JP5298316B2 - 水生昆虫由来のシルクナノファイバー及びシルク複合ナノファイバー、並びにその製造方法 - Google Patents

水生昆虫由来のシルクナノファイバー及びシルク複合ナノファイバー、並びにその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、水生昆虫由来のシルクナノファイバー、及びシルク複合ナノファイバー、並びにその製造方法に関し、特に、水生昆虫由来のシルク(注:カイコのシルクとは全く化学組成の異なる物質であり、以下、「カイコのシルク」と記載しない限り、本発明におけるシルクは、水生昆虫由来の物質を意味する)から得られる画分を含むドープ(以下、画分を溶解するために使用した溶媒をドープと略記することもあり、シルクドープ又はシルクタンパク質ドープと略記することもある)を用いてなるシルクナノファイバー、及びシルクドープに水溶性高分子ドープ及び/又は界面活性剤を添加してなるシルクタンパク質複合ドープを用いてなるシルク複合ナノファイバー、並びにこれらのシルクタンパク質ドープ及びシルクタンパク質複合ドープを、それぞれ用いてエレクトロスピニングによりシルクナノファイバー及びシルク複合ナノファイバーを製造する方法に関する。
シルクは、カイコ、クモ、水生昆虫類がつくる繊維状のタンパク質の総称である。有用昆虫のカイコがつくるシルクは古くより知られており、衣料材料等として長く愛用されていると共に、近年、カイコのシルクからナノファイバーを製造する試みがなされつつある。しかし、水生昆虫類由来のシルクを用いてナノファイバーをつくることは提案されていない。
水生昆虫類には、多くの分類群、例えばトビケラ目(毛翅目)(Trichoptera)、チョウ目(鱗翅目)(Lepitoptera)、及びハエ目(双翅目)(Diptera)等が含まれ、このうちトビケラ目及び双翅目の幼虫は水中で絹糸繊維を吐出するものが多い。最もよく知られているものはトビケラ目であり、その中でも幼虫のサイズが大きく、体内から得られるシルクタンパク質が多量なのはヒゲナガカワトビケラ(Stenopsyche marmorata)である。これらの水生昆虫の幼虫は成熟し、5齢期の後期に水中でタンパク質の絹糸を吐くので、水生昆虫が吐いた絹糸を利用することができるし、幼虫体内から取り出した液状のシルクタンパク質を用いても同様に利用できる。
上記したように、水生昆虫には水中で繊維を吐く昆虫があり、水中でシルク繊維を作るミズグモの他、ヒゲナガカワトビケラ幼虫等が例示できる。
ヒゲナガカワトビケラは毛翅目に分類されており、トビケラ目ヒゲナガカワトビケラ科である。トビケラ類の幼虫は、体の形でカンボディア型と蚕児型とに分けられる。前者には流水域に生息するものが多く、後者には止水域に生息するものが多い。
上記ヒゲナガカワトビケラの幼虫は、全国・各地に広く分布し、水生昆虫の中でも体長の大きい種群である。成長過程で齢を重ねて5齢の終齢幼虫となると、体長が3〜4cmとなる。また、ヒゲナガカワトビケラ幼虫は、5齢幼虫になると清流の底の石の下、石と石の間や砂礫の裏側に吐糸して幼虫が住む巣室と、水中に浮遊し流下する小動物を捕獲する捕獲網がその前面に張られる。
ヒゲナガカワトビケラ幼虫由来のシルクの主要なアミノ酸組成は、グリシン、アラニン、セリン等の疎水性アミノ酸であり、その他、シルク分子の両端には、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン等の親水性アミノ酸が存在する。
ヒゲナガカワトビケラ幼虫が吐き出す繊維は、ヒゲナガカワトビケラ幼虫体内の液状シルクを水中という特殊な環境で繊維化する点で極めて特徴的な繊維である。こうしたヒゲナガカワトビケラ幼虫のシルクの特徴を活かすことにより、水中で固化するセメントあるいは医工分野で利活用可能な生体接着剤への応用が将来的に期待できる。また、ヒゲナガカワトビケラのシルク繊維は新たな機能を持つ繊維素材に応用できる。
水生の毛翅目昆虫幼虫は水棲であり、水中という特殊環境で繊維を吐糸する。この繊維の原料は、水生昆虫体内の絹糸腺内の液状絹である。毛翅目昆虫のシルク繊維は、水分を含んだ後も機械的特性の劣化が無いという特異的な機能を持つ(注:通常、繊維高分子は水を吸うと伸びることが一般的である)。
この水生昆虫由来のシルクのアミノ酸配列、それをコードする遺伝子の塩基配列は解明されていない。しかし、毛翅目昆虫に由来するフィブロインH鎖タンパク質及び該タンパク質をコードする遺伝子、並びに該タンパク質の作製方法は知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、電気泳動の分子量からフィブロインH鎖であると同定している。
水生昆虫のヒゲナガカワトビケラ幼虫のシルクは、H鎖フィブロイン(Heavy chain fibroin)、L鎖フィブロイン(Light chain fibroin)、フィブロヘキサメリン(Fibrohexamerin)が6:6:1のモル比から構成されていることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
紡糸方法の一つである「エレクトロスピニング」は、試料ドープから超微細なナノファイバーを製造するための有効な手法であり、エレクトロスピニングで製造できる超微細繊維であるナノファイバーは様々な産業界から関心が寄せられている。
エレクトロスピニングでは、ポリマー溶液貯蔵タンクに水溶性高分子ドープを入れ、水溶性高分子ドープに陽極を印加し、陰極の金属コレクターを接地することで電極間に生ずる電気引力がポリマー溶液の表面張力を越える時、ポリマージェットが紡糸ノズルから陰極板に向かって放出され、その結果、微細繊維が陰極板上に吐糸・紡糸されることで、繊維径がナノ〜マイクロメートルオーダーの繊維・繊維集合体が製造できる。これがエレクトロスピニングの原理である。
高分子化合物を溶媒に溶かして製造できる高分子ドープをエレクトロスピニングして表面積が広いナノファイバーを作る場合、このナノファイバーを理工学分野で広く利用するためには、繊維径が超微細であり、繊維径のバラツキが少ないもの程、利用価値が高く、精度の高い素材として重宝される。
水生昆虫のシルクタンパク質から極細のシルクナノファイバー、又はこのシルクタンパク質に第2物質を添加したものから極細のシルク複合ナノファイバーを簡便に製造するための経済的で、かつ効率的な開発技術の出現が強く望まれてきた。
微粒子・粉体を原料として使用する技術分野は、塗料、土木・建築、医薬品、農薬、化粧品、食品、トナー、コーティング剤、エレクトロセラミックス等、多岐にわたる。それらの各種製品に高付加価値を付すための超微粒子化、表面改質、複合化等において、微粒子・粉体の機能化が大きく寄与している。多岐にわたる微粒子の製造法と注目を集める新たな微粒子の動向、レオロジー、情報・メディア、生体・医療、光、ファインケミカル等広範な応用展開の構成が開示されている(例えば、非特許文献2参照)。これらのファインケミストリーでは、微粒子経が揃ったものは最先端の機能素材として利用できる。
上記エレクトロスピニングにより本発明の対象である水生昆虫のシルク(水生昆虫のフィブロインを意味する)からナノファイバーを製造する際には、水生昆虫のシルクをどのように単離してエレクトロスピニングに適した試料をいかに経済的に、しかも効率的に製造することができるかが重要であると共に、ドープ濃度、印加電圧値、陽極−陰極間距離(紡糸距離)、紡糸速度等の紡糸条件を変えながら、最適製造条件を検討することが必要である。このように、水生昆虫由来のシルクを用いてナノファイバーを製造する場合には、試料作製から紡糸に至る全ての過程では試行錯誤で最適な条件を探索する必要があり、甚だ困難な作業を経なければならない。また、水生昆虫由来のシルクドープは、温度の変化、タンパク質の濃度変化等によりゲル化を起こし易いという本質的な問題を抱えている。すなわち、タンパク質ドープを室温に長時間放置したり、タンパク質ドープ温度が低下したりすると、タンパク質ドープがゲル化するため、エレクトロスピニングの際に、紡糸ノズル付近でタンパク質ドープが目詰まりを起こしてしまい、太さ斑が無く微細なシルクナノファイバー(タンパク質ナノファイバー)を製造することができないという問題がある。
そのため、水生昆虫由来のシルクタンパク質から極細のシルクナノファイバーや極細のシルク複合ナノファイバーであって、繊維径がそろい、繊維径分布の狭い、すなわち繊維径のバラツキの少ない素材及びその素材の経済的で、かつ効率的な製造方法の出現が強く望まれてきた。しかしながら、水生昆虫に由来するシルクタンパク質を素材化するために、エレクトロスピニングによりシルクナノファイバーやシルク複合ナノファイバーを製造しようとする試みは、従来、全くなされていない。
特開2006−42620号公報
Inoue S. Tanaka, K. Arisaka F et al., Silk fibroin of Bombyx mori is secreted, assembling a high molecular mass elementary unit, J. Biol. Chem., 275: 40517-40528 (2000) 微粒子・粉体の作製と応用CMCテクニカルライブラリー211 川口春馬/監修)
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、水生昆虫由来のシルクから得られた画分を用いて製造された、極細の平均繊維径及びバラツキの少ない繊維径を有し、かつ紡糸状態が良好であるシルクナノファイバー、及びシルク複合ナノファイバーを提供すると共に、その製造方法を提供することにある。このようなナノファイバーは、各種産業資材として有用である。
本発明者らは、水生昆虫が水中で吐糸してなる繊維状物を溶媒に溶解してシルクドープを製造するのではなく、水生昆虫体内の絹糸腺内のタンパク質を溶媒に溶解してなる高分子量のシルクドープをエレクトロスピニングする条件に関して種々検討し、さらにシルクドープに第2物質の水溶液を加えたシルク複合体ドープがエレクトロスピニングに適する材料かどうかを鋭意検討した結果、水溶液状のシルクドープ、又はシルクドープに第2物質を混合したシルク複合ドープをエレクトロスピニングすることにより、シルクナノファイバー又はシルク複合ナノファイバーを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明においては、カイコの絹糸を有機溶媒で溶かしてシルクドープを得る工程とは異なり、水生昆虫体内の絹糸腺内のタンパク質の画分であるシルクドープをエレクトロスピニング装置のポリマー溶液貯蔵タンクに入れてエレクトロスピニングすることにより所望のシルクナノファイバーが製造でき、また、水生昆虫のシルクドープと第2物質のドープとを機械的に混合し、その後水分を蒸発せしめることで調整した所定濃度のシルク複合ドープをエレクトロスピニング装置のポリマー溶液貯蔵タンクに入れてエレクトロスピニングすることにより所望のシルク複合ナノファイバーが製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明のシルクナノファイバーは、水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分からなることを特徴とする。
上記シルクナノファイバーにおいて、水生昆虫が、トビケラ目(毛翅目)、鱗翅目、及び双翅目に属する昆虫から選ばれたものであることを特徴とする。
上記シルクナノファイバーにおいて、水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分を有するシルクドープをエレクトロスピニングしてなることを特徴とする。
上記シルクナノファイバーにおいて、シルクドープが、フィブロインH鎖の画分をトリフルオロ酢酸(TFA)、蟻酸(FA)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)、ヘキサフルオロアセトン水和物、及びFS溶液から選ばれた溶媒に溶解されてなるものであることを特徴とする。
上記シルクナノファイバーにおいて、画分が、350kDaから300kDaにフィブロインH鎖の幅広いスメアなバンドを有するもの、又は320〜310kDaにフィブロインH鎖のバンドを有するものであることを特徴とする。
本発明のシルクナノファイバーの製造方法は、水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分を有するシルクドープを調製した後、このシルクドープを用いてエレクトロスピニングすることによりシルクナノファイバーを製造することを特徴とする。
上記シルクナノファイバーの製造方法において、水生昆虫が、トビケラ目(毛翅目)、鱗翅目、及び双翅目に属する昆虫から選ばれたものであることを特徴とする。
上記シルクナノファイバーの製造方法において、前記シルクドープが、フィブロインH鎖の画分をトリフルオロ酢酸、蟻酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロアセトン水和物、及びFS溶液から選ばれた溶媒に溶解されたものであることを特徴とする。
上記シルクナノファイバーの製造方法において、シルクドープのエレクトロスピニングを20〜45℃で行うことを特徴とする。
本発明のシルク複合ナノファイバーは、水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分と、水溶性高分子及び非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種とからなることを特徴とする。
ここで、水溶性高分子及び非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種とは、水溶性高分子又は非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種、水溶性高分子から選ばれた少なくとも1種と非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種との組み合わせを含むものとする。「水溶性高分子及び非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種」とは、本発明において、以下同じである。
上記シルク複合ナノファイバーにおいて、水生昆虫が、トビケラ目(毛翅目)、鱗翅目、及び双翅目に属する昆虫から選ばれたものであることを特徴とする。
上記シルク複合ナノファイバーにおいて、水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分を有するシルクドープと水溶性高分子及び非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種のドープとの混合ドープをエレクトロスピニングしてなることを特徴とする。
上記シルク複合ナノファイバーにおいて、シルクドープが、フィブロインH鎖の画分をトリフルオロ酢酸、蟻酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロアセトン水和物、及びFS溶液から選ばれた溶媒に溶解されてなるものであることを特徴とする。
上記シルク複合ナノファイバーにおいて、水溶性高分子が、カイコ由来のシルクタンパク質、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
上記シルク複合ナノファイバーにおいて、非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
上記シルク複合ナノファイバーにおいて、画分が、350kDaから300kDaにフィブロインH鎖の幅広いスメアなバンドを有するもの、又は320〜310kDaにフィブロインH鎖のバンドを有するものであることを特徴とする。
本発明のシルク複合ナノファイバーの製造方法は、水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分を有するシルクドープに、水溶性高分子及び非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種を添加してシルク複合ドープを調製した後、このシルク複合ドープを用いてエレクトロスピニングすることによりシルク複合ナノファイバーを製造することを特徴とする。ここで、水溶性高分子及び非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種とは、上記した通りである。
上記シルク複合ナノファイバーの製造方法において、水生昆虫が、トビケラ目(毛翅目)、鱗翅目、及び双翅目に属する昆虫から選ばれたものであることを特徴とする。
上記シルク複合ナノファイバーの製造方法において、シルクドープが、フィブロインH鎖の画分をトリフルオロ酢酸、蟻酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロアセトン水和物、及びFS溶液から選ばれた溶媒に溶解されたものであることを特徴とする。
上記シルク複合ナノファイバーの製造方法において、水溶性高分子が、カイコ由来のシルクタンパク質、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
上記シルク複合ナノファイバーの製造方法において、非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
上記シルク複合ナノファイバーの製造方法において、シルク複合ドープのエレクトロスピニングを20〜45℃で行うことを特徴とする。
本発明によれば、水生昆虫から製造されるシルクナノファイバー及びシルクナノファイバーの平均繊維径が微細となり、繊維径のバラツキが少なく、紡糸状態も良好であるという効果を奏することができる。
実施例2で得られた、水生昆虫由来のシルクから単離したフィブロインH鎖を含むP2画分のSDS−PAGE写真。 実施例2で得られた、水生昆虫由来のシルクから精製したフィブロインH鎖を含むP2画分のDSC曲線。 実施例2で得られた、水生昆虫由来のシルクから精製したフィブロインH鎖を含むP2画分のFTIRスペクトル。 本発明で用いることができるフィブロインH鎖タンパク質粉末の外観を示す写真。 フィブロインH鎖タンパク質粉末の形状を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像。 実施例8により調製したフィブロインタンパク質含有画分のCTAB−PAGE電気泳動とフィブロイン様タンパク質(Smsp−1)の分子量推定。 実施例8により調製したフィブロインタンパク質含有画分P3’のゲル濾過分析結果(ゲル濾過画分のCTAB−PAGE解析)。 シルクナノファイバーのSEM画像であり、(a)は×5.0kの画像であり、(b)は(a)におけるA部分の拡大画像(×15k)である。
本発明に係るシルクナノファイバーの実施の形態によれば、このナノファイバーは、トビケラ目(毛翅目)、鱗翅目、及び双翅目に属する昆虫から選ばれた水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖を含む画分、例えば、以下の実施例で示すフィブロインH鎖を含むP2画分、P3画分、及びP3’画分をトリフルオロ酢酸(TFA)、蟻酸(FA)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)、ヘキサフルオロアセトン水和物、及びFS溶液から選ばれた溶媒に溶解されてなるシルクドープをエレクトロスピニングしてなる。前記P2画分及びP3’画分は、それぞれ、350kDaから300kDaにフィブロインH鎖の幅広いスメアなバンドを有するもの、及び320〜310kDaにフィブロインH鎖のバンドを有するものである。
本発明では、例えば、水生昆虫の絹糸腺内のシルクを精製してフィブロインH鎖を多く含むP2画分を単離して用いているが、このP2画分はいままで知られていなかった。このP2画分を単離し得た理由は、次のような技術的発明をした結果である。水生昆虫の絹糸腺内のシルクは、尿素で一部可溶化するが、溶解度を更に高めるために還元剤であるジチオスレイトール(DTT)を併用した。同時に、ロイペプチン及びGly−Tyr−Glyを作用させることでフィブロンH鎖の分子量低下が抑制され、高分子量のフィブロインH鎖を含む水生昆虫シルク(P2画分等)を作製することが世界に先駆けて可能となった。
タンパク質分解酵素阻害剤であるロイペプチンは、シルクタンパク質であるフィブロインH鎖の分子量低下を抑制する働きがある。ロイペプチンを使用しない場合、フィブロインH鎖は低分子化する懸念があるため、高分子量のフィブロインH鎖を含む水生昆虫シルク(P2画分等)を調製する全ての実験過程においてロイペプチンは必要不可欠である。ジチオスレイトールは、シルク分子の分子間、分子内のS−S結合を還元するための還元剤であり、S−S結合に作用し、その結果、SH SHと解離させる。ジチオスレイトールに代わって同じ目的で使用可能な試薬には、メルカプトエタノールがあるが、安全性、環境保全、作業環境保護の立場からジチオスレイトールの使用が好ましい。メルカプトエタノール使用の1/5程度の微量で済むジチオスレイトールが好ましく用いられる。
また、本発明に係るシルクナノファイバーの製造方法の実施の形態によれば、このナノファイバーは、トビケラ目(毛翅目)、鱗翅目、及び双翅目に属する昆虫から選ばれた水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖を含む画分、例えば、以下の実施例で示すフィブロインH鎖を含むP2画分、P3画分、及びP3’画分をトリフルオロ酢酸、蟻酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロアセトン水和物、及びFS溶液から選ばれた溶媒に溶解させてシルクドープ、すなわち、フィブロインH鎖画分のTFA、FA及びHFIP等のドープを調製した後、このシルクドープを用いて所定の温度(例えば、20〜45℃、好ましくは30〜45℃)で行うことにより製造することができる。
さらに、本発明に係るシルク複合ナノファイバーの実施の形態によれば、トビケラ目(毛翅目)、鱗翅目、及び双翅目に属する昆虫から選ばれた水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖を含む画分、例えば、以下の実施例で示すフィブロインH鎖を含むP2画分、P3画分、及びP3’画分をトリフルオロ酢酸、蟻酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロアセトン水和物、及びFS溶液から選ばれた溶媒に溶解してなるシルクドープと、カイコ由来のシルクタンパク質、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも1種である水溶性高分子、並びにポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルから選ばれた少なくとも1種である非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種のドープとの混合ドープを所定の温度(例えば、20〜45℃、好ましくは30〜45℃)でエレクトロスピニングしてなる。
ここで、水溶性高分子及び非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種とは、上記したように、水溶性高分子又は非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種、水溶性高分子から選ばれた少なくとも1種と非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種との組み合わせを含むものとする。以下同じ。
さらにまた、本発明に係るシルク複合ナノファイバーの製造方法の実施の形態によれば、このシルク複合ナノファイバーは、トビケラ目(毛翅目)、鱗翅目、及び双翅目に属する昆虫から選ばれた水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分、例えば、以下の実施例で示すフィブロインH鎖を含むP2画分、P3画分、及びP3’画分をトリフルオロ酢酸、蟻酸、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールから選ばれた溶媒に溶解して得られたシルクドープに、カイコ由来のシルクタンパク質、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも1種である水溶性高分子、並びにポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(例えば、和光純薬工業製商品名、Tween 20)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(例えば、和光純薬工業製商品名Triton X−100)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルから選ばれた少なくとも1種である非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種のドープを添加してシルク複合ドープを調製した後、このシルク複合体ドープを用いて所定の温度(例えば、20〜45℃、好ましくは30〜45℃)でエレクトロスピニングすることによりを製造することができる。
以下、上記実施の形態について詳細に説明する。
本発明において、吐糸するシルクからフィブロインH鎖を含む画分を得るために用いるトビケラ目(毛翅目)に属する水生昆虫としては、例えば、ヒゲナガカワトビケラ、ウルマーシマトビケラ、チャバネヒゲナガカワトビケラ等を挙げることができ、チョウ目(鱗翅目)に属する水生昆虫としては、例えばミズメイガ類等を挙げることができ、また、ハエ目(双翅目)に属する水生昆虫由来としては、例えば、ユスリカ類、ブユ類、ガガンボ類等を挙げることができる。これらのうち、幼虫のサイズが大きく、昆虫の体内から得られるシルクタンパク質が多量なヒゲナガカワトビケラ、チャバネヒゲナガカワトビケラ等が好ましい。
本発明によれば、水生昆虫由来のシルク内のフィブロインH鎖を含む画分、例えば、以下の実施例で示すフィブロインH鎖を含むP2画分、P3画分、及びP3’画分を有機溶媒に溶解させて得られるシルクドープ自体を用いて、又はこのシルクドープに上記した水溶性高分子ドープ及び/又は非イオン界面活性剤を添加した混合ドープを用いてエレクトロスピニングすることにより、目的とするシルクナノファイバー及びシルク複合ナノファイバーを製造している。
このフィブロインH鎖を含む画分は以下のようにして調製し、確認した。
水生昆虫の絹糸腺内のシルクを経済的に効率的に画分してP2を単離する概略は次のとおりである。
水生昆虫の体内から取り出した絹糸腺内のシルクは水に触れることで凝固する性質があるため、シルクを尿素水溶液と接触させてシルクの分子間、分子内の水素結合を破壊して水への溶解性を最大限高めることが必要である。また、水への溶解性を更に高めるため、還元剤としてジチオスレイトールの添加や、水溶液のpHを弱アルカリ性条件にする必要がある。続いて、水生昆虫のシルクが酸性条件下で沈殿する性質を利用して、酢酸溶液に対して透析することで得られた沈殿物を回収する。さらに沈殿物に含まれる酸を除去するため1mM ロイペプチンを含む水溶液で洗浄した後、凍結乾燥したものがP2画分である。
上記フィブロインH鎖を含む画分を溶解してシルクドープを調製するために用いる溶媒について以下述べる。
本発明における水生昆虫由来のシルクは、例えば水生昆虫の絹糸腺に由来するシルクタンパク質を単離してなるフィブロインH鎖の画分(例えば、実施例記載のP2画分、P3画分、P3’画分)を含んでいる。この画分を溶解すべき適切な溶媒を探索することが、エレクトロスピニングを行うためには必要不可欠である。溶媒の選択が適切でないと、一旦溶解して調製されたかに見えたシルクドープを室温で静置する過程で、試料分子間に水素結合が形成され、それに基づき分子間で架橋反応が起こり、水生昆虫の絹糸腺に由来するシルクタンパク質はゲル化を起こしてしまい、エレクトロスピニング用のドープとはならない場合がある。そのためにも、水生昆虫の絹糸腺に由来するシルクタンパク質を溶解する有機溶媒を正しく選択すると共に、実施例に記載したようにシルクタンパク質ドープを加熱すること等によりシルクタンパク質のゲル化を防止する技術的な工夫が必要となる。
エレクトロスピニングにより水生昆虫のシルクナノファイバーを製造するには、水生昆虫のシルクタンパク質ドープを効率的、かつ経済的に、しかも良好な作業環境下、簡単な製造工程で調製できることが重要な要件である。そのためにも、作業環境を悪化させない溶媒でドープを製造することが望ましい。
水生昆虫由来のシルクタンパク質を溶解する溶媒がHFIPであると、溶解後にシルクタンパク質がゲル化してしまい、エレクトロスピニングできない場合があるので、その場合には、エレクトロスピニング時に水生昆虫由来のシルクタンパク質ドープをゲル化しないように加熱することが必要となる。
ゲル化を起こしやすいという本質的な特徴を持つ水生昆虫由来のシルクタンパク質ドープを用いてエレクトロスピニングし、平均繊維径や繊維径分布の制御されたシルクナノファイバーやシルク複合ナノファイバーを製造するためには、最適な溶媒を選び、ドープをエレクトロスピニングする時の試料ドープ温度、エレクトロスピニングの紡糸条件等の最適化を図るべきである。本発明によれば、これらの問題を解決することができる経済的で、かつ効率的なシルクナノファイバー及びシルク複合ナノファイバーの製造技術を提供できる。
水生昆虫由来のシルクから単離したフィブロインH鎖を含む画分、及び水生昆虫が吐糸する繊維を溶解する溶媒には、上記したTFA、HFIP、及びFA等の他に、FS水溶液(1mM ロイペプチン)等がある。ここで、FS水溶液は、尿素とTris−HCl(pH8.0)を含んでおり、シルクタンパク質を可溶化させるためには、尿素の存在と弱アルカリ性条件下であることが必要である。上記溶媒中で、水生昆虫由来のシルクタンパク質を効率よく溶解し、エレクトロスピニング用のドープを調製できる最も好ましい溶媒はTFA及びFAである。この溶媒の場合、室温で、2〜3時間でシルクタンパク質を溶解して均一なドープを調製できる。
水生昆虫体内から取り出した絹糸腺内のシルクタンパク質を精製し、フィブロインH鎖を多く含む画分(例えば、実施例記載のP2画分等)を溶解する有機溶媒は、TFA、HFIP、FA、ヘキサフルオロアセトン水和物又はFS水溶液である。この中で好ましい有機溶媒は、TFA及びFAであり、最も好ましいのはTFAである。
フィブロインH鎖を多く含む画分をHFIPで溶解する場合、室温では、水生昆虫のシルクタンパク質濃度が低い時にはドープを調製できるが、濃度が3wt%以上になると室温では白濁したり、懸濁してしまう。水生昆虫のシルクタンパク質が白濁する現象は、試料温度を上げれば解消する。シルクタンパク質の溶解は40℃以上で効率良く溶解できるが、溶解時の温度が次第に下がり25℃となると画分が(例えば、実施例記載のP2画分)ゲル化してしまい、エレクトロスピニングすると、試料が紡糸ノズルで詰まってしまい、エレクトロスピニングができなかったり、紡糸状態が不安定となったりする。そのため、溶媒にHFIPを使用する場合には、水生昆虫のシルクドープがゲル化しない紡糸温度でエレクトロスピニングすることが効率的である。
加熱温度は、使用する溶媒の沸点を考慮して決めるとよい。TFA、HFIP及び蟻酸の沸点は、それぞれ、72.4℃、59℃及び101℃である。水生昆虫由来のシルクタンパク質ドープがゲル化しない温度とは、試料を溶解する有機溶媒の沸点より低い温度領域で、かつ高めの温度が望ましく、TFA、HFIPの使用時は、30〜45℃が好ましい。
エレクトロスピニングする際の前記紡糸温度が室温(20℃)未満であると、シルクタンパク質ドープがゲル化してしまい、エレクトロスピニングできず、30℃を超えるに従って紡糸状態が良好になり、また、紡糸温度が50℃を超えると、シルクタンパク質を溶解する溶媒の蒸気圧が高まり、そのために、シルクドープが入った容器から溶媒蒸気が出ることとなり、発生する蒸気を作業者が吸引することによる健康上の問題が生じるというリスクがあり、製造技術上好ましくない。45℃程度であればそのような問題はない。従って、紡糸する際のドープ温度は、20〜45程度が好ましく、30〜45℃程度がさらに好ましい。
本発明によれば、水生昆虫由来のシルクタンパク質を単離して得たフィブロインH鎖を多く含む画分を有機溶媒に溶解してなるシルクドープ単独でエレクトロスピニングして所望のナノファイバーを製造することができるし、また平均繊維径や繊維径のバラツキを少なくして繊維径が揃ったナノファイバーを得るためには、上記シルクドープと、第2物質としての上記水溶性高分子のドープ及び/又は非イオン界面活性剤との混合ドープを所定の温度でエレクトロスピニングして製造することができる。後者の場合、得られるナノファイバーはシルク複合ナノファイバーである。
水溶性高分子について:
水溶性高分子としては上記したようなものを使用できる。以下、上記水溶性高分子のうち、主としてカイコ由来のシルクタンパク質について説明する。
カイコ由来のシルクタンパク質としては、例えば、農家が飼育する家蚕(Bombyx mori)幼虫、家蚕の近縁種のクワコ幼虫、並びに柞蚕(Antheraea pernyi)、天蚕(Antheraea yamamai)、タサール蚕(Antheraea militta)、ムガ蚕(Antheraea assama)、エリ蚕、シンジュ蚕の幼虫等の野蚕幼虫が吐糸した絹糸を利用してもよいし、カイコの幼虫が生合成して作り、体内に蓄積する絹タンパク質水溶液であっても同様に利用できる。家蚕幼虫又は野蚕幼虫由来のシルクタンパク質、すなわち、絹フィブロインあるいは絹セリシンを挙げることができる。
エレクトロスピニングに使用できるシルクタンパク質ドープ(フィブロイン水溶液)としては、カイコ幼虫が吐糸した絹糸を中性塩で溶解し、中性塩や不純物を取り除くことで入手できるし、又はカイコ幼虫体内から生合成した液状絹タンパク質を貯蔵する組織・絹糸腺を取り出し、内部のタンパク質水溶液を水に溶解させたものでもよい。
また、カイコ幼虫体内から絹糸腺を取り出すことで、ナノファイバーの原料を手に入れることもできる。例えば、家蚕の熟蚕体内から絹糸腺を取り出し、水洗いして絹糸腺細胞をピンセットで除去する。中部絹糸腺部位の液状絹30gを200mLの蒸留水を入れたシャーレに浸漬し、5℃で4時間放置すると、液状絹の外側を覆っている絹セリシンが蒸留水中に分散してくるので、この絹セリシンの分画をデカンテーションにより取り除く。
さらに、200mLの蒸留水を加えて、5℃で12時間放置することで絹フィブロイン溶液を調製できる。この溶液をセルロース製の透析膜に入れ、送風乾燥して1.9%の絹フィブロイン水溶液を作製できる。
これらカイコ由来の絹糸を溶解する方法は次の通りである。水溶性高分子として利用できカイコ由来のシルクは、カイコが吐糸して作る繭繊維の外側膠着物質のセリシンを除去して得られる絹フィブロイン繊維から製造できる。例えば、家蚕絹糸の絹フィブロイン繊維を55℃の8.5M臭化リチウム水溶液20mL中で完全に溶解させた後、この水溶液をセルロース製透析膜に入れて、5℃、5日間、蒸留水で置換して不純物を除去し、純粋な絹フィブロイン水溶液を調製する。かくして調製された絹フィブロイン水溶液を送風乾燥し、又は必要に応じて蒸留水を加え、絹フィブロイン水溶液の濃度を1〜5%に調整し、凍結乾燥することで多孔質状態のシルクスポンジを製造できる。
絹フィブロイン繊維を溶解するには、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、臭化リチウム、チオシアン酸リチウム等の既知の中性塩を用いて行われる。絹フィブロイン繊維を効率よく溶解するには、臭化リチウム、チオシアン酸リチウムが好ましく用いられる。中性塩水溶液で絹フィブロイン繊維を溶解するには、中性塩濃度、溶解温度、及び溶解時間を適正にする必要がある。中性塩濃度、溶解温度、及び溶解時間が過激となると絹フィブロインの分子量は低下し、その結果、目的とするシルクナノファイバー又はシルク複合ナノファイバーの形成性が劣悪となってしまうためである。絹フィブロイン繊維は、一般には45℃、好ましくは50℃以上で、かつ65℃以下で加熱溶解することが望ましい。加熱溶解時間が70℃を超えると絹フィブロイン繊維の分子量が低下する恐れがある。従って、絹フィブロイン繊維は、55℃、25分以内で溶解することが好ましい。
中性塩水溶液で絹タンパク質繊維を溶解する際、中性塩濃度、溶解温度、及び溶解時間を規定することにより、絹タンパク質の分子量を低下させないように配慮すべきである。中性塩濃度は8.0〜9.8M程度であればよく、溶解温度は25〜70℃程度であればよい。溶解温度は60℃以下が好ましい。溶解温度が高温になると絹フィブロインの分子量が低下し、素材の高分子性が失われてしまう危険性があるからである。また、溶解時間は1〜20分程度に設定することが好ましい。中性塩の中でも絹タンパク質繊維の溶解力に優れたリチウム塩が好ましく用いられる。特に臭化リチウムが好ましい。8M以上、好ましくは8.5M以上の臭化リチウムであれば、55℃以上、15分程度で絹タンパク質繊維は溶解する。
濃厚な中性塩水溶液中に絹糸を入れて加熱溶解して得られる絹フィブロイン水溶液をセルロース製透析膜に入れて、両端を縫糸でくくり、室温の水道水又は純水中に4〜5日間入れて置換し、リチウムイオンを完全に除くことで純粋な絹フィブロイン水溶液を得ることができる。
セルロース製透析膜で十分に透析して得た水溶性絹フィブロインにアルコールを加えてフィブロイン分子を凝集させた後、凍結乾燥することでシルクスポンジが製造できる。
上記したような水溶性高分子において、水生昆虫由来のシルクドープに非解離性水溶性高分子を加え、表面自由エネルギーを低くすることで、微細な繊維径を持つシルクナノファイバーを製造することができる根拠を次に述べる。
界面活性能の高い5〜10%の非解離性水溶性高分子(PEO又はPVA等)水溶液は、水自体の表面自由エネルギー(72.3mN/m)を大幅に下げ、その結果、35〜45mN/m程度の低表面自由エネルギーにまで低下させ、かつ適度な粘性溶液を調整するに好都合な条件となり、エレクトロスピニングにより極細のナノスケールの繊維が得られる。
非イオン性界面活性剤:
次に、非イオン性界面活性剤について説明する。非イオン性界面活性剤は、上記したものを使用できる。
シルクドープ又はシルク複合体ドープに非イオン界面活性剤を添加する技術的な意味は次の通りである。
所望の極細ナノファイバーを製造するには、シルクドープの表面自由エネルギーを低下させることが何よりも重要であり、1%SDS等の非イオン界面活性剤を添加することが効果的である。
低分子の非イオン性界面活性剤が重合して高分子になったものが非解離性水溶性高分子である。SDSはNa(Sodium dodecyl sulfate)であり、この化合物はナトリウム塩の状態で、非常に高い水溶性を示す低分子アニオン性界面活性剤である。これがカリウム塩に置換されると、水への溶解度は1/20程度に下がり、非解離状態(プロトン化)では、ほぼ完全に水に不溶となる。イオン性界面活性剤が、もっと大きな分子となっても、上記SDSの場合と同様に、エレクトロスピニング状態を改善する効果がある。低分子イオン性界面活性剤は、シルクドープの表面自由エネルギーを低下させると同時に、エレクトロスピニングには不利な情況を生むことになる。
上記非イオン界面活性剤の少なくとも1種又は水溶性高分子の少なくとも1種がシルクタンパク質ドープに添加される場合、非イオン界面活性剤又は水溶性高分子が、水生昆虫由来のシルクでフィブロインH鎖を多く含む画分(例えば、実施例におけるP2画分等)の重量に対して5〜45wt%添加したシルク複合ドープを用いて、また、上記非イオン界面活性剤及び水溶性高分子の両方がシルクタンパク質ドープに添加される場合、その合計が、水生昆虫由来のシルクでフィブロインH鎖を多く含む画分(例えば、実施例におけるP2画分)の重量に対して5〜30wt%添加したシルク複合ドープを用いてエレクトロスピニングすることにより、所望のシルク複合ナノファイバーを得ることができる。
この場合、非イオン界面活性剤単独の添加量、水溶性高分子単独の添加量、及び非イオン界面活性剤と水溶性高分子との合計添加量が、5wt%未満であると、水生昆虫由来のシルクでフィブロインH鎖を多く含む画分のドープの表面自由エネルギー(表面張力)を十分低下させる効果が少ない。非イオン界面活性剤単独の添加量又は水溶性高分子単独の添加量が45wt%を超えると、また、非イオン界面活性剤と水溶性高分子との合計添加量が、30wt%を超えると、エレクトロスピニングして得られた水生昆虫由来のシルクでフィブロインH鎖を多く含む画分の組成に占める非イオン界面活性剤と水溶性高分子との合計添加量が増加し、エレクトロスピニングで得られる水生昆虫由来のシルクでフィブロインH鎖を多く含む画分の特性に基づく生体適合性又は生分解性が次第に低下することが懸念される。
上記ドープにおいてエレクトロスピニングに適した濃度は、3〜20wt%である。
上記ドープ濃度が、3wt%未満であると、ドープ濃度が低すぎてエレクトロスピニングしても均一の繊維径を持つシルクのナノファイバーとはならず、エレクトロスピニングの結果、陰極板表面にはビーズ形態の微細物質が積層されてしまい、良好な微細なシルクナノファイバー及びシルク複合ナノファイバーは得られない。前記ドープ濃度が、20wt%を超えると、エレクトロスピニングの際、紡糸ノズルが目詰まりを起こし、エレクトロスピニングによる紡糸状態が良好でなくなってしまい、ナノファイバーの平均繊維径が増大し、かつ不定形のナノファイバーになるという問題が生ずる。
エレクトロスピニング:
高圧電源、ポリマー溶液充填用貯蔵タンク、紡糸ノズル、及びアースされたコレクターからなるエレクトロスピニング装置のポリマー溶液充填用貯蔵タンクに上記した原料ドープを入れ、紡糸ノズルまで一定の速度で押し出す。紡糸ノズルでは、10〜39kVの電圧を印加すると、金属製陰極板に向けて電気引力がポリマー溶液の表面張力を越える時、ポリマー溶液のジェットがコレクターに向かって噴射されることでシルクナノファイバー及びシルク複合ナノファイバーを製造できる。
本発明によれば、水生昆虫が水中で吐き出すシルクタンパク質は、フィブロインH鎖を多く含む画分からなるシルクであり、それをエレクトロスピニングすることによりシルクナノファイバー及びシルク複合ナノファイバーを製造することができる。水生昆虫由来のシルクでフィブロインH鎖を含む画分は、水生昆虫が水中で吐糸するシルク繊維の伸度等の機械的特性と密接に関連しており、水の作用により凝固する機能を持つタンパク質でもあるため、耐水性に富み、水中での接着素材として広く利用出来る可能性がある。
水生昆虫が体内で生合成してできるシルクは、高分子の天然タンパク質であるため、生体細胞との親和性があり、細胞付着増殖基材として利用できる。また、このシルクは、水の作用により水に対して不溶化する特性があるため、水性セメントとして、又は医療分野での接着剤として利用できる。
本発明で提供できるシルクナノファイバー及びシルク複合ナノファイバーは、保水性、保湿性、生分解性に優れており、有人体の生体組織に対して優れた生体適合性を持っているので、有用細胞を効率的に培養・増殖させるための再生医療材料として利用でき、また、様々な生体細胞(骨細胞、肝細胞、平滑筋細胞、神経細胞、繊維芽細胞等)との親和性が優れているため、短時間での細胞増殖が可能であり、医用材料として広範に利用できる。
本発明の水生昆虫由来のシルクタンパク質を精製して製造できるフィブロインH鎖を含むシルクは、成形性が良く多孔質体、膜、粉末としても形成できる。膜状に成型したシルクは、創傷被覆材として利用できる他、化粧料や食品原料等の様々な応用が考えられる。
本発明によれば、水生昆虫のシルクを精製して得たフィブロインH鎖を多く含む画分を有機溶媒に溶かし、エレクトロスピニングして太さムラが無く、微細な均一サイズのシルクナノファイバーを提供できる。このナノファイバーは、人体の生体組織に対して優れた生体適合性を持ち、保水生、保湿性、生分解性に優れている。微細なナノファイバーであるため有効表面積が広いという特性を有することから、フィルター、衣料材料、医用材料を中心とした各種産業分野で利用可能である。
従って、本発明で用いるフィブロインH鎖を多く含む画分からなるシルクナノファイバー及びシルク複合ナノファイバーは、理工学的な分野で広範に利用可能な素材として有望である。
次に、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
本発明で調製した素材の理化学的特性及び生化学的特性を明らかにするため次の項目の試験を行った。
(1)エレクトロスピニング:
カトーテック社製のエレクトロスピニング装置を使用してシルクナノファイバーを製造した。この装置には、シルクドープを充填するポリマー貯蔵タンク、陽極を通ずる貯蔵タンク、貯蔵タンクに接続する紡糸ノズル、紡糸ノズルから一定距離を隔てた場所に陰極板が設けられている。陽極・陰極間の紡糸距離は15cm、陽極・陰極板間に印加電圧20〜39kVを加え、陽極・陰極板間に加わる静電力により紡糸ノズルから陰極板に向かって霧状態のシルクポリマージェットを噴射することで、ナノファイバーが陰極板上に吹き付けられ積層・製造することができる。
紡糸ノズルは、テルモ株式会社製のテルモノンベベル針(22G×11/2”(0.70×38mm)を使用した。株式会社トップ製のロックタイプ・螺旋式の5mLトッププラスチックシリンジをポリマー貯蔵タンクとして使用した。
(2)ナノファイバーの繊維径:
エレクトロスピニングにより陰極に積層するナノファイバーの繊維径は、イオンスパッタリング装置を用いて公知の条件(スパッタリング時間5分)下で、200Åの膜厚の金薄膜で被覆した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで評価した。
(3)ポリマージェットの飛び方、製造安定性:
シルクポリマージェットの飛び方とナノファイバーの製造状態とが安定かどうかを目視で観察し、紡糸状態は次のカテゴリーで評価した。
◎: エレクトロスピニングにおいて、ポリマージェットが紡糸ノズルから連続的・安定的に吹き出す。
○:エレクトロスピニングにおいて、ポリマージェットが紡糸ノズルから吹き出すが、安定的でなくやや間歇的な紡糸となる。
(4)フーリエ変換赤外吸収スペクトル:
H鎖を多く含む画分の分子形態を明らかにするため島津製作所製のFTIR(8400S型フーリエ変換赤外吸収スペクトル)測定装置を用い、室温で波数1800〜600cm−1の範囲で測定した。測定繰り返し数は20回であった。
(5)熱分解挙動:
理学電機(株)製示差熱走査測定装置(DSC−10A)を用い、絹膜重量2.2mg、DSCレンジ2.5cal/s、昇温速度10℃/分で、測定を200cc/分の窒素気流中で行った。180℃以上に現れる試料の熱的な挙動を分析した。
(6)カイコ・シルクスポンジの製造:
家蚕絹糸(絹フィブロイン繊維ともいう)を55℃の8.5M臭化リチウム水溶液20mL中で完全に溶解させた後、この水溶液をセルロース製透析膜に入れて、5℃で5日間蒸留水で置換して不純物を除去し、純粋な絹フィブロイン水溶液を製造する。かくして調製した絹フィブロイン水溶液を送風乾燥して絹フィブロインの水溶液濃度を3.5%に調整した後、凍結乾燥することで多孔質状態のシルクスポンジを製造した。
信濃川中流域、上田市小牧橋の上流2km地点で5齢のヒゲナガカワトビケラ幼虫70個体を採取した(採取日:2008年6月11日)。70個体のヒゲナガカワトビケラ幼虫のHL、HW、BW、BL、SGW、SGDを測定し平均値を求めた。得られた結果を表1に示す。
HL:ヒゲナガカワトビケラ幼虫の頭殻長(cm)
HW:ヒゲナガカワトビケラ幼虫の頭殻幅(cm)
BW:ヒゲナガカワトビケラ幼虫の重量(g)
BL:ヒゲナガカワトビケラ幼虫の体長(cm)
SGW.:ヒゲナガカワトビケラ幼虫体内から取り出した湿潤状態の絹糸腺重量(g)
SGD.:ヒゲナガカワトビケラ幼虫体内から取り出し、105℃で90分乾燥した絹糸腺重量(g)
ヒゲナガカワトビケラの絹糸腺からのシルク溶液調製−P2画分の調製:
「千曲川中流域、上田市鼠橋付近で5齢のヒゲナガカワトビケラ幼虫を採取した(採取日2008年5月28日)。100個体のヒゲナガカワトビケラ幼虫を解剖し、摘出した絹糸腺を氷冷中(5℃)において10M 尿素水溶液(10mL)に浸漬させ−20℃にて凍結せしめた。
一方、次の2つの作業を行った。
(1)100mMのロイペプチン水溶液の調製:25mgのロイペプチン(MW:426.55、ペプチド研究所製Lot No.551129)を純水526μLに溶解させ、100mMのロイペプチン水溶液を調製した。この水溶液を4本に分注し、使用時まで−20℃で保存する。
上記ロイペプチンは、プロテアーゼインヒビターであり、ヒゲナガカワトビケラの絹糸腺に含まれるタンパク質分解酵素であるプロテアーゼが絹糸腺内のシルクに作用しないように加える試薬である。通常0.1mM〜2mM、好ましくは0.5〜1mM添加することで、絹糸腺に含まれるシルクの低分子化が抑えられる。添加量が2mMを超えるとタンパク質の分解は抑えられるが価格が高いため経済的ではない。
(2)透析用水溶液の調製:10mLの酢酸(原液)と10μLの100mMロイペプチンを混合し、純水にて全量200mLの透析用水溶液を調製した。
フィブロインH鎖を多量に含むP2画分の調製方法:
10M 尿素水溶液中にて凍結させたヒゲナガカワトビケラ絹糸腺を室温にて解凍させ、再度凍結・解凍(融解)する操作を計3回繰り返し、全量13mLの試料を得た。この試料に0.3mLの1M Tris−HCl、pH8.0と130μLの100mM ロイペプチンとを加えることにより、それぞれの最終濃度が20mMと1mMになるように調整した。得られた試料を氷冷したすり鉢中に入れ、絹糸腺組織をすり潰すことにより尿素水溶液中で懸濁状態にした(以下、T:絹糸腺尿素抽出物とも称す。図1における試料Tと対応する。)。尿素水溶液濃度は高いほど有効であるが、最高は10M程度である。濃度が希薄であるとシルクの水素結合は切断されないので、10M程度の高めが最大限度である。この懸濁溶液を調製するためには、尿素濃度が4M以上である必要がある。
これを、50mLのファルコンチューブに移した後、4℃において、11,000rpm、30分間遠心分離することにより、12mLの上清(S1;図1における試料S1と対応する。)と沈殿物(P1)を得た(P1は以後の操作に使用しない)。S1を透析用セルロースチューブ(透過分子量:約14,000、孔径:約50A)に入れ、透析用水溶液に対して、4℃にて1.5時間透析した。透析操作中、透析チューブ内の試料は白濁した。試料を50mLのファルコンチューブに回収した後、4℃において、11,000rpm、30分間遠心分離することにより、12mLの上清(S2;図1における試料S2と対応する。)と沈殿物(P2;図1における試料P2と対応する。)とを得た(S2は以後の操作に使用しない)。
P2を1mLの1mM ロイペプチンで懸濁・洗浄した後、4℃において、11,000rpm、10分間遠心分離した。この操作を計3回繰り返した。沈殿物として得られたP2画分を−80℃にて完全に凍結させた後、一昼夜凍結乾燥させた。凍結乾燥標品をすり鉢中にて粉砕することにより、粉状にしたP2画分を最終標品とした。収量は170mgであった。このP2画分の理化学的特性の詳細については以下の実施例3及び4を参照のこと。
最終標品を溶解させ、水溶液を調製するためには、弱塩基性条件下において、尿素の濃度が4M〜10M、ジチオスレイトールの濃度が1mM〜100mM、また、2−メルカプトエタノールの濃度が10mM〜500mMである必要がある。また、最終標品中に豊富に含まれるフィブロインH鎖の分子量分布を高分子量化するためには、ロイペプチンが5μM〜1mM存在条件下で操作を行う必要がある。
上記精製・単離過程で得られる各画分の目視観察結果と性質とは、次の通りであった。
S1:シルクフィブロインを含む溶液であって、薄白色透明溶液であった。
P1:細胞破砕物を主成分とする沈殿であって、茶色(肌色)沈殿であった。
S2:主成分不明な溶液であって、薄白色透明溶液であった。
P2:シルクフィブロイン主成分とする白色沈殿であった(フィブロインH鎖に加え、その他3種のタンパク質成分を含む)。
P2画分の凍結乾燥品:粘着性のある白色物であった。
SDS−PAGE測定:
実施例2で調製した水生昆虫(5齢のヒゲナガカワトビケラ幼虫)由来のシルクでフィブロインのH鎖を多く含むP2画分の理化学的特性を明らかにするため、電気泳動測定(SDS−PAGE)の測定を行った。得られたSDS−PAGEの測定結果を図1に示す。図1において、M:マーカー、T:絹糸腺尿素抽出、S1:尿素抽出可溶画分、S2:酢酸透析上清、P2:酢酸透析沈殿であり、詳細については実施例2を参照のこと。
図1から明らかなように、水生昆虫のP2画分は約350kDaから300kDaに幅広いスメアなバンドが見られ、これがフィブロインH鎖に相当すると考えられる。その他に、約80kDa、25kDa、16kDaにバンドが見られる。従って、水生昆虫シルクのフィブロインH鎖を多く含むP2画分は、全体的に広い分子量分布を持つタンパク質成分より構成されている。すなわち、P2の構造の主体はフィブロインH鎖であり、その他に分子量の異なる3つのバンドが存在し、幅広い分子量分布を有する点が特長的である。
さらに、高分子量のフィブロインH鎖を多く含むP2画分を製造するには、ヒゲナガカワトビケラ幼虫体内より摘出した絹糸腺を尿素水溶液に浸し、凍結融解をする際、尿素水溶液に100mMのロイペプチンを添加することが望ましい。このように、絹糸腺を浸す尿素水溶液にプロテインインヒビターを添加することで、高分子量のフィブロインH鎖を多く含むP2画分が効率的に得られる。
DSC測定及びFTIR測定:
実施例2で調製した水生昆虫(5齢のヒゲナガカワトビケラ幼虫)由来のシルクでフィブロインのH鎖を多く含むP2画分の理化学的特性を明らかにするため、DSC測定及びFTIR測定を行った。
水生昆虫由来のシルクでフィブロインのH鎖を多く含むP2画分のDSC曲線を図2に示す。図2から明らかなように、130℃以上の温度領域ではDSC曲線は吸熱側へと移行し、196℃に主要な吸熱ピークが現れる。DSC曲線は発熱側に移行した後、再度吸熱側へと移行し、295℃に吸熱ピークが出現した。
また、上記水生昆虫由来のシルクでフィブロインH鎖を多く含むP2画分のFTIRスペクトルを測定し、1800〜600cm−1の波数領域のFTIRスペクトルを図3に示す。図3から明らかなように、水生昆虫のシルクでフィブロインH鎖を多く含むP2画分では、FTIRスペクトルのアミドIバンドには1629cm−1、アミドIIバンドが1514cm−1に強い吸収強度のスペクトルが出現した。その他に、このFTIRスペクトルには、1447、1227、1171、1053cm−1に明瞭な吸収スペクトルが観察された。これらのFTIRスペクトルでアミドIバンドとしての1629cm−1、アミドIIバンドとしての1514cm−1の吸収は、シルクでフィブロインH鎖を多く含むP2画分がβ型の分子構造を取ることを示唆する。
フィブロインH鎖を含むP2画分の溶解性:
実施例2で調製した水生昆虫(5齢のヒゲナガカワトビケラ幼虫)由来のシルクでフィブロインのH鎖を多く含むP2画分をエレクトロスピニングするための最適溶媒を選択するために、次の溶媒での溶解挙動を調べた。
トリフルオロ酢酸(TFA)
ヘキサイソプロパノール(HFIP)
蟻酸(FA)
1mM ロイペプチン(FS溶液)
上記溶媒を、それぞれ、0.5mLを1mL容量のプラスチック製遠心管に取り、この各遠心管内に水生昆虫由来のシルクでフィブロインのH鎖を多く含むP2画分0.5mgを入れ、室温で3時間静置し、シルクが溶媒の中で溶解したかどうかを目視で観察した。得られた結果を表2に示す。
但し、溶解性は次の基準に基づいて評価した。
○:良く溶解し、均一な溶液となる。
△:やや溶解し、ゲル状態であるが、均一な溶液とはならない。しかし、1日室温で静置すると均一な溶液となる。
表2から明らかなように、使用した有機溶媒の内、HFIPを用いて、水生昆虫由来のシルクでフィブロインのH鎖を多く含むP2画分を溶解するには時間がかかるし、一旦溶解したP2画分は室温に一昼夜静置するとゲル化を起こすため好ましくないが、フィブロインのH鎖を多く含むP2画分のナノファイバーを製造するにはTFA、FAが好ましく使用できる。
P2画分の多孔質体、粉末、膜:
実施例2で調製した水生昆虫(5齢のヒゲナガカワトビケラ幼虫)由来のシルクでフィブロインのH鎖を多く含むP2画分を単離する工程の最終段階、すなわち、「P2画分を−80℃にて完全に凍結させた後、一昼夜凍結乾燥」することでフィブロインH鎖のタンパク質からなる高強度の多孔質体が製造できる。このP2画分からなる多孔質体の断面をSEM観察すると平均繊維径が200〜300μmの多孔質構造が観察された。
実施例2で製造したP2画分の多孔質体を乳鉢で丁寧に粉砕することで水生昆虫のシルクからフィブロインH鎖タンパク質粉末が製造できた。図4は、かくして得られたH鎖タンパク質粉末の外観を示す写真である。また、フィブロインH鎖タンパク質粉末に対して走査型電子顕微鏡(SEM)観察すれば、図5に示すSEM画像から、この粉末は、多孔質構造を取っており、その形態は不定形の粉末であることが分かる。
実施例2の試料調製法において、5齢のヒゲナガカワトビケラ幼虫由来のシルクからフィブロインH鎖タンパク質をTFA、HFIP、及びFAのそれぞれに溶解し、濃度2〜10wt%のP2有機溶媒ドープを室温でポリエチレン膜、あるいはポリスチレン膜の上に広げて蒸発乾燥固化すると、この水生昆虫のシルクからなる透明ないしは半透明のフィブロインH鎖タンパク質膜を製造できた。
実施例2の試料調製法において、フィブロインH鎖タンパク質を凍結乾燥する前のP2水溶液に水溶性の生理活性物質、水溶性の医薬品、水溶液の酵素を添加することで、生理活性物質、医薬品、酵素を複合して含んだP2画分の多孔質体が製造できた。
P3画分の調製:
信濃川中流域、上田市小牧橋の上流2km地点でヒゲナガカワトビケラ幼虫を採取した(採取日、2009年8月15日)。トビケラ幼虫200個体を解剖して取り出した絹糸腺を氷浴上で1M 尿素、0.5μM ロイペプチン、0.5μM ペプスタチンを含む20mM トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)中に浸漬して洗浄した。洗浄した絹糸腺を、次に、0.2% 酢酸、0.5μM ロイペプチン、0.5μm ペプスタチンを含む8M 尿素溶液8mLに移し、−20℃において凍結し数日間静置した。室温において試料を解凍(融解)し、鋭利なハサミを用いて絹糸腺を穏やかに細断した。0.5μM ロイペプチン、0.5μM ペプスタチン、8mM 尿素を含む20mM トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)28mLを加えて希釈した後、上清S1を遠心回収した(9100×g、40分間、4℃)。このS1を50mM トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)1000mLに対し3時間、次いで、10mM トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)1000mLに対し2時間、最後に、蒸留水1000mLに対し50分間透析し、透析膜内に残存した可溶性成分を10100×g、4℃において80分間遠心して上清として回収した(S2)後、凍結乾燥した。タンパク質収量は2000mgであり、凍結乾燥したS2粉末を4℃において保存した。
500mgのS2粉末を20mM トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)に溶解し、分子量カットオフ3,500の透析膜に移した。これを5%酢酸溶液1000mLに対し3時間透析し、次いで、5%酢酸1000mLに対し8時間透析した。透析中に凝集沈殿したタンパク質を9100×g、4℃において60分間遠心して上清S3及び沈殿P3を得た。このP3を5%酢酸により2度、次いで、25mLの蒸留水により2度洗浄した。洗浄後のP3に含まれるタンパク質を7.4M 尿素及び35mM ジチオスレイトール(DTT)を含む47mM トリス塩酸緩衝液(4.3mL)を用いて抽出し、可溶性タンパク質を上記と同様の条件化、遠心回収した。実施例2におけるS2画分に対応するS3(体積およそ19mL)を蒸留水 1000mLに対し2時間透析し、9100×g、4℃において40分間遠心した。この上清を凍結乾燥し、乾燥S3粉末を得た。タンパク質収量は73mgであった。S3粉末を、6.4M 尿素及び100mM DTTを含む40mM トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)に懸濁し、可溶化されたタンパク質を上記と同様の条件において遠心回収した。
以上の手法により、ヒゲナガカワトビケラの絹糸腺に含まれるシルクからフィブロイン様タンパク質を単離した。しかしながら、試料保存中に当該タンパク質の断片化は完全には抑制できなかった。断片化の点では、実施例2により単離するよりも実施例3により単離する方が好ましい。
P3’画分の調製:
上記手法に準じて25個体のヒゲナガカワトビケラ幼虫から絹糸腺を採取し、氷浴上に置いたガラスシャーレの上で、2M 尿素、100μM ロイペプチン、100μM Gly−Tyr−Gly、及び0.5mM DTTを含む20mM トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)1.0mLにより洗浄し、2度の緩衝液交換を行った。次いで、9M 尿素、1.0mM DTT、100μM ロイペプチン、100μM Gly−Tyr−Glyを含む20mM トリス塩酸緩衝液2mLに浸して−20℃において凍結した。8時間の凍結静置の後、室温において融解し、鋭利なハサミを用いて絹糸腺を穏やかに細断した。さらに、小型のプラスチック性ペスルを用いて極低速ですり潰した。
得られた粘稠液を9100×g、4℃において40分間遠心した。遠心上清S1’の収量は1.4mLであった。これを小口径の透析膜(分子量カットオフ13000〜14000)に移し、6μM ロイペプチン、10μM Gly−Tyr−Glyを含む5%酢酸100mLに対し、4℃において60分間透析した。透析中に凝集したタンパク質を9100×g、4℃において10分間遠心し、実施例2におけるP2画分に対応する沈殿P3’として回収した(体積およそ0.3mL)。この時の遠心上清S3’(体積およそ2.0mL)も別に回収し凍結保存した。
P3’を100μM ロイペプチンを含むミリQ水0.5mLにより2度洗浄し、その後、100μM ロイペプチン、100μM Gly−Tyr−Gly、125mM DTT、9.5M 尿素を含む20mM トリス塩酸緩衝液0.35mLの中で極低速でホノジェナイズし、少量の不溶物を遠心により除いた。
上記の手法を採用することにより、ヒゲナガカワトビケラのフィブロイン様タンパク質の単離回収率及び回収後の生化学的安定性が向上した。操作後半で溶解した実施例2におけるP2画分に対応するP3’画分は、電気泳動的にほぼ純粋なフィブロイン様タンパク質(300kDa以上)から成り、加えて、非常に少量の低分子量タンパク質(20〜30kDa程度)を含むのみであった。この標品から尿素及びDTTを除去し、適切な溶媒で希釈することにより、エレクトロスピニング工程を経て微細繊維に成形することができる可能性が高い。
以下、図6(a)及び(c)に示す上記S1’及びP3’画分のCTAB−PAGE電気泳動におけるタンパク質染色バンドの濃さを比較すると、S1’画分では、フィブロインに相当する分子量のバンド(下記で説明する「Smsp−1」)の他に、低分子量タンパク質が混在する。他方、P3’画分においては、Smsp−1バンドのみが明瞭に観察され、他のタンパク質バンドはほとんど観察できない。図6の結果から、P3’画分においては、Smsp−1はタンパク質組成の大部分を占め、染色バンドの濃さに基づき、少なく見積もっても9割以上が純粋なSmsp−1によって構成されると想定できる(図6)。これは、本発明により提示した手法、すなわち、希薄な酸性溶液に対する透析操作が、極めて有効にフィブロイン様タンパク質のみを分離する事が可能な手法であることを意味する。10M 尿素−50mM DTT溶液に再溶解したP3’画分は、透明かつ高い粘稠さを有する液体であり、このままキャスト成膜もしくは凍結乾燥後に、水あるいはメタノールのような溶媒を用いて洗浄することにより尿素およびDTTを除去して、それぞれ、フィルムおよびスポンジとして整形することも可能である点で新規かつ進歩性がある。
また、図6(b)に示したように、このP3’画分に関しては、310〜320kDaにフィブロインH鎖のバンドを有するもの(Smsp−1)であることが分かる。このSmsp−1とは、ヒゲナガカワトビケラの新規なフィブロイン様タンパク質を命名したものである。P3’画分は、ほとんど純粋なSmsp−1から構成されている。
本発明では、水生昆虫の絹糸腺内シルクからH鎖を多く含むフィブロイン様タンパク質(Smsp−1)を経済的に、効率的に、絹糸腺から取り出す事を最終目的としている。
従来法において、カイコが吐糸してなる絹糸からは、高効率にフィブロインのみを取り出すことは技術的に容易ではない。この理由は、まず、絹糸をアセトンで煮沸してワックスを除き、さらに、絹糸をアルカリ水溶液で煮立てタンパク質セリシンを除き、残ったフィブロイン繊維(フィブロイン含量は35%程度)を高濃度の塩化リチウム水溶液に溶解し、完全に溶解した後、透析により過剰なリチウム塩を除去せねばならないからである。透析の後も、もとのフィブロイン繊維に混在していた夾雑タンパク質は残存する。
本発明の手法では、ヒゲナガカワトビケラ絹糸腺の尿素−還元剤抽出物(S1’)を希酢酸溶液に透析するのみでほぼ純粋(純度90%以上)なフィブロイン様タンパク質からなるP3’画分を得ることができる点が特徴であり、P3’画分を有機溶媒等で溶解することで材料成形が可能な程度の加工性をもつドープが製造できる。さらにこのことに加え、ヒゲナガカワトビケラでも一度絹糸(巣網)として紡糸されてしまった後は、絹糸(巣網)から直接フィブロイン様タンパク質を抽出することは極めて困難である。このことは、図6に示す電気泳動測定結果の“NE”レーンによって裏付けられる。すなわち、本発明による絹糸腺内容物からフィブロイン様タンパク質を効率よく単離する手段以外の手法では、ヒゲナガカワトビケラの絹糸腺からタンパク質を調製することができないという大きな特徴がある。
本発明においては、上記したように、SDS−PAGE(実施例2で調製したP2画分の電気泳動測定)及びCTAB−PAGE(実施例8で調製したP3’画分の電気泳動測定)のいずれかの電気泳動法を用いた。ヒゲナガカワトビケラ由来のフィブロイン様タンパク質(Smsp−1)の電気泳動における挙動は、適切な量のロイペプチン、ペプスタチン、もしくはGly−Tyr−Glyを含むタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)阻害剤の存在下及び非存在下において異なる。プロテアーゼ阻害剤存在下では、Smsp−1は酵素分解を受けないので、Smsp−1の電気泳動においては、SDS−PAGE及びCTAB−PAGEの2つの条件ともに、Smsp−1のバンドはスメアにはならない。他方、プロテアーゼ阻害剤非存在下では、Smsp−1は部分的に加水分解を受けて低分子化するので、Smsp−1のバンドは、SDS−PAGE及びCTAB−PAGEともにスメアとなる。上記の結果は、単純にプロテアーゼ阻害剤の有無によるものであり、適切量のプロテアーゼ阻害剤存在下において単離操作を行う限りにおいては、上記実施例が異なる性質のフィブロイン様タンパク質(Smsp−1)を与えるということではない。これらの分子量を推定した電気泳動法の違いによるものであり、生化学的に差異はなく、同じ構造のタンパク質である。
また、P3’画分にフィブロインH鎖がどの程度含まれているかについては、図7に基づいて以下のように推定可能である。
実施例8により調製したP3’画分をゲル濾過によって分析した結果を図7に示す。電気泳動にはCTAB−PAGEを用いた。フィブロイン様タンパク質のバンド(Smsp−1)、及び他の低分子量タンパク質の組成をバンド染色の濃さで比較すると、分子量マーカー17kDa付近の低分子量バンドはほとんど見られず、P3’画分の少なく見積もっても90%程度は純粋なSmsp−1であるといえる。
シルクドープ加熱なしのエレクトロスピニング:
実施例2で調製した水生昆虫(5齢のヒゲナガカワトビケラ幼虫)由来のシルクでフィブロインのH鎖を多く含むP2画分を、室温(20℃)で、TFAに溶解し、6wt%シルクTFAドープを製造した後、3時間静置し、冷蔵庫に一昼夜保存し、公知の方法でエレクトロスピニングを行った。紡糸距離を15cm、印加電圧を39kVに設定した。陰極板に積層したシルクナノファイバーの繊維形態、平均繊維径及び繊維径分布を明らかにするためSEMにより観察した。図8(a)は、H鎖を多く含むP2画分を用いて製造したナノファイバーのSEM画像であり、図8(b)は、図8(a)において□で囲んだA部分の拡大画像である。
また、上記6wt%シルクTFAドープを用い、紡糸距離を15cm、印加電圧を20、30、39kVに設定してエレクトロスピニングを行った。印加電圧とシルクナノファイバーの平均繊維径と繊維径分布(標準偏差)との関係を調べると共に、紡糸状態を観察した。得られた結果を表3に示す。
表3から次のことが分かる。水生昆虫由来のシルクでフィブロインのH鎖を多く含むP2画分をTFAに溶解してなる6wt%シルクTFAドープから製造できるシルクナノファイバーの平均繊維径は、印加電圧が20kVでは、520nmであり、なかにはサブミクロンオーダーのナノファイバーも存在しており、標準偏差の値から分かるとおり繊維径のバラツキも大きい。印加電圧が30kVでは、シルクナノファイバー平均繊維径は395nmとなるが、繊維径分布も比較的広く繊維径のバラツキが大きい。紡糸状態はいずれの印加電圧においてもやや間歇的であった。なお、印加電圧が39kVでは、シルクナノファイバー平均繊維径は458nmとなり、繊維径分布は比較的狭く繊維径のバラツキが小さい。
また、シルクでフィブロインのH鎖を多く含むP2画分TFAドープの濃度を1.5〜21wt%の間で変動させて、上記と同様の条件でエレクトロスピニングした。その結果、濃度が2wt%未満、あるいは20wt%を超えるとエレクトロスピニングしても良好にシルクナノファイバーは製造できなかった。本発明でのシルクでフィブロインのH鎖を多く含むP2画分TFAドープの最適濃度は5wt%〜20wt%であることが分かった。
シルクドープ加熱エレクトロスピニング:
実施例2で調製したのと同様のフィブロインH鎖を多く含むP2画分を室温のTFAに溶解して6wt%シルクTFAドープを得、これを40℃に加熱したことを除いて、実施例9と同様の条件でエレクトロスピニングを行い、シルクナノファイバーを製造した。印加電圧を20、30kVに設定してエレクトロスピニングを行った。印加電圧の違いによる、得られたシルクナノファイバーの平均繊維径(nm)、その標準偏差及び紡糸状態を調べ、その結果を表4に集約する。
表4から以下のことが分かる。6wt%シルクTFAドープを40℃に加熱しない実施例9の結果(表3)と40℃に加熱した本実施例の結果(表4)とを比較すると、ドープを加熱することでシルクナノファイバーの平均繊維径が微細となり、繊維径のバラツキが減少し、さらに紡糸状態も改善された。
シルクドープに非イオン界面活性剤添加:
実施例2で調製したのと同様のフィブロインH鎖を多く含むP2画分を室温のTFAに溶解して得られた6wt%シルクTFAドープに、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(和光純薬工業製、商品名:Tween 20)を、P2画分重量に対して5wt%添加し、かくして得られたドープを用いてエレクトロスピニングし、フィブロインH鎖を多く含むP2画分のシルク複合ナノファイバーを製造した。実施例9と同様の条件でエレクトロスピニングを行った。印加電圧を20、30、39kVに設定してエレクトロスピニングを行った。異なる印加電圧の条件下で得られたシルク複合ナノファイバーの平均繊維径、その標準偏差及び紡糸状態を調べ、その結果を表5に集約する。
表5から以下のことが分かる。6wt%シルクTFAドープをエレクトロスピニングした結果(実施例9の表3)と本実施例における表5の結果とを比較すると、シルクドープに非イオン界面活性剤を添加することにより、添加しない場合よりもシルクナノファイバーの平均繊維径がさらに微細となり、繊維径のバラツキが減少し、紡糸状態も改善された。
シルクドープにカイコのフィブロイン添加:
実施例2で調製したのと同様のフィブロインH鎖を多く含むP2画分を室温のTFAに溶解して得られた6wt%シルクTFAドープに、カイコ由来のシルクタンパク質からなるシルクスポンジをTFAに溶解して得られたカイコの2wt%シルクTFAドープを、P2画分重量に対して5wt%添加したドープを製造し、実施例9と同様の条件でエレクトロスピニングを行い、シルク複合ナノファイバーを製造した。印加電圧を20、30、39kVに設定してエレクトロスピニングを行った。
上記カイコのシルクスポンジは、次のようにして製造した。
家蚕繭糸の外層を膠着するセリシンは、先ず、マルセル石鹸0.2%及び炭酸ナトリウム0.05%の混合溶液に入れ98℃で30分間煮沸し、水洗いを行うと絹フィブロイン繊維が調製できる。10gの絹フィブロイン繊維を8.5Mの臭化リチウム溶液に浸漬し、55℃以上で15分処理すると絹フィブロイン繊維は溶解する。この中性塩水溶液をセルロース製の透析膜にいれ、両端を縫糸でくくって5℃の水道水または純水に4−5日間入れてリチウムイオンを完全に除くことで絹フィブロイン水溶液が調製できる。絹フィブロイン水溶液を蒸発させて濃度を高めたり、あるいは水を加えることで濃度を下げて、約1.6%1L絹フィブロイン水溶液を調整し、この水溶液にメタノールを3mL添加した後、凍結乾燥することで多孔質体のシルクスポンジが製造できる。
印加電圧の違いによる、得られたシルクナノファイバーの平均繊維径、その標準偏差及び紡糸状態を調べ、その結果を表6に集約する。
表6から以下のことが分かる。6wt%シルクTFAドープをエレクトロスピニングした結果(実施例9の表3)と本実施例の表6の結果とを比較すると、6wt%シルクTFAドープにカイコのシルクをTFAに溶解したTFAドープを、水生昆虫のシルク重量に対して1wt%添加することにより、得られたシルク複合ナノファイバーの平均繊維径が減少し、繊維径分布が狭くなり、紡糸状態が改善されていることが分かる。
シルクドープにカイコのシルクドープ添加:
カイコのシルクドープは、次に述べるようにして調製したシルクスポンジを有機溶媒に溶解して製造した。家蚕絹糸(絹フィブロイン繊維ともいう)を55℃の8.5M 臭化リチウム水溶液20mL中で完全に溶解させた後、この水溶液をセルロース製透析膜に入れて、5℃で5日間蒸留水で置換して不純物を除去し、純粋な絹フィブロイン水溶液を調製した。かくして調製された絹フィブロイン水溶液に蒸留水を加え、濃度4wt%の絹フィブロイン水溶液を製造した。カイコの絹フィブロイン水溶液に微量のアルコールを添加した後、凍結乾燥することでシルクスポンジが製造できた。
実施例2で調製した水生昆虫(5齢のヒゲナガカワトビケラ幼虫)由来のシルクでフィブロインH鎖を多く含むP2画分を室温のTFAに溶解して得られた6wt%シルクTFAドープとフィブロインスポンジをTFAに溶解して得たドープとを体積比で90:10に複合してなるシルク複合ドープを用いてエレクトロスピニングし、平均繊維径が微細で繊維径のバラツキが少ないシルク複合ナノファイバーを製造した。
実施例9と同様の条件でエレクトロスピニングを行い、水生昆虫のタンパク質からなるシルク複合ナノファイバーを製造した。印加電圧を20、30、39kVに設定してエレクトロスピニングを行った。印加電圧の違いによる、得られたシルク複合ナノファイバーの平均繊維径、その標準偏差及び紡糸状態を調べ、その結果を表7に集約する。
シルクドープ加熱なしのエレクトロスピニングした実施例9の結果(表3)と比べて、本実施例の表7から以下のことが分かる。水生昆虫由来のシルクドープにカイコのシルクドープを添加すると、印加電圧が変わっても紡糸状態は改善され、シルク複合ナノファイバーの平均繊維径は微少となり、また繊維径のバラツキも減少しており、シルク複合ナノファイバーの応用を図る上で良好な結果が得られた。
シルクドープに非イオン界面活性剤及び水溶性高分子添加:
実施例2で調製したのと同様のフィブロインH鎖を多く含むP2画分を室温のTFAに溶解して得られた6wt%シルクTFAドープに対して、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(和光純薬工業製、商品名:Tween 20)及びカイコのシルクスポンジをTFAに溶解して得られたカイコの2wt%シルクTFAドープを、H鎖を多く含むP2画分重量基準で、合計量20wt%添加してシルクタンパク質複合ドープを製造し、実施例9と同様の条件でエレクトロスピニングを行い、シルク複合ナノファイバーを製造した。印加電圧を20、30、39kVに設定してエレクトロスピニングを行った。印加電圧の違いによる、得られたシルク複合ナノファイバーの平均繊維径及びその標準偏差を調べ、その結果を表8に集約する。
表8から以下のことが分かる。本実施例で得られたシルク複合ナノファイバーの場合、上記実施例9、及び11〜13において得られたナノファイバーと比べて、平均繊維径が最も細く、繊維径分布も最も狭いナノファイバーが製造できた。また、シルク複合ナノファイバーの紡糸状態は良好であった。
実施例11記載のポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートの代わりに、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを用いて、実施例11記載の方法に従ってエレクトロスピニングした。その結果、得られたシルク複合ナノファイバーの平均繊維径、標準偏差及び紡糸状態は、表5に示した結果とほぼ同じであった。
実施例12のカイコ由来のシルクタンパク質の代わりに、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、又はポリエチレンオキサイドを用いて、実施例12記載の方法に従ってエレクトロスピニングした。その結果、得られたシルク複合ナノファイバーの平均繊維径、標準偏差及び紡糸状態は、表6に示した結果とほぼ同じであった。
なお、上記実施例における紡糸温度を20〜45℃の範囲内で、また、エレクトロスピニングする際のドープ濃度を3〜20wt%の範囲内で実施しても、上記と同じようにナノファイバーを製造でき、そのナノファイバーの平均繊維径は微小となり、繊維径のバラツキも少なく、紡糸状態も良好である。
本発明によれば、水生昆虫が吐き出すシルクタンパク質のフィブロインH鎖を含む画分を溶媒に溶かして得たドープを用いてエレクトロスピニングすることにより、平均繊維径が細く、繊維径分布が狭く、また、紡糸状態が良好なシルクナノファイバーを提供できる。
このような水生昆虫のシルクでフィブロインH鎖を含む画分は、水生昆虫が吐糸するシルク繊維の伸度等の機械的特性と密接に関連し、水の作用でシルクが凝固する機能を持つタンパク質でもあるため、耐水性に富み、水中での接着物資として広く利用出来る可能性がある。
水生昆虫が体内で生合成してできるシルクは、高分子の天然タンパク質であるため生体細胞との親和性が高く、本発明で提供できるナノファイバーは細胞付着増殖基材として利用できる。また、このナノファイバーは、水の作用を受けて不溶化する特性があるため、水性セメントとして、又は医療分野での接着剤として利用できる。このように、本発明のシルクナノファイバーは、理工学的な分野で広範に利用可能な素材として有望である。
本発明のシルクナノファイバーは、生分解性であり、有用な細胞を培養・増殖させるための再生医療材料としても利用できる。様々な生体細胞(骨細胞、肝細胞、平滑筋細胞、神経細胞、繊維芽細胞等)との親和性が優れているため、短時間での細胞増殖が可能なため医用材料としても利用できる。
本発明の水生昆虫由来のシルクタンパク質を精製して製造できるフィブロインH鎖を含むシルクは、成形性が良く多孔質体、膜、粉末としても形成できる。膜状に成型したシルクは、創傷被覆材として利用できる他、化粧料や食品原料等の様々な応用が考えられる。
さらに、本発明によれば、水生昆虫のシルクを精製して得たフィブロインH鎖を含む画分を溶媒に溶かしてエレクトロスピニングしてなる太さムラが無く、微細でな均一サイズのナノファイバーを提供できる。このナノファイバーは、人体の生体組織に対して優れた生体適合性を持ち、保水生、保湿性、生分解性に優れている微細なナノファイバーであり、有効表面積が広いという最大の特性を有することから、フィルター、衣料材料、医用材料を中心とした各種産業分野で利用可能である。
従って、本発明のナノファイバーは、上記したような様々な産業分野で利用可能性がある。

Claims (22)

  1. 水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分からなることを特徴とするシルクナノファイバー。
  2. 前記水生昆虫が、トビケラ目(毛翅目)、鱗翅目、及び双翅目に属する昆虫から選ばれたものであることを特徴とする請求項1記載のシルクナノファイバー。
  3. 水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分を有するシルクドープをエレクトロスピニングしてなることを特徴とする請求項1又は2記載のシルクナノファイバー。
  4. 前記シルクドープが、フィブロインH鎖の画分をトリフルオロ酢酸、蟻酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロアセトン水和物、及びFS溶液から選ばれた溶媒に溶解されてなるものであることを特徴とする請求項3記載のシルクナノファイバー。
  5. 前記画分が、350kDaから300kDaにフィブロインH鎖の幅広いスメアなバンドを有するもの、又は320〜310kDaにフィブロインH鎖のバンドを有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシルクナノファイバー。
  6. 水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分を有するシルクドープを調製した後、このシルクドープを用いてエレクトロスピニングすることによりシルクナノファイバーを製造することを特徴とするシルクナノファイバーの製造方法。
  7. 前記水生昆虫が、トビケラ目(毛翅目)、鱗翅目、及び双翅目に属する昆虫から選ばれたものであることを特徴とする請求項6記載のシルクナノファイバーの製造方法。
  8. 前記シルクドープが、フィブロインH鎖の画分をトリフルオロ酢酸、蟻酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロアセトン水和物、及びFS溶液から選ばれた溶媒に溶解させたものであることを特徴とする請求項6又は7に記載のシルクナノファイバーの製造方法。
  9. 前記シルクドープのエレクトロスピニングを20〜45℃で行うことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のシルクナノファイバーの製造方法。
  10. 水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分と、水溶性高分子及び非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種とからなることを特徴とするシルク複合ナノファイバー。
  11. 前記水生昆虫が、トビケラ目(毛翅目)、鱗翅目、及び双翅目に属する昆虫から選ばれたものであることを特徴とする請求項10に記載のシルク複合ナノファイバー。
  12. 前記水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分を有するシルクドープと、前記水溶性高分子及び非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種のドープとの混合ドープをエレクトロスピニングしてなることを特徴とする請求項10又は11に記載のシルク複合ナノファイバー。
  13. 前記シルクドープが、フィブロインH鎖の画分をトリフルオロ酢酸、蟻酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロアセトン水和物、及びFS溶液から選ばれた溶媒に溶解されてなるものであることを特徴とする請求項12に記載のシルク複合ナノファイバー。
  14. 前記水溶性高分子が、カイコ由来のシルクタンパク質、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載のシルク複合ナノファイバー。
  15. 前記非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載のシルク複合ナノファイバー。
  16. 前記画分が、350kDaから300kDaにフィブロインH鎖の幅広いスメアなバンドを有するもの、又は320〜310kDaにフィブロインH鎖のバンドを有するものであることを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載のシルク複合ナノファイバー。
  17. 水生昆虫由来のシルクから得られたフィブロインH鎖の画分を有するシルクドープに、水溶性高分子及び非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種を添加してシルク複合ドープを調製した後、このシルク複合ドープを用いてエレクトロスピニングすることによりシルク複合ナノファイバーを製造することを特徴とするシルク複合ナノファイバーの製造方法。
  18. 前記水生昆虫が、トビケラ目(毛翅目)、鱗翅目、及び双翅目に属する昆虫から選ばれたものであることを特徴とする請求項17に記載のシルク複合ナノファイバーの製造方法。
  19. 前記シルクドープが、フィブロインH鎖の画分をトリフルオロ酢酸、蟻酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロアセトン水和物、及びFS溶液から選ばれた溶媒に溶解されたものであることを特徴とする請求項17又は18に記載のシルク複合ナノファイバーの製造方法。
  20. 前記水溶性高分子が、カイコ由来のシルクタンパク質、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項17〜19のいずれか1項に記載のシルク複合ナノファイバーの製造方法。
  21. 前記非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項17〜20のいずれか1項に記載のシルク複合ナノファイバーの製造方法。
  22. 前記シルク複合ドープのエレクトロスピニングを20〜45℃で行うことを特徴とする請求項17〜21のいずれか1項に記載のシルク複合ナノファイバーの製造方法。
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