JP5304032B2 - 車両のトラクション制御装置、及び車両のトラクション制御方法 - Google Patents

車両のトラクション制御装置、及び車両のトラクション制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車などの車両のトラクション制御装置、及び車両のトラクション制御方法に関する。
一般に、舗装されていない荒地などの悪路を無理なく走行可能な車両には、オートマティックトランスミッションなどの主変速機と、該主変速機と直列に配設されるトランスファなどの副変速機とが設けられている。この副変速機は、運転手によるシフト操作によって、低速状態(以下、「Lレンジ」という。)又は高速状態(以下、「Hレンジ」という。)に設定されるようになっている。例えば、悪路を走行させる場合には、走破性の向上を図るため、副変速機をLレンジに設定して車両を走行させることが望ましい。また、アスファルトなどで舗装された路面を走行させる場合には、車両の燃費向上を図るため、副変速機をHレンジに設定して車両を走行させることが望ましい。
ところで、車両の発進時や走行中では、駆動輪が路面に対してスリップしてしまい、車両の挙動が不安定になることがある。例えば、車両が悪路を走行中の場合には、該車両の駆動輪が砂地やぬかるみなどにはまってしまい、駆動輪が空回りして車両が走行不能になってしまうことがある。なお、このような状態のことを「スタック状態」ともいう。こうしたスタック状態から車両を脱出させるためには、駆動輪の空転を抑制させる必要がある。そこで、近年の車両には、車両走行時における駆動輪のスリップ(空回りも含む。)を抑制可能な装置として特許文献1に記載のトラクション制御装置が搭載されている。
この特許文献1に記載のトラクション制御装置は、副変速機のレンジがHレンジであるかLレンジであるかを判別し、副変速機がLレンジである場合にはHレンジである場合に比して制動トラクション制御の開始基準である制動制御開始閾値を小さな値に設定する。そして、上記トラクション制御装置は、駆動輪のスリップ量を演算し、該スリップ量が制動制御開始閾値以上になった場合に、駆動輪に制動力を付与させるために制動トラクション制御を実行する。すなわち、副変速機がLレンジである場合には、Hレンジである場合に比して制動トラクション制御が早いタイミングで実行される。そのため、車両がスタック状態に陥ったとしても副変速機がLレンジである場合には、制動トラクション制御が速やかに実行されるため、車両をスタック状態から速やかに脱出させることが可能であった。
特許第3653192号公報
ところで、副変速機をHレンジにした状態で車両が悪路を走行し、該車両がスタック状態に陥ってしまう場合もある。こうした場合、副変速機がLレンジである場合に比して制動制御開始閾値が大きな値に設定されるため、アクセル操作によって駆動輪のスリップ量を大きくしても制動トラクション制御がなかなか実行されない。そのため、上記トラクション制御装置を搭載した車両では、スタック状態に陥った場合には副変速機をHレンジからLレンジに切替えるべくシフト操作を行い、その後にアクセル操作を行うことにより、制動トラクション制御が実行される。すなわち、副変速機がHレンジである場合には、副変速機のレンジを切替えるための操作などが必要となり、車両をスタック状態から脱出させるための操作が煩雑になってしまう問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の運転手による操作の簡易化を図りつつ、スリップ状態にある駆動輪に対して適切に制動力を付与できる車両のトラクション制御装置、及び車両のトラクション制御方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、車両の駆動源から駆動力が伝達される駆動輪がスリップ状態である場合に、該駆動輪に制動力を付与させるための制動トラクション制御を実行する制動制御手段と、前記駆動源から前記駆動輪に伝達される駆動力を小さくさせるための駆動力トラクション制御を実行する駆動力制御手段とを有する車両のトラクション制御装置であって、前記駆動輪のスリップ状態を数値的に示すスリップ値を演算するスリップ値演算手段と、運転手の要求に基づき前記駆動源から前記駆動輪に伝達される駆動力を演算する駆動力演算手段と、前記制動トラクション制御の開始基準である制動制御開始閾値を前記駆動力演算手段によって演算された駆動力が大きいほど小さな値に設定するとともに、前記駆動力トラクション制御の開始基準となる駆動力制御開始閾値を、前記駆動力演算手段によって演算された駆動力が大きいほど大きな値に設定する閾値設定手段とを備え、前記制動制御手段は、前記スリップ値演算手段によって演算されたスリップ値が前記閾値設定手段によって設定された前記制動制御開始閾値以上になった場合に、前記制動トラクション制御を実行し、前記駆動力制御手段は、前記スリップ値演算手段によって演算されたスリップ値が前記閾値設定手段によって設定された前記駆動力制御開始閾値以上になった場合に、前記駆動力トラクション制御を実行し、前記閾値設定手段は、前記駆動力演算手段によって演算された駆動力が予め設定された駆動力基準値以下である場合には、前記駆動力制御開始閾値を前記制動制御開始閾値よりも小さな値に設定する一方、前記駆動力演算手段によって演算された駆動力が前記駆動力基準値以上の値に予め設定された他の駆動力基準値を超えた場合には、前記駆動力制御開始閾値を前記制動制御開始閾値以上の値に設定することを要旨とする。
上記構成によれば、駆動輪がスリップ状態になった際において該スリップ状態を速やかに解消させたい場合には、運転手のアクセル操作などによって駆動源から駆動輪に伝達される駆動力を大きくする。すると、上記駆動力、即ち運転手の要求する駆動力が大きいほど、制動制御開始閾値が小さな値に設定される。そのため、制動制御開始閾値が上記駆動力によって変化しない場合に比して、運転手の意志に応じて制動トラクション制御が速やかに実行され、結果として、駆動輪のスリップ状態が速やかに解消される。また、制動トラクション制御を開始させるために、車両に搭載された副変速機のレンジ切替えなどのような煩雑な操作を運転手に行わせる必要がない。したがって、車両の運転手による操作の簡易化を図りつつ、スリップ状態にある駆動輪に対して適切に制動力を付与できる。
また、運転手の意志によって上記駆動力を大きくした場合には、該駆動力に基づき駆動力制御開始閾値が大きな値に設定されるため、駆動輪のスリップ値が制動制御開始閾値以上であって且つ駆動力制御開始閾値未満となり、駆動力トラクション制御よりも優先的に制動トラクション制御が実行される。また、運転手の意志によって上記駆動力を小さくした場合には、該駆動力に基づき駆動力制御開始閾値が小さな値に設定されるため、駆動輪のスリップ値が駆動力制御開始閾値以上であって且つ制動制御開始閾値未満となり、制動トラクション制御よりも優先的に駆動力トラクション制御が実行される。そのため、上記駆動力の大きさに関係なく駆動力制御開始閾値のほうが制動制御開始閾値よりも大きくなるような場合とは異なり、運転手の意志によって制動トラクション制御を好適に実行させることが可能になる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両のトラクション制御装置において、前記閾値設定手段は、前記駆動力演算手段によって演算された駆動力が前記駆動力基準値以下である場合には、前記制動制御開始閾値を予め設定された基準開始値に設定する一方、前記駆動力演算手段によって演算された駆動力が前記駆動力基準値を超えた場合には、前記制動制御開始閾値を前記基準開始値よりも小さい値に設定することを要旨とする。
上記構成によれば、駆動源から駆動輪に伝達される駆動力が駆動力基準値を超えた場合、制動制御開始閾値は、基準開始値よりも小さい値に設定される。そのため、駆動輪がスリップ状態である場合には、運転手によるアクセル操作などによって駆動源から駆動輪に伝達される駆動力を大きくすることにより、制動トラクション制御を速やかに実行させることが可能になる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両のトラクション制御装置において、前記閾値設定手段は、前記駆動輪が非スリップ状態である場合には、前記制動制御開始閾値を基準開始値に設定することを要旨とする。
上記構成によれば、駆動輪がスリップ状態でない場合、制動制御開始閾値は、基準開始値に設定される。例えば、制動トラクション制御の実行によって駆動輪のスリップ状態が解消された場合、制動制御開始閾値は、上記駆動力の大きさに関係なく基準開始値に設定される。そのため、駆動輪がスリップ状態ではない場合であっても制動制御開始閾値が上記駆動力の大きさに基づき設定される制御構成に比して、不必要に制動トラクション制御が実行されることを抑制可能である。
請求項に記載の発明は、請求項〜請求項のうち何れか一項に記載の車両のトラクション制御装置において、前記車両には、駆動力の伝達経路上において前記駆動源と前記駆動輪との間に配置される副変速機が設けられると共に、前記副変速機に設定される変速段を検出する副変速機検出手段をさらに備え、前記閾値設定手段は、前記副変速機検出手段によって前記副変速機の変速段が駆動力の伝達効率の高い高変速段であると検出された場合には、前記制動制御開始閾値を予め設定された基準開始値よりも小さい所定値に設定する一方、前記副変速機検出手段によって前記副変速機の変速段が高変速段以外の変速段であることが検出された場合には、前記制動制御開始閾値を前記駆動力演算手段によって演算された駆動力に応じた値に設定することを要旨とする。
上記構成によれば、副変速機の変速段が高変速段である場合には、副変速機の変速段が高変速段以外の変速段である場合に比して、駆動源から駆動輪に伝達される駆動力が大きくなり易いため、制動制御開始閾値を変更しなくても速やかに制動トラクション制御を実行させることが可能である。そのため、本発明では、副変速機の変速段が高変速段以外の状態である場合に、上記駆動力の大きさに応じて制動制御開始閾値を変更させる。したがって、副変速機が高変速段である場合にも制動制御開始閾値を変更させる制御構成の場合に比して、制御負荷の増大が抑制される。
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のうち何れか一項に記載の車両のトラクション制御装置において、車両の車体速度を演算する車体速度演算手段と、該車体速度演算手段によって演算された車体速度が予め設定された車体速度閾値を超える場合に、前記制動制御開始閾値を前記閾値設定手段によって小さい値に設定することを規制する規制手段とをさらに備えたことを要旨とする。
上記構成によれば、車両の車体速度が車体速度閾値を超える場合には、車両がスタック状態ではないと判定され、制動制御開始閾値が上記駆動力に応じて小さい値に設定されることが規制される。そのため、駆動輪の非スリップ中に、制動制御開始閾値が小さい値に設定されることに起因して制動トラクション制御が不必要に実行されることが抑制される。
一方、車両のトラクション制御方法にかかる請求項に記載の発明は、車両の駆動源から駆動力が伝達される駆動輪がスリップ状態である場合に、該駆動輪に制動力を付与させるための制動トラクション制御を実行させるとともに、前記駆動源から前記駆動輪に伝達される駆動力を小さくさせるための駆動力トラクション制御を実行させる車両のトラクション制御方法であって、前記駆動輪のスリップ状態を数値的に示すスリップ値を演算させるスリップ値演算ステップと、前記駆動源から前記駆動輪に伝達される駆動力を演算させる駆動力演算ステップと、前記制動トラクション制御の開始基準である制動制御開始閾値を前記駆動力演算ステップにて演算した駆動力が大きいほど小さな値に設定させるとともに、前記駆動力トラクション制御の開始基準となる駆動力制御開始閾値を、前記駆動力演算ステップにて演算した駆動力が大きいほど大きな値に設定させる閾値設定ステップと、前記スリップ値演算ステップにて演算したスリップ値が前記閾値設定ステップにて設定した前記制動制御開始閾値以上になった場合に、前記制動トラクション制御を実行させる制動制御ステップと、前記スリップ値演算ステップにて演算したスリップ値が前記閾値設定ステップにて設定した前記駆動力制御開始閾値以上になった場合に、前記駆動力トラクション制御を実行させる駆動力制御ステップとを有し、前記閾値設定ステップでは、前記駆動力演算ステップにて演算した駆動力が予め設定された駆動力基準値以下である場合には、前記駆動力制御開始閾値を前記制動制御開始閾値よりも小さな値に設定させる一方、前記駆動力演算ステップにて演算した駆動力が前記駆動力基準値以上の値に予め設定された他の駆動力基準値を超えた場合には、前記駆動力制御開始閾値を前記制動制御開始閾値以上の値に設定させることを要旨とする。
上記構成によれば、請求項1に記載の発明と同等の作用効果を得ることができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明の車両のトラクション制御装置、及び車両のトラクション制御方法を具体化した第1の実施形態を図1〜図9に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。また、特に説明がない限り、以下の記載における左右方向は、車両進行方向における左右方向と一致するものとする。
図1に示すように、本実施形態の車両は、複数(本実施形態では4つ)ある車輪(右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RL)の全てが駆動輪として機能するいわゆる四輪駆動車である。こうした車両には、運転手によるアクセルペダル11の踏込み操作量、即ちアクセル操作に応じたトルクを発生可能な駆動源としてのエンジン12を有する駆動力発生装置13と、該駆動力発生装置13で発生した駆動力を各車輪FR,FL,RR,RLに伝達する駆動力伝達装置14とが設けられている。また、車両には、運転手によるブレーキペダル15の踏込み操作量、即ちブレーキ操作に応じた制動力を各車輪FR,FL,RR,RLに付与可能な制動装置16が設けられている。
駆動力発生装置13は、エンジン12から外部に向けて延設された吸気管17と、該吸気管17内に配置され、且つその開口断面積を可変させるスロットル弁18と、吸気管17外に配置され、且つスロットル弁18の開度を調整するためのスロットル弁アクチュエータ19(例えばDCモータ)とが設けられている。また、エンジン12の吸気ポート(図示略)近傍には、燃料を噴射するインジェクタを有する燃料噴射装置20が設けられている。さらに、駆動力発生装置13には、図3に示すように、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを有するエンジンECU21(「エンジン用電子制御装置」ともいう。)が設けられている。このエンジンECU21には、アクセルペダル11の近傍に配置され、且つ運転手によるアクセルペダル11の踏込み量、即ちアクセル開度を検出するためのアクセル開度センサSE1が電気的に接続されている。そして、エンジンECU21は、アクセル開度センサSE1からの検出信号に基づきアクセル開度を演算し、該演算したアクセル開度などに基づきエンジン12、スロットル弁アクチュエータ19及び燃料噴射装置20を制御する。
駆動力伝達装置14は、図1に示すように、エンジン12の出力軸に接続された主変速機25(「トランスミッション」ともいう。)と、トルクの伝達経路上において主変速機25よりも下流側(即ち、車輪側)に配置されるトランスファなどの副変速機26とを備えている。この副変速機26のレンジ(変速段)は、運転手による操作レバー27の操作によって、車輪FR,FL,RR,RL側へのトルクの伝達比率(ギヤ比)の高い高変速段(トルク伝達率が高く車体速度が速くなりにくいことから、「Lレンジ」という。)又はトルクの伝達比率の低い低変速段(高変速段以外の変速段であって、「Hレンジ」という。)に切替え可能である。なお、本実施形態の副変速機26には、該副変速機26のレンジがLレンジであるかHレンジであるかを検出するためのレンジ検出センサSE2が設けられており、該レンジ検出センサSE2からは、副変速機26のレンジに応じた検出信号が後述する制動ECU56に出力される。
また、上記伝達経路上において副変速機26よりも下流側には、センタディファレンシャル28が設けられており、エンジン12で発生したトルクは、センタディファレンシャル28を介して前輪FR,FL側及び後輪RR,RL側に駆動力としてそれぞれ伝達される。また、センタディファレンシャル28よりも前輪FR,FL側には、前輪用ディファレンシャル29が設けられており、該前輪用ディファレンシャル29を介して駆動力が前輪FR,FLにそれぞれ伝達される。また、センタディファレンシャル28よりも後輪RR,RL側には、後輪用ディファレンシャル30が設けられており、該後輪用ディファレンシャル30を介して駆動力が後輪RR,RLにそれぞれ伝達される。このようにエンジン12で発生したトルクが各車輪FR,FL,RR,RLに伝達されることにより、各車輪FR,FL,RR,RLがそれぞれ回転して車両が走行するようになっている。
なお、駆動力伝達装置14には、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを有する図示しないAT用ECU(「ミッション用電子制御装置」ともいう。)が設けられている。このAT用ECUには、主変速機25の変速段(第1速、第2速など)を検出するための図示しない変速段検出センサが電気的に接続されており、該変速段検出センサからの検出信号に基づき主変速機25の変速段を検出している。
次に、制動装置16の構成について図1及び図2に基づき説明する。なお、制動装置16の制動アクチュエータ40は、略同一構成の2つの液圧回路38,39を有している。そのため、図3では、明細書の説明理解の便宜上、一方の液圧回路38のみを図示し、他方の液圧回路39の図示を省略するものとする。
図1及び図2に示すように、本実施形態の制動装置16は、マスタシリンダ35及びブースタ36を有する液圧発生機構37と、2つの液圧回路38,39を有する制動アクチュエータ40(図3では二点鎖線で示す。)とを備えている。各液圧回路38,39は、液圧発生機構37に接続され、第1液圧回路38は、左前輪FL及び右後輪RRに対応して設けられた各ホイールシリンダ41b,41cに接続されると共に、第2液圧回路39は、右前輪FR及び左後輪RLに対応して設けられた各ホイールシリンダ41a,41dに接続されている。
液圧発生機構37では、車両の運転者がブレーキ操作した場合に、液圧発生機構37のマスタシリンダ35及びブースタ36が作動する。すると、マスタシリンダ35からは、各液圧回路38,39を介して各ホイールシリンダ41a〜41d内にブレーキ液がそれぞれ供給される。その結果、各ホイールシリンダ41a〜41d内のホイールシリンダ圧に対応した制動力が、車輪FR,FL,RR,RLにそれぞれ付与される。なお、液圧発生機構37には、ブレーキペダル15が踏込み操作されたことを検出するためのブレーキスイッチSW1が設けられ、該ブレーキスイッチSW1からは、運転手によるブレーキペダル15の操作態様に応じた検出信号が制動ECU56に出力される。
制動アクチュエータ40の第1液圧回路38には、マスタシリンダ35に連結される連結流路42が形成されており、該連結流路42には、マスタシリンダ35内のマスタシリンダ圧とホイールシリンダ41b,41c内のホイールシリンダ圧との間に圧力差を発生させるための比例差圧弁43が設けられている。また、第1液圧回路38には、ホイールシリンダ41bに接続される左前輪用経路45と、ホイールシリンダ41cに接続される右後輪用経路46とが形成されている。そして、これら各経路45,46上には、ホイールシリンダ41b,41c内のホイールシリンダ圧の増圧を規制する際に作動する常開型の第1電磁弁47,48(「保持弁」ともいう。)と、ホイールシリンダ41b,41c内のホイールシリンダ圧を減圧させる際に作動する常閉型の第2電磁弁49,50(「減圧弁」ともいう。)とが設けられている。
また、第1液圧回路38には、各ホイールシリンダ41b,41c内から第2電磁弁49,50を介して流出したブレーキ液を一時貯留するためのリザーバ51と、モータMの回転に基づき駆動するポンプ52とが設けられている。このポンプ52は、吸入用流路53を介してリザーバ51に接続されると共に、供給用流路54を介して液圧回路38における第1電磁弁47,48と比例差圧弁43との間の接続部位A1に接続されている。また、吸入用流路53には、マスタシリンダ35側に向けて分岐された分岐液圧路55が形成されている。そして、ポンプ52は、モータMが回転した場合に、リザーバ51及びマスタシリンダ35側から吸入用流路53及び分岐液圧路55を介してブレーキ液を吸引し、該ブレーキ液を供給用流路54内に吐出する。
制動アクチュエータ40の第2液圧回路39は、上記第1液圧回路38と同等の構成を有している。そのため、第2液圧回路39上に設けられた各種電磁弁やポンプなどが個別に駆動することにより、各ホイールシリンダ41a,41d内のホイールシリンダ圧がそれぞれ調整される。
次に、制動アクチュエータ40を制御する制動ECU56について図3に基づき説明する。
制動ECU56は、図示しない入出力用インターフェースと、CPU57、ROM58及びRAM59などを有するデジタルコンピュータと、制動アクチュエータ40を作動させるための図示しない駆動回路とを備えている。制動ECU56の入出力用インターフェースには、ブレーキスイッチSW1と、レンジ検出センサSE2と、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE3,SE4,SE5,SE6とが電気的に接続されている。また、制動ECU56の入出力用インターフェースには、制動アクチュエータ40が電気的に接続されている。
さらに、制動ECU56の入出力用インターフェースには、バス60を介して他のECU21が電気的に接続されており、各ECU21,56は、各種情報及び制御指令を送受信可能となっている。すなわち、制動ECU56には、エンジンECU21からエンジン12にて発生したトルクに関する情報を受信すると共に、上記AT用ECUから主変速機25の変速段に関する情報を受信する。そして、制動ECU56は、ブレーキスイッチSW1及び各種センサSE2〜SE6からの各種検出信号や他のECU21からの各種情報及び制御指令などに基づき、制動アクチュエータ40を制御したり、他のECU21に各種制御指令を送信したりする。したがって、本実施形態では、各ECU21,56により、車両のトラクション制御装置が構成される。
制動ECU56のROM58には、各種制御処理(後述するトラクション制御処理など)、各種マップ(図4にて詳述するマップ)及び各種閾値(後述する駆動力制御開始閾値など)などが予め記憶されている。また、制動ECU56のRAM59には、車両の図示しないイグニッションスイッチが「オン」である間、適宜書き換えられる各種の情報(後述する駆動力、車輪速度、車体速度、各車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量及び各スリップ量の平均値、制動制御開始閾値など)などがそれぞれ記憶される。
次に、ROM58に記憶されるマップについて図4に基づき説明する。
図4に示すマップは、後述する制動トラクション制御の開始基準である制動制御開始閾値KBPを設定するためのマップであって、エンジン12側から各車輪FR,FL,RR,RLに伝達される駆動力DW、即ち運転手が要求する駆動力と、制動制御開始閾値KBPである各車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量との関係を示している。すなわち、図4にて実線で示すように、上記駆動力DWが第1駆動力基準値D1(>「0(零)」)以下である場合、制動制御開始閾値KBPは、基準開始値としての第1スリップ量S1(例えば、演算した車体速度と制御対象車輪の車輪速度との差が「10km/h」)に設定される。また、上記駆動力DWが第1駆動力基準値D1よりも大きく、且つ第1駆動力基準値D1よりも大きな第2駆動力基準値D2以下である場合、制動制御開始閾値KBPは、上記駆動力DWが大きいほど小さな値に設定される。そして、上記駆動力DWが第2駆動力基準値D2よりも大きい場合、制動制御開始閾値KBPは、第1スリップ量S1よりも小さい第2スリップ量S2(例えば「5km/h」)に設定される。なお、上記駆動力DWが第2駆動力基準値D2よりも大きい場合の制動制御開始閾値KBP(=S2)は、後述する駆動力トラクション制御の開始基準である駆動力制御開始閾値KEG(=第3スリップ量S3(例えば「6km/h」))よりも小さな値である。
次に、本実施形態の制動ECU56が実行する各種制御処理のうち、車輪FR,FL,RR,RLのスリップ(空回りも含む。)の抑制を図るためのトラクション制御処理ルーチンについて図5に示すフローチャート及び図6〜図9に示す各タイミングチャートに基づき説明する。なお、図6は、従来の技術において副変速機26がLレンジである場合のタイミングチャートであると共に、図8は、従来の技術において副変速機26がHレンジである場合のタイミングチャートである。また、図7は、本実施形態において副変速機26がLレンジである場合のタイミングチャートであると共に、図9は、本実施形態において副変速機26がHレンジである場合のタイミングチャートである。
さて、制動ECU56は、予め設定された所定周期毎(本実施形態では10msec.(ミリ秒)毎)にトラクション制御処理ルーチンを実行する。このトラクション制御処理ルーチンにおいて、制動ECU56は、レンジ検出センサSE2からの検出信号に基づき副変速機26のレンジを検出する(ステップS10)。したがって、本実施形態では、制動ECU56が、副変速機検出手段としても機能する。続いて、制動ECU56は、エンジン12側から車輪FR,FL,RR,RLに伝達される駆動力DWを演算する(ステップS11)。具体的には、制動ECU56は、上記AT用ECUから主変速機25の変速段に関する情報を受信する。また、制動ECU56は、エンジンECU21からエンジン12で発生するトルク、即ち運転手のアクセル操作に基づきエンジン12で発生したトルクに関する情報を受信する。このとき、後述する駆動力トラクション制御の実行中では、エンジンECU21からは、駆動力トラクション制御が実行されていない場合にエンジン12で発生し得るエンジン12のトルクに関する情報が制動ECU56に送信される。そして、制動ECU56は、以下に示す関係式(式1)を用いて上記駆動力DW(本実施形態では、路面とタイヤとの接地点における駆動力)を演算する。したがって、本実施形態では、制動ECU56が、駆動力演算手段としても機能する。また、ステップS11が、駆動力演算ステップに相当する。
[数1]
DW=TEG×G1×G2/R ・・・(式1)
ただし、DW…路面とタイヤとの接地点における駆動力(運転手が要求する駆動力)、TEG…エンジンで発生したトルク、G1…主変速機の変速段に対応するギヤ比、G2…副変速機のレンジに対応するギヤ比、R…タイヤの半径
そして、制動ECU56は、各車輪速度センサSE3〜SE6からの検出信号に基づき、車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWを個別に演算する(ステップS12)。続いて、制動ECU56は、ステップS12にて演算した各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWに基づき車両の車体速度VS(「推定車体速度」ともいう。)を演算する(ステップS13)。この点で、本実施形態では、制動ECU56が、車体速度演算手段としても機能する。そして、制動ECU56は、車輪FR,FL,RR,RLのスリップ状態を数値的に示すスリップ値としてのスリップ量Slpを演算すると共に、各車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量の平均値(以下、「スリップ平均値」という。)Xslpを演算する(ステップS14)。すなわち、車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量Slpは、車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWから車体速度VSを減算することにより求められる。したがって、本実施形態では、制動ECU56が、スリップ値演算手段としても機能する。また、ステップS12,S13,S14により、スリップ値演算ステップが構成される。
続いて、制動ECU56は、ステップS11で演算した駆動力DWに対応した制動制御開始閾値KBPを、図4に示すマップを用いて設定する(ステップS15)。例えば、駆動力DWが、第1駆動力基準値D1よりも大きく且つ第2駆動力基準値D2未満の値である第3駆動力基準値(他の駆動力基準値)D3未満であった場合、制動制御開始閾値KBPは、駆動力制御開始閾値KEG(=S3)よりも大きな値に設定される。一方、駆動力DWが第3駆動力基準値D3以下であった場合、制動制御開始閾値KBPは、駆動力制御開始閾値KEG(=S3)以下の値に設定される。したがって、本実施形態では、制動ECU56が、閾値設定手段としても機能する。また、ステップS15が、閾値設定ステップに相当する。
すなわち、従来の技術の場合、図6及び図8のタイミングチャートに示すように、制動制御開始閾値KBPは、上記駆動力DWの大きさに関係なく副変速機26のレンジに応じて設定される。具体的には、副変速機26のレンジがLレンジである場合、図6(a)(c)のタイミングチャートに示すように、制動制御開始閾値KBPは、比較的小さな値(例えば第2スリップ量S2)に設定される。一方、副変速機26のレンジがHレンジである場合、図8(a)(c)のタイミングチャートに示すように、制動制御開始閾値KBPは、Lレンジの場合に比して大きな値(例えば第1スリップ量S1)に設定される。
この点、本実施形態では、車両がスタック状態(即ち、駆動輪が砂地やぬかるみなどにはまってしまい、駆動輪が空回りし続ける状態)に陥ると、図7及び図9のタイミングチャートに示すように、上記駆動力DWの大きさに基づき制動制御開始閾値KBPが設定される。すなわち、副変速機26のレンジがLレンジである場合、図7(a)(c)のタイミングチャートに示すように、スタック状態(即ち、空回り状態)にある車輪に伝達される駆動力DWは、副変速機26がHレンジである場合に比して副変速機26のギヤ比が大きいため、少しのアクセル操作量で第1駆動力基準値D1よりも大きくなる(第1タイミングt21)。すると、制動制御開始閾値KBPは、駆動力DWが増加するに連れて次第に小さくなる。そして、第3タイミングt23が経過した時点では、上記駆動力DWは、第2駆動力基準値D2よりも大きくなる。この場合、制動制御開始閾値KBPは、上記駆動力DWがさらに増加しても第2スリップ量S2に維持される。
また、副変速機26のレンジがHレンジである場合、図9(a)(c)のタイミングチャートに示すように、スタック状態(即ち、空回り状態)にある車輪に伝達される駆動力DWは、副変速機26がLレンジである場合に比して副変速機26のギヤ比が小さいため、なかなか第1駆動力基準値D1よりも大きくならない。そのため、制動制御開始閾値KBPは、第1スリップ量S1に維持される。そして、アクセル操作量が多くなると、上記駆動力DWが第1駆動力基準値D1よりも大きくなり、制動制御開始閾値KBPは、第1スリップ量S1よりも小さい値に設定される(第1タイミングt41)。その後、引き続き上記駆動力DWが増加すると、上記駆動力DWが第2駆動力基準値D2よりも大きくなる(第2タイミングt42)。そのため、第2タイミングt42以降では、制動制御開始閾値KBPは、上記駆動力DWがさらに増加しても第2スリップ量S2に維持される。
図5のフローチャートに戻り、制動ECU56は、ステップS14にて演算したスリップ平均値Xslpが予め設定された駆動力制御開始閾値KEG以上であるか否かを判定する(ステップS16)。この判定結果が肯定判定(Xslp≧KEG)である場合、制動ECU56は、駆動力トラクション制御を実行させる旨の制御指令をエンジンECU21に送信する(ステップS17)。
上記制御指令を受信したエンジンECU21は、エンジン12にて発生するトルクを小さくする、即ち絞る駆動力トラクション制御を実行する。具体的には、エンジンECU21は、アクセル開度を、運転手によるアクセル操作量に相当する開度よりも小さくし、エンジン12にて発生するトルクを小さくする。すると、駆動力トラクション制御の実行によって車輪FR,FL,RR,RLに伝達される駆動力が小さくなる分、各車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量Slpがそれぞれ小さくなる。したがって、本実施形態では、制動ECU56及びエンジンECU21により、駆動力制御手段が構成される。そして、上記制御指令を送信した制動ECU56は、その処理を後述するステップS19に移行する。
なお、本実施形態において、駆動力トラクション制御の開始基準である駆動力制御開始閾値KEGは、上記駆動力DWが第3駆動力基準値D3(図4参照)以下である場合には制動制御開始閾値KBPよりも小さいため、駆動力トラクション制御の方が制動トラクション制御よりも優先的に実行される。一方、駆動力制御開始閾値KEGは、上記駆動力DWが第3駆動力基準値D3を超える場合には制動制御開始閾値KBPよりも大きいため、制動トラクション制御の方が駆動力トラクション制御よりも優先的に実行される。
一方、ステップS16の判定結果が否定判定(Xslp<KEG)である場合、制動ECU56は、駆動力トラクション制御の実行中である場合には該駆動力トラクション制御を終了させる旨の制御指令をエンジンECU21に送信する(ステップS18)。すると、上記制御指令を受信したエンジンECU21は、アクセル開度を、運転手によるアクセル操作量に相当する開度に徐々に接近させる。そして、上記制御指令を送信した制動ECU56は、その処理を次のステップS19に移行する。なお、駆動力トラクション制御が実行中ではない場合、制動ECU56は、ステップS18を実行することなく、その処理を次のステップS19に移行する。
ステップS19において、制動ECU56は、ブレーキスイッチSW1からの検出信号に基づきブレーキペダル15が操作されているか否かを判定する。この判定結果が肯定判定(SW1=「オン」)である場合、制動ECU56は、後述する制動トラクション制御の実行を停止させ(ステップS20)、トラクション制御処理ルーチンを一旦終了する。
一方、ステップS19の判定結果が否定判定(SW1=「オフ」)である場合、ステップS14で演算した各車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量SlpがステップS15にて設定された制動制御開始閾値KBP以上であるか否かを車輪毎に判定する(ステップS21)。この判定結果が肯定判定(少なくとも1つの車輪のスリップ量Slp≧KBP)である場合、制動ECU56は、スリップ量Slpが制動制御開始閾値KBP以上となる車輪(以下、「制御対象輪」ともいう。)に制動力BPを付与する制動トラクション制御を実行する(ステップS22)。すなわち、制動ECU56は、制御対象輪に対して、該制御対象輪のスリップ量Slpと制動制御開始閾値KBPとの差分に対応する大きさの制動力BPが付与されるように制動アクチュエータ40を作動させる。したがって、本実施形態では、制動ECU56が、制動制御手段としても機能する。また、ステップS22が、制動制御ステップに相当する。その後、制動ECU56は、トラクション制御処理ルーチンを一旦終了する。
ここで、従来の技術において副変速機26のレンジがLレンジである場合、図6(a)(b)のタイミングチャートに示すように、制動制御開始閾値KBPが第2スリップ量S2であるため、第1タイミングt11が経過した時点で制御対象輪のスリップ量Slpが制動制御開始閾値KBP以上になり、制御対象輪に制動力BPを付与する制動トラクション制御が開始される。すると、制御対象輪のスリップ量Slpの増加に伴い、制御対象輪に付与される制動力BPが大きくなる。そして、制御対象輪に付与される制動力BPは、第1制動力BP1まで大きくなった後、制御対象輪のスリップ量Slpの減少に伴い小さくなる。このように制動トラクション制御が実行されると、制御対象輪に対して十分な大きさの制動力BPが十分な時間付与されることから、車体速度VSが徐々に速くなる。そして、第2タイミングt12を経過した時点で、車両をスタック状態から完全に脱出させることができる。
一方、本実施形態では、副変速機26がLレンジである場合、図7(a)(b)のタイミングチャートに示すように、第1タイミングt21よりも遅く且つ第3タイミングt23よりも早い第2タイミングt22の時点で制御対象輪のスリップ量Slpが制動制御開始閾値KBP以上になり、制動トラクション制御が開始される。この際、第3タイミングt23は、上記駆動力DWが第2駆動力基準値D2となるタイミングであり、制動制御開始閾値KBPは、第3タイミングt23以降の上記駆動力DWの増加に関わらず第2スリップ量S2、即ち一定値に設定される。そのため、第3タイミングt23以降は、制動制御開始閾値KBPが第2スリップ量S2に維持されるため、制御対象輪には、従来の技術の場合と同じように制動力BPが付与される。そのため、制動トラクション制御の実行に基づき、制御対象輪に対して十分な大きさの制動力BPが十分な時間付与されることから、車体速度VSが徐々に大きくなる。そして、第3タイミングt23よりも遅い第4タイミングt24が経過すると、制御対象輪のスリップ量Slpが制動制御開始閾値KBP未満となり、制動トラクション制御が終了する。
また、従来の技術において副変速機26がHレンジである場合、図8(a)(b)のタイミングチャートに示すように、制動制御開始閾値KBPが第2スリップ量S2であるため、制御対象輪のスリップ量Slpは、なかなか制動制御開始閾値KBP以上にならない。そして、アクセル操作によって上記駆動力DWを大きくすると、上記第1タイミングt11や第2タイミングt22よりも遅い第1タイミングt31が経過した時点で制御対象輪のスリップ量Slpが制動制御開始閾値KBP以上になる。しかしながら、制動トラクション制御が実行されても直ぐに制御対象輪のスリップ量Slpが制動制御開始閾値KBP未満になってしまうため、制動トラクション制御の実行時間が短くなる。また、制動トラクション制御中に制御対象輪に対して付与される制動力BPは、第1制動力BP1よりも小さい第2制動力BP2である。そのため、制動トラクション制御が終了しても車両をスタック状態から脱出させることができない。
その後、第2タイミングt32以降において、運転手によるさらなるアクセル操作によって上記駆動力DWを大きくして制動トラクション制御を実行させても、制御対象輪には、第2制動力BP2よりも大きく且つ第1制動力BP1未満の第3制動力BP3しか付与できない。そのため、制動トラクション制御の実行時間は、上記制動力BPを第1制動力BP1だけ付与可能な場合に比して短い。その結果、車両をスタック状態から脱出させることができない。
したがって、副変速機26がHレンジである場合において車両がスタック状態になったときには、主変速機25のレンジをドライブレンジからニュートラルレンジに切替えた後に、副変速機26のレンジをLレンジに切替える。その後、再び主変速機25のレンジをドライブレンジに切替え、この状態でアクセル操作する必要がある。そのため、車両をスタック状態から脱出させるための運転手の操作が煩雑になってしまう。
この点、本実施形態では、副変速機26がHレンジである場合、図9(a)(b)のタイミングチャートに示すように、アクセル操作によって上記駆動力DWを大きくすることにより、車両をスタック状態から脱出させることができる。すなわち、制動制御開始閾値KBPが第1スリップ量S1に設定されている間は、従来の技術の場合と同様に、なかなか制動トラクション制御を実行させることができない。その一方で、運転手によるアクセル操作によって上記駆動力DWが第1駆動力基準値D1よりも大きくなると、制動制御開始閾値KBPは、上記駆動力DWが大きくなるに伴い小さくなる(第1タイミングt41)。そのため、第1タイミングt41で制動トラクション制御が実行されると、制動制御開始閾値KBPの低下に伴い、制御対象輪に付与される制動力BPが大きくなる。すなわち、制動トラクション制御の実行によって制御対象輪の車輪速度VWが遅くなっても、制動制御開始閾値KBPの低下によって制御対象輪のスリップ量Slpと該制動制御開始閾値KBPとの差分が大きくなると、制御対象輪に付与される制動力BPが大きくなる。
そして、制御対象輪に付与される制動力BPは、上記第1制動力BP1と略同等の第4制動力BP4が付与された後、制御対象輪のスリップ量Slpと制動制御開始閾値KBPとの差分の減少に伴い徐々に小さくなる。このように制動トラクション制御が実行されると、制御対象輪に対して十分な大きさの制動力BPが十分な時間付与されることから、車体速度VSが徐々に速くなる。そして、第2タイミングt42よりも遅い第3タイミングt43が経過すると、制御対象輪のスリップ量Slpが制動制御開始閾値KBP未満となり、制動トラクション制御が終了される。
図5に示すフローチャートに戻り、ステップS21の判定結果が否定判定(全ての車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量Slp<KBP)である場合、制動ECU56は、車輪FR,FL,RR,RLのスリップ状態が解消されたか否かを判定する(ステップS23)。具体的には、ステップS23では、車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量がほぼ「0(零)」になったか否かが判定される。そして、ステップS23の判定結果が否定判定である場合、制動ECU56は、制動トラクション制御の終了処理を実行し(ステップS25)、トラクション制御処理ルーチンを一旦終了する。
すなわち、図7(a)及び図9(a)のタイミングチャートに示すように、制御対象輪に付与される制動力BPが次第に小さくなるように制動アクチュエータ40が作動する。すると、制動トラクション制御によって制御対象輪の空回り状態がほぼ解消されているため、制御対象輪の車輪速度VWは、車両の車体速度VSに接近する。そして、図7の第5タイミングt25及び図9の第4タイミングt44で示すように、制御対象輪への制動力BPが「0(零)」になったときには、制御対象輪のスリップ量Slpはほぼ「0(零)」になっている。すなわち、スタック状態から脱出した車両は、運転手によるアクセル操作に応じた車体速度VSで走行する。
一方、ステップS23の判定結果が肯定判定である場合、制動ECU56は、トラクション制御処理ルーチンを一旦終了する。
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)車輪FR,FL,RR,RLがスリップ状態になった際において該スリップ状態を速やかに解消させたい場合には、運転手のアクセル操作などによってエンジン12側から車輪FR,FL,RR,RLに伝達される駆動力DWを大きくする。すると、上記駆動力DWが大きいほど、制動制御開始閾値KBPが小さな値に設定される。そのため、制動制御開始閾値KBPが上記駆動力DWによって変化しない場合に比して、速やかに制動トラクション制御が実行され、結果として、車輪FR,FL,RR,RLのスリップ状態が速やかに解消される。また、制動トラクション制御を開始させるために、車両に搭載された副変速機26のレンジ切替えなどのような煩雑な操作を行わなくてもよい。したがって、車両の運転手による操作の簡易化を図りつつ、スリップ状態にある車輪FR,FL,RR,RLに対して適切に制動力を付与できる。
(2)上記駆動力DWが第1駆動力基準値D1を超えた場合、制動制御開始閾値KBPは、第1スリップ量S1よりも小さい値に設定される。そのため、車輪FR,FL,RR,RLがスリップ状態である場合には、運転手によるアクセル操作などによって上記駆動力DWを大きくすることにより、制動トラクション制御を速やかに実行させることができる。
(3)運転手の意志によって上記駆動力DWを大きくした場合には、制動制御開始閾値KBPのほうが駆動力制御開始閾値KEGよりも小さいため、駆動力トラクション制御よりも優先的に制動トラクション制御が実行される。そのため、上記駆動力DWの大きさに関係なく駆動力トラクション制御が制動トラクション制御よりも優先的に実行される制御構成の場合とは異なり、必要に応じて制動トラクション制御を好適に実行させることができ、車両がスタック状態にある場合には、車両を確実にスタック状態から脱出させることができる。
(4)本実施形態では、車両がスタック状態になった場合、制動制御開始閾値KBPは、副変速機26のレンジに関係なく、運転手によるアクセル操作によって第1スリップ量S1よりも小さな値に設定可能である。そのため、副変速機26がHレンジであったとしても運転手によるアクセル操作のみで容易に制動トラクション制御を実行させることができる。換言すると、副変速機26のレンジ切替えなどの煩雑な操作を運転手に行わせることなく、車両をスタック状態から容易に脱出させることができる。また、副変速機26がLレンジである場合には、従来の技術と同様に、車両をスタック状態から速やかに脱出させることができる。
(5)また、本実施形態では、制動トラクション制御中であっても、上記駆動力DWの変動に応じて制動制御開始閾値KBPが変更される。そのため、車輪FR,FL,RR,RL(制御対象輪)には、その時点の車両状態に応じた適切な制動力BPを付与できる。したがって、車両をスタック状態から速やかに脱出させることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図10及び図11に従って説明する。なお、第2の実施形態は、駆動力制御開始閾値KEGを変更可能である点が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
本実施形態の制動ECU56のROM58には、図10に示すマップが記憶されている。すなわち、図10に示すマップは、制動制御開始閾値KBP及び駆動力制御開始閾値KEGを設定するためのマップであって、エンジン12側から車輪FR,FL,RR,RLに伝達される駆動力DW、即ち運転手が要求する駆動力と、車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量Slpとの関係を示している。
図10にて破線で示すように、上記駆動力DWが第1駆動力基準値D1(>「0(零)」)以下である場合、駆動力制御開始閾値KEGは、第2スリップ量S2よりも僅かに大きい第3スリップ量S3(例えば「6km/h」)に設定される。また、上記駆動力DWが第1駆動力基準値D1よりも大きく、且つ第2駆動力基準値D2以下である場合、駆動力制御開始閾値KEGは、上記駆動力DWが大きいほど大きな値に設定される。そして、上記駆動力DWが第2駆動力基準値D2よりも大きい場合、駆動力制御開始閾値KEGは、第1スリップ量S1よりも小さく且つ第3スリップ量S3よりも大きい第4スリップ量S4(例えば「8km/h」)に設定される。
次に、本実施形態のトラクション制御処理ルーチンについて、上記第1の実施形態の処理ルーチンと異なる部分を中心に図11に示すフローチャートに基づき説明する。
さて、トラクション制御処理ルーチンにおいて、制動ECU56は、上記ステップS10〜S15の各処理を順番に実行する。そして、制動ECU56は、ステップS11で演算した駆動力DWに対応した駆動力制御開始閾値KEGを、図10に示すマップを用いて設定する(ステップS151)。例えば、駆動力DWが、第1駆動力基準値D1よりも大きく且つ第2駆動力基準値D2未満の値である第3駆動力基準値D3未満であった場合、駆動力制御開始閾値KEGは、ステップS15にて設定した制動制御開始閾値KBPよりも小さな値に設定される。一方、駆動力DWが第3駆動力基準値D3以上であった場合、駆動力制御開始閾値KEGは、ステップS15にて設定した制動制御開始閾値KBP以上の値に設定される。したがって、本実施形態では、制動ECU56が、他の閾値設定手段としても機能する。その後、制動ECU56は、上記ステップS16以降の各処理を順番に実行する。
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)、(2)、(4)、(5)に加えて以下に示す効果を得ることができる。
(6)運転手の意志によって上記駆動力DWを大きくした場合には、該駆動力DWに基づき駆動力制御開始閾値KEGが大きな値に設定されるため、制動制御開始閾値KBPのほうが駆動力制御開始閾値KEGよりも大きくなり、駆動力トラクション制御よりも優先的に制動トラクション制御が実行される。そのため、上記駆動力DWの大きさに関係なく駆動力トラクション制御が制動トラクション制御よりも優先的に実行される制御構成の場合とは異なり、必要に応じて制動トラクション制御を好適に実行させることができ、車両がスタック状態にある場合には、車両を確実にスタック状態から脱出させることができる。
なお、各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・各実施形態において、副変速機26がLレンジである場合、制動制御開始閾値KBPは、上記駆動力DWの大きさに関係なく一定値としてもよい。すなわち、図12に示すように、上記ステップS14の処理が実行された後、制動ECU56は、副変速機26のレンジがLレンジであるか否かを判定する(ステップS141)。そして、制動ECU56は、判定結果が否定判定(Hレンジ)である場合にはその処理を上記ステップS15に移行する一方、判定結果が肯定判定(Lレンジ)である場合にはその処理を上記ステップS16に移行する。なお、副変速機26のレンジがLレンジである場合、制動制御開始閾値KBPは、所定値としての第2スリップ量S2であることが望ましい。
このように構成すると、副変速機26がLレンジである場合には、副変速機26がHレンジである場合に比してエンジン12側から車輪FR,FL,RR,RLに伝達される駆動力DWが大きくなり易いため、制動制御開始閾値KBPを変更しなくても速やかに制動トラクション制御を実行させることができる。そのため、上記構成では、副変速機26がHレンジである場合にのみ、上記駆動力DWの大きさに応じて制動制御開始閾値KBPが変更される。したがって、副変速機26がLレンジである場合にも制動制御開始閾値KBPを変更させる制御構成の場合に比して、制御負荷の増大を抑制できる。
・各実施形態において、副変速機26がLレンジである場合、駆動力トラクション制御の実行を規制してもよい。
・各実施形態において、制動トラクション制御が実行されていない場合、即ち各車輪FR,FL,RR,RLがスリップ状態ではない場合には、制動制御開始閾値KBPを上記駆動力DWに関係なく一定値としてもよい。すなわち、図13に示すように、上記ステップS14の処理が実行された後、制動ECU56は、制動トラクション制御中であるか否かを判定する(ステップS142)。この判定結果が肯定判定である場合、制動ECU56は、その処理を上記ステップS15に移行する。一方、判定結果が否定判定である場合、制動ECU56は、制動制御開始閾値KBPを第1スリップ量S1に設定し(ステップS143)、その処理を上記ステップS16に移行する。このように構成すると、制動トラクション制御の非実行中、即ち各車輪FR,FL,RR,RLがスリップ状態ではない場合に、制動制御開始閾値KBPが不必要に小さな値に設定されることが回避され、制動トラクション制御の誤作動を抑制できる。
・各実施形態において、車両がスタック状態から脱出し、既にスタック状態ではないと判定された場合には、制動制御開始閾値KBPを上記駆動力DWに関係なく一定値としてもよい。すなわち、図14に示すように、上記ステップS14の処理が実行された後、制動ECU56は、車両の車体速度VSが予め設定された車体速度閾値KVS(例えば「10km/h」)よりも高速度であるか否かを判定する(ステップS144)。この車体速度閾値KVSは、車両がスタック状態から脱出したか否かを判断するための値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。ステップS144の判定結果が否定判定(VS<KVS)である場合、制動ECU56は、その処理を上記ステップS15に移行する。一方、ステップS144の判定結果が肯定判定(VS≧KVS)である場合、制動ECU56は、制動制御開始閾値KBPを第1スリップ量S1に設定し(ステップS145)、その処理を上記ステップS16に移行する。この点、制動ECU56が、規制手段としても機能する。なお、図14に示すフローチャートにおいて、ステップS145を省略してもよい。
このように構成すると、車両の車体速度VSが車体速度閾値KVSよりも高速度である場合には、車両がスタック状態ではないと判定され、制動制御開始閾値KBPが上記駆動力DWに応じて小さい値に設定されることが規制される。そのため、車両がスタック状態ではない場合に、制動制御開始閾値KBPが小さい値に設定されることに起因して制動トラクション制御が不必要に実行されることを抑制できる。
・また、駆動トラクション制御が実行されない制御構成であってもよい。
・各実施形態において、制動トラクション制御中では、制動制御開始閾値KBPが制動トラクション制御開始時点の値に固定されるようにしてもよい。
・各実施形態において、車輪FR,FL,RR,RLのスリップ状態を数値的に示すスリップ値として、スリップ率(即ち、スリップ量を車体速度VSで除算した値)を用いてもよい。
・各実施形態において、駆動輪である各車輪FR,FL,RR,RLのスリップ量Slpの平均値(スリップ平均値Xslp)と制動制御開始閾値KBPとを比較し、該比較結果に応じて制動トラクション制御を実行可能な制御構成であってもよい。
・各実施形態において、車両を、副変速機26を搭載しない車両に具体化してもよい。
・また、車両を、前輪駆動車両や後輪駆動車両に具体化してもよい。このような車両において制動力トラクション制御が実行される場合には、駆動輪にのみ制動力BPが付与されることになる。
第1の実施形態における車両の概略構成を示すブロック図。 制動装置の一部を示すブロック図。 電気的構成を示すブロック図。 制動制御開始閾値を設定するためのマップ。 第1の実施形態におけるトラクション制御処理ルーチンを示すフローチャート。 従来の技術にて副変速機がLレンジである場合において、(a)は車体速度や車輪速度の変化を示すタイミングチャート、(b)は車輪に付与される制動力の変化を示すタイミングチャート、(c)はエンジン側から車輪に伝達される駆動力の変化を示すタイミングチャート。 第1の実施形態にて副変速機がLレンジである場合において、(a)は車体速度、車輪速度及び制動制御開始閾値の変化を示すタイミングチャート、(b)は車輪に付与される制動力の変化を示すタイミングチャート、(c)はエンジン側から車輪に伝達される駆動力の変化を示すタイミングチャート。 従来の技術にて副変速機がHレンジである場合において、(a)は車体速度や車輪速度の変化を示すタイミングチャート、(b)は車輪に付与される制動力の変化を示すタイミングチャート、(c)はエンジン側から車輪に伝達される駆動力の変化を示すタイミングチャート。 第1の実施形態にて副変速機がHレンジである場合において、(a)は車体速度、車輪速度及び制動制御開始閾値の変化を示すタイミングチャート、(b)は車輪に付与される制動力の変化を示すタイミングチャート、(c)はエンジン側から車輪に伝達される駆動力の変化を示すタイミングチャート。 制動制御開始閾値及び駆動力制御開始閾値を設定するためのマップ。 第2の実施形態におけるトラクション制御処理ルーチンの一部を示すフローチャート。 別の実施形態におけるトラクション制御処理ルーチンの一部を示すフローチャート。 他の別の実施形態におけるトラクション制御処理ルーチンの一部を示すフローチャート。 更なる別の実施形態におけるトラクション制御処理ルーチンの一部を示すフローチャート。
符号の説明
12…駆動源としてのエンジン、21…駆動力制御手段としてのエンジンECU、26…副変速機、56…スリップ値演算手段、駆動力演算手段、閾値設定手段、制動制御手段、駆動力制御手段、他の閾値設定手段、副変速機検出手段、車体速度演算手段、規制手段としての制動ECU、BP…制動力、D1…駆動力基準値としての第1駆動力基準値、D3…他の駆動力基準値としての第3駆動力基準値、DW…駆動力、FR,FL,RR,RL…駆動輪としての車輪、KBP…制動制御開始閾値、KEG…駆動力制御開始閾値、KVS…車体速度閾値、S1…基準開始値としての第1スリップ量、S2…所定値としての第2スリップ量、Slp…スリップ値としてのスリップ量、VS…車体速度、Xslp…スリップ平均値。

Claims (6)

  1. 車両の駆動源から駆動力が伝達される駆動輪がスリップ状態である場合に、該駆動輪に制動力を付与させるための制動トラクション制御を実行する制動制御手段と、前記駆動源から前記駆動輪に伝達される駆動力を小さくさせるための駆動力トラクション制御を実行する駆動力制御手段とを有する車両のトラクション制御装置であって、
    前記駆動輪のスリップ状態を数値的に示すスリップ値を演算するスリップ値演算手段と、
    運転手の要求に基づき前記駆動源から前記駆動輪に伝達される駆動力を演算する駆動力演算手段と、
    前記制動トラクション制御の開始基準である制動制御開始閾値を前記駆動力演算手段によって演算された駆動力が大きいほど小さな値に設定するとともに、前記駆動力トラクション制御の開始基準となる駆動力制御開始閾値を、前記駆動力演算手段によって演算された駆動力が大きいほど大きな値に設定する閾値設定手段とを備え、
    前記制動制御手段は、前記スリップ値演算手段によって演算されたスリップ値が前記閾値設定手段によって設定された前記制動制御開始閾値以上になった場合に、前記制動トラクション制御を実行し、
    前記駆動力制御手段は、前記スリップ値演算手段によって演算されたスリップ値が前記閾値設定手段によって設定された前記駆動力制御開始閾値以上になった場合に、前記駆動力トラクション制御を実行し、
    前記閾値設定手段は、
    前記駆動力演算手段によって演算された駆動力が予め設定された駆動力基準値以下である場合には、前記駆動力制御開始閾値を前記制動制御開始閾値よりも小さな値に設定する一方、
    前記駆動力演算手段によって演算された駆動力が前記駆動力基準値以上の値に予め設定された他の駆動力基準値を超えた場合には、前記駆動力制御開始閾値を前記制動制御開始閾値以上の値に設定する車両のトラクション制御装置。
  2. 前記閾値設定手段は、
    前記駆動力演算手段によって演算された駆動力が前記駆動力基準値以下である場合には、前記制動制御開始閾値を予め設定された基準開始値に設定する一方、
    前記駆動力演算手段によって演算された駆動力が前記駆動力基準値を超えた場合には、前記制動制御開始閾値を前記基準開始値よりも小さい値に設定する請求項1に記載の車両のトラクション制御装置。
  3. 前記閾値設定手段は、前記駆動輪が非スリップ状態である場合には、前記制動制御開始閾値を基準開始値に設定する請求項2に記載の車両のトラクション制御装置。
  4. 前記車両には、駆動力の伝達経路上において前記駆動源と前記駆動輪との間に配置される副変速機が設けられると共に、
    前記副変速機に設定される変速段を検出する副変速機検出手段をさらに備え、
    前記閾値設定手段は、
    前記副変速機検出手段によって前記副変速機の変速段が駆動力の伝達効率の高い高変速段であると検出された場合には、前記制動制御開始閾値を予め設定された基準開始値よりも小さい所定値に設定する一方、
    前記副変速機検出手段によって前記副変速機の変速段が高変速段以外の変速段であることが検出された場合には、前記制動制御開始閾値を前記駆動力演算手段によって演算された駆動力に応じた値に設定する請求項〜請求項のうち何れか一項に記載の車両のトラクション制御装置。
  5. 車両の車体速度を演算する車体速度演算手段と、
    該車体速度演算手段によって演算された車体速度が予め設定された車体速度閾値を超える場合に、前記制動制御開始閾値を前記閾値設定手段によって小さい値に設定することを規制する規制手段と
    をさらに備えた請求項1〜請求項のうち何れか一項に記載の車両のトラクション制御装置。
  6. 車両の駆動源から駆動力が伝達される駆動輪がスリップ状態である場合に、該駆動輪に制動力を付与させるための制動トラクション制御を実行させるとともに、前記駆動源から前記駆動輪に伝達される駆動力を小さくさせるための駆動力トラクション制御を実行させる車両のトラクション制御方法であって、
    前記駆動輪のスリップ状態を数値的に示すスリップ値を演算させるスリップ値演算ステップと、
    前記駆動源から前記駆動輪に伝達される駆動力を演算させる駆動力演算ステップと、
    前記制動トラクション制御の開始基準である制動制御開始閾値を前記駆動力演算ステップにて演算した駆動力が大きいほど小さな値に設定させるとともに、前記駆動力トラクション制御の開始基準となる駆動力制御開始閾値を、前記駆動力演算ステップにて演算した駆動力が大きいほど大きな値に設定させる閾値設定ステップと、
    前記スリップ値演算ステップにて演算したスリップ値が前記閾値設定ステップにて設定した前記制動制御開始閾値以上になった場合に、前記制動トラクション制御を実行させる制動制御ステップと
    前記スリップ値演算ステップにて演算したスリップ値が前記閾値設定ステップにて設定した前記駆動力制御開始閾値以上になった場合に、前記駆動力トラクション制御を実行させる駆動力制御ステップとを有し、
    前記閾値設定ステップでは、
    前記駆動力演算ステップにて演算した駆動力が予め設定された駆動力基準値以下である場合には、前記駆動力制御開始閾値を前記制動制御開始閾値よりも小さな値に設定させる一方、
    前記駆動力演算ステップにて演算した駆動力が前記駆動力基準値以上の値に予め設定された他の駆動力基準値を超えた場合には、前記駆動力制御開始閾値を前記制動制御開始閾値以上の値に設定させる車両のトラクション制御方法。
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