JP5283395B2 - 印刷用紙 - Google Patents

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JP5283395B2
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Description

本発明は、印刷用紙に関する。さらに詳しくは、コールドセット型インキを使用したオフセット輪転印刷用等に特に好適な印刷用紙に関する。
配達業務負荷の軽減や配送費用の低廉化、資源の有効活用のため、日々大量に使用される新聞用紙やフリーペーパー等の印刷用紙においては、軽量化が望まれ、特に近年の新聞用紙では、坪量が36〜50g/m2といった軽量なものの使用が主体となっている。
ところが、軽量化や資源の有効利用に伴い、古紙の使用割合が増大することから、得られる印刷用紙の白紙不透明度や印刷不透明度が低下してしまう。そこで、この不透明度低下対策として、通常原料パルプに無機填料が配合されるが、かかる無機填料の増配により、印刷用紙の表面強度の低下や、紙粉の発生等のトラブルが生じている。また近年、広告媒体の増加により、印刷用紙での広告面の印面品質に対する要求も高まっている。そのため、例えば輪転機の高速化や両面カラー用タワープレス機の増設を実施する新聞社や印刷会社が多くなっており、高速オフセット輪転印刷での多色印刷における印面品質の向上が取り組まれている。しかしながら、特にこのような高速オフセット輪転印刷での多色印刷(両面カラー用タワープレス機の増設)では、印刷適性の低下や印刷用紙の不透明度の低下が問題となっている。
前記のごとき問題には、例えば物理的に原紙表面を平坦化処理する技術や、原紙表面に表面処理剤を塗布する手段といった従来の方法では対応することができなくなっている。これは、例えば脱墨古紙パルプや機械パルプの配合量が多い原紙表面に平坦化処理を施すと、一旦抄紙され、物理的、化学的手段で脱墨されて劣化が進み、脆くなったパルプ繊維が、紙粉となって印刷用紙表面から脱落するとともに、印刷用紙中に含まれる填料の脱落も促進し、印刷設備の汚損や印刷不良を招いてしまうからである。
そこで、このような問題を解決する技術として、例えば特許文献1には、従来の金属ロールで構成されるカレンダーを、弾性ロールと金属ロールとの組合せからなるソフトカレンダーに替え、金属ロール(ヒートロール)の温度を20〜150℃で平坦化処理することで、紙粉の発生量が少ないオフセット印刷用新聞用紙を製造する方法が記載されている。しかしながら、物理的な平坦化処理は、用紙の剛度を低下させ、新聞用紙としての取り回しを悪化させ、読者にとって新聞用紙が扱い難くなるとともに、新聞用紙表面が緻密になることで、新聞用インキの吸収乾燥性を阻害し、インキ汚れや裏移りの問題を惹き起こしてしまう。
一方、原紙表面に単に澱粉(表面処理剤)を塗布する技術では、例えば2.0g/m2を超える澱粉塗布量が必要であり、このように多量に澱粉を塗布すると、オフセット印刷における湿水によりネッパリが生じ、用紙がブランケットから剥離し難くなって作業性が低下するといった問題がある。
そこで、このような問題を解決する技術として、例えば特許文献2には、特定の重合体ラテックスを含有する新聞用紙用塗被組成物を新聞原紙に塗布することで、コールドセット型インキによる高速多色オフセット輪転印刷において、表面強度、インキ着肉性、インキセット性等のオフセット印刷適性と、引張強度(特に湿潤引張強度)とに優れ、かつこれらオフセット印刷適性と引張強度とのバランスがよい新聞用紙用塗被組成物及び新聞用紙を得る技術が開示されている。これは、一般にラテックスは被膜性が高いため、新聞用紙表面の強度を高め、コールドセット型インキを用いて印刷を行った際に、インキを新聞用紙表面に留め、インキ着肉性、インキセット性等のオフセット印刷適性を得ようとするものである。しかしながら、このような重合体ラテックスは被膜形成性が高すぎて、印刷用紙におけるコールドセット型インキのインキセット性が反って低下し、擦れ汚れや、インキの裏移りといった問題を惹き起こしてしまう。
特開2002−285496号公報 特開平6−123099号公報
本発明は、前記背景技術に鑑みてなされたものであり、近年主流となっている、コールドセット型インキを使用した、17〜18万部/時間といった高速でのオフセット輪転印刷において、印刷操業性、色ずれ等の印刷適性、印刷不透明度等の従来の問題が改善された印刷用紙を提供することを目的とする。
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
脱墨パルプを30〜100質量%含む原料パルプと填料とを少なくとも構成成分とする、紙面pH6.0〜10.0、坪量36〜50g/m2の印刷用紙であって、
前記填料が、(1)BET比表面積50m2/g以上、吸油量150ml/100g以上の毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムと、(2)反応後乾燥段階を経ない水和ケイ酸と、を含有し、
かつ、当該炭酸カルシウム及び水和ケイ酸を含有する印刷用紙の表裏面に、澱粉及びポリビニルアルコールの少なくともいずれか一方が塗布されている、
ことを特徴とする印刷用紙。
〔請求項2記載の発明〕
前記炭酸カルシウムの体積平均粒子径が1.8〜10.0μmであるのに対し、前記水和ケイ酸の体積平均粒子径が3〜9μmである、
請求項1記載の印刷用紙。
〔請求項3記載の発明〕
前記水和ケイ酸は、BET比表面積が150m 2 /g以上、吸油量が190〜230ml/100gである、
請求項1又は請求項2記載の印刷用紙。
〔請求項記載の発明〕
前記反応後乾燥段階を経ない水和ケイ酸は、
X線マイクロアナライザーを用いたX線の加速電圧が8kVで拡散領域が1μmの条件での紙面の面分析で、水和ケイ酸の凝集体粒子と分析されるケイ素の検出域の大きさにおいて、当該ケイ素の検出域における粒子径が20μm以上の凝集体粒子の所定領域における面積割合が10%以下に成るように分散させた水和ケイ酸からなる、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の印刷用紙。
〔請求項記載の発明〕
前記原料パルプに、パルプ調整段階で凝結剤が、それに続く抄紙工程前段で凝集剤が、それぞれ添加されている、
請求項1〜のいずれか1項に記載の印刷用紙。
本発明によれば、坪量が36〜50g/m2と小さく、軽量であるにもかかわらず、コールドセット型インキを使用して多色オフセット高速輪転印刷に供した場合であっても、オフセット輪転印刷操業性が良好で、高いインキ濃度及びインキ着肉性を有しながら、インキセット性も良好で、色ずれの問題が生じず印刷適性に優れ、しかも高い印刷不透明度が維持された印刷用紙が提供される。
本形態の印刷用紙は、脱墨パルプを30〜100質量%含む原料パルプと填料とを少なくとも構成成分とする、紙面pH6.0〜10.0、坪量36〜50g/m2の印刷用紙であって、前記填料が、(1)BET比表面積50m2/g以上、吸油量150mg以上の毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムと、(2)反応後乾燥段階を経ない水和ケイ酸と、を含有する、ことを特徴とするものである。
1)原料パルプ
まず、本形態に用いられる原料パルプについて説明する。本形態の印刷用紙の原紙を構成する原料パルプには、脱墨(古紙)パルプが全パルプ成分を基準として30〜100質量%含まれる。
このような脱墨古紙パルプの増配は、環境保全の面から好ましく、印刷用紙においても、資源の有効利用という観点から、近年特に脱墨古紙パルプの利用、高配合化が求められている。ところが一方、脱墨古紙パルプの増配は、前記したように、一般に所定の印刷用紙強度を確保することが困難になるとともに、インキセット性、インキ着肉性等の印刷適性を低下させてしまう。すなわち、脱墨古紙パルプは、一度抄紙され、カレンダー処理され、市場での使用後に回収された古紙から再生したパルプであるため、パルプ繊維が損傷して繊維が短く、クッション性が低くなっている。そのため、脱墨古紙パルプを多く配合した印刷用紙は密度が高く、クッション性が低い用紙となり、インキセット性の低下、インキ着肉性の低下、表面強度の低下による紙粉の発生、これらの問題に起因するインキ濃度の低下を招くのである。
特に脱墨古紙パルプの中でも、新聞古紙が脱墨処理された脱墨古紙パルプを使用することが、構成原料が近似であり、資源のリサイクルの面で最も効率よいが、新聞古紙中には、繰り返しリサイクルされた脱墨古紙パルプが存在し、再生化処理の繰り返しにより、パルプ繊維の劣化が進み、印刷用紙の不透明度が低下するだけでなく、脆くなり、紙粉や粉落ち、用紙表面の繊維がオフセット印刷ブランケットに取られるといった問題が生じる。
ところが本形態では、後述するように、パルプとともに配合する填料として、特定の毬栗状炭酸カルシウムが少なくとも含有されているので、このような脱墨古紙パルプが全パルプ成分を基準として30〜100質量%と多量に含まれているにもかかわらず、本形態の印刷用紙は、脱墨古紙パルプを多量に配合した場合の従来の問題が解決され、印刷操業性が良好で、高いインキ濃度、インキ着肉性を有しながら、インキセット性も良好で、色ずれの問題が生じず印刷適性に優れ、しかも高い印刷不透明度が維持される。
本形態に用いられる脱墨古紙パルプとしては、例えば茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、更紙古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白脱墨古紙パルプ等があげられ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
本形態において、印刷用紙の軽量化及び資源の有効利用という点から、脱墨古紙パルプは全パルプ成分を基準として30〜100質量%、好ましくは50〜100質量%、さらに好ましくは70〜100質量%含有される。
印刷用紙の構成成分である原料パルプとして、本形態の目的を阻害しない限り、前記脱墨古紙パルプの他にも、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ;広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ等の、公知の種々のパルプがあげられ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択し、その割合を調整して使用することができる。
なお、化学パルプを製造する際の漂白方法についても特に限定がないが、漂白工程で塩素ガスのような分子状塩素を使用せずに漂白した無塩素漂白(ECF)パルプ、さらには二酸化塩素のような塩素化合物も一切使用せずに漂白した無塩素漂白(TCF)パルプが、環境保全の点から好ましい。
2)紙面pH
本形態の印刷用紙を得るには、前記原料パルプからなるパルプスラリーに填料を添加し、例えば好適には紙面pH6.0〜10.0、さらに好適には紙面pH6.5〜9.5の中性〜アルカリ性となるように抄造pH等の条件を調整して、長網型抄紙機、ツインワイヤー型抄紙機等の通常の抄紙機にて抄紙する方法を採用することができるが、本形態においては、原料パルプの調製段階で凝結剤を添加し、さらに当該パルプの調製段階に続く抄紙工程前段で凝集剤を添加することが、パルプ懸濁液中に混在する微細な無機粒子の凝集を推進し、さらに原料パルプに無機粒子を付着させて填料歩留りを向上させたり、濾水性が向上してウェットエンドの安定性が得られたりするといった利点があるので好ましい。
本形態の印刷用紙の紙面pHは、6.0以上、好ましくは6.5以上であり、また10.0以下、好ましくは9.5以下である。特に新聞用紙への高速輪転オフセット印刷において、印刷前に紙面に塗布される湿し水が、新聞社によって変動するものの、ほぼ中性であることから、湿し水との相性を考慮し、印刷不良発現のリスクを低減させるために、かかる紙面pH範囲に調整することが好ましい。
なお、本明細書において、紙面pHは、紙面用pH測定キット(共立理化学研究所製)にて、試薬(MPC−BCP、−BTB、−CR、−TB)を使用し、変色標準計で目視にて測定した値をいう。
3)坪量
本形態の印刷用紙は、JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠した坪量が、36g/m2以上、好ましくは37g/m2以上であり、また50g/m2以下、好ましくは46g/m2以下の軽量なものである。かかる坪量が36g/m2未満では、不透明度や紙質強度が不充分となり、17〜18万部/時間にも及ぶ近年の高速印刷においては、断紙が生じ易くなるといった問題が発生する。一方、坪量が50g/m2を超えると、充分な不透明度を確保し易くなるものの、軽量な印刷用紙として扱い難くなる。
坪量が36g/m2未満においては、本発明を利用しても不透明度や紙質強度が不十分であり、時間当り17〜18万部にも及ぶ近年の高速印刷においては、断紙が生じ易くなる問題が発現する。他方、坪量50g/m2を超える坪量では、本発明を利用しなくとも十分な不透明度を確保しやすく、クッション性の確保も容易であるため、印刷適性、作業性とも問題なく使用可能である。
4)填料
本形態で用いられる填料は、(1)BET比表面積50m2/g以上、吸油量150mg以上の毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムと、(2)反応後乾燥段階を経ない水和ケイ酸と、を含有する。
本形態においては、毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムを少なくとも含有した填料が用いられるが、当該填料としてさらに反応後乾燥処理を施さない含水ケイ酸が含有された場合には、用紙構造がさらに嵩高になり、印刷用紙にクッション性が付与され、例えばコールドセット型インキの着肉性がより向上するほか、白紙不透明度、印刷不透明度、印刷適性等がさらに向上するといった利点がある。
また、好適に併用される含水ケイ酸単体の白色度は、通常印刷用紙の原紙中でその寄与が低いが、毬栗状炭酸カルシウムと併用することで、結果として印刷用紙の白色度が高くなる。
(1)炭酸カルシウム
本形態においては、毬栗状の炭酸カルシウムを填料として少なくとも含有していることが、大きな特徴の1つであり、この毬栗状炭酸カルシウムを填料として使用し、先に述べたように、好適には紙面pH6.0〜10.0、さらに好適には紙面pH6.5〜9.5の中性〜アルカリ性で抄造することにより、得られる印刷用紙の光学的性質と強度とが同時に改善される。
すなわち、炭酸カルシウムのバッファー効果によって紙面pHは6.0〜10.0になり、紙面pHが中性あるいはアルカリ性の場合、酸性の場合と比べて繊維1本1本が充分に伸びているので、繊維相互が水素結合を形成する領域が増加する。したがって、灰分が酸性印刷用紙と同程度の場合には、中性印刷用紙の紙力の方が高くなり、この結果、坪量が36〜50g/m2と低坪量の印刷用紙であっても、多色オフセット高速輪転印刷に耐え得る充分な強度が得られる。
また、填料として毬栗状炭酸カルシウムを配合した本形態の印刷用紙の印刷適性は、例えば従来の紡錘型や柱状、キュービック型、針状の軽質炭酸カルシウムを配合した印刷用紙と比較して極めて良好であり、白色度も高くなる。
前記毬栗状炭酸カルシウムは、水酸化カルシウムに二酸化炭素含有気体を反応させ、例えば紡錘型や柱状の安定なカルサイト型結晶構造の炭酸カルシウムや、準安定なアラゴナイト型結晶構造の炭酸カルシウムを得る過程において、二酸化炭素含有気体の供給方法を調整したり、脱水、乾燥、熱処理を施す際に、例えば縮合リン酸あるいはその金属塩等の添加剤を添加したりすることで紡錘型や柱状の結晶構造が毬栗状に凝集又は結晶化して得られる。
カルサイト系炭酸カルシウムの場合には、カルサイトが他の結晶構造よりも安定であるので、天然にも石灰石として産出されている。また人工的には、例えば天然の石灰石を高温で酸化カルシウムと二酸化炭素とに分解し(不純物の除去作用あり)、酸化カルシウムを水に入れて水酸化カルシウムとした後(消和)、これに、下記反応式のごとく条件(温度、濃度、撹拌の程度)を制御しながら二酸化炭素を吹き込むことで、カルサイト系炭酸カルシウムを得ることができる。
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2
またアラゴナイト系炭酸カルシウムの場合も、カルサイト系炭酸カルシウムの製法とほぼ同じであり、その生成時の反応条件を調整することにより、アラゴナイト系炭酸カルシウムを得ることができる。例えば下記反応式のごとく、苛性化反応槽で、消石灰と水とを用い、攪拌翼を取り付けた攪拌機で攪拌混合して石灰乳を調製し、炭酸ソーダの添加速度、添加時間、温度条件を適宜調整して苛性化反応をさせて得られる。
Na2CO3+CaO+H2O→CaCO3+2NaOH
・ 含有質量%
本形態においては、填料として紡錘型又は柱状のカルサイト系又はアラゴナイト系の炭酸カルシウムが毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムと水和ケイ酸を含有することが重要である。
本形態において、目的とする印刷用紙の印刷適性、不透明度、白色度等を充分に向上させるためには、前記毬栗状炭酸カルシウムは、填料中に、当該填料全量の5質量%以上、さらには20質量%以上、特に40質量%以上含有されていることが好ましい。
・ 体積平均粒子径
本形態の炭酸カルシウムは、1次粒子が100nm以下の毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムであるのが好ましく、レーザー回析法で測定した体積平均2次粒子径が、1.8〜10.0μmであるのが好ましい。
配合している、毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムの体積平均2次粒子径が1.8μm未満である填料を原紙に添加した場合、原紙中の毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムは原紙を構成するパルプ繊維間の空隙内部に入り込みやすくなり、毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムがもつ原紙構成を嵩高にする効果が発揮されづらくなり、結果として印刷適性が劣る傾向にある。毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムの体積平均2次粒子径が10μmより大きい場合、原料パルプ繊維との接触面積が少なくなり、その結果、抄紙段階や印刷段階で紙粉の発生の問題、紙力低下、印刷適性を低下させる問題となる。また、毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムの体積平均2次粒子径が1.8μm未満であると、毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムの空隙量が低下してインクを保持しにくくなり、インクが原紙内部や極端な場合裏面に浸透して印字濃度の低下や印刷裏抜けが発生する。一方、体積平均2次粒子径が10μmを超えると、毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムの脱落による紙紛や印刷不良の原因となる。したがって、毬栗状炭酸カルシウムの体積平均2次粒子径は、1.8μm以上、さらには2.3μm以上であることが好ましく、また体積平均2次粒子径が10.0μm以下、さらには9.6μm以下であることが好ましい。
なお本明細書において、毬栗状炭酸カルシウムの体積平均粒子径は、サンプル10mgをメタノール溶液8mlに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた分散溶液について、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて測定した値をいう。
毬栗状炭酸カルシウムのアスペクト比(粒子の長径と短径との比(長径/短径))は、印刷用紙の不透明度及び印刷適性のさらなる向上の点から、3.3以下、さらには3.0以下であることが好ましく、また印刷用紙の紙力低下を充分に抑制する点から、2.1以上、さらには2.3以上であることが好ましい。
・ BET比表面積
本形態で使用する毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムは、BET比表面積50m2/g以上である。好適には、BET比表面積50〜150m2/gである。
毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムのBET比表面積が50m2/g未満であると凝集構造における空隙が減少するためインク吸収性が低下し、150m2/gを超えると填料分散液の希釈粘度が高くなって操業性が悪化する問題と、取り込んだコールドセット型オフセットインクの乾燥性が低下し、コスレ汚れや印刷の裏移り問題が発現する。
なお本明細書において、毬栗状炭酸カルシウムのBET比表面積は、全自動BET比表面積測定装置(型番:フロソーブ2300、(株)島津製作所製)にて測定した値をいう。
・ 吸油量
本形態に用いられる毬栗状炭酸カルシウムは、JIS K 5101−13−1に記載の「顔料試験方法−第13部:吸油量−第1節:精製あまに油法」に準拠した吸油量が150ml/100g以上である。好適には160〜250ml/100gの吸油量(指標となる油はアマニ油とする)を有する。
毬栗状炭酸カルシウムの吸油量が150ml/100g未満であると、例えばコールドセット型オフセット印刷での白紙不透明度の低下や、滲みが大きくなる恐れがあり、一方250ml/100gを超えると、印刷インキ中のビヒクル成分が用紙内部に浸透し、優れた印刷濃度が得られ難くなる恐れがある。したがって、毬栗状炭酸カルシウムの吸油量は、150ml/100g以上、さらには160ml/100g以上であることが好ましく、250ml/100g以下、さらには240ml/100g以下であることが好ましい。
(2)水和ケイ酸
本形態では、例えば、ケイ酸アルカリ水溶液に、アルカリ難溶性かつ酸可溶性の粒子を分散させたのち、鉱酸を添加してケイ酸アルカリ水溶液を中和し、さらに析出した水和ケイ酸に対し、最初にケイ酸アルカリ水溶液に分散させた粒子と少なくとも同モル以上の鉱酸を添加して製造された反応後乾燥段階を経ない水和ケイ酸を使用する。
さらに詳しくは、例えば、SiO2/R´2O(モル比、R´はNa又はKを示す)が2.0〜3.4の範囲にあるケイ酸アルカリ水溶液(ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液)に、硫酸等の鉱酸を添加し、ケイ酸アルカリ水溶液を中和する。鉱酸は1回で添加しても複数に分割して添加してもよい。複数に分割して添加する場合、1回目の鉱酸の添加はケイ酸アルカリ水溶液の温度が20〜60℃の範囲で行われ、ケイ酸アルカリ水溶液を中和させるのに必要な鉱酸量の10〜50質量%を添加する。さらにケイ酸アルカリ水溶液を、85℃以上かつ水溶液の沸点未満の範囲まで昇温した後、必要に応じて熟成時間を設け、その後2回目以降の鉱酸を一度に、あるいは連続的に添加する。添加後、必要に応じて熟成時間を設けてもよい。
前記のごとき方法にて製造された水和ケイ酸には、アルカリ難溶性かつ酸可溶性の粒子が包含されており、この粒子を溶解するために、さらに鉱酸を添加する。このとき鉱酸は、最初に分散させたアルカリ難溶性かつ酸可溶性の粒子と少なくとも同モル以上の量を添加し、水和ケイ酸を含むスラリーのpHを4〜6の範囲に調整することが好適である。
水和ケイ酸は、その製造工程で反応を終えた段階では、水和ケイ酸の1次粒子が小さく、粒子径は比較的揃っているものの、反応後の安定期においては1次粒子の形では存在しておらず、凝集して2次粒子を形成している。また製品化の段階における乾燥処理を経ると、2次粒子が凝集塊を形成し、さらに粗大粒子が生じる場合がある。理由は定かではないが、スラリー状態の水和ケイ酸は、一部シリカ原子を有さず、−SiOHの形で遊離しており、2次元的な構造部分が網管となり表面が多孔性を呈している。これに対して、乾燥した水和ケイ酸は、SiO2の四面体が基本構造になり、酸素を共有して3次元の網目構造を呈する。したがって、水和ケイ酸を一度乾燥させた場合には、表面の−SiOHによるセルロース繊維との結合力が減少するので、反応を終えた水和ケイ酸は、スラリー状態のままで、乾燥処理を施さずに湿式粉砕を行い、安定期に生じた過大な2次凝集体の細分化を図ったうえで、填料として原料パルプに内添することが、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造が可能であり、かつ、例えば18万部/時といった高速オフセット輪転印刷にも対応しながら、軽量であり、紙粉の発生もなく、不透明度、特に印刷不透明度に優れた本発明に基づく新聞用紙を得るに好適である。
前記湿式粉砕を経ても残留する過大な水和ケイ酸の凝集塊を除去したり、レーザー解析法による、水和ケイ酸の体積平均粒子径を3〜10μmに、かつ粒子径が1〜30μmの水和ケイ酸粒子の割合を80質量%以上に容易に調整したりするには、前記湿式粉砕に次いで分級処理を施すことが好ましい。
レーザー解析法による水和ケイ酸の体積平均粒子径が3μm未満では、抄紙工程における脱水処理での流失が多くなり、白水中に多く残留し、他の異物と結合して設備の汚損や毀損の原因となる恐れがある。逆に体積平均粒子径が10μmを超えると、用紙表面に凝集塊として点在する様相を呈し、用紙表面の強度低下、紙粉の発生、不透明度、特に印刷不透明度の低下を招く恐れがある。したがって、本形態にて填料として用いる水和ケイ酸は、レーザー解析法による体積平均粒子径が3μm以上、さらには4μm以上であることが好ましく、また10μm以下、さらには9μm以下であることが、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造が可能であり、かつ、例えば18万部/時といった高速オフセット輪転印刷にも対応しながら、軽量であり、紙粉の発生もなく、不透明度、特に印刷不透明度に優れた印刷用紙を得るに好ましい。
さらに、レーザー解析法による粒子径が1〜30μmの水和ケイ酸粒子の割合を好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは82質量%以上とすること、すなわち粒子径をシャープにすることで、紙層中における水和ケイ酸の分散性を高め、均質な紙層を形成することができる。これにより、用紙表面の強度を向上させ、紙粉の発生を抑制し、同時に不透明度、特に印刷不透明度を向上させることができる。なお、レーザー解析法による粒子径が1〜30μmの水和ケイ酸粒子の割合をできる限り100質量%に近づけることが好ましいものの、微細な1次粒子の集合体である水和ケイ酸を工業的に生産するにあたり、100質量%とすることは困難であり、製造コストの点から、粒子径が1〜30μmの水和ケイ酸粒子の割合は多くとも実情95質量%程度である。
なお、本明細書において、レーザー解析法とは、サンプル10mgをメタノール溶液8mlに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた分散溶液について、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて解析する方法をいう。
また本形態に用いられる前記反応後乾燥段階を経ない水和ケイ酸は、JIS K 5101−13−1に記載の「顔料試験方法−第13部:吸油量−第1節:精製あまに油法」に準拠した吸油量が150ml/100g以上、さらには160ml/100g以上であることが好ましく、また250ml/100g以下、さらには240ml/100g以下であることが好ましい。水和ケイ酸の吸油量が150ml/100g未満であると、不透明度の低下や、オフセット印刷での滲みが大きくなる恐れがあり、一方250ml/100gを超えると、印刷インキ中のビヒクル成分が用紙内部に浸透し、例えば18万部/時といった高速オフセット輪転印刷にも対応しながら、軽量であり、紙粉の発生もなく、不透明度、特に印刷不透明度に優れた新聞用紙を製造するにあたり、優れた印刷濃度が得られ難くなる恐れがある。
本形態においては、例えば前記のごとくして得られた反応後乾燥段階を経ない水和ケイ酸を、あらかじめ3質量%以下の濃度に希釈し、その希釈液を原料パルプ中に内添して抄紙することが好ましい。
反応後乾燥段階を経ない水和ケイ酸は、高剪断速度で見かけ粘度が低下する特性(チキソトロピック性)を有し、水和ケイ酸の2次凝集体や凝集塊に対して剪断力を与えると、凝集が壊れ、次々と小さな凝集粒になる。この剪断力により小さな凝集粒を得るため、かつ水和ケイ酸の2次凝集体や凝集塊による問題を発生させないようにするためには、水和ケイ酸をあらかじめ、好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2.8質量%以下の濃度に希釈、分散させたうえで、原料パルプ中に内添することが望ましい。なお、既存設備の分散能力、2次凝集体に対する剪断力を効果的に付与すること、分散後の水和ケイ酸の粒度分布をブロードにさせないという点から、水和ケイ酸の濃度が1.0質量%以上となるように、あらかじめ希釈することが、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造において好ましい。
さらに、このような小さな凝集粒の再凝集化を防止するために、反応後乾燥段階を経ない水和ケイ酸の希釈液はスクリーン前段で原料パルプに添加することが好適である。
水和ケイ酸を一度乾燥させた場合には、表面の−SiOHによるセルロース繊維との結合力が減少するので、反応を終えた水和ケイ酸は、スラリー状態のままで、乾燥処理を施さずに湿式粉砕を行い、安定期に生じた過大な2次凝集体の細分化を図ったうえで、填料として原料パルプに内添することが、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造が可能であり、かつ、例えば18万部/時といった高速オフセット輪転印刷にも対応しながら、軽量であり、紙粉の発生もなく、不透明度、特に印刷不透明度に優れた本発明に基づく新聞用紙を得るに好適である。
本形態に用いられる含水ケイ酸としては、高吸油性填料として製紙用に一般に使用される、例えば湿式シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等があげられる。
含水ケイ酸は、形成されたポーラスな凝集構造によって不透明度を向上させるものであるが、中でも特に、見かけ比重が0.10〜0.25g/ml、BET比表面積が100〜250m2/gであり、コールターカウンター法による粒度分布として、D50μmが3.0〜8.0、D80μmが8.0〜18.0、D97μmが19.0〜40.0であり、JIS K 5101−13−1に準拠した吸油量が190〜230ml/100gであることが好ましい。また、含水ケイ酸としては、印刷適性のさらなる向上の点から、1次粒子径が10〜50nm、2次粒子径が15〜20μmの湿式シリカが特に好ましい。
含水ケイ酸の配合によって、不透明度や印刷適性がさらに向上するものの、かかる含水ケイ酸が多すぎると、インキの沈み込みが発生し、インキ濃度の低下が生じる恐れがある。また含水ケイ酸は一般に高価であるため、生産コスト低減においては、その使用量が多くなりすぎないように調整することが好ましい。
・ 炭酸カルシウムと水和ケイ酸との配合割合
印刷適性、嵩高、紙力をバランスよくさらに向上させ、低コスト化を図るためには、毬栗状炭酸カルシウムと含水ケイ酸との割合(毬栗状炭酸カルシウム:含水ケイ酸(質量比))が5:95以上、さらには20:80以上であることが好ましく、また80:20以下、さらには60:40以下であることが好ましい。
(3)他の填料
本形態においては、毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムと乾燥処理を施さない含水ケイ酸とが併用されるが、これら以外にも、本発明の目的を阻害しない範囲で、例えばカオリン、エンジニアードカオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、ゼオライト、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ケイ酸、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、サチンホワイト等の無機填料や有機填料を、単独で又は2種類以上を同時に使用することができる。
前記パルプに対する填料の割合は、填料を用いたことによる、高い印刷不透明度を維持しながら、印刷操業性、印刷適性等を向上させる効果を充分に発現させるには、パルプ固形分(絶乾)に対して10kg/トン以上、さらには20kg/トン以上とすることが好ましく、また印刷用紙の表面強度の低下や、紙粉発生の恐れがないようにするには、パルプ固形分(絶乾)に対して40kg/トン以下、さらには30kg/トン以下とすることが好ましい。
5)助剤
本形態においては、特定の填料を含有する低坪量の原紙に、好適には特定の凝集剤、凝結剤と水溶性高分子を主成分とする塗布層を原紙上に設けて、印刷用紙を得ることもできる。
また、本形態における好適な印刷用紙の構成においては、パルプ調整段階で凝結剤を、それに続く抄紙工程前段で凝集剤を添加するのが好ましい。
・ 凝結剤
前記のごとくパルプの調製段階で添加することが好ましい凝結剤としては、例えばポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック、PDADMAC)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンイミン(PEI)等の有機高分子系凝結剤や、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等の無機系凝結剤があげられる。これらの中でも、PAM、PDADMAC、PAm及びPEIの少なくとも1種を用いることが好ましい。
前記有機高分子系凝結剤は、例えば超微粒子(100nm>)2次粒子の集合体の炭酸カルシウムと含水ケイ酸とを併用した場合、当該含水ケイ酸をパルプ中に留め、濾水性を向上させることができるという点から、その電荷密度が3meq/g以上、さらには10meq/g以上であることが好ましい。かかる電荷密度が3meq/g未満の場合、パルプのカチオン要求量を所定値まで上昇させるには有機高分子系凝結剤の添加量を多くしなければならず、コストが高くなり、印刷用紙の地合(シートフォーメーション)が低下する恐れがある。また有機高分子系凝結剤の平均分子量は70万〜130万、さらには80万〜120万であることが好ましい。かかる平均分子量が70万未満では、凝集力が弱く、毬栗状炭酸カルシウムや含水ケイ酸粒子の湿紙への定着が不充分となり、その結果、目的とする効果の向上が望めない恐れがあり、一方130万を超えると、凝集力が強過ぎるため、印刷用紙の紙合が低下し、紙合を良好に維持するためには添加量を少なくしなければならず、やはり目的とする効果の向上が望めない恐れがある。
有機高分子系凝結剤の添加量は、カチオン要求量低減率と、有機高分子系凝結剤添加後の紙料濾液のカチオン要求量とが満足されるように調整することが好ましい。したがって、有機高分子系凝結剤の添加量は、後述する無機系凝結剤の添加量にも左右されるが、パルプに対して固形分で1000〜4000ppm、さらには1200〜3800ppmであることが好ましい。かかる有機高分子系凝結剤の添加量が1000ppm未満では、その効果が不充分となる恐れがあり、一方4000ppmを超えると、紙の地合が低下し、コストも上昇する恐れがある。
また無機系凝結剤の添加量は、パルプに対して0.1〜5.0質量%、さらには0.1〜3.0質量%であることが好ましい。
なお、前記凝結剤の中でも特にカチオン性凝結剤を用いる場合には、その添加量は、パルプに対して純分で50〜400ppm、さらには100〜300ppmであることが好ましい。かかるカチオン性凝結剤としては、後述する凝集剤と同様の高分子化合物、すなわちカチオン性水溶性重合体又は共重合体を使用することができるが、その分子量が小さいものを用いることが好ましい。すなわち、カチオン性凝結剤としては、平均分子量が100万〜120万であり、かつカチオン性単量体の割合が5〜100モル%、さらには10〜100モル%のカチオン性水溶性重合体又は共重合体を使用することができる。かかるカチオン性凝結剤の代表例としては、例えばPAm、PEI等があげられる。カチオン性凝結剤の平均分子量が100万未満であると、当該カチオン性凝結剤を用いた効果が充分に発現されない恐れがあり、一方120万よりも大きくても、所望の効果の向上があまり望めず、コスト高となる恐れがある。
本形態においては、前記したように、パルプの調製段階で凝結剤を添加することが好ましいが、例えば、前記パルプ及び填料、並びに必要に応じて内添サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤、消泡剤等の各種製紙助剤等は、配合チェストで混合されて完成原料となる。したがって、配合チェストからマシンチェストの間で凝結剤が添加されることが好ましく、当該凝結剤を完成原料に充分に混合するには、配合チェストへ添加することがより好ましい。
・ 凝集剤
前記のごとく抄紙段階で添加することが好ましい凝集剤として、特に、後述する凝集剤としてカチオン性凝集剤を用いる場合には、パルプの調製の初期段階、すなわちパルプスラリーに対して早い段階で、前記凝結剤を添加することが好ましい。そしてその後、凝集剤を抄紙工程前段、すなわち抄紙網前のヘッドボックスにおいて添加することが最適である。かかる添加手順を採ると、抄紙原料が抄紙網にのる前のスラリー溶液状態において、凝結剤の凝集効果により、パルプ繊維と毬栗状炭酸カルシウムや好適に併用される含水ケイ酸との付着性が高まるとともに、抄紙網では凝集剤の凝集効果により、パルプ繊維と毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムや含水ケイ酸の付着性がより強固となる。その結果、毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムや好適に併用される含水ケイ酸の紙中への歩留りがさらに向上する。そして、このような添加手順を採った場合には、毬栗状炭酸カルシウムや好適に併用される含水ケイ酸の歩留りのさらなる向上とともに、スムーズな抄紙作業が進行するといった効果も発現される。
前記凝集剤としては、アニオン性を呈するパルプや填料に対してカチオン性凝集剤が特に好適である。かかるカチオン性凝集剤としては、例えば平均分子量が800万〜1200万、さらには850万〜1100万であり、かつカチオン性単量体の割合が5〜100モル%、さらには10〜100モル%のカチオン性水溶性重合体又は共重合体を使用することができる。かかるカチオン性凝集剤の代表例としては、例えばPAM等があげられる。カチオン性凝集剤の平均分子量が800万未満であると、当該カチオン性凝集剤を用いた効果が充分に発現されない恐れがあり、一方1200万よりも大きくても、所望の効果の向上があまり望めず、コスト高となる恐れがある。
凝集剤の添加は、前記したように、抄紙工程前段、すなわち抄紙網前のヘッドボックスにおいて行われることが特に好ましい。これにより、抄紙網において欠損する毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムや含水ケイ酸の量を格段に低減させることができる。
また凝集剤の添加量は、パルプに対して純分で100〜150ppm、さらには120〜140ppmであることが好ましい。凝集剤の添加量が100ppm未満であると、毬栗状炭酸カルシウムや含水ケイ酸の歩留り向上効果が充分に得られない恐れがあり、一方150ppmを超えると、印刷用紙の地合が低下する恐れがある。
本形態では、例えば前記凝結剤や凝集剤を使用することにより、印刷用紙の地合指数を5.0〜10.0%、さらには6.0〜9.5%、特に8.0〜8.5%に調整することが好ましい。本形態の印刷用紙は、主に輪転機で印刷される関係で、所定の引張り強度が必要となる。したがって、所定の縦方向の引張り強度を得るためには、地合指数が5.0%以上であることが好ましい。一方地合指数が10.0%を超えても、充分な縦方向の引張り強度が得難いとともに、例えばオフセット印刷において、特にカラー印刷でのインキの吸収ムラが生じ、印刷適性、特に印刷不透明度の低下に繋がる恐れがある。
なお本明細書において、印刷用紙の地合指数とは、シートフォーメーションテスター((株)東洋精機製作所製)にて測定した値をいう。
さらに本形態の印刷用紙を製造する際には、複数の紙料を調製して種箱に供給する前に、各紙料のスラリーをオンラインのカチオンデマンド測定装置に供して測定したカチオンデマンド測定値に基づき、調製段階にて添加する凝結剤の添加量を制御することもできる。
このように、オンラインで凝結剤の添加量を制御することで、最適なカチオンデマンドによる電位制御が可能である。特に、迅速なカチオンデマンド測定値をフィードバックし、これを制御することが可能であり、抄紙機のワイヤーパートでの濾水性の安定化を図ることができるとともに、ウェットパートでの断紙の低減のみならず、得られる印刷用紙の地合を良好に維持することができる。
なお、前記カチオンデマンドとは、アニオン物質が有する総電荷のことである。また、アニオン物質(アニオントラッシュ)とは、負(マイナス)に帯電した物質であり、パルプ(微細繊維を含む)、填料(毬栗状炭酸カルシウムや好適に併用される含水ケイ酸等)、各種ウェットエンド製紙助剤(その他の填料、内添サイズ剤、消泡剤等)、樹脂ピッチ、溶出リグニン等のことである。
アニオン物質にカチオン性凝結剤を添加し、凝結させたものに、アニオン性(もしくはカチオン性)凝集剤を添加することで、凝結したアニオン物質が凝集し、フロックを形成する。かかるメカニズムの下で、主に、ピッチをパルプに吸着させて極小な状態で紙料とともに工程を通過させるか、系外に排出させ、ピッチ濃度の低減を図ることができる。これにより、汚れ、欠陥、断紙等を減少させることができ、生産性のさらなる向上が可能となる。またアニオン物質での中和により、歩留りのさらなる向上が可能となり、アニオン物質が凝集し、フロックを形成すると、濾水状態が良好になる。かかる理由により、濾水状態に関しては、カチオンデマンド(又はその量)が低いことが好ましい。
なお、前記のごときオンラインのカチオンデマンドを測定する装置の代表例としては、カチオンデマンド測定装置(型番:PCT15又はPCT20、mutek社製)があげられる。当該カチオンデマンド測定装置では、紙料を試験機のセル中に導入すると、上下ピストンの稼動にてセルシリンダーとピストンとの間にサンプル液の流れが生じ、コロイド粒子の表面電荷の歪みによって電気が生じる。パルプ懸濁液中のコロイド状溶解物質粒子は、イオンにより電気を帯びており、これを利用することでチャージ要求量を高分子電解質測定によって測定する。
6)クリアーコート剤
かくして抄紙工程を経て本形態の印刷用紙が得られるが、本形態においては、さらに印刷用紙の表裏面に、例えば水溶性高分子化合物が塗布されることが好ましい。
これにより、例えばコールドセット型オフセットインキのビヒクル分が素早く吸収され、輪転機の高速化や両面カラー用タワープレス機の使用によって印刷インキ量が増加しても、充分な吸収乾燥性が発現され、優れた印刷不透明度、印刷適性等を確保することができる。
本形態に用いられる毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムや含水ケイ酸と水溶性高分子化合物との組合せが好適な理由としては、毬栗状炭酸カルシウムが3次元の多孔性に富み、大きなBET比表面積を有しており、例えば澱粉及び/又はポリビニルアルコール(PVA)といった水溶性高分子化合物との相乗効果に基づく、印刷用紙表面にオフセットインキ受理剤を塗布した際の成膜性に優れていることがあげられる。特に毬栗状炭酸カルシウムは、通常の炭酸カルシウムよりも吸油量が大きく、コールドセット型オフセットインキを印刷用紙表面で素早く吸収乾燥し、水溶性高分子化合物と組み合わせることにより、坪量が36〜50g/m2と軽量であっても、さらに優れた印刷不透明度の向上効果を発現する。
好適な水溶性高分子化合物としては、例えば澱粉、PVA等があげられ、これらは単独で又は同時に用いることができる。
前記澱粉の種類には特に限定がないが、例えば変性澱粉は、紙中に浸透しながら、引張り強度や表面強度を向上させる効果を有するものの、中性又はアニオン性を示すため、アニオン性を呈するパルプ繊維表面への定着性が低く、被膜性が低い。したがって、本形態では、アニオン性を呈するパルプ繊維表面への定着性が高いカチオン性の澱粉を用いることが好ましい。カチオン性の澱粉の場合には、パルプ繊維に対する定着性が高く、被膜性に優れ、また表面強度も向上する。
さらに前記澱粉としては、エステル化澱粉がより好ましい。エステル化澱粉を用いた場合には、インキ濃度及びインキセット性が飛躍的に向上する。かかるエステル化澱粉を得る際の原料澱粉としては、例えば未処理澱粉、処理澱粉の他、各種澱粉含有物があげられる。このような原料澱粉の代表例としては、例えば小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、甘薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチトウモロコシ粉、高アミロース含量トウモロコシ澱粉等の未処理澱粉;小麦澱粉、タピオカ澱粉、コーンフラワー、米粉等の澱粉含有物に、酸化、酸処理化等を行った処理澱粉等があげられる。これらの中でも、タピオカ澱粉は、エステル変性物が、粘性、被膜性、弾力性、伸展性の面で他の穀物澱粉類よりも優れる点で好ましい。
前記エステル化澱粉において、そのエステル化度には特に限定がないが、導入されるエステル結合の平均数で、グルコース単位あたり1〜3、さらには1〜2であることが好ましい。エステル化澱粉の中でも、ヒドロキシエステル化澱粉が好ましい。該ヒドロキシエステル化澱粉は、原料澱粉に酸化処理を施し、カルボキシメチル基をヒドロキシエチル基へ還元反応させることにより、容易にかつ安価に得ることができる。中でも、エステル変性された澱粉の末端基に疎水性基を導入した、疎水性基含有エステル変性タピオカ澱粉を使用することが最適である。
さらに本形態で好適に使用することができるエステル化澱粉としては、末端基にカルボン酸「−COOH」構造を有し、中性領域において「−COO−」のようにイオン化することで、水素結合による繋がりを確保することができずに反発性を示すことに基づく、チキソトロピカルな挙動を示すエステル変性澱粉が、印刷用紙表面への塗布時は流動性を示しながら、塗布後は用紙中に浸透し難く、用紙表面に高い被膜性を呈する点から好ましい。特に後述する被膜性の高いPVA等と併用することによって、パルプに添加する填料である毬栗状炭酸カルシウムが多量に用いられるとしても、インキ濃度やインキセット性のさらなる向上が図られる。このようなエステル化澱粉としては、タピオカ澱粉を主原料にエステル変性させた1−オクテニルコハク酸エステル化澱粉が特に好ましい。1−オクテニルコハク酸エステル化澱粉は、粘性、被膜弾力性、被覆性の点で特に優れており、例えば後述するPVAと併用することにより、印刷操業性及び被覆性と、インキ濃度及びインキセット性とのさらなる向上を図ることができる。
なお、本形態に用いられる澱粉としては、平均分子量が60万〜300万、さらには80万〜280万のものが、用紙表面の被覆性とインキ成分を用紙表面に留めながら、溶媒成分を紙中に取り込み吸収乾燥性を向上させるという点から好ましい。
また前記澱粉としては、粘度(10%)が30×10-3Pa・s以下、さらには15×10-3〜25×10-3Pa・sのものが、用紙表面において、粘度が高いことから紙中に浸透せず、紙表面に留まることができるという点から好ましい。
前記したように、水溶性高分子化合物としては、澱粉の他にも例えばPVAがあげられる。一般にPVAを単独で印刷用紙の表裏面に塗布した場合には、澱粉を単独で塗布した場合と比べて、略3倍の表面強度を示し、被膜性に優れる反面、かかる被膜性が高いために、コールドセット型インキのように、用紙中に溶媒が浸透して乾燥する印刷インキを用いると、印刷インキの溶媒の吸収性が低く、充分なインキセット性が得られない恐れがある。またPVAを単独で一定量塗布しようとすると、該PVAを含む処理液の粘性が高く、例えばフィルムトランスファー方式では、断紙、抄紙設備の汚れ、粕、紙面の汚れ等が生じる場合がある。ところが、このようなPVAを澱粉と併用することで、印刷インキの溶媒の用紙中への浸透を適度に促しながら、インキ填料成分を用紙表面に留める被膜性が向上するとともに、インキセット性の低下も充分に抑制される。
PVAの種類には特に限定がなく、本形態で用いることができるPVAには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のPVAの他に、末端をカチオン変性したPVAやアニオン性基を有するアニオン変性PVA等の変性PVAも含まれる。
ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のPVAとしては、平均重合度が300〜3000、さらには1000〜2400、特に1700〜2000のものが、澱粉との相溶性に優れ、均質な被膜が得られ易いという点から好ましい。
また通常のPVAとしては、ケン化度が80〜100のものが好ましく、ケン化度が90〜100の完全ケン化PVAがより好ましい。完全ケン化PVAを用いた場合には、部分ケン化PVAを用いた場合よりも、印刷用紙表面に、耐水性や耐熱性を有する被膜がより得られ易い。
このようなPVAを用いると、澱粉との親和性がよく、短時間で澱粉とPVAとのブレンドが可能であり、操業性をさらに向上させることができるとともに、塗布設備においてミストの発生を低減させることができる。
以上の特性を有するPVAを用いることにより、高いインキ濃度を得ながら、オフセットインキの高いインキセット性を実現することができる。また、印刷後に印刷用紙を積層した際に、裏面へのインキ転写を充分に防止することもできる。
澱粉とPVAとを併用する場合、両者の割合(澱粉:PVA(固形分質量比))は、10:0.8〜10:2.0、さらには10:0.9〜10:1.2であることが好ましい。澱粉に対するPVAの割合が10:2.0を上回ると、両者を含んだ処理液の粘性が急激に上昇するため、塗布ムラやミストが発生し、塗布品質の低下や設備周辺の汚損が生じる恐れがあり、一方10:0.8を下回ると、澱粉とPVAとの相溶性には問題がないものの、印刷用紙表面に塗付した際に、澱粉とPVAとの相乗効果が得られず、用紙中への浸透や塗布ムラが生じる恐れがある。したがって、両者の割合をこの範囲に設定することで、澱粉とPVAとの相乗効果を確保することができ、インキ中の填料成分を印刷用紙表面に留めることによって高いインキ濃度を発現させると同時に、インキ中の溶媒を素早く印刷用紙内部に吸収させ、早いインキセット性を発現させることができる。
印刷用紙の表裏面に塗布する水溶性高分子化合物として、前記澱粉とPVAとを併用する場合、これら澱粉及びPVAは、印刷用紙の表裏面に片面あたり0.2〜2.0g/m2、さらには0.5〜1.5g/m2の量で塗布されている(偏在している)ことが好ましい。澱粉及びPVAの量が0.2g/m2を下回ると、これら澱粉及びPVAによる充分な被膜性を得ることが困難となり、インキ中の填料成分が印刷用紙表面で留まり難く、充分に高いインキ濃度が得られない恐れがあり、一方2.0g/m2を上回ると、塗布設備周辺に澱粉及びPVAを含んだ処理液のミストが多量に発生し、周辺機器を汚損するとともに、汚れに起因する断紙、用紙の欠陥が生じる恐れがある。
本形態では、パルプとして脱墨古紙パルプが多量に使用されるが、填料として前記特定の毬栗状炭酸カルシウムを用いるとともに、表裏面に澱粉及びPVAを塗布した場合には、多量の脱墨古紙パルプに基づく短所がカバーされ、同時にインキ濃度及び印刷適性がさらに向上するという相乗効果が発現される。
澱粉、PVAといった水溶性高分子化合物を含んだ処理液を印刷用紙の表裏面に塗布する際には、例えばゲートロールコータ、ブレード等のフィルムトランスファー方式を採用することが好ましい。中でも、特にゲートロールコータによる塗布は、他の塗布方法と異なり、低塗布量にて印刷用紙表面に被覆性の高い輪郭塗布を施す際に最適であり、処理液に急激なせん断力がかからないので、循環使用する処理液の安定性に優れ、高速で均質な被膜を得ることができる。特に、チキソトロピカルなエステル変性澱粉を用いた場合には、印刷用紙表面への塗布時は流動性を示しながら、塗布後は流動性が抑制され、処理液が用紙中に浸透し難く、用紙表面に留まって印刷用紙に高い被膜性が付与される。
なお、印刷用紙表裏面に、水溶性高分子化合物として澱粉及びPVAを主成分とする処理液を塗布する際には、前記フィルムトランスファー方式を採用しなくとも、例えばサイズプレスやロッドメタリングサイズプレス等、従来公知の塗布手段を採用することも可能ではある。しかしながら、印刷用紙表面の凹凸に沿った輪郭塗布を施さなければ、澱粉及びPVAによる被覆性が不充分となり、例えばコールドセット型インキを使用して多色オフセット輪転印刷する場合に、インキ濃度、インキセット性、インキ着肉性等の印刷適性に充分に優れた印刷用紙が得られ難くなる恐れがある。したがって、低濃度、低塗布量にて澱粉及びPVAを主成分とする処理液を印刷用紙表裏面に塗布するには、フィルムトランスファー方式を採用することが最適である。
7)表面処理
本形態の印刷用紙は、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー設備で平坦化処理を施すことも可能である。
かくして得られる本形態の新聞用紙は、X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX、(株)日立製作所製)を用いたX線の加速電圧が8kVで拡散領域が1μmの条件での紙面の面分析で、水和ケイ酸の凝集体粒子と分析されるケイ素の検出域の大きさにおいて、当該検出域における粒子径が20μm以上の凝集体粒子の所定領域(所定領域とは、500倍で撮影した用紙表面の元素分析マッピング写真を組み合わせた、1cm2の分析領域)における面積割合が10%以下であることが大きな特徴の1つである。
従来から、X線マイクロアナライザーを用いた紙面の元素分析から、存在する無機物質のマップ分析が行われているが、X線マイクロアナライザーによる一般的な元素分析では、各元素を網羅的に検出するために、X線の加速電圧を15kV以上、しいては20kV以上に設定している。ところが、このような高い加速電圧では、以下の式による拡散領域が1μmを超え、用紙の厚み方向における無機粒子の存在までもが検出されてしまうため、紙面(用紙表面)のみの分析を正確に行うことができない。
ρR=0.0276E0 1.67A/Z8/9
(ただし、RはX線の拡散領域、ρは平均密度、E0は加速電圧、Aは分析部位の平均分子量、Zは平均原子番号を示す。)
そこで、本形態では、前記X線の加速電圧と拡散領域との関係を鑑み、X線マイクロアナライザーを用いた、X線の加速電圧が8kVで拡散領域が1μmの条件での紙面の面分析で、水和ケイ酸の凝集体粒子と分析されるケイ素の検出域の大きさにおいて、当該検出域における粒子径が20μm以上の凝集体粒子の所定領域における面積割合が10%以下となるように調整することで、目的とする印刷用紙を実現している。
当該20μm以上の凝集体粒子の所定領域における面積割合が10%を上回ると、例えば抄速1300m/分以上といった高速で抄造する際に、また、得られる印刷用紙を、例えば18万部/時といった高速オフセット輪転印刷に供する際に、抄紙設備の磨耗や紙粉が発生すると共に、特に印刷不透明度が低下するという問題が生じる。したがって、当該面積割合は10%以下、好ましくは5.0〜9.3%である。なお、20μm以上の凝集体粒子の所定領域における面積割合はできる限り小さいことが望ましいものの、実操業において、水和ケイ酸は容易に2次凝集化するため、少なくとも数%程度の20μm以上の凝集体粒子の存在が認められる。
印刷用紙中の灰分は、JIS P 8251に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準拠して測定して、4質量%以上、さらには5質量%以上、特に7質量%以上であることが好ましく、また15質量%以下、さらには13質量%以下、特に10質量%以下であることが好ましい。印刷用紙中の灰分が4質量%未満では、充分な不透明度が得られ難く、裏抜けの原因となる恐れがあり、特に高白色度の場合、灰分が少なすぎると裏抜けが目立つ傾向がある。一方、灰分が15質量%を超えると、前記したように、紙質強度が低下し易く、抄紙工程における断紙トラブルが生じ、生産性が低下すると共に、系内の汚れが生じる恐れがあるほか、高速オフセット輪転印刷における断紙トラブルも生じ易く、印刷操業性が低下する恐れがある。
なお、印刷用紙中の灰分は、所望される印刷用紙の光学特性、必要とされる表面強度等により適宜調整することが好ましく、原料パルプに含有される灰分も考慮して、前記水和ケイ酸を含む填料の量を適宜調整し、内添する。該水和ケイ酸を含む填料の添加率があまりにも少ない場合には、填料を用いる効果が充分に発現されず、逆にあまりにも多い場合には、紙力が低下する恐れがあるので、該填料は、紙中に紙灰分として4〜15質量%、さらには5〜10質量%含まれるようにすることが好ましい。
また本形態の印刷用紙は、シートフォーメーションテスターによる地合指数が10%以下、さらには5〜10%、特に6〜9.5%であることが好ましい。本形態の印刷用紙は、主に輪転機で印刷される関係で、所定の引張り強度が必要となる。したがって、所定の縦方向の引張り強度を得るためには、地合指数が5%程度の地合いムラが生じている事が経験則から好ましい。一方、地合指数が10%を超える場合は、充分な縦方向の引張り強度が得難いと共に、例えばオフセット印刷において、特にカラー印刷において、地合いムラに沿ったインキの吸収ムラが生じ、印刷適性、特に印刷不透明度の低下に繋がる恐れがある。
なお、本明細書において、印刷用紙の地合指数とは、シートフォーメーションテスター((株)東洋精機製作所製)にて測定した値をいう。地合指数とは、光透過型の地合計であるシートフォーメーションテスターを使用して得た値である。この測定器の測定原理は原紙を透過した光をCCDカメラで各画素に分解し、各画素の吸光度のバラツキである標準偏差を平均吸光度で割ったもので、「単位坪量当たりのムラの大きさを表わしたものであり」、地合指数が大きいものほど、地合が悪いことを意味する。
特に本形態においては、前記灰分が4〜15質量%であり、かつ地合指数が10%以下の印刷用紙が、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造が可能であり、かつ、例えば18万部/時といった高速オフセット輪転印刷にも対応しながら、軽量であり、紙粉の発生もなく、不透明度、特に印刷不透明度に優れた印刷用紙を提供する点から好ましい。
本形態においては、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造が可能であり、かつ、例えば18万部/時といった高速オフセット輪転印刷にも対応しながら、軽量であり、紙粉の発生もなく、不透明度、特に印刷不透明度に優れた印刷用紙を提供することを目的とするが、本来の印刷用紙に要求される基本品質を満足する事は云うまでもなく、印刷用紙の印刷後の、マクベス濃度計にて測定した印刷部位のインキ濃度は、1.25以上、さらには1.27以上であることが好ましく、また1.36以下、さらには1.34以下であることが好ましい。当該インキ濃度が1.25未満では、例えば新聞社における実際のオフセット輪転印刷機での印刷において、所望のインキ濃度を得難い場合があり、逆に1.36を超えると、インキ濃度は充分なものの、印刷不透明度の低下と、裏移りの問題が生じる可能性がある。
前記インキ濃度の調節は、例えば、前記澱粉、PVAといった水溶性高分子化合物のケン化度や重合度、これらの使用量を適宜調整することにより行うことができる。
なお、本明細書において、印刷後の印刷部位のインキ濃度とは、以下のインキ濃度試験にて求めた値をいう。
(インキ濃度試験)
RI印刷適性試験機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)を使用し、金属ロールとゴムロールとの間隙に、オフセット印刷インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製、インキ使用量:0.85ml)を塗布した後、30rpmの速度で印刷し(試験片:CD方向50mm、MD方向100mm)、恒室状態(JIS P 8111に記載の「紙、板紙及びパルプ−調湿及び試験のための標準状態」に準拠)で24時間乾燥する。この印刷サンプルについて、無作為に選択した印刷部位25箇所のインキ濃度をマクベス濃度計にて測定し、これらの平均値を求める。
印刷用紙の紙面pHは、6.0以上、さらには6.5以上であることが好ましく、また10.0以下、さらには9.5以下であることが好ましい。例えば18万部/時といった高速オフセット輪転印刷への対応において、印刷前に紙面に塗布される湿し水が、新聞社によって変動するものの、ほぼ中性であることから、湿し水との相性を考慮し、印刷不良発現のリスクを低減させるために、かかる紙面pH範囲に調整することが好ましい。
なお、本明細書において、紙面pHは、紙面用pH測定キット(共立理化学研究所製)にて、試薬(MPC−BCP、−BTB、−CR、−TB)を使用し、変色標準計で目視にて測定した値をいう。
また印刷用紙の白色度は、JIS P 8212に記載の「パルプ−拡散青色光反射率(ISO白色度)の測定方法」に準拠して測定して、55%以上、さらには55.5〜58%であることが好ましい。かかる白色度が55%未満であると、印刷前の白紙外観が低下するだけでなく、オフセット印刷後、特にカラー印刷後の印刷物の見映えも低下する恐れがある。
印刷用紙の白紙不透明度は、JIS P 8149に記載の「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)」に準拠して測定して、88%以上、さらには90〜94%であることが好ましい。かかる白紙不透明度が88%未満であると、印刷前の白紙外観が低下するだけでなく、オフセット印刷後の印刷物の見映えも低下する恐れがある。
なお、本形態の印刷用紙に印刷を施した後の印刷不透明度は、前記白紙不透明度よりも0.5%以上、さらには0.8〜2.0%高いことが好ましい。
さらに、本形態の印刷用紙は、JIS P 8118に記載の「厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した密度が0.63〜0.90g/cm3程度であり、JIS P 8119に記載の「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠して測定したベック平滑度が41〜65秒程度であることが、高速オフセット輪転印刷における印刷適性、印刷操業性をさらに向上させることができる点で好ましい。
次に、本発明の印刷用紙を、新聞用紙とする場合を例に、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
〔水和ケイ酸の調製〕
二酸化ケイ素(シリカ)換算における濃度を195g/Lに調整したケイ酸ナトリウム水溶液2500L、清水4800L及び無水硫酸ナトリウム130kgを、容積10m3の反応槽へ投入した。
反応槽内の溶液温度を50℃とした後、攪拌しながら、ケイ酸ナトリウムを中和するのに必要な全硫酸量の32.5質量%に相当する硫酸(濃度:20質量%)410Lを12分間かけて連続添加した。硫酸添加後、反応溶液を攪拌しながら35分間かけて90℃まで昇温し、その後90℃のままで10時間熟成した。
次いで残りの硫酸(濃度:20質量%)850Lを、25分間かけて連続的に添加した。さらに温度を維持しながら20分間熟成を行った。その後硫酸を連続的に添加し、スラリーのpHを5.2に調整した。このpHを調整したスラリーをろ過洗浄後、湿式粉砕及び分級処理を順に行い、水和ケイ酸(二次凝集体)を得た。
これらの水和ケイ酸は、以上の製造手段を踏襲しながら、初期ケイ酸ナトリウムの濃度、モル比、反応温度、添加する薬品の添加速度、量を適宜変更させることで調整し、表1に示す調製番号1〜17の水和ケイ酸を得ている。調製番号14〜17は、更にスプレードライ方式の乾燥機にて乾燥処理を行い、乾燥処理を施した水和ケイ酸(二次凝集体)を得た。
得られた二次凝集体からなる水和ケイ酸を前記レーザー解析法にて解析し、体積平均粒子径及び粒子径が1〜30μmの水和ケイ酸粒子の割合(表1中、粒子割合と示す)を測定した。また、JIS K 5101−13−1に準拠して、得られた水和ケイ酸の吸油量を測定した。さらに、得られた水和ケイ酸を清水にて希釈し、表1に示す濃度の希釈水を調製した。各測定結果及び濃度を表1に示す。
Figure 0005283395
〔新聞用紙の製造〕
表2に示す割合で脱墨古紙パルプ(離解・脱墨古紙パルプ)及び機械パルプ(TMP)を配合し、これに表2に示す填料(品種A及び品種B)を、パルプ1トンあたり表2に示す量で添加し、さらに表3に示す凝結剤(品種a及び品種b)を添加してパルプスラリーを得た。
次いで、得られたパルプスラリーに、表3に示す凝集剤を添加し、長網型抄紙機にて抄速1300m/分で抄紙して用紙を製造した。この用紙の表裏面に、表4に示す水溶性高分子化合物を、表4に示す塗工方式で、表4に示す片面塗工量(水溶性高分子化合物全量)となるように塗工し、新聞用紙を得た。
なお、表2に示す填料の割合(品種A:品種B(質量比))は、JIS P 8251に準拠して得られた灰分を試料として、電子線ブローブマイクロアナリシス法により、500倍画像で無作為に選択した10箇所について、酸化物換算におけるシリカとカルシウムとの割合を測定し、これら10箇所の測定結果を平均して求めた。測定は、X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX、(株)日立製作所製)及び電子顕微鏡((株)島津製作所製)を用い、加速電圧8kVの条件にて行った。
また、表2に示す填料、表3に示す凝結剤及び凝集剤並びに表4に示す水溶性高分子化合物は、それぞれ以下のとおりである。
(填料)
毬栗:毬栗炭酸カルシウム
重質:重質炭酸カルシウム
紡錘型:紡錘型炭酸カルシウム
(凝結剤)
PEI:ポリエチレンイミン
PVAm:ポリビニルアミン
PDADMAC:ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド
PAm:ポリアミン
(凝集剤)
PAM:ポリアクリルアミド
(水溶性高分子化合物)
エステル化澱粉:1−オクテニルコハク酸エステル化澱粉
Figure 0005283395
Figure 0005283395
Figure 0005283395
得られた新聞用紙について、以下の方法にて各物性を測定した。これらの結果を表5に示す。また、市販の新聞用紙A〜Cを比較例5〜7とし、同様に各物性を測定した。これらの結果も併せて表5に示す。なお、これら市販の新聞用紙A〜Cに配合されている填料の種類は、以下に示すとおりである。
(填料の種類)
新聞用紙A:ホワイトカーボン
新聞用紙B:紡錘型炭酸カルシウム
新聞用紙C:ホワイトカーボン
また、各物性の測定方法は、以下に示すとおりである。
(a)坪量
JIS P 8124に準拠して測定した。
(b)紙面pH
紙面用pH測定キット(共立理化学研究所製)にて、試薬(MPC−BCP、−BTB、−CR、−TB)を使用し、変色標準計で目視にて測定した。
(c)灰分
JIS P 8251に準拠して測定した。
(d)地合指数
シートフォーメーションテスター((株)東洋精機製作所製)にて測定した。
(e)白色度
JIS P 8212に準拠して測定した。
(f)白紙不透明度
JIS P 8149に準拠して測定した。
(g)印刷不透明度
オフセット輪転印刷機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)で、オフセット輪転印刷用インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製)のインキ量を変えて、20万部/時の速度で印刷し、印刷面反射率が9%のときの、印刷前の裏面反射率に対する印刷後の裏面反射率の比率:
(印刷後の裏面反射率/印刷前の裏面反射率)×100(%)
を求めた。なお、これら反射率の測定には、分光白色度測色機(スガ試験機(株)製)を用いた。
(h)不透明度差
白紙不透明度と印刷不透明度との差(絶対値)を求めた。
(i)インキ濃度
RI印刷適性試験機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)を使用し、金属ロールとゴムロールとの間隙に、オフセット印刷インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製、インキ使用量:0.85ml)を塗布した後、30rpmの速度で印刷し(試験片:CD方向50mm、MD方向100mm)、恒室状態(JIS P 8111に準拠)で24時間乾燥した。この印刷サンプルについて、無作為に選択した印刷部位25箇所のインキ濃度をマクベス濃度計にて測定し、これらの平均値を求めた。なお、このインキ濃度が1.25未満では、例えば新聞社におけるオフセット輪転印刷において、所望のインキ濃度が出ない問題が生じる可能性があり、逆に1.36を越えると、インキ濃度は充分なものの、印刷不透明度の低下と、裏移りの問題が生じる可能性がある。
(j)面積割合
X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX、(株)日立製作所製)及び電子顕微鏡((株)島津製作所製)を用い、X線の加速電圧が8kV、拡散領域が1μmの条件で用紙表面の面分析を行い、ケイ素の検出域の大きさにおいて、粒子径が20μm以上の凝集体粒子の所定領域における面積割合(500倍で撮影した用紙表面の元素分析マッピング写真を組み合わせた、1cm2の分析領域における面積割合)を求めた。
Figure 0005283395
次に、実施例1〜13及び比較例1〜7の新聞用紙について、以下の試験例1〜5に基づいて各特性を調べた。その結果を表6に示す。
試験例1(インキセット性)
RI印刷適性試験機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)を使用し、新聞用インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製)にてベタ印刷した後、コート紙を印刷面に重ねて一定圧力で圧着した。コート紙へのインキの転移状況を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:コート紙表面全体に全く汚れが生じていない。
○:コート紙表面の一部に僅かに汚れが生じているが、実用上問題がない。
△:コート紙表面全体に汚れが認められる。
×:コート紙表面全体の汚れが著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
試験例2(インキ着肉性)
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、新聞インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製)にて、20万部/時の速度で連続10000部の印刷を行った。得られた印刷物について、画像の鮮明さ及び濃淡ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:画像が鮮明で濃淡ムラが全くなく、インキ着肉性に優れる。
○:画像が鮮明で濃淡ムラが殆どなく、インキ着肉性が良好である。
△:一部に、画像が不鮮明な箇所及び濃淡ムラがあり、インキ着肉性が良好でない。
×:全体的に、画像が不鮮明で濃淡ムラが著しく、インキ着肉性に劣る。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
試験例3(表面強度)
JIS K 5701−1に記載の「平版インキ−第1部:試験方法」に準拠し、転色試験機(型番:RI−1型、石川島産業機械(株)製)を使用し、インキタック18の1回刷りの条件で印刷した。新聞用紙表面の取られを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:新聞用紙表面全体に全く取られがない。
○:新聞用紙表面の一部に僅かに取られが生じているが、実用上問題がない。
△:新聞用紙表面全体に取られが認められる。
×:新聞用紙表面全体に取られが著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
試験例4(インキ吸収ムラ)
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、新聞インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製)にて、20万部/時の速度で印刷を行った。得られた印刷物について、インキ濃度ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:インキ濃度ムラが全くなく、均一で鮮明な画像である。
○:インキ濃度ムラが殆どなく、均一な画像である。
△:一部に、インキ濃度ムラが認められ、画像が不鮮明な箇所がある。
×:全体的に、インキ濃度ムラが著しく、不鮮明な画像である。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
試験例5(印刷操業性)
(1)剣先詰まり
オフセット輪転印刷機(型番:LITHOPIA BTO−N4、三菱重工業(株)製)を使用し、50連巻きの新聞用紙にて、20万部/時の速度で印刷を行った。剣先詰まり発生の有無を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:剣先詰まりが全く発生しなかった。
○:巻き取り1本で剣先詰まりが1回しか発生しなかった。
△:巻き取り1本で剣先詰まりが2〜3回発生した。
×:巻き取り1本で剣先詰まりが4回以上発生した。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
(2)ブランケット紙粉パイリング
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、20万部/時の速度で連続5000部のカラー4色印刷を行った。ブランケット非画像部における紙粉発生・堆積の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が全く認められない。
○:紙粉の発生が僅かに認められるが、ブランケット上での堆積は全く認められない。
△:紙粉の発生が認められ、ブランケット上に堆積している。
×:ブランケット上での紙粉の堆積が著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
(3)ネッパリ性(ブランケット粘着性)
新聞用紙を幅約4cm×長さ約6cmの大きさに切断したサンプル2枚を用意し、水に10秒間浸漬した後、これらサンプル2枚を素早く密着させた。これをカレンダーに線圧100kg/cmで通紙し、24時間室温乾燥した後、手作業にてサンプル2枚の剥離(Tピール剥離試験模倣官能試験)を行い、剥離の度合いを以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:剥離するまでもなく、全く接着していなかった。
○:一部僅かに接着していたが、容易に剥離することができた。
△:接着しており、剥離し難い箇所があった。
×:全体的に接着しており、剥離時に接着面からの繊維の毛羽立ちが認められた。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
Figure 0005283395
〔考察〕
実施例1〜13の新聞用紙はいずれも、特定の水和ケイ酸が3質量%以下といった低濃度の希釈液の状態で原料パルプに内添されており、かつ、厚さ1μmまでの用紙表面の面分析で、ケイ素の検出域の大きさにおいて、粒子径が20μm以上の凝集体粒子の面積割合が10%以下と低く調整されている。したがって、実施例1〜13の新聞用紙はいずれも、軽量であるのは勿論のこと、白色度及び白紙不透明度が高く、高い印刷不透明度が維持されていることがわかる。しかも実施例1〜13の新聞用紙はいずれも、1.25〜1.36といった高いインキ濃度を有しながら、インキセット性及びインキ着肉性も良好で印刷適性に優れるだけでなく、表面強度が高く、紙粉の発生も全く乃至殆どなく、さらに印刷操業性にも優れ、特に高速オフセット輪転印刷に好適な優れた特性を具備したものであることがわかる。
これに対して比較例1〜4の新聞用紙はいずれも、填料として乾燥処理を経た水和ケイ酸が用いられており、希釈液の濃度も高く、しかも粒子径が20μm以上の凝集体粒子の面積割合が10%を超えるものである。したがって、比較例1〜4の新聞用紙はいずれも、白色度及び白紙不透明度が不充分であり、印刷不透明度も低いことがわかる。また比較例1〜4の新聞用紙はいずれも、インキセット性やインキ着肉性に劣ったり、インキ着色ムラが生じたり、表面強度が低かったり、印刷操業性に劣る等、高速オフセット輪転印刷に必要な特性を具備していないことがわかる。
また比較例5〜7の新聞用紙も、填料として前記特定の水和ケイ酸ではなく、従来のホワイトカーボンや炭酸カルシウムが用いられており、しかも粒子径が20μm以上の凝集体粒子の面積割合が10%を超えているため、やはりインキセット性やインキ着肉性に劣ったり、インキ着色ムラが生じたり、表面強度が低かったり、印刷操業性に劣る等、高速オフセット輪転印刷に必要な特性を具備していないことがわかる。
本発明の印刷用紙は、例えば18万部/時といった高速オフセット輪転印刷等のオフセット輪転印刷に好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 脱墨パルプを30〜100質量%含む原料パルプと填料とを少なくとも構成成分とする、紙面pH6.0〜10.0、坪量36〜50g/m2の印刷用紙であって、
    前記填料が、(1)BET比表面積50m2/g以上、吸油量150ml/100g以上の毬栗状に凝集又は結晶化した炭酸カルシウムと、(2)反応後乾燥段階を経ない水和ケイ酸と、を含有し、
    かつ、当該炭酸カルシウム及び水和ケイ酸を含有する印刷用紙の表裏面に、澱粉及びポリビニルアルコールの少なくともいずれか一方が塗布されている、
    ことを特徴とする印刷用紙。
  2. 前記炭酸カルシウムの体積平均粒子径が1.8〜10.0μmであるのに対し、前記水和ケイ酸の体積平均粒子径が3〜9μmである、
    請求項1記載の印刷用紙。
  3. 前記水和ケイ酸は、BET比表面積が150m 2 /g以上、吸油量が190〜230ml/100gである、
    請求項1又は請求項2記載の印刷用紙。
  4. 前記反応後乾燥段階を経ない水和ケイ酸は、
    X線マイクロアナライザーを用いたX線の加速電圧が8kVで拡散領域が1μmの条件での紙面の面分析で、水和ケイ酸の凝集体粒子と分析されるケイ素の検出域の大きさにおいて、当該ケイ素の検出域における粒子径が20μm以上の凝集体粒子の所定領域における面積割合が10%以下に成るように分散させた水和ケイ酸からなる、
    請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の印刷用紙。
  5. 前記原料パルプに、パルプ調整段階で凝結剤が、それに続く抄紙工程前段で凝集剤が、それぞれ添加されている、
    請求項1〜のいずれか1項に記載の印刷用紙。
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