JP5304521B2 - 加工性に優れた高強度鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1に提案された鋼板は、耐衝撃特性を向上させるためにマルテンサイトの硬度を高めたものであるが、穴広げ性を確保するため、マルテンサイトの硬さとフェライトの硬さの比を制限している。特許文献2及び3には、マルテンサイトの分率、粒径や、マルテンサイトの硬さとフェライトの硬さの比、固溶C量を制御し、穴広げ性を向上させた複相鋼板が提案されている。更に、特許文献4に提案された複相鋼板では、特に、マルテンサイトとフェライトとの界面へのCの濃化を抑制している。
特許文献5に提案された方法は、焼戻しによってセメンタイトを析出させ、マルテンサイトの硬さを低下させるものである。特許文献6には、Alの添加によって炭化物の生成を抑制し、機械特性のばらつきを低減させる方法が提案されている。
(2) 質量%で、REM:0.0100%以下、Ca:0.0100%以下の一方又は双方を含有することを特徴とする上記(1)に記載の加工性に優れた高強度鋼板。
C:0.02〜0.05%、Si:0.8〜2.0%、Mn:0.5〜2.6%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、フェライトの体積率が90〜95%、残部がマルテンサイトからなる金属組織を有する熱延鋼板及び冷延鋼板を製造した。得られた熱延鋼板及び冷延鋼板の穴広げ率を、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の試験方法に準拠して評価した。結果を図1に示す。
その結果、高強度鋼板の穴広げ性を高めるには、マルテンサイトの強度への寄与が大きいCの含有量と、フェライトの固溶強化への寄与が大きいSiの含有量との比[C/Si]が、重要であり、図1に示すように、C/Siを0.035以上、0.060未満にすることで、穴広げ率を80%以上に高めることができることがわかった。
Cは、均一伸び及び穴広げ性に影響を及ぼすマルテンサイトの生成及び硬化に寄与する元素である。マルテンサイトの体積率を5%以上とし、強度を確保するために、Cの含有量の下限を0.02%以上、好ましくは0.035%以上とする。一方、マルテンサイトの強度を低下させ、マルテンサイトの体積率を10%以下に制限するため、Cの含有量の上限を0.05%以下とする。
Ca、REMは、酸化物や硫化物の形態の制御に有効な元素であり、好ましい下限値は、それぞれ、0.0005%以上である。一方、過剰に添加すると成形性を損なうことがあるため、Ca、REMの含有量の好ましい上限は、それぞれ、0.0100%以下である。なお、本発明において、REMとは、La及びランタノイド系列の元素を指すものであり、ミッシュメタルにて添加されることが多く、LaやCe等の系列の元素を含有する。金属LaやCeを添加してもよい。
フェライトは、延性を高める組織である。フェライトの体積率が90%未満では、延性、特に、均一伸びを確保することができない。一方、フェライトの体積率が95%超になると、硬質のマルテンサイトが少ないため、強度を確保することができない。したがって、フェライトの体積率の下限値は90%以上とし、好ましくは92%以上とする。また、フェライトの体積率の上限値は95%以下とする。
なお、フェライト及びマルテンサイトの体積率は、レペラーエッチングした試料の金属組織写真を光学顕微鏡で撮影し、画像解析処理によって求める。
はじめに、熱延鋼板の製造方法について説明する。
まず、常法により、鋼を溶製し、鋳造して、上記の化学成分を有する鋼片を製造する。鋳造は、生産性の観点から、連続鋳造が好ましい。
水冷の停止温度が750℃を超えると、空冷時にオーステナイトからフェライトへの変態が不十分になる。そのため、急冷した際にマルテンサイトが増加し、90%以上のフェライトを確保することができない。一方、水冷の停止温度が600℃未満になると、フェライト変態が十分に進行しないままベイナイト変態が起こるため、90%以上のフェライトを確保することができない。
空冷時間は、1s未満では、空冷時のフェライトの生成が不十分になり、90%以上のフェライトを確保することができない。一方、空冷時間が10sを超えると、パーライトが生成し、強度を確保できず、穴広げ性が低下する。
急冷の停止温度は、ベイナイトの生成を避けるため、350℃以下とする。急冷の停止温度の下限値は特に限定せず、室温でもよい。
Ac1 =723−10.7Mn+29.1Si ・・・ (式1)
(式1)において、Si、Mnは各元素の含有量[質量%]である。
冷却速度が20℃/sを超えると、マルテンサイトの体積率が増加し、フェライトの体積率が低下する。
一次冷却の停止温度は、700℃を超えると、その後の二次冷却によって、マルテンサイトの体積率が増加し、フェライトの体積率が低下する。一方、一次冷却を600℃未満で停止すると、パーライトが生成する。
表1に示す化学成分を有する鋼を溶解し、鋳造して得られた鋼片を1150℃(表2に示す加熱温度)に加熱し、表2に示す仕上温度で熱間圧延を行い、表2に示す停止温度まで水冷し、表2に示す空冷時間で空冷し、更に、表2に示す冷却速度で室温から350℃以下の温度まで急冷した。表2のFT[℃]は仕上温度、MT[℃]は水冷の停止温度、tAC[s]は空冷時間、冷却速度[℃/s]は、急冷の冷却速度である。
引張強度及び破断伸びは、JIS Z 2201の5号試験片を用いて、JIS Z 2241に準拠して評価した。均一伸びは、最高荷重に達した際の公称伸びである。穴広げ試験は日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の試験方法に準拠して評価した。結果を表3に示す。表3のTS[MPa]は引張強度、uEL[%]は均一伸び、tEL[%]は破断伸び、λ[%]は穴広げ率である。
一方、製造No.11は、Cの含有量とSiの含有量との比[C/Si]が少ないため、フェライト単相になり、強度が低くなっている。なお、製造No.11は、引張強度が低いため、C/Siは0.035未満であるが、穴拡げ性が高くなっている。
製造No.12は、C/Siが少ないため、強度および穴広げ性が低くなっている。
製造No.15、16は、Siの含有量が少なく、Cの含有量とSiの含有量との比C/Siが高いため、マルテンサイトとフェライトとの強度差を軽減できず、穴広げ性が低くなっている。
一方、製造No.17は、C/Siが低く、フェライトが硬化して、穴広げ性が低くなっている。
また、製造No.18は、Mnの含有量が多いため、マルテンサイトの体積率が増加してフェライトの体積率が減少し、延性及び穴拡げ性が低くなっている。
製造No.20は空冷時間が長く、製造No.21は急冷の冷却速度が遅く、パーライトが生成し、穴広げ性が低くなっている。
表1に示す化学成分を有する鋼を溶解し、鋳造して得られた鋼片を1150℃に加熱した後、常法で熱間圧延、冷間圧延を施した。更に、表4に示す焼鈍温度に加熱して100秒間(保持時間)保持した後、表4に示す冷却速度1[℃/s]で表4に示す中間温度まで一次冷却し、更に、表4に示す冷却速度2[℃/s]で室温から350℃以下の温度まで二次冷却した。表4に示す中間温度[℃]は冷却速度を変更した温度である。
一方、製造No.30は、Cの含有量とSiの含有量との比[C/Si]が少ないため、フェライト単相になり、強度が低くなっている。なお、製造No.30は、引張強度が低いため、C/Siは0.035未満であるが、穴拡げ性が高くなっている。
製造No.31は、C/Siが少ないため、強度および穴広げ性が低くなっている。
製造No.34、35は、Siの含有量が少なく、Cの含有量とSiの含有量との比C/Siが大きいため、マルテンサイトとフェライトとの強度差が大きくなり、穴広げ性が低くなっている。
製造No.36は、C/Siが低く、フェライトが硬化して、穴広げ性が低くなっている。
また、製造No.37は、Mnの含有量が多く、マルテンサイトの体積率が増加してフェライトの体積率が減少し、延性及び穴拡げ性が低くなっている。
製造No.39は、二次冷却の冷却速度が遅いため、マルテンサイトの体積率が低下し、パーライトが生成し、強度および穴広げ性が低くなっている。
製造No.40は焼鈍温度が高く、フェライト変態が遅延し、マルテンサイトが増加して、延性が劣化している。
製造No.41は一次冷却速度が高すぎるため、マルテンサイトの体積率が増加し、フェライトの体積率が低下して、延性が劣化している。
Claims (4)
- 質量%で、
C :0.02〜0.05%、
Si:0.8〜2.0%、
Mn:1.0〜2.6%
を含有し、Cの含有量とSiの含有量との比[C/Si]が0.035以上、0.060未満であり、
Al:0.150%以下、
P :0.040%以下、
S :0.010%以下、
N :0.010%以下
に制限し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、金属組織が、体積率で、90〜95%のフェライトと5〜10%のマルテンサイトとからなることを特徴とする加工性に優れた高強度鋼板。 - 質量%で、
REM:0.0100%以下、
Ca:0.0100%以下
の一方又は双方を含有することを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れた高強度鋼板。 - 引張強度が590〜650MPaであり、均一伸びが17%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工性に優れた高強度鋼板。
- 請求項1又は2に記載の化学成分を有する鋼片を、1050〜1300℃に加熱し、仕上温度を850〜1000℃として熱間圧延を行い、600〜750℃の範囲内まで水冷し、1〜10s空冷し、更に、70℃/s以上の冷却速度で350℃以下まで急冷することを特徴とする加工性に優れた高強度鋼板の製造方法。
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