以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。実施形態1は、本発明に係る圧縮機(30)を備えた冷凍装置(10)である。以下では、先ず冷凍装置(10)について説明し、次に圧縮機(30)について説明する。
〈空気調和装置の全体構成〉
図1に示すように、本実施形態1の冷凍装置(10)は、冷房運転と暖房運転を行う空気調和装置により構成されている。冷凍装置(10)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備えている。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素が充填されている。また、冷媒回路(11)には、圧縮機(30)、四路切換弁(12)、室外熱交換器(14)、室内熱交換器(15)、第1膨張弁(16)、第2膨張弁(17)及び気液分離器(18)が接続されている。
圧縮機(30)は、密閉容器状のケーシング(40)を備えている。ケーシング(40)内には、第1圧縮機構(41)と第2圧縮機構(42)と電動機(47)とが収容されている。また、ケーシング(40)には、低段吸入管(31)、低段吐出管(32)、第1高段吸入管(33)、第2高段吸入管(34)、連絡吐出管(35)、連絡吸入管(36)、及び高段吐出管(37)が接続されている。
低段吸入管(31)は、一端が四路切換弁(12)の第3ポート(P3)に接続され、他端が第1圧縮機構(41)の吸入側に接続されている。低段吐出管(32)は、一端が第1圧縮機構(41)の吐出側に接続され、他端が第1高段吸入管(33)と第2高段吸入管(34)に分岐している。第1高段吸入管(33)は、第2圧縮機構(42)の第1圧縮部(43)の吸入側に接続され、第2高段吸入管(34)は、第2圧縮機構(42)の第2圧縮部(44)の吸入側に接続されている。第2高段吸入管(34)には、開閉自在の第1電磁弁(21)が設けられている。連絡吐出管(35)は、一端が第1圧縮部(43)の吐出側に接続され、他端が第2高段吸入管(34)における第1電磁弁(21)と第2圧縮部(44)の吸入側との間に接続されている。連絡吐出管(35)には、開閉自在の第2電磁弁(22)が設けられている。連絡吸入管(36)は、一端が連絡吐出管(35)における第1圧縮部(43)の吐出側と第2電磁弁(22)との間に接続され、他端がケーシング(40)内における第2圧縮機構(42)と電動機(47)との間の第1空間(45)に開口している。高段吐出管(37)は、一端がケーシング(40)内における第1圧縮機構(41)と電動機(47)との間の第2空間(46)に開口し、他端が四路切換弁(12)の第1ポート(P1)に接続されている。なお、圧縮機(30)のケーシング(40)の内部の詳細については後述する。
室外熱交換器(14)は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器により構成されている。室外熱交換器(14)の近傍には、室外ファン(24)が配置されている。室外熱交換器(14)では、室外ファン(24)によって送られる室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室外熱交換器(14)の一端から延びる冷媒配管は、四路切換弁(12)の第2ポート(P2)に接続されている。室外熱交換器(14)の他端から延びる冷媒配管は、気液分離器(18)内の底部に開口している。この冷媒配管には、開度可変の電子膨張弁により構成された第1膨張弁(16)が設けられている。
室内熱交換器(15)は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器により構成されている。室内熱交換器(15)の近傍には、室内ファン(25)が配置されている。室内熱交換器(15)では、室内ファン(25)によって送られる室内空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室内熱交換器(15)の一端から延びる冷媒配管は、四路切換弁(12)の第4ポート(P4)に接続されている。室内熱交換器(15)の他端から延びる冷媒配管は、気液分離器(18)内の底部に開口している。この冷媒配管には、開度可変の電子膨張弁により構成された第2膨張弁(17)が設けられている。
気液分離器(18)には、インジェクション管(26)の一端が接続されている。インジェクション管(26)は、気液分離器(18)内の上部に開口している。インジェクション管(26)の他端は低段吐出管(32)に接続されている。インジェクション管(26)には、開閉自在の第4電磁弁(27)が設けられている。
四路切換弁(12)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通し且つ第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通し且つ第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とが切換自在に構成されている。
本実施形態1では、第1電磁弁(21)、第2電磁弁(22)及び第3電磁弁(23)が、第1圧縮機構(41)の吸入容積に対する第2圧縮機構(42)の吸入容積の比率である吸入容積比を変更する容積比変更手段(60)を構成している。容積比変更手段(60)は、第2圧縮機構(42)の吸入容積を変更することによって吸入容積比を変更する。これらの電磁弁(21,22,23)は、図示しないコントローラによって制御される。これらの電磁弁(21,22,23)の制御については後述する。
〈圧縮機の構成〉
図2に示すように、圧縮機(30)は、縦長で密閉容器状のケーシング(40)を備えている。ケーシング(40)内には、上述したように、低段側圧縮機構となる第1圧縮機構(41)と、高段側圧縮機構となる第2圧縮機構(42)と、第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)を駆動する電動機(47)とが収容されている。第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)は、1本の駆動軸(50)で機械的に連結されている。
第1圧縮機構(41)は、図2における電動機(47)の上側に配置されている。第2圧縮機構(42)は、電動機(47)の下側に配置されている。第2圧縮機構(42)は、第1圧縮部(43)及び第2圧縮部(44)を備えている。第1圧縮部(43)及び第2圧縮部(44)は、第1圧縮部(43)が下側に位置するように、上下二段に重ねられている。
ケーシング(40)の頂部には、低段吸入管(31)及び低段吐出管(32)が貫通している。上述したように、低段吸入管(31)は第1圧縮機構(41)の吸入側に接続され、低段吐出管(32)は第1圧縮機構(41)の吐出側に接続されている。また、ケーシング(40)の胴部には、第1高段吸入管(33)、第2高段吸入管(34)、連絡吐出管(35)、連絡吸入管(36)、及び高段吐出管(37)が貫通している。上述したように、第1高段吸入管(33)は第1圧縮部(43)の吸入側に接続され、第2高段吸入管(34)は第2圧縮部(44)の吸入側に接続されている。また、連絡吐出管(35)は第1圧縮部(43)の吐出側に接続され、連絡吸入管(36)は第2圧縮機構(42)と電動機(47)との間の第1空間(45)に開口している。また、高段吐出管(37)は第1圧縮機構(41)と電動機(47)との間の第2空間(46)に開口している。
電動機(47)は、ブラシレスDCモータにより構成されている。電動機(47)は、ステータ(48)とロータ(49)とを備えている。ステータ(48)は、ケーシング(40)の胴部に固定されている。一方、ロータ(49)は、ステータ(48)の内側に配置され、駆動軸(50)の主軸部(50a)に連結されている。なお、電動機(47)の回転速度は、インバータ制御によって調節可能となっている。
駆動軸(50)は、上述の主軸部(50a)と、第1偏心部(50b)と、第2偏心部(50c)と、第3偏心部(50d)とを備えている。第1偏心部(50b)は、主軸部(50a)よりも小径の円柱状に形成され、主軸部(50a)の上端面に立設されている。第1偏心部(50b)の軸心は、主軸部(50a)の軸心に対して偏心している。また、第2偏心部(50c)と第3偏心部(50d)は、駆動軸(50)の下部寄りの位置にそれぞれ設けられている。第2偏心部(50c)と第3偏心部(50d)は、共に主軸部(50a)よりも大径に形成されている。第2偏心部(50c)の軸心と第3偏心部(50d)の軸心は、それぞれ主軸部(50a)の軸心に対して偏心している。第2偏心部(50c)と第3偏心部(50d)とは、駆動軸(50)の軸心を中心として互いに180°位相がずれている。
駆動軸(50)の下端部には、油溜まりに浸漬する給油ポンプ(66)が設けられている。また、駆動軸(50)には、給油ポンプ(66)が吸い上げた冷凍機油が流通する給油通路が形成されている(図示省略)。給油通路は、駆動軸(50)の内部を軸方向に沿って延びている。この圧縮機(30)では、駆動軸(50)の回転に伴って、給油ポンプ(66)が吸い上げた冷凍機油が給油通路を通じて各圧縮機構(41,42)の摺動部及び駆動軸(50)の軸受部に供給される。
第1圧縮機構(41)は、スクロール式の圧縮機構により構成されている。第1圧縮機構(41)は、図2及び図3に示すように、固定スクロール(51)と可動スクロール(52)とを備えている。
固定スクロール(51)は、渦巻き状の固定側ラップ(51a)と、略円板状の固定側鏡板部(51b)とを備えている。固定側ラップ(51a)は、固定側鏡板部(51b)の前面(図2における下面)に立設されている。
可動スクロール(52)は、渦巻き状の可動側ラップ(52a)と、略円板状の可動側鏡板部(52b)と、筒状の突出部(52c)とを備えている。可動スクロール(52)は、オルダムリング(54)を介して、駆動軸(50)の軸受部が形成されたハウジング部材(38)の上面に載置されている。なお、オルダムリング(54)は、偏心回転運動中の可動スクロール(52)が自転することを阻止する。
可動側ラップ(52a)は、可動側鏡板部(52b)の前面(図2における上面)に立設されている。可動側ラップ(52a)は、固定側ラップ(51a)に噛み合わされている。
本実施形態1の第1圧縮機構(41)は、可動側ラップ(52a)と固定側ラップ(51a)とが非対称に形成された非対称渦巻き構造になっている。固定側ラップ(51a)の巻き数(渦巻きの長さ)は、可動側ラップ(52a)の巻き数(渦巻きの長さ)よりも多くなっている。なお、固定側ラップ(51a)の巻数は、固定側ラップ(51a)の渦巻きが後述する吸入ポート(55)の外側の位置まで延びているものとして数えている。
また、突出部(52c)は、可動側鏡板部(52b)の背面(図2における下面)に立設されている。突出部(52c)には、駆動軸(50)の第1偏心部(50b)が挿入されている。
第1圧縮機構(41)では、図3に示すように、固定側ラップ(51a)と可動側ラップ(52a)との間に、複数の圧縮室(53)が形成されている。複数の圧縮室(53)は、固定側ラップ(51a)の内側面と可動側ラップ(52a)の外側面との間の第1圧縮室(53a)と、固定側ラップ(51a)の外側面と可動側ラップ(52a)の内側面との間の第2圧縮室(53b)とから構成されている。
また、第1圧縮機構(41)では、固定スクロール(51)に吸入ポート(55)が形成されている。吸入ポート(55)は、固定側鏡板部(51b)の前面から突出する外縁部(51c)に形成されている。吸入ポート(55)には低段吸入管(31)が接続されている。吸入ポート(55)には、圧縮室(53)から低段吸入管(31)へ戻る冷媒の流れを禁止する吸入逆止弁が設けられている(図示省略)。
吸入ポート(55)は、可動スクロール(52)の偏心回転運動に伴って、第1圧縮室(53a)と第2圧縮室(53b)のそれぞれに間欠的に連通する。第1圧縮機構(41)では、第1圧縮室(53a)に可動側ラップ(52a)の外周側端部の外側から冷媒が流入し、第2圧縮室(53b)に可動側ラップ(52a)の外周側端部の内側から冷媒が流入する。第1圧縮機構(41)では、固定側ラップ(51a)の外周側端部が可動側ラップ(52a)の外周側端部付近に位置しているので、第1圧縮室(53a)と第2圧縮室(53b)には、ほぼ同じ位置から冷媒が流入する。また、第1圧縮機構(41)では、一方の圧縮室(53a,53b)における冷媒の吸入が終了した時点では、多方の圧縮室(53a,53b)における冷媒の吸入が行われている。つまり、第1圧縮機構(41)では、吸入冷媒の流量がゼロになることがなく、連続的に流体の吸入が行われる。
また、固定スクロール(51)の固定側鏡板部(51b)には吐出ポート(57)が形成されている。吐出ポート(57)は、固定側鏡板部(51b)の中央部に形成された貫通孔により構成されている。吐出ポート(57)の出口は、固定スクロール(51)の上側の吐出室(63)に開口している。吐出ポート(57)は、可動スクロール(52)の偏心回転運動に伴って、第1圧縮室(53a)と第2圧縮室(53b)のそれぞれに間欠的に連通する。
また、固定側鏡板部(51b)には、リリーフポート(58)も形成されている。リリーフポート(58)は、一端が圧縮途中の圧縮室(53a,53b)に開口し、他端が吐出室(63)に開口している。固定側鏡板部(51b)には、リリーフポート(58)を開閉するリリーフバルブ(59)が設けられている。リリーフバルブ(59)は、リード弁により構成されている。このため、圧縮機(30)の始動時や、インジェクション管(26)から導入されるガス冷媒の流量が少なくなった時の過圧縮損失が緩和される。
なお、ケーシング(40)内における第1圧縮機構(41)の上側の空間(65)は、吸入ポート(55)に連通している。なお、この空間(65)が、吐出ポート(57)に連通するようにしてもよい。
以上の構成により、第1圧縮機構(41)では、駆動軸(50)が回転すると、可動スクロール(52)が、図4の(A)から(D)の順に偏心回転する。そして、その偏心回転に伴って、第1圧縮室(53a)及び第2圧縮室(53b)では、低段吸入管(31)を通じて導入された冷媒が圧縮される。第1圧縮室(53a)及び第2圧縮室(53b)で圧縮された冷媒は、吐出ポート(57)を通じて、低段吐出管(32)に流入する。
続いて、第2圧縮機構(42)について説明する。第2圧縮機構(42)は、上述したように、第1圧縮部(43)及び第2圧縮部(44)を備えている。第1圧縮部(43)及び第2圧縮部(44)は、同じ機械要素により構成されている。
第1圧縮部(43)は、図2及び図5に示すように、ケーシング(40)に固定された第1シリンダ(72)と、環状の第1ピストン(70)を有して駆動軸(50)によって駆動される第1可動部材(71)とを備えている。第1圧縮部(43)は、後述する第1可動側鏡板部(71a)の背面が第2圧縮部(44)側を向くように設けられている。なお、図5において括弧付きの符号が併記されている部材は、括弧がない符号が第1圧縮部(43)の符号を表し、括弧内の符号が第2圧縮部(44)の符号を表している。この点は、図6についても同様である。
第1シリンダ(72)は、円盤状の第1固定側鏡板部(72a)と、第1固定側鏡板部(72a)の上面の内寄りの位置から上方に突出する環状の第1内側シリンダ部(72b)と、第1固定側鏡板部(72a)の上面の外周部から上方に突出する環状の第1外側シリンダ部(72c)とを備えている。第1内側シリンダ部(72b)の外周面と第1外側シリンダ部(72c)の内周面とは同軸になっている。第1シリンダ(72)は、第1内側シリンダ部(72b)の外周面と第1外側シリンダ部(72c)の内周面との間に形成された環状の第1シリンダ室(74)を有している。また、第1シリンダ(72)には、駆動軸(50)を支持する第1固定側軸受部(72d)が形成されている。
一方、第1可動部材(71)は、円盤状の第1可動側鏡板部(71a)と、上述の第1ピストン(70)と、第1可動側鏡板部(71a)の下面の内周端部から下方に突出する第1可動側軸受部(71b)とを備えている。第1可動側鏡板部(71a)は、第1固定側鏡板部(72a)と同様に、第1シリンダ室(74)に面している。
第1ピストン(70)は、第1可動側鏡板部(71a)の下面のやや外周寄りの位置から下方に突出している。第1ピストン(70)は、環状の一部が分断されたC型形状をしている。第1ピストン(70)は、外周面が第1外側シリンダ部(72c)の内周面よりも小径で、内周面が第1内側シリンダ部(72b)の外周面よりも大径に形成されている。第1ピストン(70)は、第1シリンダ(72)に対して偏心して第1シリンダ室(74)に収納され、第1シリンダ室(74)を第1外側圧縮室(75)と第1内側圧縮室(76)とに区画している。
なお、第1ピストン(70)と第1シリンダ(72)とは、第1ピストン(70)の外周面と第1外側シリンダ部(72c)の内周面とが1点で実質的に接する状態(厳密にはミクロンオーダーの隙間があるが、その隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)において、その接点と位相が180°異なる位置で、第1ピストン(70)の内周面と第1内側シリンダ部(72b)の外周面とが1点で実質的に接するようになっている。この点は、第2圧縮部(44)においても同じである。
第1可動側軸受部(71b)には、第2偏心部(50c)が嵌合している。第1可動部材(71)は、駆動軸(50)の回転に伴い主軸部(50a)の軸心を中心として偏心回転運動する。なお、第1圧縮部(43)では、第1可動側軸受部(71b)と第1内側シリンダ部(72b)との間に、第1可動側軸受部(71b)の偏心回転運動を許容するための第1軸側空間(84)が形成されている。この第1軸側空間(84)では冷媒の圧縮は行われない。
また、第1圧縮部(43)は、図5に示すように、第1内側シリンダ部(72b)の外周面から第1外側シリンダ部(72c)の内周面まで延びる第1ブレード(73)を備えている。第1ブレード(73)は、区画部材(73)を構成している。第1ブレード(73)は、第1シリンダ(72)に固定されている。なお、第1ブレード(73)は、本実施形態1では第1シリンダ(72)とは別部材であるが、第1シリンダ(72)と一体的に形成してもよい。
第1ブレード(73)は、第1シリンダ室(74)に配置され、第1外側圧縮室(75)を吸入側の第1室(75a)と吐出側の第2室(75b)とに区画し、第1内側圧縮室(76)を吸入側の第1室(76a)と吐出側の第2室(76b)とに区画している。第1ブレード(73)は、環状の一部が分断されたC型形状の第1ピストン(70)の分断箇所を挿通している。
また、第1ピストン(70)の分断箇所には、第1ブレード(73)を挟むように、一対の第1ブッシュ(77a,77b)が嵌合している。一対の第1ブッシュ(77a,77b)は、いずれも断面形状が略半円形で同一形状に形成され、フラット面同士が対向するように配置されている。一対の第1ブッシュ(77a,77b)のフラット面の間のスペースは、第1ブレード溝(85)を構成している。なお、この実施形態1では一対の第1ブッシュ(77a,77b)を別体とした例について説明したが、一対の第1ブッシュ(77a,77b)が一部で連結することにより一体構造としてもよい。この点は、後述する第2ブッシュ(97a,97b)についても同様である。
第1ブレード溝(85)には第1ブレード(73)が挿入されている。この状態では、各第1ブッシュ(77a,77b)のフラット面が第1ブレード(73)と実質的に面接触し、各第1ブッシュ(77a,77b)の円弧状の外周面が第1ピストン(70)と実質的に面接触している。一対の第1ブッシュ(77a,77b)は、第1ブレード溝(85)に第1ブレード(73)を挟んだ状態で、第1ブレード(73)の面方向に進退するように構成されている。また、一対の第1ブッシュ(77a,77b)は、第1ピストン(70)が第1ブレード(73)に対して揺動するように構成されている。これにより、第1ピストン(70)は、第1ブレード(73)の延伸方向に進退可能であり、さらに一対の第1ブッシュ(77a,77b)の中心点を揺動中心として第1ブッシュ(77a,77b)と共に揺動可能になっている。
第1圧縮部(43)には、第1高段吸入管(33)が接続されている。第1高段吸入管(33)は、第1固定側鏡板部(72a)に形成された第1吸入通路(78)に接続されている。第1吸入通路(78)は、入口側が第1固定側鏡板部(72a)の径方向に延び、途中で上方へ折れ曲がって、出口側が第1固定側鏡板部(72a)の軸方向に延びている。第1吸入通路(78)の出口端は、第1外側圧縮室(75)と第1内側圧縮室(76)の両方に開口している。
また、第1圧縮部(43)には、第1外側圧縮室(75)から冷媒を吐出させる第1外側吐出ポート(79)と、第1内側圧縮室(76)から冷媒を吐出させる第1内側吐出ポート(80)と、第1外側吐出ポート(79)及び第1内側吐出ポート(80)の両方が開口する第1吐出空間(81)とが形成されている。
第1外側吐出ポート(79)は、第1外側圧縮室(75)の第2室(75b)と第1吐出空間(81)とを連通している。第1外側吐出ポート(79)には、第1外側吐出弁(82)が設けられている。一方、第1内側吐出ポート(80)は、第1内側圧縮室(76)の第2室(76b)と第1吐出空間(81)とを連通している。第1内側吐出ポート(80)には、第1内側吐出弁(83)が設けられている。第1吐出空間(81)には、連絡吐出管(35)の入口端が開口している。
以上の構成により、駆動軸(50)が回転すると、第1ピストン(70)は、図6の(A)から(H)の順に偏心回転する。そして、その偏心回転に伴って、第1外側圧縮室(75)及び第1内側圧縮室(76)では、1本の第1高段吸入管(33)を通じて導入された冷媒が圧縮される。第1外側圧縮室(75)及び第1内側圧縮室(76)から吐出された冷媒は、連絡吐出管(35)に流入する。
なお、第1ピストン(70)と第1外側シリンダ部(72c)の接触点と、第1ピストン(70)と第1内側シリンダ部(72b)の接触点とは、駆動軸(50)の軸心回りに180°ずれている。このため、第1外側圧縮室(75)と第1内側圧縮室(76)とでは、冷媒を圧縮する動作の状態の位相が180°ずれている。従って、第1圧縮部(43)では、吸入冷媒の流量がゼロになることがなく、連続的に冷媒の吸入が行われる。
第2圧縮部(44)は、第1圧縮部(43)と同じ機械要素によって構成されている。第2圧縮部(44)は、ミドルプレート(69)を挟んで、第1圧縮部(43)とは上下反転した状態で設けられている。
具体的に、第2圧縮部(44)は、ケーシング(40)に固定された第2シリンダ(92)と、環状の第2ピストン(90)を有して駆動軸(50)によって駆動される第2可動部材(91)とを備えている。第2圧縮部(44)は、後述する第2可動側鏡板部(91a)の背面が第1圧縮部(43)側を向くように設けられている。
第2シリンダ(92)は、円盤状の第2固定側鏡板部(92a)と、第2固定側鏡板部(92a)の下面の内寄りの位置から下方に突出する環状の第2内側シリンダ部(92b)と、第2固定側鏡板部(92a)の下面の外周部から下方に突出する環状の第2外側シリンダ部(92c)とを備えている。第2内側シリンダ部(92b)の外周面と第2外側シリンダ部(92c)の内周面とは同軸になっている。第2シリンダ(92)は、第2内側シリンダ部(92b)の外周面と第2外側シリンダ部(92c)の内周面との間に形成された環状の第2シリンダ室(94)を有している。また、第2シリンダ(92)には、駆動軸(50)を支持する第2固定側軸受部(92d)が形成されている。
一方、第2可動部材(91)は、円盤状の第2可動側鏡板部(91a)と、上述の第2ピストン(90)と、第2可動側鏡板部(91a)の上面の内周端部から上方に突出する第2可動側軸受部(91b)とを備えている。第2可動側鏡板部(91a)は、第2固定側鏡板部(92a)と同様に、第2シリンダ室(94)に面している。
第2ピストン(90)は、第2可動側鏡板部(91a)の上面のやや外周寄りの位置から上方に突出している。第2ピストン(90)は、環状の一部が分断されたC型形状をしている。第2ピストン(90)は、外周面が第2外側シリンダ部(92c)の内周面よりも小径で、内周面が第2内側シリンダ部(92b)の外周面よりも大径に形成されている。第2ピストン(90)は、第2シリンダ(92)に対して偏心して第2シリンダ室(94)に収納され、第2シリンダ室(94)を第2外側圧縮室(95)と第2内側圧縮室(96)とに区画している。
第2可動側軸受部(91b)には、第3偏心部(50d)が嵌合している。第2可動部材(91)は、駆動軸(50)の回転に伴い主軸部(50a)の軸心を中心として偏心回転運動する。なお、第2圧縮部(44)では、第2可動側軸受部(91b)と第2内側シリンダ部(92b)との間に、第2可動側軸受部(91b)の偏心回転運動を許容するための第2軸側空間(104)が形成されている。この第2軸側空間(104)では冷媒の圧縮は行われない。
また、第2圧縮部(44)は、図5に示すように、第2内側シリンダ部(92b)の外周面から第2外側シリンダ部(92c)の内周面まで延びる第2ブレード(93)を備えている。第2ブレード(93)は、区画部材(93)を構成している。第2ブレード(93)は、第2シリンダ(92)に固定されている。なお、第2ブレード(93)は、本実施形態1では第2シリンダ(92)とは別部材であるが、第2シリンダ(92)と一体的に形成してもよい。
第2ブレード(93)は、第2シリンダ室(94)に配置され、第2外側圧縮室(95)を吸入側の第1室(95a)と吐出側の第2室(95b)とに区画し、第2内側圧縮室(96)を吸入側の第1室(96a)と吐出側の第2室(96b)とに区画している。第2ブレード(93)は、環状の一部が分断されたC型形状の第2ピストン(90)の分断箇所を挿通している。
また、第2ピストン(90)の分断箇所には、第2ブレード(93)を挟むように一対の第2ブッシュ(97a,97b)が嵌合している。一対の第2ブッシュ(97a,97b)は、いずれも断面形状が略半円形で同一形状に形成され、フラット面同士が対向するように配置されている。一対の第2ブッシュ(97a,97b)のフラット面の間のスペースは、第2ブレード溝(105)を構成している。
第2ブレード溝(105)には第2ブレード(93)が挿入されている。この状態では、各第2ブッシュ(97a,97b)のフラット面が第2ブレード(93)と実質的に面接触し、各第2ブッシュ(97a,97b)の円弧状の外周面が第2ピストン(90)と実質的に面接触している。一対の第2ブッシュ(97a,97b)は、第2ブレード溝(105)に第2ブレード(93)を挟んだ状態で、第2ブレード(93)の面方向に進退するように構成されている。また、一対の第2ブッシュ(97a,97b)は、第2ピストン(90)が第2ブレード(93)に対して揺動するように構成されている。これにより、第2ピストン(90)は、第2ブレード(93)の延伸方向に進退可能であり、さらに一対の第2ブッシュ(97a,97b)の中心点を揺動中心として第2ブッシュ(97a,97b)と共に揺動可能になっている。
第2圧縮部(44)には、第2高段吸入管(34)が接続されている。第2高段吸入管(34)は、第2固定側鏡板部(92a)に形成された第2吸入通路(98)に接続されている。第2吸入通路(98)は、入口側が第2固定側鏡板部(92a)の径方向に延び、途中で下方へ折れ曲がって、出口側が第2固定側鏡板部(92a)の軸方向に延びている。第2吸入通路(98)の出口端は、第2外側圧縮室(95)と第2内側圧縮室(96)の両方に開口している。
また、第2圧縮部(44)には、第2外側圧縮室(95)から冷媒を吐出させる第2外側吐出ポート(99)と、第2内側圧縮室(96)から冷媒を吐出させる第2内側吐出ポート(100)と、第2外側吐出ポート(99)及び第2内側吐出ポート(100)の両方が開口する第2吐出空間(101)とが形成されている。第2外側吐出ポート(99)は、第2外側圧縮室(95)の第2室(95b)と第2吐出空間(101)とを連通している。第2外側吐出ポート(99)には、第2外側吐出弁(102)が設けられている。一方、第2内側吐出ポート(100)は、第2内側圧縮室(96)の第2室(96b)と第2吐出空間(101)とを連通している。第2内側吐出ポート(100)には、第2内側吐出弁(103)が設けられている。第2吐出空間(101)は、第1空間(45)及び第2空間(46)を介して、高段吐出管(37)に連通している。
以上の構成により、駆動軸(50)が回転すると、第2ピストン(90)は、図6の(A)から(H)の順に偏心回転する。そして、その偏心回転に伴って、第2外側圧縮室(95)及び第2内側圧縮室(96)では、1本の第2高段吸入管(34)を通じて導入された冷媒が圧縮される。第2外側圧縮室(95)及び第2内側圧縮室(96)から吐出された冷媒は、高段吐出管(37)に流入する。
なお、第2ピストン(90)と第2外側シリンダ部(92c)の接触点と、第2ピストン(90)と第2内側シリンダ部(92b)の接触点とは、駆動軸(50)の軸心回りに180°ずれている。このため、第2外側圧縮室(95)と第2内側圧縮室(96)とでは、冷媒を圧縮する動作の状態の位相が180°ずれている。従って、第2圧縮部(44)では、吸入冷媒の流量がゼロになることがなく、連続的に冷媒の吸入が行われる。
また、第2偏心部(50c)と第3偏心部(50d)とは、駆動軸(50)の軸心を中心として互いに180°位相がずれている。従って、第1圧縮部(43)の動作状態が図6(A)のとき、第2圧縮部(44)の動作状態は図6(E)となる。
また、本実施形態1では、第1圧縮機構(41)の吸入容積V1(可動スクロール(52)の押しのけ容積)と、第1圧縮部(43)の吸入容積V2(第1ピストン(70)の押しのけ容積)と、第2圧縮部(44)の吸入容積V3(第2ピストン(90)の押しのけ容積)との比率が、下記の式1の値に設定されている。なお、これらの吸入容積の間には、V1>V2>V3の関係が成立している。
V1:V2:V3=1.0:0.4:0.3 (式1)
なお、本実施形態1では、第1圧縮室(53a)の吸入容積と第2圧縮室(53b)の吸入容積とが等しくなっているが、第1圧縮室(53a)の吸入容積と第2圧縮室(53b)の吸入容積とが互いに相違する場合には、第1圧縮室(53a)の吸入容積と第2圧縮室(53b)の吸入容積の平均値が第1圧縮機構(41)の吸入容積となる。
また、第1圧縮部(43)の吸入容積は、第1外側圧縮室(75)の吸入容積と第1内側圧縮室(76)の吸入容積の合計値である。また、第2圧縮部(44)の吸入容積は、第2外側圧縮室(95)の吸入容積と第2内側圧縮室(96)の吸入容積の合計値である。
−運転動作−
次に、冷凍装置(10)の運転動作について説明する。この冷凍装置(10)は、冷房運転等と暖房運転とに切り換え可能となっている。
(冷房運転)
冷房運転では、図7に示すように、四路切換弁(12)が第1状態に設定された状態で、圧縮機(30)の運転が行われる。冷媒回路(11)では室内熱交換器(15)が蒸発器となって室外熱交換器(14)が放熱器となる冷凍サイクルが行われる。なお、この冷凍サイクルでは、冷凍サイクルの高圧圧力が二酸化炭素の臨界圧力よりも高くなる。この点は、後述する暖房運転でも同じである。
具体的に、圧縮機(30)の高段吐出管(37)から吐出された高圧冷媒は、四路切換弁(12)を経由して室外熱交換器(14)へ流入する。室外熱交換器(14)では、室外ファン(24)によって送られる室外空気へ冷媒が放熱する。室外熱交換器(14)で冷却された冷媒は、第1膨張弁(16)で中間圧力に減圧された後に、気液分離器(18)で液冷媒とガス冷媒とに分離される。このうち、ガス冷媒は、第4電磁弁(27)が開状態に設定されていれば、ガスインジェクション回路(冷却手段(61))を構成するインジェクション管(26)を通じて第2圧縮機構(42)へ送られる。一方、液冷媒は、第2膨張弁(17)で低圧圧力まで減圧された後に、室内熱交換器(15)に流入する。
室内熱交換器(15)では、室内ファン(25)によって送られる室内空気から冷媒が吸熱して蒸発する。その結果、室内空気は冷却されて室内へ供給される。室内熱交換器(15)で蒸発した冷媒は、低段吸入管(31)を通って圧縮機(30)に吸入される。そして、圧縮機(30)では、第1圧縮機構(41)、第2圧縮機構(42)の順番で冷媒が圧縮されて、再び高段吐出管(37)から吐出される。
(暖房運転)
暖房運転では、図8に示すように、四路切換弁(12)が第2状態に設定された状態で、圧縮機(30)の運転が行われる。冷媒回路(11)では室内熱交換器(15)が放熱器となって室外熱交換器(14)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
具体的に、圧縮機(30)の高段吐出管(37)から吐出された高圧冷媒は、四路切換弁(12)を経由して室内熱交換器(15)に供給される。室内熱交換器(15)では、室内ファン(25)によって送られる室内空気へ冷媒が放熱する。その結果、室内空気は加熱されて室内へ供給される。
室内熱交換器(15)で冷却された冷媒は、第2膨張弁(17)で中間圧力に減圧された後に、気液分離器(18)で液冷媒とガス冷媒とに分離される。このうち、ガス冷媒は、第4電磁弁(27)が開状態に設定されていれば、インジェクション管(26)を通じて第2圧縮機構(42)へ送られる。一方、液冷媒は、第1膨張弁(16)で低圧圧力まで減圧された後に、室外熱交換器(14)へ流入する。室外熱交換器(14)では、室外ファン(24)によって送られる室外空気から冷媒が吸熱して蒸発する。室外熱交換器(14)で蒸発した冷媒は、低段吸入管(31)を通って圧縮機(30)に吸入される。そして、圧縮機(30)では、第1圧縮機構(41)、第2圧縮機構(42)の順番で冷媒が圧縮されて、再び高段吐出管(37)から吐出される。
(調節手段の制御)
本実施形態1では、容積比変更手段(60)が、第2圧縮機構(42)に向かう冷媒を第1圧縮部(43)と第2圧縮部(44)とに分けて各圧縮部(43,44)で冷媒を圧縮する並列圧縮状態と、第2圧縮機構(42)において第1圧縮部(43)、第2圧縮部(44)の順番で冷媒を圧縮する直列圧縮状態とに切り換えるように構成されている。並列圧縮状態では、第1圧縮部(43)と第2圧縮部(44)とは互いに並列になる。直列圧縮状態では、第1圧縮部(43)と第2圧縮部(44)とは互いに直列になる。
具体的に、並列圧縮状態では、第1電磁弁(21)が開状態に、第2電磁弁(22)が閉状態に、第3電磁弁(23)が開状態に設定される。並列圧縮状態では、第1圧縮機構(41)から吐出された冷媒が、図7に示すように、第1圧縮部(43)と第2圧縮部(44)とに分配され、各圧縮部(43,44)でそれぞれで圧縮される。第1圧縮部(43)で圧縮された冷媒は、連絡吐出管(35)及び連絡吸入管(36)を経て、第1空間(45)に流入する。第1空間(45)では、第1圧縮部(43)で圧縮された冷媒と、第2圧縮部(44)で圧縮された冷媒とが合流する。そして、第1空間(45)で合流した冷媒は、電動機(47)のコアカットやエアギャップを通って、第2空間(46)に流入して、高段吐出管(37)から吐出される。
並列圧縮状態では、第1圧縮部(43)の吸入容積V2と第2圧縮部(44)の吸入容積V3の合計値が、第2圧縮機構(42)の吸入容積になる。その結果、吸入容積比Vrは下記の式2で表される。
Vr=(V2+V3)/V1 (式2)
一方、直列圧縮状態では、第1電磁弁(21)が閉状態に、第2電磁弁(22)が開状態に、第3電磁弁(23)が閉状態に設定される。直列圧縮状態では、第1圧縮機構(41)から吐出された冷媒が、図8に示すように、第1圧縮部(43)で圧縮される。第1圧縮部(43)で圧縮された冷媒は、連絡吐出管(35)及び第2高段吸入管(34)を経て、第2圧縮部(44)に導入されて、第2圧縮部(44)で圧縮される。第2圧縮部(44)で圧縮された冷媒は、電動機(47)のコアカットやエアギャップを通って、第2空間(46)に流入して、高段吐出管(37)から吐出される。
直列圧縮状態では、第1圧縮部(43)の吸入容積V2が、第2圧縮機構(42)の吸入容積になる。その結果、吸入容積比Vrは下記の式3で表される。
Vr=V2/V1 (式3)
本実施形態1では、冷房運転時に並列圧縮状態に設定され、暖房運転時に直列圧縮状態に設定される。冷房運転では、ガスインジェクション量が比較的多くなるように、第1膨張弁(16)の開度調節及び第2膨張弁(17)の開度調節によって、第1圧縮機構(41)と第2圧縮機構(42)との間の中間圧力が制御される。冷房運転では、ガスインジェクション量を多くするので、第1圧縮機構(41)における逆流損失を抑制するために、第2圧縮機構(42)の吸入容積が大きい方の値(V2+V3)に切り換えられる。冷房運転では、ガスインジェクション量を多くして、第2圧縮機構(42)に導入される冷媒の温度をなるべく低下させることで、圧縮機(30)の入力が少なくなるようにしている。
一方、暖房運転では、ガスインジェクション量が比較的少なくなるように、第1膨張弁(16)の開度調節及び第2膨張弁(17)の開度調節によって中間圧力が制御される。暖房運転では、ガスインジェクション量を少なくするので、第1圧縮機構(41)における過圧縮損失を抑制するために、第2圧縮機構(42)の吸入容積が小さい方の値(V2)に切り換えられる。暖房運転では、ガスインジェクション量を少なくして、第2圧縮機構(42)に導入される冷媒の温度をなるべく低下させないようにしながら、室外熱交換器(14)の冷媒流量を多くして、室外空気から汲み上げる熱量が多くなるようにしている。
−実施形態1の効果−
本実施形態1では、第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)が、吸入流体の流量がゼロになることがなく、連続的に流体の吸入を行うように構成されている。このため、吸入流体の流量がゼロになるタイミングがあるロータリ式の圧縮機構を用いた従来の圧縮機(30)に比べて、吸入流体の流量変動が緩和される。従って、吸入流体の流量変動が原因で生じる圧力脈動、及びその圧力脈動によって生じる振動を抑制することができる。そして、図1に示すように、第2圧縮機構(42)の吸入側にマフラーを省略することが可能になる。
なお、圧力脈動及び振動を抑制することだけを考えるのであれば、第1圧縮機構(41)をスクロール式とはせずに、2つの圧縮室が形成された第2圧縮機構(42)のような構成にすることも考えられる。しかし、第2圧縮機構(42)は、各圧縮室(75,76,95,96)の吐出ポート(79,80,99,100)に対して吐出弁(82,83,102,103)が設けられており、吐出抵抗が比較的大きくなる。このため、第1圧縮機構(41)を第2圧縮機構(42)のような構成にすると、第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)の両方で、吐出抵抗が大きくなってしまい、圧縮機(30)の運転効率が低下してしまう。これに対して、本実施形態1では、吐出弁がないスクロール式の圧縮機構を第1圧縮機構(41)に用いることで、吐出抵抗が小さくなるようにしている。従って、圧力脈動及び振動を抑制しつつ、運転効率がよい圧縮機(30)を実現することができる。
また、圧力脈動及び振動を抑制することだけを考えるのであれば、第2圧縮機構(42)の各圧縮部(43,44)をスクロール式にすることも考えられる。しかし、第2圧縮機構(42)の各圧縮部(43,44)の両方をスクロール式にするためには、少なくとも一方の圧縮部(43,44)を軸貫通構造のスクロール式にする必要がある。この場合、その圧縮部(43,44)の外径が大きくなってしまい、圧縮機(30)の外径が大きくなってしまう。これに対して、本実施形態1の第2圧縮機構(42)は、外径が小さくなるように設計しやすいタイプの構造である。従って、第2圧縮機構(42)で外径が大型化することがない。このため、圧力脈動及び振動を抑制しつつ、コンパクトな圧縮機(30)を実現することができる。
また、本実施形態1では、第2圧縮機構(42)が、それぞれが連続的に流体の吸入を行う第1圧縮部(43)及び第2圧縮部(44)を備えている。このため、多気筒で低振動の圧縮機(30)を実現することができる。
また、第2圧縮機構(42)では、外側圧縮室(75,95)の容積変化の位相と内側圧縮室(76,96)の容積変化の位相とが180°ずれている。つまり、外側圧縮室(75,95)の圧力変動の位相と内側圧縮室(76,96)の圧力変動の位相とがずれている。このため、第2圧縮機構(42)を駆動するときのトルク変動幅(最大トルクと最小トルクの差)が、圧縮室が1つだけのロータリ式の圧縮機構に比べて、小さくなる。従って、第2圧縮機構(42)のトルク変動が低減されることによっても、振動を抑制することができる。
また、本実施形態1では、吸入容積に対する吐出容積の比率が一定の第1圧縮機構(41)が低段側圧縮機構となって、吸入容積に対する吐出容積の比率が吐出室(81,101)の圧力に応じて変化する第2圧縮機構(42)が高段側圧縮機構となっている。このため、高段側圧縮機構では、冷媒回路(11)の高圧圧力が変動しても、吐出容積が変動することで、過圧縮損失や逆流損失が緩和される。また、低段側圧縮機構となる第1圧縮機構(41)の吐出容積に応じて、高段側圧縮機構となる第2圧縮機構(42)の吸入容積を適切に設計することで、第1圧縮機構(41)で生じる過圧縮損失や逆流損失を抑制することも可能である。従って、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構の両方で過圧縮損失や逆流損失が小さくなる圧縮機(30)を実現することが可能になる。
また、スクロール式の圧縮機構は、一般的に隙間が多く、冷媒の漏れ量が多くなりやすい。このため、押し退け容積の小さい高段側圧縮機構にスクロール式の第1圧縮機構(41)を適用すると、冷媒の漏れの影響が大きく、運転効率が大きく低下してしまう。これに対して、本実施形態1では、第1圧縮機構(41)が低段側圧縮機構に用いられている。このため、第1圧縮機構(41)における冷媒の漏れの影響が比較的小さく、冷媒漏れによる運転効率の低下を抑制することができる。
また、第2圧縮機構(42)は、各圧縮室(75,76,95,96)の吐出ポート(79,80,99,100)に対して吐出弁(82,83,102,103)が設けられており、吐出弁がない第1圧縮機構(41)に比べて、吐出時間が短くなる。このため、押し退け容積の大きい低段側圧縮機構に第2圧縮機構(42)を適用すると、吐出抵抗が大きくなってしまう。これに対して、本実施形態1では、第2圧縮機構(42)が高段側圧縮機構に用いられている。このため、吐出ポート(79,80,99,100)から吐出される冷媒流量が、低段側圧縮機構に用いられる場合に比べて少なくなるので、吐出弁(82,83,102,103)による吐出抵抗を抑制することができる。
また、本実施形態1では、第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)が1本の駆動軸(50)で機械的に連結されているが、容積比変更手段(60)によって吸入容積比Vrを調節することが可能である。このため、容積比変更手段(60)によって吸入容積比Vrを調節することで、中間圧力を調節することができる。従って、運転条件等に応じて中間圧力を最適な値に近づけることが可能になるので、運転効率の向上を図ることができる。
また、本実施形態1では、容積比変更手段(60)によって中間圧力が調節されることで、第1圧縮機構(41)の運転圧力と第2圧縮機構(42)の運転圧力との比率に大きな差ができることが回避される。このため、各圧縮機構(41,42)のトルクが均一化されるので、さらに振動を抑制することができる。
また、本実施形態1では、第1圧縮機構(41)が非対称渦巻き構造のスクロール式の圧縮機構により構成されているので、第1圧縮機構(41)において、第1圧縮室(53a)と第2圧縮室(53b)には、ほぼ同じ位置から冷媒が流入する。このため、一方の圧縮室(53a,53b)の吸入冷媒の流量が最小値になるタイミングと他方の圧縮室(53a,53b)の吸入冷媒の流量が最大値になるタイミングとがほぼ一致する。このため、第1圧縮機構(41)の吸入冷媒の流量変動が緩和される度合いが大きくなるので、吸入冷媒の流量変動が原因で生じる圧力脈動、及びその圧力脈動によって生じる振動を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態1では、圧力脈動が大きくなりやすい二酸化炭素を圧縮する圧縮機(30)の第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)が、連続的に冷媒の吸入を行うように構成されている。このため、圧力脈動及び圧力脈動による振動の抑制効果として、大きな効果を得ることできる。
なお、本実施形態1では、第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)の両方が、運転圧力比・運転圧力差が比較的小さくなる構造になっている。このため、作動圧力が高い二酸化炭素を圧縮する場合であっても、スラスト軸受の大型化、それに伴う圧縮機構(41,42)の大径化を抑制することができる。
また、本実施形態1では、第2圧縮機構(42)で圧縮された全ての冷媒が電動機(47)を通過する。冷媒が電動機(47)を通る際には、冷媒に含まれる冷凍機油の一部が、電動機(47)に付着することによって、冷媒から分離される。従って、より多くの冷凍機油を冷媒から分離することが可能である。
−実施形態1の変形例1−
この変形例1では、図9に示すように、低段吐出管(32)に、中間冷却器(19)に接続されている。中間冷却器(19)の近傍には、冷却用ファン(20)が設置されている。中間冷却器(19)では、冷却用ファン(20)によって送られる室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。この変形例1では、第1圧縮機構(41)から第2圧縮機構(42)へ向かう冷媒が、中間冷却器(19)によって冷却される。冷却手段(61)は、インジェクション管(26)及び中間冷却器(19)により構成されている。なお、冷媒回路(11)にインジェクション管(26)を設けずに、冷却手段(61)が中間冷却器(19)だけにより構成されていてもよい。
−実施形態1の変形例2−
この変形例2では、容積比変更手段(60)が、第2圧縮機構(42)に向かう冷媒を第1圧縮部(43)と第2圧縮部(44)とに分けて各圧縮部(43,44)で冷媒を圧縮する並列圧縮状態と、第1圧縮部(43)と第2圧縮部(44)のうち第2圧縮部(44)のみで冷媒を圧縮する気筒休止状態とに切り換えることによって、第2圧縮機構(42)の吸入容積を調節する。
具体的に、容積比変更手段(60)は、図10に示すように、三路切換弁(60)により構成されている。三路切換弁(60)は、第1ポート(P1)が連絡吐出管(35)に接続され、第2ポート(P2)が連絡吸入管(36)に接続され、第3ポート(P3)が第1高段吸入管(33)に接続されている。三路切換弁(62)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通する第1状態と、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とが連通する第2状態とが切換自在に構成されている。
また、変形例2では、第1圧縮機構(41)の吸入容積V1と、第1圧縮部(43)の吸入容積V2と、第2圧縮部(44)の吸入容積V3との比率が、下記の式4の値に設定されている。なお、これらの吸入容積の間には、V1>V3>V2の関係が成立している。
V1:V2:V3=1.0:0.3:0.4 (式4)
三路切換弁(62)が第1状態に設定されると並列圧縮状態になる。この変形例2では、冷房運転時に並列圧縮状態に設定される。
並列圧縮状態では、第1圧縮機構(41)で圧縮された後に中間冷却器(19)で冷却された冷媒が、上記実施形態1の並列圧縮状態と同様に、図10に示すように、第1圧縮部(43)と第2圧縮部(44)とに分配されて、各圧縮部(43,44)でそれぞれで圧縮される。各圧縮部(43,44)で圧縮された冷媒は、合流した後に、高段吐出管(37)から吐出される。並列圧縮状態では、第1圧縮部(43)の吸入容積V2と第2圧縮部(44)の吸入容積V3の合計値が、第2圧縮機構(42)の吸入容積になる。その結果、吸入容積比Vrは下記の式5で表される。
Vr=(V2+V3)/V1 (式5)
一方、三路切換弁(62)が第2状態に設定されると気筒休止状態になる。この変形例2では、暖房運転時に気筒休止状態に設定される。
気筒休止状態では、第1圧縮部(43)が、図11に示すように、自ら吐出した冷媒を吸入して、圧縮することなく吐出する。このため、第1圧縮機構(41)で圧縮された後に中間冷却器(19)で冷却された冷媒は、第2圧縮部(44)のみで圧縮される。この場合、第2圧縮部(44)の吸入容積V3が、第2圧縮機構(42)の吸入容積になる。その結果、吸入容積比Vrは下記の式6で表される。
Vr=V3/V1 (式6)
なお、第2状態が第1圧縮部(43)のみで冷媒を圧縮する状態になるように、冷媒回路(11)が構成されていてもよい。
−実施形態1の変形例3−
この変形例3では、容積比変更手段(60)が、第2圧縮機構(42)において第1圧縮部(43)、第2圧縮部(44)の順番で冷媒を圧縮する直列圧縮状態と、第1圧縮部(43)と第2圧縮部(44)のうち第2圧縮部(44)のみで冷媒を圧縮する気筒休止状態とに切り換えることによって、第2圧縮機構(42)の吸入容積を調節する。容積比変更手段(60)は、図12に示すように、開閉自在の電磁弁(60)により構成されている。
電磁弁(60)が閉状態に設定されると、図12に示すように、直列圧縮状態になる。直列圧縮状態では、第1圧縮部(43)の吸入容積V2が第2圧縮機構(42)の吸入容積になる。一方、電磁弁(60)が開状態に設定されると、図13に示すように、気筒休止状態になる。気筒休止状態では、第2圧縮部(44)の吸入容積V3(V3<V2)が第2圧縮機構(42)の吸入容積になる。この変形例3では、冷房運転時に直列圧縮状態に設定され、暖房運転時中に気筒休止状態に設定される。
−実施形態1の変形例4−
上記実施形態1では、第1空間(45)及び第2空間(46)の圧力が高圧圧力になるが、第1空間(45)及び第2空間(46)の圧力が中間圧力になるように、圧縮機(30)を構成してもよい。この場合、第1圧縮機構(41)から吐出された冷媒が、ケーシング(40)内における第1圧縮機構(41)と第2圧縮機構(42)の間の空間に供給される。そして、高段吐出管(37)を設けずに、第1圧縮部(43)の吐出冷媒と第2圧縮部(44)の吐出冷媒とがケーシング(40)の外側で合流して放熱器へ導入されるように、第2圧縮機構(42)に冷媒配管が接続される。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。以下では、実施形態1と異なる点について説明する。
実施形態2では、常に、第1圧縮機構(41)、第1圧縮部(43)、第2圧縮部(44)の順番で冷媒が圧縮されるように、圧縮機(30)が冷媒回路(11)に接続されている。
具体的に、図14に示すように、低段吐出管(32)が第1高段吸入管(33)に接続されている。また、連絡吐出管(35)が第2高段吸入管(34)に接続されている。なお、圧縮機(30)には、連絡吸入管(36)は設けられていない。
また、本実施形態2では、第1圧縮機構(41)の吸入容積V1と、第1圧縮部(43)の吸入容積V2と、第2圧縮部(44)の吸入容積V3との比率が、下記の式7の値に設定されている。なお、これらの吸入容積の間には、V1>V2>V3の関係が成立している。
V1:V2:V3=1.0:0.7:0.45 (式7)
また、第1圧縮機構(41)の吐出容積V4は、第1圧縮部(43)の吸入容積V2と同じ値になっている。なお、第1圧縮機構(41)の吐出容積V4は、第1圧縮機構(41)と第1圧縮部(43)との間にインジェクション管(26)からの冷媒を常に導入する場合は、第1圧縮部(43)の吸入容積V2よりも小さな値に設定する方が好ましく、第1圧縮機構(41)と第1圧縮部(43)との間に中間冷却器(19)を設ける場合は、第1圧縮部(43)の吸入容積V2よりも大きな値に設定する方が好ましい。
また、冷媒回路(11)には、冷却切換手段(62)を構成する三路切換弁(62)が設けられている。三路切換弁(62)は、冷却手段(61)を構成するインジェクション管(26)によって第1圧縮機構(41)から第2圧縮機構(42)へ流れる冷媒を冷却する第1冷却状態と、インジェクション管(26)によって第1圧縮部(43)から第2圧縮部(44)へ流れる冷媒を冷却する第2冷却状態とに切り換える。
三路切換弁(62)では、第1ポート(P1)がインジェクション管(26)に接続され、第2ポート(P2)が第1圧縮機構(41)と第1圧縮部(43)との間に接続され、第3ポート(P3)が第1圧縮部(43)と第2圧縮部(44)との間に接続されている。三路切換弁(62)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通する第1状態と、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とが連通する第2状態とが切換自在に構成されている。
三路切換弁(62)が第1状態に設定されると、第1冷却状態に設定される。この実施形態2では、冷房運転時に第1冷却状態に設定される。第1冷却状態では、図14に示すように、インジェクション管(26)からの冷媒が第1圧縮機構(41)と第1圧縮部(43)との間に供給される。その結果、第1圧縮機構(41)から第1圧縮部(43)へ向かう冷媒の温度が低下する。
一方、三路切換弁(62)が第2状態に設定されると、第2冷却状態に設定される。この実施形態2では、暖房運転時に第2冷却状態に設定される。第2冷却状態では、図15示すように、インジェクション管(26)からの冷媒が第1圧縮部(43)と第2圧縮部(44)との間に供給される。その結果、第1圧縮部(43)から第2圧縮部(44)へ向かう冷媒の温度が低下する。
−実施形態2の効果−
本実施形態2では、インジェクション管(26)によって第1圧縮機構(41)と第2圧縮機構(42)の間を流れる冷媒の温度を低下させる第1冷却状態と、インジェクション管(26)によって第2圧縮機構(42)における圧縮部(43,44)間を流れる冷媒の温度を低下させる第2冷却状態とに、三路切換弁(62)が切り換える。三路切換弁(62)が第2状態から第1状態へ切り換えると、第1圧縮機構(41)と第2圧縮機構(42)の間に、インジェクション管(26)から流入する冷媒が加わるので、第1圧縮機構(41)から吐出される冷媒の流量が減少する。その結果、第1圧縮機構(41)から吐出される冷媒の圧力が増加する。つまり、中間圧力が増加する。一方、三路切換弁(62)が第1状態から第2状態へ切り換えると、中間圧力は低下する。このように、三路切換弁(62)によって2つの状態を切り換えることで中間圧力が変化する。従って、運転条件等に応じて中間圧力を最適な値に近づけることが可能になるので、運転効率の向上を図ることができる。
また、本実施形態2では、冷房運転時に第1冷却状態に設定され、暖房運転時に第2冷却状態に設定される。冷房運転時は、冷凍サイクルの高圧圧力と低圧圧力との高低差圧が比較的小さくなるので、インジェクション管(26)によって冷却される冷媒の圧力が冷凍サイクルの高圧圧力寄りの値とならないように、第1冷却状態に設定される。暖房運転時は、上記高低差圧が比較的大きくなるので、インジェクション管(26)によって冷却される冷媒の圧力が冷凍サイクルの低圧圧力寄りの値とならないように、第2冷却状態に設定される。その結果、冷房運転でも暖房運転でも、インジェクション管(26)によって冷却される冷媒の圧力は、冷凍サイクルの高圧圧力と低圧圧力の平均値寄りの値となるので、圧縮機(30)の入力が効率的に削減される。
−実施形態2の変形例1−
この変形例1では、常に、第1圧縮部(43)、第2圧縮部(44)、第1圧縮機構(41)の順番で冷媒が圧縮されるように、圧縮機(30)が冷媒回路(11)に接続されている。
具体的に、図16に示すように、第2圧縮機構(42)の第1圧縮部(43)の吸入側には、第1低段吸入管(131)が接続されている。第1圧縮部(43)の吐出側には、第1低段吐出管(132)が接続されている。また、第2圧縮機構(42)の第2圧縮部(44)の吸入側には、第2低段吸入管(133)が接続されている。第2低段吸入管(133)は第1低段吐出管(132)に接続されている。第2圧縮機構(42)の第2圧縮部(44)の吐出側は、第1空間(45)及び第2空間(46)を介して、第2低段吐出管(134)に連通している。また、第1圧縮機構(41)の吸入側には、高段吸入管(135)が接続されている。第1圧縮機構(41)の吐出側には、高段吐出管(136)が接続されている。
また、この変形例1では、第1圧縮機構(41)の吸入容積V1と、第1圧縮部(43)の吸入容積V2と、第2圧縮部(44)の吸入容積V3との比率が、下記の式8の値に設定されている。なお、これらの吸入容積の間には、V2>V3>V1の関係が成立している。
V1:V2:V3=0.6:1.0:0.8 (式8)
この変形例1では、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通する第1状態に三路切換弁(62)が切り換えられると、インジェクション管(26)からの冷媒が第1圧縮部(43)と第2圧縮部(44)との間に供給される。その結果、第1圧縮部(43)から第2圧縮部(44)へ向かう冷媒の温度が低下する第2冷却状態になる。
一方、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とが連通する第2状態に三路切換弁(62)が切り換えられると、インジェクション管(26)からの冷媒が第2圧縮部(44)と第1圧縮機構(41)との間に供給される。その結果、第2圧縮部(44)から第1圧縮機構(41)へ向かう冷媒の温度が低下する第1冷却状態になる。
この変形例1では、三路切換弁(62)が第1状態から第2状態へ切り換えられると、第2圧縮機構(42)と第1圧縮機構(41)の間に、インジェクション管(26)から流入する冷媒が加わるので、中間圧力が増加する。一方、三路切換弁(62)が第2状態から第1状態へ切り換えられると、中間圧力は低下する。このように、三路切換弁(62)によって2つの状態を切り換えることで中間圧力が変化する。従って、運転条件等に応じて中間圧力を最適な値に近づけることが可能になるので、運転効率の向上を図ることができる。
また、この変形例1では、冷房運転時に第2冷却状態に設定され、暖房運転時に第1冷却状態に設定される。冷房運転時は、冷凍サイクルの高圧圧力と低圧圧力との高低差圧が比較的小さくなるので、インジェクション管(26)によって冷却される冷媒の圧力が冷凍サイクルの高圧圧力寄りの値とならないように、第2冷却状態に設定される。暖房運転時は、上記高低差圧が比較的大きくなるので、インジェクション管(26)によって冷却される冷媒の圧力が冷凍サイクルの低圧圧力寄りの値とならないように、第1冷却状態に設定される。その結果、冷房運転でも暖房運転でも、インジェクション管(26)によって冷却される冷媒の圧力は、冷凍サイクルの高圧圧力と低圧圧力の平均値寄りの値となるので、圧縮機(30)の入力が効率的に削減される。
−実施形態2の変形例2−
この変形例2では、図17に示すように、インジェクション管や中間冷却器等の冷却手段(61)が設けられていない。この変形例2では、第1圧縮機構(41)の吐出容積V4は、第1圧縮部(43)の吸入容積V2と同じ値になっている。このため、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構の両方で過圧縮損失や逆流損失が小さくなる。
《その他の実施形態》
上述した各実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態について、冷媒回路(11)に充填される冷媒が二酸化炭素以外の冷媒(例えばフロン冷媒)であってもよい。
また、上記実施形態について、第1圧縮機構(41)の吐出ポート(57)に吐出弁を設けてもよい。この場合、冷却手段(61)による冷却効果が少ない場合に、逆流損失を低減させることが可能である。
また、上記実施形態について、容積比変更手段(60)が、第1圧縮機構(41)が低段側圧縮機となって第2圧縮機構(42)が高段側圧縮機構となる状態と、第2圧縮機構(42)が低段側圧縮機となって第1圧縮機構(41)が高段側圧縮機構となる状態とに切り換えることによって、吸入容積比を変更するように構成されていてもよい。
また、上記実施形態について、第2圧縮機構(42)の各圧縮部(43,44)が、シリンダ(72,92)とピストン(70,90)のうちシリンダ(72,92)が偏心回転運動を行うように構成されていてもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。