以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、本発明の検体処理システムを、一例として、タンパク質解析用の検体の前処理に適用した場合の例である。
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態の検体処理システムの全体構成を説明する。図1は、本実施形態の検体処理システムの全体構成を表す斜視図である。図2は、本実施形態の検体処理システムの各構成要素を上方から見た上面図である。
図1及び図2において、検体処理システム1は、例えば空気清浄度が確保されたクリーンルームに設けられ、血液や髄液、尿、組織の一部等のタンパク質解析用の検体に対し、試薬の注入、撹拌、遠心力や磁気による分離、上澄み液の吸引、加熱や冷却等を含む、所定の工程からなる処理(詳細は後述)を実行するシステムである。この検体処理システム1は、基台101、胴体部102、及び2つのアーム103L,103Rを備えたロボット100と、このロボット100のアーム103L,103Rの可動範囲内に配置され、検体に対し上記処理を行うための、シャーレ201(後述の図9参照)、シャーレ台202、ヘラ203、ヘラ立て204、試験管205、試験管立て206A,206B、ピペット207A,207B、ピペット立て208、チップ209、チップ立て210、インキュベータ211、遠心機212A,212B、撹拌機213A,213B,213C、及び、加熱・冷却器214を含む、複数の処理用機器とを有している。なお、ロボット100の詳細については、後述する。
シャーレ201は、検体を収納する蓋付きの平皿である。シャーレ台202は、シャーレ201を載置するための台であり、上記ロボット100の近傍に設けられたテーブルT上の作業領域WTに配置されている。作業領域WTは、検体に対しロボット100のアーム103L,103Rが所定の作業(詳細は後述)を行うための領域である。
ヘラ203は、検体を掻き混ぜるための器具である。ヘラ立て204には、ヘラ203が設置されている。なお、図1及び図2中では図示を省略しているが、ヘラ立て204に設置された各ヘラ203には、それぞれ、ヘラ203を保持するための第1ホルダ301(後述の図7参照)が取り付けられている。この第1ホルダ301の詳細については、後述する。
試験管205は、検体に対し上記処理を行うための器具である。この例では、試験管205は、遠心機212A,212Bに使用可能なマイクロチューブである。なお、試験管としては、マイクロチューブに限られず、他のタイプの試験管でもよい。試験管立て206A,206Bには、試験管205が設置される。これら試験管立て206A,206Bのうち試験管立て206Bは、長手方向に沿って永久磁石が配設された磁気プレートを備えており、収容された試験管205の内容物(検体)を構成する成分を、磁気により分離又は分画する機能を兼ね備えている。
ピペット207A,207Bは、試薬や上澄み液を吸引・注入するための機器である。この例では、ピペット207Aは、少量(例えば1μl〜1000μl程度)の液体の体積を略正確に計量し分注可能なマイクロピペットである。ピペット207Bは、液体をバキューム吸引可能なピペットである。なお、ピペットとしては、マイクロピペットやバキューム吸引可能なピペットに限られず、ホールピペットや、メスピペット、駒込ピペット、パスツールピペット等でもよい。ピペット立て208には、ピペット207A,207Bが設置されている。なお、図1及び図2中では図示を省略しているが、ピペット立て208に設置された各ピペット207A,207Bには、それぞれ、ピペット207A,207Bを保持するための第2ホルダ302(後述の図8参照)が取り付けられている。この第2ホルダ302の詳細については、後述する。
チップ209は、ピペット207Aの長手方向他方側(後述の図8中下側)端部、すなわちピペット207Aの先端に取り付けられるマイクロピペット用のチップ(カートリッジ)である。チップ立て210には、チップ209が設置されている。
インキュベータ211は、検体を培養するための機器である。このインキュベータ211には、検体が収納されたシャーレ201が収容されている。
遠心機212A,212Bは、セットされた試験管205の内容物(検体)を構成する成分を、遠心力により分離又は分画するための機器である。
撹拌機213A,213B,213Cは、セットされた試験管205の内容物(検体)を撹拌するための機器である。この例では、撹拌機213Aは、セットされた試験管205を回転軸を中心に回転(公転)して検体を撹拌する、いわゆるロータリーミキサーである。撹拌機213Bは、セットされた試験管205の底部を高速旋回して検体を撹拌する、いわゆるボルテックスミキサーである。撹拌機213Cは、セットされた試験管205を偏心振動方式により回転(自転)して検体を撹拌する撹拌機である。
加熱・冷却器214は、検体の加熱・冷却を行うための機器である。
なお、複数の処理用機器としては、上記機器に限られず、上記機器のうち1つ以上の機器を省略してもよいし、他の機器を含んでいてもよい。また、以下適宜、複数の処理用機器に含まれる機器を区別なく指す場合には、単に「処理用機器」と称する。
また、複数の処理用機器のうち少なくとも一部、この例では、シャーレ台202、ヘラ203、ヘラ立て204、試験管205、試験管立て206A,206B、ピペット207A,207B、ピペット立て208、チップ209、チップ立て210、遠心機212B、及び撹拌機213B等は、上記テーブルT上に配置されている。それ以外の処理用機器、この例では、インキュベータ211、遠心機212A、撹拌機213A,213C、及び加熱・冷却器214等は、アーム103L,103Rの可動範囲内の適宜の位置(例えばテーブルTの周辺位置)に配置されている。さらに、アーム103L,103Rの可動範囲内の適宜の位置(例えばテーブルT上)には、シャーレ201を保持するための第3ホルダ303と、吸着パッド260(詳細は後述)に取り付けられ、シャーレ201の蓋201U(後述の図9参照)を保持するための第4ホルダ304とが配置されている。なお、これら第3及び第4ホルダ303,304の詳細については、後述する。またさらに、図2に示すように、テーブルTの下方には、使用済みのチップ209やヘラ203等の消耗品を廃棄するための廃棄ボックス250が設置されている。
次に、図3を用いて、ロボット100の全体構成を説明する。図3(a)は、ロボット100を正面から見た正面図であり、図3(b)は、ロボット100の模式的な上面図である。
図3(a)及び図3(b)において、ロボット100は、基台101、胴体部102、及び2つのアーム103L,103Rを備えた垂直多関節ロボットであり、ロボット100の動作を制御するための演算器、記憶装置、入力装置等を備えたロボットコントローラ150に相互通信可能に接続されている。基台101は、設置面(クリーンルームの床部等)に対し図示しないアンカーボルト等により固定されている。胴体部102は、回転軸Ax1周りに回転駆動するアクチュエータAc1が設けられた第1関節部を有している。この胴体部102は、基台101に対し第1関節部を介して旋回可能に設置されており、第1関節部に設けられたアクチュエータAc1の駆動により上記設置面と略水平な方向に沿って旋回する。また、胴体部102は、別体として構成されたアーム103L,103Rを、それぞれ一方側(図3中右側)及び他方側(図3中左側)において支持する。
アーム103Lは、胴体部102の一方側に設けられたマニピュレータであり、肩部104L、上腕A部105L、上腕B部106L、下腕部107L、手首A部108L、手首B部109L、フランジ110L、及びハンド111Lと、各部をそれぞれ回転駆動するアクチュエータAc2〜Ac8がそれぞれ設けられた第2〜第8関節部とを有している。
肩部104Lは、胴体部102に対し第2関節部を介して回転可能に連結されており、第2関節部に設けられたアクチュエータAc2の駆動により上記設置面に対して略水平な回転軸Ax2周りに回転する。上腕A部105Lは、肩部104Lに対し第3関節部を介して旋回可能に連結されており、第3関節部に設けられたアクチュエータAc3の駆動により回転軸Ax2に対して直交する回転軸Ax3周りに旋回する。上腕B部106Lは、上腕A部105Lの先端に対し第4関節部を介して回転可能に連結されており、第4関節部に設けられたアクチュエータAc4の駆動により回転軸Ax3に対して直交する回転軸Ax4周りに回転する。下腕部107Lは、上腕B部106Lに対し第5関節部を介して旋回可能に連結されており、第5関節部に設けられたアクチュエータAc5の駆動により回転軸Ax4に対して直交する回転軸Ax5周りに旋回する。手首A部108Lは、下腕部107Lの先端に対し第6関節部を介して回転可能に連結されており、第6関節部に設けられたアクチュエータAc6の駆動により回転軸Ax5に対して直交する回転軸Ax6周りに回転する。手首B部109Lは、手首A部108Lに対し第7関節部を介して旋回可能に連結されており、第7関節部に設けられたアクチュエータAc7の駆動により回転軸Ax6に対して直交する回転軸Ax7周りに旋回する。フランジ110Lは、手首B部109Lの先端に対し第8関節部を介して回転可能に連結されており、第8関節部に設けられたアクチュエータAc8の駆動により回転軸Ax7に対して直交する回転軸Ax8周りに回転する。ハンド111Lは、フランジ110Lの先端に対し取り付けられており、フランジ110Lの回転により従動的に回転する。
アーム103Rは、胴体部102の他方側に設けられたマニピュレータであり、上記アーム103Lと同様の構造を備えている。このアーム103Rは、肩部104R、上腕A部105R、上腕B部106R、下腕部107R、手首A部108R、手首B部109R、フランジ110R、及びハンド111Rと、各部をそれぞれ回転駆動するアクチュエータAc9〜Ac15がそれぞれ設けられた第9〜第15関節部とを有している。
肩部104Rは、胴体部102に対し第9関節部を介して回転可能に連結されており、第9関節部に設けられたアクチュエータAc9の駆動により上記設置面に対して略水平な回転軸Ax9周りに回転する。上腕A部105Rは、肩部104Rに対し第10関節部を介して旋回可能に連結されており、第10関節部に設けられたアクチュエータAc10の駆動により回転軸Ax9に対して直交する回転軸Ax10周りに旋回する。上腕B部106Rは、上腕A部105Rの先端に対し第11関節部を介して回転可能に連結されており、第11関節部に設けられたアクチュエータAc11の駆動により回転軸Ax10に対して直交する回転軸Ax11周りに回転する。下腕部107Rは、上腕B部106Rに対し第12関節部を介して旋回可能に連結されており、第12関節部に設けられたアクチュエータAc12の駆動により回転軸Ax11に対して直交する回転軸Ax12周りに旋回する。手首A部108Rは、下腕部107Rの先端に対し第13関節部を介して回転可能に連結されており、第13関節部に設けられたアクチュエータAc13の駆動により回転軸Ax12に対して直交する回転軸Ax13周りに回転する。手首B部109Rは、手首A部108Rに対し第14関節部を介して旋回可能に連結されており、第14関節部に設けられたアクチュエータAc14の駆動により回転軸Ax13に対して直交する回転軸Ax14周りに旋回する。フランジ110Rは、手首B部109Rの先端に対し第15関節部を介して回転可能に連結されており、第15関節部に設けられたアクチュエータAc15の駆動により回転軸Ax14に対して直交する回転軸Ax15周りに回転する。ハンド111Rは、フランジ110Rの先端に対し取り付けられており、フランジ110Rの回転により従動的に回転する。
なお、図3(b)に示すように、第1関節部の回転軸Ax1と第2及び第9関節部の各回転軸Ax2,Ax9とは、上記設置面と略水平な方向に長さD1だけオフセットされるように、基台101に対して胴体部102が第1関節部から第2及び第9関節部にかけて水平前方にせり出すように形成されている。これにより、肩部104R,104Lの下方側の空間を作業スペースとすることができると共に、回転軸Ax1を回転させることでアーム103L,103Rの可到範囲が拡大される。
また、第11関節部の回転軸Ax11と第12関節部の回転軸Ax12とは、上面視での位置が長さD2だけオフセットされるように、上腕B部106Rの形状が設定されている。そして、第12関節部の回転軸Ax12と第13関節部の回転軸Ax13とは、上面視での位置が長さD3だけオフセットされるように、下腕部107Rの形状が設定されており、図3(b)に示すように回転軸Ax11と回転軸Ax13とが略水平となる姿勢をとったときに、回転軸Ax11と回転軸Ax13とのオフセット長さが(D2+D3)となるようになっている。これにより、人間の「肘」に相当する第12関節部を屈曲させたときに、人間の「上腕」に相当する上腕A部105R及び上腕B部106Rと、人間の「下腕」に相当する下腕A部107Rとの間のクリアランスを大きく確保することができ、ハンド111Rをより胴体部102に近づけた場合でもアーム103Rの動作自由度が拡大される。
さらに、図3(b)では明示していないが、アーム103Lについても同様に、第4関節部の回転軸Ax4と第5関節部の回転軸Ax5とは、上面視での位置が長さD2だけオフセットされるように、上腕B部106Lの形状が設定されている。そして、第5関節部の回転軸Ax5と第6関節部の回転軸Ax6とは、上面視での位置が長さD3だけオフセットされるように、下腕部107Lの形状が設定されており、回転軸Ax4と回転軸Ax6とのオフセット長さが(D2+D3)となるようになっている。
また、上記第1〜第15関節部に設けられた各アクチュエータAc1〜Ac15は、それぞれ、例えば減速機を備えたサーボモータにより構成されており、各アクチュエータAc1〜Ac15の回転位置は、各アクチュエータAc1〜Ac15に内蔵された図示しないエンコーダからの信号として、上記ロボットコントローラ150に入力されるようになっている。
また、胴体部102は、1つの関節部すなわち1自由度を有し、アーム103L,103Rは、それぞれ、7つの関節部すなわち7自由度(冗長自由度)を有しているので、ロボット100は、全体で15自由度を有している。ロボット100を、冗長自由度を有するアーム103L,103Rを備えた垂直多関節ロボットとすることにより、ロボット100の周囲に配置された物体やロボット100自身との干渉を回避しやすくすることができる。なお、アーム103L,103Rの関節部の数、すなわち自由度は、本実施形態のように「7」に限られず、「2」以上であればよい。
なお、上記のように、胴体部102が基台101に対し旋回可能に設置され、アーム103L,103Rの肩部104L,104Rが胴体部102に支持されていることは、アーム103L,103Rが基台101に対し(胴体部102を介して)旋回可能に設置されていることと同等である。
また、以下適宜、アーム103L,103Rの単体を指す場合には、単に「アーム103」と称し、ハンド111L,111Rの単体を指す場合には、単に「ハンド111」と称する。
次に、図4、図5、及び図6を用いて、ハンド111の詳細構成を説明する。図4(a)は、アーム103の先端側を試験管205と共に表す側面図であり、図4(b)は、ハンド111の把持部材の先端側を試験管205と共に表す平面図である。図5(a)及び図5(b)は、試験管205を長手方向に直交する方向より把持する状態の把持部材を表す部分拡大図である。図6(a)は、蓋が閉じた状態の試験管205を表す上面図であり、図6(b)は、蓋が開いた状態の試験管205を表す上面図である。
図4〜図6において、アーム103の先端にそれぞれ設けられたハンド111は、それぞれ、互いに遠近する方向に移動可能な2つの把持部材112を先端に有している。これら2つの把持部材112は、図4(a)及び図4(b)に示すように、試験管205を長手方向の開口205O(後述)側、すなわち長手方向開口側より把持可能に構成されている。すなわち、ロボット100は、アーム103のハンド111に設けられた2つの把持部材112を用いて、試験管205を長手方向開口側より把持するようになっている。また、2つの把持部材112は、断面略円弧状の第1凹部113をそれぞれ内側に有しており、図5(a)及び図5(b)に示すように、これら第1凹部113を用いて、試験管205を長手方向に直交する方向より把持可能に構成されている。すなわち、ロボット100は、ハンド111に設けられた2つの把持部材112の第1凹部113を用いて、試験管205を長手方向に直交する方向より把持するようになっている。さらに、2つの把持部材112は、断面略矩形状の第2凹部114をそれぞれ上記第1凹部113よりもフランジ110L,110R側(図4中上側)の内側に有しており、これら第2凹部114を用いて、前述の第1〜第4ホルダ301〜304を把持可能に構成されている。すなわち、ロボット100は、ハンド111に設けられた2つの把持部材112の第2凹部113を用いて、第1〜第4ホルダ301〜304(詳細には、第1〜第4ホルダ301〜304に設けられた後述の被把持部301G,302G,303G,304G)を把持するようになっている。
ここで、試験管205は、前述の撹拌機213A〜213Cや遠心機212A,212B等を用いて撹拌や遠心分離を行う際に内部に収容された検体が開口205Oから溢れないように、当該開口205Oを開放及び閉塞可能な蓋205Cを一体的に有している。このように試験管205に蓋205Cが設けられている場合、試験管205に検体や試薬を注入する際には、図6(b)に示すように蓋205Cを開ける必要があり、試験管205を撹拌機213A〜213Cや遠心機212A,212Bに設置する際には、図6(a)に示すように蓋205Cを閉じる必要がある。そこで本実施形態では、これに応じて、各把持部材112が、蓋205Cを開閉操作可能な爪部115をそれぞれ先端に2つずつ有している。すなわち、ロボット100は、ハンド111に設けられた爪部115を用いて、試験管205の蓋205Cを開閉操作するようになっている。
次に、図7、図8、図9、及び図10を用いて、第1〜第4ホルダ301〜304の詳細を説明する。図7は、ヘラ203に取り付けられた第1ホルダ301を模式的に表す平面図である。図8は、ピペット207Aに取り付けられた第2ホルダ302を模式的に表す平面図である。図9は、第3ホルダ303をシャーレ201と共に模式的に表す平面図である。図10は、第4ホルダ304を吸着パッド260と共に模式的に表す平面図である。
図7に示すように、ヘラ203には、第1ホルダ301が取り付けられている。第1ホルダ301は、筒形状に形成され、ヘラ203を保持可能な保持部301Mと、上記2つの把持部材112の第2凹部114に嵌合し、2つの把持部材112が把持可能な被把持部301Gとを有している。すなわち、ロボット100は、ハンド111に設けられた2つの把持部材112の第2凹部114を用いて、被把持部301Gを把持する。言い換えれば、ハンド111で、第1ホルダ301を介してヘラ203を把持する。そして、第1ホルダ301を介してヘラ203を操作することで、検体を掻き混ぜる処理を行うようになっている。
また、図8に示すように、ピペット207Aは、本体部217と、この本体部217の長手方向一方側(図8中上側)端部に設けられた、吸引及び注入操作を行うためのプッシュボタン218(操作部)とを有している。本体部217には、第2ホルダ302が取り付けられている。第2ホルダ302は、略コの字形状に形成され、ピペット207A(又はピペット207B)を保持する保持部302Mと、上記2つの把持部材112の第2凹部114に嵌合し、2つの把持部材112が把持可能な被把持部302Gとを有している。すなわち、ロボット100は、一方のハンド111に設けられた2つの把持部材112の第2凹部114を用いて、被把持部302Gを把持する。言い換えれば、一方のハンド111で、第2ホルダ302を介して本体部217を把持する。そして、他方のアーム103のハンド111で、プッシュボタン218を操作することで、試薬や上澄み液の吸引・注入等のピペット207Aを用いた処理を行うようになっている。なお、図8ではピペット207Aに取り付けた第2ホルダ302を図示したが、前述のようにピペット207Bにも同様に第2ホルダ302が取り付けられている。
また、図9に示すように、シャーレ201は、検体が収納される底皿201Dと、この底皿201Dに覆い被さるように設置される蓋201Uとから構成されている。第3ホルダ303は、例えばエアチャックと同様の手法を用いて空気圧を制御することにより、互いに遠近する方向に移動可能な2つのシャーレ用把持部材303Mと、上記2つの把持部材112の第2凹部114に嵌合し、2つの把持部材112が把持可能な被把持部303Gとを有している。すなわち、ロボット100は、ハンド111に設けられた2つの把持部材112の第2凹部114を用いて、被把持部303Gを把持し、ハンド111で、2つのシャーレ用把持部材303Mを操作することで、シャーレ201を把持する。言い換えれば、ハンド111で、第3ホルダ303を介してシャーレ201を把持する。そして、インキュベータ211からシャーレ201を取り出して、その取り出したシャーレ201をシャーレ台202に移動させ載置するようになっている。
また、図10に示すように、吸着パッド260は、シャーレ201の蓋201Uを吸着して持ち上げるための機器であり、この吸着パッド260には、第4ホルダ304が取り付けられている。第4ホルダ304は、上記2つの把持部材112の第2凹部114に嵌合し、2つの把持部材112が把持可能な被把持部304Gを有している。すなわち、ロボット100は、ハンド111に設けられた2つの把持部材112の第2凹部114を用いて、被把持部304Gを把持する。言い換えれば、ハンド111で、第4ホルダ304を介して吸着パッド260を把持する。そして、第4ホルダ304を介して吸着パッド260を操作することで、シャーレ201の蓋201Uを持ち上げるようになっている。
次に、図11、図12、図13、及び図14を用いて、ロボット100の動作の一例を説明する。図11は、ロボット100が第3ホルダ303を用いてシャーレ201を移動している状態を表す斜視図である。図12は、ロボット100が吸着パッド260を用いてシャーレ201の蓋201Uを開けた後の状態を表す斜視図である。図13は、ロボット100がピペット207Aを用いた処理を行っている状態を表す斜視図である。図14は、ロボット100がヘラ203を用いた検体を掻き混ぜる処理を行っている状態を表す斜視図である。なお、これら図11〜図14では、各ハンド111L,111Rに設けられた2つの把持部材112を、第1凹部113、第2凹部114、及び爪部115を省略した状態で図示している。
図11〜図14において、ロボット100は、前述のロボットコントローラ150から動作開始の指令が入力されるまでは動作を開始せず、待機している。そして、ロボットコントローラ150から動作開始の指令が入力されたら動作を開始する。なお、ロボット100の動作は、ロボットコントローラ150により制御されている。なお、以下の動作の説明において、アーム103R,103Lのうちいずれのアームを用いるかは一例であり、反対側のアームを用いてもよいし、片方のアームを用いて行う作業を両方のアームを協働させて行ってもよい。
図11に示すように、ロボット100は、アーム103Rを揺動させ、ハンド111Rに設けられた2つの把持部材112の上記第2凹部114を用いて、第3ホルダ303の被把持部303Gを把持する。その後、ハンド111Rで、第3ホルダ303に設けられた2つのシャーレ用把持部材303Mを操作することで、前述のインキュベータ211に収容されたシャーレ201を把持し、インキュベータ211からシャーレ201を取り出し、その取り出したシャーレ201を前述のシャーレ台202に載置する。
またこのとき、図12に示すように、ロボット100は、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lに設けられた2つの把持部材112の第2凹部114を用いて、吸着パッド260に取り付けられた第4ホルダ304の被把持部304Gを把持する。そして、ハンド111Lで、第4ホルダ304を介して吸着パッド260を操作することで、上記シャーレ台202に載置したシャーレ201の蓋201Uを吸着して持ち上げる。なお、ここでは吸着パッド260を使用してシャーレ201の蓋201Uを持ち上げる場合を説明したが、吸着パッド260を用いずに、第3ホルダ303を使用して蓋201Uを持ち上げてもよい。
その後、ロボット100は、アーム103Rを揺動させ、ハンド111Rに設けられた2つの把持部材112の第2凹部114を用いて、前述のピペット207Bに取り付けられた第2ホルダ302の被把持部302Gを把持する。そして、ハンド111Rで、第2ホルダ302を介してピペット207Bを操作することで、上記シャーレ台202に載置したシャーレ201の底皿201D内の上澄み液をバキューム吸引する。
その後、図13に示すように、ロボット100は、アーム103Rを揺動させ、ハンド111Rに設けられた2つの把持部材112の第2凹部114を用いて、ピペット207Aの本体部217に取り付けられた第2ホルダ302の被把持部302Gを把持する。そして、ハンド111Rで把持しているピペット207Aの先端に、前述のチップ209を取り付ける。その後、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lで、プッシュボタン218を操作することで、チップ209を介して試薬を吸引し、その吸引した試薬を上記シャーレ台202に載置したシャーレ201の底皿201Dに注入する。注入後、ロボット100はアーム103Rを揺動させてハンド111RをテーブルTの下方に移動し、所定の操作によりピペット207Aの先端から使用済みのチップ209を取り外し、廃棄ボックス250に廃棄する。以下、チップ209を用いる場合は同様である。
そして、図14に示すように、ロボット100は、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lに設けられた2つの把持部材112の第2凹部114を用いて、ヘラ203に取り付けられた第1ホルダ301の被把持部201Gを把持する。その後、ハンド111Lで、第1ホルダ301を介してヘラ203を操作することで、上記シャーレ台202に載置したシャーレ201の底皿201D内の検体を掻き混ぜる。掻き混ぜ後、ロボット100はアーム103Lを揺動させてハンド111LをテーブルTの下方に移動し、使用済みのヘラ203を廃棄ボックス250に廃棄する。
そして、ロボット100は、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lに設けられた爪部115を用いて、前述の試験管205の蓋205Cを開ける。その後、上記図13に示した場合と同様、アーム103Rのハンド111Rで、ピペット207Aに取り付けられた第2ホルダ302の被把持部302Gを把持し、ハンド111Rで把持しているピペット207Aの先端に、チップ209を取り付ける。そして、アーム103Lのハンド111Lで、プッシュボタン218を操作することで、チップ209を介して上記シャーレ台202に載置したシャーレ201の底皿201D内の上澄み液(検体)を吸引し、その吸引した検体を上記蓋205Cを開けた試験管205に注入する。
その後、ロボット100は、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lに設けられた爪部115を用いて、上記検体を注入した試験管205の蓋205Cを閉じる。そして、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lに設けられた2つの把持部材112を用いて、上記検体を注入した試験管205を長手方向開口側より把持する。その後、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lで把持している試験管205を、前述の加熱・冷却器214にセットし、検体を一定の時間加熱又は冷却する。
そして、一定の時間が経過したら、ロボット100は、アーム103Lのハンド111Lで、上記加熱・冷却器214にセットした試験管205を長手方向開口側より把持し、加熱・冷却器214から試験管205を取り出す。その後、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lで把持している試験管205を、前述の遠心機212Aにセットし、検体を一定の時間遠心分離する。
そして、一定の時間が経過したら、ロボット100は、アーム103Lのハンド111Lで、上記遠心機212Aにセットした試験管205を長手方向開口側より把持し、遠心機212Aから試験管205を取り出す。その後、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lで把持している試験管205を試験管立て206Aに収容する。
そして、ロボット100は、上記と同様、アーム103Lのハンド111Lに設けられた爪部115を用いて、上記試験管立て206Aに収容した試験管205の蓋205Cを開ける。その後、上記と同様、アーム103Rのハンド111Rで、ピペット207Bに取り付けられた第2ホルダ302の被把持部302Gを把持し、上記蓋205Cを開けた試験管205内の上澄み液をバキューム吸引する。
そして、ロボット100は、上記図13に示した場合と同様、アーム103Rのハンド111Rで、ピペット207Aに取り付けられた第2ホルダ302の被把持部302Gを把持し、ハンド111Rで把持しているピペット207Aの先端に、チップ209を取り付ける。そして、アーム103Lのハンド111Lで、プッシュボタン218を操作することで、チップ209を介して試薬を吸引し、その吸引した試薬を上記蓋205Cを開けた試験管205に注入する。
その後、ロボット100は、上記と同様、アーム103Lのハンド111Lに設けられた爪部115を用いて、上記試薬を注入した試験管205の蓋205Cを閉じる。そして、アーム103Lのハンド111Lに設けられた2つの把持部材112を用いて、上記試薬を注入した試験管205を長手方向開口側より把持する。その後、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lで把持している試験管205を前述の撹拌機213Bにセットし、検体を一定の時間撹拌する。そして、アーム103Lを揺動させ、上記と同様、ハンド111Lで把持している試験管205を遠心機212Aにセットし、検体を一定の時間遠心分離する。
その後、一定の時間が経過したら、ロボット100は、上記と同様、アーム103Lのハンド111Lで、上記遠心機212Aにセットした試験管205を長手方向開口側より把持し、遠心機212Aから試験管205を取り出す。そして、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lで把持している試験管205を試験管立て206Aに収容する。
その後、ロボット100は、上記と同様、アーム103Lのハンド111Lに設けられた爪部115を用いて、上記試験管立て206Aに収容した試験管205の蓋205C、及び、別の試験管205の蓋205Cを開ける。そして、上記図13に示した場合と同様、アーム103Rのハンド111Rで、ピペット207Aに取り付けられた第2ホルダ302の被把持部302Gを把持し、ハンド111Rで把持しているピペット207Aの先端に、チップ209を取り付ける。そして、アーム103Lのハンド111Lで、プッシュボタン218を操作することで、チップ209を介して上記蓋205Cを開けた試験管205内の上澄み液(検体)を吸引し、その吸引した検体を上記蓋205Cを開けた別の試験管205に注入する。
その後、ロボット100は、上記と同様、アーム103Lのハンド111Lに設けられた爪部115を用いて、上記検体を注入した試験管205の蓋205Cを閉じる。そして、アーム103Lのハンド111Lに設けられた2つの把持部材112を用いて、上記検体を注入した試験管205を長手方向開口側より把持する。その後、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lで把持している試験管205を振ることにより検体を撹拌する。そして、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lで把持している試験管205を前述の撹拌機213Aにセットし、検体を一定の時間撹拌する。
その後、一定の時間が経過したら、ロボット100は、アーム103Lのハンド111Lで、上記撹拌機213Aにセットした試験管205を長手方向開口側より把持し、遠心機212Aから試験管205を取り出す。なお、このとき、アーム103Rに設けられた2つの把持部材112の第1凹部113を用いて、ハンド111Lで把持している試験管205を長手方向に直交する方向より把持することで、試験管205を持ち替えてもよい。そして、アーム103L(試験管205を持ち替えた場合にはアーム103R)を揺動させ、ハンド111L(試験管205を持ち替えた場合にはハンド111R)で把持している試験管205を前述の試験管立て206Bに収容し、検体を磁気分離する。
その後、ロボット100は、上記と同様、アーム103Lのハンド111Lに設けられた爪部115を用いて、上記試験管立て206Bに収容した試験管205の蓋205Cを開ける。そして、上記と同様、アーム103Rのハンド111Rで、ピペット207Bに取り付けられた第2ホルダ302の被把持部302Gを把持し、上記蓋205Cを開けた試験管205内の上澄み液をバキューム吸引する。
その後、ロボット100は、上記図13に示した場合と同様、アーム103Rのハンド111Rで、ピペット207Aに取り付けられた第2ホルダ302の被把持部302Gを把持し、ハンド111Rで把持しているピペット207Aの先端に、チップ209を取り付ける。そして、アーム103Lのハンド111Lで、プッシュボタン218を操作することで、チップ209を介して試薬を吸引し、その吸引した試薬を上記蓋205Cを開けた試験管205に注入する。
その後、ロボット100は、上記と同様、アーム103Lのハンド111Lに設けられた爪部115を用いて、上記試薬を注入した試験管205の蓋205Cを閉じる。そして、アーム103Rのハンド111Rに設けられた2つの把持部材112を用いて、上記試薬を注入した試験管205を長手方向開口側より把持する。その後、アーム103Rを揺動させ、ハンド111Rで把持している試験管205を前述の撹拌機213Cにセットし、検体を一定の時間撹拌する。
その後、一定の時間が経過したら、ロボット100は、アーム103Rのハンド111Rで、上記撹拌機213Cにセットした試験管205を長手方向開口側より把持し、撹拌機213Cから試験管205を取り出す。そして、アーム103Rを揺動させ、ハンド111Rで把持している試験管205を試験管立て206Bに収容し、検体を磁気分離する。
その後、ロボット100は、上記と同様、アーム103Lのハンド111Lに設けられた爪部115を用いて、上記試験管立て206Bに収容した試験管205の蓋205Cを開ける。そして、上記図13に示した場合と同様、アーム103Rのハンド111Rで、ピペット207Aに取り付けられた第2ホルダ302の被把持部302Gを把持し、ハンド111Rで把持しているピペット207Aの先端に、チップ209を取り付ける。そして、アーム103Lのハンド111Lで、プッシュボタン218を操作することで、チップ209を介して試薬を吸引し、その吸引した試薬を上記蓋205Cを開けた試験管205に注入する。
その後、ロボット100は、上記と同様、アーム103Lのハンド111Lに設けられた爪部115を用いて、上記試薬を注入した試験管205の蓋205Cを閉じる。そして、アーム103Lのハンド111Lに設けられた2つの把持部材112を用いて、上記試薬を注入した試験管205を長手方向開口側より把持する。その後、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lで把持している試験管205を前述の遠心機212Bにセットし、検体を一定の時間遠心分離する。
そして、一定の時間が経過したら、ロボット100は、アーム103Lのハンド111Lで、上記遠心機212Bにセットした試験管205を長手方向開口側より把持し、遠心機212Bから試験管205を取り出す。その後、アーム103Lを揺動させ、ハンド111Lで把持している試験管205を撹拌機213Bにセットし、検体を一定の時間撹拌する。そして、アーム103Lを揺動させ、上記と同様、ハンド111Lで把持している試験管205を加熱・冷却器214にセットし、検体を一定の時間加熱又は冷却する。
その後、一定の時間が経過したら、ロボット100は、アーム103Lのハンド111Lで、上記加熱・冷却器214にセットした試験管205を長手方向開口側より把持し、加熱・冷却器214から試験管205を取り出す。以上により、ロボット100は、所定の工程からなる処理を終了する。
なお、上記において、前述の作業領域WT(図1参照)に配置されたシャーレ台202上でアーム103が検体に対し行う各作業、例えば、ピペット207Bによる上澄み液のバキューム吸引、ピペット207Aによる試薬の注入、ヘラ203による検体の掻き混ぜ等の作業は、各請求項記載の所定の作業に相当する。
以上説明したように、本実施形態の検体処理システム1は、ロボット100と、複数の処理用機器とを備えている。そして、複数の処理用機器は全て、ロボット100のアーム103L,103Rの可動範囲内に配置されており、ロボット100は、アーム103L,103Rで処理用機器を使用しつつ、検体に対し所定の工程からなる処理を実行する。
このとき、本実施形態では、ロボット100がアーム103L,103Rを用いて処理用機器を使用するので、改良された専用の処理用機器を用いる必要がなく、作業者が手作業で処理を行う際に用いていた汎用の処理用機器を使用することができる。すなわち、ロボット100は、アーム103L,103Rで、検体の入ったシャーレ201や試験管205を所定の順番でシャーレ台202や試験管立て206A,206B、撹拌機213A〜213C、遠心機212A,212B、加熱・冷却器214等に移動させ、所定の工程からなる処理を実行することができる。したがって、作業者が使用していた汎用の処理用機器をそのまま活用しつつ、検体に対する処理工程の自動化を実現することができる。また、汎用の処理用機器を活用できるので、処理を自動化する際に処理用機器の重複によるコストの増大を招くことがない。
また、本実施形態では、作業者をロボット100に代替したシステム構成を実現することができる。これにより、ロボット100はアーム103L,103Rの多関節構造により人間には無理な姿勢や動作を行うことができるので、作業者が処理作業を行う場合に比べ、処理用機器をより狭いスペース内に集中配置することができる。したがって、配置スペースを削減することができる。さらに、検体に対し行う処理工程のうち、例えばピペット207Aによる吸引・注入、ヘラ203による検体の掻き混ぜ、試験管205を振ることによる検体の撹拌等については、処理結果が作業者の熟練度に左右される性質があり、作業者が異なると処理結果にばらつきが生じるという問題があるが、ロボット100が行うことによってそのようなばらつきを無くし、精度の良い処理を行うことができる。
また、本実施形態では特に、ロボット100が、別体として構成された2つのアーム103L,103Rと、これら2つのアームを支持する胴体部102とを備えている。そして、胴体部102が、2つのアーム103L,103Rを一方側及び他方側において支持する。ロボット100が、別体として構成された2つのアーム103L,103Rを備えているので、各アーム103で別々の作業を並行して行うことができ、検体の処理を迅速に行うことができる。また、両方のアーム103を用いた複雑な作業を実行することもできる。さらに、2つのアーム103L,103Rは、胴体部102を挟みその一方側及び他方側において支持されているので、各アーム103は、互いに干渉することなく独立した作業を行うことができる。
また、本実施形態では特に、アーム103L,103Rが、互いに遠近する方向に移動可能な2つの把持部材112を備えたハンド111L,111Rをそれぞれ先端に有している。これにより、ハンド111で試験管205を把持し、試験管205の移動等を行うことができる。また、ピペット207A,207B、ヘラ203、シャーレ201等の処理用機器を保持するための各種ホルダ301〜304を把持することができ、このような複数種類の処理用機器を用いて検体に対し多様な処理を実行することができる。
また、本実施形態では特に、ハンド111の2つの把持部材112が、試験管205を長手方向開口側より把持可能であると共に、試験管205を長手方向に直交する方向より把持可能に構成されている。これにより、ハンド111は、試験管205を長手方向開口側からと、長手方向に直交する方向からの2通りの方法で把持することができるので、試験管205を設置する撹拌機213A〜213Cや遠心機212A,212B等の形状や仕様に応じて把持方法を変更する等、試験管205の操作の自由度を向上することができる。
また、本実施形態では特に、ハンド111の2つの把持部材112が、断面略円弧状の第1凹部113をそれぞれ内側に有している。これにより、ハンド111は、断面略円弧状の第1凹部113を用いて試験管205を長手方向に直交する方向より確実に把持することができる。
また、本実施形態では特に、試験管205には、開口205Oを開放及び閉塞可能な蓋205Cが設けられている。そして、ハンド111の各把持部材112は、試験管205の蓋205Cを開閉操作可能な爪部115をそれぞれ先端に有している。これにより、ハンド111は、把持部材112の爪部115を用いて、試験管205に試薬を注入する際等には蓋205Cを開き、試験管205を撹拌機213A〜213Cや遠心機212A,212B等に設置する際には蓋205Cを閉じるといったように、必要に応じて試験管205の蓋205Cを円滑に開閉操作することができる。
また、本実施形態では特に、複数の処理用機器は、シャーレ201、ヘラ203、及びピペット207A,207Bを含んでいる。そして、ハンド111の2つの把持部材112は、シャーレ201、ヘラ203、及びピペット207A,207B等を保持するための複数のホルダ301〜304を把持可能に構成されている。すなわち、ハンド111は、把持部材112を用いて、検体を収納するシャーレ201、検体を掻き混ぜるためのヘラ203、ピペット207A,207B等の処理用機器を保持するための各種ホルダ301〜304を把持することができるので、このような複数種類の処理用機器を用いて検体に対し多様な処理を実行することができる。
また、本実施形態では特に、ハンド111の先端の2つの把持部材112が、断面略矩形状の第2凹部114をそれぞれ内側に有している。これにより、ハンド111は、断面略矩形状の第2凹部114を用いて、シャーレ201、ヘラ203、及びピペット207A,207B等の処理用機器を保持するための各種ホルダ301〜304を確実に把持することができる。さらに、ホルダ301〜304を把持するための第2凹部114を矩形状とすることにより、処理用機器を保持したホルダ301〜304が外力によりハンド111に対して回転することを防止できる。
また、本実施形態では特に、複数の処理用機器は、本体部217と、この本体部217の長手方向一方側端部に設けられた吸引及び注入操作を行うためのプッシュボタン218とを有するピペット207Aを含んでいる。そして、ロボット100は、一方のアーム103のハンド111で本体部217を把持し、他方のアーム103のハンド111でプッシュボタン218を操作することで、ピペット207Aを用いた処理を行う。このようにして、ピペット207Aを用いた処理をロボット100が実行することにより、吸引量及び注入量のばらつきを無くし、精度の良い処理を実行することができる。
また、本実施形態では特に、複数の処理用機器の少なくとも一部、上記の例では、シャーレ台202、ヘラ203、ヘラ立て204、試験管205、試験管立て206A,206B、ピペット207A,207B、ピペット立て208、チップ209、チップ立て210、遠心機212B、及び撹拌機213B等は、テーブルT上に配置されている。そして、テーブルTの下方に、廃棄ボックス250が設置されている。処理用機器が配置されたテーブルTの下方に廃棄ボックス250を設置することにより、ピペット207Aの先端に取り付けるチップ209等の消耗品を、使用後に直ちに廃棄することができる。また、テーブルTの下方に廃棄ボックス250を設置することで、廃棄ボックス250がテーブルTで覆われた構造となるため、廃棄物の周囲への飛散を抑制できる効果もある。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
(1)一部の処理用機器を直線状に配置する場合
すなわち、試験管立て206A、ピペット立て208、及び作業領域WTを、ロボット100の基台101の一方向側に略直線状になるように配置してもよい。
図15は、本変形例の検体処理システム1の各構成要素を上方から見た上面図である。なお、この図15は、前述の図2に対応する図である。
図15において、本変形例の検体処理システム1は、前述のロボット100と、このロボット100のアーム103L,103Rの可動範囲内に配置された、前述の複数の処理用機器とを有している。なお、図15では、複数の処理用機器のうち、シャーレ台202、試験管205、試験管立て206A、ピペット207A、及びピペット立て208だけを図示し、それ以外の処理用機器の図示を省略すると共に、前述の第1〜第4ホルダ301〜304や前述の吸着パッド260の図示を省略している。
ここで、本変形例では、ロボット100の基台101の一方向側(図15中下側)に、テーブルTが設けられている。そして、試験管205が設置された試験管立て206Aと、ピペット207Aが設置されたピペット立て208と、シャーレ台202が設置された前述の作業領域WTとが、テーブルT上、この例では基台101から見てテーブルTの左右方向(図15中左右方向)の略中央位置上に、略直線状となるように配置されている。それ以外の処理用機器は、ロボット100のアーム103L,103Rの可動範囲内の適宜の位置(例えばテーブルT上やテーブルTの周辺位置)に配置されている。また、図示を省略しているが、テーブルTの下方には、前述の廃棄ボックス250が設置されている。
上記のように処理用機器が配置された本変形例においても、ロボット100は、上記実施形態と同様に、アーム103L,103Rを揺動させ、前述のハンド111L,111Rで処理用機器を使用しつつ、検体に対し所定の工程からなる処理を実行する。
本変形例によれば、上記実施形態と同様、作業者が使用していた汎用の処理用機器をそのまま活用しつつ、検体に対する処理工程の自動化を実現することができる。また、本変形例では次のような効果も得ることができる。すなわち、検体に対し所定の工程からなる処理を行う際には、試験管205やピペット207Aが必須であり、アーム103L,103Rにより使用される頻度が高い。本変形例ではこれに対応し、試験管205が設置される試験管立て206Aと、ピペット207Aが設置されるピペット立て208と、シャーレ台202が設置される作業領域WTとを、基台101の一方向側に略直線状となるように配置している。これにより、アーム103L,103Rが試験管205及びピペット207Aの設置位置と作業領域WTとの間を往復する距離を短くすることができる。その結果、検体の処理を迅速に行うことができる。
(2)一部の処理用機器を左右に分けて配置する場合
すなわち、試験管立て206A及びピペット立て208を、ロボット100の基台101から見て作業領域WTの左右方向一方側及び他方側に分けて配置してもよい。
図16は、本変形例の検体処理システム1の各構成要素を上方から見た上面図である。なお、この図16は、前述の図2及び図15に対応する図である。
図16において、本変形例の検体処理システム1は、前述のロボット100と、このロボット100のアーム103L,103Rの可動範囲内に配置された、前述の複数の処理用機器とを有している。なお、図16では、複数の処理用機器のうち、シャーレ台202、試験管205、試験管立て206A、ピペット207A、及びピペット立て208だけを図示し、それ以外の処理用機器の図示を省略すると共に、前述の第1〜第4ホルダ301〜304や前述の吸着パッド260の図示を省略している。
ここで、本変形例では、ロボット100の基台101の一方向側(図16中下側)に、テーブルTが設けられている。そして、シャーレ台202が設置された前述の作業領域WTが、テーブルT上、この例では基台101から見てテーブルTの左右方向(図16中左右方向)の略中央位置上に、配置されている。またこれと共に、試験管205が設置された試験管立て206A、及び、ピペット207Aが設置されたピペット立て208が、テーブルT上の、基台101から見て作業領域WTの左右方向一方側(図16中左側)及び他方側(図16中右側)に分けて配置されている。それ以外の処理用機器は、ロボット100のアーム103L,103Rの可動範囲内の適宜の位置(例えばテーブルT上やテーブルTの周辺位置)に配置されている。また、図示を省略しているが、テーブルTの下方には、前述の廃棄ボックス250が設置されている。
上記のように処理用機器が配置された本変形例においても、ロボット100は、上記実施形態と同様に、アーム103L,103Rを揺動させ、前述のハンド111L,111Rで処理用機器を使用しつつ、検体に対し所定の工程からなる処理を実行する。
本変形例によれば、上記実施形態と同様、作業者が使用していた汎用の処理用機器をそのまま活用しつつ、検体に対する処理工程の自動化を実現することができる。また、本変形例では、シャーレ台202が設置される作業領域WTを、基台101の一方向側に配置すると共に、試験管205及びピペット207Aが設置される試験管立て206及びピペット立て208を、作業領域WTの左右方向一方側及び他方側に分けて配置している。これにより、試験管205を用いる処理に関連する処理用機器(例えば試験管立て206B等)については作業領域WTの左右方向一方側に、ピペット207Aを用いる処理に関連する処理用機器(例えばチップ立て210等)については作業領域WTの左右方向他方側に、それぞれ集中して配置することができ、機能に応じて分配された配置を実現することができる。その一方で、作業領域WTを試験管立て206Aとピペット立て208との間の中央に配置するので、アーム103L,103Rが試験管205の設置位置と作業領域WTとの間、ピペット207Aの設置位置と作業領域WTとの間を往復する距離を、それぞれ短くすることができる。その結果、検体の処理を迅速に行うことができる。また、処理用機器を作業領域WTの左右方向一方側及び他方側に機能に応じて分配して配置した場合には、各アーム103を左右方向一方側及び他方側の各機能に専ら対応させて作業させることができるので、検体の処理を効率良く行うことができる。
(3)処理用機器を円周上且つ放射線状配置する場合
すなわち、複数の処理用機器を、ロボット100の基台101を中心とする略円周上に、放射線状の向きとなるように配置してもよい。
図17は、本変形例の検体処理システム1の各構成要素を上方から見た上面図である。なお、この図17は、前述の図2、図15、及び図16に対応する図である。
図17において、本変形例の検体処理システム1は、前述のロボット100と、このロボット100のアーム103L,103Rの可動範囲内に配置された、前述の複数の処理用機器とを有している。なお、図17では、複数の処理用機器のうち、シャーレ台202、試験管205、試験管立て206A、ピペット207A、ピペット立て208、インキュベータ211、遠心機212A、撹拌機213C、及び加熱・冷却器214だけを図示し、それ以外の処理用機器の図示を省略すると共に、前述の第1〜第4ホルダ301〜304、
前述の吸着パッド260、及び前述の廃棄ボックス250の図示を省略している。
ここで、本変形例では、ロボット100の周囲に、図示しない囲い壁が設けられている。すなわち、ロボット100の周囲に囲い壁を設けることにより、当該囲い壁によってロボットの稼働領域に人が入り込まないようにすることで、安全性を確保している。そして、複数の処理用機器は、上記囲い壁の壁面のうち、ロボット100の基台101を中心とする略円周上となる壁面に、放射線状の向きとなるように配置されている。
上記のように処理用機器が配置された本変形例においては、ロボット100は、胴体部102を基台101に対し旋回させつつアーム103L,103Rを揺動させ、前述のハンド111L,111Rで処理用機器を使用しつつ、検体に対し所定の工程からなる処理を実行する。
本変形例によれば、上記実施形態と同様、作業者が使用していた汎用の処理用機器をそのまま活用しつつ、検体に対する処理工程の自動化を実現することができる。また、本変形例では、複数の処理用機器は、ロボット100の基台101を中心とする略円周上に配置されている。これにより、アーム103L,103Rの支持位置と各処理用機器との距離がほぼ均一となるので、アーム103L,103Rは主に手先を周方向に移動させる動作を行いつつ処理を行うこととなり、手先の径方向の移動量を少なくすることができる。その結果、アーム103L,103Rの関節部の動作量が少なくなるので、検体の処理を迅速に行うことができる。また、各処理用機器は放射線状の向きとなるように配置されているので、各処理用機器の正面をロボット100側に向けることができ、アーム103L,103Rによる各処理用機器の操作性を向上することができる。
また、本変形例では、上記囲い壁の壁面に複数の処理用機器を設置している。これにより、処理用機器を配置するためのテーブル等が不要となり、配置スペースをさらに削減することができる。また、胴体部102が基台101に対し旋回することにより、基台101を中心とする略円周上に放射状に配置された処理用機器に対し、胴体部102は常に正面を向きつつアーム103L,103Rを円滑にアクセスさせることができる。
(4)一方のハンドでシャーレ回転、他方のハンドでヘラ操作を行う場合
すなわち、シャーレ201を回転可能に保持するためのホルダを設けて、一方のアーム103のハンド111でホルダを介してシャーレ201を回転させ、他方のアーム103のハンド111で第1ホルダ301を介してヘラ203を操作することで、検体を掻き混ぜる処理を行うようにしてもよい。
図18は、シャーレ201を回転可能に保持するためのホルダを説明するための説明図である。
図18に示すように、シャーレ201を回転可能に保持するための第5ホルダ305は、シャーレ201を保持するホルダ本体部305Bと、アーム103のハンド111に設けられた2つの把持部材112の第2凹部114に嵌合し、2つの把持部材112が把持可能な被把持部305Gと、ホルダ本体部305B及び被把持部305Gの間の軸部305Sとを有している。
すなわち、ロボット100は、一方のアーム103のハンド111に設けられた2つの把持部材112の第2凹部114を用いて、被把持部305Gを把持する。そして、他方のアーム103のハンド111で、第3ホルダ303を介してシャーレ201をホルダ本体部305B上に載置する。その後、他方のアーム103のハンド111で、前述のようにして、上記ホルダ本体部305B上に載置したシャーレ201の蓋201Uを持ち上げる。その後、一方のアーム103のハンド111を回転させることで、一方のハンド111で第5ホルダ305を介してシャーレ201を回転させる。またこのとき、他方のアーム103のハンド111に設けられた2つの把持部材112の第2凹部114を用いて、ヘラ203に取り付けられた第1ホルダ301被把持部301Gを把持する。その後、他方のハンド111で、第1ホルダ301を介してヘラ203を操作することで、上記ホルダ本体部305B上に載置したシャーレ201の底皿201D内の検体を掻き混ぜる処理を行う。
以上説明した本変形例においては、ロボット100は、一方のアーム103のハンド111で第5ホルダ305を介してシャーレ201を回転させ、他方のアーム103のハンド111で第1ホルダ301を介してヘラ203を操作することで、検体を掻き混ぜる処理を行う。このようにして、ヘラ203を用いた掻き混ぜ処理をロボット100が実行することにより、掻き混ぜの程度のばらつきを無くし、精度の良い処理を実行することができる。
なお、以上においては、ロボット100が、2つのアーム103L,103Rを備えた
双腕型のロボットである場合を例にとって説明したが、これに限られず、1つのアームだけを備えた単腕型のロボットとしてもよい。この場合も、同様に、作業者が使用していた汎用の処理用機器を活用しつつ、検体に対する処理工程の自動化を実現することができる。
また、以上においては、本発明の検体処理システムを、タンパク質解析用の検体の前処理に適用した場合の例にとって説明したが、これに限られず、本発明の検体処理システムは、検体に対し所定の工程からなる処理を実行する場合であれば適用可能である。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。