JP5344417B2 - 水油界面を利用した薬物−シリカ封入体の製造法 - Google Patents
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Description
骨髄炎は、骨組織の感染を治療するのが極めて困難である。通常、この治療は感染された骨範囲の壊死組織切除法によって行われる。切除した空洞部には、生体吸収性の無いSeptopal(登録商標)チェーンまたはゲンタマイシンを含有するコラーゲンフリースを充填することによる、複数の抗生物質での局所的治療が有効である。この場合、ゲンタマイシンは細菌による病原菌を殺す高い用量で局部的に放出される。その他に骨髄炎の炎症を抑えるために抗生物質を取り込ませたカルシウム塩の骨代用材料が知られている(特許文献1)。
下顎骨や上顎骨には、(a)う蝕、歯周疾患に継発する歯性の慢性骨髄炎、(b) 悪性腫瘍の放射線治療後の慢性骨髄炎である放射線骨髄炎、(c)バイフォスフォネート投与による慢性骨髄炎が多く、しかも治療が困難なために問題となっている。また、顎口腔外科領域に頻発する嚢胞摘出後の感染を防止しつつ骨腔を補填できる材料や、抗生物質を含有し生体吸収性もある骨接合材料の開発が課題となっている。
慢性骨髄炎の治療は、(a)原因歯の抜去、(b)感染骨髄の外科的除去、(c)全身的、局所的抗生物質療法からなる。特に(c)抗生物質療法は、術後早期から開始され、かなりの長期間にわたる場合が多い。しかし、骨内への抗生物質の移行は不十分で、従って完全治癒の可能性は低く、患者には大きな負担となっている。
効果の持続するアジスロマイシン製剤(ファイザー社、ジスロマック)が開発されている。しかし服用回数や組織移行性が改善されたのみであり、長期の服用を必要とする点で未だに問題が未解決のまま残っている。
近年の生体材料学の急速な進展によって、多くの生体内で吸収されて組織置換される材料が開発されている(非特許文献3)。用いられる材料には、リン酸カルシウム系のセラミックス材料、ポリ乳酸やポリグリコール酸やポリ乳酸グリコール酸共重合体のような合成高分子材料、コラーゲンやゼラチンなどの天然高分子材料、腸線などの生物由来材料に分類される。一般的な用途として、外科手術時の組織の縫合、固定、被覆、ステントなどの形態保持、補強や骨欠損の補填、組織誘導の足場、薬剤を徐放するコーティング材としての利用が挙げられる。このうち、口腔外科領域や整形外科領域に於いては、主に組織置換される材料として手術用縫合糸、骨接合剤、骨欠損補填剤が臨床応用されている。近年の開発例としては、ポリ乳酸とヒドロキシアパタイトを圧縮成型した吸収性骨接合剤(非特許文献4)が知られている。
生体材料に限らず、一般的な無機質素材であるシリカ合成には、ゾル-ゲル法が多く用いられる。これは、アルコキシシラン(例えば、テトラエトキシシラン Si(OEt)4)を酸性条件下(例えばpH 1.5〜3.0)での水―メタノール(例えば1:1)混合溶媒中で、加水分解と脱水縮合によりSiO2固体を生成する方法である。同様に塩基性条件下でもSiO2固体を生成することができる。通常は均一系で反応を進行させている。
シリカをインプラントとして臨床応用した例には、リン酸カルシウム系ガラスが多い。特にバイオガラスと呼ばれるNa2O-CaO-SiO2-P2O5系ガラスは、骨と直接結合する最初の例として知られている(非特許文献5)。ここに於いてシリカの成分SiO2が用いられているのは、生体適合性の期待されるリン酸カルシウムそのものでは強度が不足して脆い材料になりやすかったこと、ゾル-ゲル法により材料を作成できること、の2点の理由が考えられる。
インプラント(特許文献4)。ゾル-ゲル法により作成したシリカを用いる、ケイ酸カルシウム組成物(特許文献5)などがある。
組織置換を目的とするインプラントには、組織形成を促進する分子を放出する機能を持つものが知られている。例えば骨形成を目的として、酸性メタノール水溶液(水5.4mL、テトラメトキシシラン5.4mL、メタノール5.0mL、1N HClaq.10μLの混合物)を用いたゾル-ゲル法によってサイトカインであるTGF-β1を取り込ませた生理活性ガラスが作成されている(特許文献7)。
HClaq. 0.5μL)したジグリセリルシラン(0.2g)水溶液に、微量の血液凝固第Xa因子(0.011μg)を封入した、ゾル-ゲル法による実施例が開示されている(特許文献2)。これらは何れも酸の添加によるゾル-ゲル反応の進行や、多量のアルコールを用いた均一系水溶液でのシリカ形成を行っている点に問題がある。
近年,ポリ乳酸を代表とする生体吸収性材料の研究開発が進み,一部分は既に日常臨床に使われている.歯科口腔外科臨床における生体吸収性材料の適用は,顎骨骨折の場合の骨接合プレートなどから,薬剤の局所的持続的投与、手術後の骨腔の補填材などへの応用などが幅広く考えられる。一般にポリ乳酸に加えて多く検討される材料にはリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイトやこれらの複合材料があるが、分解の遅いことや、血流中への移行による塞栓が強く懸念されるために、口腔外科学分野においてほとんど使用されていない。そこでリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイトを使わずに、抗生物質を局所投与できる新規な生体吸収性材料が求められている。
期間作用と局所的投与を行うことのできる新規な材料を提供することにある。
2003, 96, 401-406.)による。もう一つはケイ藻類の外骨格を形成するポリアミン化合物(N. Kroger, R. Deutzmann, C. Bergsdorf, M. Sumper. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2000, 97, 14133-14138.)による。これらに於けるシリカ生成の特徴として何れも生理的pHの範囲内でSiO2固体が生成している点にある。これは従来の酸、アルカリ、多量のアルコールを用いたゾルゲル法のシリカ生成と大きく異なっている。
アジスロマイシンについて、3種類の濃度(0、5、10 mg)のリン酸緩衝水溶液 (200μL, 60 mM, pH 6.5)を調製した。調製した水溶液に対し界面を乱さないように、静かにテトラエトキシシラン (200μL)を上層に加え、4℃にて静置した。
(1)薬物のシリカ封入体の製造方法であって、薬物の水性溶液の層とアルコキシシランの液層からなる二層分離液を調製して、該二層分離液の界面において薬物のシリカ封入体を生成させることを特徴とする方法。
(2)前記水性溶液のpHが6.2〜8.2であることを特徴とする、(1)の方法。
(3)前記水性溶液のpHが6.5〜7.5であることを特徴とする、(1)の方法。
(4)薬物の水性溶液が、薬物がリン酸緩衝液に溶解した水性溶液であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかの方法。
(5)薬物が、細胞壁合成阻害作用型抗生物質、細胞膜阻害作用型抗生物質、核酸合成阻害作用型抗生物質、蛋白合成阻害作用型抗生物質、葉酸代謝経路阻害型抗生物質、βラクタマーゼ阻害薬、サルファ薬、抗感染症薬、および防腐剤からなる群より選択される少な
くとも一つの薬物である、(1)〜(4)のいずれかの方法。
(6)薬物が、アンピシリン、バカンピシリン、アモキシシリン、ピブメシリナム、アモキシシリン、スルタミシリン、ピペラシリン、アスポキシリン、ベンジルペニシリン、クロキサシリン、オキサシリン、カルベニシリン、セファロクル、セフロキサジン、セファドロキシル、セフィキシム、セフテラムピボキシル、セフロキシムアキセチル、セフポドキシムプロキセチル、セフォチアムヘキセチル、セフジニル、セフチブテン、セフジトレンピボキシル、セフカペンピボキシル、セファゾリン、セフォゾプラン、セフメタゾール、セフォチアム、セフスロジン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフメノキシム、セフトリアキソン、セフタジシム、セフォジシム、セフピロム、セフェピム、ファロペネム、イミペネム、パニペネム、メロペネム、ビアペネム、ドリペネム、アズトレオナム、バンコマイシン、テイコプラニン、ホスミシン、硫酸ポリミキシンB、硫酸コリスチン、グラミシジンS、アンホテリシンB、レボフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、ロメフロキサシン、トスフロキサシン、スパルフロキサシン、ガチフロキサシン、プルリフロキサシン、モキシフロキサシン、パズフロキサン、リファンピシン、ジベカシン、トブラマイシン、アミカシン、イセパマイシン、ミクロノマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ロキタマイシン、ジョサマイシン、ロキスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、テリスロマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、クロラムフェニコール、リンコマイシン、クリンダマイシン、トリメトプリム、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、サルファメトキサゾール、サラゾピリン、イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール、グリセオフルビン、アムホテリシンB、5−フルオロシトシン、フルコナゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール、アシクロビル、ガンシクロビル、ホスカビル、イドクスウリジン、アマンタジン、インターフェロンγ、リバピリン、ラミプジン、メトロニダゾール、チニダゾール、フルコナゾール、メベンダゾール、パモ酸ピランテル、ジエチルカルバマジン、プラジカンテル、アルベンダゾール、イベルメクチン、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、リネゾリド(linezolid)、スペクチノマイシン、ネチルマイシン、シソマイシン(sisomycin)、リンコサミン(lincosamin)、ラモプラニン(ramoplanin)、テリスロマイシン(telithromycin)、ナイスタチン、フシジン酸(fusidic acid)、クロルヘキシジン、およびポリヘキサニド(polyhexanid)からなる群より選択される薬物である、(1)〜(4)のいずれかの方法。
(7)(1)〜(6)のいずれかの方法によって薬物のシリカ封入体を製造し、得られたシリカ封入体を、生体に許容される支持材と混合するか、または該支持材にカプセル状に包み込むことを特徴とする、医薬組成物の製造方法。
(8)生体に許容される支持材が生体内分解性ポリマーである、(7)の方法。
(9)生体内分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、ポリヒドロキシカルボン酸、ポリデプシペプチド、およびポリアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一つ以上のポリマーである、(8)の医薬組成物。
(10)医薬組成物が、骨髄炎の治療用または予防用である、(7)〜(9)のいずれかの方法。
(11)医薬組成物が、骨腔補填剤または骨接合剤である、(7)〜(10)のいずれかの方法。
(12)(1)〜(6)のいずれかの方法によって製造された、薬物のシリカ封入体。
(13)(12)の薬物のシリカ封入体を、生体に許容される支持材に混合するか、または該支持材にカプセル状に包み込んでなる、医薬組成物。
る慢性骨髄炎の予防や治療に対して、抗生物質の長期間作用と局所的投与を行う新規な材料として有用であり、手術後の骨腔への補填剤などとしての応用も期待される。
R1〜R4に示されるアルキル基の種類は、製剤目的にあわせて任意に選択でき、特に制限されないが、R1〜R4がCnH2n+1-で表される短鎖のアルキル基の場合、炭素数nが1〜3のものが好ましい。
なお、薬物の水性溶液の層とアルコキシシランの液層からなる二層分離液においては、薬物の水性溶液の層とアルコキシシランの液層のいずれが上であってもよく、いずれが上になるかは各層の液体の比重による。
例えば、R1〜R4がC2H5-で表される、テトラエトキシシランは常温で液体であり、通常、薬物の水性溶液より比重が軽いために、二層分離液では上層に配分される。
具体的には、細胞壁合成阻害作用型抗生物質(ペニシリン系、セフェム・オキサセフェム系、ペネム・カルバペネム系、モノバクタム系、ペプチド系、ホスホマイシン系)、細胞膜阻害作用型抗生物質(ポリペプチド系、ポリエン系)、核酸合成阻害作用型抗生物質(キノロン系、リファンピシン系、インターフェロン系)、蛋白合成阻害作用型抗生物質(アミノグリコシド系、マクロライド・ケトリド系、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール系、リンコマイシン系)、葉酸代謝経路阻害型抗生物質(トリメトプリム系)、βラクタマーゼ阻害薬、サルファ薬、抗感染症薬(抗細菌薬、抗結核薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、寄生虫用薬、原虫用薬)、および防腐剤などが挙げられる。
より具体的には、アンピシリン、バカンピシリン、アモキシシリン、ピブメシリナム、アモキシシリン、スルタミシリン、ピペラシリン、アスポキシリン、ベンジルペニシリン、クロキサシリン、オキサシリン、カルベニシリン、セファロクル、セフロキサジン、セ
ファドロキシル、セフィキシム、セフテラムピボキシル、セフロキシムアキセチル、セフポドキシムプロキセチル、セフォチアムヘキセチル、セフジニル、セフチブテン、セフジトレンピボキシル、セフカペンピボキシル、セファゾリン、セフォゾプラン、セフメタゾール、セフォチアム、セフスロジン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフメノキシム、セフトリアキソン、セフタジシム、セフォジシム、セフピロム、セフェピム、ファロペネム、イミペネム、パニペネム、メロペネム、ビアペネム、ドリペネム、アズトレオナム、バンコマイシン、テイコプラニン、ホスミシン、硫酸ポリミキシンB、硫酸コリスチン、グラミシジンS、アンホテリシンB、レボフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、ロメフロキサシン、トスフロキサシン、スパルフロキサシン、ガチフロキサシン、プルリフロキサシン、モキシフロキサシン、パズフロキサン、リファンピシン、ジベカシン、トブラマイシン、アミカシン、イセパマイシン、ミクロノマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ロキタマイシン、ジョサマイシン、ロキスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、テリスロマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、クロラムフェニコール、リンコマイシン、クリンダマイシン、トリメトプリム、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、サルファメトキサゾール、サラゾピリン、イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール、グリセオフルビン、アムホテリシンB、5−フルオロシトシン、フルコナゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール、アシクロビル、ガンシクロビル、ホスカビル、イドクスウリジン、アマンタジン、インターフェロンγ、リバピリン、ラミプジン、メトロニダゾール、チニダゾール、フルコナゾール、メベンダゾール、パモ酸ピランテル、ジエチルカルバマジン、プラジカンテル、アルベンダゾール、イベルメクチン、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、リネゾリド(linezolid)、スペクチノマイシン、ネチルマイシン、シソマイシン(sisomycin)、リンコサミン(lincosamin)、ラモプラニン(ramoplanin)、テリスロマイシン(telithromycin)、ナイスタチン、フシジン酸(fusidic acid)、クロルヘキシジン、ポリヘキサニド(polyhexanid)などが挙げられる。
リン酸緩衝液は薬理学的に許容されるものであればよく、含まれるリン酸塩の種類は特に限定されない。例えばH2PO4 -とHPO4 2-の場合、Na+, K+, Rb+, Cs+, Mg2+, Ca2+, Sr2+,
Ba2+, Zn2+, Cu2+, Co2+, Al3+, Ga3+, In3+, La3+, Ce3+, Pr3+, Nd3+, Pm3+, Sm3+, Eu3+, Gd3+, Tb3+, Dy3+, Ho3+, Er3+, Tm3+, Yb3+ および Lu3+から選ばれる少なくとも1種の陽イオンとの塩が挙げられる。
て決めることが好ましい。具体的には、0.01〜5000mg/mlが好ましく、0.1〜2000mg/mLがより好ましい。
水性溶液のpHは薬物の活性に影響を与えないpHが好ましく、中性pHが好ましい。具体的には、pH6.2〜8.2が好ましく、pH6.5〜7.5がより好ましい。
反応温度は特に制限されないが、薬物の安定性を考慮すると、0℃〜50℃が好ましく、4℃〜常温がより好ましい。
また、反応は、従来のゾル−ゲル法とは異なり、反応系に酸や塩基を加えないで行うことが好ましい。これによって、薬物の活性に影響を与えることなく、穏和な条件で薬物のシリカ封入体を作製することができる。
生成した薬物のシリカ封入体は、凍結乾燥などの方法によって反応液から回収することができる。
。
生体内分解性ポリマーの好ましい例は、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸やポリデプシペプチドが挙げられる。特に、例えばαアミノ酸類とα−ヒドロキシカルボン酸類の1種以上から合成された重合体、共重合体が生体内分解性および生体適合性の観点から好ましく、さらに好ましくは、αアミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、プロリン、グリシン、γ−ベンジル−グルタミン酸、ε−ベンジルオキシメチル−L−リジン)やヒドロキシカルボン酸(乳酸,グリコール酸,2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸等)の1種以上から合成された共重合体、またはこれらの混合物が挙げられる。
ポリデプシペプチド配列の具体例には、poly(Ala-Ala-Glu(OEt)-Lac)、poly(Ala-Leu-Glu(OEt)-Lac)、poly(Ala-Ile-Gly-Lac-Pro)等の単独重合体や共重合体が挙げられる。医薬品組成物として使用するためには、これらの単独重合体や共重合体がペンタクロロフェ
ノールなどの残留物を伴わない、ヒドロキシスクシンイミド等の薬理学的に許容な重縮合法で合成されていることがより好ましい。
また、薬物のシリカ封入体を支持材にカプセル化する操作も公知の製剤技術にしたがって行うことができる。
薬剤として抗生物質を用いる場合、抗炎症の治療薬、好ましくは、口腔外科領域などに於ける慢性骨髄炎の治療薬として好適に使用することができる。
その他にも、顎骨嚢胞などを摘出した後などに使用される、骨腔補填剤または骨接合剤としても使用できる。
PLGA:ポリ乳酸-グリコール酸共重合体
AZM:アジスロマイシン
PEG:ポリエチレングリコール
(シリカによる薬物封入体の作製)
バイオシリカの特徴は穏和な生理条件でシリカが形成され、触媒として働く物質が穏和な条件で内包される点にある。そこで、水性溶液中の薬物が触媒となってバイオシリカのように、反応系に酸、塩基、熱を加えない穏和な条件でアルコキシシランを加水分解することを確かめることにした。この方法で生成するシリカをバイオミメティックシリカと名付けた。
慢性骨髄炎の治療に用いられる抗生物質、アジスロマイシンについて、3種類の濃度(0,5,10 mg)のリン酸緩衝水溶液 (200μL, 60 mM, pH 6.5)を作製した。作製した溶液をそれぞれ2mLバイアルに入れた。これらの水溶液に対し界面を乱さないように、静かにテトラエトキシシラン (200μL)を上層に加え、4℃にて静置した。シリカ形成反応の模式図を図1に示す。
顆粒状生成物の走査電子顕微鏡写真を図3に示す。特性X線の解析より、シリカが主成分の物質であるとわかった。
(シリカ−AZM組成物とPLGAによるインプラントの作製)
実施例1で得られた、シリカ−AZM組成物の1〜3mmの無色顆粒をメノウ乳鉢にて細かく粉砕した。ここへPLGA(和光純薬より購入。商品名PLGA7520、平均分子量2万、ポリ乳酸とグリコール酸のモノマー比が75:25)を更に加えて粉砕混合を行った。
圧縮成型物の走査電子顕微鏡写真を図4に示す。特性X線の解析より、明るい粒子像はシリカ-AZM微粒子、まわりのやや暗い領域はPLGAであることがわかった。
I群 :コントロール群、PLGAのみ(比較例1)
II群 :PLGAにAZMを混入した製剤(比較例2)
III群:PLGAにシリカ-AZMを混入した製剤(実施例)
IV群 :PLGAにPEGとAZMを混入した製剤(比較例3)
(インプラントのラット皮下への埋入)
実験動物は8〜9週齢雌Wister系ラットとし,背部皮下組織に2mmの切り込みを4カ所入れて、I−IVの製剤を各一個ずつ埋入した。I−IV群は各3匹とした。各群の動物は1,2,3,4,8週後に屠殺し,各インプラントを摘出した。摘出物につき肉眼的観察,重量測定,インプラント周囲組織の病理組織学的観察を行った。更にこれらの埋入実験は3回実施した(第1〜3クール)。図5に実験の模式図を示した。
実験動物15匹中,実験期間途中で死亡したものは全くみられなかった。
I−IV群すべてにおいて,経日的に球形,扁平化がみられI群は4週後,II群4週後,III群4週後,IV群8週後に消失した。硬度は特に観察しなかったが,1週の時点で軟化が顕著に認められた。(第1〜3クールを通じてほぼ同様。)
III群(PLGA+AZM-SiO2)の皮下に於ける形態の経時変化(第1クールの摘出物)を図6に示した。その結果、III群は最も形態をよく保持していた。
I−IV群はすべて,時間の経過と共に,試料の減少がみられた(図7)。何れも4週では約0〜40%残存していたが,8週では全て消失した。(第1〜3クールを通じてほぼ同様。ここでは第1クールのデータを示した。)
I−IV群の製剤を用いた、ラット埋入部の組織の病理所見(炎症所見)を表1に示した。
その結果、I,II,III, IV群において,各期間を通じて,特に分解初期に軽度の炎症反応がみられた。この炎症反応はPLGAの分解に由来すると考えられる。従って、シリカを用いたインプラント、III群にはシリカに由来する炎症反応は認められなかった。むしろ他の3種のインプラントと比較して、炎症がやや弱いと考えられた。
第1〜3クールを通じて、シリカを用いたIII群(PLGA+AZM-SiO2)は炎症を起こすことが埋入初期を除いてほとんど無いことがわかる。
Claims (11)
- 薬物のシリカ封入体の製造方法であって、アルコキシシランと反応してシリカを生成させることができる基を有する薬物の水性溶液の層とアルコキシシランの液層からなる二層分離液を、薬物の水性溶液の層の上層にアルコキシシランの液層を加えるか又はアルコキシシランの液層の上層に薬物の水性溶液の層を加え、静置することにより調製して、該二層分離液の界面において薬物のシリカ封入体を生成させることを特徴とする方法。
- 前記水性溶液のpHが6.2〜8.2であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記水性溶液のpHが6.5〜7.5であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 薬物の水性溶液が、薬物がリン酸緩衝液に溶解した水性溶液であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 薬物が、細胞壁合成阻害作用型抗生物質、細胞膜阻害作用型抗生物質、核酸合成阻害作用型抗生物質、蛋白合成阻害作用型抗生物質、葉酸代謝経路阻害型抗生物質、βラクタマーゼ阻害薬、サルファ薬、抗感染症薬、および防腐剤からなる群より選択される少なくとも一つの薬物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 薬物が、アンピシリン、バカンピシリン、アモキシシリン、ピブメシリナム、アモキシシリン、スルタミシリン、ピペラシリン、アスポキシリン、ベンジルペニシリン、クロキサシリン、オキサシリン、カルベニシリン、セファロクル、セフロキサジン、セファドロキシル、セフィキシム、セフテラムピボキシル、セフロキシムアキセチル、セフポドキシムプロキセチル、セフォチアムヘキセチル、セフジニル、セフチブテン、セフジトレンピボキシル、セフカペンピボキシル、セファゾリン、セフォゾプラン、セフメタゾール、セフォチアム、セフスロジン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフメノキシム、セフトリアキソン、セフタジシム、セフォジシム、セフピロム、セフェピム、ファロペネム、イミペネム、パニペネム、メロペネム、ビアペネム、ドリペネム、アズトレオナム、バンコマイシン、テイコプラニン、ホスミシン、硫酸ポリミキシンB、硫酸コリスチン、グラミ
シジンS、アンホテリシンB、レボフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、ロメフロキサシン、トスフロキサシン、スパルフロキサシン、ガチフロキサシン、プルリフロキサシン、モキシフロキサシン、パズフロキサン、リファンピシン、ジベカシン、トブラマイシン、アミカシン、イセパマイシン、ミクロノマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ロキタマイシン、ジョサマイシン、ロキスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、テリスロマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、クロラムフェニコール、リンコマイシン、クリンダマイシン、トリメトプリム、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、サルファメトキサゾール、サラゾピリン、イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール、グリセオフルビン、アムホテリシンB、5−フルオロシトシン、フルコナゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール、アシクロビル、ガンシクロビル、ホスカビル、イドクスウリジン、アマンタジン、インターフェロンγ、リバピリン、ラミプジン、メトロニダゾール、チニダゾール、フルコナゾール、メベンダゾール、パモ酸ピランテル、ジエチルカルバマジン、プラジカンテル、アルベンダゾール、イベルメクチン、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、リネゾリド(linezolid)、スペクチノマイシン、ネチルマイシン、シソマイシン(sisomycin)、リンコサミン(lincosamin)、ラモプラニン(ramoplanin)、テリスロマイシン(telithromycin)、ナイスタチン、フシジン酸(fusidic acid)、クロルヘキシジン、およびポリヘキサニド(polyhexanid)からなる群より選択される薬物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって薬物のシリカ封入体を製造し、得られたシリカ封入体を、生体に許容される支持材と混合するか、または該支持材にカプセル状に包み込むことを特徴とする、医薬組成物の製造方法。
- 生体に許容される支持材が生体内分解性ポリマーである、請求項7に記載の方法。
- 生体内分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、ポリヒドロキシカルボン酸、ポリデプシペプチド、およびポリアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一種類以上のポリマーである、請求項8に記載の方法。
- 医薬組成物が、骨髄炎の治療用または予防用である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
- 医薬組成物が、骨腔補填剤または骨接合剤である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
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