JP5309272B1 - 銅合金板及び銅合金板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

この銅合金板の一態様は、4.5〜12.0mass%のZnと、0.40〜0.90mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPとを含有し、かつ0.005〜0.08mass%のCo及び0.03〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、11≦[Zn]+7×[Sn]+15×[P]+12×[Co]+4.5×[Ni]≦17の関係を満たす。この銅合金板の一態様は、銅合金材料が冷間圧延される仕上げ冷間圧延工程を含む製造工程によって製造され、前記銅合金材料の平均結晶粒径が2.0〜8.0μmであり、前記銅合金材料中に円形又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nmであるか、又は、前記析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める割合が70%以上である。

Description

本発明は、銅合金板及び銅合金板の製造方法に関する。特に、引張強度、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性、応力緩和特性に優れた銅合金板及び銅合金板の製造方法に関する。
本願は、2011年9月16日に、日本に出願された特願2011−203451号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来より、電気部品,電子部品,自動車部品、通信機器,電子・電気機器等に使用されるコネクタ、端子、リレー、ばね、スイッチ等の構成材として、高導電で、高強度を有する銅合金板が使用されている。しかしながら、近年のかかる機器の小型化,軽量化,高性能化に伴って、それらに使用される構成材料にも、極めて厳しい特性改善が要求されている。例えば、コネクタのバネ接点部には極薄板が使用されるが、かかる極薄板を構成する高強度銅合金には、薄肉化を図るために、高い強度や、伸びと強度との高度なバランスを有することが要求される。更に、生産性,経済性に優れること及び導電性,耐食性(耐応力腐食割れ,耐脱亜鉛腐食,耐マイグレーション),応力緩和特性,半田付け性等において問題のないことが要求される。
また、電気部品,電子部品,自動車部品、通信機器,電子・電気機器等に使用されるコネクタ、端子、リレー、ばね、スイッチ等の構成材においては、伸び、曲げ加工性に優れることを前提として、薄肉化の要請のために、より高い強度や、より高い導電率が必要な部品及び部位が存在する。しかしながら、強度と導電率とは、相反する特性であり、強度が向上すれば、一般に導電率は下がる。この中で、高強度材であって、例えば500N/mm又はそれ以上の引張強度で、より高い導電率(32%IACS以上、例えば36%IACS程度)を求める部品がある。また、例えば自動車のエンジンルームに近いような使用環境温度が高いところで、応力緩和特性、耐熱性が更に優れることを求められる部品もある。
高導電、高強度銅合金としては、一般に、ベリリウム銅、りん青銅、洋白、黄銅やSnを添加した黄銅が周知であるが、これらの一般的な高強度銅合金には次のような問題があり、上記した要求に応えることができない。
ベリリウム銅は、銅合金中、最も高い強度を有するものであるが、ベリリウムが人体に非常に有害である(特に、溶融状態ではベリリウム蒸気が極微量であっても非常に危険である)。このため、ベリリウム銅製部材又はこれを含む製品の廃棄処理(特に焼却処理)が困難であり、製造に使用する溶解設備に要するイニシャルコストが極めて高くなる。したがって、所定の特性を得るために製造の最終段階で溶体化処理が必要となることとも相俟って、製造コストを含む経済性に問題がある。
りん青銅、洋白は、熱間加工性が悪く、熱間圧延による製造が困難であるため、一般に横型連続鋳造により製造される。したがって、生産性が悪く、エネルギーコストが高く、歩留りも悪い。また、高強度の代表品種であるばね用りん青銅やばね用洋白には、高価なSn,Niが多量に含有されているため、導電性が悪く、経済性にも問題がある。
黄銅及び単にSnを添加した黄銅は安価であるが、強度的に満足できるものでなく、応力緩和特性が悪く、導電性が悪く、耐食性に問題(応力腐食及び脱亜鉛腐食)があり、上記した小型化,高性能化を図る製品構成材としては不適当である。
したがって、このような一般的高導電・高強度銅合金は、前述した如く小型化,軽量化,高性能化される傾向にある各種機器の部品構成材として到底満足できるものではなく、新たな高導電、高強度銅合金の開発が強く要請されている。
上記のような、高導電、高強度の要請を満たすための合金として、例えば特許文献1に示されるようなCu−Zn−Sn合金が知られている。しかしながら、特許文献1に係る合金においても、導電性や強度は十分でない。
特開2007−56365号公報
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであり、引張強度、耐力、導電性、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性、応力緩和特性に優れた銅合金板を提供することを課題とする。
本発明者は、0.2%耐力(永久ひずみが0.2%になるときの強度であり、以下においては、単に「耐力」ということもある)は結晶粒径Dの−1/2乗(D−1/2)に比例して上昇する、とするホール・ペッチ(Hall-Petch)の関係式(E. O. Hall, Proc. Phys. Soc. London. 64 (1951) 747.及びN.J. Petch, J. Iron Steel Inst. 174 (1953) 25. 参照)に着目して、結晶粒を微細化することにより、上述した時代の要請を満足しうる高強度銅合金を得ることができると考え、結晶粒の微細化について種々の研究,実験を行った。
その結果、以下の知見を得た。
添加元素次第で銅合金を再結晶させることによる結晶粒の微細化を実現できる。結晶粒(再結晶粒)をある程度以下に微細化させることにより、引張強度、耐力を主とする強度を顕著に向上させることができる。すなわち、平均結晶粒径が小さくなるに従って強度も増大される。
具体的には、結晶粒の微細化における添加元素の影響について種々の実験を行った。これにより以下の事項を究明した。
Cuに対するZn、Snの添加は、再結晶核の核生成サイトを増加させる効果がある。更にCu−Zn−Sn合金に対するP、Co、Niの添加は粒成長を抑制する効果がある。このため、これらの効果を利用することで、微細な結晶粒を有するCu−Zn−Sn−P−Co系合金、Cu−Zn−Sn−P−Ni系合金、Cu−Zn−Sn−P−Co−Ni系合金を得ることが可能であることを究明した。
すなわち、再結晶核の核生成サイトの増加は、それぞれ原子価が2価、4価であるZn、Sn添加により、積層欠陥エネルギーを低くさせることが主原因の1つであると考えられる。その生成した微細な再結晶粒を微細なまま維持させる結晶粒成長の抑制は、P、Co、Niの添加による微細な析出物の生成が原因していると考えられる。ただし、この中で再結晶粒の超微細化を目指すだけでは、強度、伸び、曲げ加工性のバランスが取れない。バランスを保つには、再結晶粒の微細化に余裕を持ち、ある範囲の大きさの結晶粒微細化領域が良いことが判明した。結晶粒の微細化又は超微細化については、JIS H 0501において、記載されている標準写真で最小の結晶粒度が0.010mmである。このことから、0.008mm以下程度の平均結晶粒を有するものは結晶粒が微細化されていると称し、平均結晶粒径が0.004mm(4ミクロン)以下のものを結晶粒が超微細化していると称しても差し支えないと考える。
本発明は、上記の本発明者の知見に基づき完成されたものである。すなわち、前記課題を解決するため、以下の発明を提供する。
本発明は、銅合金材料が冷間圧延される仕上げ冷間圧延工程を含む製造工程によって製造された銅合金板であり、前記銅合金材料の平均結晶粒径が2.0〜8.0μmであり、前記銅合金材料中に円形又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nmであるか、又は、前記析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上であり、前記銅合金板は、4.5〜12.0mass%のZnと、0.40〜0.90mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPとを含有し、かつ0.005〜0.08mass%のCo及び0.03〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、Znの含有量[Zn]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%とは、11≦[Zn]+7×[Sn]+15×[P]+12×[Co]+4.5×[Ni]≦17の関係を有することを特徴とする銅合金板を提供する。
本発明では、所定の粒径の結晶粒と、所定の粒子径の析出物を有する銅合金材料を冷間圧延しているが、冷間圧延をしても、圧延前の結晶粒と析出物を認識することができる。このため、圧延後に圧延前の結晶粒の粒径と、析出物の粒子径とを測定することができる。また、結晶粒と析出物は、圧延されてもその体積は同じなので、結晶粒の平均結晶粒径と析出物の平均粒子径は、冷間圧延の前後で変わらない。
また、円形又は楕円形の析出物には、完全な円形や楕円形だけでなく、円形や楕円形に近似した形状も対象に含まれる。
また、以下において、銅合金材料は、適宜、圧延板とも称する。
本発明によれば、仕上げ冷間圧延前の銅合金材料の結晶粒の平均粒径と析出物の平均粒子径が所定の好ましい範囲内にあるので、銅合金が引張強度、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性等に優れる。
また、本発明は、銅合金材料が冷間圧延される仕上げ冷間圧延工程を含む製造工程によって製造された銅合金板であり、前記銅合金材料の平均結晶粒径が2.5〜7.5μmであり、前記銅合金材料中に円形又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nmであるか、又は、前記析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上であり、前記銅合金板は、4.5〜10.0mass%のZnと、0.40〜0.85mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPとを含有し、かつ0.005〜0.05mass%のCo及び0.35〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、Znの含有量[Zn]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%とは、11≦[Zn]+7×[Sn]+15×[P]+12×[Co]+4.5×[Ni]≦16の関係を有し、Niが0.35〜0.85mass%である場合に8≦[Ni]/[P]≦40であることを特徴とする銅合金板を提供する。
仕上げ冷間圧延前の銅合金材料の結晶粒の平均粒径と析出物の平均粒子径が所定の好ましい範囲内にあるので、銅合金が引張強度、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性等に優れる。
また、Niが0.35〜0.85mass%である場合には8≦[Ni]/[P]≦40であるので、応力緩和率が良くなる。
また、本発明は、銅合金材料が冷間圧延される仕上げ冷間圧延工程を含む製造工程によって製造された銅合金板であり、前記銅合金材料の平均結晶粒径が2.0〜8.0μmであり、前記銅合金材料中に円形又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nmであるか、又は、前記析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上であり、前記銅合金板は、4.5〜12.0mass%のZnと、0.40〜0.90mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPと、0.004〜0.04mass%のFeとを含有し、かつ0.005〜0.08mass%のCo及び0.03〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、Znの含有量[Zn]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%とは、11≦[Zn]+7×[Sn]+15×[P]+12×[Co]+4.5×[Ni]≦17の関係を有するとともに、Coの含有量[Co]mass%と、Feの含有量[Fe]mass%とは、[Co]+[Fe]≦0.08の関係を有することを特徴とする銅合金板を提供する。
Feを0.004〜0.04mass%を含有することにより、結晶粒を微細化し、強度を高めることができる。
本発明に係る上記の3種類の銅合金板は、好ましくは、導電率をC(%IACS)とし、圧延方向に対して0度をなす方向での引張強度と伸びとをそれぞれPw(N/mm)、L(%)としたとき、前記仕上げ冷間圧延工程後に、C≧32、Pw≧500、3200≦[Pw×{(100+L)/100}×C1/2]≦4000であり、圧延方向に対して0度をなす方向の引張強度と圧延方向に対して90度をなす方向の引張強度との比が0.95〜1.05であり、圧延方向に対して0度をなす方向の耐力と圧延方向に対して90度をなす方向の耐力との比が0.95〜1.05である。
導電率と引張強度と伸びとのバランスに優れ、且つ、引張強度と耐力の方向性が無いので、コネクタ、端子、リレー、ばね、スイッチ等の構成材等に適している。
本発明に係る上記の3種類の銅合金板は、好ましくは、前記製造工程は、前記仕上げ冷間圧延工程の後に回復熱処理工程を含む。
回復熱処理を行うので、応力緩和率、ばね限界値、及び伸びが向上する。
回復熱処理を行なう本発明に係る上記の3種類の銅合金板は、好ましくは、導電率をC(%IACS)とし、圧延方向に対して0度をなす方向での引張強度と伸びとをそれぞれPw(N/mm)、L(%)としたとき、前記回復熱処理工程後に、C≧32、Pw≧500、3200≦[Pw×{(100+L)/100}×C1/2]≦4000であり、圧延方向に対して0度をなす方向の引張強度と圧延方向に対して90度をなす方向の引張強度との比が0.95〜1.05であり、圧延方向に対して0度をなす方向の耐力と圧延方向に対して90度をなす方向の耐力との比が0.95〜1.05である。
導電率と引張強度のバランスに優れ、且つ、引張強度と耐力の方向性が無いので銅合金として優れている。
本発明に係る上記の3種類の銅合金板の製造方法は、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、再結晶熱処理工程と、前記仕上げ冷間圧延工程とを順に含み、前記熱間圧延工程の熱間圧延開始温度が800〜940℃であって最終圧延後の温度、又は650℃から350℃までの温度領域の銅合金材料の冷却速度が1℃/秒以上であり、前記冷間圧延工程での冷間加工率が55%以上であり、前記再結晶熱処理工程は、前記銅合金材料を所定の温度に加熱する加熱ステップと、該加熱ステップ後に該銅合金材料を所定の温度に所定の時間保持する保持ステップと、該保持ステップ後に該銅合金材料を所定の温度まで冷却する冷却ステップを具備し、前記再結晶熱処理工程において、該銅合金材料の最高到達温度をTmax(℃)とし、該銅合金材料の最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度領域での保持時間をtm(min)とし、前記冷間圧延工程での冷間加工率をRE(%)としたときに、550≦Tmax≦790、0.04≦tm≦2、460≦{Tmax−40×tm−1/2−50×(1−RE/100)1/2}≦580である。
尚、銅合金板の板厚によっては、前記熱間圧延工程と前記冷間圧延工程との間に対となる冷間圧延工程と焼鈍工程とを1回又は複数回行ってもよい。
回復熱処理を行なう本発明に係る上記の3種類の銅合金板の製造方法は、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、再結晶熱処理工程と、前記仕上げ冷間圧延工程と、前記回復熱処理工程とを順に含み、前記熱間圧延工程の熱間圧延開始温度が800〜940℃であって最終圧延後の温度、又は650℃から350℃までの温度領域の銅合金材料の冷却速度が1℃/秒以上であり、前記冷間圧延工程での冷間加工率が55%以上であり、前記再結晶熱処理工程は、前記銅合金材料を所定の温度に加熱する加熱ステップと、該加熱ステップ後に該銅合金材料を所定の温度に所定の時間保持する保持ステップと、該保持ステップ後に該銅合金材料を所定の温度まで冷却する冷却ステップを具備し、前記再結晶熱処理工程において、該銅合金材料の最高到達温度をTmax(℃)とし、該銅合金材料の最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度領域での保持時間をtm(min)とし、前記冷間圧延工程での冷間加工率をRE(%)としたときに、550≦Tmax≦790、0.04≦tm≦2、460≦{Tmax−40×tm−1/2−50×(1−RE/100)1/2}≦580であり、前記回復熱処理工程は、前記銅合金材料を所定の温度に加熱する加熱ステップと、該加熱ステップ後に該銅合金材料を所定の温度に所定の時間保持する保持ステップと、該保持ステップ後に該銅合金材料を所定の温度まで冷却する冷却ステップを具備し、前記回復熱処理工程において、該銅合金材料の最高到達温度をTmax2(℃)とし、該銅合金材料の最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度領域での保持時間をtm2(min)とし、前記仕上げ冷間圧延工程での冷間加工率をRE2(%)としたときに、160≦Tmax2≦650、0.02≦tm2≦200、100≦{Tmax2−40×tm2−1/2−50×(1−RE2/100)1/2}≦360である。
尚、銅合金板の板厚によっては、前記熱間圧延工程と前記冷間圧延工程との間に対となる冷間圧延工程と焼鈍工程とを1回又は複数回行ってもよい。
本発明によれば、銅合金板の引張強度、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性等が優れる。
図1は、合金No.2(試験No.T15)の銅合金板の透過電子顕微鏡写真である。
本発明の一実施形態に係る銅合金板について説明する。
本明細書では、合金組成を表すのに、[Cu]のように[ ]の括弧付の元素記号は当該元素の含有量値(mass%)を示すものとする。また、この含有量値の表示方法を用いて、本明細書において複数の計算式を提示する。しかしながら、Coの0.001mass%以下の含有量、Niの0.01mass%以下の含有量は銅合金板の特性への影響が少ない。従って、後述するそれぞれの計算式において、Coの0.001mass%以下の含有量、及びNiの0.01mass%以下の含有量は0として計算する。
また、不可避不純物もそれぞれの不可避不純物の含有量では、銅合金板の特性への影響が少ないので、後述するそれぞれの計算式に含めていない。例えば、0.01mass%以下のCrは不可避不純物としている。
また、本明細書では、Zn、Sn、P、Co、Niの含有量のバランスを表す指標として組成指数f1を次のように定める。
組成指数f1=[Zn]+7×[Sn]+15×[P]+12×[Co]+4.5×[Ni]
また、本明細書では、再結晶熱処理工程、及び回復熱処理工程における熱処理条件を表す指標として熱処理指数Itを次のように定める。
それぞれの熱処理時の銅合金材料の最高到達温度をTmax(℃)、銅合金材料の最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度領域での保持時間をtm(min)とし、それぞれの熱処理(再結晶熱処理工程又は回復熱処理工程)と、それぞれの熱処理の前に行われた再結晶を伴う工程(熱間圧延や熱処理)との間に行われた冷間圧延の冷間加工率をRE(%)としたとき、以下のように定める。
熱処理指数It=Tmax−40×tm−1/2−50×(1−RE/100)1/2
また、導電率と引張強度と伸びのバランスを表す指標としてバランス指数f2を次のように定める。
導電率をC(%IACS)、引張強度をPw(N/mm)、伸びをL(%)としたとき、以下のように定める。
バランス指数f2=Pw×{(100+L)/100}×C1/2
すなわち、バランス指数f2は、Pwと(100+L)/100とC1/2の積である。
第1の実施形態に係る銅合金板は、銅合金材料が仕上げ冷間圧延されたものである。銅合金材料の平均結晶粒径が2.0〜8.0μmである。銅合金材料中に、円形又は楕円形の析出物が存在し、析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nmであるか、又は、析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上である。そして、銅合金板は、4.5〜12.0mass%のZnと、0.40〜0.90mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPとを含有し、かつ0.005〜0.08mass%のCo及び0.03〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる。Znの含有量[Zn]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%とは、11≦[Zn]+7×[Sn]+15×[P]+12×[Co]+4.5×[Ni]≦17の関係を有している。
この銅合金板は、冷間圧延前の銅合金材料の結晶粒の平均粒径と析出物の平均粒子径が上記の所定の好ましい範囲内にあるので、引張強度、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性等に優れる。
結晶粒の平均粒径と析出物の平均粒子径の好ましい範囲については後述する。
第2の実施形態に係る銅合金板は、銅合金材料が仕上げ冷間圧延されたものである。銅合金材料の平均結晶粒径が2.5〜7.5μmである。銅合金材料中に円形又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nmであるか、又は、析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上である。そして、銅合金板は、4.5〜10.0mass%のZnと、0.40〜0.85mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPとを含有し、かつ0.005〜0.05mass%のCo及び0.35〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる。Znの含有量[Zn]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%とは、11≦[Zn]+7×[Sn]+15×[P]+12×[Co]+4.5×[Ni]≦16の関係を有し、Niが0.35〜0.85mass%である場合に8≦[Ni]/[P]≦40である。
この銅合金板は、冷間圧延前の銅合金材料の結晶粒の平均粒径と析出物の平均粒子径が上記の所定の好ましい範囲内にあるので、引張強度、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性等に優れる。また、Niが0.35〜0.85mass%である場合には8≦[Ni]/[P]≦40であるので、応力緩和率が良い。
第3の実施形態に係る銅合金板は、銅合金材料が仕上げ冷間圧延されたものである。銅合金材料の平均結晶粒径が2.0〜8.0μmである。銅合金材料中に円形又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nmであるか、又は、該析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上である。そして、銅合金板は、4.5〜12.0mass%のZnと、0.40〜0.90mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPと、0.004〜0.04mass%のFeとを含有し、かつ0.005〜0.08mass%のCo及び0.03〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる。Znの含有量[Zn]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%とは、11≦[Zn]+7×[Sn]+15×[P]+12×[Co]+4.5×[Ni]≦17の関係を有するとともに、Coの含有量[Co]mass%と、Feの含有量[Fe]mass%とは、[Co]+[Fe]≦0.08の関係を有する
Feを0.004〜0.04mass%を含有することにより、結晶粒を微細化し、強度を高めることができる。
次に、本実施形態に係る銅合金板の好ましい製造工程について説明する。
製造工程は、熱間圧延工程と、第1冷間圧延工程と、焼鈍工程と、第2冷間圧延工程と、再結晶熱処理工程と、上述した仕上げ冷間圧延工程とを順に含む。上記の第2冷間圧延工程が、請求項で記載されている冷間圧延工程に該当する。各工程について必要な製造条件の範囲を設定し、この範囲を設定条件範囲という。
熱間圧延に用いる鋳塊の組成は、銅合金板が、4.5〜12.0mass%のZnと、0.40〜0.90mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPとを含有し、かつ0.005〜0.08mass%のCo及び0.03〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、組成指数f1が、11≦f1≦17の範囲になるように調整する。この組成の合金を第1発明合金と呼ぶ。
また、熱間圧延に用いる鋳塊の組成は、銅合金板が、4.5〜10.0mass%のZnと、0.40〜0.85mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPとを含有し、かつ0.005〜0.05mass%のCo及び0.35〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、組成指数f1が、11≦f1≦16の範囲であり、Niが0.35〜0.85mass%である場合に8≦[Ni]/[P]≦40の関係を有するように調整する。この組成の合金を第2発明合金と呼ぶ。
また、熱間圧延に用いる鋳塊の組成は、銅合金板が、4.5〜12.0mass%のZnと、0.40〜0.90mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPと、0.004〜0.04mass%のFeとを含有し、かつ0.005〜0.08mass%のCo及び0.03〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、組成指数f1が、11≦f1≦17の範囲であり、Coの含有量[Co]mass%と、Feの含有量[Fe]mass%とが[Co]+[Fe]≦0.08の関係を有するように調整する。この組成の合金を第3発明合金と呼ぶ。この第1発明合金と第2発明合金と第3発明合金とを合わせて発明合金と呼ぶ。
熱間圧延工程は、熱間圧延開始温度が800〜940℃であって最終圧延後の温度、又は650℃から350℃までの温度領域の圧延材の冷却速度が1℃/秒以上である。
第1冷間圧延工程は、冷間加工率が55%以上である。
焼鈍工程は、後述するように、再結晶熱処理工程後の結晶粒径をD1とし、その前の焼鈍工程後の結晶粒径をD0とし、該再結晶熱処理工程と該焼鈍工程との間の第2冷間圧延の冷間加工率をRE(%)とすると、D0≦D1×4×(RE/100)を満たすような条件である。この条件は、例えば、焼鈍工程が銅合金材料を所定の温度に加熱する加熱ステップと、加熱ステップ後に銅合金材料を所定の温度に所定の時間保持する保持ステップと、保持ステップ後に銅合金材料を所定の温度まで冷却する冷却ステップとを具備する場合で、銅合金材料の最高到達温度をTmax(℃)、銅合金材料の最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度領域での保持時間をtm(min)とし、前記第1冷間圧延工程での冷間加工率をRE(%)としたときに、420≦Tmax≦800、0.04≦tm≦600、390≦{Tmax−40×tm−1/2−50×(1−RE/100)1/2}≦580である。
この第1冷間圧延工程と焼鈍工程は、圧延板の仕上げ冷間圧延工程後の板厚が、厚い場合には行わなくてもよいし、薄い場合には、第1冷間圧延工程と焼鈍工程とを複数回行ってもよい。第1冷間圧延工程と焼鈍工程との実施の有無や実施回数は、熱間圧延工程後の板厚と仕上げ冷間圧延工程後の板厚との関係で決まる。
第2冷間圧延工程は、冷間加工率が55%以上である。
再結晶熱処理工程は、銅合金材料を所定の温度に加熱する加熱ステップと、加熱ステップ後に銅合金材料を所定の温度に所定の時間保持する保持ステップと、保持ステップ後に銅合金材料を所定の温度まで冷却する冷却ステップとを具備する。
ここで、銅合金材料の最高到達温度をTmax(℃)、銅合金材料の最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度領域での保持時間をtm(min)とすると、再結晶熱処理工程は、次の条件を満たす。
(1)550≦最高到達温度Tmax≦790
(2)0.04≦保持時間tm≦2
(3)460≦熱処理指数It≦580
この再結晶熱処理工程の後に後述するように回復熱処理工程を行う場合もあるが、この再結晶熱処理工程が、銅合金材料に再結晶を行わせる最終の熱処理になる。
この再結晶熱処理工程後に、銅合金材料は、平均結晶粒径が2.0〜8.0μmであって、円形又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nm、又は、該析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める割合が70%以上である金属組織を有している。
仕上げ冷間圧延工程は、冷間加工率が20〜65%である。
仕上げ冷間圧延工程の後に回復熱処理工程を行ってもよい。また、本願発明銅合金の用途上、仕上げ圧延後にSnめっきされる場合があるが、溶融Snめっき、リフローSnめっき等のめっき時に材料温度が上がるので、そのめっき処理時の加熱プロセス工程を、本回復熱処理工程の代わりとすることが可能である。
回復熱処理工程は、銅合金材料を所定の温度に加熱する加熱ステップと、加熱ステップ後に銅合金材料を所定の温度に所定の時間保持する保持ステップと、保持ステップ後に銅合金材料を所定の温度まで冷却する冷却ステップとを具備する。
ここで、銅合金材料の最高到達温度をTmax(℃)、銅合金材料の最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度領域での保持時間をtm(min)とすると、再結晶熱処理工程は、次の条件を満たす。
(1)160≦最高到達温度Tmax≦650
(2)0.02≦保持時間tm≦200
(3)100≦熱処理指数It≦360
次に、各元素の添加理由について説明する。
Znは発明を構成する主要な元素であり、原子価が2価で積層欠陥エネルギーを下げ、焼鈍時、再結晶核の生成サイトを増やし、再結晶粒を微細化、超微細化する。また、Znの固溶により、曲げ加工性を損なわずに引張強度や耐力、ばね特性等の強度を向上させ、マトリックスの耐熱性、および応力緩和特性を向上させ、また、耐マイグレーション性を向上させる。Znは、メタルコストが安価であり、銅合金の比重を下げ、経済的なメリットもある。Sn等の他の添加元素との関係にもよるが、前記の効果を発揮するためには、Znは、少なくとも4.5mass%以上含有する必要があり、好ましくは5.0mass%以上、最適には、5.5mass%以上である。一方、Sn等の他の添加元素との関係にもよるが、Znを、12.0mass%を超えて含有しても、結晶粒の微細化と強度の向上に関し、含有量に見合った顕著な効果が出なくなり始め、導電率が低下し、伸び、曲げ加工性が悪くなり、耐熱性、応力緩和特性が低下し、応力腐食割れの感受性が高くなる。好ましくは、11.0mass%以下であり、より好ましくは、10.0mass%以下であり、最適には8.5mass%以下である。Znが、本願での設定範囲、最適には、5.0mass%以上、8.5mass%以下であるとき、マトリックスの耐熱性が向上し、Ni、Sn、Pとの相互作用により、特に応力緩和特性が向上し、優れた曲げ加工性、高い強度、所望の導電性を備える。原子価が2価のZnの含有量が、上記の範囲であっても、Zn単独の添加であれば、結晶粒を微細化することは困難で、結晶粒を所定の粒径にまで微細にするためには、後述するSn、Ni、Pとの共添加と共に、組成指数f1の値を考慮する必要がある。同様に、耐熱性、応力緩和特性、強度・ばね特性を向上させるためには、後述するSn、Ni、Pとの共添加と共に、組成指数f1の値を考慮する必要がある。
Snは、発明を構成する主要な元素であり、原子価が4価で積層欠陥エネルギーを下げ、Znの含有と相まって焼鈍時に、再結晶核の生成サイトを増やし、再結晶粒を微細化、超微細化する。特に4.5mass%以上、好ましくは5.0mass%以上、より好ましくは5.5mass%以上の2価のZnとの共添加により、その効果は、Snが少量の含有であっても顕著に現れる。また、Snは、マトリックスに固溶し、引張強度や耐力、ばね特性等を向上させ、マトリックスの耐熱性を向上させ、応力緩和特性を向上させ、耐応力腐食割れ性も向上させる。前記の効果を発揮するためには、Snは、少なくとも0.40mass%以上含有する必要があり、好ましくは0.45mass%以上、最適には、0.50mass%以上である。一方、Snの含有は導電率を悪くし、Zn等の他の元素との関係にもよるが、Snの含有量が0.90mass%を超えると、概ね純銅の1/3以上の32%IACS以上の高い導電率は得られないし、曲げ加工性を低下させる。Snの含有量は、好ましくは、0.85mass%以下であり、最適には0.80mass%以下である。
Cuは、発明合金を構成する主元素であるので残部とする。ただし、本発明を達成する上で、Cu濃度に依存する導電性、耐応力腐食割れ性を確保し、応力緩和特性、伸びを保持するためには、少なくとも87mass%以上必要であり、好ましくは、88.5mass%以上であり、最適には89.5mass%以上である。一方で、高強度を得るには、少なくとも94mass%以下であり、好ましくは、93mass%以下にすることが好ましい。
Pは、原子価が5価で結晶粒を微細化する作用と、再結晶粒の成長を抑制する作用を持つが、含有量が少ないので後者の作用が大きい。Pの一部は、後述するCo又はNiと化合して析出物を形成し、結晶粒成長抑制効果を更に強化することが出来る。結晶粒成長を抑制するためには、円形又は楕円形の析出物が存在し、その析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nm、又は、析出粒子の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出粒子の占める個数の割合が70%以上であることが必要である。この範囲に属する析出物は、析出強化よりも、焼鈍時の再結晶粒の成長を抑制する作用や効果のほうが大きく、単に析出による強化作用とは区別される。またこれらの析出物は、応力緩和特性を向上させる効果を持つ。そしてPは、本願範囲のZnとSnの含有のもと、Niとの相互作用により、本願の主題の1つである応力緩和特性を顕著に向上させる効果を有する。
これらの効果を発揮するためには、少なくとも0.010mass%以上必要であり、好ましくは0.015mass%以上、最適には0.020mass%以上である。一方、0.080mass%を超えて含有しても、析出物による再結晶粒成長の抑制効果は飽和し、却って析出物が過多に存在すると、伸び、曲げ加工性が低下する。Pは、0.070mass%以下が好ましく、最適には0.060mass%以下である。
Coは、含有量の一部がPと結合し、又は、P、Niと結合して化合物を作り、その他は固溶する。Coは、再結晶粒の成長を抑制し、応力緩和特性を向上させる。その効果を発揮するためには、0.005mass%以上の含有が必要であり、0.010mass%以上が好ましい。一方、0.08mass%以上含有しても、効果が飽和するばかりでなく、結晶粒成長抑制効果が効きすぎて、所望の大きさの結晶粒が得られなくなり、製造工程によっては導電性が低下する。さらに析出物の数が多くなる、または、析出物粒径が細かくなるので、曲げ加工性が低下するし、機械的性質に方向性が生じ易くなる。好ましくは、0.04mass%以下であり、最適には0.03mass%以下である。
Coの結晶粒成長抑制効果をより一層発揮させ、導電率の低下を最小限にするためには、[Co]/[P]が、0.2以上であり、好ましくは0.3以上である。一方上限は、2.5以下であり、好ましくは2以下である。特に後述するNiを含有しない場合は、[Co]/[P]を規定しておくことが好ましい。
Niは、一部はPと結合し、又は、P、Coと結合し化合物を作り、その他は固溶する。Niは、本願で規定される濃度範囲で含有されるP、Zn、Snとの相互作用により、応力緩和特性を向上させ、合金のヤング率を高め、形成される化合物により再結晶粒の成長を抑制させる。再結晶粒の成長を抑制する作用を発揮するためには0.03mass%以上の含有が必要であり、0.07mass%以上の含有が好ましい。特に応力緩和特性は、0.35mass%のNiの含有で顕著な効果を発揮し、0.45mass%以上のNiの含有でさらに顕著になる。一方、Niは導電率を阻害するので、Niの含有量は0.85mass%以下であり、最適には0.80mass%以下である。また、Snとの関係において、後述する組成の関係式を満足すると同時に、特に応力緩和特性、ヤング率を向上させるためには、Niの含有量は、Snの含有量の3/5以上、すなわち、0.6倍以上含有されるのが好ましく、Snの含有量の0.7倍かそれ以上含有されると更に好ましい。これは、原子濃度において、Niの含有量がSnの含有量と同等か若しくは上回ることによって、応力緩和特性が向上する。一方で、強度、導電率の関係から、Niの含有量は、Snの含有量の1.8倍以下、さらには1.7倍以下に留めておくことが好ましい。整理すると優れた応力緩和特性と高い強度、導電率を兼ね備えるためには、[Ni]/[Sn]が、0.6以上、好ましくは0.7以上であり、1.8以下、好ましくは1.7以下であることが最適である。
他方、強度と導電率を重視する場合、Niの含有量は、0.2mass%以下がよく、好ましくは0.10mass%以下が好ましく、導電性、強度、延性(曲げ加工性)のバランスもよくなる。
NiもSnと同様に強度、導電率、応力緩和特性などのバランスにおいて、その重要視する特性によって、微妙に組成を変えることにより好適な材料になる。なお、NiはPとの配合比が重要であり、結晶粒成長抑制作用を発揮するためには、特にCoが含有されない場合は、[Ni]/[P]が、1.0以上であることが好ましく、そして応力緩和特性を向上させるためには、[Ni]/[P]が8以上であることが好ましく、12以上でより顕著なものになる。上限は、導電性、応力緩和特性との関係から、40以下がよく、35以下が好ましい。
ところで、強度と伸びのバランス、高強度、高いばね特性、高導電、良好な応力緩和特性を得るには、単にZn、Sn、P、Co、Niの配合量だけではなく、それぞれの元素の相互関係を考慮する必要がある。添加量が多く、原子価が2であるZn、原子価が4であるSnの含有により積層欠陥エネルギーを低くすることができるが、P、Co、Niを含めた相乗効果による結晶粒微細化、強度と伸びのバランス、圧延方向に対し0度をなす方向と90度をなす方向での強度と伸びの差、導電率、応力緩和特性、耐応力腐食割れ性等を考慮に入れなければならない。発明者の研究から、各元素が発明合金の含有量の範囲内において、11≦[Zn]+7[Sn]+15[P]+12[Co]+4.5[Ni]≦17を満足する必要があることが判明した。この関係を満足することにより、高導電であって、高い強度、高い伸び、そしてこれら特性間に高度なバランスの取れた材料が出来上がる。(組成指数f1=[Zn]+7[Sn]+15[P]+12[Co]+4.5[Ni])
すなわち、最終の圧延材において、導電率が32%IACS以上の高電導で、引張強度が500N/mm以上の良好な強度であり、耐熱性、応力緩和特性が高く、結晶粒径が細かく、強度の方向性が少なく、良好な伸びを備えるためには、11≦f1≦17を満足する必要がある。11≦f1≦17において、下限は、特に結晶粒の微細化、強度、そして応力緩和特性、耐熱性に係わり、好ましくは11.5以上であり、最適には12以上である。そして、上限は、特に、導電性、曲げ加工性、応力緩和特性、耐応力腐食割れ性に係わり、好ましくは、16以下であり、最適には15.5以下である。より狭い範囲に主要含有元素であるZn、Sn、Ni、P、Coを管理することにより、より一層、導電性、強度と伸びのバランスの取れた圧延材になる。なお、導電率の上限は、本件で対象とする部材は、44%IACSまたは、42%IACSを超えることは特に必要とせず、より高強度、より応力緩和特性の優れたものが、有益である。用途上、スポット溶接を施すものもあり、導電率が高すぎると不具合が生じることもあるので、導電率を44%IACS以下、好ましくは42%IACS以下に設定した。
ところで、結晶粒の超微細化に関し、本発明合金の組成範囲にある合金において再結晶粒を1.5μmまで超微細化することは可能である。しかしながら、本合金の結晶粒を1.5μmまで微細化すると、数原子程度の幅で形成される結晶粒界の占める割合が大きくなり、伸び、曲げ加工性、応力緩和特性が悪くなる。したがって、高強度と高い伸び、良好な応力緩和特性を備えるためには、平均結晶粒径は2.0μm以上が必要であり、好ましくは、2.5μm以上で、より好ましくは3.0μm以上である。一方、結晶粒が大きくなるにつれ、良好な伸び、曲げ加工性を示すが、所望の引張強度、耐力が得られなくなる。少なくとも、平均結晶粒径を8.0μm以下に細かくする必要がある。より好ましくは、7.5μm以下であり、強度を重視する場合は、6.0μm以下であり、最適には5.0μm以下である。一方、応力緩和特性が必要な場合は、結晶粒が微細であると応力緩和特性が悪くなるので、平均結晶粒は、3.0μm以上が好ましく、3.5μm以上がより好しい。このように、結晶粒径もより狭い範囲に設定することにより、伸び、強度、導電性、或いは、応力緩和特性の間で高度に優れたバランスを得ることが出来る。
ところで、例えば55%以上の冷間加工率で冷間圧延を施した圧延材を焼鈍する時、時間との関係もあるが、ある臨界の温度を超えると、加工ひずみの蓄積された結晶粒界を中心に再結晶核が生じる。合金組成にもよるが本発明合金の場合、核生成後にできた再結晶粒の粒径は、1μmや2μm、又はそれより小さな再結晶粒であるが、圧延材に熱を加えても、加工組織が一度にすべて再結晶粒に置き換わることはない。すべて、又は、例えば97%以上が再結晶粒に置き換わるには、再結晶の核生成が開始する温度よりも更に高い温度、又は再結晶の核生成が開始する時間よりも更に長い時間が必要である。この焼鈍の間、最初にできた再結晶粒は、温度、時間と共に再結晶粒が成長し、結晶粒径は大きくなる。微細な再結晶粒径を維持するためには、再結晶粒の成長を抑制する必要がある。その目的を達成するために、P、Co、Niが含有される。再結晶粒の成長を抑制するためには、再結晶粒の成長を抑制するピンのようなものが必要であり、そのピンのようなものに当たるものが、本発明合金では、Pと、Co、Niで生成する化合物であり、ピンのような役目を果たすために最適なものである。その化合物は、ピンの役目を果たすには、化合物そのものの性質と化合物の粒径が重要である。すなわち、研究結果から、本発明の組成範囲において、Pと、Co、Niで生成する化合物は、基本的に伸びを阻害することが少なく、特に化合物の粒径が4.0〜25.0nmであれば、伸びを阻害することが少なく結晶粒成長を効果的に抑制することが分かった。更に化合物の性質から、PとCoが共添加される場合、[Co]/[P]が、0.2以上であり、好ましくは0.3以上である。一方上限は、2.5以下、更に好ましくは2以下であることが分かった。一方、PとNiが含有され、Coの含有がない場合、[Ni]/[P]が、1以上であることが好ましい。そして、Coの含有の有無に関わらず、[Ni]/[P]が、8を超えると応力緩和特性がよくなり、更には、12を超えると効果がより一層生じ、より顕著なものになることが判明した。なお、形成される析出物は、PとCoの場合、析出物の平均粒径が4.0〜15.0nmであり、やや細かく、PとCoとNiが共添加された場合の析出物の平均粒径は、4.0〜20.0nmであり、Ni含有量が多いほど、析出粒径は大きくなる。そして、PとNiの場合は、5.0〜25.0nmであり、析出粒径が大きい。PとNiの共添加の場合は、結晶粒成長抑制効果は小さくなるが、伸びに与える影響は更に少ない。なお、PとNiの場合は、析出物の化合状態は、主としてNiP、又はNiPと思われ、PとCoの場合は、析出物の化合状態は、主としてCoPと思われ、PとNi、Coの場合は、析出物の化合状態は、主としてNiCoP(x、yは、Ni、Coの含有量により変化)と思われる。なお、本願で得られる析出物は、応力緩和特性にプラスの作用があり、化合物の種類としては、NiとPの化合物が良い。なお、析出物の粒径が細かいCoとPの化合物の場合、Co含有量が0.08mass%を超えて含有すると、析出物の量が多くなり過ぎ、再結晶粒成長の抑制作用が効きすぎて、一層、再結晶の粒径が細かくなり、却って応力緩和特性、曲げ加工性を悪くする。
析出物の性質は重要であり、P−Co、P−Ni、P−Co−Niの組み合わせが最適であるが、たとえば、PとFe、その他、Mn、Mg、CrなどもPと化合物を形成し、ある一定以上の量が含まれると伸びを阻害する虞がある。
また、Feは、Co、Ni、特にCoと同様活用することが可能である。すなわち、Feが0.004mass%以上の含有で、Fe−P、Fe-Ni-P或いはFe-Co-Pの化合物形成により、Co含有と同様、結晶粒成長抑制効果を発揮し、強度、応力緩和特性を向上させる。しかしながら、形成されるFe−P等の化合物の粒径は、Co−Pの化合物より小さい。該析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nm、又は、該析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める割合が70%以上である条件を満たす必要がある。さらに析出物粒子の数も問題になるので、Feの上限は、0.04mass%であり、好ましくは、0.03mass%である。P−Co、P−Ni、P−Co−Niの組み合わせにFeを含有することにより、化合物の形態は、P−Co−Fe、P−Ni−Fe、P−Co−Ni−Feになる。ここで、Coが含有される場合、Coの単独の含有と同様、CoとFeの合計の含有量が、0.08mass%以下でなければならない。好ましくは、CoとFeの合計の含有量が、0.05mass%以下であり、最適には0.04mass%以下である。より好ましい範囲にFe濃度を管理することにより、特に強度が高く、そして高導電で、曲げ加工性、応力緩和特性のよい材料となる。
したがって、Feは、本願課題を達成するために有効に活用することができる。
一方、Cr等の元素を影響が及ぼさない濃度に管理しなければならない。その条件は、少なくとも各々、0.03mass%以下、好ましくは0.02mass%以下、又は、Pと化合するCr等の元素の合計の含有量が、0.04mass%以下、好ましくは0.03mass%以下にしておかねばならない。Cr等が含有すると、析出物の組成、構造が変化することにより、特に、伸び、曲げ加工性に大きな影響を与える。
強度、伸び、導電性の間で高度にバランスが取れた合金を表す指標として、これらの積が高いことで評価することが出来る。導電率が32%IACS以上、44%IACS以下、好ましくは42%IACS以下であることを前提として、導電率をC(%IACS)、引張強度Pw(N/mm)、伸びをL(%)、としたとき、再結晶熱処理後の材料のPwと(100+L)/100とC1/2の積が2700以上、3500以下である。再結晶熱処理後での圧延材の強度、伸び、電気伝導性のバランス等は、仕上げ冷間圧延後の圧延材、Snめっき後の圧延材、及び最終の回復熱処理後(低温焼鈍後)の特性に大きな影響を与える。すなわち、Pwと(100+L)/100とC1/2の積が、2700未満であると、最終の圧延材において、高度に諸特性のバランスの取れた合金になりえない。好ましくは、2750以上である(バランス指数f2=Pw×{(100+L)/100}×C1/2)。
そして、仕上げ冷間圧延後の圧延材、又は仕上げ冷間圧延後に回復熱処理を施した圧延材においては、W曲げ試験において少なくともR/t=1(Rは曲げ部の曲率半径、tは圧延材の厚み)で割れが生じず、好ましくは、R/t=0.5で割れが生じず、最適には、R/t=0で割れが生じず、引張強度が500N/mm以上、導電率が32%IACS以上、44%IACS以下、好ましくは42%IACS以下であることが前提で、バランス指数f2が3200以上、4000以下であることである。回復熱処理後の圧延材においては、更に優れたバランスを備えるためには、バランス指数f2が、3300以上、さらには、3400以上であるが望ましい。又は、使用上、引張強度より耐力が重要視されることが多いので、Pwの引張強度の代わりに耐力Pw’を用い、耐力のPw’と(100+L)/100とC1/2の積が、3100以上、好ましくは3200以上、最適には、3300以上であって、3900以下を満たすことが好ましい。ここでW曲げ試験の基準は、圧延方向に平行および垂直に採取した試験片で試験したときに、両方の試験片で割れが発生しないことを指す。また、バランス指数f2で用いる引張強度および耐力は、圧延方向に平行に採取した試験片の値を採用した。何故なら、圧延方向に平行に採取した試験片の引張強度および耐力は、垂直に採取した試験片の引張強度および耐力より低いことによる。但し一般的には、曲げ加工は、圧延方向に垂直に採取した試験片の曲げ加工性は、平行に採取した試験片の曲げ加工性より悪い。
更に、本発明合金の場合、仕上げ冷間圧延工程で、30%〜55%の加工率を加えることにより、曲げ加工性を大きく損なわずに、すなわち少なくともW曲げで、R/tが1以下で割れが発生せず、加工硬化により引張強度、耐力を高めることが出来る。一般的に、仕上げ冷間圧延材の金属組織を観察すると、圧延方向に、結晶粒が伸び、厚さ方向に圧縮された様相を呈し、圧延方向に採取した試験片と、垂直方向に採取した試験片では、引張強度、耐力、曲げ加工性において差が生じる。具体的な金属組織は、結晶粒は圧延面に平行の断面を見れば、伸長した結晶粒であり、横断面で見れば、厚み方向に圧縮された結晶粒になり、圧延方向に垂直に採取した圧延材は、平行方向に採取した圧延材よりも、引張強度、耐力が高く、その比率は、1.05を超え、1.1に達することもある。その比率が1より高くなるにしたがって圧延方向に垂直に採取した試験片の曲げ加工性は悪くなる。稀には耐力において、逆に、0.95未満になることもある。本願で対象としているコネクター等の各種部材は、実際の使用、圧延材から製品へ加工の際に、圧延方向、垂直方向、つまり圧延方向に対して平行方向と垂直方向の両方向が使用されることが多く、実使用面、製品加工面から、圧延方向、垂直方向で、引張強度、耐力、曲げ加工性等の特性差がないことが望まれている。本発明品は、Zn、Sn、P,Ni、Coの相互作用、すなわち11≦f1≦17の関係式を満たし、平均結晶粒径を2.0〜8.0μmとし、PとCo、又はNiで形成される析出物の大きさと、それら元素間の割合を所定の数値にコントロールし、次に述べる製造プロセスで圧延材を作ることにより、圧延方向に対して0度をなす方向と90度をなす方向で採取した圧延材の引張強度、耐力の差が無くなる。なお、結晶粒は、強度、曲げ加工面の肌荒れ、しわの発生の観点から、細かい方がよいが、結晶粒が微細すぎると金属組織中に占める結晶粒界の割合が多くなり、却って、曲げ加工性が悪くなる。したがって、平均結晶粒径は、好ましくは7.5μm以下、強度を重視する場合は、6.0μm以下であり、最適には5.0μm以下で、下限は2.5μm以上が好ましく、応力緩和特性を重視する場合は、3.0μm以上が好ましく、より好ましくは3.5μm以上である。圧延方向に対して0度をなす方向の引張強度、耐力に対する90度をなす方向の引張強度、耐力の割合は0.95〜1.05であり、更に、11≦f1≦17の関係式と、平均結晶粒径をより好ましい状態にすれば、より方向性の少ない0.98〜1.03という値が達成される。曲げ加工性においても、前記金属組織から判断できるように圧延方向に対して90度をなす方向に採取して、曲げ試験すると、0度をなす方向に採取した試験片よりも悪くなるが、本発明合金では、引張強度、耐力に方向性がないのと同時に、0度をなす方向と90度をなす方向で、ほぼ同等の優れた曲げ加工性を備える。
熱間圧延の開始温度は、各元素を固溶状態にするために800℃以上、好ましく840℃以上とし、また、エネルギーコスト、熱間延性の点から940℃以下、好ましくは920℃以下とする。そしてP、Co、Ni、さらには、Feをより固溶状態にするために、少なくともこれらの析出物が伸びを阻害するような粗大な析出物とならないように、最終圧延終了時の温度又は650℃から350℃の温度領域を1℃/秒以上の冷却速度で冷却することが好ましい。1℃/秒以下の冷却速度で冷却すると、固溶していた、P、Co、Ni、さらにはFeの析出物が析出し始め、冷却過程で析出物が粗大化する。熱間圧延段階で析出物が粗大化すると、後の焼鈍工程等の熱処理で消滅させることが難しく、最終圧延品の伸びを阻害する。
そして、再結晶熱処理工程前の冷間加工率が55%以上であり、最高到達温度が550〜790℃で「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの範囲での保持時間が0.04〜2分の熱処理であって、熱処理指数Itが、460≦It≦580である再結晶熱処理工程が施される。
再結晶熱処理工程で目標とする混粒の無い、均一で細かな再結晶粒を得るためには、積層欠陥エネルギーを低くするだけでは不十分なので、再結晶核の生成サイトを増やすために、冷間圧延によるひずみ、具体的には、結晶粒界でのひずみの蓄積が必要である。そのために、再結晶熱処理工程前の冷間圧延での冷間加工率が55%以上必要であり、好ましくは、60%以上であり、最適には65%以上である。一方、再結晶熱処理工程前の冷間圧延の冷間加工率を上げ過ぎると、ひずみ等の問題が生じるので97%以下が望ましく、最適には93%以下である。すなわち、物理的な作用による再結晶核の生成サイトを増やすためには、冷間加工率を高くすることが有効であり、製品のひずみを許容できる範囲で、高い加工率を付加することにより、より微細な再結晶粒を得ることができる。
そして、最終の目的とする結晶粒の大きさが微細であり、且つ均一にするためには、再結晶熱処理工程の1つ前の熱処理である焼鈍工程後の結晶粒径と再結晶熱処理工程前の第2冷間圧延の加工率の関係を規定しておく必要がある。すなわち、再結晶熱処理工程後の結晶粒径をD1とし、その前の焼鈍工程後の結晶粒径をD0とし、該焼鈍工程と該再結晶熱処理工程との間の冷間圧延の冷間加工率をRE(%)とすると、REが55〜97において、D0≦D1×4×(RE/100)を満たすことが好ましい。なおこの数式はREが40から97の範囲で適応が可能である。結晶粒の微細を実現させ、該再結晶熱処理工程後の再結晶粒を微細でより均一なものにするために、焼鈍工程後の結晶粒径を、該再結晶熱処理工程後の結晶粒径の4倍と、RE/100との積以内にしておくことが好ましい。冷間加工率が高いほど、再結晶核の核生成サイトが増えるので、焼鈍工程後の結晶粒径が、該再結晶熱処理工程後の結晶粒径より3倍以上の大きさであっても微細でより均一な再結晶粒が得られる。
焼鈍工程後の結晶粒径が大きいと、再結晶熱処理工程後に混粒となり、仕上げ冷間圧延工程後の特性が悪くなるが、焼鈍工程と再結晶熱処理工程との間の冷間圧延の冷間加工率を高くすることにより、焼鈍工程後の結晶粒径が多少大きくても、仕上げ冷間圧延工程後の特性は悪くならない。
そして、再結晶熱処理工程では、短時間の熱処理がよく、最高到達温度が550〜790℃で「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの温度範囲での保持時間が0.04〜2分、より好ましくは、最高到達温度が580〜780℃で「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの範囲での保持時間が0.05〜1.5分の短時間焼鈍であって、熱処理指数Itが、460≦It≦580の関係を満たすことが必要である。460≦It≦580の関係式において、下限側は、470以上が好ましく、480以上が更に好ましく、上限側は、570以下が好ましく、560以下が更に好ましい。
再結晶粒の成長を抑制するP及びCo/又はNi、場合によってはFeを含む析出物は、再結晶熱処理工程の段階で、円形又は楕円形の析出物が存在し、その析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nm、又は、析出粒子の内で粒子径4.0〜25.0nmの個数の占める割合が70%以上であればよい。好ましくは、平均粒子径が5.0〜20.0nm、又は、析出粒子のうち粒子径4.0〜25.0nmの占める割合が80%以上である。析出物の平均粒径が小さくなると、析出物の析出強化と、結晶粒成長の抑制効果が効き過ぎて再結晶粒が小さくなり、圧延材の強度は上がるが、曲げ加工性が悪くなる。また析出物が50nmを超え、例えば100nmにも達すると、ほとんど結晶粒成長の抑制効果もなくなり、曲げ加工性が悪くなる。尚、円形又は楕円形の析出物には、完全な円形や楕円形だけでなく、円形や楕円形に近似した形状も対象に含まれる。
再結晶熱処理工程の条件で、最高到達温度、保持時間、又は熱処理指数Itの範囲の下限を下回ると、未再結晶部分が残る、または、平均結晶粒径が2.0μmより小さな超微細結晶粒の状態になる。また、再結晶熱処理工程の条件の最高到達温度、保持時間、又は熱処理指数Itの範囲の上限を超えて焼鈍すると、過度の析出物の再固溶がおこり、所定の結晶粒成長の抑制効果が機能しなくなり、平均結晶粒径が8μm以下の微細な金属組織が得られない。そして、過度の固溶により導電性が悪くなる。
再結晶熱処理工程の条件は、目的とする再結晶粒径を得ることと、過度の再固溶又は析出物の粗大化を防ぐ条件であり、数式内の適正な熱処理がされれば、再結晶粒の成長の抑制効果と、適量なP、Co、Niの再固溶が起こり、寧ろ圧延材の伸びを向上させる。つまり、PとCo、Niとの析出物は、圧延材の温度が500℃を越え始めると、析出物の再固溶が始まり、曲げ加工性に悪い影響を与える粒径4nmより小さな析出物が主として消滅する。熱処理温度が高くなり、時間が長くなるにつれ再固溶する割合が増えていく。析出物は、主として、再結晶粒の抑制効果のために使われるので、析出物として、粒径4nm以下の微細なもの、また粒径25nm以上の粗大なものが多く残留すると圧延材の曲げ加工性や伸びを阻害する。なお、再結晶熱処理工程の冷却時には、「最高到達温度−50℃」から350℃までの温度領域において、1℃/秒以上の条件で冷却することが好ましい。冷却速度が遅いと、粗大な析出物が出現し、圧延材の伸びを阻害する。
さらに、仕上げ冷間圧延後に、最高到達温度が160〜650℃で、「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの温度領域での保持時間が0.02〜200分の熱処理であって、熱処理指数Itが100≦It≦360の関係を満たす回復熱処理工程を行ってもよい。
この回復熱処理工程は、再結晶を伴わず、低温又は短時間の回復熱処理により、圧延材の応力緩和率、ばね限界値、曲げ加工性及び伸びを向上させ、また、冷間圧延により低下した導電率を回復させるための熱処理である。なお、熱処理指数Itにおいて、下限側は、130以上が好ましく、180以上が更に好ましく、上限側は、345以下が好ましく、330以下が更に好ましい。前記の回復熱処理工程を施すことにより、熱処理前に比べ、応力緩和率は1/2程度になり、応力緩和特性が向上し、ばね限界値は、1.5倍〜2倍に向上し、導電率は、0.5〜1%IACS向上する。なお、Snめっき工程において、約200℃〜約300℃の低温であるが圧延材は加熱される。このSnめっき工程は、回復熱処理後に行っても、回復熱処理後の特性にほとんど影響を与えない。一方で、Snめっき工程の加熱工程は、回復熱処理工程の代替の工程になり、圧延材の応力緩和特性、ばね強度、曲げ加工性を向上させる。
本発明の一実施形態として、熱間圧延工程と、第1冷間圧延工程と、焼鈍工程と、第2冷間圧延工程と、再結晶熱処理工程と、仕上げ冷間圧延工程とを順に含む製造工程を例として示したが、再結晶熱処理工程までの工程を必ずしも行わなくてもよい。仕上げ冷間圧延工程前の銅合金材料の金属組織が、平均結晶粒径が2.0〜8.0μmであり、円形又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nm、又は、該析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上であればよく、例えば、熱間押出や鍛造や熱処理等の工程によって、そのような金属組織の銅合金材料を得てもよい。
上述した第1発明合金、第2発明合金、第3発明合金及び比較用の組成の銅合金を用い、製造工程を変えて試料を作成した。
表1は、試料として作成した第1発明合金、第2発明合金、第3発明合金及び比較用の銅合金の組成を示す。ここで、Coが0.001mass%以下の場合、Niが0.01mass%以下の場合、Feが0.005mass%以下の場合は空欄にしている。
合金No.21は、発明合金の組成範囲よりもCo、Niの含有量が少ない。
合金No.22は、発明合金の組成範囲よりもPの含有量が少ない。
合金No.23は、発明合金の組成範囲よりもCoの含有量が多い。
合金No.24は、発明合金の組成範囲よりもPの含有量が多い。
合金No.26、37は、発明合金の組成範囲よりもZnの含有量が少ない。
合金No.27は、発明合金の組成範囲よりもZnの含有量が多い。
合金No.28は、発明合金の組成範囲よりもSnの含有量が少ない。
合金No.29、31、35、36は、組成指数f1が発明合金の範囲よりも小さい。
合金No.30、32は、組成指数f1が発明合金の範囲よりも大きい。
合金No.34は、発明合金の組成範囲よりもNiの含有量が多い。
合金No.38は、Crを含有している。
試料の製造工程はA、B、Cの3種類で行い、それぞれの製造工程で更に製造条件を変化させた。製造工程Aは、実際の量産設備で行い、製造工程B、Cは実験設備で行った。表2は、各製造工程の製造条件を示す。
工程A4、A41、A5は、熱処理指数Itが本発明の設定条件範囲から外れている。
工程B21は、熱間圧延後の冷却速度が本発明の設定条件範囲から外れている。
工程B32は、第2冷間圧延工程のRed.が本発明の設定条件範囲から外れている。
工程B42では、本発明のD0≦D1×4×(RE/100)の設定条件を満たさない。
製造工程A(A1,A11、A2,A3、A31,A4,A41,A5,A6)は、内容積10トンの中周波溶解炉で原料を溶解し、半連続鋳造で断面が厚み190mm、幅630mmの鋳塊を製造した。鋳塊は、各々長さ1.5mに切断し、その後、熱間圧延工程(板厚13mm)―冷却工程−ミーリング工程(板厚12mm)―第1冷間圧延工程(板厚1.6mm)―焼鈍工程(470℃、4時間保持)―第2冷間圧延工程(板厚0.48mm、冷間加工率70%、但し、A41は、板厚0.46mm、冷間加工率71%、A11、A31は、板厚0.52mm、冷間加工率68%)―再結晶熱処理工程−仕上げ冷間圧延工程(板厚0.3mm、冷間加工率37.5%、但し、A41は、冷間加工率34.8%、A11、A31は、冷間加工率42.3%)−回復熱処理工程を行なった。
熱間圧延工程での熱間圧延開始温度は860℃とし、板厚13mmまで熱間圧延した後、冷却工程でシャワー水冷した。本明細書では、熱間圧延開始温度と鋳塊加熱温度とは同一の意味としている。冷却工程での平均冷却速度は、最終の熱間圧延後の圧延材温度、又は、圧延材の温度が650℃のときから350℃までの温度領域での平均の冷却速度とし、圧延板の後端において測定した。測定した平均冷却速度は3℃/秒であった。
冷却工程でのシャワー水冷は次のように行った。シャワー設備は、熱間圧延時に圧延材を送る搬送ローラ上であって熱間圧延のローラから離れた個所に設けられている。圧延材は、熱間圧延の最終パスが終了すると、搬送ローラによってシャワー設備に送られ、シャワーが行われている個所を通過しながら先端から後端にかけて順に冷却される。そして、冷却速度の測定は次のように行った。圧延材の温度の測定個所は、熱間圧延の最終パスにおける圧延材の後端の部分(正確には圧延材の長手方向において、圧延先端から圧延材長さの90%の位置)とし、最終パスが終了しシャワー設備に送られる直前と、シャワー水冷が終了した時点で温度を測定し、このときの測定温度と測定を行った時間間隔に基づいて冷却速度を算出した。温度測定は放射温度計によって行った。放射温度計は高千穂精機株式会社の赤外線温度計 Fluke−574を用いた。このために、圧延材後端がシャワー設備に到達し、シャワー水が圧延材にかかるまでは空冷の状態となり、そのときの冷却速度は遅くなる。また、最終板厚が薄いほどシャワー設備に到達するまでの時間がかかるので、冷却速度は遅くなる。
焼鈍工程は、圧延材を所定の温度に加熱する加熱ステップと、加熱ステップ後に圧延材を所定の温度に所定の時間保持する保持ステップと、保持ステップ後に圧延材を所定の温度まで冷却する冷却ステップを具備している。最高到達温度を470℃とし、保持時間を4時間とした。
再結晶熱処理工程では、圧延材の最高到達温度Tmax(℃)と、圧延材の最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度領域での保持時間tm(min)とを、(690℃‐0.09min)、(660℃‐0.08min)、(720℃‐0.1min)、(630℃‐0.07min)、(780℃‐0.07min)に変化させた。
そして、上述したように仕上げ冷間圧延工程の冷間加工率を37.5%(但し、A41は、34.8%、A11、A31は、42.3%)とした。
回復熱処理工程では、圧延材の最高到達温度Tmax(℃)を540(℃)とし、圧延材の最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度領域での保持時間tm(min)を0.04分とした。ただし、製造工程A6は、回復熱処理工程を行わなかった。
また、製造工程B(B1,B21,B32,B42)は、次のように行なった。
製造工程Aの鋳塊から厚み40mm、幅120mm、長さ190mmのラボ試験用鋳塊を切り出し、その後、熱間圧延工程(板厚8mm)―冷却工程(シャワー水冷)−酸洗工程―第1冷間圧延工程―焼鈍工程―第2冷間圧延工程(厚み0.48mm)―再結晶熱処理工程−仕上げ冷間圧延工程(板厚0.3mm、加工率37.5%)−回復熱処理工程を行なった。
熱間圧延工程は、860℃に鋳塊を加熱し、厚み8mmにまで熱間圧延した。冷却工程での冷却速度(熱間圧延後の圧延材温度、又は、圧延材の温度が650℃のときから350℃までの冷却速度)は、主に3℃/秒で行い、一部を0.3℃/秒で行った。
冷却工程後に表面を酸洗し、第1冷間圧延工程で1.6mm又は0.8mmまで冷間圧延し、焼鈍工程の条件を(610℃、0.23分保持)(470℃、4時間保持)(580℃、4時間保持)に変化させて行った。その後、第2冷間圧延工程で、0.48mmに圧延した。
再結晶熱処理工程は、Tmaxを690(℃)、保持時間tmを0.09分の条件で行った。そして、仕上げ冷間圧延工程で0.3mmまで冷間圧延(冷間加工率:37.5%)し、回復熱処理工程は、Tmaxを540(℃)、保持時間tmを0.04分の条件で実施した。
製造工程B及び後述する製造工程Cにおいては、製造工程Aで、連続焼鈍ライン等で行う短時間の熱処理に相当する工程は、ソルトバスに圧延材を浸漬することにより代用とし、最高到達温度をソルトバスの液温度とし、浸漬時間を保持時間とし、浸漬後空冷した。なお、ソルト(溶液)は、BaCl、KCl、NaClの混合物を使用した。
さらに、実験室テストとして工程C(C1、C3)を次のように行なった。実験室の電気炉で所定の成分になるように溶解、鋳造し、厚み40mm、幅120mm、長さ190mmのラボ試験用鋳塊を得た。以後、前述の工程Bと同じプロセスで製作した。すなわち、860℃に鋳塊を加熱し、厚み8mmにまで熱間圧延し、熱間圧延後に、圧延材の温度が熱間圧延後の圧延材温度、又は、650℃のときから350℃までの温度範囲を冷却速度3℃/秒で冷却した。冷却後に表面を酸洗し、第1冷間圧延工程で1.6mmまで冷間圧延した。冷間圧延後に焼鈍工程を610℃、0.23分の条件で行い、第2冷間圧延工程でC1は、0.48mmに、C3は、板厚0.52mmに冷間圧延した。再結晶熱処理工程は、Tmaxを690(℃)、保持時間tmを0.09分の条件で実施した。そして、仕上げ冷間圧延工程で0.3mmに冷間圧延(C1の冷間加工率:37.5%、C3の冷間加工率:42.3%)し、回復熱処理工程は、Tmaxを540(℃)、保持時間tmを0.04分の条件で実施した。
上述した方法により作成した銅合金の評価として、引張強度、耐力、伸び、導電率、曲げ加工性、応力緩和率、耐応力腐食割れ性、ばね限界値を測定した。また、金属組織を観察して平均結晶粒径を測定した。また、析出物の平均粒径と、全ての大きさの析出物の中で粒径が所定の値以下の析出物の個数の割合を測定した。
上記の各試験の結果を表3乃至表12に示す。ここで各試験No.の試験結果は、表3と表4のように2つずつの表に示している。尚、製造工程A6は、回復熱処理工程を行っていないので、回復熱処理工程後のデータの欄には、仕上げ冷間圧延工程後のデータを記載している。
また、図1は、合金No.2(試験No.15)の銅合金板の透過電子顕微鏡写真を示す。析出物の平均粒径が約7nmであり、均一に分布している。
引張強度、耐力、及び伸びの測定は、JIS Z 2201、JIS Z 2241に規定される方法に従い、試験片の形状は、5号試験片で実施した。
導電率の測定は、日本フェルスター株式会社製の導電率測定装置(SIGMATEST D2.068)を用いた。なお、本明細書においては、「電気伝導」と「導電」の言葉を同一の意味に使用している。また、熱伝導性と電気伝導性は強い相関があるので、導電率が高い程、熱伝導性が良いことを示す。
曲げ加工性は、JIS H 3110で規定されている曲げ角度90度のW曲げで評価した。曲げ試験(W曲げ)は、次のように行なった。曲げ治具の先端の曲げ半径(R)は、材料の厚さの0.67倍(0.3mm×0.67=0.201mm 曲げ半径=0.2mm)、0.33倍(0.3mm×0.33=0.099mm 曲げ半径=0.1mm)、及び、0倍(0.3mm×0=0mm 曲げ半径=0mm)とした。サンプルは、いわゆるバッドウェイ(Bad Way)と言われる方向で圧延方向に対して90度をなす方向、及びグッドウェイ(Good Way)と言われる方向で圧延方向に0度をなす方向から採取した。曲げ加工性の判定は、20倍の実体顕微鏡で観察してクラックの有無で判定し、曲げ半径が、材料の厚さの0.33倍で、クラックが生じなかったものを評価A、曲げ半径が、材料の厚さの0.67倍で、クラックが生じなかったものを評価B、材料の厚さの0.67倍で、クラックが生じたものを評価Cとした。特に曲げ加工性の良い材料として厚さの0倍で、クラックが生じなかったものをSとした。本願の課題は、強度などのトータルバランス、および曲げ加工性が優れることを特徴としているので、本曲げ加工性の評価は、厳しいものとなった。
応力緩和率の測定は、次のように行なった。供試材の応力緩和試験には片持ち梁ねじ式治具を使用した。試験片は圧延方向に0度(平行)をなす方向から採取し、試験片の形状は、板厚t×幅10mm×長さ60mmとした。供試材への負荷応力は0.2%耐力の80%とし、150℃の雰囲気中に1000時間暴露した。応力緩和率は、
応力緩和率=(開放後の変位/応力負荷時の変位)×100(%)
として求めた。本発明においては、応力緩和率は値が小さいのが好ましい。
圧延方向に平行に採取した試験片において、応力緩和率が25%以下を評価A(優れる)とし、25%超え40%以下を評価B(可)とし、40%を超えるものを評価C(不可)とした。応力緩和率が17%以下を評価S(特に優れる)とした。
なお、製造工程A1、製造工程A31、製造工程B1、および製造工程C1で作成した圧延材については、圧延方向に90度(垂直)をなす方向からも試験片を採取し、試験した。製造工程A1、製造工程A31、製造工程B1、および製造工程C1で作成した圧延材については、圧延方向に平行な方向から採取した試験片と、圧延方向に垂直な方向から採取した試験片の両方での応力緩和率の平均を表3〜表12に記載した。圧延方向に垂直な方向から採取した試験片の応力緩和率は、平行な方向から採取したものより大きく、つまり応力緩和特性が悪い。
耐応力腐食割れ性の測定は、JIS H 3250に規定された試験容器と試験液とを使用して行ない、等量のアンモニア水と水を混合した液を使用して行った。
まず、主として圧延材に残留応力を加え、耐応力腐食割れ性を評価した。前記の曲げ加工性の評価に使用した方法を用い、板厚の2倍のR(半径0.6mm)でW曲げを行った試験片をアンモニア雰囲気中に暴露して評価した。JIS H 3250に規定された試験器及び試験液を使用して行った。等量のアンモニア水と水を混合した液を用いてアンモニア暴露を行った上、硫酸で洗った後に10倍の実体顕微鏡で割れの有無を調査し、耐応力腐食割れ性の評価を行った。48時間暴露で割れのないものを、耐応力腐食割れ性に優れるものとして評価Aとし、48時間暴露では割れを生じたが24時間暴露では割れのないものを、耐応力腐食割れ性が良好なもの(実用上の問題はない)として評価Bとし、24時間暴露で割れを生じたものを、耐応力腐食割れ性に劣るもの(実用多少問題あり)として評価Cとした。この結果を、表3乃至表12では、耐応力腐食割れ性の応力腐食1の欄に示した。
また、上記の評価とは別に、もう一つの方法で耐応力腐食割れ性を評価した。
もう一つの応力腐食割れ試験は、付加応力に対する応力腐食割れの感受性を調べるため、樹脂製の片持ち梁ねじ式治具を用い、耐力の80%の曲げ応力を加えた圧延材を、上記のアンモニア雰囲気中に暴露し、応力緩和率から、耐応力腐食割れ性の評価を行った。つまり、微細なクラックが発生しておれば、元には戻らず、そのクラックの度合いが大きくなると応力緩和率が大きくなるので、耐応力腐食割れ性を評価できる。48時間暴露で応力緩和率が25%以下のものを、耐腐食割れ性に優れるものとして評価Aとし、応力緩和率が48時間暴露では25%を超えても24時間暴露では25%以下のものを、耐腐食割れ性が良好なもの(実用上の問題はない)として評価Bとし、24時間暴露で応力緩和率が25%を超えるものを、耐応力腐食割れ性に劣るもの(実用上問題あり)として評価Cとした。この結果を、表3乃至表12では、耐応力腐食割れ性の応力腐食2の欄に示した。
なお、本願で求める耐応力腐食割れ性は、高い信頼性や過酷な場合を想定したものである。
ばね限界値の測定は、JIS H 3130に記載される方法に従い、繰り返したわみ式試験によって評価し、永久たわみ量が0.1mmを超えるまで試験を行った。
再結晶粒の平均粒径の測定は、600倍、300倍、及び150倍等の金属顕微鏡写真で結晶粒の大きさに応じ、適宜倍率を選定し、JIS H 0501における伸銅品結晶粒度試験方法の求積法に準じて測定した。なお、双晶は結晶粒とはみなさない。金属顕微鏡から判断が困難なものは、FE−SEM−EBSP(Electron Back Scattering diffraction Pattern)法によって求めた。すなわち、FE−SEMは日本電子株式会社製 JSM−7000F、解析にはTSLソリューションズOIM−Ver.5.1を使用し、平均結晶粒度は解析倍率200倍と500倍の粒度マップ(Grainマップ)から求めた。平均結晶粒径の算出方法は求積法(JIS H 0501)による。
なお、1つの結晶粒は、圧延により伸ばされるが、結晶粒の体積は、圧延によってほとんど変化することは無い。板材を圧延方向に平行、および圧延方向に垂直に切断した断面において、各々求積法によって測定された平均結晶粒径の平均値を取れば、再結晶段階での平均結晶粒径を推定することが可能である。
析出物の平均粒径は次のようにして求めた。500,000倍及び150,000倍(検出限界はそれぞれ、1.0nm、3nm)のTEMによる透過電子像を画像解析ソフト「Win ROOF」を用いて析出物のコントラストを楕円近似し、長軸と短軸の相乗平均値を視野内の中の全ての析出粒子に対して求め、その平均値を平均粒子径とした。なお、50万倍、15万倍の測定で、粒径の検出限界をそれぞれ1.0nm、3nmとし、それ未満のものは、ノイズとして扱い、平均粒径の算出には含めなかった。なお、平均粒径が、概ね8nmを境にしてそれ以下のものは、500,000倍で、それ以上のものは、150,000倍で測定した。透過型電子顕微鏡の場合、冷間加工材では転位密度が高いので析出物の情報を正確に把握することは難しい。また、析出物の大きさは、冷間加工によっては変化しないので、今回の観察は、仕上げ冷間圧延工程前の再結晶熱処理工程後の再結晶部分を観察した。測定位置は、圧延材の表面、裏面の両面から板厚の1/4の長さ入った2箇所とし、2箇所の測定値を平均した。
試験の結果を下記に示す。
(1)第1発明合金であって、再結晶熱処理工程後の平均結晶粒径が2.0〜8.0μmであり、析出物の平均粒子径が4〜25nm、又は、該析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上であった圧延材を仕上げ冷間圧延したものは、引張強度、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性等に優れる(試験No.T30、T43、T67参照)。
(2)第2発明合金であって、再結晶熱処理工程後の平均結晶粒径が2.5〜7.5μmであり、析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nm、又は、該析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上であった圧延材を仕上げ冷間圧延したものは、引張強度、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性等に優れる(試験No.T8、T22、T56、T72参照)。
(3)第3発明合金であって、再結晶熱処理工程後の平均結晶粒径が2.0〜8.0μmであり、析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nm、又は、該析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上であった圧延材を仕上げ冷間圧延したものは、特に引張強度に優れ、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性等は良好であった(試験No.T92、T93、T94参照)。
(4)第1発明合金、第2発明合金、又は第3発明合金であって、再結晶熱処理工程後の平均結晶粒径が2.0〜8.0μmであり、析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nm、又は、該析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める割合が70%以上であった圧延材を仕上げ冷間圧延したものであり、導電率が32%IACS以上、引張強度が500N/mm以上、3200≦f2≦4000であり、圧延方向に対して0度をなす方向と90度をなす方向とでの引張強度の比が0.95〜1.05であり、圧延方向に対して0度をなす方向と90度をなす方向とでの耐力の比が0.95〜1.05である銅合金板を得ることができた。これらの圧延材は、引張強度、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性等に優れる(試験No.T8、T22、T30、T43、T56、T67、T72参照)。
(5)第1発明合金、第2号合金、又は第3発明合金であって、再結晶熱処理工程後の平均結晶粒径が2.0〜8.0μmであり、析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nm、又は、該析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める割合が70%以上であった圧延材を仕上げ冷間圧延し、回復熱処理したものは、引張強度、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性、ばね限界値等に優れる(試験No.T1、T15、T23、T37、T50、T63、T68、T92、T93、T94等参照)。
(6)第1発明合金、又は第2発明合金であって、再結晶熱処理工程後の平均結晶粒径が2.0〜8.0μmであり、析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nm、又は、該析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める割合が70%以上であった圧延材を仕上げ冷間圧延し、回復熱処理したものであり、導電率が32%IACS以上、引張強度が500N/mm以上、3200≦f2≦4000であり、圧延方向に対して0度をなす方向と90度をなす方向とでの引張強度の比が0.95〜1.05であり、圧延方向に対して0度をなす方向と90度をなす方向とでの耐力の比が0.95〜1.05である銅合金板を得ることができた。これらの圧延材は、引張強度、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性、ばね限界値等に優れる(試験No.T1、T15、T23、T37、T50、T63、T68、T92、T93、T94等参照)。
Feをさらに含有した第3発明合金は、やや析出粒子が細かくなるが、結晶粒成長抑制作用が働き、強度が高い。
(7)熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、再結晶熱処理工程と、仕上げ冷間圧延工程とを順に含み、熱間圧延工程の熱間圧延開始温度が800〜940℃であって最終圧延後の温度、又は650℃から350℃までの温度領域の銅合金材料の冷却速度が1℃/秒以上であり、冷間圧延工程での冷間加工率が55%以上であり、再結晶熱処理工程における圧延材の最高到達温度Tmax(℃)が550≦Tmax≦790、であり、保持時間tm(min)が0.04≦tm≦2、であり、熱処理指数Itが460≦It≦580である製造条件によって、上記(1)及び(2)で述べた銅合金板を得ることができる(試験No.T8、T22、T30、T43、T56、T67、T72参照)。
(8)熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、再結晶熱処理工程と、仕上げ冷間圧延工程と、回復熱処理工程とを順に含み、熱間圧延工程の熱間圧延開始温度が800〜940℃であって最終圧延後の温度、又は650℃から350℃までの温度領域の銅合金材料の冷却速度が1℃/秒以上であり、冷間圧延工程での冷間加工率が55%以上であり、再結晶熱処理工程における圧延材の最高到達温度Tmax(℃)が550≦Tmax≦790、であり、保持時間tm(min)が0.04≦tm≦2、であり、熱処理指数Itが460≦It≦580であり、回復熱処理工程における圧延材の最高到達温度Tmax2(℃)が160≦Tmax2≦650、であり、保持時間tm2(min)が0.02≦tm2≦200、であり、熱処理指数Itが100≦It≦360である製造条件によって、上記(5)で述べた銅合金板を得ることができる(試験No.T1、T15、T23、T37、T50、T63、T68、T92、T93、T94等参照)。
発明合金を用いた場合において、下記のようであった。
(1)量産設備を用いた製造工程Aと実験設備を用いた製造工程Bでは、製造条件が同等なら、同等の特性が得られる(試験No.T1、T23等参照)
(2)製造条件が本発明の設定条件範囲内であり、Ni量が多く、且つ、[Ni]/[P]が8以上である場合には、応力緩和率が良好である(試験No.T1、T50、T68等参照)。
(3)製造条件が本発明の設定条件範囲内であれば、Ni量が少なくでも応力緩和率はB以上である(試験No.T37、T63等参照)。
(4)平均結晶粒径が、2〜3.5μmよりも、3.5〜5.0μmで大きいほど、または、工程A1より、工程A3のほうが、引張強さは少し低いが、応力緩和特性がよくなる(試験No.T15,T19 等参照)。
(5)再結晶熱処理工程後の平均再結晶粒径が2.5〜4.0μmであると、引張強度、耐力、導電率、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性等の各特性が良好である(試験No.T1、T3、T15、T17等参照)。また、平均再結晶粒径が2.5〜5.0μmであると、圧延方向に対して0度をなす方向と90度をなす方向とでの引張強度、耐力の比が0.98〜1.03であり、方向性がほとんど無い(試験No.T1、T2、T3、T5、T6等参照)。
(6)再結晶熱処理工程後の平均再結晶粒径が2.5μmより小さく、特に2.0μmより小さいと、曲げ加工性が悪くなる(試験No.T18、T39等参照)。また、圧延方向に対して0度をなす方向と90度をなす方向とでの引張強度、耐力の比が悪くなる。また、応力緩和特性も悪くなる。
平均再結晶粒径が2.0μmより小さいと、最終の仕上げ冷間圧延の冷間加工率を低くしても、曲げ加工性や、方向性は、余り改善されない(試験No.T40参照)。
(7)再結晶熱処理工程後の平均再結晶粒径が8.0μmより大きいと、引張強度が低くなる(試験No.T7、T29等参照)。
(8)再結晶熱処理工程での熱処理指数Itが460より小さいと、再結晶熱処理工程後の平均結晶粒径が小さくなり、曲げ加工性、応力緩和率が悪化する(試験No.T18等参照)。また、Itが460より小さいと、析出粒子の平均粒径が小さくなり、曲げ加工性が悪くなる(試験No.T18、T39等参照)。また、圧延方向に対して0度をなす方向と90度をなす方向とでの引張強度、耐力の比が悪くなる。
(9)再結晶熱処理工程での熱処理指数Itが580より大きいと、再結晶熱処理工程後の析出粒子の平均粒径が大きくなり、引張強度、及び導電率が低下する。また、引張強度や耐力の方向性が悪化する(試験No.T7、T21等参照)。
(10)熱間圧延後の冷却速度が設定条件範囲より遅いと、析出粒子の平均粒径がやや大きく、不均一な析出状態になり、引張強度が低く、応力緩和特性も悪くなる(試験No.T10、T32等参照)。
再結晶熱処理工程での熱処理指数Itの条件範囲(460〜580)の上限付近のItが565及び566で熱処理を施した銅合金板は、平均結晶粒径が、約5μmでやや大きくなるが、引張強度がやや低いが、析出粒子が均一に分布しており、応力緩和特性はよい(試験No.T5、T6、T19、T20、T27、T28、T53、T54等参照)。最終の仕上げ冷間圧延の冷間加工率を高く取ると、本願発明合金圧延材は、曲げ加工性、応力緩和特性を損なわずに、強度が向上する(試験No.T6、T20、T28、T54等参照)。
(11)焼鈍工程の温度条件が580℃×4時間の場合、又は、第2冷間圧延工程での冷間加工率が設定条件範囲より小さいと、D0≦D1×4×(RE/100)の関係を満たさなくなり、再結晶熱処理工程後の再結晶粒が大きい結晶粒と小さい結晶粒が混在した混粒状態になる。その結果、平均結晶粒径がやや大きくなり、引張強度や耐力の方向性が生じ、曲げ加工性が悪化する(試験No.T14、T36等参照)。
(12)第2冷間圧延率が低いと、再結晶熱処理工程後の再結晶粒が大きい結晶粒と小さい結晶粒が混在した混粒状態になる。その結果、平均結晶粒径がやや大きくなり、引張強度や耐力の方向性が生じ、曲げ加工性が悪化する(試験No.T12、T34等参照)。
組成について、下記のようであった。
(1)P、Co、Niを添加する場合には、含有量が第2発明合金の条件範囲より少ないと、再結晶熱処理工程後の平均結晶粒径が大きくなり、バランス指数f2が小さくなる。引張強度が低くなり、引張強度や耐力の方向性が生じる(試験No.T95,T97等参照)。
(2)P、Coの含有量が第1発明合金の条件範囲より多いと、P、Coの固有の影響、及び再結晶熱処理工程後の析出粒子の平均粒径が小さくなることにより、平均結晶粒径が小さくなり、バランス指数f2が小さくなる。引張強度や耐力の方向性、曲げ加工性、応力緩和率が悪化する(試験No.T99,T100等参照)。
(3)Zn、Snの含有量が第1発明合金の条件範囲より少ないと、再結晶熱処理工程後の平均結晶粒径が大きくなり、引張強度が低くなり、バランス指数f2が小さくなる。また、引張強度や耐力の方向性が悪くなり、応力緩和率が悪化する(試験No.T103、T106等参照)。特にNiを含有してもNi含有量に見合った効果が得られず、応力緩和特性が悪い。
Zn量4.5mass%付近が、バランス指数f2、引張強度、応力緩和特性を満足するための、境界値である(合金No.160、161、162、163、26、37等参照)。
Sn量0.4mass%付近が、バランス指数f2、引張強度、応力緩和特性を満足するための、境界値である。(合金No.166、168、28等参照)。
(4)Znの含有量が発明合金の条件範囲より多いと、バランス指数f2が小さく、導電率、引張強度や耐力の方向性、応力緩和率、曲げ加工性が悪化する。また、耐応力腐食割れ性も悪化する(試験No.T105等参照)。
Sn含有量が多いと、導電率が悪くなり、曲げ加工性もあまりよくない(No.T108 参照)。
Ni量が0.35mass%を超える応力緩和特性に優れる合金において、Ni/Snの値が、0.6〜1.8から外れると、Ni含有量に見合った効果が得られず、応力緩和特性があまりよくない(合金No.15、162、167、168、169等参照)。
(5)組成指数f1が第1発明合金の条件範囲よりも低いと、再結晶熱処理工程後の平均結晶粒径が大きく、引張強度が低く、引張強度や耐力の方向性も悪い。また、応力緩和率が悪い(試験No.T107、T109等参照)。特にNiを含有してもNi含有量に見合った効果が得られず、応力緩和特性が悪い。また、組成指数f1の値、約11が、バランス指数f2、引張強度、応力緩和特性を満足するための、境界値である(合金No.163、164、29、31、35、36等参照)。また、組成指数f1の値が12を超えると、さらに、バランス指数f2、引張強度、応力緩和特性がよくなる(合金No.162、165等参照)。
(6)組成指数f1が第1発明合金の条件範囲よりも高いと導電率が低く、バランス指数f2が小さく、引張強度や耐力の方向性も悪い。また、耐応力腐食割れ性、応力緩和率も悪い(試験No.T108、T110等参照)。また、組成指数f1の値、約17が、バランス指数f2、導電率、耐応力腐食割れ性、応力緩和特性、方向性を満足するための、境界値である(合金No.30、32、166)。さらに、組成指数f1の値が16より小さいと、バランス指数f2、導電率、耐応力腐食割れ性、応力緩和特性、引張強度や耐力の方向性がよくなる(合金No.7)。
以上のように、Zn、Sn、Ni,Co等の濃度が、所定の濃度範囲にあっても、組成指数f1の値が11〜17、好ましくは11〜16の範囲から外れると、バランス指数f2、導電率、耐応力腐食割れ性、応力緩和特性、方向性のいずれかを満足しない。
Feを含有させても、バランス指数f2を十分満足する。Feの含有により、析出物の粒径が小さくなり、平均結晶粒径が3.5μm以下になるので、引張強さを重視する場合はよいが、応力緩和特性、曲げ加工性は、少し悪くなる(試験N0.T92、T93、T94 等参照)。
(7)合金組成が発明合金の条件範囲内であれば、曲げ加工性、引張強度や耐力の方向性は良好であるが、Feの含有量と、Coの含有量の合計が0.09mass%まで多いと、Feの含有量と、Coの含有量の合計が0.05mass%以下の銅合金板と比べると、再結晶熱処理工程後の析出粒子の平均粒径が小さくなり、平均結晶粒径が小さくなり、曲げ加工性、引張強度や耐力の方向性が悪く、応力緩和率が悪い(試験No.T111参照)。
Crを0.05mass%含有すると、平均結晶粒径が小さくなり、曲げ加工性、方向性が悪く、応力緩和率が悪い(試験No.T118参照)。
本発明の銅合金板は、強度が高く、耐食性がよく、導電率と引張強度と伸びとのバランスに優れ、且つ、引張強度と耐力の方向性が無い。このため、本発明の銅合金板は、コネクタ、端子、リレー、ばね、スイッチ等の構成材等として好適に適用できる。

Claims (8)

  1. 銅合金材料が冷間圧延される仕上げ冷間圧延工程を含む製造工程によって製造された銅合金板であり、
    前記銅合金材料の平均結晶粒径が2.0〜8.0μmであり、前記銅合金材料中に円形又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nmであるか、又は、前記析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上であり、
    前記銅合金板は、4.5〜12.0mass%のZnと、0.40〜0.90mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPとを含有し、かつ0.005〜0.08mass%のCo及び0.03〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、
    Znの含有量[Zn]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%とは、11≦[Zn]+7×[Sn]+15×[P]+12×[Co]+4.5×[Ni]≦17の関係を有することを特徴とする銅合金板。
  2. 銅合金材料が冷間圧延される仕上げ冷間圧延工程を含む製造工程によって製造された銅合金板であり、
    前記銅合金材料の平均結晶粒径が2.5〜7.5μmであり、前記銅合金材料中に円形又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nmであるか、又は、前記析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上であり、
    前記銅合金板は、4.5〜10.0mass%のZnと、0.40〜0.85mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPとを含有し、かつ0.005〜0.05mass%のCo及び0.35〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、
    Znの含有量[Zn]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%とは、11≦[Zn]+7×[Sn]+15×[P]+12×[Co]+4.5×[Ni]≦16の関係を有し、Niが0.35〜0.85mass%である場合に8≦[Ni]/[P]≦40であることを特徴とする銅合金板。
  3. 銅合金材料が冷間圧延される仕上げ冷間圧延工程を含む製造工程によって製造された銅合金板であり、
    前記銅合金材料の平均結晶粒径が2.0〜8.0μmであり、前記銅合金材料中に円形又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒子径が4.0〜25.0nmであるか、又は、前記析出物の内で粒子径が4.0〜25.0nmの析出物が占める個数の割合が70%以上であり、
    前記銅合金板は、4.5〜12.0mass%のZnと、0.40〜0.90mass%のSnと、0.01〜0.08mass%のPと、0.004〜0.04mass%のFeとを含有し、かつ0.005〜0.08mass%のCo及び0.03〜0.85mass%のNiのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、
    Znの含有量[Zn]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%とは、11≦[Zn]+7×[Sn]+15×[P]+12×[Co]+4.5×[Ni]≦17の関係を有するとともに、Coの含有量[Co]mass%と、Feの含有量[Fe]mass%とは、[Co]+[Fe]≦0.08の関係を有することを特徴とする銅合金板。
  4. 導電率をC(%IACS)とし、圧延方向に対して0度をなす方向での引張強度と伸びとをそれぞれPw(N/mm)、L(%)としたとき、前記仕上げ冷間圧延工程後に、C≧32、Pw≧500、3200≦[Pw×{(100+L)/100}×C1/2]≦4000であり、圧延方向に対して0度をなす方向の引張強度と圧延方向に対して90度をなす方向の引張強度との比が0.95〜1.05であり、圧延方向に対して0度をなす方向の耐力と圧延方向に対して90度をなす方向の耐力との比が0.95〜1.05であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の銅合金板。
  5. 前記製造工程は、前記仕上げ冷間圧延工程の後に回復熱処理工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の銅合金板。
  6. 導電率をC(%IACS)とし、圧延方向に対して0度をなす方向での引張強度と伸びとをそれぞれPw(N/mm)、L(%)としたとき、前記回復熱処理工程後に、C≧32、Pw≧500、3200≦[Pw×{(100+L)/100}×C1/2]≦4000であり、圧延方向に対して0度をなす方向の引張強度と圧延方向に対して90度をなす方向の引張強度との比が0.95〜1.05であり、圧延方向に対して0度をなす方向の耐力と圧延方向に対して90度をなす方向の耐力との比が0.95〜1.05であることを特徴とする請求項5に記載の銅合金板。
  7. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の銅合金板の製造方法であって、
    熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、再結晶熱処理工程と、前記仕上げ冷間圧延工程とを順に含み、
    前記熱間圧延工程の熱間圧延開始温度が800〜940℃であって最終圧延後の温度、又は650℃から350℃までの温度領域の銅合金材料の冷却速度が1℃/秒以上であり、
    前記冷間圧延工程での冷間加工率が55%以上であり、
    前記再結晶熱処理工程は、前記銅合金材料を所定の温度に加熱する加熱ステップと、該加熱ステップ後に該銅合金材料を所定の温度に所定の時間保持する保持ステップと、該保持ステップ後に該銅合金材料を所定の温度まで冷却する冷却ステップを具備し、
    前記再結晶熱処理工程において、該銅合金材料の最高到達温度をTmax(℃)とし、該銅合金材料の最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度領域での保持時間をtm(min)とし、前記冷間圧延工程での冷間加工率をRE(%)としたときに、550≦Tmax≦790、0.04≦tm≦2、460≦{Tmax−40×tm−1/2−50×(1−RE/100)1/2}≦580であることを特徴とする銅合金板の製造方法。
  8. 請求項5に記載の銅合金板の製造方法であって、
    熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、再結晶熱処理工程と、前記仕上げ冷間圧延工程と、前記回復熱処理工程とを順に含み、
    前記熱間圧延工程の熱間圧延開始温度が800〜940℃であって最終圧延後の温度、又は650℃から350℃までの温度領域の銅合金材料の冷却速度が1℃/秒以上であり、
    前記冷間圧延工程での冷間加工率が55%以上であり、
    前記再結晶熱処理工程は、前記銅合金材料を所定の温度に加熱する加熱ステップと、該加熱ステップ後に該銅合金材料を所定の温度に所定の時間保持する保持ステップと、該保持ステップ後に該銅合金材料を所定の温度まで冷却する冷却ステップを具備し、
    前記再結晶熱処理工程において、該銅合金材料の最高到達温度をTmax(℃)とし、該銅合金材料の最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度領域での保持時間をtm(min)とし、前記冷間圧延工程での冷間加工率をRE(%)としたときに、550≦Tmax≦790、0.04≦tm≦2、460≦{Tmax−40×tm−1/2−50×(1−RE/100)1/2}≦580であり、
    前記回復熱処理工程は、前記銅合金材料を所定の温度に加熱する加熱ステップと、該加熱ステップ後に該銅合金材料を所定の温度に所定の時間保持する保持ステップと、該保持ステップ後に該銅合金材料を所定の温度まで冷却する冷却ステップを具備し、
    前記回復熱処理工程において、該銅合金材料の最高到達温度をTmax2(℃)とし、該銅合金材料の最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度領域での保持時間をtm2(min)とし、前記仕上げ冷間圧延工程での冷間加工率をRE2(%)としたときに、160≦Tmax2≦650、0.02≦tm2≦200、100≦{Tmax2−40×tm2−1/2−50×(1−RE2/100)1/2}≦360であることを特徴とする銅合金板の製造方法。
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