JP5285189B1 - 積層フィルムの製造方法及び積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 基材表面にカーボンによる核付層をあらかじめ設けることにより基材とその表面に積層される特定機能を呈する機能性層との層間密着力を向上させることを可能とした積層フィルムの製造方法及び係る製造方法による積層フィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも基材となるプラスチックフィルムの表面に対し、不活性ガス導入下において、気圧1×10−3Torr以上1×10−1Torr以下という環境下にてあらかじめプラズマ処理を施すプラズマ処理工程と、プラズマ処理工程を実施した後にその表面に特定機能を有する機能性層を積層してなる機能性層積層工程と、を備えてなり、プラズマ処理がグロー放電プラズマ処理であり、グロー放電プラズマ処理はカーボンターゲットをカソードとしたスパッタリング法によりカーボン含有プラズマを発生させることで施される、積層フィルムの製造方法とした。
【選択図】 なし

Description

本発明は積層フィルムの製造方法及び該製造方法により得られる積層フィルムに関するものであって、具体的には、層間剥離の発生を抑制、防止可能とした、特定機能を呈する積層フィルムの製造方法及び該製造方法により得られる積層フィルムに関する。
従来より、高分子樹脂フィルムに何らかの特定機能を呈する機能性層を積層してなる積層フィルムは種々開発、提案されているところである。例えば酸素や湿気を嫌う物質の保護のためにガスバリア性を付与したプラスチックフィルム(以下単に「ガスバリアフィルム」とも言う。)が様々なシーンにおいて広く用いられている。例えば食品の包装用材料として用いられたり、電子部品材料等の包装用材料として用いられている。そのような利用にあって包装材料は、内容物の変質を抑制・防止する性質を有してなることが強く求められている。特に最近では酸素や水蒸気などにより容易に変質してしまうほど繊細で取扱いにも慎重さを要求される物品を酸素や水蒸気による変質から容易に保護可能とできる包装材料が必要とされている。
ガスバリア性を有するフィルムとして従来はポリ塩化ビニリデンやポリアクリロニトリル等によるプラスチックフィルムを用いていたが、これらのフィルムは廃棄の際に環境有害物を排出してしまうため利用されなくなってきている。また環境問題の観点から言えばポリビニルアルコールによるプラスチックフィルムを用いることが好適であるかのように思われるが、このフィルムはガスバリア性の湿度依存性が高く、すなわち高湿度下ではガスバリア性、特に水蒸気バリア性が著しくかつ容易に低下してしまうため、高度なガスバリア性を必要とする場面では利用できないものである。
そこでプラスチックフィルムの表面に酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機物を物理的蒸着法又は化学的蒸着法により設けたフィルムをガスバリアフィルムとして包装材料に用いていたが、これらのガスバリアフィルムは屈曲に対する耐久性に乏しく、すなわち屈曲時において蒸着層にクラックが容易に生じるため、そのためバリア性が容易に低下してしまうという問題があった。またプラスチックフィルムとその表面に蒸着した無機物との間の層間密着力が小さいので、屈曲等を繰り返すとフィルムの可撓性に無機物が追従できず、その結果これらが容易に剥離してしまってガスバリア性を喪失してしまうため、実用面で問題があった。
そこで、このような問題に対処すべく、特に層間密着力を向上させるための様々な提案がなされるようになってきた。例えば特許文献1では、プラスチック材料からなる基材の表面に酸化アルミニウム層を積層する前に、あらかじめプラスチック基材の表面にカーボン蒸着層を積層することとしている。そしてかかるカーボン蒸着層が、リアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマを利用した処理済み面であり、ダイアモンドライク・カーボン(DLC)であること、としている。
特開2006−315359号公報
特許文献1に記載された積層体であれば、RIEを用いてDLC層を設けていることにより、プラスチック基材フィルムの表面と酸化アルミニウム層との層間密着力は従来より向上しているが、同時に、ここに記載された発明によれば、RIEを実施することでRIEモードプラズマによるイオン衝撃により、結合力の弱いカーボンは除去される、とされており、すなわちこの特許文献1における発明では一般的なカーボンは何ら層間密着力の向上に寄与していないこととなっている。
確かに特許文献1に記載の発明のようにすれば層間密着力は向上させることができるが、そのためにわざわざRIE処理を実施し、なおかつそれによりDLC層を積層しなければならない、という点において手順が余分にかかってしまい、必ずしも好ましい状態であるとは言えなかった。すなわち、もっと簡単に層間密着力を確保することが望まれているのである。
そしてその簡単な方法として、いわゆる「核付」と称される手法を用いることがある。
この核付につき、ここで簡単に説明をしておく。
通常、表面が未処理の高分子樹脂フィルムよりなる基材フィルムに対し、例えば酸化アルミニウム等のガスバリア性物質を蒸着させようとする場合、酸化アルミニウム分子が一斉にかつ均等に基材フィルム表面に積層するわけではなく、最初に酸化アルミニウム分子は基材フィルム表面上、分散した状態で基材フィルム表面に積層される。そしてその分子を「基点」として更に酸化アルミニウム分子が「基点」位置にある酸化アルミニウム分子の周囲に付着していき、それがやがて層状となるのである。
しかしこの場合、そもそもの最初の基点となる酸化アルミニウム分子と基材フィルムとの結合が弱ければ、たとえその後に基点の酸化アルミニウム分子周囲に同分子が集結してあたかも結晶成長したかのような状態でやがて層状態となったとしても、いわゆる層間密着力に優れたものとは容易にはならない。
そこで、基材フィルム及びその表面に積層する物質双方と容易に結合し、かつ結合力を高められる分子をあらかじめ基材フィルムの表面に散在させておき、これを基点として用いて積層を行うことで、結果として層間密着力を向上させる、そのための基点としての分子を基材フィルム表面に散在させる行為を「核付」と称する。
そしてこの核付を行えば、RIEによるDLC層を積層する、という手間をかけることなく層間密着力を向上させることが理論的に可能となる、言えるのである。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基材表面にカーボンによる核付層をあらかじめ設けることにより、単純な手法であるにもかかわらず基材とその表面に積層される特定機能を呈する機能性層との層間密着力を向上させることを可能とした積層フィルムの製造方法及び係る製造方法による積層フィルムを提供することである。
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載の発明は、少なくとも、基材となるプラスチックフィルムの表面に対し、不活性ガス導入下において、気圧1×10−3Torr以上1×10−1Torr以下という環境下にてあらかじめプラズマ処理を施すプラズマ処理工程と、前記プラズマ処理工程を実施した後に、その表面に特定機能を有する機能性層を積層してなる機能性層積層工程と、を備えてなり、前記プラズマ処理がグロー放電プラズマ処理であり、前記グロー放電プラズマ処理は、カーボンターゲットをカソードとしたスパッタリング法により、カーボン含有プラズマを発生させることで施されること、を特徴とする。
本願発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記不活性ガスが、アルゴン、であること、を特徴とする。
本願発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記プラズマ処理工程後、前記機能性層積層工程の前に、前記プラズマ処理を施された基材表面に対し、第1高分子樹脂による第1高分子樹脂層を積層してなる第1高分子樹脂積層工程を実行してなること、を特徴とする。
本願発明の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記第1高分子樹脂積層工程を実行した後に、再び前記プラズマ処理工程を前記第1高分子樹脂層表面に対して実行してなること、を特徴とする。
本願発明の請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記機能性層積層工程の後に、前記機能性層の表面に、第2高分子樹脂を積層してなる第2高分子樹脂積層工程を実行してなること、を特徴とする。
本願発明の請求項6に記載の発明は、請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記第1高分子樹脂層又は前記第2高分子樹脂層のいずれか一方若しくは双方がエポキシ系シランカップリング剤によるものであること、又はエポキシ系シランカップリング剤を主に配合してなる高分子樹脂であること、を特徴とする。
本願発明の請求項7に記載の発明は、請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記第1高分子樹脂層又は前記第2高分子樹脂層のいずれか一方若しくは双方に硬化触媒が添加されてなること、を特徴とする。
本願発明の請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記硬化触媒が、鉄アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、アルミニウムアセトナート、四塩化錫、ジイソプロポキシビスアセチルアセトナトチタン、又はジヒドロキシビスラクタトチタンのいずれか1つ又は複数であること、を特徴とする。
本願発明の請求項9に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記第2高分子樹脂層が水溶性高分子と、金属アルコキシド及びその加水分解物とを配合してなる樹脂であること、を特徴とする。
本願発明の請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであること、を特徴とする。
本願発明の請求項11に記載の発明は、請求項9又は請求項10に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記金属アルコキシドがテトラエトキシシランであること、を特徴とする。
本願発明の請求項12に記載の発明は、請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記機能性層を構成する物質が、珪素、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウムよりなる一群の中のいずれか1つ若しくはその酸化物又は化合物、若しくは一群の中の複数若しくはその複数それぞれの酸化物又は化合物、若しくは一群の中の複数のいずれかとその他の酸化物又は化合物、によるものであり、前記機能性層が、真空蒸着法により形成されてなるものであること、を特徴とする。
本願発明の請求項13に記載の積層フィルムに関する発明は、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法により得られてなること、を特徴とする。
以上のように、従来の積層フィルムにおいて、基材フィルムと機能性層との層間密着力を確保するために種々用いられていた手法に比べ、本願発明に係る積層フィルムの製造方法であれば、基材フィルム表面に炭素(カーボン:C)の原子を散在させる核付処理を行うことで、簡単に層間密着力を確保できるようになる。
以下、本願発明の実施の形態について説明する。なお、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
本願発明に係るガスバリアフィルムの製造方法に関して、第1の実施の形態として説明する。
本実施の形態に係るガスバリアフィルムの製造方法は、少なくとも、基材となるプラスチックフィルムの表面に対し、不活性ガス導入下において、気圧1×10−3Torr以上1×10−1Torr以下という環境下にてあらかじめプラズマ処理を施すプラズマ処理工程と、プラズマ処理工程を実施した後に、その表面にガスバリア性を有するガスバリア層を積層してなるガスバリア層積層工程と、を備えてなる製造方法である。
そして本実施の形態において、プラズマ処理はグロー放電プラズマ処理であり、またグロー放電プラズマ処理は、カーボンターゲットをカソードとしたスパッタリング法によりカーボン含有プラズマを発生させることで施されるものとする。
以下、順次説明をしていく。
プラズマ処理を施す対象である基材となるプラスチックフィルムは、本実施の形態においては特段制限されるものではなく、従来公知にガスバリアフィルムの基材フィルムとして用いられるものであれば良く、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや、ナイロンフィルム、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPDE)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、環状ポリオレフィン(COP)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエーテルスルホン(PES)フィルム、等であれば良い。
用いられるフィルムの厚みは特段制限するものではないが、本実施の形態においてはプラズマ処理を施しても破損しない程度の厚みは必要であり、また最終的にハイバリア性を有するガスバリアフィルムを得た際にある程度の可撓性が必要であれば、係る可撓性を確保できる程度の厚み以下とする必要があることは詳細を述べるまでもなく当然のことである。この点を考慮してより具体的に検討するならば、フィルムの厚みは5μm以上200μm以下であることが好ましいと言えるが、これは5μm以下であると後述する積層工程を施す際に行われる種々の処理に耐えられずに破損する可能性が高いからであり、200μm以上であると実際に得られるフィルムの可撓性が乏しいものとなってしまい、ひいては包装材料として不適なものとなってしまうからである。なお、本実施の形態では12μmの厚みを有するPETフィルムであるものとするが、必ずしもこれに限定されるものではないことを断っておく。
本実施の形態で用いるプラスチックフィルムの材質は特段制限をするものではないが、このフィルムは、その表面に対し例えばコロナ処理や易接着コートといった何らかの前処理が施されたものではなく、いわゆるプレーンタイプのフィルムであることが望ましい。つまり、コロナ処理や易接着コートといった処理が施された面に対してプラズマ処理を施しても、本実施の形態においてはむしろ有害となる表面状態が現出される可能性が高いからである。この点に関しては改めて詳述する。
この、基材となるプラスチックフィルムの表面に対し不活性ガス導入下においてプラズマ処理を実施するのであるが、この際の気圧の範囲は本実施の形態においては1×10−3Torr以上1×10−1Torr以下であるものとする。本実施の形態におけるプラズマ処理とは、不活性ガス導入下におけるグロー放電プラズマ処理である。(以下、単に「プラズマ処理」とも記す。)用いられる不活性ガスは特段の制限をするものではないが、本実施の形態ではアルゴンガスとする。
本実施の形態におけるプラズマ処理の気圧の範囲は1×10−3Torr以上1×10−1Torr以下とすることが好ましいことは上述の通りであるが、この範囲内であればアルゴンガス存在下におけるプラズマ処理を行うとプラズマ放電が生じやすいからであり、後述する所望の効果を確実に得られるからである。なおより確実にプラズマ処理による効果を得るのであれば気圧の範囲は1×10−3Torr以上1×10−2Torr以下とすれば良い。
上述した条件、すなわち膜厚が12μmのPETフィルムに対しアルゴンガスの導入下気圧を2×10−3Torrに設定した条件でプラズマ処理を行うものとして更に説明を続ける。また以下の説明では積層する機能性を有する機能性層として、ガスバリア性を発揮するガスバリア層を積層する場合を想定して説明を続ける。
プラズマ処理とそれに応じた基材フィルム表面の状態につき、説明をする。
本実施の形態では、プラズマ処理を基材フィルムであるPETフィルム表面に対し実行することで、最初は「滑らか」だったPETフィルムの表面が、プラズマ処理後は表面が「活性化された状態」となる。
これを更に述べると次のようになる。
表面が未処理(プレーン)な状態のPETフィルム表面に何らかの積層を行おうとしても、積層物が「滑らか」な表面を有するPETフィルム表面に定着せず、いわば「ハジキ」と呼ばれる現象が生じ、所望のレベルの密着性を確保した積層が行えない。
そこで滑らかな表面を有するPETフィルム表面に対し従来のプラズマ処理を行うと、次のような状態となる。
PETフィルムは、厳密に表現するとその表面に、例えばカルボニル基などのような反応端末が所々に現出しているのであるが、ふかん的に考察するならば、プレーンな状態であれば、基材フィルムの表面が大気と触れることで汚れている。ゆえに、たとえ反応端末が現出しているとはいえ、そのままで何らかの積層を試みても汚れの存在が邪魔となってしまい好適な積層を得ることができない。
これに対し、一般的にプラズマ処理を施すとそのような汚れが物理的に除去でき、すなわち基材表面がクリーニングされてホコリなどの物理的な汚れが存在しない状態となる。
しかし一般的なプラズマ処理を施すと、同時に前述したPETフィルム表面に存在する反応端末が新たに反応してしまい、新たな密着性向上の阻害要因となってしまう。
PETフィルム表面には、反応端末であるカルボニル基などの表面官能基が通常のプラズマ処理が施されることにより酸化あるいは窒化した状態になって存在してしまう。そして酸化(窒化)したカルボニル基に何らかの積層物を積層させると、まず酸化(窒化)したカルボニル基と積層物とが酸素(窒素)結合を生じるので、それにより実際積層直後は密着性が非常に向上したような状態となる。しかしこのようにして得られた積層体が一定時間を経過すると、酸素(窒素)結合部分が、例えば加水分解により容易に切断されてしまう。これは大気中の水分と酸素(窒素)結合部分とが反応することにより生じるのである。そしてこの酸素(窒素)結合が切断するということは容易に層間剥離が生じることを意味し、すなわち層間剥離が生じることにより積層物により付与されていた機能が弱体化する、又は消失する、という現象が生じてしまうのである。
つまり従来のプラズマ処理を実施した後に積層を行って得られる積層体は、積層体として完成した直後から大気圏中の水分に暴露されることとなり、その水分を理由として積層部分の酸素(窒素)結合部分において加水分解が生じ、それが故に結合部分が切断してしまい、結果層間剥離が生じ、本願発明で目的とするところの層間密着力が低下し失われてしまう、という現象が生じるのである。
この現象を回避するために、本実施の形態では従来のプラズマ処理を行うのではなくグロー放電プラズマ処理を選択し、なおかつカーボンターゲットをカソードとしたスパッタリング法によるプラズマ処理を行うこととした。このようにすることでカーボン含有プラズマを発生させることができ、また特にこの際用いる不活性ガスをアルゴンガスとすることで、より一層本実施の形態は効果的なものとなるのである。
導入ガスにアルゴンガスを用いることで、前述した、一般的なプラズマ処理を実行した際に見られるPETフィルムの表面官能基であるカルボニル基が酸化又は窒化する現象を抑制又は防止できる。つまり、本実施の形態にかかるプラズマ処理を施すことで、ホコリなどの物理的な阻害物が除去され、なおかつPETフィルム表面に現出している反応端末が酸化又は窒化せずに存在し続けている状態となせる。つまりPETフィルム表面が活性化された状態となっているので、その状態に対して何らかの樹脂等を積層すれば、積層物は従来のように酸素(窒素)結合により結合するのではなく、直接PETフィルム表面に存在する反応端末と結合することができる。ゆえに、これを大気中の水分に暴露したところで、結合部分に加水分解が生じることもなく、ひいては層間剥離が生じることもなくなるのである。ゆえに、積層後の層間密着力をそのまま維持できることとなり、つまりは機能を維持し続けることが可能な状態となる。
なお、アルゴンガス以外の不活性ガスを導入することでも同様の効果が期待できるが、ここではその詳細な説明は省略する。
そして本実施の形態におけるプラズマ処理は始めに述べたようにグロー放電プラズマ処理のことであり、本実施の形態ではカーボンターゲットをカソードとしたスパッタリング法によりカーボン含有プラズマを発生させることとしている。
すなわち、上記の基本的な構造において、反応中に生じているプラズマはカーボンを含有していることより、このカーボンがPETフィルム表面と結合する、更に言えば反応端末とカーボンとが結合する、という現象を生じるのである。そして反応端末と結合したカーボン原子の反対側には、更に結合のための腕が残っており、これが積層しようとする物質と強固に結合するのである。
プラズマクリーニングによってその表面からホコリなどの物理的な結合阻害要因を除去された基材フィルムにおいて、このようなカーボン結合が存在することにより、より一層基材フィルムとその表面に積層をする物質との層間密着力が確保され、向上するのである。
この現象に関し、簡単に説明する。
通常、表面が未処理のPETフィルムに対し、例えばSiOx等のガスバリア性物質を蒸着させようとする場合、最初にSiOxが蒸着する箇所はPETフィルム表面状に散在している。
しかしプラズマ処理を施されたPETフィルムであれば上述のように既にカーボンがその表面に散在しているため、SiOxが最初に蒸着するのはこのカーボンが存在する場所になる。
つまりPETフィルム表面にSiOx分子がいきなり緻密に蒸着するのではなく、PETフィルム表面において点状にカーボン散在しているその場所からまずは蒸着される。この状態で続いて更にSiOxを蒸着させると、このSiOx分子は、既にPETフィルム表面に存在し、またPETフィルムと強固に結合しているカーボンの腕と結合したSiOx分子に更に蒸着しようとし、また実際そのように蒸着する。すなわち、最初にPETフィルム表面上に点として存在するカーボンに結合したSiOx分子を核として、この核があたかも成長するような状態で次々とSiOxが蒸着していくのである。
そして、やがて隣り合った核から成長したSiOx分子同士が結合し、最終的には一面のSiOx分子による膜、すなわちSiOxによるガスバリア層が形成されることになるが、そもそもの始まりの部分はカーボンによりPETフィルムと強固に結合しているので、結果としてSiOx分子による膜はPETフィルムと強固に結合している、すなわち強い層間密着力を呈している、ということになる。
なお、本実施の形態においては単にプラズマ処理ではなくグロー放電プラズマ処理とし、これをカーボンターゲットをカソードとしたスパッタリング法により行うことでカーボン含有プラズマを発生させることとしているのは、略真空状態としないと、プラズマ処理中に大気中に存在する酸素や窒素とPETフィルム表面の反応端末とが先に反応してしまい、前述の無用な酸素結合等を生じてしまうからである。
この状態に至ったガスバリア層を略側面視で観察すると、PETフィルム表面から、緻密な状態に至ったSiOxによるガスバリア層までの距離は大体3nm〜5nmであり、その更に表面にガスバリア層が例えば10nm積層された状態となっている。
つまり、緻密な状態のガスバリア層とPETフィルム表面との間に存在する3nm〜5nmの隙間には、緻密でない、疎な状態のSiOxによる層が存在しているが、この部分は逆な見方をすればガスバリア性物質が存在していない空隙が多数存在していることより、この部分の存在がガスバリア性を低下させる大きな要因となっている。
しかし本実施の形態による手法であれば、カーボン結合の部分を基点としてその周囲にSiOxが凝集することにより、また凝集して成長したSiOxが直接クリーンな状態である基材表面と結合することで、かかる部分の空隙も結果的にSiOxで埋められている。すなわち、基材表面と密な状態でSiOxが緻密に積層されていることになる。この緻密なSiOxの層構成が、ガスバリア性の向上に寄与している、と言える。
なお、以上ではSiOxを蒸着する場合を想定して説明したが、これが例えば後述する、第1高分子樹脂として用いるシランカップリング剤などのような樹脂であっても同様である。すなわち何ら処理の施されていないプレーンなPETフィルム表面に直接シランカップリング剤を塗布し、これによる層を積層しようとしてもPETフィルム表面においてシランカップリング剤がはじかれてしまい、十分に密着性を確保した状態での積層が困難であるが、プラズマ処理をあらかじめ施しておくことで、先述したと同様にシランカップリング剤同士がはじかれることなく次々と積層されていき、やがては緻密な状態でシランカップリング剤が積層される、という状態が現出するのである。
(実施の形態2)
以上説明した第1の実施の形態において、プラズマ処理を施した表面に対し機能性層を積層する前に、第1層としての第1高分子樹脂を第1高分子樹脂層として積層してなる第1高分子樹脂積層工程を実行してもかまわない。ここではこの第1高分子樹脂積層工程を実行するものとして説明を続ける。またここで想定する機能性層が呈する機能とはガスバリア性であるものとするが、本願発明は必ずしもガスバリア性を呈する積層フィルムに限定されるものではないことを断っておく。
第1高分子樹脂としては特段限定されるものではないが、最も好適であるのは、シランカップリング剤である。そしてより好適であると言えるのは、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、メタクリル系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、であり、本実施の形態においてはエポキシ系シランカップリング剤を第1高分子樹脂として用いることとする。
この第1高分子樹脂層を設ける理由は以下の通りである。
本願発明において想定されるガスバリア性や透明導電性といった機能性層を呈する物質は通常金属又は金属酸化物が用いられることが多い。そしてそれらは高分子樹脂である基材フィルムとのなじみは元々良好とは言い難いものであった。すなわち、双方の弾性率や剛性率、線膨張係数も異なり、またこれらを単純に積層しただけの積層フィルムにあっては熱や湿度、物理的な応力に対じしたときに容易に層間剥離を生じやすい、という問題があった。
そこで本願発明では前述の通り、カーボンによる核付を行うことでこの層間剥離に対応しているのであるが、本実施の形態において第1高分子樹脂層を設けることで、更に密着性を向上させるのみならず、第1高分子樹脂層を積層することで、その表面に更に積層される機能性層の呈する機能性をより向上させることが可能となせるので、ここでは第1高分子樹脂層を積層しているのである。
第1高分子樹脂が有機成分と無機成分との両方の性質を有しているならば、高分子樹脂による基材フィルムとセラミックである機能性層との間にこれが介在することで、両者のなじみを良好なものとすることが期待され、また事実なじみを良好なものとすることができるのである。
しかしそれ以上に、第1高分子樹脂層を設けることで第1高分子樹脂層の塗布面を平滑にすれば、その表面に更に積層される機能性層も結果として平滑なものとすることが容易に可能となり、それが機能性層の緻密性をも向上させ、結果として機能性層の呈する機能及び層間密着力を飛躍的に向上させることができるのである。
そして本願発明では前述したようにプラズマ処理により既に密着性を向上させているのであるが、このように第1高分子樹脂層を設けることで層間密着力に加え、機能性層の呈する機能を向上させることが可能となるのである。
本実施の形態における機能性層はガスバリア性を想定しており、この点から述べると、第1高分子樹脂層を設けることにより、更にその表面に積層されるガスバリア層が緻密なものとなることで、基材フィルムとガスバリア層との密着性が核付により向上するばかりでなく第1高分子樹脂層の存在により、より密着性が向上し、そしてガスバリア性もより高度なものとすることができるのである。
よってこのような目的を達するために第1高分子樹脂層を設けることがより好適であると言える。更にこの第1高分子樹脂層自身にも機能性層の備える性質と同等の性質が備わっていればより一層、全体としての積層フィルムの機能性向上に寄与することが可能となる。
そしてこのような目的に適した素材として例えばシランカップリング剤やシランカップリング剤を主に配合してなる高分子樹脂が好適であると言え、本実施の形態においては第1高分子樹脂としてエポキシ系シランカップリング剤を用いるのであり、以下の本実施の形態においてはこれを用いたものとして説明を続ける。
第1高分子樹脂を積層する手法は従来公知の手法であって構わないが、本実施の形態においてはコーティング法を用いるものとし、またその積層厚みは0.2μmであることとする。ちなみに層の厚みは0.03μm以上2μm以下であることが好ましいが、これは0.03μm以下であると上述した効果が得られにくくなり、また2μm以上とすると、本実施の形態により得られる積層フィルム全体の厚みが増えてしまい、可撓性が欠けたものとなってしまう。またそれゆえにクラックが発生してしまったり、実際の製造時において乾燥工程に時間を要するためにコスト抑制が難しくなる、等の理由により、最終製品としては好適なものではなくなるからである。
このようにしてプラズマ処理をその表面に施したPETフィルムのプラズマ処理済み表面にエポキシ系シランカップリング剤による第1高分子樹脂層を積層する第1高分子樹脂積層工程を実行すると次にこれを硬化させるのであるが、その手法は従来公知のものであって構わない。しかしここで硬化触媒を添加することによりその硬化を促進させることも考えられる。
ここで用いられる硬化触媒も従来公知のものであって構わないが、用いる硬化触媒を例えば、鉄アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、アルミニウムアセトナート、四塩化錫、ジイソプロポキシビスアセチルアセトナトチタン、ジヒドロキシビスラクタトチタン、のいずれか1つ又は複数であること、とすれば、効果的にエポキシ系シランカップリング剤を主に配合してなる高分子樹脂が硬化することとなり、後述する目的に応じて大変好適なものとすることができる。なお、添加量に関しては効果的な量を適宜選択、決定すれば良い。
(実施の形態3)
次に、先に述べた第2の実施の形態において、その全工程を終了後、更に機能性層の表面に第2高分子樹脂を積層する第2高分子樹脂積層工程を実行してなる、積層フィルムの製造方法につき、第2の実施の形態として説明する。
この第2高分子樹脂に関して、所望する積層フィルムがガスバリアフィルムであり、かつ第2高分子樹脂がガスバリア性を有する物質であるならば、これをガスバリア性を備えた機能性層の表面に積層することでガスバリア性を更に補完することが可能となり、すなわちよりハイバリア性を得られることが考えられ、またガスバリア層それ自体を保護するトップコート層としての役割を果たすことが期待される。
すなわち、機能性層と同等の機能を呈する性質を有した物資を用いた第2高分子樹脂層とすると、所望の機能がより強調されることが考えられ、好適なものとなせるのである。
第2高分子樹脂について述べると、これは先に説明した第1高分子樹脂の場合と同様に、所望する機能がガスバリア性であるならば、ガスバリア性を有した高分子樹脂であればより好ましく、例えばエポキシ系シランカップリング剤であれば好ましい。そして第1高分子樹脂と同一のエポキシ系シランカップリング剤を第2高分子樹脂とすれば、製造過程においても同一物質を利用することでその作業が容易なものとすることができ、更に得られたハイバリア性フィルムの物性を安定させるためにも、できるだけ構成する物質の種類は少ない方が好ましいと言えるので、本実施の形態においては、所望する機能をガスバリア性とし、第1層と同一の材料である、エポキシ系シランカップリング剤を用いたものとして説明をする。そしてこの第2高分子樹脂層を積層することにより、より一層ガスバリア性を向上させることができるのである。
第2高分子樹脂層の厚みは0.03μm以上2μm以下であることが好ましいが、これは0.03μm以下であるとガスバリア性向上という目的を達することができず、また2μm以上とするとフィルム全体の可撓性が乏しくなるからである。なお、本実施の形態においてはこの厚みは0.3μmであるものとする。
なお、この第2高分子樹脂層に対しても、第1高分子樹脂層に関する箇所で説明したように、シランカップリング剤の硬化を促進するために、第1の実施の形態にて説明したのと同様の硬化触媒を添加することが考えられる。詳細については先述と同様であるので、ここではその説明を省略する。
この第2高分子樹脂としては特段限定されるものではないが、最も好適であるのは、シランカップリング剤である。そしてより好適であると言えるのは、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、メタクリル系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、であり、本実施の形態においてはエポキシ系シランカップリング剤を第2高分子樹脂として用いることとする。
このようにして実行される本実施の形態に係るガスバリアフィルムの製造方法によれば、基材フィルム/第1高分子樹脂層/ガスバリア層/第2高分子樹脂層、という構成を有するガスバリアフィルムを得ることができる。
またここでは詳述しないが、第1高分子樹脂層を積層した後に、その表面に機能性層を積層する前に、再びプラズマ処理を施すことも考えられる。このようにすることで、第1高分子樹脂層と機能性層との層間密着性をより向上させることが考えられるからである。同様に、機能性層の表面に第2高分子樹脂層を積層する前にプラズマ処理を施すことも考えられるが、ここではプラズマ処理を施すことにより機能性層の呈する機能が低下しないかどうかを考慮した上で実行の有無を決定すれば良い。
(実施の形態4)
先に述べた第2又は第3の実施の形態における積層フィルムの製造方法において、第1又は第2高分子樹脂のいずれか又は双方に硬化触媒を添加する場合につき説明をしたが、ここでは第2高分子樹脂に、水溶性高分子と、金属アルコキシド及びその加水分解物と、のいずれか若しくは複数を含有させた場合につき、説明をする。
これらを第2高分子樹脂に含有させた場合、機能性層がガスバリア性を呈するものであるならば、ガスバリア性を向上させる、という効果が期待できる。更に積層フィルム全体の保護層としての効果も期待できる。特に第1高分子樹脂層がなく第2高分子樹脂層のみの構成であるならば、第2高分子樹脂層をいわゆるTopコート層として設計する場合に特に有効である。
また本実施の形態に係る積層フィルムがガスバリア性フィルムを想定する場合であって、この実施の形態における水溶性高分子としてポリビニルアルコールを採用するならば、レトルト用途に要求される酸素バリア性を向上、維持させることが可能となるので、水溶性高分子としてポリビニルアルコール樹脂を選択すると好適なものとなせる。
また本実施の形態において金属アルコキシドをテトラエトキシシランとすると、そして同時にポリビニルアルコールを用いたとすると、それらを含んだ樹脂層の反応速度が速くなり、すなわち硬化に要する時間を短縮可能となるので、結果としてより好適なものとすることが期待できる。
ここで反応速度が速くなる、という理由は、単純にSi−Oの架橋反応のみで積層工程が実行できるからである。つまり、テトラエトキシシラン(CO)Siに対し加水分解で(XO)部が−OHに変わり、次いでポリビニルアルコールの−OHと脱水縮合してO−Si−Oの三次元架橋反応が実行されるので、余計な有機鎖を有していない単純構造体の方が、立体障害を起こすこともなく反応速度が速くなるのである。
(実施の形態5)
以上説明した4つの実施の形態において、それぞれ機能性層を積層する機能性層積層工程を実行すること、としているが、この工程につき簡単に説明しておく。なお、ここではガスバリア性を所望することとして、すなわち積層フィルムとはガスバリアフィルムであるもの、として説明をする。
本実施の形態におけるガスバリア層を構成するガスバリア性物質として、例えば珪素、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、の一群よりなる群のいずれか1つ若しくはその酸化物、窒化物、又は化合物のいずれか、又はこの一群の中の複数若しくはその酸化物、窒化物、又は化合物、であることが好適である。更に具体的に述べるならば、例えば珪素を用いても良く、また酸化珪素、窒化珪素でも良く、更に珪素化合物であっても良い。またスズとインジウムの合金の酸化物や窒化物であっても良い。すなわちこれら一群の金属を原材料とした物質によるガスバリア層とすれば良い。
又は、ガスバリア層がSiOxで示される酸化珪素によるものであって、なおかつxが1.0≦x≦2.0であるものとしても良い。
また後述するが、SiOxによる層は基本的には透明であり、そして本実施の形態に係るハイバリア性フィルムに用いる物質を全て基本的に透明なものを用いれば、本実施の形態により得られるハイバリア性フィルム全体も透明なものとなり、かようなハイバリア性フィルムを包装材料として用いれば内容物も容易に視認可能となるので、単にガスから内容物を保護するだけではなく、内容物の状態も視認できる、という利点が生じるので、SiOxを用いることはこの点において有利であると言える。
SiOxを積層する場合、その積層手法は従来公知のものであって良い。そして本実施の形態では真空蒸着法によるものであることとするが、必ずしもこれに限定されるものではなく、いわゆる物理的蒸着方法、化学的蒸着方法、その他公知な手法で行えば良い。
ガスバリア層の厚みについては、70Å以上1000Å以下であることが好ましい。これは、70Å以下であるとガスバリア層自身が発揮すべきガスバリア性が不十分なものとなってしまい、また1000Å以上であると得られるガスバリアフィルム全体の可撓性が乏しくなってしまうからである。なお、本実施の形態においてはこの厚みは120Åであるものとする。
本願発明に係る積層フィルムの製造方法及び得られる積層フィルムに関し、更に実施例を交えて以下説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また各実施例に用いた積層フィルムは、第1の実施の形態〜第5の実施の形態にて既に説明した製造方法により得られたものであり、比較例に用いたものもそれに準じた製造方法により得られたものであることを断っておく。更に以下の説明では所望する機能をガスバリア性とし、すなわちガスバリアフィルムの場合につき説明をするが、層間密着性の向上という観点から必ずしもガスバリアフィルムに限定することを前提に説明するものではないことを改めて断っておく。
(各部材・装置の説明)
<基材となる高分子樹脂フィルム>
PETフィルム((株)帝人製「NS」厚み12μm)
<グロー放電プラズマ処理に関する説明>
プラズマ処理時における導入ガス:アルゴン
プラズマ処理時における真空度:2×10−3Torr
<ガスバリア層(機能性層)>
SiOx(1.0≦x≦2.0) 厚み0.015μm
<第1高分子樹脂>信越化学工業(株)製
商品名:KBM403
積層厚み:0.2μm
(第1高分子樹脂層の調製)
KBM403 50重量部
水 50重量部
塩酸(35%) 0.07 重量部
これらを混合した液を作成して加水分解させた後、
IPA/n−ブタノール=575/575(重量部)を加えて希釈する。
そして更に硬化触媒(アルミニウムアセチルアセトナート)を2重量部加えて調製を完了する。
<第2高分子樹脂>信越化学工業(株)製
商品名:KBE403
積層厚み:0.2μm
(第2高分子樹脂層の調製)
KBE403 50重量部
水 50重量部
塩酸(35%) 0.07 重量部
これらを混合した液を作成して加水分解させた後、
IPA/n−ブタノール=575/575(重量部)を加えて希釈する。
そして更に硬化触媒(アルミニウムアセチルアセトナート)を2重量部加えて調製を完了する。
(各実施例及び比較例の構成)
実施例1 基材/ガスバリア層
実施例2−1 基材/第1高分子樹脂層/ガスバリア層
実施例2−2 基材/第1高分子樹脂層/ガスバリア層
実施例3−1 基材/第1高分子樹脂層/ガスバリア層/第2高分子樹脂層
実施例3−2 基材/第1高分子樹脂層/ガスバリア層/第2高分子樹脂層
実施例4 基材/ガスバリア層/第2高分子樹脂層
以上各実施例においては、基材の表面に対し真空プラズマ処理工程を実行することにより真空プラズマ処理を施した後に積層物を積層した。
また実施例2−2及び実施例3−2では、第1高分子樹脂層の表面に対し再び真空プラズマ処理を施した後、更に積層を行った。
比較例1 基材/ガスバリア層
比較例2 基材/第1高分子樹脂層/ガスバリア層
比較例3 基材/第1高分子樹脂層/ガスバリア層/第2高分子樹脂層
比較例4 基材/ガスバリア層/第2高分子樹脂層
比較例5 基材/第1高分子樹脂層/ガスバリア層/第1高分子樹脂層/ガスバリア層
比較例1・4では基材表面に何ら前処理を行うことなくガスバリア層を積層した。
比較例2・3・5では基材表面にカーボンターゲットを使用しない単純なプラズマ処理を施した。
各実施例及び各比較例につき、バリア性を以下のようにして調べた。
<ガスバリア性の測定に関する説明>
各実施例及び比較例の積層フィルムに、更に厚みが60μmのCPP(東洋紡績(株)製:商品名「CT−P1146」)を従来公知な手法によりドライラミネートしたものをサンプルとした。
得られたサンプルを125℃の熱水に30分間/又は120分間、浸漬した。
各サンプルに対し、(A)浸漬前(B)30分浸漬後(C)120分浸漬後、それぞれの時点での
1) WVTR(水蒸気透過度)
2) OTR(酸素透過度)
3) シーラントとのラミネート強度変化
を測定した。
得られたガスバリアフィルムは JIS Z 0208 に準じて透過湿度試験を行った。(カップ法)
透湿度に関する測定は JIS K 7129 に準じて行った。(モコン法透湿)
酸素透過度に関する測定は JIS K 7126 に準じて行った。(モコン法酸素)
Figure 0005285189
以上の結果より分かるように、本願発明に係る積層フィルムの製造方法による積層フィルムであれば、所望する性能を高度に発揮することができる、ということが分かる。
すなわち、実施例であればどの例であってもWVTR及びOTRの値はさほど変化しておらず、またラミネート強度も変わっていない(全て破断してしまっている)ことより、その性能を維持していることがわかるが、比較例であればどの例であってもWVTR及びOTRの値が経時とともに劣化しており、又はラミネート強度が低下してしまっていることがわかる。
上記ガスバリアフィルムの例により述べるならば、基材フィルムにプラズマ処理を施した後に積層を行ったことにより層間密着性は本願発明に係る製造方法によるものの方が遥かに好ましいものとなっていることが分かる。ちなみに第1高分子樹脂層に対しプラズマ処理を施した場合、より一層層間密着性が良好であることが分かる。
また本願発明では単なるプラズマ処理ではなく、アルゴンガスを導入ガスとしたプラズマ処理としていることより、比較例のプラズマ処理を施した場合に比して層間密着性が良好であることが分かる。これは既に説明した通り、通常の酸素や窒素を用いたプラズマ処理を行った場合、不用意に生じてしまった酸素結合が水蒸気により切断し、その結果層間剥離が生じていることの査証であるものと考える。
ちなみに本実施例において、基材表面にプラズマ処理を施さずに第1高分子樹脂を直接積層した例を示していないが、これはそのように積層しようとしても「ハジキ」と呼ばれる現象が生じてしまったために積層が不可能であったため、すなわち結果として積層体を得ることができなかったからである。
はじめにも断ったようにここではガスバリアフィルムの場合を想定して説明を行ったが、例えば透明導電性フィルム等のような積層フィルムであり、層間密着力の向上が求められるものであれば同様の結果が導き出されるので、さらなる実施例等による説明は省略する。
以上説明した積層フィルムの製造方法であれば、高温高湿の環境下に曝されても透明導電層の性質変化、すなわち導電性の変化、シート抵抗値の増加が小さいものとなるので、フィルムそれ自体に耐湿熱性が備わった物とすることができる。よって、液晶ディスプレイ等の各種ディスプレイや太陽電池、タッチパネルなどに用いられる透明電極として有用である。またかかるフィルムを構成する透明導電層の材料である透明導電剤は、これを電磁波シールド材などに用いることで有用なものとすることができる。

Claims (13)

  1. 少なくとも、
    基材となるプラスチックフィルムの表面に対し、不活性ガス導入下において、気圧1×10−3Torr以上1×10−1Torr以下という環境下にてあらかじめプラズマ処理を施すプラズマ処理工程と、
    前記プラズマ処理工程を実施した後に、その表面に特定機能を有する機能性層を積層してなる機能性層積層工程と、
    を備えてなり、
    前記プラズマ処理がグロー放電プラズマ処理であり、
    前記グロー放電プラズマ処理は、カーボンターゲットをカソードとしたスパッタリング法により、カーボン含有プラズマを発生させることで施されること、
    を特徴とする、積層フィルムの製造方法。
  2. 請求項1に記載の積層フィルムの製造方法であって、
    前記不活性ガスが、アルゴン、であること、
    を特徴とする、積層フィルムの製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の積層フィルムの製造方法であって、
    前記プラズマ処理工程後、前記機能性層積層工程の前に、
    前記プラズマ処理を施された基材表面に対し、第1高分子樹脂による第1高分子樹脂層を積層してなる第1高分子樹脂積層工程を実行してなること、
    を特徴とする、積層フィルムの製造方法。
  4. 請求項3に記載の積層フィルムの製造方法であって、
    前記第1高分子樹脂積層工程を実行した後に、再び前記プラズマ処理工程を前記第1高分子樹脂層表面に対して実行してなること、
    を特徴とする、積層フィルムの製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法であって、
    前記機能性層積層工程の後に、
    前記機能性層の表面に、第2高分子樹脂を積層してなる第2高分子樹脂積層工程を実行してなること、
    を特徴とする、積層フィルムの製造方法。
  6. 請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法であって、
    前記第1高分子樹脂層又は前記第2高分子樹脂層のいずれか一方若しくは双方がエポキシ系シランカップリング剤によるものであること、又はエポキシ系シランカップリング剤を主に配合してなる高分子樹脂であること、
    を特徴とする、積層フィルムの製造方法。
  7. 請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法であって、
    前記第1高分子樹脂層又は前記第2高分子樹脂層のいずれか一方若しくは双方に硬化触媒が添加されてなること、
    を特徴とする、積層フィルムの製造方法。
  8. 請求項7に記載の積層フィルムの製造方法であって、
    前記硬化触媒が、鉄アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、アルミニウムアセトナート、四塩化錫、ジイソプロポキシビスアセチルアセトナトチタン、又はジヒドロキシビスラクタトチタンのいずれか1つ又は複数であること、
    を特徴とする、積層フィルムの製造方法。
  9. 請求項5又は請求項6に記載の積層フィルムの製造方法であって、
    前記第2高分子樹脂層が水溶性高分子、金属アルコキシド及びその加水分解物のいずれか若しくは複数を配合してなる樹脂であること、
    を特徴とする、積層フィルムの製造方法。
  10. 請求項9に記載の積層フィルムの製造方法であって、
    前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであること、
    を特徴とする、積層フィルムの製造方法。
  11. 請求項9又は請求項10に記載の積層フィルムの製造方法であって、
    前記金属アルコキシドがテトラエトキシシランであること、
    を特徴とする、積層フィルムの製造方法。
  12. 請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法であって、
    前記機能性層を構成する物質が、珪素、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウムよりなる一群の中のいずれか1つ若しくはその酸化物又は化合物、若しくは一群の中の複数若しくはその複数それぞれの酸化物又は化合物、若しくは一群の中の複数のいずれかとその他の酸化物又は化合物、によるものであり、
    前記機能性層が、真空蒸着法により形成されてなるものであること、
    を特徴とする、積層フィルムの製造方法。
  13. 請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法により得られてなること、
    を特徴とする、積層フィルム。
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