こうした電磁式ショックアブソーバは、ばね上部とばね下部との接近・離間動作をモータの回転動作に変換する必要がある。この場合、現実的な減衰力特性を得るためには、例えば、ボールねじ機構などの減速機が必要となる。ところが、減速機の慣性の影響で、ばね下共振帯域の減衰力特性が悪化し、乗り心地悪化が懸念される。図10は、路面入力がばね上部に伝達される伝達特性を表す。図中において、太線は、減速機を備えた電磁式ショックアブソーバによる伝達特性を表し、細線は、一般的な油圧ダンパ式ショックアブソーバによる伝達特性を表す。また、それぞれ、実線が低減衰時(ソフト)の伝達特性であり、破線が高減衰時(ハード)の伝達特性である。この図から分かるように、電磁式ショックアブソーバでは、特に低減衰時(ソフト)において、周波数fsより大きな範囲において減衰力特性が悪化している。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、減速機の慣性の影響で乗り心地が悪化することを抑制することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、モータと、ばね上部とばね下部との接近・離間動作を前記モータの動作に変換する動作変換機構とを有し、前記ばね上部とばね下部との接近・離間動作に伴って前記モータに発電電流が流れることにより、前記ばね上部とばね下部との接近・離間動作に対して減衰力を発生させる電磁式ショックアブソーバと、前記モータの2つの端子のうちの一方である第1端子から他方である第2端子への電流の流れが許容されるとともに前記第2端子から前記第1端子への電流の流れが禁止される第1接続路と、前記モータの前記第2端子から前記第1端子への電流の流れが許容されるとともに前記第1端子から前記第2端子への電流の流れが禁止される第2接続路と、前記第1接続路に設けられる第1スイッチング素子と、前記第2接続路に設けられる第2スイッチング素子とを有し、前記ばね上部とばね下部との接近動作時に前記第1接続路に発電電流が流れ前記ばね上部とばね下部との離間動作時に前記第2接続路に発電電流が流れる外部回路と、前記モータで発生させる減衰力の目標減衰係数を算出し、前記算出した目標減衰係数が負の値であれば前記目標減衰係数をゼロに置き換えて設定する目標減衰係数設定手段と、前記目標減衰係数に応じた減衰力が発生するように、前記ばね上部とばね下部との接近動作時であれば前記第1スイッチング素子を使って前記モータに流れる発電電流の大きさを制御し、前記ばね上部とばね下部との離間動作時であれば前記第2スイッチング素子を使って前記モータに流れる発電電流の大きさを制御する減衰力制御手段と、前記目標減衰係数設定手段により設定された目標減衰係数が正の値となる場合には、前記ばね上部とばね下部との接近動作時であれば前記第2スイッチング素子をオフ状態に制御し、前記ばね上部とばね下部との離間動作時であれば前記第1スイッチング素子をオフ状態に制御し、前記目標減衰係数設定手段により設定された目標減衰係数がゼロとなる場合には、前記ばね上部とばね下部との接近動作時であれば前記第2スイッチング素子をオン状態に制御し、前記ばね上部とばね下部との離間動作時であれば前記第1スイッチング素子をオン状態に制御する補助制御手段とを備えたことにある。
本発明においては、ばね上部とばね下部との接近・離間動作(接近動作および離間動作)が動作変換機構を介してモータに伝達される。動作変換機構としては、例えば、ボールねじ機構等の減速機を採用することができる。モータは、ばね上部とばね下部との接近・離間動作に伴って誘導起電力を発生する。従って、モータの端子間を相互に接続することで発電電流がモータに流れて、ばね上部とばね下部との接近・離間動作に対して減衰力を発生させることができる。この発電電流を流すために、モータの外部に外部回路が設けられている。外部回路は、モータの第1端子から第2端子への電流の流れが許容されるとともに第2端子から第1端子への電流の流れが禁止される第1接続路と、第2端子から第1端子への電流の流れが許容されるとともに第1端子から第2端子への電流の流れが禁止される第2接続路とを備えている。また、第1接続路には第1スイッチング素子が設けられ、第2接続路には第2スイッチング素子が設けられている。この場合、モータの発電電流は、ばね上部とばね下部との接近動作時においては第1接続路を流れ、ばね上部とばね下部との離間動作時においては第2接続路を流れる。尚、第1端子、第2端子は、モータの通電端子であって、この場合、モータ内で発生した誘導起電力の出力端子となる。また、第1接続路および第2接続路に、電流量を制限する抵抗器(第1抵抗器および第2抵抗器)を設けるとよい。
従って、ばね上部とばね下部との接近動作時に第1スイッチング素子を制御することにより、第1接続路に流れる発電電流の大きさを調整して減衰力を制御することができる。同様に、ばね上部とばね下部との離間動作時に第2スイッチング素子を制御することにより、第2接続路に流れる発電電流の大きさを調整して減衰力を制御することができる。こうした減衰力を制御するために、本発明においては、目標減衰係数設定手段と減衰力制御手段と補助制御手段とを備えている。
目標減衰係数設定手段は、モータで発生させる減衰力の目標減衰係数を算出し、算出した目標減衰係数が負の値であれば目標減衰係数をゼロに置き換えて設定する。つまり、算出した目標減衰係数がゼロ以上の値であれば、その値を目標減衰係数として設定し、算出した減衰係数が負の値であれば目標減衰係数をゼロに設定する。減衰係数とは、減衰力を発生させる指標であって、ばね上部とばね下部との接近・離間速度に対する減衰力の大きさで表される。
例えば、スカイフックダンパ理論に基づいて目標減衰係数を設定する場合、ばね上部の動作方向と、ばね上部のばね下部に対して動作する方向とが同じ向きであれば、ショックアブソーバの目標減衰係数が正の値となり、ばね上部の動作方向と、ばね上部のばね下部に対して動作する方向とが逆向きであれば、目標減衰係数が負の値となる。目標減衰係数が正の値となる場合であれば、モータに発電電流を流すことでショックアブソーバに減衰力を発生させることができるが、目標減衰係数が負の値となる場合には、アクティブなサスペンションでない限り、減衰力とは逆方向に働く推進力を発生させることができない。そこで、本発明においては、パッシブなサスペンションでも実施できるように、算出した目標減衰係数が負となる場合には、目標減衰係数をゼロに設定する。電磁式ショックアブソーバは、動作変換機構を備えているため、動作変換機構の慣性力が減衰力に影響を及ぼす。そこで、目標減衰係数設定手段は、モータで発生させる減衰力の目標減衰係数を算出することで適正な目標減衰係数を設定することができる。つまり、電磁式ショックアブソーバで発生させる減衰力から動作変換機構の慣性力を除いた力をモータで発生させるように目標減衰係数を算出する。
減衰力制御手段は、このように設定された目標減衰係数に応じた減衰力が発生するように、ばね上部とばね下部との接近動作時であれば第1スイッチング素子を使ってモータに流れる発電電流の大きさを制御し、ばね上部とばね下部との離間動作時であれば第2スイッチング素子を使ってモータに流れる発電電流の大きさを制御する。目標減衰係数がゼロに設定されている場合には、該当する接続路のスイッチング素子をオフ状態に維持することでモータに発電電流が流れないようにして、電磁式ショックアブソーバに減衰力が発生しないようにする。
目標減衰係数は、ばね上部のばね下部に対して動作する方向が反転するとき、つまり、接近動作と離間動作との切り替わり時(接近動作から離間動作への切り替わり時、および、離間動作から接近動作への切り替わり時)において、ほとんどの場合、その符号(正・負)が反転する。この動作反転時においては、モータに発生する誘導起電力の向きが反転し、発電電流の流れる接続路が切り替わる。例えば、接近動作から離間動作への切り替わった場合は、第1接続路を流れていた発電電流は、その向きを変えて第2接続路に流れる。また、離間動作から接近動作への切り替わった場合は、第2接続路を流れていた発電電流は、その向きを変えて第1接続路に流れる。従って、減衰力制御手段の制御対象となるスイッチング素子も接近・離間動作の反転に合わせて切り替わる。以下、減衰力制御手段の制御対象となるスイッチング素子を主制御対象のスイッチング素子と呼ぶ。また、主制御対象のスイッチング素子とは異なる他方のスイッチング素子を補助対象のスイッチング素子と呼ぶ。例えば、ばね上部とばね下部との接近動作時であれば、第1スイッチング素子が主制御対象のスイッチング素子、第2スイッチング素子が補助対象のスイッチング素子となり、ばね上部とばね下部との離間動作時であれば、第2スイッチング素子が主制御対象のスイッチング素子、第1スイッチング素子が補助対象のスイッチング素子となる。
ばね上部のばね下部に対して動作する方向が反転(以下、伸縮動作の反転と呼ぶ)するときには、非常に高い確率で目標減衰係数の符号が反転する。また、伸縮動作の反転時においては、すでに動作変換機構の慣性力が発生して最大になっている。そして、目標減衰係数が正の値に設定されている場合では、伸縮動作の反転に伴って、目標減衰係数がゼロに設定されるとともに、それまで補助対象であったスイッチング素子が主制御対象に切り替わりモータに発電電流が流れないように減衰力制御手段によりオフされる。このとき、伸縮動作の反転前から、補助対象のスイッチング素子をオフ状態にして待機させておけば、伸縮動作の反転直後から、瞬時に減衰力を発生させないようにすることができる。つまり、伸縮動作の反転時においては、すでに動作変換機構の慣性力が発生しているため、この慣性力が伸縮動作の反転時に減衰力として作用しやすいが、前もって補助対象のスイッチング素子をオフ状態に維持しておくことで、慣性力の影響を除去することができる。
そこで、補助制御手段は、目標減衰係数が正の値となる場合には、ばね上部とばね下部との接近動作時であれば補助対象となる第2スイッチング素子をオフ状態に制御し、ばね上部とばね下部との離間動作時であれば補助対象となる第1スイッチング素子をオフ状態に制御する。これにより、伸縮動作の反転直後から、瞬時に減衰力を発生させないようにすることができ、動作変換機構の慣性力の影響を低減することができる。この結果、本発明によれば、動作変換機構の慣性の影響で乗り心地が悪化することを抑制することができる。
目標減衰係数がゼロに設定されている場合では、伸縮動作の反転に伴って、目標減衰係数が正の値に設定されるとともに、それまで補助対象であったスイッチング素子が主制御対象に切り替わりモータに発電電流が流れて減衰力を発生させるように制御される。このとき、伸縮動作の反転前から、補助対象のスイッチング素子をオン状態にて待機させておけば、伸縮動作の反転直後から大きな減衰力を発生させることができる。つまり、伸縮動作の反転時においては、動作変換機構の慣性力が最大となっているため、この慣性力を伸縮動作の反転時に減衰力として有効利用することができる。
そこで、補助制御手段は、目標減衰係数がゼロとなる場合には、ばね上部とばね下部との接近動作時であれば補助対象となる第2スイッチング素子をオン状態に制御し、ばね上部とばね下部との離間動作時であれば補助対象となる第1スイッチング素子をオン状態に制御する。これにより、伸縮動作の反転時に動作変換機構の慣性力を減衰力として有効利用することができる。この結果、本発明によれば、乗り心地をさらに向上させることができる。尚、スイッチング素子をオン状態に制御するとは、例えば、デューティ比(オン期間/(オン期間+オフ期間))を制御する場合には、補助対象となるスイッチング素子をデューティ比100%にするものに限らず、慣性力で減衰力の補助ができるような補助用デューティ比に設定して制御するものであればよい。
本発明の他の特徴は、前記目標減衰係数設定手段は、少なくともばね上部の上下速度と、ばね上部とばね下部との接近・離間速度とに基づいて前記電磁式ショックアブソーバ全体のトータル目標減衰係数を算出し、このトータル目標減衰係数を設定したときの前記電磁式ショックアブソーバで発生する減衰力から、前記動作変換機構の慣性力を除いた力を前記モータで発生するように目標減衰係数を算出することにある。
本発明においては、目標減衰係数を設定するにあたって、少なくともばね上部の上下速度と、ばね上部とばね下部との接近・離間速度とに基づいて電磁式ショックアブソーバ全体のトータル目標減衰係数を算出する。例えば、スカイフックダンパ理論に基づいて、ばね上部の上下速度Vuを、ばね上部とばね下部との接近・離間速度Vsで除算した値にスカイフック減衰係数Csを乗じた値(Cs・Vu/Vs)から電磁式ショックアブソーバ全体のトータル目標減衰係数を算出する。そして、このトータル目標減衰係数を設定したときの電磁式ショックアブソーバで発生する減衰力から、動作変換機構の慣性力を除いた力をモータで発生するように目標減衰係数を算出する。そして、算出した目標減衰係数がゼロ以上の値であれば、その値をモータで発生させる減衰力の目標減衰係数として設定し、算出した目標減衰係数が負の値であれば、目標減衰係数をゼロに設定する。従って、本発明によれば、モータで発生させる減衰力を一層適正に制御することができ、乗り心地をさらに向上させることができる。尚、ばね上部の上下速度とは、絶対空間内においてばね上部が上下方向に動作する絶対速度であり、ばね上部とばね下部との接近・離間速度とは、ばね上部とばね下部とのあいだの距離が変化する相対速度、つまり、ストローク速度である。従って、目標減衰係数設定手段は、ばね上部の上下速度と、ストローク速度とを検出する検出手段を備えている。
また、本発明を実施するにあたり、例えば、外部回路から分岐して蓄電装置に接続する充電回路を設け、モータの発電電流の一部を蓄電装置に流して蓄電装置を充電するようにしてもよい。
以下、本発明の一実施形態に係るショックアブソーバ装置を含むサスペンション装置について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る車両用のサスペンション装置のシステム構成を概略的に示している。
このサスペンション装置は、各車輪WFL、WFR、WRL、WRRと車体Bとの間にそれぞれ設けられる4組のサスペンション本体10FL、10FR、10RL、10RRと、各サスペンション本体10FL、10FR、10RL、10RRの作動を制御する電子制御ユニット50とを備えている。以下、4組のサスペンション本体10FL、10FR、10RL、10RRおよび車輪WFL、WFR、WRL、WRRについては、特に前後左右を区別する場合を除いて、単にサスペンション本体10および車輪Wと総称する。また、電子制御ユニット50をECU50と呼ぶ。
サスペンション本体10は、図2に示すように、車輪Wを支持するロアアームLAと車体Bとの間に設けられ、路面から受ける衝撃を吸収し乗り心地を高めるとともに車体Bの重量を弾性的に支持するサスペンションスプリングとしてのコイルスプリング20と、コイルスプリング20の上下振動に対して減衰力を発生させる電磁式ショックアブソーバ30とを並列的に備えて構成される。以下、コイルスプリング20の上部側、つまり車体B側を「ばね上部」と呼び、コイルスプリング20の下部側、つまり車輪W側を「ばね下部」と呼ぶ。
電磁式ショックアブソーバ30は、同軸状に配置されるアウタシリンダ31およびインナシリンダ32と、インナシリンダ32の内側に設けられる減速機であるボールねじ機構35と、ボールねじ機構35の動作によりロータ(図示略)が回されて誘導起電力を発生する電動モータ40(以下、単にモータ40と呼ぶ)とを備える。本実施形態においては、モータ40として、ブラシ付DCモータが用いられる。
アウタシリンダ31とインナシリンダ32とは、同軸異径パイプで構成され、インナシリンダ32の外周に軸方向へ摺動可能にアウタシリンダ31が設けられる。図中、符号33,34は、アウタシリンダ31内にインナシリンダ32を摺動可能に支持する軸受である。
ボールねじ機構35は、本発明の動作変換機構に相当するもので、モータ40のロータと一体的に回転するボールねじ36と、ボールねじ36に形成された雄ねじ部分37に螺合する雌ねじ部分38を有するボールねじナット39とからなる。ボールねじナット39は、図示しない回り止めにより、その回転運動ができないように規制されている。従って、このボールねじ機構35においては、ボールねじナット39の上下軸方向の直線運動がボールねじ35の回転運動に変換され、逆に、ボールねじ36の回転運動がボールねじナット39の上下軸方向の直線運動に変換される。
ボールねじナット39の下端は、アウタシリンダ31の底面に固着されており、ボールねじ36に対してアウタシリンダ31を軸方向に相対移動させようとする外力が加わると、ボールねじ36が回転してモータ40を回転させる。このときモータ40は、そのロータに設けた電磁コイル(図示略)が、ステータに設けた永久磁石(図示略)から発生する磁束を横切ることによって、電磁コイルに誘導起電力を発生させて発電機として働く。
インナシリンダ32の上端は、取付プレート41に固定される。この取付プレート41は、モータ40のモータケーシング42に固定されるとともに、その中央に形成した貫通孔43にボールねじ36が挿通される。ボールねじ36は、モータケーシング42内においてモータ40のロータと連結されるとともに、インナシリンダ32内の軸受44によって回転可能に支持される。
コイルスプリング20は、アウタシリンダ31の外周面に設けられた環状のリテーナ45と、モータ40の取付プレート46との間に圧縮状態で介装される。このように構成されたサスペンション本体10は、取付プレート46の上面で弾性材料からなるアッパーサポート26を介して車体Bに取り付けられる。
車両が走行中にばね下部(車輪W)が上下動する場合は、インナシリンダ32に対してアウタシリンダ31が軸方向に摺動してコイルスプリング20が伸縮することにより、路面から受ける衝撃を吸収し乗り心地を高めるとともに車両の重量を支持する。このとき、ボールねじナット39がボールねじ36に対して上下動してボールねじ36を回転させる。このため、モータ40は、ロータが回転して電磁コイルに誘導起電力が発生し、後述する外部回路100を介して発電電流が流れることによりロータの回転を止めようとする抵抗力が発生する。この抵抗力が電磁式ショックアブソーバ30の減衰力として働く。減衰力の調整は、各電磁式ショックアブソーバ30ごとに設けられた外部回路100によりモータ40の電磁コイルに流れる電流の大きさを調整することで可能となる。
次に、電磁式ショックアブソーバ30の作動を制御する構成について説明する。電磁式ショックアブソーバ30は、モータ40の外部に設けられる外部回路100を介してECU50により制御される。ECU50は、マイクロコンピュータを主要部として備え、外部回路100のスイッチング制御により電磁式ショックアブソーバ30のモータ40に流れる電流量を調整して減衰力制御を実行する。この減衰力制御は、後述するが、各車輪位置の電磁式ショックアブソーバ30ごとに、その電磁式ショックアブソーバ30に対応する外部回路100のスイッチング制御により独立して行われる。ECU50には、ばね上部とばね下部との上下方向の離間距離(以下、ストロークSと呼ぶ)を各車輪Wの位置においてそれぞれ検出するストロークセンサ61と、ばね上部の上下方向の加速度(ばね上加速度G)を各車輪Wの位置においてそれぞれ検出するばね上加速度センサ62とを接続している。
次に、図3を用いて、外部回路100について説明する。外部回路100は、ばね上部(車体B)とばね下部(車輪W)との相対運動によりモータ40がボールねじ機構35を介して回されたとき、モータ40で発生した誘導起電力により、モータ40の通電端子間(第1端子t1と第2端子t2との間)に発電電流が流れることを許容する回路であり、また、モータ40の誘導起電力(誘起電圧)が大きいときには、発電電流の一部を蓄電装置110に流して蓄電装置110充電する回路でもある。図中において、Rmはモータ40の内部抵抗、Lmはモータインダクタンスを表す。この図では、Rm,Lmをモータ40の表示記号Mの外に記載しているが、実際には、Rm,Lmは、第1端子t1と第2端子t2との間に存在するものである。
外部回路100は、モータ40の第1端子t1と第2端子t2とを、a点とb点とにおいて電気的に結ぶ配線abと、c点とd点とにおいて電気的に結ぶ配線cdとを備えている。尚、図中において、配線については、各点(a,b,c…)を結ぶ線であるため、その符号の表示を省略している。配線abには、a点からb点に向かう方向の電流の流れを許容しb点からa点に向かう方向の電流の流れを阻止する第1ダイオードD1と、b点からa点に向かう方向の電流の流れを許容しa点からb点に向かう方向の電流の流れを阻止する第2ダイオードD2とが設けられている。配線cdには、c点側から順に、第1スイッチング素子SW1,第1抵抗器R1,第2抵抗器R2,第2スイッチング素子SW2が直列に設けられている。第1抵抗器R1,第2抵抗器R2は、減衰力を設定する固定抵抗器である。本実施形態においては、第1スイッチング素子SW1,第2スイッチング素子SW2としてMOS−FETを使用するが他のスイッチング素子を使用することもできる。第1スイッチング素子SW1,第2スイッチング素子SW2は、それぞれゲートがECU50に接続され、ECU50からのPWM(Pulse Width Modulation)制御信号により設定されるデューティ比でオンオフ作動するように構成されている。尚、本明細書におけるデューティ比とは、オンデューティ比、つまり、パルス信号のオン時間とオフ時間とを足し合わせた時間に対するパルス信号のオン時間の比を表す。
また、第1端子t1とa点とは、配線t1aにより電気的に連結され、第2端子t2とb点とは、配線t2bにより電気的に連結されている。配線t1aには、電流センサ111が設けられている。電流センサ111は、モータ40に流れる電流を検出して、通電方向を示す情報を含めた測定値ixを表す検出信号をECU50に出力する。
また、配線abにおける第1ダイオードD1と第2ダイオードD2との間のe点と、配線cdにおける第1抵抗器R1と第2抵抗器R2との間のf点とは、配線efにより電気的に連結されている。第1スイッチング素子SW1と第1抵抗器R1との接続点となるg点には、車載電源バッテリとして設けられた蓄電装置110への充電路となる第1充電路giが分岐して設けられる。また、第2スイッチング素子SW2と第2抵抗器R2との接続点となるh点には、蓄電装置110への充電路となる第2充電路hiが分岐して設けられる。第1充電路giと第2充電路hiとは、i点と蓄電装置110の正極jとを結ぶ主充電路ijにi点で接続されている。また、f点と蓄電装置110の負極kとはグランドラインkfにより接続されている。尚、蓄電装置110には、車両内に設けられた各種の電気負荷が接続されている。
第1充電路giには、g点からi点に向かう方向の電流の流れを許容しi点からg点に向かう方向の電流の流れを阻止する第3ダイオードD3が設けられる。また、第2充電路hiには、h点からi点に向かう方向の電流の流れを許容しi点からh点に向かう方向の電流の流れを阻止する第4ダイオードD4が設けられる。つまり、外部回路100から蓄電装置110への充電を許容し、蓄電装置110から外部回路100への放電を阻止するように充電回路が構成されている。
次に、外部回路100の動作について説明する。モータ40は、ばね上部とばね下部との相対運動によりボールねじ機構35を介してロータが回されると、その回転方向に応じた向きに誘導起電力を発生する。例えば、ばね上部とばね下部とが接近して電磁式ショックアブソーバ30が圧縮される圧縮動作時においては、モータ40の第1端子t1が高電位となり第2端子t2が低電位となる。逆に、ばね上部とばね下部とが離れて電磁式ショックアブソーバ30が伸ばされる伸長動作時においては、モータ40の第2端子t2が高電位となり第1端子t1が低電位となる。
従って、電磁式ショックアブソーバ30が圧縮される圧縮動作時においては、c点、f点、e点、b点を通って、第1端子t1から第2端子t2に発電電流が流れる第1接続路cfebが形成される。また、電磁式ショックアブソーバ30が伸ばされる伸長動作時においては、d点、f点、e点、a点を通って、第2端子t2から第1端子t1に発電電流が流れる第2接続路dfeaが形成される。つまり、電磁式ショックアブソーバ30の圧縮動作と伸長動作とで発電電流の流れる回路が異なるように構成されている。この例では、第1抵抗器R1が、第1端子t1から第2端子t2に流れる発電電流に対する抵抗となり、第1スイッチング素子SW1が、第1端子t1から第2端子t2に流れる発電電流の大きさ(通電量)を調整する電流調整器として機能する。また、第2抵抗器R2が、第2端子t2から第1端子t1に流れる発電電流に対する抵抗となり、第2スイッチング素子SW2が、第2端子t2から第1端子t1に流れる発電電流の大きさ(通電量)を調整する電流調整器として機能する。
モータ40の電磁コイルに発電電流が流れることにより、モータ40に発電ブレーキが働き、これによりボールねじナット39とボールねじ36との相対回転を抑制する。つまり、ばね上部とばね下部との相対運動を抑制する減衰力が発生する。また、発電電流の大きさを調整することにより減衰力を調整することができる。従って、第1抵抗器R1の抵抗値と第1スイッチング素子SW1のデューティ比にて圧縮動作に対する減衰力を設定でき、第2抵抗器R2の抵抗値と第2スイッチング素子SW2のデューティ比にて伸長動作に対する減衰力を設定できる。つまり、電磁式ショックアブソーバ30の圧縮動作方向と伸長動作方向とに対して、独立して減衰力を設定することができる。
また、このような減衰力の調整は、各輪ごとに電磁式ショックアブソーバ30の外部回路100のスイッチング制御により独立して行うことができるものである。
また、モータ40で発生する誘導起電力は、モータ回転速度が大きくなるほど大きくなる。そして、誘導起電力(誘起電圧)が蓄電装置110の出力電圧(蓄電電圧)を越えると、モータ40で発電された電力の一部が蓄電装置110に回生される。例えば、電磁式ショックアブソーバ30の圧縮動作時であれば、発電電流がg点で2方向に分流し、一方は、そのまま第1接続路cfebを流れ、他方は、第1充電路giに流れる。従って、第1充電路giに流れた発電電流により蓄電装置110が充電される。また、電磁式ショックアブソーバ30の伸長動作時であれば、発電電流がh点で2方向に分流し、一方は、そのまま第2接続路dfeaを流れ、他方は、第2充電路hiに流れる。従って、第2充電路hiに流れた発電電流により蓄電装置110が充電される。
ここで、モータ40に発生させる減衰力について説明する。図4は、本実施形態のサスペンション装置のモデルを表す。図中において、Mu:ばね上質量、Md:ばね下質量、k1:タイヤのばね定数、k2:コイルスプリング20のばね定数、C:モータ40で発生する減衰力の減衰係数、x0:路面位置、x1:ばね下位置、x2:ばね上位置、J:ボールねじ機構35(モータ40の回転部分を含む)の慣性モーメント、Rm:モータ内部抵抗、R:可変抵抗、Lm:インダクタンスである。モータ40で発生する力Fは、次式(1)で表される。
また、モータ40で発生する力Fは、次式(2)にて表すこともできる。
ここで、L:ボールねじ36のリード、Km:モータ逆起電力定数、Kt:モータトルク定数、s:ラプラス演算子である。
また、サスペンション装置の運動方程式は、次式(3),(4)にて表すことができる。
式(3)、(4)における右辺の第1項がボールねじ機構35により発生した慣性力の項である。
一方、電磁式ショックアブソーバ30で発生させる減衰力のトータル目標減衰係数Ctは、スカイフックダンパ理論に基づいて、次式(5)により求められる。
式中のCsは、予め設定した係数(スカイフック減衰係数)である。この式から分かるように、トータル目標減衰係数Ctは、ばね上部の上下速度(以下、ばね上速度と呼ぶ)に比例し、ばね上部のばね下部に対する相対速度(以下、ストローク速度と呼ぶ)に反比例する。また、トータル目標減衰係数Ctは、ばね上部の動作方向と、ばね上部のばね下部に対する動作方向とが同じ方向であれば正の値をとり、ばね上部の動作方向と、ばね上部のばね下部に対する動作方向とが逆方向であれば負の値をとる。
電磁式ショックアブソーバ30で発生する力は、モータ40で発生する力とボールねじ機構35により発生する慣性力との和となる。従って、次式(6)の関係式が成立する。
従って、モータ40で発生させるべき減衰力は、電磁式ショックアブソーバ30で発生させる減衰力からボールねじ機構35(モータ40の回転部分を含む)で発生する慣性力を除いた力となり、次式(7)にて表すことができる。尚、電磁式ショックアブソーバ30の圧縮動作に対する減衰力を正の値にて示している。
この関係式から、モータ40により発生させる減衰力の減衰係数を目標減衰係数Cとして次式(8)により求めることができる。
本実施形態の電磁式ショックアブソーバ30は、減衰力の発生は可能であるが、減衰力と反対方向に発生させる推進力(負の減衰力)を発生させることはできない。従って、目標減衰係数Cが負の値となる場合(C<0)には、できるだけ減衰力を発生させないように、目標減衰係数Cをゼロに設定する(C=0)。図5は、このように目標減衰係数Cを設定した場合の、ストローク速度と減衰力との関係を表す減衰力マップである。図中、第2象限と第4象限は、目標減衰係数Cがゼロに設定されて、モータ40にて減衰力を発生できない領域となる。また、第1象限と第3象限においてハッチングを施した範囲が減衰力を調整できる範囲となる。一方、ボールねじ機構35により発生する慣性力は、図6に示すように、ストローク加速度に比例した値となる。
尚、慣性力による乗り心地の悪化は、図10に示すように、周波数fs以上の周波数帯で発生している。そこで、本実施形態においては、目標減衰係数Cの算出にあたって、ストロークセンサ61、および、ばね上加速度センサ62により検出されるセンサ値をバンドパスフィルタ処理し、そのバンドパスフィルタ処理されたセンサ値を使って、ストローク速度、ストローク加速度、ばね上速度を求め、上述した式(8)から目標減衰係数Cを算出する。この場合、バンドパスフィルタの通過周波数は、図9に示すように、周波数fs(ばね上共振周波数より大きくばね下共振周波数より小さな値)から予め設定した設定周波数fe(例えば、100Hz)までの帯域に設定する。尚、センサ値をバンドパスフィルタ処理するのではなく、目標減衰係数Cをバンドパスフィルタ処理するようにしてもよい。
次に、ボールねじ機構35の慣性力の影響を考慮した減衰力制御について説明する。上述したように、電磁式ショックアブソーバ30の圧縮動作時においては、第1接続路cfebに発電電流が流れ、その発電電流の大きさを第1スイッチング素子SW1のデューティ比で調整することにより減衰力を制御することができる。このとき、第2抵抗器R2により、第2スイッチング素子SW2にはそのデューティ比に関係なく発電電流は流れない。従って、圧縮動作時においては、第1スイッチング素子SW1が減衰力制御を行うための制御対象となる。以下、制御対象となるスイッチング素子を主制御対象スイッチング素子と呼び、制御対象とならないスイッチング素子を補助対象スイッチング素子と呼ぶ。一方、電磁式ショックアブソーバ30の伸長動作時においては、第2接続路dfeaに発電電流が流れ、その発電電流の大きさを第2スイッチング素子SW2のデューティ比で調整することにより減衰力を制御することができる。このとき、第1抵抗器R1により、第1スイッチング素子SW1にはそのデューティ比に関係なく発電電流は流れない。従って、伸長動作時においては、第2スイッチング素子SW2が主制御対象スイッチング素子となり、第1スイッチング素子SW1が補助対象スイッチング素子となる。
図7に示すように、電磁式ショックアブソーバ30の伸縮状態が切り替わるときには、モータ40で発生する減衰力は、その符号(向き)が反転するが、ボールねじ機構35で発生する慣性力に関しては、その符号(向き)が反転しない。例えば、電磁式ショックアブソーバ30が圧縮動作から伸長動作に切り替わるときには、減衰力は正から負に切り替わる。この切り替わり時においては、慣性力はすでに負の力を発生している。つまり、伸縮動作反転後の減衰力と同じ方向に慣性力が発生している。一方、電磁式ショックアブソーバ30が伸長動作から圧縮動作に切り替わるときには、減衰力は負から正に切り替わる。この切り替わり時においては、慣性力はすでに正の力を発生している。この場合も、動作反転後の減衰力と同じ方向に慣性力が発生している。
また、モータ40の目標減衰係数Cは、式(5),(8)から分かるように、電磁式ショックアブソーバ30の伸縮状態が切り替わるときに、非常に高い確率で符号(正負)が反転する。従って、目標減衰係数Cは、伸縮動作反転前の値が正に設定されていれば、伸縮動作反転後にゼロに切り替わり、伸縮動作反転前の値がゼロ(計算値は負)に設定されていれば、伸縮動作反転後に正の値に切り替わる。目標減衰係数Cがゼロに設定されている場合には、減衰力とは反対方向の推進力を発生させたい状況であり、この場合には、慣性力が減衰力制御に対して邪魔をする方向に働く。一方、目標減衰係数が正に設定されている場合には、慣性力を減衰力として有効利用することができる。
減衰力制御においては、目標減衰係数Cがゼロに設定されている状態(減衰力をゼロにしたい状態)で伸縮動作が反転した場合、その反転の瞬間から大きな減衰力が要求される。このとき、外部回路100においては、伸縮動作反転前に補助対象であったスイッチング素子が主制御対象に切り替わるが、切り替わった瞬間はモータ40から大きな減衰力を発生させることができない。そこで、本実施形態においては、伸縮動作反転前に補助対象となるスイッチング素子をオン(デューティ比100%)にして待機させ、伸縮動作反転直後から慣性力を利用して電磁式ショックアブソーバ30に大きな減衰力を発生させる。
一方、目標減衰係数Cが正の値に設定されている状態(減衰力を発生させたい状態)で伸縮動作が反転した場合、その反転の瞬間から減衰力を発生させないようにすることが要求される。このとき、外部回路100においては、伸縮動作反転前に補助対象であったスイッチング素子が主制御対象に切り替わるが、慣性力はすでに発生しているため、慣性力が伸縮動作反転時に減衰力として発生しやすい。そこで、本実施形態においては、伸縮動作反転前に補助対象となるスイッチング素子をオフ(デューティ比0%)にして待機させ、伸縮動作反転直後から慣性力を除去する。
こうしたスイッチング素子SW1,SW2の制御は、ECU50により実行される。以下、ECU50の実行する減衰力制御処理について図8のフローチャートを使って説明する。図8に示す減衰力制御ルーチンは、ECU50のROM内に制御プログラムとして記憶されており、各輪の電磁式ショックアブソーバ30ごとに独立して実行される。減衰力制御ルーチンは、イグニッションスイッチがオンされてからオフされるまでの間、所定の短い周期で繰り返し実行される。
本減衰力制御ルーチンが起動すると、ECU50は、ステップS11において、ストロークセンサ61により検出されるストロークSを読み込み、続くステップS12において、ばね上加速度センサ62により検出されるばね上加速度Gを読み込む。ECU50は、続くステップS13において、センサ値であるストロークSおよびばね上加速度Gに対してバンドパスフィルタ処理する。この場合、図9に示すような特性のバンドパスフィルタ処理を行う。ECU50は、フィルタ処理されたストロークSを1階微分することによりストローク速度を算出し、ストロークSを2階微分することによりストローク加速度を算出する。また、フィルタ処理されたばね上加速度Gを積分することでばね上速度を算出する。
続いて、ECU50は、ステップS14において、式(8)により目標減衰係数Cを算出する。続くステップS15において、目標減衰係数Cが負の値であるか否かを判断し、目標減衰係数Cが負の値である場合(C<0)には、ステップS16において、目標減衰係数Cの値をゼロに置き換える(C=0)。一方、目標減衰係数Cが負の値でなければ、ステップS16の処理をスキップする。つまり、目標減衰係数Cの値を変更しない。こうして最終的な目標減衰係数Cが設定される。
続いて、ECU50は、ステップS17において、ストローク速度の向きに基づいて、電磁式ショックアブソーバ30が圧縮動作している状態か否かを判断する。電磁式ショックアブソーバ30が圧縮動作している場合(S17:Yes)には、ステップS18において、目標減衰係数Cが正の値であるか否かを判断する。上述したように目標減衰係数Cは、計算上の値が負となる場合はゼロに設定されているため、ここでは、目標減衰係数Cが正の値かゼロかについて判断することになる。目標減衰係数Cが正の値である場合には(S18:Yes)、ステップS19において、圧縮動作に対する減衰力を発生させるために、第1接続路cfebに流す発電電流の目標値である目標電流i1*を計算する。
モータ40で発生する減衰力は、減衰係数にストローク速度Vsを乗じた値となる。また、モータ40に流れる発電電流は、減衰力をモータトルクに換算し、その値をモータトルク定数Ktで除算して求められる。従って、第1接続路cfebに流す目標電流i1*は、目標減衰係数Cにストローク速度Vsを乗じた値に予め設定された比例定数を乗じて求めることができる。尚、目標電流i*は、電磁式ショックアブソーバ30の伸縮動作を妨げる方向に発電電流を流して減衰力を発生させるものであるため、その通電方向は、電磁式ショックアブソーバ30の動作方向に応じて異なる。つまり、電磁式ショックアブソーバ30の圧縮動作時であれば、第1端子t1から第1接続路cfebを通って第2端子t2に流れる向きとなり、電磁式ショックアブソーバ30の伸長動作時であれば、第2端子t2から第2接続路dfeaを通って第1端子t1に流れる向きとなる。
続いて、ECU50は、ステップS20において、電流センサ110により検出される電流ix(以下、実電流ixと呼ぶ)を読み込む。続いて、ステップS21において、目標電流i1*と実電流ixの偏差Δi(=i1*−ix)に基づくフィードバック制御(例えば、PID制御)により、実電流ixが目標電流i1*と等しくなるように、主制御対象となる第1スイッチング素子SW1にPWM制御信号を出力してデューティ比を調整する。これにより、目標減衰係数Cに応じた発電制動力がモータ40に発生し、この発電制動力がサスペンション装置の減衰力として作用する。
続いて、ECU50は、ステップS22において、補助対象となる第2スイッチング素子SW2にオフ指令信号(デューティ比0%のPMM制御信号)を出力する。従って、第2スイッチング素子SW2がオフ状態となり、第2接続路dfeaが遮断された状態に維持される。このステップS22の処理は、上述したように、伸縮動作反転時(次の伸長動作時)に慣性力による減衰力を瞬時に遮断できるように待機する処理である。
一方、ステップS18において、目標減衰係数Cがゼロであると判断された場合には、減衰力を発生させないようにするため、ステップS23において、主制御対象となる第1スイッチング素子SW1にオフ指令信号(デューティ比0%のPWM制御信号)を出力して、第1接続路cfebを遮断する。続いて、ステップS24において、補助対象となる第2スイッチング素子SW2にオン指令信号(デューティ比100%のPMM制御信号)を出力する。従って、第2スイッチング素子SW2がオン状態となり、第2接続路dfeaが導通された状態(回路抵抗値が最小となった状態)に維持される。このステップS24の処理は、上述したように、伸縮動作反転時(次の伸長動作時)に慣性力を利用して減衰力を瞬時に発生させることができるように待機する処理である。
ECU50は、ステップS22あるいはステップS24の処理を行うと、一旦、減衰力制御ルーチンを終了する。そして、所定の短い周期で減衰力制御ルーチンを繰り返す。こうした処理が繰り返されているときに、電磁式ショックアブソーバ30の伸縮動作が反転して圧縮動作から伸長動作に切り替わると、ステップS17において、「No」と判定される。この場合には、ECU50は、ステップS25において、目標減衰係数Cが正の値であるか否かを判断する。目標減衰係数Cが正の値である場合には、ステップS26において、伸長動作に対する減衰力を発生させるために、第2接続路dfeaに流す発電電流の目標値である目標電流i2*を計算する。目標電流i2*は、目標減衰係数Cにストローク速度Vsを乗じた値に比例定数を乗じて求められる。
続いて、ECU50は、ステップS27において、電流センサ110により検出される実電流ixを読み込み、ステップS28において、目標電流i2*と実電流ixの偏差Δi(=i2*−ix)に基づくフィードバック制御(例えば、PID制御)により、実電流ixが目標電流i2*と等しくなるように、主制御対象となる第2スイッチング素子SW2にPWM制御信号を出力してデューティ比を調整する。これにより、目標減衰係数Cに応じた発電制動力がモータ40に発生し、この発電制動力がサスペンション装置の減衰力として作用する。
この場合、電磁式ショックアブソーバ30の伸縮動作が反転する直前においては、非常に高い確率で目標減衰係数Cがゼロに設定されており、ステップS24において第2スイッチング素子SW2がオン状態に維持されている。従って、電磁式ショックアブソーバ30の伸縮動作が反転した直後から、その前から発生している慣性力を減衰力として利用することができる。つまり、電磁式ショックアブソーバ30の伸縮動作が反転した後に発生する減衰力の方向は、その前から発生している慣性力と同じ方向であり、しかも、伸縮動作の反転直後は大きな減衰力が瞬時に必要となる。そこで、減衰力の発生が遅れないように、伸縮動作の反転に備えて第2スイッチング素子SW2をオン状態で待機させ、伸縮動作の反転時に第2スイッチング素子SW2をオン状態から電流フィードバックによるデューティ比制御に移行させることにより、反転直後に慣性力を減衰力として利用できるようにしている。
続いて、ECU50は、ステップS29において、補助対象となる第1スイッチング素子SW1にオフ指令信号(デューティ比0%のPMM制御信号)を出力する。従って、第1スイッチング素子SW1がオフ状態となり、第1接続路cfebが遮断された状態に維持される。このステップS29の処理は、伸縮動作反転時(次の圧縮動作時)に減衰力と慣性力とを瞬時に遮断できるように待機する処理である。
一方、ステップS25において、目標減衰係数Cがゼロであると判断された場合には、減衰力を発生させないようにするため、ステップS30において、主制御対象となる第2スイッチング素子SW2にオフ指令信号(デューティ比0%のPWM制御信号)を出力して、第2接続路dfeaを遮断する。この場合、電磁式ショックアブソーバ30の伸縮動作が反転する直前においては、ステップS22にて第2スイッチング素子SW2がオフ状態に維持されているため、第2接続路dfeaに発電電流が流れることが無く、確実に減衰力の発生を無くすことができる。ECU50は、続くステップS31において、補助対象となる第1スイッチング素子SW1にオン指令信号(デューティ比100%のPMM制御信号)を出力する。従って、第1スイッチング素子SW1がオン状態となり、第1接続路cfebが導通された状態(回路抵抗値が最小となった状態)に維持される。このステップS31の処理は、伸縮動作反転時(次の圧縮動作)に慣性力を利用して減衰力を瞬時に発生させることができるように待機する処理である。
ECU50は、ステップS29あるいはステップS31の処理を行うと、一旦、減衰力制御ルーチンを終了する。そして、所定の短い周期で減衰力ルーチンを繰り返す。こうした処理が繰り返されているときに、電磁式ショックアブソーバ30の伸縮動作が反転して伸長動作から圧縮動作に切り替わると、ステップS17において、「Yes」と判定される。この場合には、ECU50は、ステップS18において、目標減衰係数Cが正の値であるか否かを判断する。目標減衰係数Cが正の値である場合には、減衰力を発生させるために、ステップS19〜S21にて、主制御対象となる第1スイッチング素子SW1のデューティ比を制御するが、伸縮動作が反転する直前においては、非常に高い確率で目標減衰係数Cがゼロに設定されて第1スイッチング素子SW1がオン状態に維持されている(S31)。このため、伸長動作が反転する前から発生している慣性力を、伸長動作の反転直後に減衰力として利用して電磁式ショックアブソーバ30に大きな減衰力を発生させることができる。
一方、ステップS18において、目標減衰係数Cがゼロであると判断された場合には、減衰力を発生させないようにするため、ステップS23において、主制御対象となる第1スイッチング素子SW1にオフ指令信号(デューティ比0%のPWM制御信号)を出力して、第1接続路cfebを遮断する。この場合、電磁式ショックアブソーバ30の伸縮動作が反転する直前においては、ステップS29にて第1スイッチング素子SW1がオフ状態に維持されているため、第1接続路cfebに発電電流が流れることが無く、確実に減衰力の発生を無くすことができる。
以上説明した本実施形態のサスペンション装置によれば、スカイフックダンパ理論から電磁式ショックアブソーバ30全体のトータル目標減衰係数を算出し、トータル目標減衰係数を設定したときの電磁式ショックアブソーバ30で発生する減衰力から、ボールねじ機構35で発生する慣性力を除いた力をモータ40で発生するように目標減衰係数Cを算出する。この場合、目標減衰係数Cが負の値をとるときには、目標減衰係数Cをゼロに置き換える。そして、目標減衰係数Cが正の値であれば、モータ40の発電電流が目標電流と等しくなるように主制御対象のスイッチング素子のデューティ比を調整して目標とする減衰力をモータ40で発生させるとともに、補助対象となるスイッチング素子をオフ状態で待機させる。従って、電磁式ショックアブソーバ30の次の伸縮動作の反転時に発電電流が流れることを確実に防止して減衰力を発生させないようにできる。一方、目標減衰係数Cがゼロに設定されている場合(目標減衰係数Cの計算値が負となる場合)には、主制御対象のスイッチング素子をオフ状態にして減衰力を発生させないようにするとともに、補助対象となるスイッチング素子をオン状態で待機させる。従って、電磁式ショックアブソーバ30の次の伸縮動作の反転時に、ボールねじ機構35の慣性力を減衰力として利用することができ、伸縮動作の反転直後から大きな減衰力を発生させることができる。この結果、ボールねじ機構35の慣性により乗り心地が悪化することを抑制することができる。また、電磁式ショックアブソーバ30のモータ40として単相のブラシ付モータを使用しているため、モータ駆動回路(外部回路100)も含めて簡易なシステムで構成することが可能となり低コスト化を図ることができる。
尚、減衰力制御ルーチンにおいてECU50が行うステップS14〜S16の処理が本発明の目標減衰係数設定手段に相当する。また、減衰力制御ルーチンにおいてECU50が行うステップS19〜S21,ステップS23,ステップS26〜S28,ステップS30の処理が本発明の減衰力制御手段に相当する。また、減衰力制御ルーチンにおいてECU50が行うステップS22,ステップS24,ステップS29,ステップS31の処理が本発明の補助制御手段に相当する。また、本実施形態の電磁式ショックアブソーバ30、外部回路100、ECU50、ストロークセンサ61、ばね上加速度センサ62からなる構成が本発明のショックアブソーバ装置に相当する。
以上、本実施形態のショックアブソーバ装置を備えたサスペンション装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、減衰力制御ルーチンのステップS24,S31において、補助対象となるスイッチング素子をデューティ比100%で待機させる構成であるが、電磁式ショックアブソーバ30の伸縮動作の反転直後に慣性力の補助を受けられるものであれば、必ずしもデューティ比を100%にする必要はなく、予め設定した補助用デューティ比(≠0%)に設定するものであってもよい。
また、本実施形態においては、減衰力を発生させるモータ40としてブラシ付モータを使っているが、ブラシレスモータを使用することもできる。また、リニアソレノイドタイプの直動型モータを用いてもよい。