JP5336234B2 - 複合粒子担持物及びその製造方法並びにカルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複合粒子担持物及びその製造方法並びにカルボン酸エステルの製造方法に関する。
ニッケル又はニッケル化合物は、酸化反応、還元反応、改質反応、光分解、CO付加、炭素炭素結合等の触媒として広く利用されている。従来、ニッケル又はニッケル化合物が酸化反応に用いられる例としては、(1)過酸化ニッケル(NiO2)を化学量論酸化剤として用いたアルコールの酸化方法(非特許文献1参照)、(2)Ni−Alハイドロタルサイトを触媒として用いたアルコールの酸素酸化反応(非特許文献2参照)、(3)Ni(II)が含まれるMg−Alハイドロタルサイトを触媒として用いたアルコールの酸素酸化反応(非特許文献3参照)、(4)過酸化ニッケル(NiO2)ナノ粒子を触媒として用いたアルコールの酸素酸化反応(非特許文献4)が挙げられる。
上記(1)のように、高酸化状態の過酸化ニッケルは、酸化ニッケルに比べて酸化力が高く、化学量論的に種々のアルコール類を酸化できることは古くから知られていた。このような過酸化ニッケルは、純粋なもの及び無水物として得られておらず、また、その構造も不明瞭な点も多く、酸素を吸着した酸化ニッケルであるとも言われている。しかしながら、過酸化ニッケルは化学量論的な酸化剤として極めて有用であることから、酸素分子を酸化剤に用いて触媒的に活性な酸化活性種を発生させることができれば、多くの有機基質の酸素酸化に適用することが可能になる。
近年、ニッケル系触媒の様々な修飾や改良により、触媒的なアルコールの酸素酸化反応が実現されている。上記(2)、(3)のニッケル−ハイドロタルサイト系触媒は、Niと異種金属元素(Al、Mg等)との複合化を行うことによって、酸素分子の高効率的な活性化を実現し、不均一系のニッケル触媒による酸素酸化が達成された。これらの触媒においては、Niと異種金属元素との複合化によってNiが酸素の活性化サイトとして機能するようになり、Ni上で反応活性種となるペルオキソ種が生成すると考えられている。また、上記(4)の方法においては、過酸化ニッケルをナノ粒子化することによって触媒的に反応が進行するようになることが報告されている。
化学工業界では、ニッケル及びニッケル化合物は、これらアルコールの酸化反応に限らず、種々の酸化反応、還元反応、改質反応、CO付加、炭素炭素結合等の様々な反応に、また、自動車排ガスの浄化触媒や光触媒等に広く有効であることが示されている。
J.Org.Chem.27(1962)1597 Angew.Chem.Int.Ed.40(2001)763 J.Mol.Catal.A 236(2005)206 Appl.Catal.A 282(2005)25
しかしながら、上述の公知の方法においては、目的生成物の選択率及び触媒活性が必ずしも十分でなく、工業的に有利な方法とは言い難い。また、触媒として用いられるニッケル又はニッケル化合物は、活性成分の使用量の低減や高い反応性を実現するという目的にかんがみ、触媒成分として利用する際には、比表面積を大きくして利用効率を高めるために、通常、担体に分散担持して用いられる。ニッケル又はニッケル化合物を担持させる担体としては、反応の特性、用途によって様々な種類のものが用いられている。しかしながら、機械的強度が高く物理的に安定で、しかも耐酸性、耐アルカリ性を有する化学的安定性に優れた担体は知られていない。
本発明者らは、工業プロセスとしての実用化を前提に、酸化状態にあるニッケルと、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素と、を含有する複合粒子を担体に担持した複合粒子担持物につき鋭意検討した。その結果、上記複合粒子担持物を化学合成用の触媒として用いた場合、担体として、活性炭、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−アルミナ−マグネシアを用いると、触媒寿命の観点からは必ずしも満足のいく触媒とはいえないことが明らかになった。
すなわち、工業的に用いられることの多い攪拌槽反応器又は気泡塔反応器等でスラリー状態の触媒を用いて反応させた場合、担体が活性炭の場合は機械的強度が不十分であり、さらに触媒成分であるニッケル及び遷移元素成分の剥離が認められた。また、アルミナ担体は機械的強度が高いものの、反応固有の副生物である酸性物質による腐食によって担体の強度が低下し、その結果、触媒成分であるニッケル及び遷移元素成分が剥離しやすいという欠点がある。担体が炭酸カルシウムの場合もアルミナ以上に酸性物質による腐食が起こりやすく工業的使用には適していない。シリカ又はシリカ−チタニアを担体に用いた場合、反応原料に同伴して系内に持ち込まれる水又は反応で副生する水により、徐々にではあるがシリカの一部が浸食されてシリカが溶出する現象が見受けられ、また同時に、触媒成分であるニッケル及び遷移元素成分の剥離及び溶出も認められた。このため、長期間安定に用いるには不安がある。また、上述のアルミナ担体に比べれば機械的強度が低いという問題もある。さらに、シリカの機械的強度及び耐腐食性を向上させるため、シリカゲルの製造方法の検討や、高温焼成等によるシリカゲルの改質の検討が報告されているものの、触媒本来の性能を損なうことなく機械的強度及び耐加水分解安定性の改善に成功した例は報告されていない。例えば、シリカ系の物質の一つである石英は硬く、機械的強度及び耐加水分解性は高いことが知られている。ところが、石英を担体とした場合、機械的強度、耐腐食性は顕著に改善されるが、比表面積の低下(1m2/g以下)を招き、金属触媒を微粒子状に高分散状態で担持できないため、得られる触媒の反応活性は極めて低くなるという問題が生じる。
一方、シリカ−アルミナ担体又はシリカ−アルミナ−マグネシア担体は、機械的強度が高く、シリカに比べて高い耐水性を有し、アルミナに比べて耐酸性が高いという特徴を有する。しかしながら、本発明者の検討によると、その担体を有する触媒を用いて長期的に反応を実施した場合、徐々にではあるが、細孔径の拡大及び粒子成長に起因する触媒粒子の構造変化が起こることが判明した。細孔径の拡大は、反応固有の副生物の生成により、触媒粒子が局所的に酸と塩基に繰り返し曝され、シリカ−アルミナ又はシリカ−アルミナ−マグネシア担体中のケイ素、アルミニウムの一部が溶解、析出し、シリカ・アルミナ架橋構造の再配列が生じることによって、生じるものと考えられる。また、細孔径の拡大と同時に、担持複合粒子のシンタリングが進行し、触媒活性が低下することも判明した。
そこで本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、酸化状態のニッケルと、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素とを含有する複合粒子と、その複合粒子を安定に担持する担体と、を含み、触媒として長期間にわたり高い反応性を維持する複合粒子担持物及びその製造方法、並びにその複合粒子担持物を触媒として用いたカルボン酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、シリカゲルの化学的安定性及び機械的強度を改善する観点から、シリカゲルを構成しているシリカ鎖(−Si−O−)の特異な構造に着目し、これらの構造と物性との相関について鋭意研究を進めた。その結果、意外にも、ケイ素と、アルミニウムと、鉄、コバルト、ニッケル及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の第4周期元素と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性元素とを含む複合酸化物からなる担体が、従来の担体に認められる上述のような各々の欠点を克服し、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]ケイ素と、アルミニウムと、鉄、コバルト、ニッケル及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の第4周期元素と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性元素と、を、前記ケイ素と前記アルミニウムと前記第4周期元素と前記塩基性元素との合計モル量に対して、それぞれ、42〜90モル%、3〜38モル%、0.5〜20モル%、2〜38モル%、の範囲で含有する複合酸化物からなる担体と、前記担体に担持された、酸化状態にあるニッケルと、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素と、を含有する複合粒子と、を含む、酸素の存在下でアルデヒドとアルコールとを反応させる酸化的エステル化反応に触媒として用いられる、複合粒子担持物。
[2]前記担体における前記アルミニウムに対する前記第4周期元素の組成比がモル基準で0.02〜1.0である、[1]の複合粒子担持物。
[3]前記担体における前記塩基性金属元素に対する前記第4周期元素の組成比がモル基準で0.02〜1.2である、[1]又は[2]の複合粒子担持物。
[4]前記複合酸化物は、前記第4周期元素がニッケル、前記塩基性元素がマグネシウムである複合酸化物であって、前記ケイ素と前記アルミニウムと前記ニッケルと前記マグネシウムとの合計モル量に対して、前記ケイ素を42〜90モル%、前記アルミニウムを3〜38モル%、前記ニッケルを0.5〜20モル%、前記マグネシウムを2〜38モル%の範囲でそれぞれ含有する、[1]〜[3]のいずれか1つの複合粒子担持物。
[5]前記複合粒子は、平均粒子径が2〜10nmである、[1]〜[4]のいずれか1つの複合粒子担持物。
[6]前記複合粒子における前記遷移元素に対する前記ニッケルの組成比がモル基準で0.1〜10である、[1]〜[5]のいずれか1つの複合粒子担持物。
[7]前記複合粒子は、前記遷移元素からなる核部と、その核部を被覆する前記酸化状態にあるニッケルの化合物からなる殻部と、を含有する、[1]〜[6]のいずれか1つの複合粒子担持物。
[8]ケイ素と、アルミニウムと、鉄、コバルト、ニッケル及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の第4周期元素と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性元素と、を、前記ケイ素と前記アルミニウムと前記第4周期元素と前記塩基性元素との合計モル量に対して、それぞれ、42〜90モル%、3〜38モル%、0.5〜20モル%、2〜38モル%、の範囲で含有する複合酸化物からなる担体を調製する工程と、酸化状態にあるニッケルと、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素と、を含有する複合粒子を前記担体に担持する工程と、を有する複合粒子担持物の製造方法。
[9]前記担体に担持する工程が、ニッケルを含む可溶性金属塩と、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素を含む可溶性金属塩との酸性水溶液を中和することによって、前記担体に前記ニッケルと前記遷移元素を含む成分とを析出させて前駆体を得る工程と、前記前駆体を加熱処理することによって、前記ニッケルを酸化状態にする工程と、を有する、[8]の複合粒子担持物の製造方法。
[10][1]〜[7]のいずれか1つの複合粒子担持物を触媒として用い、酸素の存在下でアルデヒドとアルコールとを反応させる、カルボン酸エステルの製造方法。
[11]前記アルデヒドが、アクロレイン及びメタクロレイン並びにそれらの混合物からなる群より選ばれる、[10]のカルボン酸エステルの製造方法。
[12]前記アルコールがメタノールである、[10]又は[11]のカルボン酸エステルの製造方法。
本発明によれば、酸化状態のニッケルと、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素とを含有する複合粒子と、その複合粒子を安定に担持する担体と、を含み、触媒として長期間にわたり高い反応性を維持する複合粒子担持物及びその製造方法、並びにその複合粒子担持物を触媒として用いたカルボン酸エステルの製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[複合粒子担持物]
本実施形態の複合粒子担持物は、(a)ケイ素と、アルミニウムと、鉄、コバルト、ニッケル及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の第4周期元素と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性元素とを含有する複合酸化物からなる担体と、その担体に担持された(b)酸化状態にあるニッケルと、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素とを含有する複合粒子とを含む(c)複合粒子担持物である。
(a)担体
本実施形態に係る担体は、化学的安定性及び機械的強度を大きく改善できたものであるが、その理由を本発明者は次のように推定している。すなわち、本実施形態の担体では、シリカゲルのような未架橋シリカ(Si−O)鎖を有するシリカにアルミニウム(Al)が共存することで、Si−O−Al−O−Si結合のようなSi−O鎖のAlによる架橋構造(以下、「シリカ・アルミナ架橋構造」ともいう)が新たに形成され、Si−O鎖本来の酸性物質に対する安定性を失うことなく、Alによる架橋構造が形成されると考えられる。これにより、Si−O結合が強化されると共に、耐加水分解安定性(以下、単に「耐水性」ともいう)が格段に向上すると考えられる。また、シリカ・アルミナ架橋構造が形成されると、シリカ単独の場合に比べてSi−O未架橋鎖が減少し、機械的強度も大きくなると考えられる。すなわち、シリカ・アルミナ架橋構造の形成量と、得られるシリカ系材料の機械的強度及び耐水性の向上とが相関するものと推定される。
また、シリカ・アルミナ架橋構造の生成に伴い、Si(4価)とAl(3価)との価数の違いに基づいて、電荷が不安定となる。そこで、本実施形態に係る担体では、ケイ素及びアルミニウムに加えて、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類金属元素より選択される少なくとも1種の塩基性元素が共存する。これにより、1〜3価の塩基性元素が補償中和し、電荷の安定化が促される。さらに、三成分系となることにより、電荷的なバランスがとれるため、その構造の安定性がより高められるものと推定される。その根拠の一つとして、シリカ−アルミナでは酸性を示すのに対し、シリカ−アルミナ−マグネシアではほぼ中性を示す。
さらに、上記三成分元素に加えて、鉄、コバルト、ニッケル及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の第4周期元素を含む担体は、上記第4周期元素を含有しないものと比較して、化学的安定性が高くなる。そのため酸、塩基に繰り返し曝されるpHスイング条件においても、構造安定性が高く、細孔径の拡大と比表面積の低下とが抑制される。
本発明者らの検討によると、シリカ−アルミナ又はシリカ−アルミナ−マグネシアを担体として用いた複合粒子担持物をカルボン酸エステルの合成反応の触媒として用いた場合、長期的な反応において、徐々にではあるが複合粒子の構造変化が起こることが明らかになった。この現象は、上述の反応において、担持物の粒子が局所的に酸と塩基とに繰り返し曝され、上記担体中のアルミニウムの一部が溶解、析出し、シリカ・アルミナ架橋構造の再配列が生じることによって、担持物の粒子の細孔径が拡大することに起因すると考えられる。また、細孔径の拡大に伴って、複合粒子のシンタリングが起こり、その比表面積が低下することによって、触媒活性が低下することも判明した。
担体に含まれる上記第4周期元素が、その担体の構成元素であるアルミニウム及び/又は塩基性元素と反応することによって、第4周期元素を含む複合酸化物が生成していると考えられる。そのような化合物の形成がシリカ・アルミナ架橋構造の安定化に作用した結果、担体の化学的安定性が向上し、構造変化が大きく改善されたと考えられる。
ここで、本明細書中の「複合酸化物」とは、2種以上の金属を含む酸化物を表す。すなわち、「複合酸化物」とは、金属酸化物の2種以上が化合物を形成した酸化物であり、その構造の単位としてオキソ酸のイオンが存在しない複酸化物(例えば、ニッケルのペロブスカイト型酸化物やスピネル型酸化物)を包含する。ただし、複酸化物よりも広い概念であり、2種以上の金属が複合した酸化物を全て包含する。2種以上の金属酸化物が固溶体を形成した酸化物も「複合酸化物」の範疇である。
例えば、上記第4周期元素としてニッケル、塩基性元素としてマグネシウムを選定し、ケイ素−アルミニウム−ニッケル−マグネシウムを含む複合酸化物からなる担体について、二結晶型高分解能蛍光X線分析法(HRXRF)によってニッケルの化学状態を解析すると、本実施形態に係る担体中のニッケルは、単一化合物である酸化ニッケルとしては存在しない。そのニッケルは、酸化ニッケルとアルミナ及び/又はマグネシアとが結合して生成するニッケルの酸化化合物若しくは固溶体又はこれらの混合物等の、ニッケルを含む複合酸化物として存在する。
二結晶型高分解能蛍光X線分析法(HRXRF)は、そのエネルギー分解能が極めて高く、得られるスペクトルのエネルギー位置(化学シフト)や形状から元素の化学状態が分析できる。特に、3d遷移金属元素のKαスペクトルにおいては、価数や電子状態の変化によって化学シフトやスペクトル形状に変化が現れ、元素の化学状態を詳細に解析することができる。本実施形態のシリカ系複合材料においては、酸化ニッケルの場合と比較するとNiKαスペクトルが異なっており、単一化合物である酸化ニッケルとは異なるニッケルの化学状態が確認される。
本実施形態に係る担体において、ニッケルは、例えば、酸化ニッケルとアルミナとのスピネル化合物であるアルミン酸ニッケル(NiAl24)、あるいは酸化ニッケルとマグネシアとの固溶体(NiO・MgO)として存在すると推定される。ニッケル以外の上記第4周期元素についても同様に、その酸化物がアルミナとのスピネル化合物又は塩基性金属酸化物との固溶体を形成することによって、シリカ・アルミナ架橋構造の安定化に作用し、化学的安定性が高くなったものと考えられる。
本実施形態に係る担体は、その比表面積が20〜500m2/gであるのが好ましく、より好ましくは50〜400m2/g、特に好ましくは50〜350m2/gである。担体が触媒担体として用いられる場合、その細孔径は好ましくは3〜50nm、より好ましくは3〜30nm、さらに好ましくは3〜10nmである。また、担体の細孔容積は0.1〜1.0mL/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5mL/gの範囲である。本実施形態の担体は、機械的強度及び耐水性の観点から、比表面積、細孔径及び細孔容積が共に上記範囲にあるものが好ましい。ここで、担体の比表面積、細孔径及び細孔容積は、後述の[物性の測定、解析]に記載の方法に準拠して測定される。
ケイ素、アルミニウム、上記第4周期元素及び上記塩基性元素を含む複合酸化物からなる担体は、ケイ素とアルミニウムと第4周期元素と塩基性元素との合計モル量に対して、ケイ素を42〜90モル%、アルミニウムを3〜38モル%、第4周期元素を0.5〜20モル%、塩基性元素を2〜38モル%の範囲で含む。好ましくは、ケイ素を70〜90モル%、アルミニウムを5〜30モル%、第4周期元素を0.5〜10モル%、塩基性元素を2〜30モル%、より好ましくは、ケイ素を75〜90モル%、アルミニウムを5〜15モル%、第4周期元素を0.5〜5モル%、塩基性元素を2〜15モル%の範囲で含む。ケイ素、アルミニウム、第4周期元素及び塩基性元素の量が上記範囲内であると、ケイ素、アルミニウム、第4周期元素、塩基性元素及び酸素原子が、互いに特定の安定な結合構造を形成し、その結果、複合粒子担持物の化学的安定性、機械的強度及び耐水性が良好となる傾向にある。
塩基性元素のアルカリ金属元素の例としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)が、アルカリ土類金属元素の例としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が、希土類元素の例としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)がそれぞれ挙げられる。
本実施形態においては、第4周期元素とアルミニウム又は塩基性元素との組成比に好適な範囲が存在する。アルミニウムに対する第4周期元素の組成比(第4周期元素/アルミニウム)は、モル基準で、好ましくは0.02〜1.0、より好ましくは0.05〜0.8、さらに好ましくは0.04〜0.6である。また、塩基性元素に対する第4周期元素の組成比(第4周期元素/塩基性元素)は、モル基準で、好ましくは0.02〜1.2、より好ましくは0.05〜1.0、さらに好ましくは0.05〜0.8である。第4周期元素とアルミニウム又は塩基性元素との組成比が上記範囲内であると、アルミニウムの溶出及びシリカ系複合材料の構造変化の改善効果が大きくなる傾向がある。これは、この範囲内で第4周期元素、アルミニウム、塩基性元素が特定の複合酸化物を形成し、安定な結合構造を形成するためと考えられる。
第4周期元素がニッケル、塩基性元素がマグネシウムである場合、ケイ素と、アルミニウムと、ニッケルと、マグネシウムとを含む複合酸化物からなる担体は、化学的安定性、機械的強度及び耐水性の観点で、ケイ素とアルミニウムとニッケルとマグネシウムとの合計モル量に対して、好ましくは、ケイ素を42〜90モル%、アルミニウムを3〜38モル%、ニッケルを0.5〜20モル%、マグネシウムを2〜38モル%の範囲で含む。より好ましくは、ケイ素を70〜90モル%、アルミニウムを5〜30モル%、ニッケルを0.5〜10モル%、マグネシウムを2〜30モル%、さらに好ましくは、ケイ素を75〜90モル%、アルミニウムを5〜15モル%、ニッケルを0.5〜5モル%、マグネシウムを2〜15モル%の範囲で含む。ケイ素、アルミニウム、ニッケル及びマグネシウムの元素組成が上記範囲内であると、ケイ素、アルミニウム、ニッケル及びマグネシウムが特定の安定な結合構造を形成し、その結果、担体の化学的安定性、機械的強度及び耐水性が良好となる傾向にある。
本実施形態に係る担体の固体形態としては、所定の物性が得られるものであれば特に限定されないが、X線回折で結晶性成分に由来する回折ピークが観測されない程度の非晶質状であることが好ましい。このような固体形態にすることで、担体中の第4周期元素が高い程度で分散し、シリカ・アルミナ架橋構造に強く作用することによって、より優れた化学的安定性が得られる傾向にある。
本実施形態に係る担体は、その実質的な厚さ又は粒子径がμmからcmのオーダーの様々の大きさであればよく、種々の形状を有することができる。その担体形状の具体例としては、球状、楕円状、円柱状、錠剤状、中空円柱状、板状、棒状、シート状、ハニカム状が挙げられる。触媒担体として用いる場合、本実施形態に係る担体の形状を、用いる反応形式によって適宜変えることができる。例えば、固定床反応にその触媒担体を用いる場合、圧力損失の少ない中空円柱状又はハニカム状が好ましく、液相スラリー懸濁条件では、一般的に球状が好ましい。
特に、流動状態における触媒担体として本実施形態に係る担体を反応に用いる場合、その形状は球状の粒子であると好ましく、その粒子径が平均粒子径で好ましくは1〜200μm、より好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは30〜150μmである。担体をこのような粒子として用いることで、本発明の優れた効果を一層有効かつ確実に引き出すことが可能になる。担体の平均粒子径は、後述の[物性の測定、解析]に記載の方法に準拠して測定される。
ケイ素、アルミニウム、上記第4周期元素及び上記塩基性元素を含む複合酸化物からなる担体は、シリカに比べて高い耐水性を有し、アルミナに比べて耐酸性が高い。また、その担体は、シリカに比べて機械的強度が高い等、優れた物性を備えている。しかも、その担体は、シリカ−アルミナ又はシリカ−アルミナ−マグネシアに比べて化学的安定性が極めて高く、例えば、酸、塩基に繰り返し曝されるpHスイング条件において、ケイ素、アルミニウムの一部が溶解、析出することによる細孔径の拡大や比表面積の低下等の構造変化が抑制されるものである。
(b)複合粒子
本実施形態に係る複合粒子は、酸化状態にあるニッケルと、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素と、を含有する粒子である。
以下、本実施形態に係る複合粒子について説明する。
酸化状態にあるニッケルとしては、好ましくはニッケルと酸素とが結合して生成するニッケル酸化物(例えば、Ni2O、NiO、NiO2、Ni34、Ni23)、あるいは、ニッケルと、上記第4周期元素及び/又は1種以上の他の金属元素と、酸素とが結合して生成するニッケルの酸化化合物若しくは固溶体又はこれらの混合物等のニッケルを含む複合酸化物におけるニッケルである。
ここでいう「ニッケル酸化物」とは、ニッケルと酸素とを含む化合物を指す。その「ニッケル酸化物」は、上記で例示したNi2O、NiO、NiO2、Ni34、Ni23又はこれらの水和物、OOH基を含むニッケルのヒドロペルオキシド若しくはO2基を含むニッケルの過酸化物又はこれらの混合物を包含する。
本発明者らは、本実施形態の複合粒子担持物をカルボン酸エステルの合成用触媒として用いた場合、ニッケル酸化物と上記遷移元素との複合化を行うことにより、酸化エステル化活性を有するニッケル酸化物の本来の触媒能が引き出され、各単一成分からなる触媒では実現しなかったような著しく高い触媒性能が現れることを見出した。これはニッケル酸化物と上記遷移元素とを複合化させることで初めて発現する特異な効果であって、両金属成分間における二元機能効果又は新たな活性種の生成等により、各単一成分とは全く異なった新しい触媒作用が生み出されたためと考えられる。このような新しい概念に基づいて、酸化状態にあるニッケルと上記遷移元素とを担体に高分散状態で担持させた場合は、特に、従来の触媒では得られない画期的な触媒性能を実現させることができる。
例えば、遷移元素として金を選択し、担体に酸化ニッケルと金とを高分散に担持すると、著しく高い触媒性能が現れる。その触媒は、酸化ニッケル又は金をそれぞれ単体で担体に担持した触媒に比べて、カルボン酸エステルの選択性が高く、特定のNi/Au組成比のところで大きな活性向上が認められる。金属原子当たりの触媒活性について、その触媒は、各単一成分からなる粒子担持物に比べて高い活性を示し、その複合化による触媒機能の発現は、担持したニッケルと金との組成比に強く依存する。これは、反応に最適なニッケルの酸化状態の形成に最適なそれらの組成比が存在するためと推定される。このように、酸化ニッケル及び金の二成分が担体に分散して担持されることによって、各単一成分の単なる合算からでは予想できない際立った複合効果が発現した。
本発明者らの研究によると、上記遷移元素として金を選択した上記複合粒子担持物は、担体に酸化状態のニッケルと金とが高分散に担持されており、両成分がナノサイズで複合化していることが確認された。すなわち、その複合粒子担持物では、透過型電子顕微鏡/走査透過電子顕微鏡(TEM/STEM)の観測結果から、2〜3nmのほぼ球状のナノ粒子が担体上に均一に分散して担持されていることが確認された。エネルギー分散型X線分光(EDS)によるナノ粒子の元素分析から、いずれの粒子にもニッケルと金とが共存しており、金ナノ粒子の表面にニッケルが被覆した形態であることが観察された。
X線光電子分光法(XPS)及び粉末X線回折(粉末XRD)の結果によれば、上記ナノ粒子において、金は結晶性の金属として存在する一方、ニッケルは2価の価数を有する非晶質状の酸化物として存在しているものと推定される。
電子の励起状態の変化を観測できる紫外可視分光法(UV−Vis)から、酸化ニッケルと金とを複合化すると、単一金属種の金ナノ粒子では観測された金ナノ粒子由来の表面プラズモン吸収ピーク(約530nm)が消失することが確認された。このような表面プラズモン吸収ピークの消失現象は、反応に効果が見られなかった、酸化ニッケル以外の他の金属酸化物種(例えば、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化銅及び酸化亜鉛)と金との組み合わせからなる触媒では認められなかった。この表面プラズモン吸収ピークの消失は、酸化状態のニッケルと金との接触界面を介した電子状態の混成が生じた結果、つまり、2種類の金属化学種のハイブリット化に起因すると考えられる。
本実施形態に係る複合粒子において、酸化ニッケルへの金の添加により、酸化ニッケルは灰緑色から茶褐色に変色し、そのUVスペクトルでは、可視光領域がほぼ全体にわたって吸収を示した。より高酸化型のニッケル酸化物への変換は、その色調変化及び紫外可視分光法(UV−Vis)により確認される。また、上記複合粒子における変色後の酸化ニッケルの色及びUVスペクトルの状態は、参照試料として測定した高酸化型の過酸化ニッケル(NiO2)と類似していた。これらのことから、その複合粒子では、金の添加により、酸化ニッケルがより高酸化状態のニッケル酸化物に変換されていると推察される。
以上の結果から、遷移元素として金を選択した場合の複合粒子は、金粒子からなる核部と、その核部を被覆した高酸化状態にあるニッケル酸化物とを有する形態(いわゆるコアシェル構造)であり、複合粒子の表面に金原子は存在しないと考えられる。
複合粒子におけるニッケルと上記遷移元素との担持組成比は、ニッケルと遷移元素との合計量に対するニッケルの組成比(Ni/(Ni+Y);Yは遷移元素)として、原子比で、0.20〜0.99の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.30〜0.90、さらに好ましくは0.50〜0.90の範囲である。
複合粒子は、担体に高分散の状態で担持されているのが好ましい。具体的には、複合粒子は、粒子が担体との積層方向に互いに重ならないような状態で担持されていると好ましく、微粒子状(すなわち、粒子同士が接していない状態)又は薄膜状(すなわち、粒子同士が互いに接しているが、担体との積層方向に重なっていない状態)で分散して担持されているのがより好ましい。複合粒子の平均粒子径は、好ましくは2〜10nm、より好ましくは2〜8nm、さらに好ましくは2〜6nmである。
複合粒子の平均粒子径が上記範囲内にあると、ニッケルと上記遷移元素とからなる特定の活性種構造が形成され、反応活性が向上する傾向にある。ここで、本実施形態における「平均粒子径」は、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定された数平均粒子径を意味する。具体的には、透過型電子顕微鏡で観察される画像において、黒いコントラストの部分が複合粒子であり、その画像内での各粒子の直径を全て測定してその数平均として算出される。
複合粒子中の上記遷移元素に対するニッケルの組成比(Ni/Y)は、原子比で、0.1〜10の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5.0、さらに好ましくは0.3〜3.0の範囲である。Ni/Yが上記範囲内であると、ニッケルと遷移元素とからなる特定の活性種構造、及び反応に最適なニッケルの酸化状態を良好に形成できるので、それらの組成比が上記範囲を外れた担持物よりも、触媒に用いた場合の触媒活性及び選択性が高くなる傾向にある。
複合粒子の形態については、ニッケル及び上記遷移元素の両成分が含まれる限り特に限定されないが、好ましくは粒子中に両成分が共存し、相構造、例えば、化学種がランダムに結晶のサイトを占める固溶体構造、各化学種が同心球状に分離したコアシェル構造、異方的に相分離した異方性相分離構造、粒子表面に両化学種が隣り合って存在するヘテロボンドフィリック構造のいずれかの構造を有する形態であることが好ましい。より好ましくは上記遷移元素からなる核部を有し、その核部を酸化状態にあるニッケルからなる殻部で被覆したコアシェル構造の形態であることが好ましい。複合粒子の形状については、両成分が含まれるものであれば特に限定されず、球状又は半球状等のいずれの形状であってもよい。
複合粒子の形態を観察する解析手法としては、例えば、上述したように、透過型電子顕微鏡/走査透過電子顕微鏡(TEM/STEM)が有効である。TEM/STEMで観察されたナノ粒子像に電子線を照射することで、その粒子中の元素分析や元素の分布像の描出が可能となる。本発明者らにより、本実施形態の複合粒子は、後述の実施例に示されるように、いずれの粒子中にもニッケルと上記遷移元素とが含まれ、その遷移元素からなる核部がニッケルからなる殻部で被覆された形態を有し得ることが確認された。このような形態を有する場合、粒子中の組成分析点の位置によって、ニッケルと上記遷移元素との組成比が異なり、粒子中央部よりも粒子周縁部にニッケルが多く検出される。したがって、個々の粒子でも分析点の位置によってはニッケルと上記遷移元素との組成比に幅を有することになり、その範囲は、上述のNi/Yの範囲に含まれる。
上記遷移元素として、金、銀及び銅のいずれかを用いた場合、紫外可視分光法(UV−Vis)がその構造を特定する上で有力な手段となる。金、銀、銅のナノ粒子単体では、可視〜近赤外域の光電場と金属の表面自由電子とがカップリングして、表面プラズモン吸収を示す。例えば、金粒子を担持した触媒に可視光を照射すると、約530nmの波長に金粒子由来のプラズモン共鳴に基づく吸収スペクトルが観測される。しかしながら、本実施形態のニッケル酸化物と金とを担持した複合粒子担持物では、その表面プラズモン吸収が消失することから、本実施形態の複合粒子の表面に金は存在しないと考えることができる。
複合粒子におけるニッケルの固体形態としては、触媒として用いた場合に所定の活性が得られるものであれば特に限定されないが、好ましくは、X線回折で回折ピークが観測されない程度の非晶質状である。このような固体形態にすることで、酸化反応の触媒として複合粒子担持物を用いる場合に、酸素との相互作用が高くなると推定され、さらには、酸化状態にあるニッケルと上記遷移元素との接合界面の面積が増加することから、より優れた活性が得られる傾向にある。
本実施形態において、上記遷移元素は、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素である。より好ましくは、その遷移元素は、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、金及び銀からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素である。
その遷移元素の化学状態は、金属、酸化物、水酸化物、その遷移元素とニッケル及び/若しくは1種以上の他の金属元素とを含む複合化合物、又はこれらの混合物のいずれでもよい。好ましい化学状態としては、金属又はは酸化物、より好ましくは金属である。また、その遷移元素の固体形態としては、所定の活性が得られるものであれば特に限定されず、結晶質及び非晶質のいずれの形態であってもよい。
ここでいう、「他の金属元素」とは、後述の担体の構成元素、酸化状態にあるニッケル、上記第4周期元素の他に、担持物中に含有する後述の第3成分元素、又は後述の塩基性元素アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素等の元素を指す。
(c)複合粒子担持物
本実施形態の複合粒子担持物は、上述のように酸化状態にあるニッケルと上記遷移元素とを担体に担持し、酸化状態にあるニッケルと上記遷移元素とを含有する複合粒子を形成させることによって優れた効果を発揮する。なお、本実施形態でいう、「複合粒子」とは、一つの粒子の中に異なる二元金属種を含む粒子を意味する。本実施形態に係る複合粒子は酸化状態にあるニッケルと上記遷移元素とを含有するものであり、ニッケルと遷移元素とが二元金属種である。これとは異なる二元金属種としては、ニッケル及び上記遷移元素の両成分が金属である二元金属粒子、ニッケルと上記遷移元素との合金又は金属間化合物を形成している金属粒子が挙げられる。これらは化学合成用の触媒として用いた場合に、本実施形態の複合粒子担持物と比較して、目的生成物の選択性及び触媒活性が低くなる傾向にある。
酸化状態にあるニッケルの担体への担持量は特に限定はないが、担体の全質量に対し、ニッケルとして0.01〜20質量%であると好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.2〜5質量%、特に好ましくは0.5〜2質量%である。
上記遷移元素の担体への担持量は、担体の全質量に対し、遷移元素金属として0.01〜10質量%であると好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.2〜2質量%、特に好ましくは0.3〜1.5質量%、極めて好ましくは0.5〜1.0質量%である。
本実施形態の複合粒子担持物は、活性成分として酸化状態にあるニッケル及び上記遷移元素の他に、第3成分元素を含有することもできる。その第3成分元素としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、カドニウム、インジウム、錫、アンチモン、テルル、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスニウム、イリジウム、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、アルミニウム、硼素、珪素、リンを含ませることが可能である。これらの第3成分元素の含有量は、担持物の全体量を基準として、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜10質量%である。また、上記担体に含まれるものとは別に、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を複合粒子担持物に含有させてもよい。その含有量は、複合粒子担持物の全体量に対して、好ましくは15質量%以下である。
なお、上記第3成分元素は、複合粒子担持物の製造や反応の際に担持物中に含有させてもよいし、複合粒子担持物を製造する前に予め担体に含有させてもよい。また、上記アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素は、複合粒子担持物の製造や反応の際に担持物中に含有させてもよい。
本実施形態の複合粒子担持物の比表面積は、反応活性の向上及び活性成分の離脱し難さの観点から、BET窒素吸着法による測定で、好ましくは20〜500m2/gであり、より好ましくは50〜400m2/g、さらに好ましくは100〜350m2/gの範囲である。
本実施形態の複合粒子担持物の細孔構造は、金属成分の担持特性、剥離等を含めた長期安定性、触媒として用いた場合の反応特性の観点から極めて重要な物性の一つであり、細孔径はこれらの特性を発現するための指標となる物性値である。その細孔径が3nmよりも小さいと、担持金属成分の剥離性状は良好となる傾向にはあるが、触媒として液相反応等で用いる場合に、反応基質の細孔内拡散抵抗が大きくなり、その拡散過程が律速となりやすく反応活性が低下する傾向にある。したがって、細孔径は3nm以上であるのが好ましい。一方、担持物の割れ難さ、担持した複合粒子の剥離し難さの観点から、細孔径は50nm以下であるのが好ましい。したがって、複合粒子担持物の細孔径は、好ましくは3nm〜50nmであり、より好ましくは3nm〜30nm、さらに好ましくは3nm〜10nmである。細孔容積は、担持特性及び反応特性の観点から、0.1〜1.0mL/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5mL/g、さらに好ましくは0.1〜0.3mL/gの範囲である。本実施形態の複合粒子担持物は、細孔径及び細孔容積が共に上記範囲を満たすものが好ましい。
[複合粒子担持物の製造方法]
本実施形態の複合粒子担持物の製造方法は、(a)ケイ素と、アルミニウムと、鉄、コバルト、ニッケル及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の第4周期元素と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性元素とを含有する複合酸化物からなる担体を調製する工程と、(b)酸化状態にあるニッケルと、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素とを含有する複合粒子を担体に担持する工程とを有する。
(a)担体を調製する工程
ケイ素、アルミニウム、上記第4周期元素及び上記塩基性元素を含む複合酸化物からなる担体の調製方法としては、特に限定されず、例えば、以下の(1)〜(6)の方法によりシリカとアルミニウム化合物と第4周期元素の化合物と塩基性元素の化合物とを含む組成物を得る工程と、その組成物を必要に応じて乾燥して乾燥物を得る工程と、その乾燥物又は上記組成物を後述する条件で焼成する工程とを有する。
(1)市販のシリカ−アルミナ組成物と第4周期元素の化合物及び塩基性元素の化合物とを反応させる。
(2)予めシリカ−アルミナゲルを形成させ、第4周期元素の化合物及び塩基性元素の化合物を添加し、反応させる。
(3)シリカゾルと、アルミニウム化合物、第4周期元素の化合物及び塩基性元素の化合物とを反応させる。
(4)シリカゾルと、水に不溶のアルミニウム化合物、水に不溶の第4周期元素の化合物及び水に不溶の塩基性元素の化合物とを反応させる。
(5)シリカゲルと、水溶性アルミニウム化合物、水溶性の第4周期元素の化合物及び水溶性の塩基性元素の化合物の水溶液とを反応させる。
(6)シリカゲルと、アルミニウム化合物、第4周期元素の化合物及び塩基性元素の化合物とを固相反応させる。
以下に、上記(1)〜(6)の方法を用いた担体の調製方法について詳細に説明する。
上記(1)の方法では、市販のシリカ−アルミナ組成物に第4周期元素を含む化合物と塩基性元素を含む化合物とを混合して、スラリーを得る。そのスラリーを乾燥して、さらに後述する条件で焼成することにより、担体を調製することができる。第4周期元素を含む化合物及び塩基性元素を含む化合物としては、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩に代表される水溶性化合物が好ましい。ただし、水酸化物、酸化物等の水に不溶な化合物も用いることができる。
上記(2)〜(6)の方法において、シリカ源として、例えば、シリカゾル、水ガラス又はシリカゲルを用いる。シリカゲルとしてはAlと反応する未架橋Si部位を有するものであればよく、Si−O鎖の長さについては特に制約はない。アルミニウム化合物としては、アルミン酸ソーダ、塩化アルミニウム6水和物、過塩素酸アルミニウム6水和物、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム9水和物、二酢酸アルミニウムに代表される水溶性化合物が好ましい。ただし、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等の水に不溶な化合物であってもよく、シリカゾル、シリカゲル中の未架橋Siと反応する化合物であれば、担体の調製に用いることが可能である。第4周期元素又は塩基性元素を含む化合物としては、例えば、それらの元素の酸化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩が挙げられる。
シリカ−アルミナゲルを用いる(2)の方法の場合、予め、水ガラスに硫酸を加えてpH8〜10.5のシリカヒドロゲルを作製し、これにpHが2又はそれ以下のAl2(SO43溶液を加え、さらにpHが5〜5.5のアルミン酸ソーダを添加して、シリカ−アルミナヒドロゲルを調製する。次いで、そのヒドロゲルに含まれる水分を噴霧乾燥等により10〜40%に調整し、そこに第4周期元素の化合物と塩基性元素の化合物とを添加して組成物を得る。そして、その組成物を乾燥した後、後述の条件で焼成することにより、担体を得ることができる。
シリカゾルを出発原料とする(3)及び(4)の方法の場合、シリカゾルに、アルミニウム化合物と第4周期元素の化合物と塩基性元素の化合物とを混合して、シリカゾルとアルミニウム化合物と第4周期元素の化合物と塩基性元素の化合物とを含む組成物である混合物ゾルを得、次いで、その混合物ゾルを乾燥してゲルを得、後述の温度、時間、雰囲気条件でそのゲルを焼成する。あるいは、上記混合物ゾルにアルカリ性水溶液を加えて、シリカとアルミニウム化合物と第4周期元素の化合物と塩基性元素の化合物とを共沈させ、その共沈物を乾燥後、後述の条件で焼成する。また、上記混合物ゾルをそのままスプレードライヤーを用いて乾燥すると共に微粉化したり、上記混合物ゾルを乾燥してゲルを造粒したりする工程を経ることによって、所望の粒子径を有する担体を得ることも可能である。
特に(4)の方法の場合、シリカゾルと、水に不溶のアルミニウム化合物、水に不溶の第4周期元素の化合物及び水に不溶の塩基性元素の化合物とを反応させるが、この時、アルミニウム化合物、第4周期元素の化合物及び塩基性元素の化合物をそれぞれ若しくはまとめて、予め所定の粒子径にまで粉砕しておくか、あるいは、予備的に粗粉砕しておくこともできる。水に不溶のアルミニウム化合物、水に不溶の第4周期元素の化合物及び水に不溶の塩基性元素の化合物と、シリカゾルとを混合して応させた後、反応物を乾燥し、さらに後述する条件で焼成する。なお、アルミニウム化合物、第4周期元素の化合物及び塩基性元素の化合物を予め粉砕したり予備的に粗粉砕したりせず、焼成後のシリカ−アルミナ−第4周期元素−塩基性元素の組成物を所定の粒径にまで粉砕してもよい。
シリカゲルを出発原料として用いる(5)の方法の場合、シリカゲルに水溶性アルミニウム化合物、水溶性の第4周期元素の化合物及び水溶性の塩基性元素の化合物の水溶液を反応させるもので、シリカゲルを予め所定の粒径にまで粉砕しておくか、又は、予備的に粗粉砕しておいてもよい。(5)の方法の場合、シリカゲルと、水溶性アルミニウム化合物の水溶液、水溶性の第4周期元素の化合物の水溶液及び水溶性の塩基性元素の化合物の水溶液とを混合したスラリーを得た後、そのスラリーを乾燥し、さらに後述する条件で1〜48時間焼成する。あるいは、シリカゲルを予め粉砕したり予備的に粗粉砕したりせず、焼成後のシリカ−アルミナ−第4周期元素−塩基性元素の組成物を所定の粒径にまで粉砕してもよい。
同じくシリカゲルを出発原料として用いる(6)の方法は、シリカゲルと、アルミニウム化合物、第4周期元素の化合物及び塩基性元素の化合物とを固相反応させて、組成物である反応物を得るものである。この場合、Alを未架橋Siと固相状態で反応させる。シリカゲル、アルミニウム化合物、第4周期元素の化合物及び塩基性元素の化合物を予め所定の粒径にまで粉砕しておいてもよく、また、予備的に粗粉砕しておいてもよい。この際、各物質を単独で粉砕してもよく、両者を混合して粉砕してもよい。固相反応させて得られた反応物を、必要に応じて乾燥した後、更に焼成する。焼成は後述する温度、時間、雰囲気条件で行うと好ましい。シリカゲル、アルミニウム化合物、第4周期元素の化合物、塩基性元素の化合物を予め粉砕したり予備的に粗粉砕したりせず、反応により得られた反応物を所望の粒子径にまで粉砕して用いてもよい。
シリカとアルミニウム化合物と第4周期元素の化合物と塩基性元素の化合物とを含む組成物の他の調製方法として、ケイ素、アルミニウム及び第4周期元素を含む複合酸化物に上記塩基性元素の成分を吸着させる方法を用いることもできる。この場合、例えば、塩基性元素の化合物を溶解した液中に上記複合酸化物を加えて乾燥処理を行う等の浸漬法を用いた方法や、細孔容量分の塩基性元素の化合物を上記複合酸化物に浸み込ませて乾燥処理を行う含浸法を用いる方法を適用できる。
また、ケイ素、アルミニウム及び上記塩基性元素を含む複合酸化物に、上記第4周期元素を含む成分を吸着させる方法も用いることができる。例えば、第4周期元素を含む化合物を溶解した液中に上記複合酸化物を加えて乾燥処理を行う等の浸漬法を用いた方法や、細孔容量分の第4周期元素を含む化合物を上記複合酸化物に浸み込ませて乾燥処理を行う含浸法を用いる方法を適用できる。
ただし、上記のように、後から塩基性元素を含む成分又は第4周期元素を含む成分を吸着させる方法は、担体に塩基性元素を含む成分又は第4周期元素を含む成分を高分散化する上で、液乾燥処理を緩和な条件で行う等の注意が必要である。
上述のようにして得られた各種原料を含むスラリーに、スラリー性状の制御並びに生成物の細孔構造等の特性及び得られる物性を微調整するために、無機物や有機物を添加してもよい。
用いられる無機物の具体例としては、硝酸、塩酸、硫酸等の鉱酸類;Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属等の金属塩;及びアンモニアや硝酸アンモニウム等、の水溶性化合物のほか、水中で分散して懸濁液を生じる粘土鉱物が挙げられる。また、有機物の具体例としては、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等の重合体が挙げられる。
無機物及び有機物を添加することにより得られる効果は様々であるが、主には、担体の球状への成形、細孔径及び細孔容積の制御が挙げられる。より具体的には、球状の担体を得るには、混合スラリーの液質が重要な因子となる。無機物又は有機物を添加して、スラリーの粘度や固形分濃度を調整することによって、球状の担体が得られやすい液質に変更できる。また、細孔径及び細孔容積を制御するには、担体の成形段階でその内部に残存し、成形後の焼成及び洗浄操作により除去され得る最適な有機化合物を選択すればよい。
次いで、前述の各種原料及び添加物を含むスラリーやゲル、反応物等の組成物を乾燥する。乾燥する方法としては特に限定されないが、担体の粒子径を制御する観点から噴霧乾燥が好ましい。この場合、混合スラリーを液滴化する方法として、回転円盤方式、二流体ノズル方式、加圧ノズル方式等の公知の噴霧装置を用いる方法が挙げられる。
噴霧する液(スラリー)は、よく混合された状態で用いられることが必要である。混合状態が悪い場合には、組成の偏在によって耐久性が低下する等、担体の性能に影響する。特に各原料を調合する時には、スラリーの粘度上昇及び一部ゲル化(コロイドの縮合)が生じる場合もあり、不均一な粒子を形成することが懸念される。そのため、各原料を攪拌下で徐々に混合する等配慮する他、酸やアルカリを加える等の方法によって、例えば、pH2付近のシリカゾルの準安定領域に混合物を制御しながら、混合スラリーを調製することが好ましい場合もある。
噴霧する液は、所定範囲の粘度と固形分濃度とを有していると好ましい。粘度や固形分濃度が所定範囲よりも低いと、噴霧乾燥で得られる多孔質体が真球とならずに、陥没した球状の多孔質体が多く生成する傾向にある。また、それらが所定範囲よりも高いと、多孔質体同士の分散性に悪影響を及ぼすことがある他、性状によっては安定に液滴が形成しなくなる。そのため、噴霧する液の粘度としては、噴霧可能であれば、噴霧時の温度で5〜10000cpの範囲にあることが好ましい。また、形状の観点から、噴霧可能な範囲で高い粘度の方が好ましい傾向が見られ、操作性とのバランスから、その粘度は、より好ましくは10〜1000cpの範囲にある。また、固形分濃度は10〜50質量%の範囲内にあることが形状や粒子径の観点から好ましい。なお、噴霧乾燥条件の目安として、噴霧乾燥器の乾燥塔入り口の熱風温度が200〜280℃、乾燥塔出口温度が110〜140℃の範囲であると好ましい。
次に、上記(1)〜(5)の方法を経て更に乾燥した後の組成物又は(6)の方法で得られた反応物を焼成することによって固形物が得られる。その焼成温度は、一般的には200〜800℃の範囲である。800℃以下で上記組成物を焼成すると、担体の比表面積を大きくすることができ、200℃以上で上記組成物を焼成すると、ゲル間の脱水や縮合反応がより十分となり、細孔容積が大きく嵩高くなるのを更に抑制することができる。焼成温度が300〜600℃の範囲であると、物性のバランス及び操作性等の観点から好ましい。ただし、組成物が硝酸塩を含む場合、その硝酸塩の分解温度以上で焼成することが好ましい。焼成温度や昇温速度によって、多孔質性等の担体の物性を変化させることが可能であり、目標とする物性に合わせて、適切な焼成温度及び昇温条件を選定すればよい。すなわち、焼成温度を適切な条件に設定することで複合酸化物として耐久性の維持が良好となり、細孔容積の低下も抑制できる。また、昇温条件として、プログラム昇温等を利用し徐々に昇温していくことが好ましい。これにより、無機物及び有機物のガス化や燃焼が激しくなって、それに伴い設定以上の高温状態に曝されやすくなったり、ひび割れが起こりやすくなったりして、その結果として粉砕が起こる、ということを防ぐことができる。
また、焼成雰囲気は特に限定されないが、空気中又は窒素中で焼成するのが一般的である。また、焼成時間は、焼成後の担体の比表面積に応じて決めることができるが、一般的に1〜48時間である。これらの焼成条件によっても、多孔質性等の担体の物性を変化させることが可能であり、目標とする物性に合わせて、各焼成条件を選定すればよい。
上述のようにして焼成する工程を経て得られた固形物を本実施形態に係る担体として用いてもよいが、その固形物をさらに水熱処理することが好ましい。水熱処理する工程を経ることにより、驚くべきことに大部分の細孔の細孔径が3〜5nmという狭い範囲に存在するような均一な細孔構造を有すると共に、比表面積も機械的強度も大きな担体を得ることができる。
ここでいう「水熱処理」とは、水又は水を含む溶液中に、上記固形物を浸漬し、加温しながら一定の時間保持する操作である。これにより、固形物の細孔内に十分な水が存在するようになり、その水を媒体として物質移動が起こり、細孔の再構成が進行すると本発明者らは推定している。したがって、速やかな物質移動を促す観点から、水熱処理の温度は好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上である。水熱処理の温度は100℃以上の高い温度であってもよいが、その場合、水分が過度に蒸発しないよう、加圧装置が必要になる。また、水熱処理の温度が60℃未満の低い温度でも、本実施形態に係る担体を得ることは可能であるが処理時間が長くなる傾向にある。また、上述から明らかなように、加圧下で溶液の沸点以上の温度で水熱処理することは短時間で効果を発現する利点がある。ただし、操作の容易性の観点から、通常は沸点以下の範囲で高い温度で水熱処理することが好ましい。水熱処理の時間は、固形物の構成金属の種類、金属量、金属組成比、処理温度等の条件により異なるが、好ましくは1分間〜5時間、より好ましくは5分間〜3時間、更に好ましくは5分間〜1時間の範囲内である。
水熱処理によって細孔分布が狭くなる理由については定かではなく、詳細な検討は不十分であるが、現在のところ、本発明者らはその理由を下記のとおりに推測している。すなわち、シリカを含有する上述のような組成物に成形、乾燥、焼成等を施すことによって、組成物中の粒子間の架橋反応が進行し、まずは2〜10nmの細孔分布を有する構造体(固形物)が形成される。乾燥する工程や焼成する工程においては、ガス雰囲気下での加熱によるゲル間の脱水反応、架橋反応が進むが、これらの反応は固相反応であるから、得られた固形物は必ずしも均一な細孔分布にはならない。ところが、固形物にさらに水熱処理を施すことによって、固形物の加水分解と再架橋反応とによる反応が進行し、構造の組み替えが起こると推測される。また、得られる細孔容積が粒子の最密充填による空隙率に近いことも参酌すると、水熱処理による水熱反応によって熱力学的に安定な充填構造に変化し、この結果、細孔径3〜5nmの狭い範囲に細孔分布を有する担体が得られるものと推測される。
次に、本実施形態に係る担体の好ましい他の調製方法について説明する。この調製方法は、シリカと、アルミニウム化合物と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性元素の化合物と、を含有する組成物又はその組成物の乾燥物を焼成して固形物を得る工程(第1の工程)と、上記固形物と、鉄、コバルト、ニッケル及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の第4周期元素を含む可溶性金属塩の酸性水溶液との混合物を中和して上記固形物に第4周期元素を析出させる工程(第2の工程)と、第4周期元素を析出した上記固形物を水熱処理する工程(第3の工程)と、その水熱処理する工程を経た固形物を加熱処理する工程(第4の工程)とを有するものである。
第1の工程では、シリカ、アルミニウム化合物及び上記塩基性元素の化合物をさらに含むスラリーを調合し、乾燥した後、焼成して固形物を得る。スラリーは、第4周期元素の化合物を含まない他は、上述の実施形態と同様の方法により調合すればよい。また、焼成温度は、上述の実施形態における焼成温度と同様であればよい。
次いで、第2の工程では、第1の工程で得られた固形物と、上記第4周期元素を含む酸性水溶液との混合物を中和することによって、固形物に第4周期元素を含む成分を析出させる。この際、酸性水溶液と混合する固形物は、それを水に分散させた水スラリーの状態であってもよい。この段階で水溶液中の第4周期元素のイオンと塩基との中和反応によって、例えば第4周期元素の水酸化物の状態で、第4周期元素を含む成分が固形物に析出して固定化される。
第2の工程で中和する際に用いられる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニアが挙げられる。また、固形物又はその固形物を含む水スラリーにアルカリ金属元素(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba)及び希土類元素(La、Ce、Pr)からなる群より選択される1種又は2種以上の塩基性元素を含む成分が含まれていてもよい。そのような塩基性元素を含む成分としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化ランタン、酸化セリウムが挙げられる。
第2の工程において、例えば、第4周期元素を含む可溶性金属塩の酸性水溶液と固形物とを混合して攪拌しながら塩基で中和して、固形物上に第4周期元素の成分を沈澱により析出させる。第4周期元素の成分を析出させる際、第4周期元素を含む酸性水溶液の濃度、塩基、水溶液のpH、温度等の条件を適宜選択すればよい。
上記酸性水溶液における第4周期元素の濃度(第4周期元素が2種以上含まれる場合は、各々の第4周期元素の濃度)は、好ましくは0.0001〜1.0mol/L、より好ましくは0.001〜0.5mol/L、更に好ましくは0.005〜0.2mol/Lの範囲である。
また、塩基で中和する際、水溶液のpHが好ましくは5〜10、より好ましくは6〜8の範囲内になるように塩基の量を調整すればよい。その水溶液の温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃、さらに好ましくは60〜90℃である。
第4周期元素を含む成分を析出させる際に要する時間は、アルミナ、第4周期元素及び塩基性元素の含有量や温度等の条件により異なるが、好ましくは1分間〜5時間、より好ましくは5分間〜3時間、更に好ましくは5分間〜1時間の範囲である。
次に、第3の工程では、第4周期元素を含む成分が析出した固形物を水熱処理して混合物を得る。固形物を水熱処理することによって、シリカゲルの加水分解と再架橋反応とが進行し、構造の組み替えが起こると同時に第4周期元素の化合物の複合化が進行する。
水熱処理は、上記実施形態におけるものと同様であってもよく、第2の工程で用いた中和液をそのまま加熱して水熱処理を施してもよい。水熱処理は好ましくは60℃以上の温度範囲で、1〜48時間実施される。60℃未満の低い温度でも水熱処理することは可能であるが、処理時間が長くなる。操作性、処理時間等の観点から、水熱処理は、60〜90℃で行うことが好ましい。
さらに、第3の工程で得られた混合物に含まれる固形物を必要に応じて水洗、乾燥した後、第4の工程で、加熱処理する。こうして本実施形態に係る担体を得ることができる。
第4の工程における固形物の加熱処理温度は、好ましくは40〜900℃、より好ましくは80〜800℃、更に好ましくは200〜700℃、特に好ましくは300〜600℃である。
加熱処理の雰囲気は、例えば、空気中(又は大気中)、酸化性雰囲気中(酸素、オゾン、窒素酸化物、二酸化炭素、過酸化水素、次亜塩素酸、無機・有機過酸化物等)、及び不活性ガス雰囲気中(ヘリウム、アルゴン、窒素等)が挙げられる。加熱処理時間は、加熱処理温度及び固形物の量に応じて適宜選択すればよい。
(b)複合粒子を担体に担持する工程
担体に複合粒子を担持させる方法としては、上記のような担持物が得られる限り特に限定はされず、一般的に用いられる金属担持物の製法、例えば含浸法(吸着法、ポアフィリング法、蒸発乾固法、スプレー法)、沈澱法(共沈法、沈着法、混錬法)、イオン交換法、気相蒸着法等を適用することができる。本実施形態においては、含浸法、沈澱法が好ましく、より好ましくは沈澱法が用いられる。
本実施形態に係る複合粒子を担体に担持させる代表的な方法について、沈澱法を用いた場合を例に説明する。例えば、第1の工程において、ニッケルを含む可溶性金属塩及び上記遷移元素を含む可溶性金属塩の酸性水溶液を中和することによって、担体にニッケルと遷移元素を含む成分とを析出させて前駆体を得る。この段階で水溶液中のニッケル及び遷移元素イオンが塩基との中和反応によってニッケル及び遷移元素を含む成分(例えば水酸化物)が担体に析出して固定化される。ニッケル及び遷移元素を含む成分の複合化をより十分なものとするためには、両成分の混合水溶液から同時に析出させることが望ましい。
第1の工程において、例えば、ニッケル及び遷移元素を含む可溶性金属塩の酸性水溶液と担体とを混合して攪拌しながら塩基で中和し、担体上にニッケルと遷移元素を含む成分との沈澱を析出させる。ニッケルと遷移元素を含む成分とを析出させる際、ニッケル及び遷移元素を含む水溶液の濃度、塩基、水溶液のpH、温度等の条件を適宜選択すればよい。
上記可溶性金属塩の酸性水溶液におけるニッケルと遷移元素との濃度は、それぞれ、好ましくは0.0001〜1.0mol/L、より好ましくは0.001〜0.5mol/L、更に好ましくは0.005〜0.2mol/Lの範囲である。その酸性水溶液中の遷移元素に対するニッケルの比率(Ni/Y)は、モル基準で0.1〜10の範囲が好ましく、より好ましくは0.2〜5.0、さらに好ましくは0.5〜3.0である。
また、塩基で中和する際、水溶液のpHが好ましくは5〜10、より好ましくは6〜8の範囲内になるように塩基の量を調整すればよい。その水溶液の温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃、さらに好ましくは60〜90℃である。
ニッケルと遷移元素を含む成分とを析出させる際に要する時間は特に限定されるものでなく、担体の種類、ニッケル及び遷移元素の担持量、比率等の条件により異なるが、好ましくは1分間〜5時間、より好ましくは5分間〜3時間、さらに好ましくは5分間〜1時間の範囲である。
複合粒子担持物の調製に用いられるニッケルを含む可溶性金属塩としては、例えば、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケルが挙げられる。また、遷移元素を含む可溶性金属塩として、例えば、遷移元素としてパラジウムを用いる場合は、塩化パラジウム、酢酸パラジウムが、ルテニウムを用いる場合は、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、金を用いる場合は、塩化金酸、塩化金ナトリウム、ジシアノ金酸カリウム、ジエチルアミン金三塩化物、シアン化金、銀を用いる場合は、塩化銀、硝酸銀が挙げられる。
第1の工程で中和する際に用いられる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニアが挙げられる。また、担体に含まれるアルカリ金属元素(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba)及び希土類元素(La、Ce、Pr)からなる群より選択される1種又は2種以上の塩基性元素を含む成分を、その塩基として用いてもよい。
次いで、上記第1の工程で得られた前駆体を必要に応じて水洗、乾燥した後、第2の工程において、その前駆体を加熱処理することによって、本実施形態の複合粒子担持物を得ることができる。
第2の工程における前駆体の加熱処理温度は、好ましくは40〜900℃、より好ましくは80〜800℃、更に好ましくは200〜700℃、特に好ましくは300〜600℃である。
加熱処理の雰囲気は、例えば、空気中(又は大気中)、酸化性雰囲気中(酸素、オゾン、窒素酸化物、二酸化炭素、過酸化水素、次亜塩素酸、無機・有機過酸化物等)及び不活性ガス雰囲気中(ヘリウム、アルゴン、窒素等)が挙げられる。加熱処理時間は、加熱処理温度及び前駆体の量に応じて適宜選択すればよい。
上述の第2の工程により得られた複合粒子担持物に対して、必要に応じて還元性雰囲気中(例えば、水素、ヒドラジン、ホルマリン、蟻酸雰囲気)で、還元処理を施すこともできる。その場合、酸化状態にあるニッケルが完全に金属状態に還元されない処理方法を選択して行う。還元処理の温度及び時間は、還元剤の種類、遷移元素の種類及び複合粒子担持物の量に応じて適宜選択すればよい。
さらに上記第2の工程又は還元処理の後、複合粒子担持物に対して、必要に応じて空気中(若しくは大気中)又は酸化性雰囲気中(例えば、酸素、オゾン、窒素酸化物、二酸化炭素、過酸化水素、次亜塩素酸、無機・有機過酸化物雰囲気)で、酸化処理を施すこともできる。その場合の酸化処理の温度及び時間は、酸化剤の種類、遷移元素の種類及び複合粒子担持物の量に応じて適宜選択される。
ニッケル及び上記遷移元素以外の上記第3成分元素を、複合粒子担持物の製造時に添加することもできる。あるいは、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素も、複合粒子担持物の製造時に添加することができる。それら第3成分元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素の原料としては、有機酸塩、無機酸塩、水酸化物が挙げられる。
[複合粒子担持物を触媒として用いた化合物の製造方法]
本実施形態の複合粒子担持物は、広く化学合成用の触媒として用いられる。この複合粒子担持物は、例えば、アルカンの酸化、アルコールの酸化、アルデヒドの酸化、アルケンの酸化、アルケンのエポキシ化、アルケンの酸化的付加、アルデヒドとアルコールとの酸化的エステル化、アルコールの酸化的エステル化、グリコールとアルコールとの酸化的エステル化、アミン類の酸化、硫黄化合物類の酸化、アルケンの水素化、アルキンの水素化、α,β不飽和ケトンの選択水素化反応、水素及び酸素からの直接過酸化水素合成、一酸化炭素の酸化、水性ガスシフト反応、あるいはNOxの還元等の化学合成触媒、又は光触媒として用いられ得る。
本実施形態の複合粒子担持物は、特に酸化反応の触媒として用いられた場合に優れた効果を発揮する。その反応基質としては、後述の実施例におけるカルボン酸エステルの生成反応で用いられるアルデヒド及びアルコール以外にも、種々の反応基質、例えば、アルカン、オレフィン、アルコール、ケトン、アルデヒド、エーテル、芳香族化合物、フェノール及びその誘導体、硫黄化合物、リン化合物、含酸素窒素化合物、アミン、一酸化炭素、水が挙げられる。これらの反応基質から、工業的に有用な様々な含酸素化合物や酸化付加物、酸化脱水素物等の酸化生成物が得られる。
反応基質としては、具体的には、アルカンとして、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−へキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン等の脂肪族アルカン;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環族アルカンが挙げられる。
オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、デセン、3−メチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、塩化アリル等の脂肪族オレフィン;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン等の脂環族オレフィン;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族置換オレフィンが挙げられる。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、アリルアルコール、クロチルアルコール等の飽和及び不飽和脂肪族アルコール;シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、メチルシクロヘキサノール、シクロヘキセン−1−オール等の飽和及び不飽和脂環族アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の脂肪族及び脂環族多価アルコール;ベンジルアルコール、サリチルアルコール、ベンズヒドロール等の芳香族アルコール等が挙げられる。
アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキサール等の脂肪族飽和アルデヒド;アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド等の脂肪族α,β−不飽和アルデヒド;ベンズアルデヒド、トリルアルデヒド、ベンジルアルデヒド、フタルアルデヒド等の芳香族アルデヒド及びこれらアルデヒドの誘導体が挙げられる。
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルプロピルケトン等の脂肪族ケトン;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、2−メチルシクロヘキサノン、2−エチルシクロヘキサノン等の脂環族ケトン;アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン等の芳香族ケトンが挙げられる。
芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン、並びに、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、スルホン基等の置換基を有するそれらの誘導体が挙げられる。
フェノール及びその誘導体としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、アントール(ヒドロキシアントラセン)及びそれらの誘導体(芳香環の水素原子がアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、スルホン酸基等の置換基で置換されたもの)が挙げられる。
硫黄化合物としては、例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、チオフェノール等のメルカプタンが挙げられる。
アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、アリルアミン、ジアリルアミン等の脂肪族アミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミン等の脂環式アミン;アニリン、ベンジルアミン、トルイジン等の芳香族アミンが挙げられる。
上述の反応基質は1種を単独で又は2種以上からなる混合物として用いられる。また、反応基質を必ずしも精製する必要はなく、他の有機化合物との混合物であってもよい。
なお、ニッケル及び上記遷移元素以外の上記第3成分元素を、反応系に添加することができる。あるいは、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素も、反応系に添加することができる。それら第3成分元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素の原料としては、有機酸塩、無機酸塩、水酸化物が挙げられる。
以下に、本実施形態の複合粒子担持物を触媒として用い、アルデヒド及びアルコールから酸素存在下で酸化的エステル化反応によりカルボン酸エステルを製造する方法を例に挙げて説明する。
原料として用いるアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキサール等のC1−C10脂肪族飽和アルデヒド;アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド等のC3−C10脂肪族α,β−不飽和アルデヒド;ベンズアルデヒド、トリルアルデヒド、ベンジルアルデヒド、フタルアルデヒド等のC6−C20芳香族アルデヒド;並びにこれらアルデヒドの誘導体が挙げられる。これらのアルデヒドは1種を単独で又は2種以上の混合物として用いられる。それらのうち、アルデヒドが、アクロレイン及びメタクロレイン並びにそれらの混合物からなる群より選ばれるものであると、本実施形態の複合粒子担持物を触媒として更に有効に用いることができるので好ましい。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール等のC1−C10脂肪族飽和アルコール;シクロペンタノール、シクロヘキサノール等のC5−C10脂環族アルコール、;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のC2−C10ジオール;アリルアルコール、メタリルアルコール等のC3−C10脂肪族不飽和アルコール;ベンジルアルコール等のC6−C20芳香族アルコール;3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等のヒドロキシオキセタンが挙げられる。これらのアルコールは1種を単独で又は2種以上の混合物として用いられる。それらのうち、アルコールがメタノールであると、本実施形態の複合粒子担持物を触媒として更に有効に用いることができるので好ましい。
アルデヒドとアルコールとの量比は、特に限定されず、例えば、アルコールに対するアルデヒドの比(アルデヒド/アルコール)がモル基準で、10〜1/1000のような広い範囲であってもよいが、一般的には1/2〜1/50である。
触媒の使用量は、反応原料の種類、触媒の組成や調製法、反応条件、反応形式等によって大幅に変更することができ、特に限定されない。触媒をスラリー状態で反応させる場合、触媒は、スラリー中の固形分濃度として、好ましくは1〜50質量/容量%、より好ましくは3〜30質量/容量%、さらに好ましくは10〜25質量/容量%の範囲で用いられる。
カルボン酸エステルの製造は、気相反応、液相反応、潅液反応等の任意の方法で、回分式又は連続式のいずれによっても実施できる。
その反応は、無溶媒でも実施され得るが、反応成分(反応基質、反応生成物及び触媒)に対して不活性な溶媒、例えば、ヘキサン、デカン、ベンゼン、ジオキサンを用いても実施され得る。
反応形式は、固定床式、流動床式、攪拌槽式等の従来公知の形式であればよい。例えば、液相で反応させる際には、気泡塔反応器、ドラフトチューブ型反応器、撹拌槽反応器等の任意の反応器形式を採用することができる。
カルボン酸エステルの製造に用いる酸素は、分子状酸素、すなわち、酸素ガス自体、又は、酸素ガスを反応に不活性な希釈剤、例えば、窒素、炭酸ガス等で希釈した混合ガスの形であってもよい。酸素原料としては、操作性、経済性等の観点から、空気が好ましく用いられる。
酸素分圧は、アルデヒド種、アルコール種等の反応原料、反応条件又は反応器形式等により変化するが、実用的には、反応器出口の酸素分圧を爆発範囲の下限以下の濃度となる範囲とし、例えば、20〜80kPaに管理することが好ましい。反応圧力については、減圧から加圧下の任意の広い圧力範囲でもよく、例えば0.05〜2MPaの範囲の反応圧力である。また、反応器から流出するガス中の酸素濃度が爆発限界を超えないように全圧を設定(例えば、酸素濃度8%)することが安全性の観点から好ましい。
カルボン酸エステルの製造反応を液相等で実施する場合、反応系にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物(例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩)を添加して反応系のpHを6〜9に保持することが好ましい。これらのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
カルボン酸エステルを製造する際の反応温度は、200℃を超える高温でもよいが、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは60〜120℃である。反応時間は、特に限定されるものではなく、設定した条件により異なるので一義的には決められないが、通常1〜20時間である。
[物性の測定、解析]
担体及び複合粒子担持物の構成元素の含有量の決定、比表面積、細孔径及び細孔容積の測定、平均粒子径の測定、嵩密度(CBD)の測定、耐摩耗性の測定、結晶構造の解析、担体の化学状態解析、形状観察、複合粒子の形態観察及び元素分析、複合粒子の化学状態の解析並びに複合粒子の紫外可視分光スペクトルの測定は、次の方法により実施することができる。
(担体及び複合粒子担持物の構成元素の含有量の決定)
担体中のSi、Al、第4周期元素及び塩基性元素の濃度、並びに複合粒子担持物中のNi、遷移元素の濃度は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のICP発光分析装置(ICP−AES、MS)である「IRIS IntrepidII XDL型」(
商品名)を用いて定量する。
試料は、下記のとおりにして調製した。まず、担体又は複合粒子担持物をテフロン(登録商標)製分解容器に秤取り、そこに硝酸及びフッ化水素を加えた。得られた溶液を、マイルストーンゼネラル社製のマイクロウェーブ分解装置である「ETHOS TC型」(商品名)にて加熱分解後、ヒーター上で蒸発乾固する。次いで、析出した残留物に硝酸及び塩酸を加えて、マイクロウェーブ分解装置にて加圧分解し、得られた分解液を純水で一定容量としたものを試料とする。
上記ICP−AESにて内標準法で試料の定量を行い、同時に実施した操作ブランク値を差し引いて担体中のSi、Al、第4周期元素及び塩基性元素の含有量並びに複合粒子担持物中のNi、遷移元素の含有量を求め、組成比、担持量を算出する。なお、第4周期元素がNiである場合、複合粒子担持物の担持Ni量は、担体中のNi量を差し引いて算出する。
(比表面積、細孔径及び細孔容積の測定)
ユアサ・アイオニクス社製のガス吸着量測定装置「オートソーブ3MP」(商品名)により、吸着ガスとして窒素を用いて、担体及び複合粒子担持物の比表面積、細孔径及び細孔容積を測定する(窒素吸着法)。比表面積はBET法、細孔径及び細孔分布はBJH法、細孔容積はP/P0、Maxでの吸着量を採用する。
(平均粒子径の測定)
ベックマン・コールター社製のLS230型レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置を用いて、担体及び複合粒子担持物の平均粒子径(体積基準)を測定する。
(嵩密度(CBD)の測定)
前処理として、まず、担体をステンレスルツボに約120g採取し、500℃のマッフル炉で1時間焼成を行う。焼成後の担体を、デシケータ(シリカゲル入り)に入れ、室温まで冷却する。このようにして前処理した担体を100.0g採取し、250mLのメスシリンダーに移し、メスシリンダー内に担体を振とう器で15分間タッピング充填する。メスシリンダーを振とう器から取り外し、メスシリンダー内の担体表面を平らにならし、充填容積を読み取る。嵩密度は担体の質量を充填容積で除した値である。
(耐摩耗性の測定)
底部に1/64インチの3つのオリフィスを有する穴あき円板を備えた、内径1.5インチの垂直チューブに担体を約50gを精秤して投入する。外部から垂直チューブ内に穴あき円板を通して、毎時15CF(Cubic Feet)の速度で空気を吹き込み、激しくチューブ内の担体の粒子を流動させる。空気の吹き込みを開始してから5〜20時間の間に微細化して垂直チューブの上部から逸散した担体の粒子の総量の、初期に投入した量に対する割合(質量%)を、「耐摩耗性」として求める。
(結晶構造の解析)
リガク社製の粉末X線回折装置(XRD)「Rint2500型」(商品名)を用い、X線源Cu管球(40kV,200mA)、測定範囲5〜65deg(0.02deg/step)、測定速度0.2deg/分、スリット幅(散乱、発散、受光)1deg、1deg、0.15mmの条件で担体及び複合粒子担持物の結晶構造の解析を行う。
測定は、試料を、無反射試料板上に均一に散布し、ネオプレンゴムで固定して行う。
(担体の化学状態解析)
担体のNiKαスペクトルをTechnos社製のXFRA190型二結晶型高分解能蛍光X線分析装置(HRXRF)で測定し、得られた各種パラメーターを標準物質(ニッケル金属、酸化ニッケル)のそれらと比較し、担体中のニッケルの価数等の化学状態を推測する。
測定試料として、調製した担体をそのままの状態で用いる。NiのKαスペクトルの測定は、部分スペクトルモードで行う。この際、分光結晶にはGe(220)、スリットは縦発散角1°のものを用い、励起電圧及び電流はそれぞれ35kV及び80mAに設定する。その上で、標準試料ではアブソーバとしてろ紙を用い、担体試料では計数時間を試料毎に選択してKαスペクトルのピーク強度が3,000cps以下、10,000counts以上になるように測定する。それぞれの試料で5回測定を繰り返し、その繰り返し測定前後にニッケル金属の測定を行う。実測スペクトルを平滑化処理(S−G法7点―5回)後、ピーク位置、半値幅(FWHM)、非対称性係数(AI)を算出し、ピーク位置は試料の測定前後に測定したニッケル金属の測定値からのズレ、化学シフト(ΔE)として取り扱う。
(形状観察)
日立製作所社製のX−650走査型電子顕微鏡装置(SEM)を用いて、担体及び複合粒子担持物を観察する。
(複合粒子の形態観察及び元素分析)
JEOL社製の3100FEF型透過型電子顕微鏡/走査透過電子顕微鏡装置(TEM/STEM)[加速電圧300kV、エネルギー分散型X線検出器(EDX)付属]を用いて、TEMの明視野像、STEMの暗視野像を観察し、STEM−EDS組成分析(点分析、マッピング、ライン分析)を行う。
データ解析ソフトとして、TEM像、STEM像解析(長さ測定、フーリエ変換解析):DigitalMicrograph(登録商標) Ver.1.70.16,Gatan、EDSデータ解析(マッピング画像処理、組成定量計算):NORAN System SIX ver.2.0、Thermo Fisher Scientificを用いる。
測定試料は、複合粒子担持物を乳鉢で破砕後、エタノールに分散させ、超音波洗浄を約1分間行った後、Mo製マイクログリット上に滴下・風間し、TEM/STEM観察用試料として得られる。
(複合粒子の化学状態の解析)
サーモエレクトロン社製のX線光電子分光装置(XPS)「ESCALAB250型」(商品名)を用い、励起源AlKα 15kV×10mA、分析面積・約1mm(形状:楕円)、取込領域:サーベイスキャン 0〜1100eV、ナロースキャンNi2pの条件で,複合粒子担持物の化学状態の解析を行う。
測定試料として、調製した複合粒子担持物をメノウ乳鉢ですりつぶし、粉体専用試料台にて採取したものを用いる。
(複合粒子の紫外可視分光スペクトルの測定)
日本分光社製V−550型紫外可視分光光度計(UV−Vis)[積分球ユニット、粉末試料用ホルダ付属]を用い、測定範囲800〜200nm、走査速度400nm/分の条件で、複合粒子の紫外分光スペクトルの測定を行う。
測定試料として、調製した複合粒子担持物をメノウ乳鉢ですりつぶし、粉末試料用ホルダに設置したものを用いる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。当業者は、以下に示す実施例のみならず様々な変更を加えて実施することが可能であり、かかる変更も本発明の特許請求の範囲に包含される。なお、実施例及び比較例の物性の測定は、上述の[物性の測定、解析]に記載の条件で実施した。
〔実施例1〕
(1)担体の製造
硝酸アルミニウム9水和物1.5kg、硝酸ニッケル6水和物0.24kg、硝酸マグネシウム6水和物0.98kg及び60%硝酸0.27kgを、純水3.0Lに溶解した水溶液を準備した。その水溶液を15℃に保持した攪拌状態のコロイド粒子径10〜20nmのシリカゾル溶液(日産化学社製、商品名「スノーテックスN−30」、SiO2含有量:30質量%)10.0kg中へ徐々に滴下し、シリカゾル、硝酸アルミニウム、硝酸ニッケル及び硝酸マグネシウムの混合スラリーを得た。その後、出口温度を130℃に設定したスプレードライヤー装置で混合スラリーを噴霧乾燥し固形物を得た。
次いで、得られた固形物を上部が開放されたステンレス製容器に厚さ約1cm程充填し、電気炉で室温から300℃まで2時間かけて昇温後、300℃で3時間保持した。さらに600℃まで2時間で昇温後、600℃で3時間保持して焼成した。その後、徐冷して、ケイ素−アルミニウム−ニッケル−マグネシウムを含む複合酸化物からなる担体を得た。
得られた担体は、ケイ素とアルミニウムとニッケルとマグネシウムとの合計モル量に対して、ケイ素を85.3モル%、アルミニウムを6.8モル%、ニッケルを1.4モル%、マグネシウムを6.5モル%含んでいた。Ni(X)/Alの組成比はモル基準で0.21、Ni(X)/Mg(B)の組成比はモル基準で0.22であった。
窒素吸着法による比表面積は223m2/g、細孔容積は0.26mL/g、平均細孔径は5.1nmであった。嵩密度は0.97CBD、耐摩耗性は0.1質量%であった。平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、シリカゲルと同様の非晶質パターンが得られた。
担体中のニッケルの化学状態について、二結晶型高分解能蛍光X線分析法(HRXRF)の結果から、ニッケルのハイスピン2価と推測され、NiKαスペクトルの相違から単一化合物である酸化ニッケルとは異なる化学状態であることが判明した。実測スペクトルから得られた担体のNiKαスペクトルの半値幅(FWHM)は3.474、化学シフト(ΔE)は0.331であった。標準物質として測定した酸化ニッケルのNiKαスペクトルの半値幅(FWHM)は3.249、化学シフト(ΔE)は0.344であった。
(2)複合粒子担持物の製造
硝酸ニッケル6水和物23.78gと1.3mol/Lの塩化金酸水溶液19mLとを含む水溶液1.0Lを90℃に加温した。この水溶液に上記で得られた担体300gを投入し、90℃に保持しながら1時間攪拌し、ニッケルと金成分とを担体上に析出させて前駆体を得た。
次いで、その前駆体を静置して上澄みを除去し、蒸留水で数回洗浄した後、濾過した。濾過した後の前駆体を105℃で16時間乾燥した。乾燥後の前駆体を、空気中500℃で3時間焼成(加熱処理)することにより、ニッケル1.49質量%、金1.48質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/Si−Al−Ni−Mg複合酸化物)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は240m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は3.8nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果によれば、金に帰属されるブロード状の回折ピークが観察され、Au(111)面に帰属する回折ピークの線幅の拡がりから平均結晶子径を算出したところ、その平均結晶子径は3nmであった。一方、ニッケルに由来する回折パターンは観測されなかったことから、ニッケルは非晶質相として存在しているものと推定された。ニッケルの化学状態について、X線光電子分光法(XPS)の結果から、ニッケルは2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径2〜3nmの球状のナノ粒子が担体表面上に均一に担持されていた。そのナノ粒子の数平均粒子径は3.2nmであった(算出個数:100)。ナノ粒子をさらに拡大して観察すると、当該ナノ粒子に格子縞が観察された。フーリエ変換により解析した結果、Au(200)の面間隔(d=2.039Å)に対応する格子縞が90°で交わっており、Au(200)の格子像であることがわかった。したがって、このナノ粒子は結晶性の金であることが判明した。他の粒子からも、Au(200)やAu(111)の面間隔と対応する格子縞が見られた。
次に、個々のナノ粒子に対してSTEM−EDSによる組成点分析を行ったところ、いずれの粒子にもニッケルと金とが検出され、複合粒子であることが確認できた。そのナノ粒子の金に対するニッケルの比率(Ni/Au(Y))は原子比の平均値(算出個数:50)で、0.87であった。さらに観察された粒子のナノ領域分析を行ったところ、粒子中央部のNi/Auは0.71、粒子エッジ部が3.12であった。粒子以外の部分ではニッケルのみが検出された。同様の測定を20点で行った結果、いずれの粒子もエッジ部周辺においてニッケルが多く検出された。EDS元素マッピングからは、ニッケル及び金の分布はほぼ一致していることが観察された。また、組成のラインプロファイルからは、いずれの走査方向においても、金の分布よりも一回り大きくニッケルが分布していた。このようにニッケルは金上に分布しており、かつ粒子のエッジ周辺部においてニッケルが多く検出されていることから、上記複合粒子担持物に含まれるナノ粒子は、金ナノ粒子の表面がニッケルで覆われた形態を有していると確認された。
次に、この複合粒子担持物の電子励起状態の変化を紫外可視分光法(UV−Vis)で調べた結果、530nm近傍の金ナノ粒子に由来する表面プラズモン吸収ピークは現れず、200〜800nm波長域にNiO2起因のブロードな吸収が認められた。
これらの結果から、上記複合粒子担持物において、複合粒子の表面に金原子は存在せず、金ナノ粒子の表面が酸化状態にあるニッケル酸化物で被覆された形態であると確認された。
次に、上記複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、以下の方法によりpHスイング試験を行った。
上記のようにして得られた複合粒子担持物10gを、ガラス容器に入れたpH4の緩衝液100mLに添加し、90℃で10分間攪拌を続けた後、静置して上澄みを除去し、水洗、デカンテーションを行った。こうして得られた固形物を、ガラス容器に入れたpH10の緩衝液100mLに添加し、90℃で10分間攪拌を続けた後、静置して上澄みを除去し、水洗、デカンテーションを行った。以上の操作を1サイクルとし、計100サイクルのpHスイング処理を実施した。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は242m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は3.9nmであり、pHスイング処理による複合粒子担持物の構造変化は認められなかった。また、透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)による複合粒子の平均粒子径は3.3nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長はほとんど観察されなかった。
〔実施例2〕
実施例1の(1)で得られた担体300gを、ガラス容器に入れた蒸留水100mLに添加し、60℃で攪拌しながら、所定量の硝酸ニッケル水溶液、塩化パラジウム水溶液を滴下し、さらに0.5N水酸化ナトリウム水溶液を添加してそのpHが8になるよう中和した。そのまま1時間攪拌を続けて前駆体を得た。
その後、前駆体を静置して上澄みを除去し、Clイオンが検出されなくなるまで蒸留水で洗浄しさらに105℃で16時間乾燥した。次に、乾燥後の前駆体を、空気中400℃で3時間焼成(加熱処理)した。得られた固形物を水素雰囲気中で室温、1時間の還元処理を行うことにより、ニッケル1.48質量%、パラジウム0.50質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxPd/Si−Al−Ni−Mg複合酸化物)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は242m2/g、細孔容積は0.26mL/g、平均細孔径は3.9nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、明瞭なピークとはいえないものの、パラジウムの結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると4nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径3〜4nmに極大分布(数平均粒子径:4.0nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルとパラジウムとを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Pd(Y)は、原子比の平均値で1.21であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は241m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は3.9nmであり、pHスイング処理による構造変化は認められなかった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は4.1nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長はほとんど観察されなかった。
〔実施例3〕
所定量の塩化パラジウム水溶液に代えて所定量の硝酸銀水溶液を用いた以外は実施例2と同様にして、ニッケル1.45質量%、銀1.20質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAg/Si−Al−Ni−Mg複合酸化物)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は239m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は3.8nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、明瞭なピークとはいえないものの、銀の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると4nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径4〜5nmに極大分布(数平均粒子径:4.4nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと銀とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Ag(Y)は、原子比の平均値で0.92であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は244m2/g、細孔容積は0.26mL/g、平均細孔径は4.0nmであり、pHスイング処理による構造変化は認められなかった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は4.3nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長はほとんど観察されなかった。
〔実施例4〕
硝酸アルミニウム9水和物1.5kgに代えて硝酸アルミニウム9水和物4.0kg、硝酸ニッケル6水和物0.24kgに代えて硝酸亜鉛6水和物0.11kg、硝酸マグネシウム6水和物0.98kgに代えて硝酸カリウム1.1kgを用いた以外は実施例1の(1)と同様にして、ケイ素を69.7モル%、アルミニウムを15.0モル%、亜鉛を0.5モル%、カリウムを14.9モル%含む担体を得た。Zn(X)/Alの組成比はモル基準で0.03、Zn(X)/K(B)の組成比はモル基準で0.03であった。
窒素吸着法による比表面積は170m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は5.3nmであった。嵩密度は0.95CBD、耐摩耗性は0.1質量%であった。平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、64μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、割れや欠けもなく、形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、シリカゲルと同様の非晶質パターンが得られた。
次に、上記担体を用いて、硝酸ニッケル6水和物を23.78gから77.29gに代え、焼成(加熱処理)の温度を500℃から400℃に代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル5.10質量%、金1.51質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/Si−Al−Zn−K複合酸化物)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は180m2/g、細孔容積は0.28mL/g、平均細孔径は4.0nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、64μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、明瞭なピークとはいえないものの、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると4nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径3〜4nmに極大分布(数平均粒子径:3.5nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比の平均値で0.93であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は181m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は4.0nmであり、pHスイング処理による構造変化は認められなかった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は3.3nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長はほとんど観察されなかった。
〔実施例5〕
硝酸アルミニウム9水和物1.5kgに代えて硝酸アルミニウム9水和物2.0kg、硝酸ニッケル6水和物0.24kgに代えて硝酸コバルト6水和物0.75kg、硝酸マグネシウム6水和物0.98kgに代えて硝酸ルビジウム0.38kgを用いた以外は実施例1の(1)と同様にして、ケイ素を82.7モル%、アルミニウムを8.8モル%、コバルトを4.3モル%、ルビジウムを4.3モル%含む担体を得た。Co(X)/Alの組成比はモル基準で0.49、Co(X)/Rb(B)の組成比はモル基準で0.99であった。
窒素吸着法による比表面積は196m2/g、細孔容積は0.26mL/g、平均細孔径は5.1nmであった。嵩密度は0.96CBD、耐摩耗性は0.1質量%であった。平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、割れや欠けもなく、形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、シリカゲルと同様の非晶質パターンが得られた。
次に、上記担体を用いて、硝酸ニッケル6水和物を23.78gから52.02gに代え、塩化金酸水溶液を19mLから13mLに代え、焼成(加熱処理)の温度を500℃から400℃に代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル3.12質量%、金0.95質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/Si−Al−Co−Rb複合酸化物)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は221m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は3.9nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、明瞭なピークとはいえないものの、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると3nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径3〜4nmに極大分布(数平均粒子径:3.2nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比の平均値で1.15であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は218m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は3.9nmであり、pHスイング処理による構造変化は認められなかった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は3.3nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長はほとんど観察されなかった。
〔実施例6〕
硝酸ニッケル6水和物0.24kgに代えて硝酸鉄9水和物0.2kg、硝酸マグネシウム6水和物0.98kgに代えて硝酸ランタン9水和物0.48kgを用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして、ケイ素を89.9モル%、アルミニウムを7.2モル%、鉄を0.9モル%、ランタンを2.0モル%含む担体を得た。Fe(X)/Alの組成比はモル基準で0.12、Fe(X)/La(B)の組成比はモル基準で0.45であった。
窒素吸着法による比表面積は232m2/g、細孔容積は0.28mL/g、平均細孔径は5.0nmであった。嵩密度は0.98CBD、耐摩耗性は0.1質量%であった。平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、64μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、割れや欠けもなく、形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、シリカゲルと同様の非晶質パターンが得られた。
次に、上記担体を用いて、硝酸ニッケル6水和物を23.78gから16.35gに代え、塩化金酸水溶液を19mLから13mLに代え、焼成(加熱処理)の温度を500℃から400℃に代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル0.91質量%、金0.92質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/Si−Al−Fe−La複合酸化物)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は253m2/g、細孔容積は0.28mL/g、平均細孔径は3.8nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、64μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、明瞭なピークとはいえないものの、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると3nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径3〜4nmに極大分布(数平均粒子径:3.1nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比の平均値では1.04であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は251m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は3.9nmであり、pHスイング処理による構造変化は認められなかった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は3.2nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長はほとんど観察されなかった。
〔実施例7〕
水ガラス3号(SiO2:28〜30質量%、Na2O:9〜10質量%)10kgに、pHが9になるまで硫酸を添加し、次いで硫酸アルミニウムを添加し、pHを2とした。さらにアルミン酸ソーダを加え、pHを5〜5.5とし、一部を脱水してシリカ−アルミナを約10質量%含むヒドロゲルを得た。このヒドロゲルを130℃でスプレードライにて噴霧乾燥後、Na2Oが0.02質量%、SO4が0.5質量%以下になるように洗浄した。これに、酸化マグネシウム0.83kgと酸化ニッケル1.8kgとを添加、混合してスラリーを得た。そのスラリーを、ろ過、洗浄後、110℃で6時間乾燥し、次いで700℃まで3時間かけて昇温後、700℃で3時間保持して焼成した。その後、除冷して、担体を得た。
得られた担体は、ケイ素とアルミニウムとニッケルとマグネシウムとの合計モル量に対して、ケイ素を42.2モル%、アルミニウム20.4モル%、ニッケルを19.8モル%、マグネシウムを17.6モル%含んでいた。Ni(X)/Alの組成比はモル基準で0.97、Ni(X)/Mg(B)の組成比はモル基準で1.13であった。
窒素吸着法による比表面積は73m2/g、細孔容積は0.26mL/g、平均細孔径は5.4nmであった。嵩密度は1.05CBD、耐摩耗性は0.1質量%であった。平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、63μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、担体に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、シリカゲルと同様の非晶質パターンが得られた。
次に、担体を上記のようにして得られた担体に代え、塩化金酸水溶液を19mLから7mLに代え、水溶液の温度を90℃から80℃に代え、焼成(加熱処理)の温度を500℃から450℃に代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル0.51質量%、金1.53質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/Si−Al−Ni−Mg複合酸化物)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は92m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は3.9nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、明瞭なピークとはいえないものの、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると3nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあるであることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径3〜4nmに極大分布(数平均粒子径:3.1nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比の平均値で1.17であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は94m2/g、細孔容積は0.26mL/g、平均細孔径は3.8nmであり、pHスイング処理による構造変化は認められなかった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は3.0nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長はほとんど観察されなかった。
〔実施例8〕
硝酸アルミニウム9水和物1.5kgに代えて、酸化アルミニウム4.4kg、硝酸ニッケル6水和物0.24kgに代えて酸化ニッケル0.93kg、硝酸マグネシウム6水和物0.98kgに代えて酸化マグネシウム0.42kgを用い、焼成温度を600℃から800℃に代えた以外は実施例1の(1)と同様にして、ケイ素を42.9モル%、アルミニウムを37.0モル%、ニッケルを10.9モル%、マグネシウムを9.1モル%含む担体を得た。Ni(X)/Alの組成比はモル基準で0.30、Ni(X)/Mg(B)の組成比はモル基準で1.20であった。窒素吸着法による比表面積は78m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は5.2nmであった。嵩密度は1.02CBD、耐摩耗性は0.1質量%であった。平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、担体に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、シリカゲルと同様の非晶質パターンが得られた。
次に、上記担体を用いて、硝酸ニッケル6水和物を23.78gから5.95gに代え、塩化金酸水溶液を19mLから13mLに代え、水溶液の温度を90℃から70℃に代え、焼成(加熱処理)の温度を500℃から450℃に代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル0.32質量%、金0.90質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/Si−Al−Ni−Mg複合酸化物)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は101m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は4.0nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、明瞭なピークとはいえないものの、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると3nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径3〜4nmに極大分布(数平均粒子径:3.3nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比の平均値で1.15であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は105m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は4.1nmであり、pHスイング処理による構造変化は認められなかった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は3.2nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長はほとんど観察されなかった。
〔実施例9〕
硝酸アルミニウム9水和物1.5kgに代えて硝酸アルミニウム9水和物1.0kg、硝酸ニッケル6水和物0.24kgに代えて水酸化ニッケル0.23kg、硝酸マグネシウム6水和物0.98kgに代えて所定量の水酸化マグネシウム1.9kgを用い、焼成温度を600℃から650℃に代えた以外は実施例1の(1)と同様にして、ケイ素を57.6モル%、アルミニウムを3.1モル%、ニッケルを2.8モル%、マグネシウムを36.6モル%含む担体を得た。Ni(X)/Alの組成比はモル基準で0.91、Ni(X)/Mg(B)の組成比はモル基準で0.08であった。窒素吸着法による比表面積は92m2/g、細孔容積は0.28mL/g、平均細孔径は5.1nmであった。嵩密度は0.99CBD、耐摩耗性は0.1質量%であった。平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、担体に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、シリカゲルと同様の非晶質パターンが得られた。
次に、上記担体を用いて、硝酸ニッケル6水和物を23.78gから47.56gに代え、塩化金酸水溶液を19mLから38mLに代え、水溶液の温度を90℃から60℃に代え、焼成(加熱処理)の温度を500℃から400℃に代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル3.12質量%、金2.92質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/Si−Al−Ni−Mg複合酸化物)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は118m2/g、細孔容積は0.28mL/g、平均細孔径は3.9nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると5nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径5〜6nmに極大分布(数平均粒子径:5.6nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比の平均値で0.65であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は116m2/g、細孔容積は0.28mL/g、平均細孔径は4.0nmであり、pHスイング処理による構造変化は認められなかった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は5.5nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長はほとんど観察されなかった。
〔実施例10〕
実施例1の(1)で得られた担体100gを90℃に加熱された1.0Lの蒸留水中に投入し、攪拌しならが90℃で1時間保持して水熱処理を行った。
次いで、水熱処理後の混合物を静置して上澄みを除去し、蒸留水で数回洗浄し、濾過した後の固形物を105℃で16時間乾燥した。得られた担体の比表面積は240m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は3.9nmであった。担体の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、担体に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。粉末X線回折(XRD)の結果から、シリカゲルと同様の非晶質パターンが得られた。
次に、担体を上記のようにして得られた担体に代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル1.48質量%、金1.49質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/Si−Al−Ni−Mg複合酸化物)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は241m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は3.9nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると3nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径3〜4nmに極大分布(数平均粒子径:3.4nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比の平均値で0.89であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は238m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は3.9nmであり、pHスイング処理による構造変化は認められなかった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は3.5nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長はほとんど観察されなかった。
〔実施例11〕
硝酸アルミニウム9水和物2.0kg、硝酸マグネシウム1.5kg、及び、60%硝酸0.27kgを純水3.0Lに溶解した水溶液を準備した。その水溶液を15℃に保持した攪拌状態のコロイド粒子径10〜20nmのシリカゾル溶液(日産化学社製、商品名「スノーテックスN−30」、SiO2含有量:30質量%)10.0kg中へ徐々に滴下し、シリカゾル、硝酸アルミニウム及び硝酸マグネシウムの混合スラリーを得た。その後、混合スラリーを50℃で24時間保持して熟成させた。熟成させた混合スラリーを室温に冷却した後、出口温度を130℃に設定したスプレードライヤー装置で噴霧乾燥し乾燥物を得た。
次いで、得られた乾燥物を上部が開放したステンレス製容器に厚さ約1cm程充填し、電気炉で室温から300℃まで2時間かけて昇温後、300℃で3時間保持した。さらに600℃まで2時間で昇温後、600℃で3時間保持して焼成した。その後、徐冷して、固形物であるシリカ−アルミナ−マグネシアを得た。
次に、硝酸ニッケル6水和物27gを含む水溶液1.0Lを90℃に加温した。この水溶液に上記のようにして得られた固形物であるシリカ−アルミナ−マグネシア300gを投入し、攪拌しながら90℃で1時間保持して、ニッケル成分を固形物に析出させた。次いで、その混合物を静置して上澄みを除去し、蒸留水で数回洗浄し、濾過した後の固形物を105℃で16時間乾燥し、さらに空気中600℃で5時間焼成した。こうして、ケイ素を80.3モル%、アルミニウムを8.7モル%、ニッケルを1.5モル%、マグネシウムを9.5モル%含む担体を得た。Ni(X)/Alの組成比はモル基準で0.18、Ni(X)/Mg(B)の組成比はモル基準で0.16であった。
窒素吸着法による比表面積は245m2/g、細孔容積は0.26mL/g、平均細孔径は4.0nmであった。嵩密度は0.99CBD、耐摩耗性は0.1質量%であった。平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、担体に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、シリカゲルと同様の非晶質パターンが得られた。
次に、担体を上記のようにして得られた担体に代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル1.43質量%、金1.52質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/Si−Al−Ni−Mg複合酸化物)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は244m2/g、細孔容積は0.26mL/g、平均細孔径は4.0nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると3nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径3〜4nmに極大分布(数平均粒子径:3.2nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比の平均値で0.85であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は246m2/g、細孔容積は0.26mL/g、平均細孔径は3.9nmであり、pHスイング処理による構造変化は認められなかった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は3.2nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長はほとんど観察されなかった。
〔比較例1〕
原料としてシリカゾル溶液を日産化学社製、商品名「スノーテックスN−30」から同社製、商品名「スノーテックスN−40」(SiO2含有量:40質量%)に代え、硝酸アルミニウム、硝酸ニッケル、硝酸マグネシウムを添加せずにシリカ単独の組成にした以外は実施例1と同様にして、スプレードライヤー装置による混合スラリーの噴霧乾燥まで行い固形物を得た。次に、得られた固形物をロータリーキルンで室温から300℃まで2時間かけて昇温後、300℃で1時間保持した。さらに600℃まで2時間で昇温後、600℃で1時間保持して焼成した。その後、徐冷して、シリカを得た。
窒素吸着法による比表面積は215m2/g、細孔容積は0.26mL/g、平均細孔径は5.5nmであった。嵩密度は0.55CBD、耐摩耗性は3.3質量%であった。平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、66μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、シリカに割れや欠けが認められた。シリカの形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、非晶質パターンが得られた。
次に、担体を上記のようにして得られたシリカに代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル1.35質量%、金1.21質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/SiO2)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は214m2/g、細孔容積は0.26mL/g、平均細孔径は5.4nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、66μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると4nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径4〜5nmに極大分布(数平均粒子径:4.4nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比として平均値で0.75であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は205m2/g、細孔容積は0.25mL/g、平均細孔径は8.5nmであり、pHスイング処理による構造変化が認められた。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は6.2nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長が観察された。
〔比較例2〕
硝酸ニッケル、硝酸マグネシウムを用いなかった以外は、実施例1の(1)と同様にして、ケイ素を93.0モル%、アルミニウムを7.0モル%含むシリカ−アルミナ組成物を得た。窒素吸着法による比表面積は220m2/g、細孔容積は0.30mL/g、平均細孔径は5.2nmであった。嵩密度は0.94CBD、耐摩耗性は0.2質量%であった。シリカ−アルミナ組成物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、シリカ−アルミナ組成物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、非晶質パターンが得られた。
次に、担体を上記のようにして得られたシリカ−アルミナ組成物に代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル1.48質量%、金1.49質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/SiO2−Al23)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は225m2/g、細孔容積は0.29mL/g、平均細孔径は5.1nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると3nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径3〜4nmに極大分布(数平均粒子径:3.3nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比として平均値で0.87であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は214m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は8.2nmであり、pHスイング処理による構造変化が認められた。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は5.5nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長が観察された。
〔比較例3〕
硝酸ニッケルを用いなかった以外は、実施例1の(1)と同様にして、ケイ素を86.5モル%、アルミニウムを6.9モル%、マグネシウムを6.6モル%含むシリカ−アルミナ−マグネシア組成物を得た。窒素吸着法による比表面積は213m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は5.1nmであった。嵩密度は0.96CBD、耐摩耗性は0.1質量%であった。シリカ−アルミナ−マグネシア組成物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、シリカ−アルミナ−マグネシア組成物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、シリカゲルと同様の非晶質パターンが得られた。
次に、担体を上記のようにして得られたシリカ−アルミナ−マグネシア組成物に代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル1.50質量%、金1.52質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/SiO2−Al23−MgO)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は230m2/g、細孔容積は0.28mL/g、平均細孔径は3.9nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると3nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径3〜4nmに極大分布(数平均粒子径:3.2nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比として平均値で0.86であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は213m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は7.9nmであり、pHスイング処理による構造変化が認められた。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は5.2nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長が観察された。
〔比較例4〕
硝酸アルミニウム9水和物1.5kgに代えて硝酸アルミニウム9水和物2.3kg、硝酸ニッケル6水和物0.24kgに代えて硝酸ニッケル6水和物0.37kg、硝酸マグネシウム6水和物0.98kgに代えて硝酸マグネシウム6水和物0.21kg、シリカゾル溶液(日産化学社製、商品名「スノーテックスN−30」、SiO2含有量:30質量%)10.0kgに代えてそのシリカゾル溶液1.0kgを用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして、ケイ素を37.3モル%、アルミニウムを46.2モル%、ニッケルを10.1モル%、マグネシウムを6.5モル%含むシリカ−アルミナ−酸化ニッケル−マグネシア組成物を得た。Ni(X)/Alの組成比はモル基準で0.22、Ni(X)/Mg(B)の組成比はモル基準で1.56であった。窒素吸着法による比表面積は195m2/g、細孔容積は0.3mL/g、平均細孔径は5.3nmであった。嵩密度は0.85CBD、耐摩耗性は0.5質量%であった。平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、62μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、シリカ−アルミナ−酸化ニッケル−マグネシア組成物に割れや欠けが認められた。形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、アルミナに由来する結晶パターンが得られた。
次に、担体を上記のようにして得られたシリカ−アルミナ−酸化ニッケル−マグネシア組成物に代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル1.51質量%、金1.49質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/SiO2−Al23−NiO−MgO)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は200m2/g、細孔容積は0.29mL/g、平均細孔径は5.2nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、66μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると4nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径3〜4nmに極大分布(数平均粒子径:3.7nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比として平均値で0.85であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は195m2/g、細孔容積は0.28mL/g、平均細孔径は7.2nmであり、pHスイング処理による構造変化が認められた。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は4.8nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長が観察された。
〔比較例5〕
硝酸アルミニウム9水和物1.5kgに代えて硝酸アルミニウム9水和物1.0kg、硝酸ニッケル6水和物0.24kgに代えて硝酸ニッケル6水和物0.05kg、硝酸マグネシウム6水和物0.98kgに代えて硝酸マグネシウム6水和物0.23kgを用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして、ケイ素を93.1モル%、アルミニウムを5.0モル%、ニッケルを0.3モル%、マグネシウムを1.6モル%含むシリカ−アルミナ−酸化ニッケル−マグネシア組成物を得た。Ni(X)/Alの組成比はモル基準で0.07、Ni(X)/Mg(B)の組成比はモル基準で0.22であった。窒素吸着法による比表面積は210m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は5.4nmであった。嵩密度は0.9CBD、耐摩耗性は2.0質量%であった。平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、65μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、シリカ−アルミナ−酸化ニッケル−マグネシア組成物に割れや欠けが認められた。形状はほぼ球状であった。固体形態について、粉末X線回折(XRD)の結果から、シリカゲルと同様の非晶質パターンが得られた。
次に、担体を上記のようにして得られたシリカ−アルミナ−酸化ニッケル−マグネシア組成物に代えた以外は実施例1の(2)と同様にして、ニッケル1.45質量%、金1.35質量%を担持した複合粒子担持物(NiOxAu/SiO2−Al23−NiO−MgO)を得た。
この複合粒子担持物について、窒素吸着法による比表面積は209m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は5.4nmであった。複合粒子担持物の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、65μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、複合粒子担持物に割れや欠けはなく、形状はほぼ球状であった。
上記複合粒子担持物の粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると4nm程度であった。Niの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果より、2価の酸化状態にあることを確認した。
透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて、上記複合粒子担持物の微細構造を観察したところ、粒子径3〜4nmに極大分布(数平均粒子径:4.0nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。付属のエネルギー分散型X線検出器(EDX)により、観察されたナノ粒子1個ごとに元素分析(20点)を行い、いずれの粒子もニッケルと金とを含む複合粒子であることを確認した。この複合粒子のNi/Au(Y)は、原子比として平均値で0.80であった。
次に、上記のようにして得られた複合粒子担持物の化学的安定性を評価するために、実施例1と同様の方法によりpHスイング試験を行った。その結果、pHスイング処理後の複合粒子担持物の比表面積は205m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は7.5nmであり、pHスイング処理による構造変化が認められた。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による複合粒子の平均粒子径は5.5nm(算出個数:100)であり、複合粒子の粒子成長が観察された。
表1に、実施例1〜11、比較例1〜5の複合粒子担持物の組成及び物性を示す。
Figure 0005336234
〔実施例12〕
触媒として、実施例1で得られた複合粒子担持物(NiOAu/Si−Al−Ni−Mg複合酸化物)200gを、触媒分離器を備え、液相部が1.2リットルの攪拌型ステンレス製反応器に仕込んだ。その反応器中の攪拌羽の先端速度4m/秒の速度で内容物を攪拌しながら、アルデヒド及びアルコールからの酸化的カルボン酸エステルの生成反応を実施した。36.7質量%のメタクロレイン/メタノール溶液を0.6リットル/時間、1〜4質量%のNaOH/メタノール溶液を0.06リットル/時間で、それぞれ連続的に反応器に供給した。反応温度80℃、反応圧力0.5MPaで出口酸素濃度が4.0容量%(酸素分圧0.02MPa相当)となるように空気を吹き込み、反応系のpHが7となるように反応器に供給するNaOH濃度を調整した。反応生成物は、反応器出口からのオーバーフローラインにより連続的に抜き出し、ガスクロマトグラフィーでその組成を分析して反応性を調べた。
反応開始から500時間経過時点のメタクロレイン転化率は66.2%、メタクリル酸メチルの選択率は96.1%、触媒の単位質量当たりのメタクリル酸メチルの生成活性は8.31mol/時間/kg−触媒であった。反応開始から2000時間経過時点のメタクロレイン転化率は65.8%、メタクリル酸メチルの選択率は96.3%、メタクリル酸メチルの生成活性は8.27mol/時間/kg−触媒であり、反応活性はほとんど変化しなかった。
反応開始から2000時間経過後の触媒を抜き出し、走査型電子顕微鏡(SEM)で調べたところ触媒粒子に割れ、欠けはほとんど見られなかった。また、窒素吸着法による触媒の比表面積は241m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は3.9nmであった。
次に、反応開始から2000時間経過後の触媒を透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)で観察したところ、粒子径2〜3nmに極大分布(数平均粒子径:3.3nm)を有するナノ粒子が担体に担持されていることが確認され、複合粒子のシンタリングは観察されなかった。
〔比較例6〕
触媒として、比較例3で得られた複合粒子担持物(NiOAu/SiO2−Al23−MgO)を用いた以外は実施例12と同様にして反応を行った。その結果、反応開始から500時間経過時点のメタクロレイン転化率は65.1%、メタクリル酸メチルの選択率は95.6%、触媒の単位質量当たりのメタクリル酸メチルの生成活性は8.13mol/時間/kg−触媒であった。反応開始から2000時間経過時点のメタクロレイン転化率は59.3%、メタクリル酸メチルの選択率は95.7%、メタクリル酸メチルの生成活性は7.41mol/時間/kg−触媒であり、反応活性の低下が認められた。
反応開始から2000時間経過後の触媒を抜き出し、走査型電子顕微鏡(SEM)で調べたところ触媒粒子に割れ、欠けはほとんど見られなかった。また、窒素吸着法による触媒の比表面積は222m2/g、細孔容積は0.27mL/g、平均細孔径は4.8nmであり、触媒の構造変化が認められた。
次に、反応開始から2000時間経過後の触媒を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、複合粒子の数平均粒子径は4.1nmであり、細孔径の拡大と同時に複合粒子のシンタリングが観察された。
以上の結果から、本発明の複合粒子担持物は、上述のカルボン酸エステル生成反応の触媒として用いた場合、高選択率で効率よくカルボン酸エステルを生成し、長時間経過後も、触媒の構造変化や複合粒子のシンタリングもほとんど認められず、高い反応性を維持していた。したがって、本発明の複合粒子担持物は、従来の複合粒子担持物と比べて、この特異的な反応だけでなく、一般的により幅広い多くの反応でも経済性の大きな改善が得られる。

Claims (12)

  1. ケイ素と、アルミニウムと、鉄、コバルト、ニッケル及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の第4周期元素と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性元素と、を、前記ケイ素と前記アルミニウムと前記第4周期元素と前記塩基性元素との合計モル量に対して、それぞれ、42〜90モル%、3〜38モル%、0.5〜20モル%、2〜38モル%、の範囲で含有する複合酸化物からなる担体と、
    前記担体に担持された、酸化状態にあるニッケルと、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素と、を含有する複合粒子と、
    を含む、酸素の存在下でアルデヒドとアルコールとを反応させる酸化的エステル化反応に触媒として用いられる、複合粒子担持物。
  2. 前記担体における前記アルミニウムに対する前記第4周期元素の組成比がモル基準で0.02〜1.0である、請求項1記載の複合粒子担持物。
  3. 前記担体における前記塩基性金属元素に対する前記第4周期元素の組成比がモル基準で0.02〜1.2である、請求項1又は2に記載の複合粒子担持物。
  4. 前記複合酸化物は、前記第4周期元素がニッケル、前記塩基性元素がマグネシウムである複合酸化物であって、前記ケイ素と前記アルミニウムと前記ニッケルと前記マグネシウムとの合計モル量に対して、前記ケイ素を42〜90モル%、前記アルミニウムを3〜38モル%、前記ニッケルを0.5〜20モル%、前記マグネシウムを2〜38モル%の範囲でそれぞれ含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合粒子担持物。
  5. 前記複合粒子は、平均粒子径が2〜10nmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合粒子担持物。
  6. 前記複合粒子における前記遷移元素に対する前記ニッケルの組成比がモル基準で0.1〜10である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合粒子担持物。
  7. 前記複合粒子は、前記遷移元素からなる核部と、その核部を被覆する前記酸化状態にあるニッケルの化合物からなる殻部と、を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合粒子担持物。
  8. ケイ素と、アルミニウムと、鉄、コバルト、ニッケル及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の第4周期元素と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性元素と、を、前記ケイ素と前記アルミニウムと前記第4周期元素と前記塩基性元素との合計モル量に対して、それぞれ、42〜90モル%、3〜38モル%、0.5〜20モル%、2〜38モル%、の範囲で含有する複合酸化物からなる担体を調製する工程と、
    酸化状態にあるニッケルと、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素と、を含有する複合粒子を前記担体に担持する工程と、
    を有する複合粒子担持物の製造方法。
  9. 前記担体に担持する工程が、
    ニッケルを含む可溶性金属塩と、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移元素を含む可溶性金属塩との酸性水溶液を中和することによって、前記担体に前記ニッケルと前記遷移元素を含む成分とを析出させて前駆体を得る工程と、
    前記前駆体を加熱処理することによって、前記ニッケルを酸化状態にする工程と、
    を有する、請求項8に記載の複合粒子担持物の製造方法。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合粒子担持物を触媒として用い、酸素の存在下でアルデヒドとアルコールとを反応させる、カルボン酸エステルの製造方法。
  11. 前記アルデヒドが、アクロレイン及びメタクロレイン並びにそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項10記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  12. 前記アルコールがメタノールである、請求項10又は11に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
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