JP5349037B2 - 電流差動保護継電装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電流差動保護継電装置に関する。
電流差動保護継電装置は、送電線における自端電流と相手端電流との差電流の情報を用いて、送電線等に発生した事故(地絡事故や短絡事故など)の判定を行う保護継電装置である。この種の電流差動保護継電装置は、日本では、PCM電流差動リレーと呼ばれており、送電線の自端と相手端との間にPCM通信回線を構築するとともに、各端で計測された計測電流の瞬時値データをPCM通信回線を通じて相互に通信し合うことにより、事故判定に必要な差電流の演算を行っている。
一方、PCM通信回線は非常に高価なものであるため、近年、安価な通信線路を利用して、電流差動保護継電装置を構成しようとする動向がある。しかし、安価な通信線路は通信速度が遅く、電流瞬時値データの厳格な同期を取ることは困難である。そこで、瞬時値データに代わるデータを伝送することで、瞬時値データの生成周期とは異なる周期で伝送することを可能とし、伝送速度の低速化を実現して、標準的な通信装置を使用することが可能な電流差動保護継電装置を開示した公報が存在する(例えば、下記特許文献1)。
なお、高速なPCM通信回線を使用するか否かに関わらず、計測電流の瞬時値データを相互に通信し合う方式の電流差動リレーでは、送電線に配電用変電所や特高需要家などの分岐負荷がある場合、分岐負荷電流の影響を受け、誤った事故判定を行う虞があるという問題点が提起されている(例えば、下記特許文献2)。
特開2004−088920号公報 特開2001−197656号公報
上述したように、上記特許文献1に示される電流差動保護継電装置では、瞬時値データの生成周期とは異なる周期でデータ伝送を行うことを特徴としている。この場合、差電流の演算を行う受信側では、現実の瞬時値データの生成周期に関する情報、すなわち現実の系統周波数の情報が必要となってくる。一方、この特許文献1では、系統周波数の情報を伝送することは行ってはいない。また、特許文献1には、「データ伝送が周期的でなくても機能することは明らかである」とも記載されている(段落「0055」)。これらのことから明らかなように、特許文献1に示される手法は、系統周波数は定格周波数であること、すなわち系統周波数は変動しないことが前提となっている。
しかしながら、現実には、系統周波数が定格周波数からずれてしまうことは多々あることである。したがって、特許文献1に示される技術では、系統周波数の変動によって演算誤差が大きくなり、伝送速度の低速化を実現するためにデータ量を削減して伝送することとも相まって、演算精度が低下して誤作動を起こす虞があるという課題が認められる。
また、上記特許文献2などで提起される分岐負荷電流の影響は、今後の電流差動保護継電装置を構成する上で、解決しなければならない課題として位置づけられる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、安価な通信線路を利用した場合であっても、事故判定にかかる演算精度を確保し、事故起動の確実性を向上することができる電流差動保護継電装置を提供することを目的とする。また、本発明は、送電線に分岐負荷がある場合であっても、事故判定にかかる演算精度を確保した電流差動保護継電装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる電流差動保護継電装置は、保護対象の送電線の自端側にて計測された自端電流瞬時値データに基づき、自端電流回転ベクトルの変化分である自端電流回転ベクトル変化分を算出する第1の算出部と、前記自端電流回転ベクトルおよび、前記送電線の相手端側にて計測され、自端側に送信された相手端電流瞬時値データを用いて算出される相手端電流回転ベクトルに基づき、現時点における前記自端電流回転ベクトルと前記相手端電流回転ベクトルとの差分成分である両端電流回転ベクトル変化分を算出する第2の算出部と、前記自端電流回転ベクトル変化分の振幅値である自端電流回転ベクトル変化分振幅および、前記両端電流回転ベクトル変化分の振幅値である両端電流回転ベクトル変化分振幅に基づき、前記送電線に生じた異常が保護区内事故であるか否かを判定する判定部と、前記判定部によって保護区内事故と判定された場合に、制御対象の遮断器に対しトリップ指令を出力するトリップ指令出力部と、を備えたことを特徴とする。
本発明にかかる電流差動保護継電装置によれば、時間的な回転ベクトル変化分として、現時点における自端電流回転ベクトルと1サイクル前時点における自端電流回転ベクトルとの差分成分である自端電流回転ベクトル変化分、および、空間的な回転ベクトル変化分として、現時点における自端電流回転ベクトルと相手端電流回転ベクトルとの差分成分である両端電流回転ベクトル変化分を算出するとともに、自端電流回転ベクトル変化分の振幅値である自端電流回転ベクトル変化分振幅と、両端電流回転ベクトル変化分の振幅値である両端電流回転ベクトル変化分振幅と、に基づいて、保護区内における事故の有無を判定するようにしているので、事故判定にかかる演算精度を確保することができ、事故起動の確実性を向上することができるという効果が得られる。
以下に添付図面参照して、本発明にかかる電流差動保護継電装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
(用語の定義)
本発明にかかる電流差動保護継電装置のベースとなるスパイラルベクトル理論については、世の中には充分に浸透していない状況である。そこで、先ず、本明細書で用いる用語について定義しておく。
・電流差動保護継電装置:送電線(架空送電線・ケーブルなど)における保護区内の事故(区内事故)を判定するとともに、判定結果に基づいて所定のリレーを動作させる保護装置である。
・回転ベクトル:回転ベクトルは、複素数平面上において反時計周りに回転する動的フェーザであり、実測値は回転ベクトルの実数部である。なお、最近の交流理論では、交流波を余弦関数で模擬することが一般的に行われる(従来の交流理論では、交流波を正弦関数で模擬していた)。
・回転ベクトル変化分:1または数サイクル時間前後の2つの回転ベクトルの差分成分である。回転ベクトル変化分は、回転ベクトルと同様、実数部と虚数部を持つ複素数の状態変数である。なお、回転ベクトル変化分には、時間的な回転ベクトル変化分と空間的な回転ベクトル変化分との2種類がある。
・電流回転ベクトル:電流状態変数であり、その実数部は実測された電流瞬時値である。
・自端電流回転ベクトル:自端側における電流回転ベクトルである。
・相手端電流回転ベクトル:相手端側における電流回転ベクトルである。
・自端電流回転ベクトル変化分:現時点における自端電流回転ベクトルと、1または数サイクル前時点における自端電流回転ベクトルとの差分成分であり、時間的な電流回転ベクトル変化分である。
・自端電流回転ベクトル変化分振幅:自端電流回転ベクトル変化分の絶対値である。
・相手端電流回転ベクトル変化分:現時点における相手端電流回転ベクトルと、1または数サイクル前時点における相手端電流回転ベクトルとの差分成分である。
・相手端電流回転ベクトル変化分振幅:相手端電流回転ベクトル変化分の絶対値である。
・両端電流回転ベクトル変化分:現時点における自端電流回転ベクトルと相手端電流回転ベクトルとの差分成分であり、空間的な電流回転ベクトル変化分である。
・両端電流回転ベクトル変化分振幅:両端電流回転ベクトル変化分の絶対値である。
・電気学会EAST10モデル系統:日本国において定められたモデル系統であり、電力系統を模擬するための代表的なモデル系統である。
(装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる電流差動保護継電装置の構成を示す図である。図1において、本実施の形態にかかる電流差動保護継電装置1は、自端電流計測・A/D変換部2、第1の算出部としての自端電流回転ベクトル変化分算出部3、相手端電流時系列データ受信部4、第2の算出部としての両端電流回転ベクトル変化分算出部5、第3の算出部としての相手端電流回転ベクトル変化分算出部6、判定部としての電流差動保護判定部7、トリップ指令出力部としての遮断器(CB)トリップ指令送信部8、インターフェース9、記憶部10、遠方送信部11を備えている。ここで、電流差動保護継電装置1は、送電線の保護区間の一端(自端)に設置される装置であり、送電線の保護区間の他端(相手端)には、これと同等の電流差動保護継電装置(相手端装置16として図示)が配置されている。
(各構成部の機能)
つぎに、図1に示した各構成部の機能について説明する。なお、ここでは概略機能の説明に留め、各部の詳細な機能については、後述のフローチャートのところで説明する。
自端電流計測・A/D変換部2は、自端母線12近傍の送電線22に設置された変流器であるCT13を用いて、送電線22に流れる自端側の電流を計測するとともに、計測した電流(計測電流)に対し、基準波1周期を4N(Nは正の整数)等分した各々のサンプルタイミングでサンプリングすることで得られる時系列のデジタルデータ(自端電流瞬時値データ)を生成する。
自端電流回転ベクトル変化分算出部3は、自端電流計測・A/D変換部2が生成した電流瞬時値データを用いて、自端の各相における電流回転ベクトルの変化分を演算する。
相手端電流時系列データ受信部4は、通信回線15を経由して、相手端装置16が計測・生成した電流時系列データ(相手端電流瞬時値データ)を受信する。
両端電流回転ベクトル変化分算出部5は、自端の電流瞬時値データと、受信した相手端の電流瞬時値データとを用いて、現時点における自端電流回転ベクトルと相手端電流回転ベクトルとの差分成分である空間的な回転ベクトル変化分(両端電流回転ベクトル変化分)を演算する。
相手端電流回転ベクトル変化分算出部6は、受信した相手端の電流瞬時値データを用いて、相手端の各相における電流回転ベクトルの変化分(相手端電流回転ベクトル変化分)を演算する。
電流差動保護判定部7は、自端電流回転ベクトル変化分の振幅値(自端電流回転ベクトル変化分振幅)と、両端電流回転ベクトル変化分の振幅値(両端電流回転ベクトル変化分振幅)とに基づき、送電線22に生じた異常が区内事故(保護区内事故)であるか、区外事故(保護区外事故)であるか、あるいはそれ以外の事故(故障)であるかを判定する。
遮断器(CB)トリップ指令送信部8は、電流差動保護判定部7によって区内事故と判定された場合、自端側の遮断器であるCB14に対しトリップ指令を送信する。
インターフェース9は、上述した演算結果、判定結果を外部装置等に出力する出力機能を提供する。記憶部10は、上述の演算結果および判定結果を保持するための記憶機能を提供する。遠方送信部11は、自端にて計測・生成した電流時系列データ(自端電流時系列データ)を相手端装置16側に送信するための機能や、自端装置から離れた地点にいる監視員等に所要の情報を伝送するための伝送機能を提供する。
なお、相手端装置16においても、自端側装置である電流差動保護継電装置1と同様に、相手端母線17近傍の送電線22に設置されたCT18を用いて、送電線22に流れる相手端側の電流を計測するとともに、計測した電流(計測電流)に基づいて時系列のデジタルデータ(相手端電流時系列データ)が生成され、電流差動保護継電装置1に送信される。送信された相手端電流時系列データは、相手端電流時系列データ受信部4によって受信され、自端側に取り込まれる。また、相手端装置16側においても、送電線22に生じた事故が区内事故であるか、区外事故であるかが判定され、区内事故と判定された場合、相手端装置側の遮断器であるCB19に対しトリップ指令が送信される。
つぎに、本実施の形態にかかる電流差動保護継電装置における処理概念(アルゴリズム)について説明する。
図2は、事故判定の対象となる送電線を含む電力系統をモデル化した図であり、より詳細には、図2(a)は標定対象のモデル系統図であり、図2(b)は正常状態の電流回転ベクトルを示す図である。なお、説明の便宜上、以下の各図面では、自端側の電流瞬時値i1の電流の向きと、相手端側の電流瞬時値i2の電流の向きとは、互いに逆向きとなるように定義する(図2(a)参照)。
まず、正常状態の電流回転ベクトルは、複素平面上において、図2(b)のように表現できる。このとき、自端側の電流回転ベクトルは、次式で表すことができる。
Figure 0005349037
ここで、上記(1)式における各記号の意味は、次のとおりである。
1:電流振幅
ω:角速度
θ1:電流初期位相
また、上記(2)式に示した自端電流回転ベクトルは、次式のように実数部と虚数部とに分離して表すことができる。
Figure 0005349037
ここで、自端電流計測・A/D変換部2が生成した自端電流瞬時値データは、上記(2)式の実数部に代入される。また、虚数部については演算によって求めるが、この点については後述する。なお、本実施の形態の理論では、実測瞬時値を実数部と定義し、瞬時電流波形を余弦関数で表すことにする(従来理論(例えば上記特許文献1)では、瞬時電流波形を正弦関数で模擬している)。
また、相手端側の電流回転ベクトル(相手端電流回転ベクトル)も、上記(1)、(2)式に倣い、次式で表すことができる。
Figure 0005349037
Figure 0005349037
ここで、上記(3),(4)式における各記号の意味は、次のとおりである。
2:電流振幅
ω:角速度
θ2:電流初期位相
正常状態において、自端電流回転ベクトルおよび相手端電流回転ベクトルは、複素平面上に180度の位相差で反時計周りに回転するので、次の条件式が成立する。
Figure 0005349037
一方、両端電流回転ベクトル変化分を次式のように定義する。
Figure 0005349037
上記(6)式に示される電流変化分は、同時刻における異なる2つの場所の電流回転ベクトルの変化分を演算したものであり、空間的な電流回転ベクトル変化分を表している。一方、図2および(5),(6)式により、次式が成立する。
Figure 0005349037
上記(7)式において、ΔI12は、上記で定義した両端電流回転ベクトル変化分振幅であり、正常状態においては、両端電流回転ベクトルの実数部(実測瞬時電流値)および虚数部の各変化分は零である。
ここで、上記(7)式において注目される点は、従来理論で用いられている瞬時電流値の変化分ではなく、空間的な電流回転ベクトル変化分の実効値である両端電流回転ベクトル変化分振幅を利用していることである。なお、事故が継続している間(遮断器にて事故がクリアされる前)、両端電流回転ベクトル変化分が存在し、その振幅は大きな値をとる。
さらに、自端電流回転ベクトル変化分を次式のように定義する。
Figure 0005349037
上記(8)式において、T0は1サイクル時間であり、60Hzの電力系統では、T0=1/60=16.6667msであり、50Hzの電力系統では、T0=1/50=20msである。
また、正常状態においては、次式が成立する。
Figure 0005349037
上記(9)式において、ΔI1は、上記で定義した自端電流回転ベクトル変化分振幅であり、正常状態においては零となる。すなわち、正常状態において、複素平面上における自端電流回転ベクトルは、1または数サイクル時間の前後に同じ位置に存在することがわかる。
なお、事故直後の1,2サイクルの期間では、自端電流回転ベクトル変化分が存在し、その振幅は大きな値をとる。1,2サイクルの後、自端電流回転ベクトル変化分は零に戻る。すなわち、事故というイベントが存在している間のみ、自端電流回転ベクトル変化分が存在する。この事実は、送電線主保護を担う電流差動保護継電装置にとって、好都合である。
図3は、送電線に区内事故が発生した場合の電流回転ベクトルを示す図である。図3(b)において、各記号の意味はつぎのとおりである。
1(t−):事故直前の自端電流回転ベクトル
2(t−):事故直前の相手端電流回転ベクトル
1(t+):事故直後の自端電流回転ベクトル
2(t+):事故直後の相手端電流回転ベクトル
Δi1(t):事故前後における自端電流回転ベクトル変化分
Δi12(t):事故前後における両端電流回転ベクトル変化分
また、図3(b)において、事故直前の自端電流回転ベクトルi1(t−)は第4象限にあり、また、事故直前の相手端電流回転ベクトルi2(t−)は第2象限にあり、両者の変化分は零である。一方、事故直後の自端電流回転ベクトルi1(t+)は第4象限に留まっているのに対し、事故直後の相手端電流回転ベクトルi2(t+)は、瞬時に第2象限から第4象限に反転している。すなわち、区内事故が発生した場合、2つの電流回転ベクトルのうちの一つは(同図の例では相手端電流回転ベクトルi2(t))、複素平面上で反転している。このため、区内事故が発生した場合、両端電流回転ベクトル変化分にも大きな変化が生じ、その振幅値である両端電流回転ベクトル変化分振幅Δi12(t)も、大きな値をとることが分かる。なお、区内事故が発生したため、時間的な電流回転ベクトル変化分である自端電流回転ベクトル変化分振幅Δi1(t)も大きな値をとることが分かる。このように、図3は、本発明の事故判定に関する原理(電流回転ベクトルの反転)を的確に示している図である。
図4は、区外事故が発生した場合の電流回転ベクトルを示す図であり、各記号の意味は、図3と同一である。図4(b)において、事故直前の自端電流回転ベクトルi1(t−)は第4象限にあり、事故直前の相手端電流回転ベクトルi2(t−)は第2象限にあり、両者の変化分は零である。この点は、区内事故(図3(b)参照)の場合と同様である。一方、事故直後の自端電流回転ベクトルi1(t+)は第4象限に留まっており、また、事故直後の相手端電流回転ベクトルi2(t+)も第2象限に留まっている。すなわち、事故直後の相手端電流回転ベクトルi2(t+)も第2象限に留まっている点が、区内事故(図3(b)参照)の場合と相違する。このように、区外事故の場合、電流回転ベクトルは複素平面上で反転することはない。このため、区内事故が発生した場合、両端電流回転ベクトル変化分振幅Δi12(t)が大きな値をとることはない。なお、区外事故が発生したため、時間的な電流回転ベクトル変化分である自端電流回転ベクトル変化分振幅Δi1(t)は零よりも大きな値をとることが分かる。
図5は、自端電流回転ベクトル変化分振幅と両端電流回転ベクトル変化分振幅との関係を示すグラフである。図5において、横軸は自端電流回転ベクトル変化分振幅を示し、縦軸は両端電流回転ベクトル変化分振幅を示している。以下、図5のグラフを「電流差動保護継電装置の動作特性図」あるいは単に「動作特性図」と呼称する。
また、図5において、各記号の意味はつぎのとおりである。
ΔI1:自端電流回転ベクトル変化分振幅
ΔI12:両端電流回転ベクトル変化分振幅
ΔI10:自端電流回転ベクトル変化分振幅の大小を評価するための閾値振幅(他の閾値振幅と区別する場合には「第1の閾値振幅」と称する)
ΔI120:両端電流回転ベクトル変化分振幅の大小を評価するための閾値振幅(他の閾値振幅と区別する場合には「第2の閾値振幅」と称する)
α:自端電流回転ベクトル変化分振幅に対する両端電流回転ベクトル変化分振幅の比率を評価するための閾値角(例えば5度)(他の閾値角と区別する場合には「第1の閾値角」と称する)
β:両端電流回転ベクトル変化分振幅に対する自端電流回転ベクトル変化分振幅の比率を評価するための閾値角(例えば5度)(他の閾値角と区別する場合には「第2の閾値角」と称する)
図5の動作特性図において、次式を満足する領域を「不感帯I」と定義する。
Figure 0005349037
正常状態および分岐負荷がある系統において、自端電流回転ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅は、不感帯Iにあるため、電流差動保護継電装置は起動しない。
また、図5の動作特性図において、次式を満足する領域を「不感帯II」と定義する。
Figure 0005349037
上記(11)式が成立する場合、自端電流回転ベクトル変化分振幅が起動閾値を超えているにも関わらず、両端電流回転ベクトル変化分振幅は起動閾値を超えていないか、あるいは起動閾値を超えていても自端電流回転ベクトル変化分振幅に対する両端電流回転ベクトル変化分振幅の比率が小さいため、区外事故と判定することができる。
さらに、図5の動作特性図において、次式を満足する領域を「不感帯III」と定義する。
Figure 0005349037
上記(12)式が成立する場合、両端電流回転ベクトル変化分振幅が起動閾値を超えているにも関わらず、自端電流回転ベクトル変化分振幅が起動閾値を超えていないか、あるいは起動閾値を超えていても両端電流回転ベクトル変化分振幅に対する自端電流回転ベクトル変化分振幅の比率が小さいため、事故が発生していないと判定する。なお、両端電流回転ベクトル変化分振幅が、事故ではないのに大きな値をとる場合として、例えば相手端CTの断線や、通信回路中断などがある。ただし、電力系統では、相手端CTの断線や、通信回路中断などは、別の監視装置で行われるのが通常であり、電流差動保護継電装置によって事故と判定する必要性は小さい。
また、図5の動作特性図において、次式を満足する領域を「動作領域」と定義する。
Figure 0005349037
上記(13)式が成立する場合、自端電流回転ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅の双方が起動閾値を超えており、区内事故と判定することができる。
なお、自端CTの断線などが生起した場合、自端電流回転ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅の双方が同時に大きくなって動作領域に入る場合があるが、この場合、相手端電流回転ベクトル変化分振幅の大きさでロックをかけることができる。なぜなら、自端CTの断線などが生起した場合であっても、事故が発生していない場合には、相手端電流回転ベクトル変化分振幅は小さい値をとるからである。このため、相手端電流回転ベクトル変化分振幅の大きさをロック要素として用いることが可能である。
上記の説明から理解できるように、自端電流回転ベクトル変化分振幅の大小を評価するための閾値である「第1の閾値振幅」および両端電流回転ベクトル変化分振幅の大小を評価するための閾値である「第2の閾値振幅」は、事故が発生していないと即時に判定するための起動閾値(電流値パラメータ)である。
また、自端電流回転ベクトル変化分振幅に対する両端電流回転ベクトル変化分振幅の比率(両端電流回転ベクトル変化分振幅と自端電流回転ベクトル変化分振幅との比率)を評価するための閾値角である「第1の閾値角」は、区内事故と判定するか、区外事故と判定するかの領域を規定するための起動閾値(閾値角パラメータ)である。
さらに、両端電流回転ベクトル変化分振幅に対する自端電流回転ベクトル変化分振幅の比率(自端電流回転ベクトル変化分振幅と両端電流回転ベクトル変化分振幅との比率)を評価するための閾値角である「第2の閾値角」は、区内事故と判定するか、事故ではないと判定するかの領域を規定するための起動閾値(閾値角パラメータ)である。
なお、上述した判定手法は、事故発生と同時に生じる自端電流回転ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅を用いる手法であるため、本来的に起動判定の高速性を有している。
図6は、区内事故が発生した場合の動作点を動作特性図上にプロットした図である。区内事故発生の直前では、自端電流回転ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅の双方は零であり、動作特性図上の原点に位置している。その後、事故直後の例えば1サイクル内では、自端電流ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅の双方とも大きな値をとり、動作領域内の例えば破線部で示した領域に入る。このとき、電流差動保護継電装置は起動する。なお、電流差動保護継電装置は主保護として用いることが期待されるため、本実施の形態の電流差動保護継電装置が有する起動判定の高速性は、電力系統にとって好都合である。
さらに、事故発生から例えば1サイクルが経過した後では、自端電流回転ベクトル変化分振幅は小さな値となる一方で、両端電流回転ベクトル変化分振幅は大きな値を保持したままである。また、自端電流回転ベクトル変化分振幅は小さな値をとるが零ではない。その理由は、事故中において、電力系統の事故電流には、商用周波数成分以外の直流および高調波成分が存在し、商用周波数成分も変化しているからである。なお、遮断器(CB)がトリップすると、自端電流回転ベクトルおよび両端電流回転ベクトル変化分振幅は、共に零になる。
図7は、区外事故が発生した場合の動作点を動作特性図上にプロットした図である。区外事故発生の直前では、自端電流回転ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅の双方は零であり、動作特性図上の原点に位置している。その後、事故直後の例えば1サイクル内では、自端電流ベクトル変化分振幅のみが大きな値をとり、不感帯IIの領域内の例えば破線部で示した領域に入る。さらに、事故発生から例えば1サイクルが経過した後では、自端電流回転ベクトル変化分振幅は小さな値となり、不感帯Iの領域に戻る。
図8は、例えば相手端CTに断線が生じた場合(以下単に「相手端断線事故」という)の動作点を動作特性図上にプロットした図である。相手端断線事故が発生する直前では、自端電流回転ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅の双方は零であるが、相手端断線事故の発生直後では、自端電流ベクトル変化分振幅は零の状態を維持する一方で、両端電流回転ベクトル変化分振幅は大きな値をとり、不感帯IIIの領域に移動することになる。
図9は、本実施の形態にかかる電流差動保護継電装置の動作を示すフローチャートであり、上述した処理概念(アルゴリズム)を具現化したフローチャートである。
(ステップS101)
ステップS101では、自端電流計測・A/D変換部2によって、自端電流瞬時値データが生成される。なお、自端電流瞬時値データは、上記(1)および(2)式によって表されるが、実測された自端電流瞬時値データは、上記(2)式の実数部に代入される。
(ステップS102)
ステップS102では、自端電流回転ベクトル変化分算出部3によって、自端電流回転ベクトル変化分および自端電流回転ベクトル変化分振幅が算出される。この処理において、まず、自端電流回転ベクトル変化分は、次式を用いて算出することができる。
Figure 0005349037
上記(14)式において、T0は1サイクル時間である。なお、実数部には実測値が代入され、虚数部には、例えば次式を用いて計算された値が代入される。
Figure 0005349037
また、自端電流回転ベクトル変化分振幅は、次式を用いて算出することができる。
Figure 0005349037
なお、自端電流回転ベクトル変化分振幅は、次式で計算することもできる。
Figure 0005349037
上記(17)式を用いる利点は、積分計算により、高調波成分の影響を低減することができる点にある。ただし、(17)式では積分演算を用いているため、演算時間は(16)式よりもかかることになる。
(ステップS103)
ステップS103では、相手端装置16によって生成された時系列のデジタルデータ(相手端電流時系列データ)が自端側に送信され、送信された時系列デジタルデータは、相手端電流時系列データ受信部4によって受信され、電流差動保護継電装置1に取り込まれる。
(ステップS104)
ステップS104では、両端電流回転ベクトル変化分算出部5によって、両端電流回転ベクトル変化分および両端電流回転ベクトル変化分振幅が算出される。この処理において、まず、両端電流回転ベクトル変化分は、次式を用いて算出することができる。
Figure 0005349037
上記(18)式において、実数部には、上記(2)、(4)式に示される実測値が代入され、虚数部には、上記(15)式、および後述する(22)式を用いて計算された値が代入される。
また、両端電流回転ベクトル変化分振幅は、次式を用いて算出することができる。
Figure 0005349037
なお、両端電流回転ベクトル変化分振幅は、次式で計算することもできる。
Figure 0005349037
上記(20)式を用いる利点は、積分計算により、高調波成分の影響を低減することができる点にある。ただし、(20)式では積分演算を用いているため、演算時間は(19)式よりもかかることになる。
なお、同時性を保持するため、自端電流回転ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅の各計算式は、同タイプの演算式で計算することが好ましい。すなわち、(16)式を用いて自端電流回転ベクトル変化分振幅を計算する場合には、(19)式を用いて両端電流回転ベクトル変化分振幅を計算することが好ましく、(17)式を用いて自端電流回転ベクトル変化分振幅を計算する場合には、(20)式を用いて両端電流回転ベクトル変化分振幅を計算することが好ましい。
(ステップS105)
ステップS105では、相手端電流回転ベクトル変化分算出部6によって、相手端電流回転ベクトル変化分および相手端電流回転ベクトル変化分振幅が算出される。この処理において、まず、相手端電流回転ベクトル変化分は、次式を用いて算出することができる。
Figure 0005349037
上記(21)式において、T0は1サイクル時間である。なお、実数部には実測値が代入され、虚数部には、例えば次式を用いて計算された値が代入される。
Figure 0005349037
また、相手端電流回転ベクトル変化分振幅は、次式を用いて算出することができる。
Figure 0005349037
なお、相手端電流回転ベクトル変化分振幅は、次式で計算することもできる。
Figure 0005349037
上記(24)式を用いる利点は、積分計算により、高調波成分の影響を低減することができる点にある。ただし、(24)式では積分演算を用いているため、演算時間は(23)式よりもかかることになる。
(ステップS106)
ステップS106では、区内事故であるか否かの判定処理が行われる。この判定処理は、次式を用いて判定することができる。なお、区内事故ではないと判定した場合(ステップS106,No)、ステップS101の処理に戻り、区内事故であると判定した場合(ステップS106,Yes)、ステップS107に移行する。
ステップ105では、つぎの処理が行われる。まず、自端電流回転ベクトル変化分振幅と両端電流回転ベクトル変化分振幅とにより決定される動作点が、動作特性図の動作領域に連続して3点プロットされた場合であって、且つ、つぎの条件式を満足する場合に区内事故が発生したと判定することができる。
Figure 0005349037
なお、上記(25)式における各記号の意味は、次のとおりである。
ΔI2(t):相手端電流回転ベクトル変化分振幅
ΔI20:相手端電流回転ベクトル変化分振幅の大小を評価するための閾値振幅(他の閾値振幅と区別する場合には「第3の閾値振幅」と称する)
ここで、動作特性図の動作領域に連続して3点プロットされた場合とは、例えば30度サンプリングの50Hzの系統であれば、5msの時間において、上記(13)式を満足する場合である。また、上記(25)式は、上述したように自端CTの断線などが生起した場合のロック機能を果たす条件式である。その理由は、事故ではなく自端CTが断線した場合、自端電流回転ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅の双方が同時に大きな値となるが、相手端電流回転ベクトル変化分振幅は大きな値にはならないからである。したがって、(25)式を起動条件とすることにより、(13)式が成立した場合であっても、(25)式が成立しなければ保護起動はロックされる。
なお、ここでは、動作点の連続3点が動作領域に入った場合を一例として示したが、この例に限定されるものではない。
(ステップS107)
ステップS106では、遮断器(CB)をトリップするための遮断器(CB)トリップ信号が送信される。
(シミュレーション結果)
つぎに、本実施の形態にかかる電流差動保護継電装置に対して行ったシミュレーション結果について、図10〜図16の各図面を参照して説明する。
図10は、日本国において代表的な電気学会EAST10モデル系統(50Hz系統)を示す図である。( )内の番号はノード番号を表し、< >内の番号はブランチ番号を示している。いま、このモデル系統において、ノード11に自端装置を配置し、ノード21に相手端装置を配置するものとする。また、つぎの事故ケースをシミュレートする。
・ケース1:ノード11から50%の距離A点に1回送電線のA相地絡事故を発生させる。
・ケース2:ノード11から90%の距離B点に1回送電線のA相地絡事故を発生させる。
ケース3:ノード21からノード22に向け2回送電線があるが、当該送電線上のノード21の至近端C点に1回送電線のA相地絡事故を発生させる。
図11は、ケース1(A相、区内事故50%)におけるA相電流波形を示す図である。図11に示されるように、事故時刻(t=0秒)において、破線で示される相手端の電流回転ベクトルが反転していることが分かる。すなわち、事故の発生前では、両電流は逆位相で変化しているが、事故の発生後では、両電流は同位相で変化している。
図12は、ケース1(A相、区内事故50%)におけるA相動作特性を示す図である。破線で示す各直線は、図5〜図8に示した各領域の境界を示す境界線である。
図12に示されるように、自端電流回転ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅は、同時に大きくなって、事故起動することが分かる。ここで、本シミュレーションでは、自端電流回転ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅にて決定される動作点が動作領域に入ってから3点目を事故起動点としている(以下のシミュレーションでも同じ)。なお、この場合の総合動作時間は、装置のサンプリング周波数を600Hz(=50Hz×360°/30°(30°サンプリングの場合))とすれば、“5ms+相手端電流の通信転送時間”となる。したがって、送電線の主保護に必要な高速性を有しているということができる。
なお、上記シミュレーション結果では、A相動作特性についてのみを示し、B相動作特性およびC相動作特性の表示は省略している。しかしながら、B相動作特性およびC相動作特性については、いずれも不感帯領域にあり、いずれも不動作となる。
図13は、ケース2(A相、区内事故90%)におけるA相電流波形を示す図である。図13に示されるように、事故時刻(t=0秒)において、破線で示される相手端の電流回転ベクトルが反転していることが分かる。なお、相手端の至近端に事故が発生しているため、図11の場合(A相、区内事故50%)と比較して、相手端電流のほうが大きいことが理解できる。
図14は、ケース2(A相、区内事故90%)におけるA相動作特性を示す図である。図14に示されるように、自端電流回転ベクトル変化分振幅および両端電流回転ベクトル変化分振幅は、同時に大きくなって、事故起動することが分かる。なお、相手端の至近端に事故が発生しているため、図12の場合(A相、区内事故50%)と比較して、動作点を結ぶ直線の傾きが大きいことが理解できる。また、上記シミュレーション結果においても、B相動作特性およびC相動作特性の表示を省略しているが、B相動作特性およびC相動作特性のいずれも不感帯領域にあり、いずれも不動作となる。
図15は、ケース3(A相、区外事故)におけるA相電流波形を示す図である。本ケースは区外事故であるため、相手端の電流回転ベクトルの位相反転が発生しないことが分かる。すなわち、事故発生の前後において、逆位相で変化する両電流の波形は変わらない。
図16は、ケース3(A相、区外事故)におけるA相動作特性を示す図である。本ケースでは区外事故が発生しているため、自端電流回転ベクトル変化分振幅は、比較的大きな値をとっている。しかしながら、相手端電流回転ベクトルに位相反転が発生しないため、両端電流回転ベクトル変化分振幅は小さい。したがって、本ケースでは事故起動しないことが分かる。なお、上記シミュレーション結果においても、B相動作特性およびC相動作特性の表示を省略しているが、B相動作特性およびC相動作特性のいずれも不感帯領域にあり、いずれも不動作となる。
なお、上記シミュレーション結果では、A相の地絡絡事故を一例として説明してきたが、他相の地絡事故、また、短絡事故に対しても同様な結果が得られることは言うまでもない。
以上説明したように、本実施の形態にかかる電流差動保護継電装置によれば、時間的な回転ベクトル変化分として、現時点における自端電流回転ベクトルと1または数サイクル前時点における自端電流回転ベクトルとの差分成分である自端電流回転ベクトル変化分、および空間的な回転ベクトル変化分として、現時点における自端電流回転ベクトルと相手端電流回転ベクトルとの差分成分である両端電流回転ベクトル変化分を算出するとともに、自端電流回転ベクトル変化分の振幅値である自端電流回転ベクトル変化分振幅と、両端電流回転ベクトル変化分の振幅値である両端電流回転ベクトル変化分振幅と、に基づいて、保護区内における事故の有無を判定するようにしているので、事故判定にかかる演算精度を確保することができ、事故起動の確実性を向上することができる。
なお、上記手法は、時間的な回転ベクトル変化分である自端電流回転ベクトル変化分に加え、空間的な回転ベクトル変化分である両端電流回転ベクトル変化分を利用する手法であるため、系統周波数が定格周波数からずれてしまうような時間的変動要素の影響を受けない両端電流回転ベクトル変化分の作用により、所望する演算精度の確保が可能となる。また、この作用により、時間的変動要素の大きい分岐負荷がある送電線に対しても、所望する演算精度の確保が可能となる。
また、本実施の形態にかかる電流差動保護継電装置によれば、保護区内事故と判定する条件の一つとして、受信した相手端電流瞬時値データを用いて算出した相手端電流回転ベクトル変化分振幅の情報をさらに用いるようにしているので、事故起動の確実性をさらに向上することができる。
以上のように、本発明にかかる電流差動保護継電装置は、安価な通信線路を利用した場合であっても、事故判定にかかる演算精度を確保し、事故起動の確実性を向上することができる発明として有用である。
本発明の一実施形態にかかる電流差動保護継電装置の構成を示す図である。 事故判定の対象となる送電線を含む電力系統をモデル化した図である。 送電線に区内事故が発生した場合の電流回転ベクトルを示す図である。 区外事故が発生した場合の電流回転ベクトルを示す図である。 自端電流回転ベクトル変化分振幅と両端電流回転ベクトル変化分振幅との関係を示すグラフである。 区内事故が発生した場合の動作点を動作特性図上にプロットした図である。 区外事故が発生した場合の動作点を動作特性図上にプロットした図である。 相手端CTに断線が生じた場合の動作点を動作特性図上にプロットした図である。 本実施の形態にかかる電流差動保護継電装置の動作を示すフローチャートである。 日本国において代表的な電気学会EAST10モデル系統(50Hz系統)を示す図である。 ケース1(A相、区内事故50%)におけるA相電流波形を示す図である。 ケース1(A相、区内事故50%)におけるA相動作特性を示す図である。 ケース2(A相、区内事故90%)におけるA相電流波形を示す図である。 ケース2(A相、区内事故90%)におけるA相動作特性を示す図である。 ケース3(A相、区外事故)におけるA相電流波形を示す図である。 ケース3(A相、区外事故)におけるA相動作特性を示す図である。
符号の説明
1 電流差動保護継電装置
2 自端電流計測・A/D変換部
3 自端電流回転ベクトル変化分算出部(第1の算出部)
4 相手端電流時系列データ受信部
5 両端電流回転ベクトル変化分算出部(第2の算出部)
6 相手端電流回転ベクトル変化分算出部(第3の算出部)
7 電流差動保護判定部(判定部)
8 遮断器(CB)トリップ指令送信部(トリップ指令出力部)
9 インターフェース
10 記憶部
11 遠方送信部
12 自端母線
13,18 CT
14,19 CB
15 通信回線
16 相手端装置
17 相手端母線
22 送電線

Claims (4)

  1. 保護対象の送電線の自端側にて計測された自端電流瞬時値データに基づき、自端電流回転ベクトルの変化分である自端電流回転ベクトルの変化分積分計算にて算出する第1の算出部と、
    前記自端電流回転ベクトルおよび、前記送電線の相手端側にて計測され、自端側に送信された相手端電流瞬時値データを用いて算出される相手端電流回転ベクトルに基づき、現時点における前記自端電流回転ベクトルと前記相手端電流回転ベクトルとの差分成分である両端電流回転ベクトル変化分を積分計算にて算出する第2の算出部と、
    前記自端電流回転ベクトル変化分の振幅値である自端電流回転ベクトル変化分振幅および、前記両端電流回転ベクトル変化分の振幅値である両端電流回転ベクトル変化分振幅に基づき、前記送電線に生じた異常が保護区内事故であるか否かを判定する判定部と、
    前記判定部によって保護区内事故と判定された場合に、制御対象の遮断器に対しトリップ指令を出力するトリップ指令出力部と、
    を備えたことを特徴とする電流差動保護継電装置。
  2. 前記自端電流回転ベクトル変化分振幅(ΔI1)の大小を評価する第1の閾値振幅(ΔI10)と、
    前記両端電流回転ベクトル変化分振幅(ΔI 12 )の大小を評価する第2の閾値振幅(ΔI120)と、
    前記自端電流回転ベクトル変化分振幅に対する前記両端電流回転ベクトル変化分振幅の比率を評価する第1の閾値角(α)と、
    前記両端電流回転ベクトル変化分振幅に対する前記自端電流回転ベクトル変化分振幅の比率を評価する第2の閾値角(β)と、
    が設定されるとき、
    前記判定部は、次式を満足するときに保護区内事故が発生したと判定することを特徴とする請求項1に記載の電流差動保護継電装置。
    Figure 0005349037
  3. 受信した前記相手端電流瞬時値データを用いて、前記相手端における電流回転ベクトルの変化分である相手端電流回転ベクトル変化分を積分計算にて算出する第3の算出部をさらに備え、
    前記判定部は、保護区内事故と判定する条件の一つとして、前記相手端電流回転ベクトル変化分の振幅値である相手端電流回転ベクトル変化分振幅の情報を用いることを特徴とする請求項1に記載の電流差動保護継電装置。
  4. 前記自端電流回転ベクトル変化分振幅(ΔI1)の大小を評価する第1の閾値振幅(ΔI10)と、
    前記両端電流回転ベクトル変化分振幅(ΔI 12 )の大小を評価する第2の閾値振幅(ΔI120)と、
    前記相手端電流回転ベクトル変化分振幅(ΔI2)の大小を評価する第3の閾値振幅(ΔI20)と、
    前記自端電流回転ベクトル変化分振幅に対する前記両端電流回転ベクトル変化分振幅の比率を評価する第1の閾値角(α)と、
    前記両端電流回転ベクトル変化分振幅に対する前記自端電流回転ベクトル変化分振幅の比率を評価する第2の閾値角(β)と、
    が設定されるとき、
    前記判定部は、次式を満足するときに保護区内事故が発生したと判定することを特徴とする請求項3に記載の電流差動保護継電装置。
    Figure 0005349037
    Figure 0005349037
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