圧電素子への配線接続作業を、圧電素子の損壊を未然に防止すると共に高い信頼性を維持した状態で遂行可能にするといった目的を、貫通孔から他方側の電極を臨む突出部により配線側電極と素子側電極とを突き当てて導電性接着剤により接合する配線接続構造を採用することによって実現した。
以下、本発明の実施例に係るヘッドサスペンション及びヘッドサスペンションの製造方法について、いわゆるデュアル・アクチュエータ方式を用いたものを例示して、図面を参照しつつ詳細に説明する。
初めに、実施例1に係るヘッドサスペンションの概略構成について説明する。
[実施例1に係るヘッドサスペンション]
図1は、実施例1に係るヘッドサスペンションの説明図であり、図1(A)は、実施例1に係るヘッドサスペンションの各構成部材を裏面側から視た平面図、図1(B)は、実施例1に係るヘッドサスペンションを裏面側から視た平面図、図1(C)は、実施例1に係るヘッドサスペンションのうち圧電素子周りを拡大して表面側から視た平面図、図2は、図1(C)に示す実施例1に係るヘッドサスペンションのII−II線に沿う要部矢視断面図、図3(A)は、実施例1に係る配線部材を圧電素子の側から視た斜視図、図3(B)は、実施例1に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す図3(A)のIIIB−IIIB線に沿う矢視断面図である。
なお、以下では、説明の便宜上、ヘッドサスペンションのうちベースプレートの側を基端側又は後側と呼び、ロードビームの側を前端側、先端側、又は前側と呼ぶ場合がある。また、ヘッドサスペンションのうち反ディスク側を表面側と呼び、ディスク側を裏面側と呼ぶ場合がある。さらに、本発明の説明で内側又は外側というときは、ヘッドサスペンションの中心軸に対して内外いずれかの側に向かう方向を意味する。そして、本発明で左側又は右側というときは、ヘッドサスペンションの中心軸に対して左右いずれかの側に向かう方向を意味する。
実施例1に係るヘッドサスペンション10は、図1(A)〜図1(C)に示すように、ベースプレート11aと、圧電アクチュエータ12と、ロードビーム13aと、受け部材19aとなどを備えている。
実施例1に係るヘッドサスペンション10は、前記圧電アクチュエータ12の構成要素である圧電セラミック素子(以下、“圧電素子”と省略する。)40の変形に従って前記ロードビーム13aの先端側をスウェイ方向に微少移動可能に構成されている。
前記ベースプレート11aは、前記ロードビーム13aを弾性支持する役割を果たす。このベースプレート11aは、例えば板厚が150〜200μm程度のばね性を有するステンレス製薄板からなる。
前記ベースプレート11aは、図1(A)及び図1(B)に示すように、開口部20及び略円形のボス孔21を有する。このベースプレート11aは、本発明の”基部”に相当する部材であり、基端側基部11a1、前端側基部11a2、並びに前記基端側基部11a1及び前端側基部11a2の間を前記開口部20の両外側部でそれぞれ連結する一対の基部連結部11a3を一体に有する。
前記開口部20は、図1(C)及び図2に示すように、矩形板状の圧電素子40を収容する役割を果たす。この圧電素子40は、給電状態に応じて変形する例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)よりなる。
前記ベースプレート11aの基端側基部11a1は、ボイスコイルモータ(不図示)によって駆動されるアクチュエータアーム(不図示)の先端部に固定され、前記ボイスコイルモータによって旋回駆動される。前記基部連結部11a3は、図1(A)に示すように、前記開口部20の両外側部から外側に向けて略U字形状にそれぞれ張り出している。この基部連結部11a3によって、前記基端側基部11a1に対して前記前端側基部11a2は、図1(B)に示すように、前記スウェイ方向Xに撓み得るようになっている。
前記ロードビーム13aには、図1(B)に示すように、レーザスポット溶接等の適宜の固着手段によって、その裏面側にフレキシャ15が接合固定される。このロードビーム13aは、前記フレキシャ15の先端側に設けられる磁気ヘッドスライダ16に負荷荷重を与える役割を果たす。前記ロードビーム13aは、例えば板厚が30〜150μm程度のばね性を有するステンレス製薄板からなる。
前記フレキシャ15は、本発明の“配線部材”に相当する部材であり、前記ロードビーム13aよりもさらに薄く精密なばね性を有するステンレス製薄板からなる。このフレキシャ15は、図2に示すように、前記受け部材19aの側から、導電性基材層15a、電気絶縁層15b、及び配線層15cを順次積層させてなる。前記フレキシャ15は、前記受け部材19aの所定箇所に、レーザスポット溶接等の適宜の固着手段によって接合固定される。
前記導電性基材層15aは、例えばステンレス等の金属製薄板からなる。前記電気絶縁層15bは、例えばポリイミド樹脂等の電気絶縁性の良好な素材からなる。前記配線層15cは、例えば銅やニッケル等の電気導電性の良好な素材からなる。この配線層15cは、図2に示すように、前記圧電素子40の電極70,71に対する給電並びに前記磁気ヘッドスライダ16の読み取り及び書き込み信号を伝送する役割を果たす。
前記受け部材19aは、板厚が例えば20〜50μm程度のばね性を有するステンレス製薄板からなる。
前記受け部材19aは、図1(A)に示すように、基端側受け部19a1と、前端側受け部19a2と、前記基端側及び前端側の両受け部間19a1,19a2間を前記圧電素子40の両外側部でそれぞれ連結する一対の受け部連結部19a3とを一体に有する。この受け部材19aには、図1(A)に示すように、前記ベースプレート11aの開口部20と対応する位置に、該開口部20よりも小さい開口部22が開設されている。
前記受け部材19aの基端側受け部19a1は、前記ベースプレート11aの基端側基部11a1の一部に対応する位置及び形状に形成され、この基端側基部11a1の一部に対し、レーザスポット溶接等の適宜の固着手段によって、その裏面側から重ね合わせて接合固定される。
前記受け部材19aの前端側受け部19a2は、前記ベースプレート11aの前端側基部11a2と対応する位置及び形状に形成され、この前端側基部11a2に対し、レーザスポット溶接等の適宜の固着手段によって、その裏面側から重ね合わせて接合固定される。前記前端側基部11a2には、前記ロードビーム13aの基端側が、レーザスポット溶接等の適宜の固着手段によって、その裏面側から重ね合わせて接合固定される。
前記受け部材19aの受け部連結部19a3は、前記圧電素子40の両外側部から外側に向けて略U字形状にそれぞれ張り出している。この受け部連結部19a3によって、前記基端側受け部19a1に対して前記前端側受け部19a2は、前記スウェイ方向X(図1(B)参照)に撓み得るようになっている。
前記受け部連結部19a3は、前記ベースプレート11aの基部連結部11a3と比べて僅かに内側寄りに配設されている。要するに、本実施例1では、前記受け部連結部19a3は、前記基部連結部11a3に対して相互に重ならないように配設されている。
前記圧電アクチュエータ12は、前記圧電素子40の表裏両面それぞれに後述の電極70,71を形成してなる。この圧電アクチュエータ12は、例えば、0.07〜0.20mm程度の厚さを有する。
前記圧電素子40は、図1(C)及び図2に示すように、対向する一対の表面側及び裏面側電極形成面50,51と、前後方向の両端面52,53と、左右方向の両側面54,55とを有する。
前記圧電素子40は、前記開口部20に対して埋め込み式に実装されている。ここで、埋め込み式とは、図2に示すように、前記圧電素子40が前記開口部20の所定位置に収容された状態において、前記圧電素子40の表面側電極70が、前記ベースプレート11aの表面11dと比べて同等または低位に位置することによって、外観上、前記圧電素子40が前記開口部20に埋め込まれているように見える状態をいう。
前記圧電素子40の両端面52,53は、図2に示すように、該圧電素子40が前記開口部20の所定位置に収容された状態において、該開口部20の前後方向両端の内側面60,61に対し、所定のクリアランスを隔てて相互に対向位置している。また、前記圧電素子40の両側面54,55は、図2に示すように、前記基端側基部11a1及び前端側基部11a2の各側壁部62,63に対し、所定のクリアランスを隔てて相互に対向位置している。
前記圧電素子40の表面側及び裏面側電極形成面50,51には、図2に示すように、良好な電気伝導性を有する金(Au)等の材料からなる表面側及び裏面側電極70,71が、その全面に渡ってそれぞれ形成されている。これらの電極70,71は、蒸着、スパッタリング又はメッキ等によって形成することができる。
前記圧電素子40の基端部40aは、図2に示すように、前記基端側受け部19a1に対向位置している。一方、前記圧電素子40の前端部40bは、図2に示すように、前記前端側受け部19a2に対向位置している。
これにより、前記開口部20の内周側面における基端側及び前端側60,61には、図2に示すように、前記開口部20から一部を臨み得るようにせり出して前記圧電素子40の裏面側電極71を受ける基端側及び前端側受け部19a1,19a2がそれぞれ形成されている。
前記圧電素子40の基端部40aは、図2に示すように、前記基端側受け部19a1に、非導電性接着剤80を介して接着固定される。前記圧電素子40の前端部40bは、図2に示すように、前記前端側受け部19a2に、非導電性接着剤80を介して接着固定される。
前記非導電性接着剤80としては、公知の非導電性接着剤、及び公知の導電性接着剤に絶縁性を有するシリカやガラス等のフィラー粒子を含有させたものなどを用いることができる。
要するに、前記圧電素子40の裏面側電極71と、前記基端側及び前端側の各受け部19a1,19a2との間には、図2に示すように、適宜の厚みを有する非導電性接着剤80が層状に介在している。
前記非導電性接着剤80の層は、その厚みを10μm以上とするのが好ましい。この程度の厚みを有する電気絶縁層であれば、前記裏面側電極71と、前記基端側及び前端側の各受け部19a1,19a2との間の電気絶縁性を確実に担保することができることに基づく。
また、前記圧電素子40の外周端面52,53,54,55と、前記開口部20の内周側面60,61,62,63との各間に空けられたクリアランスには、図1(C)及び図2に示すように、適宜の厚みを有する非導電性接着剤80が層状に介在している。
前記圧電素子40の外側周端面54,55と、前記開口部20の左右両内側面62,63との各間に充填される非導電性接着剤80を受けるために、図1(C)及び図2に示すように、前記受け部材19aのうち、前記圧電素子40の外側周端面54,55に対応する部分には、基端側及び前端側のそれぞれに接着剤受け部23,24が設けられている。これら基端側及び前端側の各接着剤受け部23,24は、前記圧電素子40の外側周端面54,55に沿って突出形成されている。前記接着剤受け部23,24は、僅かな間隙を隔てて対向するように配設されている。
要するに、前記圧電素子40の外周端面52,53,54,55と、前記開口部20の内周側面60,61,62,63との各間に非導電性接着剤80が層状に介在することによって、該圧電素子40の歪み(変位)を前記ロードビーム13aに的確に伝達すると共に、表面側又は裏面側電極70,71と、前記開口部20の内周側面60,61,62,63との各間における電気絶縁性を確実に担保することができるようになっている。
[実施例1に係る圧電アクチュエータの配線接続構造]
次に、実施例1に係る圧電アクチュエータ12の配線接続構造及びその作用効果について説明する。
実施例1に係る圧電素子(PZT)40の前記開口部20に対する組み付け時において、該圧電素子40は、前記開口部20の内周側面60,61,62,63に規制されて所定の位置に位置決めされる。
前記組み付け時において、前記圧電素子40の表面側電極70は、図2に示すように、銀ペースト72等の導電性接着部材を介して前記ベースプレート11aに接地される。
これに対し、前記組み付け時において、本発明の“素子側電極”に相当する前記裏面側電極71は、図2に示すように、前記フレキシャ(配線部材)15と相互に対向するように位置する。これら両者71,15の隙間は、数10μm程度とごく僅かである。
前記両者71,15の隙間を埋めて両者間の電気的な接続関係を確保するために、前記フレキシャ(配線部材)15には、図2に示すように、前記導電性基材層15a及び電気絶縁層15bをそれぞれ貫通する略円形状の貫通孔73が設けられている。この貫通孔73を通して前記圧電素子40の側から臨む前記配線層15cには、図2に示すように、配線側電極75が設けられている。従って、前記貫通孔73は、前記配線層15cの配線側電極75を前記圧電素子40の裏面側電極(素子側電極)71に対して露出させるように構成されている。
前記配線側電極75は、例えば銅やニッケル等の電気導電性の良好な金属素材からなる。前記配線側電極75は、図2に示すように、前記裏面側電極71を指向して突出する突出部77−1を有する。本実施例1では、前記裏面側電極71が、本発明の“他方側の電極”に相当する。前記突出部77−1は、図2、図3(A)及び図3(B)に示すように、ドーム形状に形成され、その頂部77−1aが前記裏面側電極71に突き当てられている。前記頂部77−1aの周囲には、導電性接着剤79が設けられている。
要するに、本実施例1に係る圧電アクチュエータの配線接続構造では、図2、図3(A)及び図3(B)に示すように、前記突出部77−1により前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
実施例1に係る配線接続構造を採用した圧電アクチュエータ12では、所定の給電電圧が印加されると、前記圧電素子40の左右方向における一側が前後方向に収縮する一方、他側が前後方向に伸長することで、全体として略台形形状に歪む。
これにより、前記圧電素子40の歪み方向及び変位ストロークに応じて、前記ベースプレート11aに対して前記ロードビーム13aの先端側がスウェイ方向X(図1(B)参照)に移動するように動作する。
[実施例1の効果]
実施例1に係るヘッドサスペンションでは、前記配線側電極75に、前記貫通孔73から前記裏面側電極(他方側の電極)71を臨む突出部77−1を設け、前記突出部77−1により前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合したため、前記突き当てと導電性接着剤79による接合作用が相まって、前記両電極71,75間の確実な導電性が得られると共に、前記圧電素子40への配線接続作業を遂行する際に、該圧電素子40に対して局所的な応力が加えられることはない。
従って、実施例1に係るヘッドサスペンションによれば、圧電素子への配線接続作業を、圧電素子の損壊を未然に防止すると共に高い信頼性を維持した状態で遂行することができる。
また、前記導電性接着剤79の硬化に伴うシュリンク(サイズ縮小)作用によって、前記両電極71,75間の接合強度のさらなる強化を期待することができる。
前記受け部連結部19a3の略U字状梁連結構造を採用することによって、前記基部側及び前端側の各受け部19a1,19a2間の連結を行っているため、ひとつの圧電素子40を有する圧電アクチュエータ12を組み込む場合に、前記受け部材19aと前記圧電素子40とが緩衝することに起因する塵埃発生問題や、電極短絡問題を生じることがない。
さらに、前記基部連結部11a3及び受け部連結部19a3は、相互に重ならないように配置されたため、圧電アクチュエータ12のスウェイ動作時に、前記両者11a3,19a3が相互に緩衝することに起因する塵埃発生問題や騒音問題等を生じることがない。
しかも、前記受け部材19aを、ステンレス鋼材等の金属製薄板基材から、該当部位に化学的な腐食処理を施すことによって所定形状を切り出すエッチングによって製造する場合、前記受け部連結部19a3を、設計に従う形状及び精度をもってつくり込むことができる。このため、前記受け部材19aのスウェイ方向のばね定数を、設計に従う精度をもって的確に設定することができる。
また、前記基端側及び前端側の各受け部19a1,19a2と、前記基端側及び前端側の各接着剤受け部23,24等とを連係させて、前記圧電素子40の外周端面を覆うように塗布される非導電性接着剤80を受ける接着剤受け部を備えたため、前記圧電素子40の外周端面を非導電性接着剤80で覆うことができる。
このため、前記圧電素子40の電極70,71と、前記開口部20との間の電気絶縁性を確実に担保しながら、該圧電素子40の端面からの塵埃発生を未然に防止することができる。
さらに、前記接着剤受け部23,24は、前記圧電素子40の裏面側電極71及び外周端面と、前記基端側及び前端側の各受け部19a1,19a2のうち前記裏面側電極71に対向する底壁部と、前記外周端面に対向する前記開口部20の側壁部とで区画される接着剤充填空間からなり、前記圧電素子40は、前記接着剤充填空間に前記非導電性接着剤80の層が介在することによって前記開口部20に設けられたため、該圧電素子40の歪み(変位)を前記ロードビーム13aに的確に伝達すると共に、表面側又は裏面側電極70,71と、前記開口部20の内周側面60,61,62,63との各間における電気絶縁性を確実に担保することができる。しかも、脆く壊れやすい圧電素子40を前記非導電性接着剤80の層で覆うことによって、該圧電素子を効果的に保護することができる。
そして、前記接着剤受け部23,24は、前記圧電素子40の両外側部において基端側及び前端側の間に間隙を有するため、前記基部側受け部19a1に対する前記前端側受け部19a2の、左右方向における動きの自由度を拘束することがない。このため、前記基部側及び前端側の各受け部19a1,19a2の各間で左右方向の可撓性を持たせることができる。
従って、実施例1に係るヘッドサスペンションによれば、圧電アクチュエータ12による前記スウェイ方向Xの微少移動を、円滑かつ精度良く行わせることができる。
[実施例2に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例2に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図4は、実施例2に係るヘッドサスペンションの説明図であり、図4(A)は、実施例2に係る配線部材を圧電素子の側から視た斜視図、図4(B)は、実施例2に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す図4(A)のIVB−IVB線に沿う矢視断面図である。
実施例1に係るヘッドサスペンションと、実施例2に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、その重複した説明を省略する。
なお、実施例1に係る構成部材のうち、例えば、突出部77−1に対応する各実施例の突出部のバリエーションについては、上位符合”77”の末尾にハイフン付きのアラビア数字を付して表現している。具体的には、実施例1に係る突出部77−1に対応する実施例2の突出部には、符合”77−2”を付して表現している。
このように、相互に異なる実施例間でハイフン付きのアラビア数字を相違させたのは、共通の機能を有する構成部材(例えば突出部など)がどの実施例に係るものかを容易に判別できることに基づく。
また、例えば、実施例1に係る突出部77−1の頂部77−1aに対応する各実施例の突出部の頂部のバリエーションについては、各実施例に係る突出部の符合の末尾に記号”a”を付して表現している。具体的には、実施例1に係る突出部77−1の頂部77−1aに対応する実施例2の突出部77−2の頂部には、符合”77−2a”を付して表現している。
前記のように、例えば、符合”77−1”を有する構成部材(突出部)と、符合”77−2”を有する構成部材(突出部)とは、上位符合が共通の場合は実質的に共通の部材であるから、以下では、その重複した説明を省略する。そして、両実施例1,2間の相違点に注目して説明する。
実施例1と実施例2との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例1に係るヘッドサスペンションでは、図3(A),(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−1は、その頂部77−1aにのぞき孔を有していない。
これに対し、実施例2に係るヘッドサスペンションでは、図4(A),(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−2は、背面側から前記裏面側電極(他方側の電極)71を臨むのぞき孔81を頂部77−2aに有する点が、実施例1とは大きく相違している。
また、実施例1に係るヘッドサスペンションを製造するための製造方法では、前記導電性接着剤79の塗布後に、前記圧電素子(PZT)40を前記フレキシャ(配線部材)15に対して組み付ける。
これに対し、実施例2に係るヘッドサスペンションを製造するための製造方法では、上記相違点に起因して、図4(B)に示すように、前記圧電素子(PZT)40を前記フレキシャ(配線部材)15に組み付けた後に、のぞき孔81を埋めるように前記導電性接着剤79を塗布する点が、実施例1の製造方法とは大きく相違している。この製造方法の相違について後述する。
なお、実施例2に係る導電性接着剤79は、コロージョン防止用の保護被膜83を有する。この保護被膜83としては、例えばポリイミド樹脂等を好適に採用することができる。これにより、前記導電性接着剤79を、酸化損傷から保護可能に構成されている。
本実施例2では、前記裏面側電極71が、本発明の“他方側の電極”に相当する。
要するに、本実施例2では、図4(A),(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−2により前記両電極71,75同士を突き当てて前記導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
[実施例2の効果]
実施例2に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
前記圧電素子(PZT)40を前記フレキシャ(配線部材)15に組み付けた後に、前記のぞき孔81を埋めるように前記導電性接着剤79を塗布することができる。従って、前記導電性接着剤79を前記突出部77−8の背面側から塗布可能となる点で、製造工程の簡素化を実現することができる。
前記配線側電極75のうち、前記頂部77−2aとなる部位に前記のぞき孔81を形成した後、前記突出部77−2を、例えばパンチの押し当てによって加工成形する工程を採用した場合、前記のぞき孔81が、前記配線側電極75に係る素材の伸びを許容するように機能する。このため、前記突出部77−2の加工形成工程を簡易かつ的確に遂行することができる。
また、実施例2に係る導電性接着剤79は、コロージョン防止用の保護被膜83を有するため、前記導電性接着剤79を、酸化損傷から保護することができる。
[実施例3に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例3に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図5は、実施例3に係るヘッドサスペンションの説明図であり、図5(A)は、実施例3に係る配線部材を圧電素子の側から視た斜視図、図5(B)は、実施例3に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す図5(A)のVB−VB線に沿う矢視断面図である。
実施例1に係るヘッドサスペンションと、実施例3に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、前述と同様に重複した説明を省略して、両実施例1,3間の相違点に注目して説明する。
実施例1と実施例3との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例1に係るヘッドサスペンションでは、図3(A),(B)に示すように、前記フレキシャ(配線部材)15のうち導電性基材層15aは、貫通孔73の部位を除いて、前記裏面側電極71と対向して位置する前記フレキシャ(配線部材)15上の部位を覆っている。
これに対し、実施例3に係るヘッドサスペンションでは、図5(A),(B)に示すように、前記フレキシャ(配線部材)15のうち前記圧電素子40の側には、前記貫通孔73の周囲に存する前記導電性基材層15aを略リング形状に孤立させてなる液止め部材85−3が設けられている点が、実施例1とは大きく相違している。
具体的には、前記貫通孔73の周囲に存する前記導電性基材層15aは、前記液止め部材85−3の範囲を除き、エッチング処理によって除去されている。これにより、前記導電性基材層15aが除去された範囲では、前記電気絶縁層15bが露出している。換言すれば、前記液止め部材85−3は、前記エッチング処理時に、前記貫通孔73の周辺における前記導電性基材層15aを残すことで形成されている。前記液止め部材85−3は、塗布時には液状である導電性接着剤79の拡散を防ぐ役割を果たす。
本実施例3では、前記裏面側電極71が、本発明の“他方側の電極”に相当する。
要するに、本実施例3では、図5(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−3により前記両電極71,75同士を突き当てて前記導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
[実施例3の効果]
実施例3に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
前記導電性接着剤79は、塗布時には液状であり、前記フレキシャ(配線部材)15のうち前記裏面側電極(素子側電極)71の側であって前記貫通孔73の周囲に前記導電性接着剤79の拡散を防ぐための液止め部材85−3を設けたため、前記導電性接着剤79の塗布時において、同接着剤液が前記貫通孔73の周辺部位にわたり無節操に拡散するのを防ぐことができる。
このため、塗布した導電性接着剤液が毛細管現象によって前記周辺部位に回り込んで拡散し、接合を要しない部分まで硬化させる事態を可及的に防止することができる。
従って、前記事態に起因して生じる、サスペンションの剛性バランスが崩れて動的特性に悪影響を与えることを未然に抑止することができる。
また、前記液止め部材85−3は、前記貫通孔73の周囲に存する前記導電性基材層15aを略リング形状に孤立させてなるため、該液止め部材85−3を設けるために別部材を要しない。このため、部品点数が削減された簡素な工程をもって、所要のサスペンションを製造することができる。
しかも、前記液止め部材85−3の存在によって無節操な導電性接着剤液の拡散が防止されているため、接着剤液を塗布する工程で量的な調整をラフに行うことができるといった副次的な効果を期待することができる。
[実施例4に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例4に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図6は、実施例4に係るヘッドサスペンションの説明図であり、図6(A)は、実施例4に係る配線部材を圧電素子の側から視た斜視図、図6(B)は、実施例4に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す図6(A)のVIB−VIB線に沿う矢視断面図である。
実施例2に係るヘッドサスペンションと、実施例4に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、前述と同様に重複した説明を省略して、両実施例2,4間の相違点に注目して説明する。
実施例2と実施例4との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例2に係るヘッドサスペンションでは、図4(A),(B)に示すように、前記フレキシャ(配線部材)15のうち導電性基材層15aは、貫通孔73の部位を除いて、前記裏面側電極71と対向して位置する前記フレキシャ(配線部材)15上の部位を覆っている。
これに対し、実施例4に係るヘッドサスペンションでは、図6(A),(B)に示すように、実施例3と同様に、前記フレキシャ(配線部材)15のうち前記圧電素子40の側には、前記貫通孔73の周囲に存する前記導電性基材層15aを略リング形状に孤立させてなる液止め部材85−4が設けられている点が、実施例2とは大きく相違している。
前記液止め部材85−4の周辺構成及び役割等については、前述した実施例3に係る液止め部材85−3と共通のため、その重複した説明を省略する。
本実施例4では、前記裏面側電極71が、本発明の“他方側の電極”に相当する。
要するに、本実施例4では、図6(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−4により前記両電極71,75同士を突き当てて前記導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
[実施例4の効果]
実施例4に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例2の効果に加えて、前述した実施例3と同様の効果を奏する。
すなわち、塗布した導電性接着剤液が毛細管現象によって前記貫通孔73の周辺部位にわたり無節操に拡散し、接合を要しない部分まで硬化させる事態を可及的に防止することができる。従って、前記事態に起因して生じる、サスペンションの剛性バランスが崩れて動的特性に悪影響を与えることを未然に抑止することができる。
また、部品点数が削減された簡素な工程をもって、所要のサスペンションを製造することができる。
しかも、接着剤液を塗布する工程で量的な調整をラフに行うことができるといった副次的な効果を期待することができる。
[実施例5に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例5に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図7(A)は、実施例5に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す断面図である。
実施例3に係るヘッドサスペンションと、実施例5に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、前述と同様に重複した説明を省略して、両実施例3,5間の相違点に注目して説明する。
実施例3と実施例5との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例3に係るヘッドサスペンションでは、図5(A),(B)に示すように、前記液止め部材85−3の内周端縁は、前記圧電素子40の側から視て、前記突出部77−3の外周端縁よりも外側に位置している。
これに対し、実施例5に係るヘッドサスペンションでは、図7(A)に示すように、液止め部材85−5の内周端縁85−5aは、前記圧電素子40の側から視て、突出部77−5の外周端縁よりも内側に位置している。この相違点に起因して、実施例5に係る液止め部材85−5の内周端縁85−5aは、前記配線側電極75の側の突出部77−5のドーム形状に沿って突出形成された点が、実施例3とは大きく相違している。
具体的には、実施例5に係る液止め部材85−5の内周端縁85−5a及び前記電気絶縁層15bの内周端縁は、前記配線側電極75の側の突出部77−5のドーム形状が後述するパンチを用いて突出形成されるのと同時に、前記ドーム形状に沿って突出形成される。なお、前記液止め部材85−5の内周端縁85−5a又は前記電気絶縁層15bの内周端縁のうちいずれか一方が、前記ドーム形状に沿って突出形成される構成を採用してもよい。
本実施例5では、前記裏面側電極71が、本発明の“他方側の電極”に相当する。
要するに、本実施例5では、図7(A)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−5により前記両電極71,75同士を突き当てて前記導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
[実施例5の効果]
実施例5に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例1,3の効果に加えて、下記の効果を奏する。
すなわち、前述の実施例3〜4において、例えば、前記配線側電極75がめっき銅製の薄板からなる場合、前記突出部77−3,77−4を形成する際に、該配線側電極75の素材が薄く軟弱であるため、該突出部のドーム形状が安定しないという問題が生じた。
これに対し、実施例5に係る液止め部材85−5の内周端縁85−5a及び前記電気絶縁層15bの内周端縁は、前記配線側電極75の側の突出部77−5のドーム形状に沿って突出形成されたため、例えば、前記液止め部材85−5(15a)がステンレス製薄板等の強度の高い素材からなり、前記電気絶縁層15bがポリイミド樹脂からなる場合、前記突出部77−5のドーム形状の安定した起立を外周側から補助することができる。
また、前記配線側電極75が純度の高い銅製薄板からなる場合、前記突出部77−5はある程度の柔軟性を有する。このため、前記突出部77−5の高さ寸法を公差分を考慮して高めに設定しておけば、該突出部77−5が突き当てられる前記裏面側電極71との間隙が前記公差の範囲でバラついた場合であっても、その柔軟性によって前記バラつきを吸収することができる。
[実施例6に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例6に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図7(B)は、実施例6に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す断面図である。
実施例4に係るヘッドサスペンションと、実施例6に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、前述と同様に重複した説明を省略して、両実施例4,6間の相違点に注目して説明する。
実施例4と実施例6との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例4に係るヘッドサスペンションでは、図6(A),(B)に示すように、前記液止め部材85−4の内周端縁は、前記圧電素子40の側から視て、前記突出部77−4の外周端縁よりも外側に位置している。
これに対し、実施例6に係るヘッドサスペンションでは、図7(B)に示すように、前記液止め部材85−6の内周端縁85−6aは、前記圧電素子40の側から視て、突出部77−6の外周端縁よりも内側に位置している。この相違点に起因して、実施例6に係る液止め部材85−6の内周端縁85−6aは実施例5と同様に、前記配線側電極75の側の突出部77−5のドーム形状に沿って突出形成された点が、実施例4とは大きく相違している。
具体的には、実施例6に係る液止め部材85―6の内周端縁85―6a及び前記電気絶縁層15bの内周端縁は、前記配線側電極75の側の突出部77−6のドーム形状が後述するパンチを用いて突出形成されると同時に、前記ドーム形状に沿って突出形成される。なお、前記液止め部材85−6の内周端縁85−6a又は前記電気絶縁層15bの内周端縁のうちいずれか一方が、前記ドーム形状に沿って突出形成される構成を採用してもよい。 本実施例6では、前記裏面側電極71が、本発明の“他方側の電極”に相当する。
要するに、本実施例6では、図7(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−6により前記両電極71,75同士を突き当てて前記導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
[実施例6の効果]
実施例6に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例4の効果に加えて、実施例5と同様の効果を奏する。
すなわち、実施例6に係る液止め部材85−6の内周端縁85−6a及び前記電気絶縁層15bの内周端縁は、前記配線側電極75の側の突出部77−6のドーム形状に沿って突出形成されたため、例えば、前記液止め部材85−6(15a)がステンレス製薄板等の強度の高い素材からなり、前記電気絶縁層15bがポリイミド樹脂からなる場合、前記突出部77−6のドーム形状の安定した起立を外周側から補助することができる。
また、前記配線側電極75が純度の高い銅製薄板からなる場合、前記突出部77−6はある程度の柔軟性を有する。このため、前記突出部77−6の高さ寸法を公差分を考慮して高めに設定しておけば、該突出部77−6が突き当てられる前記裏面側電極71との間隙が前記公差の範囲でバラついた場合であっても、その柔軟性によって前記バラつきを吸収することができる。
[実施例7に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例7に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図8(A)は、実施例7に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す断面図である。
実施例5に係るヘッドサスペンションと、実施例7に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、前述と同様に重複した説明を省略して、両実施例5,7間の相違点に注目して説明する。
実施例5と実施例7との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例5に係るヘッドサスペンションでは、図7(A)に示すように、前記突出部77−5の頂部77−5aは、ドーム形状を維持した状態で前記裏面側電極71に突き当てられている。
これに対し、実施例7に係るヘッドサスペンションでは、図8(A)に示すように、突出部77−7は、その頂部77−7a周辺に突当部77−7a1を有し、この突当部77−7a1が前記裏面側電極71に突き当てられている点が、実施例5とは大きく相違している。
前記突当部77−7a1は、略円形状に形成されることによって、前記裏面側電極71と配線側電極75との接触面積を増大させる。
本実施例7では、前記裏面側電極71が、本発明の“他方側の電極”に相当する。
要するに、本実施例7では、図8(A)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−7により前記両電極71,75同士を突き当てて前記導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
[実施例7の効果]
実施例7に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例5の効果に加えて、下記の効果を奏する。
すなわち、実施例7に係る突出部77−7は、その頂部77−7a周辺に突当部77−7a1を有し、この突当部77−7a1が前記裏面側電極71に突き当てられているため、前記裏面側電極71と配線側電極75との接触面積を増大させて、当該両電極71,75間の接触抵抗を大幅に低減することができる。
従って、実施例7に係るヘッドサスペンションによれば、前記両電極71,75間の導通接続関係を確実にして、きわめて信頼性の高い圧電素子への配線接続を実現することができる。
[実施例8に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例8に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図8(B)は、実施例8に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す断面図である。
実施例7に係るヘッドサスペンションと、実施例8に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、前述と同様に重複した説明を省略して、両実施例7,8間の相違点に注目して説明する。
実施例7と実施例8との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例7に係るヘッドサスペンションでは、図8(A)に示すように、前記突出部77−7は、その頂部77−7aにのぞき孔を有していない。
これに対し、実施例8に係るヘッドサスペンションでは、図8(B)に示すように、実施例8に係る突出部77−8は、実施例2,4,6と同様に、背面側から前記裏面側電極(他方側の電極)71を臨むのぞき孔81を頂部77−8aに有する点が、実施例7とは大きく相違している。
本実施例8では、前記裏面側電極71が、本発明の“他方側の電極”に相当する。
要するに、本実施例8では、図8(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−8により前記両電極71,75同士を突き当てて前記導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
[実施例8の効果]
実施例8に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例6の効果に加えて、実施例7と同様の効果を奏する。
すなわち、実施例8に係るヘッドサスペンションによれば、簡素な工程をもって製造可能なヘッドサスペンションを得ると共に、前記両電極71,75間の導通接続関係を確実にして、きわめて信頼性の高い圧電素子への配線接続を実現することができる。
[第1のヘッドサスペンションの製造方法]
次に、第1のヘッドサスペンションの製造方法について、実施例7に係るヘッドサスペンションの製造例をあげて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図9は、実施例7に係るヘッドサスペンションの製造工程を、圧電素子と配線部材の関係を示す要部断面図と対比して示す説明図、図11(A)は、実施例3,5,7に係るヘッドサスペンションの製造工程のうち配線側電極にドーム形状の突出部をパンチにより曲げ成形する工程を概念的に示す説明図、図12は、図11に示す曲げ成形工程を、配線部材がフレームに対して複数組み込まれた連鎖品の状態で遂行する様子を概念的に示す説明図である。
第1のヘッドサスペンションの製造方法は、図9に示すように、貫通孔形成工程(ステップS101)と、突出部成形工程(ステップS102)と、導電性接着剤塗布工程(ステップS103)と、PZT組付け工程(ステップS104)と、接着剤硬化工程(ステップS105)とを含んで構成される。
ステップS101の貫通孔形成工程では、図9に示すように、前記導電性基材層15a及び電気絶縁層15bを貫通する貫通孔73を形成する。
前記貫通孔形成工程において、前記導電性基材層15aの貫通孔73は、例えばエッチング等の適宜の手段によって形成することができる。また、前記電気絶縁層15bの貫通孔73は、前記フレキシャ(配線部材)15のうち該電気絶縁層15bの成形時に、前記貫通孔73に対応する形状パターンのマスクを適用することによって形成することができる。前記貫通孔73によって、前記配線側電極75を前記裏面側電極(素子側電極)71に対して露出させる。
ステップS102の突出部成形工程では、図9及び図11(A)に示すように、前記配線側電極75の背面側からドーム形状の先端部91bを有するパンチ91を押し当てることによって該配線側電極75にドーム形状の突出部77−7を加工成形する。
前記パンチ加工成形を遂行するにあたっては、図11(A)に示すように、配線側電極75の中心点75aに、前記パンチ91の頂点91aを一致させる位置決めを行い、その後、前記パンチ91を前記配線側電極75の背面側から押し当てる動作を行わせるようにする。この加工成形の際に、パンチ91の押し当て動作を背面側から受けるダイを用いてもよい。
実際には、前記突出部成形工程は、図12に示すように、前記フレキシャ(配線部材)15がフレーム95に連鎖状に組み込まれた連鎖品の態様で遂行される。ただし、前記実施態様に代えて、個々のフレキシャ(配線部材)15に対して各個別に突出部をパンチ加工成形してもよい。
前記突出部成形工程では、実施例7に係る液止め部材85−7の内周端縁85−7a及び前記電気絶縁層15bの内周端縁を、前記突出部77−7のドーム形状をパンチ加工成形するのと同時に、前記突出部77−7のドーム形状に沿ってパンチ加工成形する。
ステップS103の導電性接着剤塗布工程では、図9に示すように、前記突出部77−7の頂部77−7aの周辺にわたって前記導電性接着剤79を塗布する。この接着剤塗布工程では、前記突出部77−7の頂部77−7aの周辺に代えて、又は加えて、該突出部77−7の頂部77−7aが突き当たる前記裏面側電極71の該当部位に、前記導電性接着剤79を塗布するようにしてもよい。
ステップS104のPZT組付け工程では、前記圧電素子(PZT)40を前記フレキシャ(配線部材)15に対して組み付ける。この組み付けに際し、前記突出部77−7の高さ寸法を、対向する裏面側電極71との間隙の寸法を超えるように大き目に設定してもよい。
仮に、実施例7に係る配線側電極75が純度の高い銅製薄板からなる場合、前記突出部77−7はある程度の柔軟性を有する。このため、前記突出部77−7を前記裏面側電極71に対して突き当てた場合であって、前記突出部77−7の高さ寸法を大き目に設定した場合、該突出部77−7の頂部77−7a付近が撓んで押しつぶされることによって、図9に示すように、略円形状かつ平坦な突当部77−7a1が出現する。
ここで、本発明で通常用いられる配線側電極75は、比較的硬度の低い銅等の素材からなる。また、前記ステップS104のPZT組み付け時には、前記突出部77−7と前記裏面側電極71との間に硬化前の流動性を有する導電性接着剤79が介在している。
従って、前記配線側電極75の素材それ自体の柔軟性と、前記導電性接着剤79の介在による緩衝作用が相まって、前記圧電素子40に対する機械的衝撃はじゅうぶんに軽減される。その結果、前記突出部77−7による突き当てを行ったとしても、前記圧電素子40を損壊させることはない。
また、前記突当部77−7a1は、略円形状かつ平坦に形成される。これは、前記裏面側電極71と配線側電極75との接触面積を増大させる。このため、当該両電極71,75間の接触抵抗を大幅に低減することができる。
従って、前記両電極71,75間の導通接続関係を確実にして、きわめて信頼性の高い圧電素子への配線接続を実現することができる。
ステップS105の接着剤硬化工程では、ステップS104のPZT組付け工程後のヘッドサスペンションに対し、加熱や紫外線照射等のエネルギーを所定時間与えることによって、前記導電性接着剤79の硬化を促進させる。この接着剤硬化工程を経て、前記フレキシャ(配線部材)15に対する圧電素子(PZT)40の組付けが完了する。
[第1のヘッドサスペンション製造方法の効果]
第1のヘッドサスペンション製造方法によれば、下記の効果を奏する。
すなわち、前記配線側電極75に、前記貫通孔73から前記裏面側電極(他方側の電極)71を臨む突出部77−7を成形し、該突出部77−1により前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合したため、前記突き当てと導電性接着剤79による接合作用が相まって、前記両電極71,75間の確実な導電性が得られると共に、前記圧電素子40への配線接続作業を遂行する際に、該圧電素子40に対して局所的な応力が加えられることはない。
従って、第1のヘッドサスペンション製造方法によれば、圧電素子への配線接続作業を、圧電素子の損壊を未然に防止すると共に高い信頼性を維持した状態で遂行することができる。
また、前記導電性接着剤79の硬化に伴うシュリンク(サイズ縮小)作用によって、前記両電極71,75間の接合強度のさらなる強化を期待することができる。
ところで、例えば、前記配線側電極75がめっき銅製の薄板からなる場合、該配線側電極75の素材が薄く軟弱であるため、前記突出部77−7を成形する際、該突出部77−7のドーム形状が安定しないおそれがある。
そこで、ステップS102の突出部成形工程では、実施例7に係る液止め部材85−7の内周端縁85−7a及び前記電気絶縁層15bの内周端縁を、前記突出部77−7のドーム形状をパンチ加工成形するのと同時に、前記突出部77−7のドーム形状に沿ってパンチ加工成形する構成を採用したため、例えば、前記液止め部材85−7(15a)がステンレス製薄板等の強度の高い素材からなり、前記電気絶縁層15bがポリイミド樹脂からなる場合、前記突出部77−7のドーム形状の安定した起立を外周側から補助することができる。
[第2のヘッドサスペンション製造方法]
次に、第2のヘッドサスペンション製造方法について、実施例8に係るヘッドサスペンションの製造例をあげて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図10は、実施例8に係るヘッドサスペンションの製造工程を、圧電素子と配線部材の関係を示す要部断面図と対比して示す説明図、図11(B)は、実施例4,5,8に係るヘッドサスペンションの製造工程のうち配線側電極にドーム形状の突出部をパンチにより曲げ成形する工程を概念的に示す説明図である。
第1のヘッドサスペンション製造方法と、第2のヘッドサスペンション製造方法とは、各工程の進行順序を除いて基本的な製造工程がほぼ共通している。このため、共通する個別の各工程については、重複した説明を省略する場合がある。両者間の相違点に注目して説明を進める。
第1のヘッドサスペンション製造方法と、第2のヘッドサスペンション製造方法との相違点は次の通りである。
すなわち、第1のヘッドサスペンション製造方法では、図9に示すように、貫通孔形成工程(ステップS101)と、突出部成形工程(ステップS102)と、導電性接着剤塗布工程(ステップS103)と、PZT組付け工程(ステップS104)と、接着剤硬化工程(ステップS105)とを含み、前記の順序に従って製造工程が進行する。
これに対し、第2のヘッドサスペンション製造方法では、図10に示すように、貫通孔形成工程(ステップS111)と、突出部成形工程(ステップS112)と、PZT組付け工程(ステップS113)と、導電性接着剤塗布工程(ステップS114)と、接着剤硬化工程(ステップS115)とを含み、前記の順序に従って製造工程が進行する。
要するに、第2のヘッドサスペンション製造方法では、PZT組付け工程(ステップS113)の後に、導電性接着剤塗布工程(ステップS114)が行われる点が、第1のヘッドサスペンション製造方法とは大きく相違している。
具体的には、ステップS111の貫通孔形成工程では、図10に示すように、前記導電性基材層15a及び電気絶縁層15bを貫通する貫通孔73を形成する。これと同時に、前記配線側電極75のうち、前記頂部77−8aとなる部位に、前記配線層15cを貫通するのぞき孔81を形成する。
前記貫通孔形成工程において、前記導電性基材層15a及び電気絶縁層15bの各貫通孔73は、第1のヘッドサスペンション製造方法と同様の手段によって形成することができる。また、前記配線層15cを貫通するのぞき孔81は、例えばエッチング又はパンチ孔加工等の適宜の手段によって形成することができる。
ステップS112の突出部成形工程では、図10及び図11(B)に示すように、前記のぞき孔81を有する配線側電極75の背面側からドーム形状の先端部91bを有するパンチ91を押し当てることによって該配線側電極75にドーム形状の突出部77−8を加工成形する。
このように、前記配線側電極75のうち、前記頂部77−8aとなる部位に前記のぞき孔81を形成した後、前記突出部77−8をパンチ加工成形する工程を採用したため、前記のぞき孔81が、前記配線側電極75に係る素材の伸びを許容するように機能する。従って、前記突出部77−8の加工形成工程を簡易かつ的確に遂行することができる。
前記パンチ加工成形を遂行するにあたっては、図11(B)に示すように、配線側電極75の中心点75aに、前記パンチ91の頂点91aを一致させる位置決めを行い、その後、前記パンチ91を前記配線側電極75の背面側から押し当てる動作を行わせるようにする。この加工成形の際に、パンチ91の押し当て動作を背面側から受けるダイを用いてもよい。
前記突出部成形工程では、突出部のパンチ加工成形は、第1のヘッドサスペンション製造方法と同様に、連鎖品の態様で遂行してもよいし、個々のフレキシャ(配線部材)15に対して各個別に遂行してもよい。
前記突出部成形工程では、実施例8に係る液止め部材85−8の内周端縁85−8a及び前記電気絶縁層15bの内周端縁を、前記突出部77−8のドーム形状をパンチ加工成形するのと同時に、前記突出部77−8のドーム形状に沿ってパンチ加工成形する。
ステップS113のPZT組付け工程では、前記圧電素子(PZT)40を前記フレキシャ(配線部材)15に対して組み付ける。この組み付けに際し、前記突出部77−8の高さ寸法を、対向する裏面側電極71との間隙の寸法を超えるように大き目に設定してもよい。この点は、第1のヘッドサスペンション製造方法と同様である。
仮に、実施例8に係る配線側電極75が純度の高い銅製薄板からなる場合、前記突出部77−8はある程度の柔軟性を有する。このため、前記突出部77−8を前記裏面側電極71に対して突き当てた場合であって、前記突出部77−8の高さ寸法を大き目に設定した場合、該突出部77−8の頂部77−8a付近が撓んで押しつぶされることによって、図10に示すように、略円形状かつ平坦な突当部77−8a1が出現する。
ここで、本発明で通常用いられる配線側電極75は、比較的硬度の低い銅等の素材からなる。前記配線側電極75の素材それ自体の柔軟性によって、前記圧電素子40に対する機械的衝撃はじゅうぶんに軽減される。その結果、前記突出部77−8による突き当てを行ったとしても、前記圧電素子40を損壊させることはない。
また、前記突当部77−8a1は、略円形状かつ平坦に形成される。これは、前記裏面側電極71と配線側電極75との接触面積を増大させる。このため、当該両電極71,75間の接触抵抗を大幅に低減することができる。
従って、前記両電極71,75間の導通接続関係を確実にして、きわめて信頼性の高い圧電素子への配線接続を実現することができる。
ステップS114の導電性接着剤塗布工程では、図10に示すように、前記PZT組付け工程後に、前記のぞき孔81を埋めるように前記導電性接着剤79を塗布する。
ステップS115の接着剤硬化工程では、ステップS114の導電性接着剤塗布工程後のヘッドサスペンションに対し、加熱や紫外線照射等のエネルギーを所定時間与えることによって、前記導電性接着剤79の硬化を促進させる。この接着剤硬化工程を経て、前記フレキシャ(配線部材)15に対する圧電素子(PZT)40の組付けが完了する。
なお、上記実施例では、PZT組付け工程後に、導電性接着剤塗布工程を行う例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。すなわち、PZT組付け工程の前に、前記突出部77−8の頂部77−8aの周辺にわたって前記導電性接着剤79を塗布する構成を採用してもよい。この場合、前記突出部77−8の頂部77−8aの周辺に代えて、又は加えて、該突出部77−8の頂部77−8aが突き当たる前記裏面側電極71の該当部位に、前記導電性接着剤79を塗布する構成を採用してもよい。
[第2のヘッドサスペンション製造方法の効果]
第2のヘッドサスペンション製造方法によれば、第1のヘッドサスペンション製造方法の効果に加えて、下記の効果を奏する。
すなわち、前記配線側電極75のうち、前記頂部77−8aとなる部位に前記のぞき孔81を形成した後、前記突出部77−8をパンチ加工成形する工程を採用したため、前記のぞき孔81が、前記配線側電極75に係る素材の伸びを許容するように機能する。従って、前記突出部77−2の加工形成工程を簡易かつ的確に遂行することができる。
ステップS114の導電性接着剤塗布工程では、前記PZT組付け工程後に、前記のぞき孔81を埋めるように前記導電性接着剤79を塗布する構成を採用したため、前記導電性接着剤79を前記突出部77−8の背面側から塗布可能となる点で、製造工程の簡素化を実現することができる。
[実施例9に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例9に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図13(A)は、実施例9に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す断面図である。
実施例1に係るヘッドサスペンションと、実施例9に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、その重複した説明を省略する。
実施例1と実施例9との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例1に係るヘッドサスペンションでは、図3(A),(B)に示すように、前記配線側電極75の側に、前記貫通孔73から前記裏面側電極(他方側の電極)71を臨む突出部77−1が設けられている。これは、実施例1〜8に係るヘッドサスペンションにおいて共通する。
これに対し、実施例9に係るヘッドサスペンションでは、図13(A)に示すように、前記圧電素子40の側に、前記貫通孔73から前記配線側電極(他方側の電極)75を臨む突出部101−9が設けられている点が、実施例1〜8とは大きく相違している。
具体的には、前記圧電素子40には、ドーム形状の膨出部103が形成されている。この膨出部103を形成するための圧電素子の成形方法については後述する。前記裏面側電極71は、前記圧電素子40の裏面側を均一の厚みで覆うように設けられている。このため、前記裏面側電極71は、外観上、前記膨出部103のドーム形状に沿って盛り上がる***部71aを有する。
従って、前記圧電素子40の膨出部103と、前記裏面側電極71の***部71aとによって、前記突出部101−9が構成されている。
前記配線側電極75の側の突出部77−9の頂部77−9aと、前記圧電素子40の側の突出部101−9の頂部121−13aとは、相互に重なるように位置決めされている。
本実施例9では、前記配線側電極75が、本発明の“他方側の電極”に相当する。前記配線側電極75は、平坦に形成されて突出部を有していない。
前記突出部101−9は、図13(A)に示すように、その頂部101−9aが前記配線側電極75に突き当てられている。前記頂部101−9aの周囲には、導電性接着剤79が設けられている。
要するに、本実施例9に係る圧電アクチュエータの配線接続構造では、図13(A)に示すように、前記突出部101−9により前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
[実施例9の効果]
実施例9に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例1の効果と同様の効果を奏する。
すなわち、実施例9に係るヘッドサスペンションでは、前記裏面側電極(素子側電極)71に、前記貫通孔73から前記配線側電極(他方側の電極)75を臨む突出部101−9を設け、前記突出部101−9により前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合したため、前記突き当てと導電性接着剤79による接合作用が相まって、前記両電極71,75間の確実な導電性が得られると共に、前記圧電素子40への配線接続作業を遂行する際に、該圧電素子40に対して局所的な応力が加えられることはない。
従って、実施例9に係るヘッドサスペンションによれば、圧電素子への配線接続作業を、圧電素子の損壊を未然に防止すると共に高い信頼性を維持した状態で遂行することができる。
また、前記導電性接着剤79の硬化に伴うシュリンク(サイズ縮小)作用によって、前記両電極71,75間の接合強度のさらなる強化を期待することができる。
[実施例10に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例10に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図13(B)は、実施例10に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す断面図である。
実施例9に係るヘッドサスペンションと、実施例10に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、その重複した説明を省略する。
実施例9と実施例10との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例9に係るヘッドサスペンションでは、図13(A)に示すように、前記圧電素子40の側に、前記貫通孔73から前記配線側電極(他方側の電極)75を臨む突出部101−9が設けられている。
これに対し、実施例10に係るヘッドサスペンションでは、図13(B)に示すように、前記圧電素子40の側に、前記貫通孔73から前記配線側電極(他方側の電極)75を臨む突出部101−10が設けられると共に、前記配線側電極75の側にも、前記貫通孔73から前記裏面側電極(他方側の電極)71を臨む突出部77−10が設けられている。つまり、前記圧電素子40及び前記配線側電極75の側の両者に、突出部101−10,77−10がそれぞれ設けられている点が、実施例9とは大きく相違している。
すなわち、実施例10に係る配線接続構造では、図13(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−10は、背面側から前記裏面側電極(他方側の電極)71を臨むのぞき孔81を頂部77−10aに有する。
一方、実施例10に係る圧電素子40の側の突出部101−10は、前記圧電素子40の膨出部103と、前記裏面側電極71の***部71aとによって構成されている。
実施例10に係るフレキシャ(配線部材)15のうち前記圧電素子40の側には、前記貫通孔73の周囲に存する前記導電性基材層15aを略リング形状に孤立させてなる液止め部材85−10が設けられている。この液止め部材85−10の製法及び機能等は、実施例3と同様である。
本実施例10では、前記裏面側電極71及び前記配線側電極75の両者が、本発明の“他方側の電極”に相当する。
要するに、実施例10では、図13(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−10及び前記裏面側電極71の側の突出部101−10を連係させて、前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
前記配線側電極75の側の突出部77−10に設けられたのぞき孔81には、前記両電極71,75同士が突き当てられた状態で、前記導電性接着剤79が埋め込まれる。これにより、前記両電極71,75間が接合されている。
なお、実施例10に係る導電性接着剤79は、コロージョン防止用の保護被膜83を有する。これにより、前記導電性接着剤79を、酸化損傷から保護可能に構成されている。
[実施例10の効果]
実施例10に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例9の効果に加えて、下記の効果を奏する。
すなわち、実施例10に係るヘッドサスペンションでは、前記配線側電極75の側の突出部77−4及び前記裏面側電極71の側の突出部101−10を連係させて、前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合する構成を採用したため、前記両電極71,75間の隙間寸法が大きい場合であっても、当該両電極71,75間の配線接続を的確に具現化することができる。
[第3のヘッドサスペンション製造方法]
次に、第3のヘッドサスペンション製造方法について、実施例9に係るヘッドサスペンションの製造例をあげて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図14は、実施例9に係るヘッドサスペンションの製造工程を、圧電素子と配線部材の関係を示す要部断面図と対比して示す説明図である。
第1のヘッドサスペンション製造方法と、第3のヘッドサスペンション製造方法とは、各工程の進行順序を除いて基本的な製造工程がほぼ共通している。このため、共通する個別の各工程については、重複した説明を省略する場合がある。両者間の相違点に注目して説明を進める。
第1のヘッドサスペンション製造方法と、第3のヘッドサスペンション製造方法との相違点は次の通りである。
すなわち、第1のヘッドサスペンション製造方法では、図9に示すように、貫通孔形成工程(ステップS101)と、突出部成形工程(ステップS102)と、導電性接着剤塗布工程(ステップS103)と、PZT組付け工程(ステップS104)と、接着剤硬化工程(ステップS105)とを含み、前記の順序に従って製造工程が進行する。
これに対し、第3のヘッドサスペンション製造方法では、図14に示すように、貫通孔形成工程(ステップS121)と、圧電素子成形工程(ステップS122)と、導電性接着剤塗布工程(ステップS123)と、PZT組付け工程(ステップS124)と、接着剤硬化工程(ステップS125)とを含み、前記の順序に従って製造工程が進行する。
要するに、第3のヘッドサスペンション製造方法では、突出部成形工程(ステップS102)の一実施態様である圧電素子の外形形状を成形する圧電素子成形工程(ステップS122)を採用している点が、第1のヘッドサスペンション製造方法とは大きく相違している。
具体的には、ステップS121の貫通孔形成工程では、図14に示すように、前記導電性基材層15a及び電気絶縁層15bを貫通する貫通孔73を形成する。
前記貫通孔形成工程において、前記導電性基材層15a及び電気絶縁層15bの各貫通孔73は、第1のヘッドサスペンション製造方法と同様の手段によって形成することができる。
ステップS122の圧電素子成形工程では、図14に示すように、組み付け時に前記配線側電極75と対応する位置にドーム形状の凹部111を有する焼結治具113を用いて圧電セラミック素子を焼結成形する。これにより、前記焼結治具113の凹部形状に従うドーム形状の膨出部103を前記圧電素子40に成形することができる。
前記焼結治具113は、下側治具113aと上側治具113bとを最中合わせにして構成される。前記凹部111は、前記上側治具113bの内側壁に形成されている。
前記焼結成形後の圧電素子40には、前記膨出部103を含む裏面側の裏面側電極形成面51を均一の厚みで覆うように裏面側電極71が形成される。また、前記圧電素子40の表面側にも電極70(図2参照)が形成される。これにより、圧電アクチュエータ12が構成される。前記各電極70,71の形成は、例えば蒸着やスパッタリング等の適宜の手段を採用すればよい。
ステップS123の導電性接着剤塗布工程では、図14に示すように、前記突出部101−9の頂部101−9a付近にわたって前記導電性接着剤79を塗布する。
ステップS124のPZT組付け工程では、図14に示すように、前記圧電素子(PZT)40を前記フレキシャ(配線部材)15に対して組み付ける。この組付けにあたり、前記配線側電極75の側の突出部77−14の頂部77−14aと、前記圧電素子40の側の受け部121−14の頂部121−13aとを、相互に重なるように位置決めする。
すると、前記突出部101−9は、図13(A)及び図14に示すように、その頂部101−9aが前記配線側電極75に突き当てられて、前記両電極71,75間が機械的に接合される。
ステップS125の接着剤硬化工程では、ステップS124のPZT組付け工程後のヘッドサスペンションに対し、加熱や紫外線照射等のエネルギーを所定時間与えることによって、前記導電性接着剤79の硬化を促進させる。この接着剤硬化工程を経て、前記フレキシャ(配線部材)15に対する圧電素子(PZT)40の組付けが完了する。
[第3のヘッドサスペンション製造方法の効果]
第3のヘッドサスペンション製造方法によれば、第1のヘッドサスペンション製造方法の効果と同様の効果を奏する。
すなわち、前記焼結治具113の凹部形状に従うドーム形状の膨出部103を前記圧電素子40に成形し、前記圧電素子40の膨出部103と、前記裏面側電極71の***部71aとによって、前記突出部101−9を構成し、該突出部101−9により前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合したため、前記突き当てと導電性接着剤79による接合作用が相まって、前記両電極71,75間の確実な導電性が得られると共に、前記圧電素子40への配線接続作業を遂行する際に、該圧電素子40に対して局所的な応力が加えられることはない。
従って、第3のヘッドサスペンション製造方法によれば、圧電素子への配線接続作業を、圧電素子の損壊を未然に防止すると共に高い信頼性を維持した状態で遂行することができる。
また、前記導電性接着剤79の硬化に伴うシュリンク(サイズ縮小)作用によって、前記両電極71,75間の接合強度のさらなる強化を期待することができる。
[実施例11に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例11に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図15(A)は、実施例11に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す断面図である。
実施例9に係るヘッドサスペンションと、実施例11に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、その重複した説明を省略する。
実施例9と実施例11との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例9に係るヘッドサスペンションでは、図13(A)に示すように、実施例9に係る圧電素子40の側に、前記貫通孔73から前記配線側電極(他方側の電極)75を臨む突出部101−9が設けられている。この突出部101−9は、前記圧電素子40の膨出部103と、前記裏面側電極71の***部71aとによって構成されている。
これに対し、実施例11に係るヘッドサスペンションでは、図15(A)に示すように、実施例11に係る突出部101−11は、前記圧電素子40の裏面側電極(素子側電極)71のうち、前記配線側電極75と対向する位置の電極素材を増肉することによって形成されている点が、実施例9とは大きく相違している。
具体的には、前記圧電素子40の裏面側電極形成面51は平坦であり、膨出部は形成されていない。この裏面側電極形成面51に積層させて、前記配線側電極75と対向する位置の電極素材を増肉したドーム形状の増肉部75bが形成されている。この増肉部75bは、例えば、電極素材を該当部位に厚塗り若しくは繰り返し重ねて塗布するか、又は該当部位に対して電極素材の蒸着を繰り返し行う等によって形成することができる。
従って、前記圧電素子40の裏面側電極71のうち、前記配線側電極75と対向する位置に増肉部71bを形成することによって、前記突出部101−11が構成されている。
実施例11に係るフレキシャ(配線部材)15のうち前記圧電素子40の側には、前記貫通孔73の周囲に存する前記導電性基材層15aを略リング形状に孤立させてなる液止め部材85−11が設けられている。この液止め部材85−11の製法及び機能等は、実施例3と同様である。
本実施例11では、前記配線側電極75が、本発明の“他方側の電極”に相当する。前記配線側電極75は、平坦に形成されて突出部を有していない。
前記突出部101−11は、図15(A)に示すように、その頂部101−11aが前記配線側電極75に突き当てられている。前記頂部101−11aの周囲には、導電性接着剤79が設けられている。
要するに、本実施例11に係る圧電アクチュエータの配線接続構造では、図15(A)に示すように、前記突出部101−11により前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
[実施例11の効果]
実施例11に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例9の効果に加えて、下記の効果を奏する。
すなわち、実施例11に係るヘッドサスペンションでは、第3のヘッドサスペンション製造方法に係る圧電素子成形工程(ステップS122)に代えて、前記裏面側電極71に対して部分的に増肉部71bを形成する工程を経て、所要の突出部101−11を形成することができる。このため、焼結治具を要することなく所要の突出部101−11を形成可能である点で、製造工程の簡素化を実現することができる。
[実施例12に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例12に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図15(B)は、実施例12に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す断面図である。
実施例11に係るヘッドサスペンションと、実施例12に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、その重複した説明を省略する。
実施例11と実施例12との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例11に係るヘッドサスペンションでは、図15(A)に示すように、実施例11に係る配線側電極75は、平坦に形成されて突出部を有していない。この平坦な配線側電極75に、前記突出部101−11が突き当てられている。
これに対し、実施例12に係るヘッドサスペンションでは、図15(B)に示すように、実施例12に係る配線側電極75は、ドーム形状の突出部77−12を有している。この配線側電極75の側の突出部77−12に、実施例12に係る圧電素子40の側の突出部101−12が突き当てられている点が、実施例11とは大きく相違している。
すなわち、実施例12に係る配線接続構造では、図15(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−12は、背面側から前記裏面側電極(他方側の電極)71を臨むのぞき孔81を頂部77−12aに有する。この頂部77−12aの周辺部位には、前記圧電素子40の側の突出部101−12を受ける逆ドーム形状の受け部77−12a1が形成されている。
一方、実施例12に係る圧電素子40の側の突出部101−12は、該圧電素子40の裏面側電極71の素材が部分的に増肉された増肉部71bによって構成されている。
実施例12に係るフレキシャ(配線部材)15のうち前記圧電素子40の側には、前記貫通孔73の周囲に存する前記導電性基材層15aを略リング形状に孤立させてなる液止め部材85−12が設けられている。この液止め部材85−12の製法及び機能等は、実施例3と同様である。
本実施例12では、前記裏面側電極71及び前記配線側電極75の両者が、本発明の“他方側の電極”に相当する。
要するに、実施例12では、図15(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−12に設けた受け部77−12a1及び前記裏面側電極71の側の突出部101−12間を係合させて、前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
前記配線側電極75の側の突出部77−12に設けられたのぞき孔81には、前記両電極71,75同士が突き当てられた状態で、前記導電性接着剤79が埋め込まれる。これにより、前記両電極71,75間が接合されている。
なお、実施例12に係る導電性接着剤79は、コロージョン防止用の保護被膜83を有する。これにより、前記導電性接着剤79を、酸化損傷から保護可能に構成されている。
[実施例12の効果]
実施例12に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例10,11の効果に加えて、下記の効果を奏する。
すなわち、実施例12に係るヘッドサスペンションでは、前記配線側電極75の側の突出部77−12に設けた受け部77−12a1及び前記裏面側電極71の側の突出部101−12間を係合させて、前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合する構成を採用したため、前記係合部位の接触面積を増大させて、当該両電極71,75間の接触抵抗を大幅に低減することができる。
従って、実施例12に係るヘッドサスペンションによれば、前記両電極71,75間の導通接続関係を確実にして、きわめて信頼性の高い圧電素子への配線接続を実現することができる。
[実施例13に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例13に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図16(A)は、実施例13に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す断面図である。
実施例12に係るヘッドサスペンションと、実施例13に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、その重複した説明を省略する。
実施例12と実施例13との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例12に係るヘッドサスペンションでは、図15(B)に示すように、実施例12に係る配線側電極75は、ドーム形状の突出部77−12を有している。この突出部77−12の頂部77−12aには、実施例12に係る圧電素子40の側の突出部101−12を受ける逆ドーム形状の受け部77−12a1が設けられている。この配線側電極75の側の突出部77−12に設けた受け部77−12a1に、実施例12に係る圧電素子40の側の突出部101−12が突き当てられて係合している。
これに対し、実施例13に係るヘッドサスペンションでは、図16(A)に示すように、実施例13に係る配線側電極75は、ドーム形状の突出部77−13を有している。この配線側電極75の側の突出部77−13に、実施例13に係る圧電素子40の側の突出部101−13が突き当てられている。この突出部101−13の頂部101−13aに、前記配線側電極75の側の突出部77−13を受ける逆ドーム形状の受け部101−13a1が設けられている。そして、前記圧電素子40の側の突出部101−13に設けた受け部101−13a1に、前記配線側電極75の側の突出部77−13が突き当てられて係合している点が、実施例12とは大きく相違している。
すなわち、実施例13に係る配線接続構造では、図16(A)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−13は、背面側から前記裏面側電極(他方側の電極)71を臨むのぞき孔81を頂部77−13aに有する。
一方、実施例13に係る圧電素子40の側の突出部101−13は、該圧電素子40の裏面側電極71の素材が部分的に増肉された増肉部71bによって構成されている。この増肉部71bよりなる突出部101−13には、前記配線側電極75の側の突出部77−13を受ける逆ドーム形状の受け部101−13a1が設けられている。この受け部101−13a1は、前記増肉部71bのうち該当部位の電極素材を減肉することによって形成されている。
実施例13に係るフレキシャ(配線部材)15のうち前記圧電素子40の側には、前記貫通孔73の周囲に存する前記導電性基材層15aを略リング形状に孤立させてなる液止め部材85−13が設けられている。この液止め部材85−13の製法及び機能等は、実施例3と同様である。
本実施例13では、前記裏面側電極71及び前記配線側電極75の両者が、本発明の“他方側の電極”に相当する。
要するに、実施例13では、図16(A)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−13及び前記裏面側電極71の側の突出部101−13に設けた受け部101−13a1間を係合させて、前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
前記配線側電極75の側の突出部77−13に設けられたのぞき孔81には、前記両電極71,75同士が突き当てられた状態で、前記導電性接着剤79が埋め込まれる。これにより、前記両電極71,75間が接合されている。
なお、実施例13に係る導電性接着剤79は、コロージョン防止用の保護被膜83を有する。これにより、前記導電性接着剤79を、酸化損傷から保護可能に構成されている。
[実施例13の効果]
実施例13に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例12と同様の効果を奏する。
すなわち、実施例13に係るヘッドサスペンションでは、前記配線側電極75の側の突出部77−13及び前記裏面側電極71の側の突出部101−13に設けた受け部101−13a1間を係合させて、前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合する構成を採用したため、前記係合部位の接触面積を増大させて、当該両電極71,75間の接触抵抗を大幅に低減することができる。
従って、実施例13に係るヘッドサスペンションによれば、前記両電極71,75間の導通接続関係を確実にして、きわめて信頼性の高い圧電素子への配線接続を実現することができる。
[実施例14に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例14に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図16(B)は、実施例14に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す断面図である。
実施例13に係るヘッドサスペンションと、実施例14に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、その重複した説明を省略する。
実施例13と実施例14との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例13に係るヘッドサスペンションでは、図16(A)に示すように、実施例13に係る配線側電極75は、ドーム形状の突出部77−13を有している。この配線側電極75の側の突出部77−13に、実施例13に係る圧電素子40の側の突出部101−13が突き当てられている。この突出部101−13の頂部101−13aには、前記配線側電極75の側の突出部77−13を受ける逆ドーム形状の受け部101−13a1が設けられている。そして、前記圧電素子40の側の突出部101−13に設けた受け部101−13a1に、前記配線側電極75の側の突出部77−13が突き当てられて係合している。
これに対し、実施例14に係る配線側電極75は、ドーム形状の突出部77−14を有している。この突出部77−14が突き当たる圧電素子40の側には、前記配線側電極75の側の突出部77−14を受ける逆ドーム形状の受け部121−14が設けられている。そして、この圧電素子40の側の受け部121−14に、前記配線側電極75の側の突出部77−14が突き当てられて係合している点が、実施例13とは大きく相違している。
すなわち、実施例14に係る配線接続構造では、図16(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−14は、背面側から前記裏面側電極(他方側の電極)71を臨むのぞき孔81を頂部77−14aに有する。
一方、実施例13に係る圧電素子40は、前記配線側電極75の側の突出部77−14を受ける逆ドーム形状の窪み部119を有する。この圧電素子40の窪み部119は、次述する圧電素子成形工程を経て、前記圧電素子40に成形される。
前記裏面側電極71は、前記圧電素子40の裏面側を均一の厚みで覆うように設けられている。このため、前記裏面側電極71は、外観上、前記圧電素子40の裏面側に成形される窪み部119の逆ドーム形状に沿って陥没する陥没部71cを有する。
従って、前記圧電素子40の窪み部119と、前記裏面側電極71の陥没部71cとによって、前記受け部121−14が構成されている。
前記配線側電極75の側の突出部77−14の頂部77−14aと、前記圧電素子40の側の受け部121−14の頂部121−14aとは、相互に重なるように位置決めされている。
実施例14に係るフレキシャ(配線部材)15のうち前記圧電素子40の側には、前記貫通孔73の周囲に存する前記導電性基材層15aを略リング形状に孤立させてなる液止め部材85−14が設けられている。この液止め部材85−14の製法及び機能等は、実施例3と同様である。
本実施例14では、前記裏面側電極71が、本発明の“他方側の電極”に相当する。
要するに、実施例14では、図16(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−14及び前記圧電素子40の側の受け部121−14間を係合させて、前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
前記配線側電極75の側の突出部77−14に設けられたのぞき孔81には、前記両電極71,75同士が突き当てられた状態で、前記導電性接着剤79が埋め込まれる。これにより、前記両電極71,75間が接合されている。
なお、実施例14に係る導電性接着剤79は、コロージョン防止用の保護被膜83を有する。これにより、前記導電性接着剤79を、酸化損傷から保護可能に構成されている。
[実施例14の効果]
実施例14に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例12又は13と同様の効果を奏する。
すなわち、実施例14に係るヘッドサスペンションでは、前記配線側電極75の側の突出部77−104及び前記圧電素子4の側の受け部121−14間を係合させて、前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合する構成を採用したため、前記係合部位の接触面積を増大させて、当該両電極71,75間の接触抵抗を大幅に低減することができる。
従って、実施例14に係るヘッドサスペンションによれば、前記両電極71,75間の導通接続関係を確実にして、きわめて信頼性の高い圧電素子への配線接続を実現することができる。
[第4のヘッドサスペンション製造方法]
次に、第4のヘッドサスペンション製造方法について、実施例14に係るヘッドサスペンションの製造例をあげて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図17は、実施例14に係るヘッドサスペンションの製造工程を、圧電素子と配線部材の関係を示す要部断面図と対比して示す説明図である。
第3のヘッドサスペンション製造方法と、第4のヘッドサスペンション製造方法とは、各工程の進行順序を除いて基本的な製造工程がほぼ共通している。このため、共通する個別の各工程については、重複した説明を省略する場合がある。両者間の相違点に注目して説明を進める。
第3のヘッドサスペンション製造方法と、第4のヘッドサスペンション製造方法との相違点は次の通りである。
すなわち、第3のヘッドサスペンション製造方法では、図14に示すように、圧電素子の外形形状を成形する圧電素子成形工程(ステップS122)で用いられる焼結冶具113は、組み付け時に前記配線側電極75と対応する位置にドーム形状の凹部111を有する。この焼結治具113を用いて圧電セラミック素子を焼結成形すると、前記焼結治具113の凹部形状に従うドーム形状の膨出部103を前記圧電素子40に成形することができる。
これに対し、第4のヘッドサスペンション製造方法では、図17に示すように、圧電素子の外形形状を成形する圧電素子成形工程(ステップS132)で用いられる焼結冶具133は、組み付け時に前記配線側電極75と対応する位置にドーム形状の凸部131を有する。この焼結治具133を用いて圧電セラミック素子を焼結成形すると、前記焼結治具133の凸部形状に従う逆ドーム形状の窪み部119を前記圧電素子40に成形することができる。
すなわち、第4のヘッドサスペンション製造方法では、圧電素子成形工程(ステップS132)で用いられる焼結冶具133の凹凸形状が異なる点が、第3のヘッドサスペンション製造方法とは大きく相違している。
具体的には、ステップS131の貫通孔形成工程では、図17に示すように、前記導電性基材層15a及び電気絶縁層15bを貫通する貫通孔73を形成する。これと同時に、前記配線側電極75のうち、前記頂部77−14aとなる部位に、前記配線層15cを貫通するのぞき孔81を形成する。
前記貫通孔形成工程において、前記導電性基材層15a及び電気絶縁層15bの各貫通孔73は、第1のヘッドサスペンション製造方法と同様の手段によって形成することができる。また、前記配線層15cを貫通するのぞき孔81は、第2のヘッドサスペンション製造方法と同様の手段によって形成することができる。
ステップS132の圧電素子成形工程では、図17に示すように、組み付け時に前記配線側電極75と対応する位置にドーム形状の凸部131を有する焼結治具133を用いて圧電セラミック素子を焼結成形する。これにより、前記焼結治具133の凸部形状に従う逆ドーム形状の窪み部119を前記圧電素子40に成形することができる。
前記焼結治具133は、下側治具133aと上側治具133bとを最中合わせにして構成される。前記凸部131は、前記上側治具133bの内側壁に形成されている。
前記焼結成形後の圧電素子40には、前記窪み部119を含む裏面側の裏面側電極形成面51を均一の厚みで覆うように裏面側電極71が形成される。また、図2に示すように、前記圧電素子40の表面側電極形成面50にも電極70が形成される。これにより、圧電アクチュエータ12が構成される。前記各電極70,71の形成は、例えば蒸着やスパッタリング等の適宜の手段を採用すればよい。
ステップS133のPZT組付け工程では、図17に示すように、前記圧電素子(PZT)40を前記フレキシャ(配線部材)15に対して組み付ける。この組付けにあたり、前記配線側電極75の側の突出部77−14の頂部77−14aと、前記圧電素子40の側の受け部121−14の頂部121−14aとを、相互に重なるように位置決めする。
すると、前記配線側電極75の側の突出部77−14は、図16(B)及び図17に示すように、前記圧電素子40の側の受け部121−14に突き当てられて、前記両電極71,75間が機械的に接合される。
ステップS134の導電性接着剤塗布工程では、図17に示すように、前記PZT組付け工程後に、前記突出部77−14の頂部77−14aに設けられた前記のぞき孔81を埋めるように前記導電性接着剤79を塗布する。
ステップS125の接着剤硬化工程では、ステップS134の導電性接着剤塗布工程後のヘッドサスペンションに対し、加熱や紫外線照射等のエネルギーを所定時間与えることによって、前記導電性接着剤79の硬化を促進させる。この接着剤硬化工程を経て、前記フレキシャ(配線部材)15に対する圧電素子(PZT)40の組付けが完了する。
[第4のヘッドサスペンション製造方法の効果]
第4のヘッドサスペンション製造方法によれば、下記の効果を奏する。
すなわち、前記焼結治具133の凸部形状に従うドーム形状の窪み部119を前記圧電素子40に成形し、前記圧電素子40の窪み部119と、前記裏面側電極71の陥没部71cとによって、前記配線側電極75の側の突出部77−14を受ける受け部121−14を構成した。そして、前記配線側電極75の側の突出部77−14及び前記圧電素子40の側の受け部121−14間を係合させて、前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合した。このため、前記係合による突き当てと導電性接着剤79による接合作用が相まって、前記両電極71,75間のきわめて確実な導電性が得られる。また、前記圧電素子40への配線接続作業を遂行する際に、該圧電素子40に対して局所的な応力が加えられることはない。
従って、第4のヘッドサスペンション製造方法によれば、圧電素子への配線接続作業を、圧電素子の損壊を未然に防止すると共に高い信頼性を維持した状態で遂行することができる。
また、前記導電性接着剤79の硬化に伴うシュリンク(サイズ縮小)作用によって、前記両電極71,75間の接合強度のさらなる強化を期待することができる。
しかも、前記配線側電極75の側の突出部77−14及び前記圧電素子40の側の受け部121−14間を係合させて、前記両電極71,75同士を突き当てて導電性接着剤79により接合したため、前記係合部位の接触面積を増大させて、当該両電極71,75間の接触抵抗を大幅に低減することができる。
従って、第4のヘッドサスペンション製造方法によれば、前記両電極71,75間の導通接続関係を確実にして、きわめて信頼性の高い圧電素子への配線接続を実現することができる。
そして、前記圧電素子40の側に、前記配線側電極75の側の突出部77−14を受ける受け部121−14を設けたため、前記両電極71,75間の隙間寸法が小さい場合であっても、当該両電極71,75間の配線接続を的確に具現化することができる。
[実施例15に係るヘッドサスペンション]
次に、実施例15に係るヘッドサスペンションについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図18は、実施例15に係るヘッドサスペンションの説明図であり、図18(A)は、実施例15に係る配線部材を圧電素子の側から視た斜視図、図18(B)は、実施例15に係る圧電素子の裏面側電極と配線側電極との位置関係を示す図18(A)のXVIIIB−XVIIIB線に沿う矢視断面図である。
実施例4に係るヘッドサスペンションと、実施例15に係るヘッドサスペンションとは、圧電アクチュエータ12の配線接続構造を除いて基本的な構成要素がほぼ共通している。このため、共通する部材間には原則として共通の符号を付し、前述と同様に重複した説明を省略して、両実施例4,15間の相違点に注目して説明する。
実施例4と実施例15との相違点は次の通りである。
すなわち、実施例4に係るヘッドサスペンションでは、図6(A),(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−4は、その頂部77−4aにのぞき孔81を有してるが、その裾部にはのぞき孔を有していない。
これに対し、実施例15に係るヘッドサスペンションでは、図18(A),(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−15は、背面側から前記裏面側電極(他方側の電極)71を臨むのぞき孔81を頂部77−15aに有すると共に、その裾部に等間隔を置いて4つの裾部のぞき孔151を有している点が、実施例4とは大きく相違している。
ただし、前記裾部のぞき孔151はランダムな間隔を置いて設けてもよい。また、前記裾部のぞき孔151の数は適宜変更可能である。
本実施例15に係る導電性接着剤79は、実施例4と同様に、コロージョン防止用の保護被膜83を有する。ただし、実施例15では、前記裾部のぞき孔151を通して、前記裏面側電極71と前記配線側電極75との間に、保護被膜83を形成するためのコーティング液剤を塗布することによって、前記両電極71,75間の導電性接着剤79が有する露出面までもがコロージョン防止用の保護被膜83を有する点で、実施例4とは大きく相違している。
これにより、前記導電性接着剤79は、その露出面のほぼ全面に渡ってコロージョン防止用の保護被膜83を有し、酸化損傷から保護可能に構成されている。
なお、実施例4以外にも、前述した実施例2,6,8に係る各突出部77−2,6,8において、背面側から前記裏面側電極(他方側の電極)71を臨む頂部のぞき孔81に加えて、その裾部に裾部のぞき孔151を設けてもよい。
本実施例15では、前記裏面側電極71が、本発明の“他方側の電極”に相当する。
また、本実施例15では、図18(A),(B)に示すように、前記配線側電極75の側の突出部77−15により前記両電極71,75同士を突き当てて前記導電性接着剤79により接合することによって、前記両電極71,75間を配線接続する構成を採用している。
[実施例15の効果]
実施例15に係るヘッドサスペンションによれば、前述した実施例4の効果に加えて、以下の効果を奏する。
前記のぞき孔81を埋めるように前記導電性接着剤79を塗布した後、前記保護被膜形成用のコーティング液剤を、前記導電性接着剤79の露出面に直接塗布するか、又は前記両電極71,75間の導電性接着剤79の露出面に前記裾部のぞき孔151を通して塗布することによって、前記導電性接着剤79が有する露出面のほぼ全面に渡ってコロージョン防止用の保護被膜83を形成することができる。
従って、実施例15によれば、導電性接着剤79の酸化損傷を高水準で予防することができ、信頼性の高い配線接続構造を具現化することができる。
[その他]
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは技術思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うヘッドサスペンション及びヘッドサスペンションの製造方法もまた、本発明における技術的範囲の射程に包含されるものである。
例えば、本発明の実施例中、突出部又は受け部等の形状としてドーム形状を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば円錐形状や円柱形状などの、あらゆる形状の突出部又は受け部等であっても、本発明に適宜適用することができる。
また、本発明の実施例中、液止め部材の形状としてリング形状を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、中央部分が開口された方形状や六角形状などの、あらゆる外形形状の液止め部材であっても、本発明に適宜適用することができる。
最後に、本発明の実施例中、ベースプレート11aと、圧電アクチュエータ12と、ロードビーム13aと、受け部材19aとなどを備えたヘッドサスペンションを例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明に係る配線接続構造は、圧電素子が実装されたヘッドサスペンションであれば、いかなるものでも適宜適用することができる。