JP5317889B2 - チェーン - Google Patents

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Description

本発明は、複数のチェーン構成部材を屈曲可能かつスプロケットに巻回可能に組み付けてなるチェーンに関し、例えば、エンジンルーム内のクランク軸とカム軸の夫々に設けたスプロケット間に無端懸回したローラチェーン、サイレントチェーン等の伝動チェーンに関するものである。
従来、複数のチェーン構成部材を屈曲可能かつスプロケットに巻回可能に組み付けてなるチェーンにおいて、振動や騒音を低減するとともに摩耗や発熱を低減し耐久性を向上させて小型軽量化を図るために、複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部を構成する摺接面の摺動抵抗を低減することが行われている。
このような公知のチェーンにおいて、複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部を構成する摺接面の摺動抵抗を低減するため、摺接面の表面粗さが向上するようにチェーン構成部材を表面加工したものが公知である。
例えば、サイレントチェーンの内リンクプレートのピン孔内周面と連結ピンの外周面がバレル加工により表面粗さを向上し、サイレントチェーンの屈曲時のピン孔内周面と連結ピンの外周面の摺動抵抗を低減して、両者の摺接面の磨耗や発熱を低減することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部を構成する摺接面の摺動抵抗を低減するため、摺接面の表面粗さを向上した上でさらに潤滑油を保持したり潤滑油中の夾雑物を落とし込むように表面に凹部を設け、両者の摺接面の摺動抵抗を低減し磨耗や発熱を低減することが知られている(例えば、特許文献2、3参照。)。
特開2007−85529号公報(第5頁、図7) 特開2008−133906号公報(第5頁、図2、図4) 特許3202653号公報(第2頁、図3)
しかしながら、摺接面間の平均距離が小さくなると、摺接面同士に生じる吸引力であるメニスカス力(近接した2物体の界面間に存在する液体の表面張力に起因する吸着力)が指数関数的に大きくなるという特性を持っており、表面粗さを向上させると摺動時の摺動抵抗は低減するものの、摺接面間の平均距離が小さくなるためメニスカス力が急激に大きくなる。
すなわち、図8に示すように、2つのチェーン構成部材501、502によって構成される摺動部のそれぞれの摺接面503、504の表面粗さが向上すると、摺接面503、504の間隔が平均的に極めて小さくなるとともに、凹凸がなだらかな面となるため、液体505(潤滑油や凝集した水分等)が大きなメニスカス力を発生する近接部の面積が増大して面全体のメニスカス力が極めて大きくなる。
このため、停止状態から摺動に移行する際にメニスカス力に対抗する大きな引離力が必要となり、摺動開始と同時に該引離力が急激に開放されるため、振動や騒音が発生したり、摺動時の摺接面503、504間における適切な潤滑油膜の形成を阻害して摺動抵抗を増大させるという問題があった。
特に、チェーンにおいては、屈曲動作時のみ複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部が摺動し、屈曲動作を行わないフリースパンやスプロケットに巻き掛けられている区間、あるいは、一定曲率のチェーンガイドに沿って走行している区間等では摺動部は停止状態にあり、チェーンの走行時には摺動部が必然的に何度も摺動と停止を繰り返す構造であるため、摺動抵抗を低減するために表面粗さを向上させるほどメニスカス力の影響が無視できなくなるという問題があった。
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、摺接面の表面粗さを向上して摺動抵抗を低減するとともに、メニスカス力の影響によって摺動開始時に必要となる引離力を低減して振動や騒音、磨耗や発熱の発生を防止し、摺接面間の適切な潤滑油膜を形成するチェーンを提供することである。
本請求項1に係る発明は、複数のチェーン構成部材を屈曲可能かつスプロケットに巻回可能に組み付けてなるチェーンにおいて、前記複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部を構成する少なくとも1個所の摺接面がメニスカス力を軽減する多数の微細溝を有しているとともに、前記多数の微細溝が前記摺接面を複数の区画に分けた区画ごとに異なる方向に平行に延びるように設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたチェーンの構成に加えて、前記チェーン構成部材が、前記チェーン構成部材が、互いに屈曲時に接触摺動するリンクプレートを含み、前記多数の微細溝を有している摺接面が、互いに屈曲時に接触摺動する一方のリンクプレートの接触面および/または他方のリンクプレートの接触面であることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載されたチェーンの構成に加えて、前記チェーン構成部材が、リンクプレートおよび該リンクプレートのピン孔に遊嵌される連結ピンを含み、前記多数の微細溝を有している摺接面が、リンクプレートのピン孔内周面および/または連結ピンの外周面であることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたチェーンの構成に加えて、前記チェーン構成部材が、連結ピンおよび該連結ピンに外嵌されるブシュを含み、前記多数の微細溝を有している摺接面が、ブシュの内周面および/またはブシュの端面であることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたチェーンの構成に加えて、前記チェーン構成部材が、ブシュおよび該ブシュに外嵌されるローラを含み、前記多数の微細溝を有している摺接面が、ブシュの外周面および/またはローラの内周面であることにより、前記課題をさらに解決するものである。
本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載されたチェーンの構成に加えて、前記微細溝を有している摺接面が、ピッチを1μm以下、深さを0.1μm以下とした多数の溝を設けてなることにより、前記課題をさらに解決するものである。
本請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載されたチェーンの構成に加えて、前記多数の微細溝を有している摺接面が、多数の溝が摺動方向に平行に延びるように設けられてなることにより、前記課題をさらに解決するものである。
本請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載されたチェーンの構成に加えて、前記多数の微細溝が、フェムト秒レーザーによって加工されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
本請求項1に係る発明のチェーンは、複数のチェーン構成部材を屈曲可能かつスプロケットに巻回可能に組み付けてなるチェーンにおいて、複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部を構成する少なくとも1個所の摺接面がメニスカス力を軽減する多数の微細溝を有しているとともに、多数の微細溝が摺接面を複数の区画に分けた区画ごとに異なる方向に平行に延びるように設けられていることにより、メニスカス力の要因である凝縮した水分や潤滑油等の界面間に存在する液体が多数の微細溝の存在により低減されるとともに、表面粗さを向上させたことによる摺動時の潤滑油の薄膜の形成効果がさらに維持されるため、複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部の摺接面の表面粗さを向上させて摺動抵抗を低減するとともに摺動部のメニスカス力の影響によって摺動開始時に必要となる引離力を低減して振動や騒音、磨耗や発熱の発生を防止し、摺接面間の適切な潤滑油膜を形成することができる。
本請求項2に係る発明のチェーンは、請求項1に係るチェーンが奏する効果に加えて、チェーン構成部材が互いに屈曲時に接触摺動するリンクプレートを含み、多数の微細溝を有している摺接面が互いに屈曲時に接触摺動する一方のリンクプレートの接触面および/または他方のリンクプレートの接触面であることにより、チェーンの隣接するリンクプレートで構成される摺動部において、摺接面の表面粗さを向上して摺動抵抗を低減するとともに摺動部のメニスカス力の影響によって必要となる引離力を低減して振動や騒音、磨耗や発熱の発生を防止し、摺接面間の適切な潤滑油膜を形成することができる。
本請求項3に係る発明のチェーンは、請求項1または請求項2に係るチェーンが奏する効果に加えて、チェーン構成部材がリンクプレートおよび該リンクプレートのピン孔に遊嵌される連結ピンを含み、多数の微細溝を有している摺接面がリンクプレートのピン孔内周面および/または連結ピンの外周面であることにより、サイレントチェーン等のリンクプレートのピン孔と連結ピンで構成される摺動部において、摺接面の表面粗さを向上して摺動抵抗を低減するとともに摺動部のメニスカス力の影響によって必要となる引離力を低減して振動や騒音、磨耗や発熱の発生を防止し、摺接面間の適切な潤滑油膜を形成することができる。
本請求項4に係る発明のチェーンは、請求項1乃至請求項3のいずれかに係るチェーンが奏する効果に加えて、チェーン構成部材が連結ピンおよび該連結ピンに外嵌されるブシュを含み、多数の微細溝を有している摺接面がブシュの内周面および/またはブシュの端面であることにより、ブシュチェーンやローラチェーン等のブシュと連結ピンで構成される摺動部および/またはブシュとリンクプレートで構成される摺動部において、摺接面の表面粗さを向上して摺動抵抗を低減するとともに摺動部のメニスカス力の影響によって必要となる引離力を低減して振動や騒音、磨耗や発熱の発生を防止し、摺接面間の適切な潤滑油膜を形成することができる。
本請求項5に係る発明のチェーンは、請求項1乃至請求項4のいずれかに係るチェーンが奏する効果に加えて、チェーン構成部材がブシュおよび該ブシュに外嵌されるローラを含み、多数の微細溝を有している摺接面がブシュの外周面および/またはローラの内周面であることにより、ローラチェーン等のブシュとローラで構成される摺動部において、摺接面の表面粗さを向上して摺動抵抗を低減するとともに摺動部のメニスカス力の影響によって必要となる引離力を低減して振動や騒音、磨耗や発熱の発生を防止し、摺接面間の適切な潤滑油膜を形成することができる。
本請求項6に係る発明のチェーンは、請求項1乃至請求項5のいずれかに係るチェーンが奏する効果に加えて、多数の微細溝を有している摺接面がピッチを1μm以下、深さを0.1μm以下とした多数の溝を設けてなることにより、摺動時の潤滑油の薄膜の形成効果をさらに維持できるため、複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部の摺接面の表面粗さを向上して摺動抵抗を低減するとともに、摺動部のメニスカス力の影響によって必要となる引離力を低減して振動や騒音、磨耗や発熱の発生を防止し、摺接面間の適切な潤滑油膜を形成することができる。
本請求項7に係る発明のチェーンは、請求項1乃至請求項6のいずれかに係るチェーンが奏する効果に加えて、多数の微細溝がフェムト秒レーザーによって加工されていることにより、多数の微細溝が正確に形成されているため、表面粗さを向上したことによる摺動時の潤滑油の薄膜の形成効果がさらに維持され、さらに摺動抵抗を低減するとともに摺動部のメニスカス力の影響によって摺動開始時に必要となる引離力を低減して振動や騒音、磨耗や発熱の発生を防止し、摺接面間の適切な潤滑油膜を形成することができる。
本発明のチェーンが適用されるエンジンのタイミングシステムの説明図。 本発明の理解を助けるための第1参考例であるローラチェーンの斜視図。 図2の一部断面とした平面図。 本発明の理解を助けるための第1参考例における連結ピンの説明図。 本発明の理解を助けるための第1参考例における摺接面の拡大説明図。 本発明の理解を助けるための第2参考例であるサイレントチェーンの斜視図。 図6の一部断面とした平面図。 従来のチェーンの摺接面の拡大説明図。
本発明は、複数のチェーン構成部材を屈曲可能かつスプロケットに巻回可能に組み付けてなるチェーンにおいて、複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部を構成する少なくとも1個所の摺接面がメニスカス力を軽減する多数の微細溝を有しているとともに、多数の微細溝が摺接面を複数の区画に分けた区画ごとに異なる方向に平行に延びるように設けられ、摺接面の表面粗さを向上して摺動抵抗を低減するとともにメニスカス力の影響によって摺動開始時に必要となる引離力が低減されて振動や騒音、磨耗や発熱の発生が防止し、摺接面間の適切な潤滑油膜を形成するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
すなわち、本発明のチェーンは、複数のチェーン構成部材の相互間に摺動部を有するものであれば、いかなる形状のチェーンであっても良い。
また、本発明のチェーンの摺接面に設けられた多数の微細溝は、表面粗さに影響のない微細溝であれば、転造、鍛造、切削等、如何なる加工方法で形成されても良く、特にレーザー加工で形成されるのが好適である。
本発明のチェーンは、例えば、エンジンのタイミングシステムに使用される。
エンジンのタイミングシステムは、図1に示すように、エンジンルーム内のクランク軸に取付けた駆動スプロケットS1とカム軸に取付けた一対の従動スプロケットS2、S3間に無端懸回したチェーンを用いて、チェーンの張力を適正に保持してチェーンをガイドするテンショナレバーTとチェーンの走行を案内する固定ガイド部材Gとが押接される。
テンショナレバーTは、エンジンルームに取付軸Bで揺動自在に取付けられ、エンジンルームに取付部材Fによって固定されたハウジング内のプランジャPにより押圧付勢されており、固定ガイド部材Gはエンジンルームに取付軸B1、B2で固定されている。
このエンジンのタイミングシステムにおいて、チェーンは、スプロケットS1、S2、S3への進入および離脱する区間H1、H2、H6、H7、H8、H9、テンショナレバーTへの進入および離脱する区間H3、H5、固定ガイド部材Gへの進入および離脱する区間H10、H11、テンショナレバーTの曲率の変化する区間H4を通過する時にそれぞれ屈曲動作を行って複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部が摺動し、それ以外の区間では屈曲動作を行なわず複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部は停止状態にある。
したがって、チェーンが屈曲動作を行うH1乃至H11の区間の開始位置で、複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部は停止から摺動を開始し、メニスカス力に対抗する引離力が必要となる。
参考例1
以下に、本発明の理解を助けるための第1参考例であるローラチェーンとして構成されたチェーン100について、図面に基づいて説明する。
チェーン100は、図2、図3に示すように、ブシュ120の両端が、それぞれ一対の内リンクプレート110のブシュ孔111に圧入され、ブシュ120内に遊貫された連結ピン150の両端が一対の内リンクプレート110の両外側に配置された一対の外リンクプレート140のピン孔141に圧入され、無端状に連結されてブシュ120と連結ピン150が相対的に自由に回転することにより屈曲可能に構成され、ブシュ120にローラ130を回転自在に外挿されて、チェーン100がスプロケットに巻き掛けられた際に、ローラ130がスプロケットの歯と当接するように構成されている。
チェーン100において、屈曲動作時に摺動する2つのチェーン構成部材の摺動部は、内リンクプレート110の外側面と外リンクプレート140の内側面、内リンクプレート110の内側面とローラ130の端面、ブシュ120の内周面121と連結ピン150の外周面151、および、ブシュ120の端面と外リンクプレート140の内側面がそれぞれ接触する部分である。
また、ブシュ120の外周面とローラ130の内周面からなる摺動部は、ローラ130がスプロケットの歯と当接、離脱する際の屈曲動作時にのみ摺動する。
これらの摺動部は、いずれも大きなメニスカス力が生じる可能性があるため、これらの摺動部の一方の摺接面に、メニスカス力を軽減する多数の微細溝を形成することにより、摺接面の表面粗さを向上して摺動抵抗を低減し、振動や騒音、磨耗や発熱を低減するとともに、メニスカス力の影響によって摺動開始時に必要となる引離力を低減して振動や騒音、磨耗や発熱の発生を防止し、摺接面間の適切な潤滑油膜を形成することができる。
メニスカス力を軽減する多数の微細溝を形成する摺接面は全ての摺動部に設けても良いが、特に、チェーン100がローラチェーンである場合、引張力を受けるブシュ120の内周面121と連結ピン150の外周面151とから成る摺動部が、最も表面粗さを向上させ摺動時の摺動抵抗を低減することで屈曲抵抗を低減する効果も高く、引張力を受けて摺接面間の平均距離も小さくなる。
このことから、本参考例では、この摺動部の連結ピン150の外周面151にメニスカス力を軽減する微細溝を形成している。
連結ピン150の外周面151は、図4に示すように、ブシュ120の内周面121と摺接して摺動部を構成する領域に、連結ピン150の軸方向に平行な多数の微細溝152が形成されている。
これらの多数の微細溝152は、フェムト秒レーザーによって、深さを0.1μm以下、ピッチを1μm以下で平行に加工したものである。
なお、加工後の表面はマクロでみた場合は平行な多数の微細溝152で形成されているが、表面粗さよりも小さい深さの獄微細加工であるため、図4の拡大写真に示すように、ミクロで見た場合には連続した溝には見えず、また、直線の溝にも見えない。
ブシュ120の内周面121と連結ピン150の外周面151とから成る摺動部は、図5に示すように、ブシュ120の内周面121が表面粗さの小さな滑らかな面であるが、連結ピン150の外周面151が表面粗さの小さな滑らかな面に多数の平行な微細溝152を設けた面となるため、液体105(潤滑油や凝集した水分等)が大きなメニスカス力を発生する近接部を分断してその面積を低減し、面全体のメニスカス力を低減することができる。
参考例2
次に、本発明の理解を助けるための第1参考例であるサイレントチェーンとして構成されたチェーン200について、図面に基づいて説明する。
チェーン200は、図6、図7に示すように、複数の内リンクプレート210のピン孔211、複数の中間リンクプレート240のピン孔241が交互に配置されて連結ピン250が緩挿され、この連結ピン250の両端が複数の内リンクプレート210の両最外に配置されたガイドプレート260のピン孔261に嵌合固定されることにより形成され、連結ピン250を軸として複数の中間リンクプレート240が回動することで自由に屈曲する。
複数の内リンクプレート210および複数の中間リンクプレート240には歯が設けられており、チェーン200がスプロケットに巻き掛けられた際に、該内リンクプレート210および中間リンクプレート240の歯がスプロケットの歯と当接するように構成されている。
チェーン200において、屈曲動作時に摺動する2つのチェーン構成部材の摺動部は、内リンクプレート210の側面と中間リンクプレート240の側面、内リンクプレート210の側面とガイドプレート260の内側面、および、内リンクプレート210のピン孔211の内周面と連結ピン250の外周面251がそれぞれ接触する部分である。
メニスカス力を軽減する多数の微細溝を形成する摺接面は、全ての摺動部に設けても良いが、特に、チェーン200がサイレントチェーンである場合、引張力を受ける内リンクプレート210のピン孔211の内周面と連結ピン250の外周面251とから成る摺動部が、最も表面粗さを向上させ摺動時の摺動抵抗を低減することで屈曲抵抗を低減する効果も高く、引張力を受けて摺接面間の平均距離も小さくなることから、少なくとも連結ピン250の外周面251にメニスカス力を軽減する多数の微細溝を形成するのが好適である。
上述したような参考例では、メニスカス力を軽減する多数の微細溝が連結ピン150、250の軸方向に平行に、すなわち、摺動方向と直角の方向に平行に延びるように設けられているが、摺接面の潤滑油の薄膜の形成効果等の特性に応じて、摺動方向に平行に延びるように設けられてもよく、斜めの方向に平行に延びるように設けられても良い。
そこで、本発明のチェーンは、上述した参考例のようなメニスカス力を軽減する多数の微細溝が摺接面を複数の区画に分けた区画ごとに異なる方向に平行に延びるように設けられている。
以上説明したように、本発明のチェーンによれば、摺接面を複数の区画に分けた区画ごとに異なる方向に平行に延びるように設けられた多数の微細溝により、表面粗さを向上させたことによる摺動時の潤滑油の薄膜の形成効果がさらに維持されるため、摺接面の表面粗さを向上させて摺動抵抗を低減して振動や騒音、磨耗や発熱を低減するとともに、メニスカス力の影響によって摺動開始時に必要となる引離力が低減されて振動や騒音、磨耗や発熱の発生が防止でき、摺接面間の適切な潤滑油膜を形成することができるなど、その効果は甚大である。
なお、メニスカス力を軽減する多数の微細溝は、チェーン構成部材の相互間に形成された摺動部だけでなく、チェーン構成部材とスプロケットの歯の間に形成された摺動部に設けても良い。
また、従来の潤滑油を保持したり潤滑油中の夾雑物を落とし込むように表面に凹部を設けた摺接面に、さらにメニスカス力を軽減する多数の微細溝を形成しても良い。
100、200、500 ・・・チェーン
101、 501 ・・・チェーン構成部材
102、 502 ・・・チェーン構成部材
103、 503 ・・・摺接面
104、 504 ・・・摺接面
105、 505 ・・・液体
110、210 ・・・内リンクプレート
111 ・・・ブシュ孔
211 ・・・ピン孔
120 ・・・ブシュ
121 ・・・ブシュ内周面
130 ・・・ローラ
140 ・・・外リンクプレート
240 ・・・中間リンクプレート
141、241 ・・・ピン孔
150、250 ・・・連結ピン
151 ・・・連結ピン外周面
152 ・・・微細溝
260 ・・・ガイドプレート
261 ・・・ピン孔

Claims (7)

  1. 複数のチェーン構成部材を屈曲可能かつスプロケットに巻回可能に組み付けてなるチェーンにおいて、
    前記複数のチェーン構成部材の相互間に形成された摺動部を構成する少なくとも1個所の摺接面が、メニスカス力を軽減する多数の微細溝を有しているとともに、
    前記多数の微細溝が、前記摺接面を複数の区画に分けた区画ごとに異なる方向に平行に延びるように設けられていることを特徴とするチェーン。
  2. 前記チェーン構成部材が、互いに屈曲時に接触摺動するリンクプレートを含み、
    前記多数の微細溝を有している摺接面が、互いに屈曲時に接触摺動する一方のリンクプレートの接触面および/または他方のリンクプレートの接触面であることを特徴とする請求項1に記載のチェーン。
  3. 前記チェーン構成部材が、リンクプレートおよび該リンクプレートのピン孔に遊嵌される連結ピンを含み、
    前記多数の微細溝を有している摺接面が、リンクプレートのピン孔内周面および/または連結ピンの外周面であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェーン。
  4. 前記チェーン構成部材が、連結ピンおよび該連結ピンに外嵌されるブシュを含み、
    前記多数の微細溝を有している摺接面が、ブシュの内周面および/またはブシュの端面であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチェーン。
  5. 前記チェーン構成部材が、ブシュおよび該ブシュに外嵌されるローラを含み、
    前記多数の微細溝を有している摺接面が、ブシュの外周面および/またはローラの内周面であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のチェーン。
  6. 前記多数の微細溝を有している摺接面が、ピッチを1μm以下、深さを0.1μm以下とした多数の溝を設けてなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のチェーン。
  7. 前記多数の微細溝が、フェムト秒レーザーによって加工されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のチェーン。
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