であり、所定の方向へ伸長及び収縮可能となっている。この圧電素子1は、制御部81に接続され、ドライバ(駆動信号制御回路)65により電気信号を入力されることにより伸縮する。例えば、圧電素子1には、二つの入力端子11a,11bが設置される。この入力端子11a,11bに印加される電圧を繰り返して増減させることにより、圧電素子1が伸長及び収縮を繰り返すこととなる。なお、電気機械変換素子としては駆動信号の入力により伸縮するものであれば、導電性高分子からなる材料や形状記憶合金等、圧電素子1以外のものを用いてもよい。
駆動軸2は、圧電素子1の伸縮方向に長手方向を向けて圧電素子1に取り付けられている。例えば、駆動軸2の一端が圧電素子1に当接され接着剤21を用いて接着されている。この駆動軸2は、長尺状の部材であり、例えば円柱状のものが用いられる。駆動軸2は、固定枠4から内側へ延びる仕切り部4b、仕切り部4cにより長手方向に沿って移動可能に支持されている。仕切り部4b、仕切り部4cは、被駆動部材3の移動領域を仕切るための部材であり、駆動軸2の支持部材としても機能している。固定枠4は、圧電素子1、駆動軸2及び被駆動部材などを収容し組み付けるための筐体として機能する。
駆動軸2の材質は、軽く高剛性のものが適している。なお、駆動軸2の形状は円柱状に限定されるものではなく、角柱状でもよい。
仕切り部4b、仕切り部4cには、駆動軸2を貫通させる貫通孔4aがそれぞれ形成されている。仕切り部4bは、駆動軸2の圧電素子1取付部分の近傍箇所、すなわち駆動軸2の基端箇所を支持している。仕切り部4cは、駆動軸2の先端箇所を支持している。駆動軸2は、圧電素子1に取り付けられることにより、圧電素子1の伸長及び収縮の繰り返し動作に応じて、その長手方向に沿って往復移動する。
なお、図2では、駆動軸2を仕切り部4b、4cによりその先端側と基端側の二箇所で支持する場合を示しているが、駆動軸2をその先端側又は基端側の一方で支持する場合もある。例えば、仕切り部4bの貫通孔4aを駆動軸2の外径より大きく形成することにより、駆動軸2が仕切り部4cにより先端箇所のみで支持されることとなる。また、仕切り部4cの貫通孔4aを駆動軸2の外径より大きく形成することにより、駆動軸2が仕切り部4bにより基端箇所のみで支持されることとなる。
また、図2では、駆動軸2を支持する仕切り部4b、4cが固定枠4と一体になっている場合について示したが、これらの仕切り部4b、4cは固定枠4と別体のものを固定枠4に取り付けて設けてもよい。別体の場合であっても、一体となっている場合と同様な機能、効果が得られる。
被駆動部材3は、駆動軸2に移動可能に取り付けられている。この被駆動部材3は、駆動軸2に対し摩擦係合されて取り付けられ、駆動軸2の長手方向に沿って移動可能となっている。例えば、被駆動部材3は、板バネ7により駆動軸2に圧接されて所定の摩擦係数で係合しており、一定の押圧力で駆動軸2に押し付けられることによってその移動の際に一定の摩擦力が生ずるように取り付けられている。この摩擦力を超えるように駆動軸2が移動することにより、慣性により被駆動部材3がその位置を維持し、その被駆動部材3に対し相対的に駆動軸2が移動する。
圧電素子1は、支持部材5により固定枠4に取り付けられている。支持部材5は、圧電素子1をその伸縮方向に対して側方から支持して取り付けるものであり、圧電素子1と固定枠4との間に配設されている。この場合、支持部材5により圧電素子1をその伸縮方向と直交する方向から支持することが好ましい。この支持部材5は、圧電素子1を側方から支持して取り付ける取付部材として機能している。
このように支持部材5によりアクチュエータ10が圧電素子1の伸縮方向に対し側方側から支持されており、アクチュエータ10の両端は圧電素子1の伸縮方向へ移動可能な自由端となっている。このため、アクチュエータ10が駆動しても圧電素子1の伸縮による振動が固定枠4側へ伝達されにくい構造となっている。従って、アクチュエータ10の駆動信号をアクチュエータ10自体の共振周波数に関連づけて設定することが有効となっている。
支持部材5は、所定以上の弾性特性を有する弾性体により形成され、例えばシリコーン樹脂により形成される。支持部材5は、圧電素子1を挿通させる挿通孔5aを形成して構成され、その挿通孔5aに圧電素子1を挿通させた状態で固定枠4に組み付けられている。支持部材5の固定枠4への固着は、接着剤22による接着により行われる。また、支持部材5と圧電素子1の間の固着も、接着剤による接着により行われる。この支持部材5を弾性体によって構成することにより、圧電素子1をその伸縮方向に移動可能に支持することができる。図2において、支持部材5が圧電素子1の両側に二つ図示されているが、この支持部材5、5は環状の支持部材5の断面をとることによって二つに図示されたものである。
なお、支持部材5の固定枠4への固着及び圧電素子1への固着は、固定枠4と圧電素子1の間に支持部材5を圧入し、支持部材5の押圧によって行ってもよい。例えば、支持部材5を弾性体により構成し、かつ、固定枠4と圧電素子1の間より大きく形成して、その間に圧入して設置する。これにより、支持部材5は、固定枠4及び圧電素子1に密着して配設される。この場合、圧電素子1は、支持部材5により伸縮方向に直交する方向の両側から押圧される。これによって、圧電素子1が支持される。
また、ここでは支持部材5をシリコーン樹脂で形成する場合について説明したが、支持部材5をバネ部材により構成してもよい。例えば、固定枠4と圧電素子1の間にバネ部材を配置し、このバネ部材によって圧電素子1を固定枠4に対し支持してもよい。
被駆動部材3には、レンズ枠91を介して移動レンズ102が取り付けられている。移動レンズ102は、カメラの撮影光学系を構成するものであり、駆動装置の移動対象物となるものである。この移動レンズ102は、被駆動部材3と一体的に設けられ、被駆動部材3と共に移動するように設けられている。移動レンズ102の光軸O上には、図1を用いて説明したように固定レンズなどが配設され、カメラの撮影光学系を構成している。この移動レンズ102として、例えばオートフォーカス用のレンズが用いられる。
圧電素子1の端部には、錘部材6が取り付けられている。錘部材6は、圧電素子1の伸縮力を駆動軸2側へ伝達させるための部材であって、圧電素子1の駆動軸2が取り付けられる端部と反対側の端部に取り付けられている。
この錘部材6は、アクチュエータ10の一部を構成する部品である。錘部材6としては、駆動軸2より重いものが用いられる。
錘部材6の材質は、圧電素子1及び駆動軸2よりもヤング率の小さい材料のものが用いられる。なお、錘部材6と圧電素子1とを固着する接着剤としては、弾性接着剤を用いることが好ましい。
また、錘部材6は、固定枠4に対し支持固定されない状態で設けられている。すなわち、錘部材6は、圧電素子1の自由端に取り付けられ、固定枠4に対し直接支持されたり固定されておらず、また接着剤や樹脂材を介して固定枠4に対し動きを拘束されるように支持されたり固定されていない状態で設けられている。
図3は、図2のIII−IIIにおける被駆動部材3の摩擦係合部分の断面図である。図3に示すように、被駆動部材3は、板バネ7により駆動軸2を押圧することにより、駆動軸2に取り付けられている。例えば、被駆動部材3には、駆動軸2を位置決めするためのV字状の溝3aが形成される。その溝3aには、断面V字状の摺動板3bが配置され、その摺動板3bを介して駆動軸2が被駆動部材3に押圧される。
また、板バネ7と被駆動部材3との間には、断面V字状の摺動板3cが配設され、板バネ7は、この摺動板3cを介して被駆動部材3を押圧する。このため、摺動板3b、3cが互いに凹部側を向き合わせて配置され、駆動軸2を挟んで設けられている。V字状の溝3a内に駆動軸2を収容することにより、被駆動部材3を安定して駆動軸14に取り付けることができる。
板バネ7としては、例えば、断面L字状の板バネ材が用いられる。板バネ7一辺を被駆動部材3に掛止させ、他の一辺を溝3aの対向位置に配することにより、他の一辺により溝3aに収容される駆動軸2を被駆動部材3との間に挟み込むことができる。
このように、被駆動部材3は、板バネ7により被駆動部材3を駆動軸2側に一定の力で押圧して取り付けられることにより、駆動軸2に対し摩擦係合される。すなわち、被駆動部材3は、駆動軸2に対し被駆動部材3が一定の押圧力で押し付けられ、その移動に際し一定の摩擦力が生ずるように取り付けられる。
また、断面V字状の摺動板3b、3cにより駆動軸2を挟み込むことにより、被駆動部材3が駆動軸2に複数箇所で線接触することになり、駆動軸2に対し安定して摩擦係合させることができる。また、複数箇所の線接触状態により被駆動部材3が駆動軸2に係合しているため、実質的に被駆動部材3が駆動軸2に面接触状態で係合していると同様な係合状態となり、安定した摩擦係合が実現できる。
次に、上述したアクチュエータ10の動作制御を行うドライバ65の詳細について説明する。図4は、圧電素子1を作動させるドライバ65の概要図である。図4に示すように、ドライバ65は、圧電素子1を作動させる駆動回路65c、駆動回路65cを駆動させる論理回路であるロジック65a及びロジック65aの設定内容を保存するレジスタメモリ65bを有している。ロジック65aは、CPU62から制御信号SINを入力し、レジスタメモリ65bに記録するとともに、駆動回路65cに駆動用の電気信号を出力する。駆動回路65cは、圧電素子1のドライブ回路として機能するものであり、圧電素子1に対し駆動用の電気信号を出力する。駆動回路65cは、ロジック65aから制御信号を入力し、その制御信号を電圧増幅又は電流増幅して圧電素子1の駆動用電気信号を出力する。駆動回路65cは、電界効果型のトランジスタ(FET)を備えたものが用いられる。トランジスタは、出力信号として、Hi出力(高電位出力)、Lo出力(低電位出力)及びOFF出力(オフ出力、オープン出力)を出力可能に構成されている。なお、図4に示す駆動回路は、圧電素子1を作動させるための回路の一例であり、これ以外の回路を用いて圧電素子1を作動させてもよい。
図5は、駆動回路65cから出力される駆動信号の一例であり、横軸が時間である。図5の信号は、ロジック65aからの入力信号に基づいて出力される信号であって、被駆動部材3を移動させる信号である。図5に示す駆動信号は、被駆動部材3を圧電素子1に接近させる方向(図2において右方向)に移動させる際に出力される出力信号(第1パルス信号)AOUT、出力信号(第2パルス信号)BOUTである(正転時の信号)。
図5において、それぞれの二つのパルス信号AOUT,BOUTは、圧電素子1の二つの端子(図1,4参照)に入力される信号であり、駆動信号を構成する信号である。この二つのパルス信号は、同一の周波数f(周期T)であって、互いの位相を異ならせることにより、互いの信号の電位差が一方向に段階的に変化し、逆方向に急激に変化する信号、又は、互いの信号の電位差が一方向に急激に変化し、逆方向に段階的に変化する信号となっている。そして、AOUTとBOUTとの電位差が圧電素子1の入力電圧となる。これらのパルス信号の電位差により圧電素子1が伸長又は収縮する。1パルスごとの信号が連続して第1アクチュエータ8に入力されることにより、連続駆動が行われることとなる。
パルス信号AOUT,BOUTは、例えば一方の信号がHi出力となりLo出力に低下した後に他方の信号がHi出力となるように設定されている。それらの信号において、一方の信号がLo出力になった際に一定のタイムラグtOFFの経過後、他方の信号がHi出力となるように設定される。すなわち、このタイムラグtOFF分、パルス信号BOUTがパルス信号AOUTに比べて時間遅延している。そして、このタイムラグtOFFを制御することによって、圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔と当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔との比を制御可能に構成されている。被駆動部材3を圧電素子1から離間させる方向に移動させる際に出力される駆動信号(逆転時の信号)は、後述のように、このタイムラグtOFFを制御することによって生成することができる。また、このタイムラグを制御することにより、圧電素子1の作動音を低減する静音制御の際に出力する静音制御駆動信号を生成する。パルス信号AOUT,BOUTのHi出力、Lo出力の印加時間等は、ドライバ65に備わるレジスタメモリ65bを用いて設定される。
図6(a)に、レジスタメモリ65bに保存されたレジスタの設定例を示す。図6(a)に示すように、レジスタメモリ65bには、出力する信号の波形、動作、時間をどのように制御するかが、動作選択Bit、波形選択Bit及び時間選択Bitで設定されている。なお、時間選択Bitに関しては任意の設定がなされるため、設定については記載を省略している。このレジスタメモリ65bには、被駆動部材3を移動させる通常の出力信号の設定が保存されている。例えば、出力信号AOUTのパルス幅t1、出力信号AOUTに対する出力信号BOUTのタイムラグtOFF、出力信号BOUTのパルス幅t2、各出力信号AOUT,BOUTの周期Tが表に示すように設定されている。また、通常の出力信号の設定のほかに、作動音を低減するために用いられる出力信号に係る静音波形の4パターンの設定が保存されている。これらの静音波形は、出力信号AOUTに対する出力信号BOUTのタイムラグtOFFのみが設定されており、出力信号AOUTのパルス幅t1、出力信号BOUTのパルス幅t2、各出力信号AOUT,BOUTの周期Tについては、通常の出力信号の設定と同様とされる。図6(a)に示す設定例を用いることにより、図6(b)に示す設定がなされる。図6(b)に示すように、通常波形では、出力信号AOUTのパルス幅t1がa、出力信号AOUTに対する出力信号BOUTのタイムラグtOFFがb、出力信号BOUTのパルス幅t2がc、各出力信号AOUT,BOUTの周期Tがdである。また、静音波形1〜4では、通常波形とタイムラグtOFFのみが変更される。例えば、静音波形1ではタイムラグtOFFがb1(>b)、静音波形2ではタイムラグtOFFがb2(>b1)、静音波形3ではタイムラグtOFFがb3(>b2)、静音波形4ではタイムラグtOFFがb4(>b3)とされる。
次に、図6で設定した通常波形及び静音波形1〜4の素子電流について説明する。図7は、通常駆動における通常波形及び静音駆動における静音波形1〜4の素子電流を示す概要図である。図7(a)は通常波形の素子電流であり、図7(b)〜(e)は静音波形1〜4の素子電流である。図7に示すように、静音波形1〜4ではタイムラグtOFFがb1〜b4に変更されることで、電流波形及びピークを保った状態で逆方向充電タイミングのみが変更される。静音波形1〜4の順に除々にタイムラグtOFFが大きく変更されることで、逆方向充電タイミングが正方向充電タイミング間の中間に除々に近づく。逆方向充電タイミングが正方向充電タイミング間の中間に除々に近づくほど駆動速度(被駆動部材3の移動速度)は遅くなる。このため、通常波形の駆動速度が最も速く、静音波形1、2、3、4の順にだんだん駆動速度が遅くなる。すなわち、静音波形を組み合わせた駆動信号を用いることで被駆動部材3の移動速度を制御することが可能となる。
一方、逆方向充電タイミングが正方向充電タイミング間の中間に位置したときには、被駆動部材3は停止する。この時、パルス信号AOUT,BOUTは、互いの信号の電位差が一方向へ変化したときから逆方向に変化するまでの時間と、当該逆方向に変化したときから再度一方向へ変化するまでの時間とが同一の信号となる。すなわち、圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔と、当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔とが同一となる。これらのパルス信号の電位差により、圧電素子1は伸長と収縮とを一定間隔で交互に繰り返す。そして、駆動軸8bが等間隔で連続的に伸縮して振動することで被駆動部材3は僅かに浮き上がった状態(振動停滞状態)で停止する。
また、逆方向充電タイミングが正方向充電タイミング間の中間を越えたときには、被駆動部材3は逆方向に移動する。このため、静音波形1〜4による移動方向と通常波形による移動方向とを一致させるためには、静音波形1〜4のタイムラグb1〜b4は被駆動部材3が逆方向に移動しない範囲で変更される必要がある。すなわち、図7(a)に示すように、圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔よりも、当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔の方が大きくなるように通常波形におけるタイムラグbが設定されている場合には、静電波形1〜4のタイムラグb1〜b4は、圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔よりも、当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔の方が小さくならない範囲(圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔と、当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔とが同一の場合を含む)で設定される。例えば、図7(a)に示す通常波形において、圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔と、当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔との比が20:80であるとする。この場合、例えば、静音波形1〜4では、圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔と、当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔との比が、25:75、30:70、40:60、50:50に設定される。
次に、被駆動部材3を逆方向に動作させる場合を説明する。このように、圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔よりも、当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔の方が小さくなるように通常波形におけるタイムラグbが設定されている場合には、静電波形1〜4のタイムラグb1〜b4は、圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔よりも、当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔の方が大きくならない範囲(圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔と、当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔とが同一の場合を含む)で設定される。例えば、通常波形において、圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔と、当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔との比が80:20であるとする。この場合、例えば、静音波形1〜4では、圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔と、当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔との比が75:25、70:30、60:40、50:50に設定される。
静音波形1〜4を組み合わせた駆動信号とする際には、除々にタイムラグtOFFが小さく又は大きくなるように組み合わせる。また、通常波形と静音波形とを繋げる場合には、通常波形の逆方向充電タイミングに近い逆方向充電タイミングを有する静音波形が用いられる。例えば、図7(a)に示す通常波形であれば、図7(b)に示す静音波形が用いられる。
図8は、作動音を低減するための駆動信号の一例である。図8(a)は、通常駆動期間の開始直前の所定期間に静音駆動期間を設けた例であり、図8(b)は、通常駆動期間の終了直後の所定期間に静音駆動期間を設けた例である。図8(a)に示すように、通常波形を用いた通常駆動信号(第1駆動信号)の印加開始直前の静音駆動期間では、静音波形4を用いた静音駆動4、静音波形3を用いた静音駆動3、静音波形2を用いた静音駆動2、静音波形1を用いた静音駆動1の順で静音制御用のパルス信号が並べられた駆動信号(第2駆動信号)が印加される。すなわち、静音駆動期間の終了に近づくに従って静音制御用のパルス信号における逆方向充電タイミングと通常駆動用のパルス信号における逆方向充電タイミングとの差が小さくなるように静音制御用のパルス信号が変化される。これにより、駆動軸2と被駆動部材3との間の摩擦結合を弱めることが可能となるので、停止中の被駆動部材3を滑らかに移動させることができるとともに、通常駆動用のパルス信号と静音制御用のパルス信号との切り替えタイミングにおいて被駆動部材3の動作を滑らかにすることが可能となる。
また、図8(b)に示すように、通常波形を用いた通常駆動信号の印加終了直後の静音駆動期間では、静音波形1を用いた静音駆動1、静音波形2を用いた静音駆動2、静音波形3を用いた静音駆動3、静音波形4を用いた静音駆動4の順で静音制御用のパルス信号が並べられた駆動信号が印加される。すなわち、静音駆動期間の終了に近づくに従って静音制御用のパルス信号における逆方向充電タイミングと通常駆動用のパルス信号における逆方向充電タイミングとの差が大きくなるように静音制御用のパルス信号が変化される。これにより、駆動軸2と被駆動部材3との間の摩擦結合を弱めることが可能となるので、移動中の被駆動部材を滑らかに停止させることができるとともに、通常駆動用のパルス信号と静音制御用のパルス信号との切り替えタイミングにおいて被駆動部材3の動作を滑らかにすることが可能となる。
次に、本実施形態に係る撮像装置の動作を説明する。図9は、本実施形態に係る撮像装置の被駆動部材3の移動制御を説明するフローチャートである。なお、図9においては、一例として、オートフォーカス用の移動レンズ102を移動させる場合を説明する。図9に示す制御処理は、制御部81により実行される。例えば、移動レンズ102の移動命令がCPU62から出力されたタイミングで実行される。
図9に示すように、CPU62は、最初に圧電素子1の駆動回数を設定する(S10)。例えば、CPU62は、移動開始直前における静音制御駆動回数、移動における通常駆動回数、移動終了直後における静音制御駆動回数を設定する。静音制御駆動回数として例えば4が設定される。駆動回数を設定した後に、CPU62は、通常の駆動信号のパルス時間を設定する(S12)。CPU62は、例えば、通常波形のパルス幅t1,t2、タイムラグtOFF、周期Tを、それぞれa、c、b、dに設定する。その後、静音波形1のパルス時間(タイムラグtOFF)を例えばb1に設定する(S14)。その後、静音波形2のパルス時間(タイムラグtOFF)を例えばb2に設定する(S16)。その後、静音波形3のパルス時間(タイムラグtOFF)を例えばb3に設定する(S18)。その後、静音波形4のパルス時間(タイムラグtOFF)を例えばb4に設定する(S20)。
そして、CPU62がS10〜S20の処理で設定した設定値をドライバ65に送信する。ロジック65aは、レジスタメモリ65bの設定値を変更する。そして、CPU62が駆動開始信号をドライバ65に送信する(S22)。ドライバ65は、S14〜S18の処理で設定した静音制御用の静音波形1〜4のうち、最も大きなタイムラグtOFFを有する静音波形(ここでは静音波形4)を選択して印加する(S24)。そして、駆動回数をカウントし、S10の処理で設定した移動開始直前における静音制御駆動回数と比較する(S26)。カウント値が静音制御駆動回数に満たない場合には、再度S24の処理に移行する。S24の処理では、ドライバ65は、未だ選択されていない静音制御用の静音波形1〜3のうち、最も大きなタイムラグtOFFを有する静音波形(ここでは静音波形3)を選択して印加する。このように、印加される静音波形のタイムラグtOFFが段々小さくなるように印加され、移動開始前において図8(a)に示す駆動信号となる。
S26の処理において、カウント値が静音制御駆動回数に達した場合には、ドライバ65は、S12の処理で設定した通常の駆動信号を印加する(S28)。そして、駆動回数をカウントし、S10の処理で設定した移動における通常駆動回数と比較する(S30)。カウント値が通常駆動回数に達するまで、S28の処理を繰り返し実行する。
S26の処理において、カウント値が通常駆動回数に達した場合には、ドライバ65は、S14〜S18の処理で設定した静音制御用の静音波形1〜4のうち、最も小さなタイムラグtOFFを有する静音波形(ここでは静音波形1)を選択して印加する(S32)。そして、駆動回数をカウントし、S10の処理で設定した移動終了直後における静音制御駆動回数と比較する(S34)。カウント値が静音制御駆動回数に満たない場合には、再度S32の処理に移行する。S32の処理では、ドライバ65は、未だ選択されていない静音制御用の静音波形2〜4のうち、最も小さなタイムラグtOFFを有する静音波形(ここでは静音波形2)を選択して印加する。このように、印加される静音波形のタイムラグtOFFが段々大きくなるように印加され、移動終了後において図8(b)に示す駆動信号となる。S34の処理において、カウント値が静音制御駆動回数に達した場合には、図9に示す制御処理を終了する。
以上、図9に示す制御処理を実行することにより、駆動開始前において図8(a)に示す駆動信号が印加され、駆動終了後において図8(b)に示す駆動信号が印加される。
上述したように、本実施形態に係る駆動装置及び撮像装置では、被駆動部材3を移動させるために、圧電素子1の正方向充電タイミングから逆方向充電タイミングまでの間隔と当該逆方向充電タイミングから次の正方向充電タイミングまでの間隔とが異なる通常駆動信号を印加するとともに、通常駆動信号の印加直前及び直後の所定期間において、通常駆動信号における逆方向充電タイミングのみを除々に変更した静音制御駆動信号を印加する。この静音制御駆動信号の逆方向充電タイミングは、被駆動部材3が通常駆動信号によって駆動する方向とは逆の方向に動かない範囲で除々に変化するように制御されるため、例えば被駆動部材3の移動速度を除々に大きく又は除々に小さく制御することができる。このため、通常駆動信号によって被駆動部材3が移動を開始する前、移動を終了した後において、駆動軸2と被駆動部材3との間の摩擦結合を弱めることが可能となるので、停止中の被駆動部材3を滑らかに移動させたり、移動中の被駆動部材3を滑らかに停止させたりすることができる。
また、本実施形態に係る駆動装置及び撮像装置によれば、静音制御に必要な構成を簡素化することができる。静音制御駆動信号を生成するためには、タイムラグtOFFの制御のほかに、例えば、駆動信号のパルス幅又は電圧を変更することも考えられる。例えば、図13に示すように、駆動パルス信号のパルス幅t1,t2及びタイムラグtOFFを、a1〜a4(a1>a2>a3>a4)、c1〜c4(c1>c2>c3>c4)、b1〜b4(b1>b2>b3>b4)と除々に変更させたり、図12に示すように、駆動パルス信号の電圧VをV1〜V4(V1>V2>V3>V4)と除々に変更させたりすることが考えられる。
しかし、駆動信号のパルス幅を変更する場合には、静音波形1〜4のパルス幅t1,t2及びタイムラグtOFFを変更しなければならない。図10は、パルス幅を制御する際に用いられるレジスタ設定例である。図10に示すように、図6(a)に示すレジスタ設定例に比べて、静音波形1〜4のパルス幅t1,t2を制御するためのレジスタが必要となる。このため、図9に示す静音波形に関するレジスタ設定処理(S14〜S20)が増加するため処理負荷が増大するとともに、レジスタメモリ65bの容量を圧迫するおそれがある。また、電圧制御する場合には、電圧回路が必要となる。図11は、電圧を制御する際に用いられるドライバ65の例である。図11に示すように、電圧を制御する場合には、降圧回路1〜4を備える必要があるので、図4に示すドライバ65に比べて回路規模が増大するおそれがある。これに対して、本実施形態に係る駆動装置及び撮像装置によれば、駆動信号のパルス幅及び電圧を制御することなく、通常駆動信号における逆方向充電タイミングのみを制御するという簡単な制御及び簡素な構成で、作動音の低減化を図ることが可能となる。
また、図12,13に示すように、駆動パルス信号のパルス幅を狭くした場合や、電圧を小さくした場合には、素子電流波形が変形する。このため、静電容量が変化した場合には、作動音の低減動作を安定して行う事ができない場合がある。図14は、静電容量の温度依存性を示すグラフである。静電容量C1〜C5は所定の材料における静電容量の温度依存性を示している。図14に示すように、温度が高くなるに従い静電容量が増大する傾向にある。このため、高温時及び低温時において、常温時の場合に比べて素子電流のピーク強度が変化する場合がある。
図15は、静音制御駆動信号に対する素子電流を温度ごとに示すグラフである。図15(A)は、タイムラグtOFFのみを制御させた静音制御駆動信号であり、図7(e)に示す静音駆動4の静音波形である。また、図15(B)は、電圧のみを制御させた静音制御駆動信号であり、図12(e)に示す静音駆動4の静音波形である。また、図15(C)は、パルス幅t1,t2、タイムラグtOFFを制御させた静音制御駆動信号であり、図13(e)に示す静音駆動4の静音波形である。図15(A)〜(C)の(a)は常温時の素子電流、(b)は低温時の素子電流、(c)は高温時の素子電流である。
電圧制御により静音制御駆動信号を生成する場合、図15(B)に示すように、常温での素子電流のピーク強度はh2となっている。この素子電流波形が示すように、電圧V4が小さいため、圧電素子1に十分充電がされていない状態で放電されている。そして、低温では静電容量が小さくなるため、低温での素子電流のピーク強度はh2よりも大きいh3となる。また、高温では静電容量が大きくなるため、高温での素子電流のピーク強度は、h2よりも小さいh4となる。このように、温度変化によって、ピーク強度は大きく変化する。
また、パルス幅及びタイムラグを制御することにより静音制御駆動信号を生成する場合、図15(C)に示すように、常温での素子電流のピーク強度はh5となっている。この素子電流波形が示すように、パルス幅a4が小さいため、圧電素子1に十分充電がされていない状態で放電されている。そして、低温では静電容量が小さくなるため、低温での素子電流のピーク強度はh5よりも大きいh6となる。また、高温では静電容量が大きくなるため、高温での素子電流のピーク強度は、h5よりも小さいh7となる。このように、温度変化によって、ピーク強度は大きく変化する。
これに対して、タイムラグのみを制御することにより静音制御駆動信号を生成する場合、図15(A)の常温での素子電流波形に示すように、圧電素子1に十分充電がされた状態で放電されていることがわかる。このため、低温、高温において静電容量が変化してもピーク強度h1を変化させることなく保つことができる。このように、タイムラグのみを制御することにより安定した静音制御動作を行うことができる。
また、個体差ばらつきによって圧電素子1の静電容量が変化する場合も考えられる。図16は、静音制御駆動信号に対する素子電流を静電容量ごとに示すグラフである。図16(A)は、タイムラグtOFFのみを制御させた静音制御駆動信号であり、図7(e)に示す静音駆動4の静音波形である。また、図16(B)は、電圧のみを制御させた静音制御駆動信号であり、図12(e)に示す静音駆動4の静音波形である。また、図16(C)は、パルス幅t1,t2、タイムラグtOFFを制御させた静音制御駆動信号であり、図13(e)に示す静音駆動4の静音波形である。図16(A)〜(C)の(a)は典型的な静電容量を有する圧電素子1の素子電流、(b)は静電容量が最も低い圧電素子1の素子電流、(c)は静電容量が最も高い圧電素子1の素子電流である。電圧のみを制御する場合、パルス幅及びタイムラグを制御する場合においては、図15と同様に、静電容量の違いによって充電ピーク強度に変化が生じる。一方、タイムラグのみを制御することによって静音制御駆動信号を生成する場合には、図15(A)の典型的な静電容量を有する圧電素子1の素子電流波形に示すように、圧電素子1に十分充電がされた状態で放電されている。このため、低温、高温において静電容量が変化してもピーク強度h1を変化させることなく保つことができる。このように、タイムラグのみを制御することにより安定した静音制御動作を行うことができる。
なお、上述した実施形態は本発明に係る駆動装置及び光学装置の一例を示すものである。本発明に係る駆動装置及び光学装置は、実施形態に係る駆動装置及び光学装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る駆動装置及び光学装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上述した実施形態では、オートフォーカス用の移動レンズ102の移動に適用する場合を説明したが、ズーム用の移動レンズ90やズームレンズユニット部16等の移動に適用してもよい。また、移動レンズ90以外の物(例えばステージやプローブ等)を移動させる際に適用してもよい。さらに、手振れ補正機構のように、光軸に直交する方向に駆動させる際の位置検出に適用してもよい。
また、上述した実施形態では、光学装置として撮像装置において好適に採用される例を説明したが、インクジェット式のプリントヘッドに採用してもよい。
また、上述した実施形態では、支持部材5を介し固定枠4に圧電素子1を取り付けて、圧電素子1の端部を自由端にした場合について説明したが、圧電素子1の端部を直接固定枠4に取り付けるものであってもよい。
また、上述した実施形態では、通常駆動信号の印加直前及び直後の所定期間において静音制御駆動信号を印加する例を説明したが、例えば、通常駆動信号の印加開始直前の所定期間のみ静音制御駆動信号を印加する場合であってもよいし、通常駆動信号の印加終了直後の所定期間のみ静音制御駆動信号を印加する場合であってもよい。
さらに、上述した実施形態では、撮像装置のアクチュエータとして圧電素子を用いたものを採用しているが、モータ、高分子アクチュエータ、形状記憶合金などの他の駆動部品を採用してもよい。