JP5304521B2 - 加工性に優れた高強度鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、均一伸び、穴広げ性などの加工性に優れた高強度鋼板及びその製造方法に関するものである。
自動車の燃費向上および安全性向上を達成するため、自動車用鋼板の高強度化が強く求められている。自動車用鋼板には部位によって様々な加工、例えば、曲げ加工、プレス加工、バーリング加工、伸びフランジ加工などが施される。したがって、素材である熱延鋼板及び冷延鋼板には、強度に加えて、延性及び穴広げ性が要求される。
強度及び延性を高めた材料として、軟質のフェライトと硬質のマルテンサイトとからなる複相鋼板が開発されている。しかし、複相鋼板では、軟質組織と硬質組織との硬度差に起因して、穴広げ性が低下する。これは、マルテンサイト近傍のフェライトに大きく歪が集中し、ボイド生成を助長させるためである。
これまで、穴広げ性を向上させるために、フェライトとマルテンサイトとの硬度差を軽減した複相鋼板が提案されている(例えば、特許文献1〜4、参照)。
特許文献1に提案された鋼板は、耐衝撃特性を向上させるためにマルテンサイトの硬度を高めたものであるが、穴広げ性を確保するため、マルテンサイトの硬さとフェライトの硬さの比を制限している。特許文献2及び3には、マルテンサイトの分率、粒径や、マルテンサイトの硬さとフェライトの硬さの比、固溶C量を制御し、穴広げ性を向上させた複相鋼板が提案されている。更に、特許文献4に提案された複相鋼板では、特に、マルテンサイトとフェライトとの界面へのCの濃化を抑制している。
また、複相鋼板に焼戻しを施す方法が提案されている(例えば、特許文献5、6、参照)。
特許文献5に提案された方法は、焼戻しによってセメンタイトを析出させ、マルテンサイトの硬さを低下させるものである。特許文献6には、Alの添加によって炭化物の生成を抑制し、機械特性のばらつきを低減させる方法が提案されている。
特開平10−147838号公報 特開2001−303186号公報 特開2001−303187号公報 特開2008−63604号公報 特開2007−302918号公報 特開2007−138262号公報
プレス加工では、張出し成形性を高めるため、均一伸びの向上が要求される。均一伸びを高めるには、軟質のフェライトの体積率を増加させることが好ましい。しかし、従来の穴広げ性を向上させた複相鋼板は、マルテンサイトの硬度を低下させており、フェライトの体積率を高めると、強度の低下が懸念される。特に、焼戻しを施す場合は、条件によってはマルテンサイトの硬度が著しく低下し、強度の確保が難しくなる。
また、焼付硬化性を利用してフェライトの強度を確保する場合は、常温での時効による延性の低下が懸念される。更に硬質相であるベイナイトを利用して、強度を確保する場合は、延性が劣化する。したがって、硬質相によって強度を確保する場合は、フェライトの体積率を高めて均一伸びを向上させることが困難である。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、590MPa以上の引張強度を有し、均一伸びと穴広げ性とを同時に向上させた、加工性に優れる高強度鋼板及びその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、Cの含有量を低下させてマルテンサイトの強度を低下させ、軟質相と硬質相との強度差を低減するとともに、フェライトの体積率を90%以上として均一伸びを確保し、更に、フェライトを安価な元素であるSi、Mnで固溶強化し、均一伸び及び穴広げ性を高め、鋼板の強度を確保することに成功した。本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 質量%で、C:0.02〜0.05%、Si:0.8〜2.0%、Mn:1.0〜2.6%を含有し、Cの含有量とSiの含有量との比[C/Si]が0.035以上、0.060未満であり、Al:0.150%以下、P:0.040%以下、S:0.010%以下、N:0.010%以下に制限し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、金属組織が、体積率で、90〜95%のフェライトと5〜10%のマルテンサイトとからなることを特徴とする加工性に優れた高強度鋼板。
(2) 質量%で、REM:0.0100%以下、Ca:0.0100%以下の一方又は双方を含有することを特徴とする上記(1)に記載の加工性に優れた高強度鋼板。
(3) 引張強度が590〜650MPaであり、均一伸びが17%以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の加工性に優れた高強度鋼板。
(4) 上記(1)又は(2)に記載の化学成分を有する鋼片を、1050〜1300℃に加熱し、仕上温度を850〜1000℃として熱間圧延を行い、600〜750℃の範囲内まで水冷し、1〜10s空冷し、更に、70℃/s以上の冷却速度で350℃以下まで急冷することを特徴とする加工性に優れた高強度鋼板の製造方法
本発明によれば、高価な元素を添加することなく、590MPa以上の引張強度を有し、加工性、特に均一伸び及び穴広げ性に優れる高強度鋼板及びその製造方法を提供することが可能になり、産業上の貢献が極めて顕著である。
Cの含有量とSiの含有量との比[C/Si]と穴広げ率との関係を示す図である。
本発明者らは、高強度鋼板の均一伸び及び穴広げ性を向上させる成分、組織について検討を行った。その結果、均一伸びを高めるためには、フェライトの体積率を90%以上にすることが有効であることがわかった。一方、穴拡げ性を高めるには硬質マルテンサイトの強度および分率を低下させることが有効であることがわかった。すなわち両特性を同時に満たすためには、高強度鋼板のフェライト体積率を90%とし、かつマルテンサイトの強度を低下させることが重要である。
従来、マルテンサイトやベイナイトなどの硬質組織の硬度を低下させて穴広げ性を向上させた複相鋼板では、強度を確保するために硬質組織の体積率を高めていた。そのため、穴広げ性は向上するものの、均一伸びが劣化していた。
そこで、本発明者らは、マルテンサイトの体積率を低減し、フェライトを固溶強化して、強度を確保する方法を検討した。
C:0.02〜0.05%、Si:0.8〜2.0%、Mn:0.5〜2.6%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、フェライトの体積率が90〜95%、残部がマルテンサイトからなる金属組織を有する熱延鋼板及び冷延鋼板を製造した。得られた熱延鋼板及び冷延鋼板の穴広げ率を、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の試験方法に準拠して評価した。結果を図1に示す。
その結果、高強度鋼板の穴広げ性を高めるには、マルテンサイトの強度への寄与が大きいCの含有量と、フェライトの固溶強化への寄与が大きいSiの含有量との比[C/Si]が、重要であり、図1に示すように、C/Siを0.035以上、0.060未満にすることで、穴広げ率を80%以上に高めることができることがわかった。
これは、Siの含有量の増加に伴いフェライトは強化され、一方、Cの含有量の低減に伴いマルテンサイトの強度は低下するためであると考えられる。したがって、C/Siが低いほどフェライト−マルテンサイト間の強度差が低減され、C/Siが0.060未満になると穴拡げ性が向上する。一方、C/Siが低すぎると、Siの過剰添加によりフェライトが硬く、脆くなり、C/Siが0.035未満になると穴広げ性が低下する。
また、本発明の複相鋼板では、フェライトを強化するために、Mo、Nbなどの元素を添加する必要がない。特に、Moは非常に高価であるし、材質のばらつきの原因にもなる。これに対し、本発明の高強度鋼板では、安価な元素であるSi、Mnによる固溶強化を利用しているため、コスト面で優れており、かつ、材質のばらつきの抑制が可能になる。
以下、本発明の高強度鋼板の含有成分について詳細に説明する。
Cは、均一伸び及び穴広げ性に影響を及ぼすマルテンサイトの生成及び硬化に寄与する元素である。マルテンサイトの体積率を5%以上とし、強度を確保するために、Cの含有量の下限を0.02%以上、好ましくは0.035%以上とする。一方、マルテンサイトの強度を低下させ、マルテンサイトの体積率を10%以下に制限するため、Cの含有量の上限を0.05%以下とする。
Siは、フェライトの固溶強化に寄与し、本発明において重要な元素である。フェライトを固溶強化し、590MPa以上の引張強度を確保するには、0.8%以上のSiを添加することが必要である。一方、Siの含有量が過剰になるとフェライトが硬化して、均一伸びが低下するため、Siの含有量の上限を2.0%以下、好ましくは1.2%以下とする。
Mnは、マルテンサイトの生成とフェライトの固溶強化に寄与する重要な元素である。フェライトを固溶強化するためには、0.5%以上のMnを添加することが必要である。一方、Mnの含有量が過剰になると、マルテンサイトの体積率が増加するため、Mnの含有量の上限を2.6%以下とする。
Cの含有量とSiの含有量との比[C/Si]は、穴広げ性及び均一伸びに影響を及ぼす重要な指標である。C/Siを0.06未満にすると、フェライトとマルテンサイトとの強度差が低減され、穴拡げ性が向上する。一方、フェライトの脆化を抑制し、穴広げ性及び均一伸びを確保するには、C/Siを0.035以上にすることが必要である。
Alは、脱酸元素であるが、アルミナ等の介在物を形成し、穴広げ性を劣化させるため上限を0.150%以下とする。Alの含有量の下限は、特に限定しないが、0.0005%以下に低減させることは困難である。
Pは、不純物元素であり、0.040%を超えると溶接部の脆化が顕著になるため、上限を0.040%以下とする。Pの含有量の下限は特に定めないが、0.0001%未満とすることは、経済的に不利である。
Sは、不純物元素であり、溶接性、鋳造時及び熱延時の製造性に悪影響を及ぼすことから、上限を0.010%以下とする。また、Sを過剰に含有すると、粗大なMnSを形成し、穴広げ性を低下させることから、穴広げ性向上のためには、含有量を低減することが好ましい。Sの含有量の下限値は特に定めないが、0.0001%未満とすることは、経済的に不利であることからこの値を下限とすることが好ましい。
Nは、不純物元素であり、含有量が0.010%を超えると、粗大な窒化物を形成し、曲げ性や穴広げ性を劣化させることから、上限を0.010%以下とする。また、Nの含有量が増加すると、溶接時のブローホール発生の原因になることから低減することが好ましい。下限は、特に定めないが、Nの含有量を0.0005%未満とするには、製造コストが上昇する。
更に、介在物の形態を制御するため、Ca、REMの一方又は双方を添加してもよい。
Ca、REMは、酸化物や硫化物の形態の制御に有効な元素であり、好ましい下限値は、それぞれ、0.0005%以上である。一方、過剰に添加すると成形性を損なうことがあるため、Ca、REMの含有量の好ましい上限は、それぞれ、0.0100%以下である。なお、本発明において、REMとは、La及びランタノイド系列の元素を指すものであり、ミッシュメタルにて添加されることが多く、LaやCe等の系列の元素を含有する。金属LaやCeを添加してもよい。
以下、本発明の高強度鋼板の金属組織について詳細に説明する。
フェライトは、延性を高める組織である。フェライトの体積率が90%未満では、延性、特に、均一伸びを確保することができない。一方、フェライトの体積率が95%超になると、硬質のマルテンサイトが少ないため、強度を確保することができない。したがって、フェライトの体積率の下限値は90%以上とし、好ましくは92%以上とする。また、フェライトの体積率の上限値は95%以下とする。
マルテンサイトは、強度を高める組織である。マルテンサイトの体積率が5%未満では、強度を確保することができない。一方、マルテンサイトの体積率が10%を超えると、軟質のフェライトの体積率が減少し、均一伸びが低下する。したがって、マルテンサイトの体積率の下限値は5%以上とする。また、マルテンサイトの体積率の上限値は10%以下とし、好ましくは8%以下とする。
なお、フェライト及びマルテンサイトの体積率は、レペラーエッチングした試料の金属組織写真を光学顕微鏡で撮影し、画像解析処理によって求める。
本発明の高強度鋼板は、軽量化が要求される自動車用鋼板として好適に使用するために、引張強度が590〜650MPaの範囲であることが好ましい。また、自動車用鋼板には、特に、プレス成形性などの加工性が要求されることから、本発明の高強度鋼板の均一伸びは、張出し成形性に優れたものとするために、17%以上であることが好ましい。
以下、本発明の加工性に優れた高強度鋼板の製造方法について説明する。
はじめに、熱延鋼板の製造方法について説明する。
まず、常法により、鋼を溶製し、鋳造して、上記の化学成分を有する鋼片を製造する。鋳造は、生産性の観点から、連続鋳造が好ましい。
熱延鋼板の場合、鋼片を1050〜1300℃に加熱し、熱間圧延を行う。加熱温度が1050℃未満では、変形抵抗が高く、製造上の負荷が大きくなる。一方、加熱温度が1300℃を超えると鋼板の組織が粗粒になり、強度が低下する。このため、加熱温度は、1300℃以上とし、1150℃以下とすることが好ましい。
熱間圧延の仕上げ温度は850〜1000℃とする。仕上げ温度が850℃未満では圧延後に再結晶が進まず、強い変態集合組織を持ち、穴広げ性を劣化させてしまう。このため、仕上げ温度は、850℃以上とし、900℃以上とすることが好ましい。一方、仕上げ温度が1000℃を超えると再結晶後の粒成長が著しく、鋼板組織が粗粒になり、強度が確保できない。
熱間圧延後、600〜750℃の範囲内まで水冷し、1〜10s空冷する。
水冷の停止温度が750℃を超えると、空冷時にオーステナイトからフェライトへの変態が不十分になる。そのため、急冷した際にマルテンサイトが増加し、90%以上のフェライトを確保することができない。一方、水冷の停止温度が600℃未満になると、フェライト変態が十分に進行しないままベイナイト変態が起こるため、90%以上のフェライトを確保することができない。
空冷時間は、1s未満では、空冷時のフェライトの生成が不十分になり、90%以上のフェライトを確保することができない。一方、空冷時間が10sを超えると、パーライトが生成し、強度を確保できず、穴広げ性が低下する。
空冷後、70℃/s以上の冷却速度で急冷する。冷却速度が70℃/s未満であると、マルテンサイトの体積率が低下し、パーライトが生成する。
急冷の停止温度は、ベイナイトの生成を避けるため、350℃以下とする。急冷の停止温度の下限値は特に限定せず、室温でもよい。
冷延鋼板を製造する場合、鋼の溶製及び熱間圧延の条件は特に限定せず、常法で行う。上記の化学成分を有する鋼片を熱間圧延後、常法で冷間圧延し、焼鈍を行う。焼鈍温度及びその後の冷却条件は、金属組織を制御するため、重要である。
焼鈍は、フェライトからオーステナイトへの変態温度であるAc1[℃]以上で行うことが必要である。焼鈍温度がAc未満であると、マルテンサイトの生成が不十分になり、強度が低下する。なお、再結晶を促進させるためには、焼鈍温度を750℃以上にすることが好ましい。一方、焼鈍温度がAc+100[℃]を超えると、フェライトの体積率が低下するため、上限をAc+100[℃]以下とする。Ac[℃]は、Mn及びSiの含有量から、下記(式1)によって求める。
Ac1 =723−10.7Mn+29.1Si ・・・ (式1)
(式1)において、Si、Mnは各元素の含有量[質量%]である。
冷延鋼板の焼鈍では、Ac[℃]〜(Ac+100)[℃]に到達した後、保持せずに冷却してもよい。保持時間は、長すぎると生産性を損なうため、180s以下とする。
焼鈍後、600〜700℃の範囲内まで20℃/s以下の冷却速度で一次冷却する。これは、焼鈍後の冷却中にフェライトを生成させるためである。
冷却速度が20℃/sを超えると、マルテンサイトの体積率が増加し、フェライトの体積率が低下する。
一次冷却の停止温度は、700℃を超えると、その後の二次冷却によって、マルテンサイトの体積率が増加し、フェライトの体積率が低下する。一方、一次冷却を600℃未満で停止すると、パーライトが生成する。
一次冷却後、70℃/s以上の冷却速度で二次冷却する。二次冷却の冷却速度が70℃/s未満では、マルテンサイトの体積率が低下し、パーライトが生成するため、強度を確保できず、穴広げ性が低下する。二次冷却の停止温度は、ベイナイトの生成を避けるため、350℃以下とする。二次冷却の停止温度の下限値は特に限定せず、室温でもよい。
「実施例1」
表1に示す化学成分を有する鋼を溶解し、鋳造して得られた鋼片を1150℃(表2に示す加熱温度)に加熱し、表2に示す仕上温度で熱間圧延を行い、表2に示す停止温度まで水冷し、表2に示す空冷時間で空冷し、更に、表2に示す冷却速度で室温から350℃以下の温度まで急冷した。表2のFT[℃]は仕上温度、MT[℃]は水冷の停止温度、tAC[s]は空冷時間、冷却速度[℃/s]は、急冷の冷却速度である。
Figure 0005304521
Figure 0005304521
得られた熱延鋼板から試料を採取し、光学顕微鏡を用いて金属組織の観察を行った。試料の調整として、圧延方向の板厚断面を観察面として研磨し、ナイタール試薬又はレペラー試薬にてエッチングした。得られたミクロ組織を画像解析して、フェライト、マルテンサイトの面積率を求めた。また、フェライト、マルテンサイト以外の残部の組織を確認した。その結果を表3に示す。表3において、fα[%]はフェライトの体積率、f[%]はマルテンサイトの体積率であり、残部はフェライトとマルテンサイト以外の組織である。したがって、残部の空欄は、フェライト及びマルテンサイトの体積率の合計が100%であることを意味する。
Figure 0005304521
得られた熱延鋼板の引張強度、均一伸び、破断伸び、穴広げ率を調べた。
引張強度及び破断伸びは、JIS Z 2201の5号試験片を用いて、JIS Z 2241に準拠して評価した。均一伸びは、最高荷重に達した際の公称伸びである。穴広げ試験は日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の試験方法に準拠して評価した。結果を表3に示す。表3のTS[MPa]は引張強度、uEL[%]は均一伸び、tEL[%]は破断伸び、λ[%]は穴広げ率である。
製造No.1〜10は、本発明の鋼板であり、590MPa以上の引張強度を有し、均一伸びが17%以上で破断伸びに優れ、穴広げ率が80%以上と高く、加工性が良好である。
一方、製造No.11は、Cの含有量とSiの含有量との比[C/Si]が少ないため、フェライト単相になり、強度が低くなっている。なお、製造No.11は、引張強度が低いため、C/Siは0.035未満であるが、穴拡げ性が高くなっている。
製造No.12は、C/Siが少ないため、強度および穴広げ性が低くなっている。
製造No.13、14はCの含有量が多く、C/Siが大きいため、マルテンサイトが硬化してフェライトとの強度差が大きくなり、穴広げ性が低くなっている。
製造No.15、16は、Siの含有量が少なく、Cの含有量とSiの含有量との比C/Siが高いため、マルテンサイトとフェライトとの強度差を軽減できず、穴広げ性が低くなっている。
一方、製造No.17は、C/Siが低く、フェライトが硬化して、穴広げ性が低くなっている。
また、製造No.18は、Mnの含有量が多いため、マルテンサイトの体積率が増加してフェライトの体積率が減少し、延性及び穴拡げ性が低くなっている。
製造No.19は、水冷停止温度が高く、空冷時にフェライト変態が十分に進行しないため、フェライトの体積率が減少し、延性が低くなっている。
製造No.20は空冷時間が長く、製造No.21は急冷の冷却速度が遅く、パーライトが生成し、穴広げ性が低くなっている。
「実施例2」
表1に示す化学成分を有する鋼を溶解し、鋳造して得られた鋼片を1150℃に加熱した後、常法で熱間圧延、冷間圧延を施した。更に、表4に示す焼鈍温度に加熱して100秒間(保持時間)保持した後、表4に示す冷却速度1[℃/s]で表4に示す中間温度まで一次冷却し、更に、表4に示す冷却速度2[℃/s]で室温から350℃以下の温度まで二次冷却した。表4に示す中間温度[℃]は冷却速度を変更した温度である。
Figure 0005304521
得られた冷延鋼板の金属組織の観察及び体積率の測定、引張強度、均一伸び、破断伸び、穴広げ率の評価は、実施例1と同様にして行った。結果を表5に示す。表5のTS[MPa]は引張強度、uEL[%]は均一伸び、tEL[%]は破断伸び、λ[%]は穴広げ率である。
Figure 0005304521
製造No.22〜29は、本発明の鋼板であり、590MPa以上の引張強度を有し、均一伸びが17%以上で破断伸びに優れ、穴広げ率が80%以上と高く、加工性が良好である。
一方、製造No.30は、Cの含有量とSiの含有量との比[C/Si]が少ないため、フェライト単相になり、強度が低くなっている。なお、製造No.30は、引張強度が低いため、C/Siは0.035未満であるが、穴拡げ性が高くなっている。
製造No.31は、C/Siが少ないため、強度および穴広げ性が低くなっている。
製造No.32、33はCの含有量が多く、C/Siが大きいため、マルテンサイトが硬化してフェライトとの強度差が大きくなり、穴広げ性が低くなっている。
製造No.34、35は、Siの含有量が少なく、Cの含有量とSiの含有量との比C/Siが大きいため、マルテンサイトとフェライトとの強度差が大きくなり、穴広げ性が低くなっている。
製造No.36は、C/Siが低く、フェライトが硬化して、穴広げ性が低くなっている。
また、製造No.37は、Mnの含有量が多く、マルテンサイトの体積率が増加してフェライトの体積率が減少し、延性及び穴拡げ性が低くなっている。
製造No.38は、一次冷却の停止温度(中間温度)が高いため、マルテンサイトの体積率が増加し、フェライトの体積率が低下して、延性が低下している。
製造No.39は、二次冷却の冷却速度が遅いため、マルテンサイトの体積率が低下し、パーライトが生成し、強度および穴広げ性が低くなっている。
製造No.40は焼鈍温度が高く、フェライト変態が遅延し、マルテンサイトが増加して、延性が劣化している。
製造No.41は一次冷却速度が高すぎるため、マルテンサイトの体積率が増加し、フェライトの体積率が低下して、延性が劣化している。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.02〜0.05%、
    Si:0.8〜2.0%、
    Mn:1.0〜2.6%
    を含有し、Cの含有量とSiの含有量との比[C/Si]が0.035以上、0.060未満であり、
    Al:0.150%以下、
    P :0.040%以下、
    S :0.010%以下、
    N :0.010%以下
    に制限し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、金属組織が、体積率で、90〜95%のフェライトと5〜10%のマルテンサイトとからなることを特徴とする加工性に優れた高強度鋼板。
  2. 質量%で、
    REM:0.0100%以下、
    Ca:0.0100%以下
    の一方又は双方を含有することを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れた高強度鋼板。
  3. 引張強度が590〜650MPaであり、均一伸びが17%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工性に優れた高強度鋼板。
  4. 請求項1又は2に記載の化学成分を有する鋼片を、1050〜1300℃に加熱し、仕上温度を850〜1000℃として熱間圧延を行い、600〜750℃の範囲内まで水冷し、1〜10s空冷し、更に、70℃/s以上の冷却速度で350℃以下まで急冷することを特徴とする加工性に優れた高強度鋼板の製造方法。
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