JP5330829B2 - 関節リウマチ患者の治療予後予測方法 - Google Patents

関節リウマチ患者の治療予後予測方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5330829B2
JP5330829B2 JP2008527799A JP2008527799A JP5330829B2 JP 5330829 B2 JP5330829 B2 JP 5330829B2 JP 2008527799 A JP2008527799 A JP 2008527799A JP 2008527799 A JP2008527799 A JP 2008527799A JP 5330829 B2 JP5330829 B2 JP 5330829B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antibody
treatment
rheumatoid arthritis
piianp
prognosis
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2008527799A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2008016134A1 (ja
Inventor
憲弘 西本
淳 橋本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP2008527799A priority Critical patent/JP5330829B2/ja
Publication of JPWO2008016134A1 publication Critical patent/JPWO2008016134A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5330829B2 publication Critical patent/JP5330829B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
    • G01N33/6887Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids from muscle, cartilage or connective tissue
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P19/00Drugs for skeletal disorders
    • A61P19/02Drugs for skeletal disorders for joint disorders, e.g. arthritis, arthrosis
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2333/00Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature
    • G01N2333/435Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature from animals; from humans
    • G01N2333/78Connective tissue peptides, e.g. collagen, elastin, laminin, fibronectin, vitronectin, cold insoluble globulin [CIG]
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2800/00Detection or diagnosis of diseases
    • G01N2800/10Musculoskeletal or connective tissue disorders
    • G01N2800/101Diffuse connective tissue disease, e.g. Sjögren, Wegener's granulomatosis
    • G01N2800/102Arthritis; Rheumatoid arthritis, i.e. inflammation of peripheral joints

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Physical Education & Sports Medicine (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Rheumatology (AREA)
  • Orthopedic Medicine & Surgery (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Description

本発明は、関節リウマチ治療を行った被験者における、PIIANP量を指標とした、関節リウマチの治療予後を予測するための方法に関する。
軟骨は、軟骨間質を有し、軟骨細胞を入れる空隙を有している。
軟骨の生理学的特徴は、細胞間物質(matrix)の特徴であり、コラーゲン、エラスチン、酸性粘液多糖体を含んでいる。コラーゲンとエラスチンは柔軟な物質であり、軟骨の細胞間物質の硬さは結合したプロテオグリカンによるものである。軟骨細胞は主にコラーゲン (type IIコラーゲン)を産生している。
TypeIIコラーゲンは、それぞれの末端にN-およびC-プロペプチド(それぞれPIINP、PIICP)を含むプロコラーゲン分子として合成される。RNAスプライシングにより産生されるプロコラーゲンのうち、TypeIIAプロコラーゲンはPIINP中のエキソン2によってコードされるシステインリッチな球状ドメインを含む分子である。
関節リウマチで慢性をとる関節リウマチは、関節内において滑膜組織などの結合組織の異常な増殖がみられる全身性の慢性疾患である。関節リウマチで慢性をとる関節リウマチ患者の関節では、滑膜細胞の著名な増殖、滑膜細胞の異常な増殖による多層構造の形成(pannus形成)、滑膜細胞の軟骨組織や骨組織への浸潤、滑膜細胞への血管新生およびリンパ球やマクロファージといった炎症細胞の浸潤などが認められる。関節リウマチで慢性をとる関節リウマチの発症の機序として、各種サイトカインや成長因子の関与が報告されており、関節リウマチで慢性をとる関節リウマチ患者の滑膜および滑膜中では、IL-1、IL-8、TNF-α、TGF-β、FGF、PDGF等のサイトカインまたは成長因子が検出される。特にIL-1、TNFαは有力な滑膜増殖因子であると考えられており(非特許文献1−3)、またIL-1やTNFの刺激により滑膜細胞がIL-6を産生することが示唆されている(非特許文献4)。さらに、抗IL-6抗体が関節リウマチ治療剤として有用であることが報告されている(特許文献1)。また、抗IL-6受容体抗体が関節リウマチ治療剤として有用であることも報告されている(特許文献2)。
これまでに、TypeIIコラーゲン合成のマーカーとして、ベースライン(治療前)でOA(変形性関節症)の患者のプロコラーゲン タイプIIA N-プロペプチド(以下PIIANPという)を測定したことが報告されている(非特許文献5)。
さらに、膝のOA及びRA患者では、血清におけるPIIANPレベルが減少していることが報告されている(非特許文献6、7)。
しかしながら、ベースラインでの健常人コントロール群との比較において、患者群の方がPIIANPレベルが低いことが記載されているのみで、RAの治療において実際にその経時的推移を調べておらず、薬剤の治療効果をモニターする指標としてPIIANPを使用する場合には、その値が減少した方が治療効果が上がっているとの推論は導き出すことは出来ない。さらに、PIIANPについてはOAやRAの早期段階のマーカーとして使用し得るかどうかには更なる研究が必要であると指摘されていた(非特許文献8)。
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
WO96/11020 特開平8-208514 Thornton et al., Clin. Exp. Immunol. 86: 79-86,1991 Lafyatis et al., J. Immunol. 143: 1142-1148, 1989 Gitter et al., Immunology 66: 196-200, 1989 Ito et al., Arthritis Rheum. 35: 1197-1201, 1992 Patrick G. et al., ARTHRITIS & RHEUMATISM 46(10), 2002, pp 2613-2624 Rousseau J. C. et al., OsteoArthritis and Cartilage (2004) 12, 440-447 Rousseau J. C. et al., ARTHRITIS & RHEUMATISM 43(9), 2000 K.A. Elsaid, C.O. Chichester, Clinica Chimica Acta 365 (2006) 68-77
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、関節リウマチ治療を行った被験者における、PIIANP量を指標とした関節リウマチの治療予後を予測するための方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意研究を行った。
MRA(Tocilizumab:抗IL-6受容体抗体、WO92/19759)の関節リウマチ(以下RAともいう)に対する第III相無作為割付群間比較試験の試験結果を解析したところ、軟骨代謝マーカー(より具体的にはタイプIIコラーゲン合成マーカー)として知られるPIIANPが、治療開始から12週目において治療前と比較して減少しており、このような患者は関節破壊の進行が抑制されていること、具体的には、PIIANP量の12週変化と関節破壊の指標であるJoint space narrowing (JSN)の52週変化とが相関していることが見出された。
これまで、RA患者は健常人と比較してPIIANP量が低いという報告がなされていることから、技術水準に照らせば、治療が有効で関節破壊の進行が抑制される場合にはPIIANP量は上昇するであろうと予測されるべきところ、今回の試験解析結果からは、むしろ治療開始早期のPIIANP量の低下が認められると予後がよいという、技術水準から考えれば全く逆の、知見が得られた。
このことから、RAの治療においてPIIANP量を測定し、その治療早期における経時変化を調べることにより、当該治療によるRA患者の予後を予測することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、MMP-3の12週変化は、JSNの及びerosionの52週変化と相関している一方で、2つの生化学マーカーが互いに独立した変化を示していることから、PIIANP量の測定によるJSNの予後予測と、MMP-3量の測定によるJSN及びerosionの予後予測とを組み合わせることにより、より的確な関節破壊予後の予測も可能である。
本発明は、より具体的には以下の〔1〕〜〔12〕を提供するものである。
〔1〕 以下の工程(a)〜(c)の工程を含む、関節リウマチ治療を行った被験者における、関節リウマチの治療予後を予測するための方法。
(a)被験者から試料を採取する工程
(b)採取した試料中のプロコラーゲン タイプIIA N-プロペプチド(PIIANP)量を測定する工程
(c)PIIANP量を指標として、被験者における関節リウマチの治療予後を予測する工程
〔2〕 〔1〕記載の工程(c)において、治療開始前と比較してPIIANP量が減少した場合に、当該治療による予後は良好であると予測する、〔1〕に記載の方法。
〔3〕 関節リウマチ治療の開始後早期において、該治療開始前と比較してPIIANP量が減少した場合に、当該治療による予後は良好であると予測する、〔2〕に記載の方法。
〔4〕 関節リウマチの治療の予後が良好であるか否かが、関節リウマチにおける関節破壊の進行が抑制されるか否かにより判断される、〔2〕または〔3〕に記載の方法。
〔5〕 経時的に被験者から試料を採取し、PIIANP量を測定することを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
〔6〕 関節リウマチが早期関節リウマチである〔1〕〜〔5〕に記載の方法。
〔7〕 被験者から採取された試料が、血漿、血清、尿、または関節液である〔1〕に記載の方法。
〔8〕 関節リウマチ治療が、抗リウマチ剤の投与による治療である、〔1〕に記載の方法。
〔9〕 関節リウマチ治療が、IL-1阻害剤、IL-6阻害剤、TNF-α阻害剤、IL-15阻害剤、またはIL-17阻害剤の投与による治療である、〔1〕に記載の方法。
〔10〕 関節リウマチ治療が、IL-1、IL-6、TNF-α、IL-15またはIL-17のシグナル伝達を阻害する抗体の投与による治療である、〔1〕に記載の方法。
〔11〕 関節リウマチ治療が、抗IL-6抗体、抗IL-6受容体抗体、抗TNF-α抗体、抗CD20抗体、メソトレキセートまたはCTLA4-IgG融合タンパク質の投与による治療である、〔1〕に記載の方法。
〔12〕 PIIANP量を測定するための試薬を含む、関節リウマチ治療における治療予後を予測するためのキット。
〔発明の実施の形態〕
本発明者らは、RAの治療においてPIIANP量を測定し、その治療早期における経時変化を調べることにより、当該治療によるRA患者の予後を予測することが可能であることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
本発明は、関節リウマチ治療を行った被験者における、関節リウマチの治療予後を予測するための方法に関する。
本発明において関節リウマチ治療としては、抗リウマチ剤の投与による治療、抗サイトカイン療法、悪性リンパ腫に効果のあるCD20に対する薬剤、抗生剤、免疫抑制薬、高脂血症治療薬、多発性骨髄腫治療薬などの投与、または造血幹細胞移植による治療等が挙げられる。本発明における、抗リウマチ剤には関節リウマチの治療に用いられるあらゆる薬剤が含まれるが、好ましくは、例えば、疾患修飾性抗リウマチ剤(DMARDs)、IL-1阻害剤(IL-1のシグナル伝達を阻害する薬剤が含まれ、例えば、かかる作用を有する低分子化合物、anakinraなどを含む)、STAT-3阻害剤、IL-6ワクチン、IL-6融合タンパク、IL-6阻害剤(IL-6のシグナル伝達を阻害する薬剤が含まれ、例えば、かかる作用を有する低分子化合物、抗IL-6受容体抗体(トシリズマブなど)抗IL-6抗体などを含む)、TNF-α阻害剤(TNF-αのシグナル伝達を阻害する薬剤が含まれ、例えば、かかる作用を有する低分子化合物、キメラ型抗TNF-αモノクローナル抗体であるインフリキシマブ、TNFR2-IgGFc融合タンパクであるエタネルセプト、ヒト抗TNF-αモノクローナル抗体であるアダリムマブ、その他certolizumab pegol、Golimumabなどを含む)、IL-15阻害剤(IL-15のシグナル伝達を阻害する薬剤が含まれ、例えば、かかる作用を有する低分子化合物、AMG714などを含む)、IL-17阻害剤(IL-17のシグナル伝達を阻害する薬剤が含まれ、例えば、かかる作用を有する低分子化合物、受容体抗体、リガンド抗体なども含む)、抗CD20抗体(リツキシマブなど)、2-ペニシルアミン誘導体、Roxithromycin、T細胞副刺激モジュレーター(CTLA4-Ig融合タンパクであるアバタセプトなど)、AP-1阻害剤、リポポリサッカライド結合タンパク(LBPs)、補体阻害剤(Eculizumabなど)、プロテイン(p38)キナーゼ阻害剤、リピッドAアナログ(E-5531など)、メラニンアナログなどが具体的には挙げられる。本発明の関節リウマチ治療剤としては、特に好ましくは抗サイトカイン療法が挙げられ、具体的にはIL-1阻害剤、IL-6阻害剤、TNF-α阻害剤、IL-15阻害剤、またはIL-17阻害剤の投与による治療が挙げられる。また、メトトレキセート、抗CD20抗体、CTLA4-Ig融合タンパクの投与による治療も好ましい。
本発明において関節リウマチには、早期関節リウマチが含まれる。現在、アメリカリウマチ学会(ACR)の分類基準が、関節リウマチの診断法として世界中で一般的に使われている。しかし関節リウマチが発症してから6週間未満の場合、この基準に基づく疾患の確定診断は不可能であり、関節リウマチを早期に診断するために、発症1年以内の早期関節リウマチの診断を目的に作成された、日本リウマチ学会の早期診断基準が使用されている。
本発明において、「関節リウマチの治療予後」には、好適には関節破壊予後のことを示すが、関節破壊予後は、機能予後、生命予後、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)、疼痛予後に深く関与していることから、本発明によれば、これら列挙する全ての治療予後の予測に有用である。
本発明において「治療予後を予測する」とは、治療により関節リウマチの予後が改善されるか否かを予測することをいう。具体的には、治療によって関節リウマチの機能予後、生命予後、QOL、疼痛予後及び関節破壊予後などが良好であるか否かを予測すること、好ましくは関節破壊予後が良好であるか否かを予測することが挙げられる。
また、本発明において、「治療予後を予測する」とは、「治療によりリウマチの予後が改善されるか否かを検査する」と言い換えることもできる。被験者がヒトである場合、疾患の診断は、通常、医師(医師の指示を受けた者も含む。以下同じ。)によって行われ、本発明によって得られる関節リウマチの治療予後に関するデータは、医師による診断に役立つものであるが、本発明の方法は、医師以外の者が、医師による診断に役立つデータを収集し、提示するものであってもよい。
さらに、本発明において、「治療予後を予測する」とは、「関節リウマチ治療開始から、患者治療計画における所定の期間の治療予後を示す」と言い換えることもできる。例えば、本願実施例では、治療後12週目の生化学マーカーの測定結果から、治療開始から約1年後(52週目)の治療予後の予測が可能であることが示される。
関節破壊の進行は、実施例に記載の方法で評価することができる。具体的には、X線評価(シャープスコア(Sharp score), van der Heijde modified Sharp method)の推移、軟骨代謝マーカーの推移、X線変化量と骨・軟骨関連代謝マーカーの変化量の相関、多重解析などにより関節破壊の進行が評価される。
本発明では、関節破壊予後が良好であるか否かの判定基準として、実施例に記載のシャープスコアによる評価を一つの目安としている。シャープスコア は、骨びらん点数評価基準(erosion score)(実施例、表2)および関節裂隙狭小化点数評価基準(joint-space narrowing score; JSN score)(実施例、表3)による合計点により算出される(実施例、表1)。シャープスコアが減少した場合には、関節リウマチにおける関節破壊の進行が抑制され、関節リウマチの治療の予後が良好であると判断される。
本発明の方法は、被験者から試料を採取する工程を含む。被験者から採取する試料は血漿、血清、尿、または関節液などが挙げられるがこれに限定されるものではない。好適には血漿、血清であり、さらに好適には血清が挙げられる。
又、本発明の被験者から試料を採取する工程は、被験者から採取された試料を提供する工程ともいう。
本発明の方法は、採取した試料中の軟骨代謝マーカーの量を測定する工程を含む。軟骨代謝マーカーの例としては、マトリックスメタプロテアーゼ3(MMP-3)およびPIIANPが挙げられる。MMP-3は、滑膜細胞、軟骨細胞などの細胞から産生され、他の細胞外基質蛋白分解酵素ファミリー(MMPs)を活性化することで細胞外コラーゲン繊維のリモデリングおよび軟骨コラーゲン破壊に関与すると考えられる。MMP-3は、滑膜の炎症状態を表していると考えられる。また、PIIANPは、タイプIIコラーゲンの合成過程で産生される、タイプIIAプロコラーゲンのN末端部分に相当するプロペプチドである(図1)。
本発明の軟骨代謝マーカーとして、最も好ましくはPIIANPが挙げられる。PIIANP量の測定は公知の方法により行うことができる。例えば、PIIANP量の測定は、ELISA法、例えば、米国特許5780240号公報、前述の非特許文献2及び、Methods in Molecular medicine, Vol.101 (Cartilage and Osteoarthritis, Vol. 2: Structure and In vivo Analysis), pp.25-38, 2004, edited by F. De Ceuninck et alなどに記載の方法、またはこれに準じた方法により測定することができる。
本発明の方法は、軟骨代謝マーカーを指標として、被験者における関節リウマチの治療予後を予測する工程を含む。本発明において、治療開始前と比較して軟骨代謝マーカー量が変化した場合に、当該治療による予後は良好であると予測することができる。軟骨代謝マーカーがPIIANPである場合には、治療開始前と比較してPIIANP量が減少した場合に、当該治療による予後は良好であると予測することができる。具体的には、例えば、血清中におけるPIIANP濃度の変化率(ベースラインを100とした場合の%変化)が、1〜90%、好ましくは5〜80%、より好ましくは10〜50%減少する場合において、治療予後が良好であると予測できる。
また、本発明においては、該治療開始前と比較した軟骨代謝マーカー量の変化は、関節リウマチ治療の開始後早期において起こることが好ましい。開始後早期とは、治療開始後52週以内をいい、好ましくは48、36、24、12週以内、より好ましくは12、6、1週以内をいう。
本発明の軟骨代謝マーカー量は、経時的に被験者から試料を採取し測定されることが好ましい。経時的に測定とは、時間的順序にしたがって測定されることをいい、例えば、治療開始から1、2日目、または1、6、12、24、36、48、52週目などに被験者から試料を採取し軟骨代謝マーカー量を測定する。
また、本発明によれば、PIIANP量の測定によるJSNの予後予測と、MMP-3量の測定によるJSN及びerosionの予後予測とを組み合わせることにより、より的確な関節破壊予後の予測が可能である。さらに、これらの測定にCRPなどの他のマーカーの測定を組み合わせてもよい。
本発明の関節リウマチ治療として、好ましくは、IL-1阻害剤、IL-6阻害剤、TNF-α阻害剤、またはIL-15阻害剤の投与による治療が挙げられる。
本発明の関節リウマチ治療に使用されるIL-1阻害剤、IL-6阻害剤、TNF-α阻害剤、IL-15阻害剤、またはIL-17阻害剤としては、それぞれIL-1、IL-6、TNF-α、IL-15またはIL-17のシグナル伝達を阻害する抗体が好ましい。IL-1、IL-6、TNF-α、IL-15、またはIL-17のシグナル伝達を阻害する抗体としては、例えば、抗ヒトIL-1抗体、抗ヒトIL-1受容体抗体、抗ヒトIL-6抗体、抗ヒトIL-6受容体抗体、抗ヒトTNF-α抗体、抗ヒトTNF-α受容体抗体、抗ヒトIL-15抗体、抗ヒトIL-15受容体抗体、抗ヒトIL-17抗体または抗ヒトIL-17受容体抗体が挙げられる。
本発明においてIL-1、IL-6、TNF-α、IL-15、またはIL-17のシグナル伝達を阻害する抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はヒトIL-1、IL-6、TNF-α、IL-15、IL-17またはこれらの受容体等に特異的に結合し、これらのサイトカインの機能を抑制する。
IL-1、IL-6、TNF-α、IL-15、またはIL-17のシグナル伝達を阻害する抗体は、該タンパク質と結合する限り特に制限はなく、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体、ヒト抗体等を適宜用いることができる。又、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体なども使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体等であり、マウス抗体の可変領域をコードするDNAをヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる。CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい。
また、ヒト抗体の取得方法も知られている。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を所望の抗原で免疫することで所望のヒト抗体を取得することができる。さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を有する適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。
本発明に使用する抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)、放射性物質、トキシン等の各種分子と結合したコンジュゲート抗体でもよい。このようなコンジュゲート抗体は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。本発明における「抗体」にはこれらのコンジュゲート抗体も包含される。
本発明における抗体としては、低分子化抗体も挙げることができる。低分子化抗体とは、全長抗体(whole antibody、例えばwhole IgG等)の一部分が欠損している抗体断片を含み、抗原への結合能を有していれば特に限定されない。本発明の抗体断片は、全長抗体の一部分であれば特に限定されないが、重鎖可変領域(VH)又は軽鎖可変領域(VL)を含んでいることが好ましく、特に好ましいのはVHとVLの両方を含む断片である。抗体断片の具体例としては、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv(シングルチェインFv)、などを挙げることができる。このような抗体断片を得るには、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンなどで処理し抗体断片を生成させるか、又は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させればよい。
本発明の関節リウマチ治療として最も好ましくは、IL-6阻害剤の投与による治療が挙げられる。
本発明のIL-6阻害剤としては、例えば抗IL-6抗体、抗IL-6受容体抗体、抗gp130抗体、IL-6改変体、可溶性IL-6受容体改変体あるいはIL-6又はIL-6受容体の部分ペプチドおよび、これらと同様の活性を示す低分子物質が挙げられるが、特に限定されるものではない。本発明のIL-6阻害剤としては、好ましくはIL-6受容体を認識する抗体を挙げることが出来る。
本発明における抗体の由来は特に限定されるものではないが、好ましくは哺乳動物由来であり、より好ましくはヒト由来の抗体を挙げることが出来る。
本発明で使用される抗IL-6抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗IL-6抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はIL-6と結合することにより、IL-6のIL-6受容体への結合を阻害してIL-6の生物学的活性の細胞内への伝達を遮断する。
このような抗体としては、MH166(Matsuda, T. et al., Eur. J. Immunol. (1988) 18, 951-956)やSK2抗体(Sato, K. et al., 第21回 日本免疫学会総会、学術記録(1991)21, 166)等が挙げられる。
抗IL-6抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、IL-6を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、抗IL-6抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトIL-6は、Eur. J. Biochem (1987) 168, 543-550 、J. Immunol.(1988)140, 1534-1541 、あるいはAgr. Biol. Chem.(1990)54, 2685-2688に開示されたIL-6遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
IL-6の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は、培養上清中から目的のIL-6蛋白質を公知の方法で精製し、この精製IL-6蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、IL-6蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
本発明で使用される抗IL-6受容体抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗IL-6受容体抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はIL-6受容体と結合することにより、IL-6のIL-6受容体への結合を阻害してIL-6の生物学的活性の細胞内への伝達を遮断する。
このような抗体としては、MR16-1抗体(Tamura, T. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90, 11924-11928)、PM-1抗体 (Hirata, Y. et al., J. Immunol. (1989) 143, 2900-2906)、AUK12-20抗体、AUK64-7抗体あるいはAUK146-15抗体(国際特許出願公開番号WO 92-19759)などが挙げられる。これらのうちで、ヒトIL-6受容体に対する好ましいモノクローナル抗体としてはPM-1抗体が例示され、またマウスIL-6受容体に対する好ましいモノクローナル抗体としてはMR16-1抗体が挙げられる。
抗IL-6受容体モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、IL-6受容体を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、抗IL-6受容体抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトIL-6受容体は、欧州特許出願公開番号EP 325474に、マウスIL-6受容体は日本特許出願公開番号特開平3-155795に開示されたIL-6受容体遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
IL-6受容体蛋白質は、細胞膜上に発現しているものと細胞膜より離脱しているもの(可溶性IL-6受容体)(Yasukawa, K. et al., J. Biochem. (1990) 108, 673-676)との二種類がある。可溶性IL-6受容体抗体は細胞膜に結合しているIL-6受容体の実質的に細胞外領域から構成されており、細胞膜貫通領域あるいは細胞膜貫通領域と細胞内領域が欠損している点で膜結合型IL-6受容体と異なっている。IL-6受容体蛋白質は、本発明で用いられる抗IL-6受容体抗体の作製の感作抗原として使用されうる限り、いずれのIL-6受容体を使用してもよい。
IL-6受容体の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は、培養上清中から目的のIL-6受容体蛋白質を公知の方法で精製し、この精製IL-6受容体蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、IL-6受容体を発現している細胞やIL-6受容体蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
本発明で使用される抗gp130抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗gp130抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はgp130と結合することにより、IL-6/IL-6受容体複合体のgp130への結合を阻害してIL-6の生物学的活性の細胞内への伝達を遮断する。
このような抗体としては、AM64抗体(特開平3-219894)、4B11抗体および2H4抗体(US 5571513)B-S12抗体およびB-P8抗体(特開平8-291199)などが挙げられる。
抗gp130モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、gp130を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナル抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるgp130は、欧州特許出願公開番号EP 411946に開示されたgp130遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
gp130の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は、培養上清中から目的のgp130蛋白質を公知の方法で精製し、この精製gp130受容体蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、gp130を発現している細胞やgp130蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は、皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline )や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4-21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞が取り出され、細胞融合に付される。細胞融合に付される好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞は、すでに、公知の種々の細胞株、例えば、P3X63Ag8.653(Kearney, J. F. et al. J. Immnol. (1979) 123, 1548-1550)、P3X63Ag8U.1 (Current Topics in Microbiology and Immunology (1978) 81, 1-7) 、NS-1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol.(1976) 6, 511-519 )、MPC-11(Margulies. D. H. et al., Cell (1976) 8, 405-415 )、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature (1978) 276, 269-270 )、FO(de St. Groth, S. F. et al., J. Immunol. Methods (1980) 35, 1-21 )、S194(Trowbridge, I. S. J. Exp. Med. (1978) 148, 313-323)、R210(Galfre, G. et al., Nature (1979) 277, 131-133 )等が適宜使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、たとえば、ミルシュタインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C. 、Methods Enzymol. (1981) 73, 3-46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG溶液、例えば、平均分子量1000〜6000程度のPEG溶液を通常、30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングが行われる。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原蛋白質又は抗原発現細胞で感作し、感作Bリンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、所望の抗原又は抗原発現細胞への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原又は抗原発現細胞を投与し、前述の方法に従い所望のヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 93/12227、WO 92/03918、WO 94/02602、WO 94/25585、WO 96/34096、WO 96/33735参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
例えば、抗IL-6受容体抗体産生ハイブリドーマの作製は、特開平3-139293に開示された方法により行うことができる。PM-1抗体産生ハイブリドーマをBALB/cマウスの腹腔内に注入して腹水を得、この腹水からPM-1抗体を精製する方法や、本ハイブリドーマを適当な培地、例えば、10%ウシ胎児血清、5%BM-Condimed H1(Boehringer Mannheim製)含有RPMI1640培地、ハイブリドーマSFM培地(GIBCO-BRL製)、PFHM-II培地(GIBCO-BRL製)等で培養し、その培養上清からPM-1抗体を精製する方法で行うことができる。
本発明には、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる(例えば、Borrebaeck C. A. K. and Larrick J. W. THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。
具体的には、目的とする抗体を産生する細胞、例えばハイブリドーマから、抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299 )、AGPC法(Chomczynski, P. et al., Anal. Biochem. (1987)162, 156-159)等により全RNA を調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia製)等を使用してmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit等を用いて行うことができる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5'-Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5'-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988)85, 8998-9002;Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res.(1989)17, 2919-2932)を使用することができる。得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作成し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、デオキシ法により確認する。
目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。又は、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。
本発明で使用される抗体を製造するには、後述のように抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体、ヒト(human)抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023、国際特許出願公開番号WO 92-19759参照)。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体またはヒト型化抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023、国際特許出願公開番号WO 92-19759参照)。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(FR; framework region)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400、国際特許出願公開番号WO 92-19759参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。
キメラ抗体、ヒト化抗体には、ヒト抗体C領域が使用される。ヒト抗体C領域としては、Cγが挙げられ、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4を使用することができる。また、抗体又はその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
キメラ抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来のC領域からなり、ヒト化抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域とヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域からなり、ヒト体内における抗原性が低下しているため、本発明に使用される抗体として有用である。
本発明に使用されるヒト化抗体の好ましい具体例としては、ヒト化PM-1抗体が挙げられる(国際特許出願公開番号WO 92-19759参照)。
また、ヒト抗体の取得方法としては先に述べた方法のほか、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することもできる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は既に周知であり、WO 92/01047, WO 92/20791, WO 93/06213, WO 93/11236, WO 93/19172, WO 95/01438, WO 95/15388を参考にすることができる。
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現される抗体遺伝子、その3'側下流にポリAシグナルを機能的に結合させたDNAあるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。
例えば、SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Mulligan, R. C. et al., Nature (1979) 277, 108-114) 、また、HEF1αロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushimaらの方法(Mizushima, S. and Nagata, S. Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322 )に従えば容易に実施することができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合、Wardらの方法(Ward, E. S. et al., Nature (1989) 341, 544-546;Ward, E. S. et al. FASEB J. (1992) 6, 2422-2427 )、araBプロモーターを使用する場合、Betterらの方法(Better, M. et al. Science (1988) 240, 1041-1043 )に従えばよい。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379-4383)を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切にリフォールド(refold)して使用する(例えば、WO96/30394を参照)。
複製起源としては、SV40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、in vitroおよびin vivoの産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、又は真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1)哺乳類細胞、例えば、CHO、COS、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、HeLa、Veroなど、(2)両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3)昆虫細胞、例えば、sf9、sf21、Tn5などが知られている。植物細胞としては、ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えばアスペルギルス属(Aspergillus)属、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などが知られている。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E.coli)、枯草菌が知られている。
これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物の腹腔等へ移すことにより、in vivoにて抗体を産生してもよい。
一方、in vivoの産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系などがある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシなどを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993)。また、昆虫としては、カイコを用いることができる。植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。
これらの動物又は植物に抗体遺伝子を導入し、動物又は植物の体内で抗体を産生させ、回収する。例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702 )。
また、カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の抗体を得る(Maeda, S. et al., Nature (1985) 315, 592-594)。さらに、タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciensのようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacumに感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Julian, K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol.(1994)24, 131-138)。
上述のようにin vitro又はin vivoの産生系にて抗体を産生する場合、抗体重鎖(H鎖)又は軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94-11523参照)。
本発明で使用される抗体は、本発明に好適に使用され得るかぎり、抗体の断片やその修飾物であってよい。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab')2、Fv又はH鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。
具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、又は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M.S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976、Better, M. & Horwitz, A. H. Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496 、Plueckthun, A. & Skerra, A. Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496 、Lamoyi, E., Methods in Enzymology (1989) 121, 652-663 、Rousseaux, J. et al., Methods in Enzymology (1989) 121, 663-66、Bird, R. E. et al., TIBTECH (1991) 9, 132-137参照)。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域を連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域はリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、上記抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12-19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖又は、H鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖又は、L鎖V領域をコードするDNAを鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNAおよびその両端を各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明でいう「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本発明でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野においてすでに確立されている。
前記のように産生、発現された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティークロマトグラフィーにより行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えば、プロテインAカラム、プロテインGカラムが挙げられる。プロテインAカラムに用いる担体として、例えば、HyperD、POROS、SepharoseF.F.等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。
例えば、上記アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれば、本発明で使用される抗体を分離、精製することができる。クロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過等が挙げられる。これらのクロマトグラフィーはHPLC(High performance liquid chromatography)に適用し得る。また、逆相HPLC(reverse phase HPLC)を用いてもよい。
上記で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定又はELISA等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、PBS(-)で適当に希釈した後、280nmの吸光度を測定し、1mg/mlを1.35ODとして算出する。また、ELISAによる場合は以下のように測定することができる。すなわち、0.1M重炭酸緩衝液(pH9.6)で1μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG(TAG製)100μlを96穴プレート(Nunc製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固相化する。ブロッキングの後、適宜希釈した本発明で使用される抗体又は抗体を含むサンプル、あるいは標品としてヒトIgG(CAPPEL製)100μlを添加し、室温にて1時間インキュベーションする。
洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG(BIO SOURCE製)100μlを加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio-Rad製)を用いて405nmでの吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を算出する。
本発明で使用されるIL-6改変体は、IL-6受容体との結合活性を有し、且つIL-6の生物学的活性を伝達しない物質である。即ち、IL-6改変体はIL-6受容体に対しIL-6と競合的に結合するが、IL-6の生物学的活性を伝達しないため、IL-6によるシグナル伝達を遮断する。
IL-6改変体は、IL-6のアミノ酸配列のアミノ酸残基を置換することにより変異を導入して作製される。IL-6改変体のもととなるIL-6はその由来を問わないが、抗原性等を考慮すれば、好ましくはヒトIL-6である。
具体的には、IL-6のアミノ酸配列を公知の分子モデリングプログラム、たとえば、WHATIF(Vriend et al., J. Mol. Graphics (1990) 8, 52-56 )を用いてその二次構造を予測し、さらに置換されるアミノ酸残基の全体に及ぼす影響を評価することにより行われる。適切な置換アミノ酸残基を決定した後、ヒトIL-6遺伝子をコードする塩基配列を含むベクターを鋳型として、通常行われるPCR法によりアミノ酸が置換されるように変異を導入することにより、IL-6改変体をコードする遺伝子が得られる。これを必要に応じて適当な発現ベクターに組み込み、前記組換え型抗体の発現、産生及び精製方法に準じてIL-6改変体を得ることができる。
IL-6改変体の具体例としては、Brakenhoff et al., J. Biol. Chem. (1994) 269, 86-93 、及びSavino et al., EMBO J. (1994) 13, 1357-1367 、WO 96-18648 、WO96-17869に開示されている。
本発明で使用されるIL-6部分ペプチド又はIL-6受容体部分ペプチドは、各々IL-6受容体あるいはIL-6との結合活性を有し、且つIL-6の生物学的活性を伝達しない物質である。即ち、IL-6部分ペプチド又はIL-6受容体部分ペプチドはIL-6受容体又はIL-6に結合し、これらを捕捉することによりIL-6のIL-6受容体への結合を特異的に阻害する。その結果、IL-6の生物学的活性を伝達しないため、IL-6によるシグナル伝達を遮断する。
IL-6部分ペプチド又はIL-6受容体部分ペプチドは、IL-6又はIL-6受容体のアミノ酸配列においてIL-6とIL-6受容体との結合に係わる領域の一部又は全部のアミノ酸配列からなるペプチドである。このようなペプチドは、通常10〜80、好ましくは20〜50、より好ましくは20〜40個のアミノ酸残基からなる。
IL-6部分ペプチド又はIL-6受容体部分ペプチドは、IL-6又はIL-6受容体のアミノ酸配列において、IL-6とIL-6受容体との結合に係わる領域を特定し、その一部又は全部のアミノ酸配列を通常知られる方法、例えば遺伝子工学的手法又はペプチド合成法により作製することができる。
IL-6部分ペプチド又はIL-6受容体部分ペプチドを遺伝子工学的手法により作製するには、所望のペプチドをコードするDNA配列を発現ベクターに組み込み、前記組換え型抗体の発現、産生及び精製方法に準じて得ることができる。
IL-6部分ペプチド又はIL-6受容体部分ペプチドをペプチド合成法により作製するには、ペプチド合成において通常用いられている方法、例えば固相合成法又は液相合成法を用いることができる。
具体的には、続医薬品の開発第14巻ペプチド合成(監修矢島治明、廣川書店、1991年)に記載の方法に準じて行えばよい。固相合成法としては、例えば有機溶媒に不溶性である支持体に合成しようとするペプチドのC末端に対応するアミノ酸を結合させ、α-アミノ基及び側鎖官能基を適切な保護基で保護したアミノ酸をC末端からN末端方向の順番に1アミノ酸ずつ縮合させる反応と樹脂上に結合したアミノ酸又はペプチドのα-アミノ基の該保護基を脱離させる反応を交互に繰り返すことにより、ペプチド鎖を伸長させる方法が用いられる。固相ペプチド合成法は、用いられる保護基の種類によりBoc法とFmoc法に大別される。
このようにして目的とするペプチドを合成した後、脱保護反応及びペプチド鎖の支持体からの切断反応をする。ペプチド鎖との切断反応には、Boc法ではフッ化水素又はトリフルオロメタンスルホン酸を、又Fmoc法ではTFAを通常用いることができる。Boc法では、例えばフッ化水素中で上記保護ペプチド樹脂をアニソール存在下で処理する。次いで、保護基の脱離と支持体からの切断をしペプチドを回収する。これを凍結乾燥することにより、粗ペプチドが得られる。一方、Fmoc法では、例えばTFA中で上記と同様の操作で脱保護反応及びペプチド鎖の支持体からの切断反応を行うことができる。
得られた粗ペプチドは、HPLCに適用することにより分離、精製することができる。その溶出にあたり、蛋白質の精製に通常用いられる水-アセトニトリル系溶媒を使用して最適条件下で行えばよい。得られたクロマトグラフィーのプロファイルのピークに該当する画分を分取し、これを凍結乾燥する。このようにして精製したペプチド画分について、マススペクトル分析による分子量解析、アミノ酸組成分析、又はアミノ酸配列解析等により同定する。
IL-6部分ペプチド及びIL-6受容体部分ペプチドの具体例は、特開平2-188600、特開平7-324097、特開平8-311098及び米国特許公報US5210075に開示されている。
本発明に使用する抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)、放射性物質、トキシン等の各種分子と結合したコンジュゲート抗体でもよい。このようなコンジュゲート抗体は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。本発明における「抗体」にはこれらのコンジュゲート抗体も包含される。
本発明は、軟骨代謝マーカーを測定するための試薬を含む、関節リウマチにおける治療予後を予測するための検出試薬に関する。このような検出試薬には、上記に記載の軟骨代謝マーカーの測定工程に使用されるものを含みうる。例えば、軟骨代謝マーカーであるPIIANP量の測定に必要とされる抗体、染色液等を挙げることができる。
さらに、上記検出試薬と、軟骨代謝マーカーの検出に用いられるその他の要素を組み合わせることによって、関節リウマチ治療における治療予後を予測するためのキットとすることができる。すなわち、本発明は、軟骨代謝マーカーを測定するための試薬を含む、関節リウマチ治療における治療予後を予測するためのキットに関する。このようなキットには、上記に記載の検出試薬、その他、蒸留水、塩、緩衝液、タンパク質安定剤、保存剤等が含まれていてもよい。また、たとえばELISA用の試薬として、酵素標識を検出するための発色基質や、固相を洗浄するための洗浄液を組み合わせることができる。さらに、測定操作を説明するための指示書をキットに添付することもできる。
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
軟骨形成におけるPIIANPおよびPIICPの断片化を示す模式図である。 Erosion スコアを測定した手の関節領域を示す図である。 JSN スコアを測定した手の関節領域を示す図である。 Erosion スコアおよびJSN スコアを測定した足の関節領域を示す図である。 ベースライン、28週および52週目における関節破壊のX線評価(トータルシャープスコア)の結果を示す図である。 ベースライン、28週および52週目における関節破壊のX線評価 (Erosion スコア)の結果を示す図である。 ベースライン、28週および52週目における関節破壊のX線評価 (JSN スコア)の結果を示す図である。 T群およびC群におけるPIIANP量の変化を示す図である。(A)血清中のPIIANP濃度の測定値(ng/ml)、(B)血清中のPIIANP濃度のベースラインからの変化率(%)を示す。 T群およびC群におけるMMP-3量の変化を示す図である。(A)血清中のMMP3濃度の測定値(ng/ml)、(B)血清中のMMP3濃度のベースラインからの変化率(%)を示す。 T群のErosionの増加の有無とMMP-3変化量の推移を示す図である。 T群のErosionの増加の有無とMMP-3変化率の推移を示す図である。 C群のErosionの増加の有無とMMP-3変化量の推移を示す図である。 T群のJSNの増加の有無とMMP-3変化率の推移を示す図である。 T群のJSNの増加の有無とPIIANP変化率の推移を示す図である。 多変数ロジスティック回帰分析による、52週後のJSNのODD比(95%CI) を示す図である。 多変数ロジスティック回帰分析による、52週後のErosionのODD比(95%CI) を示す図である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕MRA単独投与群および対象群における、早期関節リウマチ治療予後と生化学マーカー変化との相関
<方法>
ヒト化IL-6受容体抗体であるMRAによる治療を受けている、早期関節リウマチ患者における1年間の関節破壊の進行度を決定するために、X線による評価を行った。また、軟骨組織、骨代謝および炎症に関する生化学マーカーの初期変化を調べた。
対象となる患者(306名)は、以下の基準で選択した。
(1) 罹病期間6ヶ月以上5年未満
(2) 年齢20歳以上
(3) 少なくとも1剤以上のDMARDsあるいは免疫抑制剤の投与で活動性を有する患者
(4) 登録時(治験薬投与前2週間以内)に以下の項目を満たす患者
疼痛≧6関節
炎症性腫脹≧6関節
ESR≧30mm/hr かつ CRP≧2.0mg/dL
患者をT群(MRA単独投与群;4週間毎に8 mg/kg)、C群(対象群;一般的な用法でDMARDs(disease-modifying antirheumatic drugs)剤を投与、病気の活性化に従って生物学的製剤およびbiphosphonate剤を調整することを除く)に分けた。
関節破壊は、ベースライン(治療剤投与前)と28週および52週目に、X線評価(シャープスコア、van der Heijde modified Sharp method)によって測定した。評価基準を、以下の表1〜3に、また評価を行った関節部位(領域)を図2〜4に示す。
Figure 0005330829
トータルシャープスコア(Total Sharp score)による評価(Erosionの合計+JSNの合計)
総合点数(最大)=160+120+120+48=448点
Figure 0005330829
骨びらん(erosion)点数評価基準
※各関節での合計点数が5点を超えた場合は全て5点として扱う
(ただし足関節については、各関節ともに最大合計点数を10点とする)
Figure 0005330829
関節裂隙狭小化(joint-space narrowing;以下JSN)点数評価基準
JSN:一般的に軟骨を表していると考えられている
また、生化学的マーカー(PIIANP、matrix metalloproteinase 3(MMP-3)、PIICP、オステオカルシン、骨アルカリフォスファターゼ、CRP等)を、ベースラインおよび治療の12、24、36、48および52週目に測定した。
DAS28スコア:観察対象関節における疼痛(圧痛または運動痛)関節数(TJC)、腫脹関節痛(SJC)ならびにESR(erythrocyte sedimentation rate)、患者による全般評価(GH:general health status)を用いて以下の計算式により算出する(Arthritis & Rheumatism 38:44, 1995、Arthritis & Rheumatism 39:34, 1995)。
28関節数に基づく修正DAS=DAS28
DAS28=0.56√TJC + 0.28√SJC + 0.7In ESR + 0.014 x GH
<結果>
ベースラインでの、被検患者の平均年齢は53歳、平均罹患期間は2.3年であり、平均DAS28スコアは6.5、トータルシャープスコアは29.4、およびCRPは4.8mg/dLであった。
トータルシャープスコア(図5)、骨びらん(erosion)スコア(図6)、関節裂隙狭小化(JSN)スコア(図7)の変化の測定により、C群と比較するとT群の1年間の関節破壊の進行が有意に少なかった。
また、PIIANP(表4、6および8、および図8)、MMP-3(表5、7および9、および図9)、PIICP、オステオカルシン、骨アルカリフォスファターゼ、およびCRPを含む治療12週目の生化学マーカーの変化は、T群およびC群間に有意な差が認められた。
PIIANPおよびMMP-3それぞれについての、測定値(ng/ml)を表4および表5、ベースラインからの変化量(ng/ml)を表6および表7、ベースラインからの変化率(%)を表8および表9に示す。
Figure 0005330829
PIIANPの測定値(ng/ml)
nは要約統計量に寄与する患者数を表す。
(*)はスチューデントt検定を表す。
TT:試行処理(Trial Treatment)
LastOBS:最直前観測値
(%)は、ベースライン(0を除く)および要約された期間の値を持つ患者のみを含むベースライン値による変化を表す。
Figure 0005330829
MMP-3の測定値(ng/ml)
nは要約統計量に寄与する患者数を表す。
(*)はスチューデントt検定を表す。
TT:試行処理(Trial Treatment)
LastOBS:最直前観測値
(%)は、ベースライン(0を除く)および要約された期間の値を持つ患者のみを含むベースライン値による変化を表す。
Figure 0005330829
PIIANPのベースラインからの変化量(ng/ml)
nは要約統計量に寄与する患者数を表す。
(*)はスチューデントt検定を表す。
TT:試行処理(Trial Treatment)
LastOBS:最直前観測値
(%)は、ベースライン(0を除く)および要約された期間の値を持つ患者のみを含むベースライン値による変化を表す。
Figure 0005330829
MMP-3のベースラインからの変化量(ng/ml)
nは要約統計量に寄与する患者数を表す。
(*)はスチューデントt検定を表す。
TT:試行処理(Trial Treatment)
LastOBS:最直前観測値
(%)は、ベースライン(0を除く)および要約された期間の値を持つ患者のみを含むベースライン値による変化を表す。
Figure 0005330829
PIIANPのベースラインからの変化率(%)
nは要約統計量に寄与する患者数を表す。
(*)はスチューデントt検定を表す。
TT:試行処理(Trial Treatment)
LastOBS:最直前観測値
(%)は、ベースライン(0を除く)および要約された期間の値を持つ患者のみを含むベースライン値による変化を表す。
Figure 0005330829
MMP-3のベースラインからの変化率(%)
nは要約統計量に寄与する患者数を表す。
(*)はスチューデントt検定を表す。
TT:試行処理(Trial Treatment)
LastOBS:最直前観測値
(%)は、ベースライン(0を除く)および要約された期間の値を持つ患者のみを含むベースライン値による変化を表す。
関節破壊のX線評価の結果と、生化学マーカーの量の変化の相関について、以下に示す。
T群では、12週目のMMP-3濃度の変化率および1年間のerosionスコアの変化量との間の相関関係が有意であった(Spearmanの相関係数:r=0.23, p<0.01)。またMMP-3濃度とPIIANP濃度の12週目における変化率は、1年間のJSNスコアの変化量とも有意に相関関係を示した(MMP-3;r=0.28, p<0.01、PIIANP;r=0.25, p<0.01)。
更に、多変量解析を行った。その結果、Erosionスコアの52週変化量は、MMP-3濃度の変化率(p=0.03)で、また、JSNの52週変化量は、MMP-3濃度の12週変化率(p<0.01)およびPIIANP濃度の12週変化率(p<0.01)で説明することが妥当であるとされた(表10及び表11)。表中、「CE52」、「CJ52」は、それぞれ、Erosionスコア及びJSNスコアの52週目におけるベースラインからの変化量を表す。表中、「PMMP3 12」、「PPIIANP 12」は、それぞれ、MMP-3及びPIIANPの12週目における、ベースラインを100とした場合の%変化を表す。
Figure 0005330829
多変量解析(Erosion Score52)
Figure 0005330829
多変量解析(JSN52)
また、12週目のMMP-3濃度の変化率(PMMP3 12)とPIIANP濃度の変化率(PPIIANP 12)は互いに独立しており、12週目のDAS28スコア(DAS28 12)とも独立していることが確認された(表12)。
〔表12〕
PPIIANP 12とDAS28 12とPMMP3 12の相関
Spearmanの相関係数
PMMP3 12 と DAS28 12: 0.40
PPIIANP 12 と DAS28 12: 0.09
PPIIANP 12 と PMMP3 12: 0.14
〔実施例2〕MRA単独投与群における、関節破壊の進行と生化学マーカー変化との相関
<目的>
MRA(Tocilizumab)単独治療群(T群)とDMARDs群(C群)を比較して1年間の骨関節破壊遅延効果の検討した試験(SAMURAI STUDY)において、52週目で、C群(mean 6.1; 95%CI 4.2, 8.0)(p < 0.01)と比較して、T群が統計的に低いX線スコアの変化を示し(mean 2.3; 95%CI 1.5, 3.2)、改善の徴候および症状を示したとの結果が得られた(参考文献ARD)。
そこで、SAMURAI STUDYにおいて、治療開始後早期のバイオマーカーの変化量と1年後の関節破壊の進行との関連を検討しさらに予測因子を検討した。
<方法>
T群を対象として、バイオマーカーの12週の変化量とerosionスコア、JSNスコアの1年後の変化量との相関関係と多重共線性を考慮して変数選択をし、多変量回帰分析および多変量ロジステック回帰分析を実施した。
<結果>
X線スコアの変化に影響を与える因子を検討したところ、MMP-3の12週の変化はErosionスコアの変化に関連があった(R-square 0.086)(表13)。
Figure 0005330829
重回帰分析(骨びらん)
CLMMP312=12週目におけるMMP-3の対数変数の変動値
またMMP-3、PIIANP、CRPの12週の変化はJSN スコアの変化に関連があった(R-square 0.186)(表14)。
Figure 0005330829
重回帰分析(関節裂隙の狭小化)
CLMMP312=12週目におけるMMP-3の対数変数の変動値
CLPIIANP12=12週目におけるPIIANPの対数変数の変動値
CLCRP12=12週目におけるCRPの対数変数の変動値
Erosionスコアの変化量別にMMP-3の12週の変化量を比較すると、Erosionスコアの変化量が小さい群(Erosionスコア 52週変化量 < 0.5)、つまり骨破壊遅延効果がみられた群において、効果がみられなかった群よりMMP-3(細胞外マトリックス成分を分解する主要なプロテアーゼ:軟骨破壊)が有意に減少した(図10)。MMP-3変化率でも同様であった(図11)。一方、比較対象としているC群ではT群と同様の結果はみられなかった(図12)。
JSNスコアの変化量別に検討を実施したところ、JSNスコアの変化量が小さい群(JSNスコア 52週変化量 < 0.5)でMMP-3の有意な減少がみられた(図13)。PIIANPも同様に変化量が小さい群は大きい群に比較して有意な減少がみられた(図14)。
多変量ロジスティック回帰分析にてODD比を求めた。52週後のJSNの変化はMMP-3の変化(ODD比:0.333)、PIIANPの変化(0.377)、CRPの陰性化(0.288)、ErosionではMMP-3の変化(0.485)で予測されることが示唆された(図15および16)。
以上の結果より、治療早期の血清中におけるPIIANP量およびMMP-3量の変化は、早期RA患者に対するMRA単独投与による関節破壊の進行抑制効果を測定するツールとして有用であることが示された。また、PIIANP量およびMMP-3量を関節リウマチ治療後(例えば12週目)に測定することにより、以後の関節破壊進行度の予測、すなわち関節リウマチの予後を予測することが可能であることが明らかとなった。また、以上の結果は、治療早期のPIIANP濃度の変化率はより長い治療期間のJSNスコアの変化量と相関し、治療早期のMMP-3濃度の変化率はより長い治療期間のerosionスコアの変化量及びJSNスコアの変化量と相関することを示している。このことと、これら2つの生化学マーカーが互いに独立した変化を示していることから、本発明によれば、PIIANP量の測定がJSNの予後予測に有効であり得るだけでなく、PIIANP量の測定によるJSNの予後予測と、MMP-3量の測定によるJSN及びerosionの予後予測とを組み合わせることにより、より的確な関節破壊予後の予測も可能である。
本発明によって、関節リウマチ治療を行った被験者における、PIIANP量を指標とした関節リウマチの治療予後を予測するための方法が提供された。
本発明の方法によって、関節リウマチの治療早期における経時変化を調べることにより、当該治療によるRA患者の予後を予測することが可能となった。
さらに、PIIANP量の経時変化を測定することによって、関節リウマチ治療剤の有効性を判断すること、関節リウマチ治療剤に適合する患者を選別することも可能となった。

Claims (11)

  1. 以下の工程(a)〜(c)の工程を含む、関節リウマチ治療を行った被験者における、関節リウマチの治療予後を予測するための方法。
    (a)被験者から試料を採取する工程
    (b)採取した試料中のプロコラーゲン タイプIIA N-プロペプチド(PIIANP)量を測定する工程
    (c)治療開始前と比較してPIIANP量が減少した場合に、当該治療による予後は良好であると予測する工程
  2. 関節リウマチ治療の開始後早期において、該治療開始前と比較してPIIANP量が減少した場合に、当該治療による予後は良好であると予測する、請求項に記載の方法。
  3. 関節リウマチの治療の予後が良好であるか否かが、関節リウマチにおける関節破壊の進行が抑制されるか否かにより判断される、請求項またはに記載の方法。
  4. 経時的に被験者から試料を採取し、PIIANP量を測定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  5. 関節リウマチが早期関節リウマチである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 被験者から採取された試料が、血漿、血清、尿、または関節液である請求項1に記載の方法。
  7. 関節リウマチ治療が、抗リウマチ剤の投与による治療である、請求項1に記載の方法。
  8. 関節リウマチ治療が、IL-1阻害剤、IL-6阻害剤、TNF-α阻害剤、IL-15阻害剤、またはIL-17阻害剤の投与による治療である、請求項1に記載の方法。
  9. 関節リウマチ治療が、IL-1、IL-6、TNF-α、IL-15またはIL-17のシグナル伝達を阻害する抗体の投与による治療である、請求項1に記載の方法。
  10. 関節リウマチ治療が、抗IL-6抗体、抗IL-6受容体抗体、抗TNF-α抗体、抗CD20抗体、メソトレキセートまたはCTLA4-IgG融合タンパク質の投与による治療である、請求項1に記載の方法。
  11. PIIANP量を測定するための試薬を含む、関節リウマチ治療における治療予後を請求項1に記載の方法により予測するためのキット。
JP2008527799A 2006-08-04 2007-08-03 関節リウマチ患者の治療予後予測方法 Expired - Fee Related JP5330829B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008527799A JP5330829B2 (ja) 2006-08-04 2007-08-03 関節リウマチ患者の治療予後予測方法

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006213021 2006-08-04
JP2006213021 2006-08-04
PCT/JP2007/065238 WO2008016134A1 (fr) 2006-08-04 2007-08-03 PROCÉDÉ POUR PRÉDIRE LE PRONOSTIC DES PATIENTS ATTEINTS DE POLYARTHRITE rhumatoïde
JP2008527799A JP5330829B2 (ja) 2006-08-04 2007-08-03 関節リウマチ患者の治療予後予測方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2008016134A1 JPWO2008016134A1 (ja) 2009-12-24
JP5330829B2 true JP5330829B2 (ja) 2013-10-30

Family

ID=38997307

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008527799A Expired - Fee Related JP5330829B2 (ja) 2006-08-04 2007-08-03 関節リウマチ患者の治療予後予測方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5330829B2 (ja)
WO (1) WO2008016134A1 (ja)

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2382488T3 (es) 1997-03-21 2012-06-08 Chugai Seiyaku Kabushiki Kaisha Un agente preventivo o terapéutico para enfermedades mediadas por células t sensibilizadas que comprende un antagonista de il-6 como ingrediente activo
UA80091C2 (en) 2001-04-02 2007-08-27 Chugai Pharmaceutical Co Ltd Remedies for infant chronic arthritis-relating diseases and still's disease which contain an interleukin-6 (il-6) antagonist
US20050118163A1 (en) 2002-02-14 2005-06-02 Hidefumi Mizushima Antibody-containing solution pharmaceuticals
GB2401040A (en) 2003-04-28 2004-11-03 Chugai Pharmaceutical Co Ltd Method for treating interleukin-6 related diseases
EP3736295A1 (en) 2004-03-24 2020-11-11 Chugai Seiyaku Kabushiki Kaisha Subtypes of humanized antibody against interleukin-6 receptor
PE20091174A1 (es) 2007-12-27 2009-08-03 Chugai Pharmaceutical Co Ltd Formulacion liquida con contenido de alta concentracion de anticuerpo
KR101691534B1 (ko) * 2008-10-07 2017-01-09 내셔날 쳉쿵 유니버시티 류마티스 관절염 및 골다공증 치료용 il-20 길항제의 용도
PL2493922T3 (pl) 2009-10-26 2017-07-31 F.Hoffmann-La Roche Ag Sposób wytwarzania glikozylowanych immunoglobulin
US20120034706A1 (en) * 2010-08-06 2012-02-09 Hakujyujikai Medical Inc. Method for assessing inflammatory condition
EP4029881A1 (en) 2010-11-08 2022-07-20 F. Hoffmann-La Roche AG Subcutaneously administered anti-il-6 receptor antibody
WO2014015133A1 (en) 2012-07-19 2014-01-23 National Cheng Kung University Treatment of osteoarthritis using il-20 antagonists
BR112015032960B1 (pt) 2013-07-04 2021-01-05 F. Hoffmann-La Roche Ag imunoensaio suprimido por interferência para detectar anticorpos anti-fármaco em amostras de soro
EP3117219A1 (en) * 2014-03-13 2017-01-18 Oxford University Innovation Limited Methods and system for determining the disease status of a subject

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6007003250; 小林秀之ほか: 'TNFを中心とした抗サイトカイン療法' 内科 第86巻第2号, 2000, pp.285-290 *
JPN6007003253; 宮坂信之: 'RAの抗サイトカイン療法' リウマチ科 23(5), 2000, pp.478-483 *
JPN6007003256; J.-C. Rousseau, et.al: '"Serum levels of type IIA procollagen amino terminal propeptide(PIIANP) are decreased in patients wi' Osteoarthritis and Cartilage 12, 2004, 440-447 *

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2008016134A1 (ja) 2009-12-24
WO2008016134A1 (fr) 2008-02-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5330829B2 (ja) 関節リウマチ患者の治療予後予測方法
US8440196B1 (en) Treatment for pancreatitis using IL-6 receptor antagonist antibodies
KR100842133B1 (ko) 소아 만성 관절염 관련질환 치료제
RU2195960C2 (ru) Профилактический или терапевтический агент для лечения воспалительных заболеваний кишечника, содержащий в качестве активного ингредиента антагонист il-6
RU2379054C2 (ru) Профилактическое средство против васкулита
JP4889187B2 (ja) Il−6アンタゴニストを有効成分として含有する血中mmp−3濃度低下剤
US8617550B2 (en) Treatment of vasculitis with IL-6 antagonist
EP2011514B1 (en) A preventive or therapeutic agent for sensitized T cell-mediated diseases comprising IL-6 antagonist as an active ingredient
JP6442404B2 (ja) 再発寛解型多発性硬化症(rrms)患者の治療予後予測方法、及び新規治療適応判断方法
JPWO2002034292A1 (ja) Il−6アンタゴニストを有効成分として含有する乾癬の予防又は治療剤
WO2016186154A1 (ja) 多発性硬化症(ms)患者の新規治療適用判断方法
JP4799516B2 (ja) Il−6アンタゴニストを有効成分として含有する膵炎の予防又は治療剤
JP7501876B2 (ja) Il-6阻害剤及びccr2阻害剤を組み合わせて投与することを特徴とする泌尿器がんの治療剤
JP7185884B2 (ja) Il-6及び好中球の関連する疾患の治療効果の予測及び判定方法
JP4404968B2 (ja) Il−8結合阻害物質を有効成分として含有する脳卒中及び脳浮腫の予防または治療剤
JP4987117B2 (ja) Il−6アンタゴニストを有効成分として含有する血中mmp−3濃度低下剤
JPH1045622A (ja) 抗il−8抗体を有効成分として含有する慢性関節リウマチ治療剤

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100727

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130225

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130327

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130626

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130726

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees