JP5283322B2 - 高耐久コーティング用組成物 - Google Patents
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Description
特許文献2では、シリコーンを複合化したエマルジョンにおいて、シリコーン部分に本発明の式(2)で表されるシラン、および本発明の環状シランまたは式(3)で表されるシランとを併用することが開示され、事実、耐候性は改善されかつその皮膜の柔軟性が改善された。しかし長期の耐候性ではヒビわれなど変質の問題があった。
特許文献5では、溶剤系シリコーンと光触媒からなるコーティング用組成物が開示されているが、近年の揮発性物質放出による環境への影響が懸念される状況下では、水系バインダーを用いた光触媒コーティング組成物が望まれていた。
1)シリコーン変性剤[A]と、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と、少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体〔C〕との付加重合物からなり、
カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と他のエチレン性不飽和単量体〔C〕の合計質量に対して、該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕及び他のエチレン性不飽和単量体〔C〕を、それぞれ90〜99.5質量%及び0.5〜10質量%用い、又、上記シリコーン変性剤〔A〕を下記の式
1/5≦{単量体〔B〕+単量体〔C〕}/シリコーン変性剤〔A〕≦500/138で表される関係を満足する量を用いて得られることを特徴とするシリコーン含有高分子エマルジョンであって、シリコーン変性剤〔A〕が、
下記式(1):
CH3−Si−(R4)3 ・・・(2)
(式中R4はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
下記式(3):
(CH3)2−Si−(R5)2 ・・・(3)
(式中R5はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群より選ばれる少なくとも一種及び/又は環状シランを含み、
さらに、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランから選ばれる少なくとも1種を含む加水分解縮合物であることを特徴とするシリコーン含有高分子エマルジョンと、光触媒からなることを特徴とする高耐久コーティング用組成物。
1/100≦シラン(1)/{シラン(2)+シラン(3)}≦10/1
で表される関係を満足するモル比で用いることを特徴とする上記1)または2)のいずれかに記載の高耐久コーティング用組成物。
5)シリコーン含有高分子エマルジョンの少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体〔B〕が、該エチレン性不飽和単量体〔B〕の質量に対して5質量%以上のアクリル酸、メタクリル酸の炭素数が5〜12のシクロアルキルエステルを含有することを特徴とする上記1)〜4)のいずれかに記載の高耐久コーティング用組成物。
1/5≦{単量体〔B〕+単量体〔C〕}/シリコーン変性剤〔A〕≦500/138で表される関係を満足する量を用いることを特徴とするシリコーン含有高分子エマルジョンと光触媒からなり、従来のシリコーン含有高分子エマルジョンに比して、耐候性、耐汚染性に優れた塗膜を形成できる。
シリコーン変性剤〔A〕
本発明においては、高耐候性能及び高耐久性能を付与するためにシリコーン変性剤〔A〕の使用が必須である。シリコーン変性剤〔A〕は、下記式(1):
CH3−Si−(R4)3 (2)
(式中R4はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが、シリコーン構造の架橋密度を付与するために好ましい。シラン(2)の好ましい具体例としては、メチルトリメトシキシシラン、メチルトリエトキシシランなどがあり、またこれらの二種以上を含んでいてもよい。
(CH3)2 −Si−(R5)2 (3)
(式中R5はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群より選ばれる少なくとも一種〕及び/又は環状シランを含むことが好ましい。これは、上記シラン(3)及び/又は環状シランを用いることにより、該シリコーン変性剤〔A〕が形成するシリコーン重合体の架橋密度を低くし、重合体の構造が複雑になるのを防ぐことができ、これによって、高耐久性エマルジョンから提供される塗膜に可撓性を付与することができるためである。上記シラン(3)の好ましい具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等が挙げられる。また環状シランとしては、オクタメチルシクロテ
トラシロキサン、オクタフェニルシクロシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなども用いることができ、これらの二種以上を含んでいてもよい。
本発明における少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕には、(メタ)アクリル酸エステル(本願において、アクリル酸およびメタアクリル酸を合わせて(メタ)アクリル酸と標記する)に代表される(メタ)アクリレート単量体を含む必要がある。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートなどがある。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルなどが挙げられる。(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールなどが挙げられる。(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコールなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。又、(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールなどが挙げられる。また、上記以外の具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。上記(メタ)アクリレート単量体は、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン
性不飽和単量体〔B〕の質量に対して好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90質量%〜100質量%用いることが好ましい。
本発明における他のエチレン性不飽和単量体〔C〕には、アクリルアミド単量体、メタクリルアミド単量体、ビニル単量体から選ばれる(メタ)アクリレート単量体と共重合可能な少なくとも1種のコモノマーが挙げられる。アクリルアミド単量体またはメタクリルアミド単量体としては、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド
、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどがあり、ビニル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトンなどがあり、 又、シアン化ビニル単量体の例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
さらにエチレン性不飽和単量体〔C〕として(メタ)アクリレート単量体と混合して使用できる単量体としては、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル、ブタジエン、エチレンなども挙げられる。
本発明において、乳化重合に用いる乳化剤〔D〕には、スルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体のうち、少なくともいずれか一を含むことが、高度な耐水性を達成するために好ましい。ここにいうスルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体としては、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつフリーのスルホン酸基、又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基(アンモニウムスルホネート基、又はアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物であることが好ましい。たとえば、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6または10のアリール基およびコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を 有する化合物であるか、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基に結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物が好ましい。
上記式(5)及び(6)を含むものとして、例えば、エレミノールJS−2、JS−5(製品名、三洋化成(株)製)があり、上記式(7)及び(8)を含むものとして、例えば、ラテムルS−120、S−180A、S−180(製品名、花王(株)製)がある。
)
本発明において、乳化剤〔D〕は、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕及びエチレン性不飽和単量体〔C〕との合計質量に対して0.05質量%〜10質量%用いられ、好ましくは0.1質量%〜5質量%用いる。
反応性ノニオン型界面活性剤、アデカリアソープNE−20、NE−30、NE− 40(製品名、旭電化工業(株)製)などのα−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン、またはアクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50(製品名、第一工業製薬(株)製)などのポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルなどの反応性ノニオン型界面活性剤といわれる、エチレン性不飽和単量体と共重合可能なノニオン型界面活性剤 などを併用することができる。
重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、ミニエマルション重合が挙げられるが、平均粒子径が10nm〜1μm程度の分散安定性の良好なエマルジョンを安定的に製造する方法としては、乳化重合が好ましい。
剤および/または光安定剤を成膜助剤などと混合して後添加した場合、分散性に劣り、得られた塗膜の粒子界面に集中して存在するため、降雨などにより溶出し、長期の耐久性の向上が認められない。紫外線吸収剤および/または光安定剤は、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕及びエチレン性不飽和単量体〔C〕との合計質量に対して0.1質量%〜5質量%用いることが好ましい。又、紫外線吸収剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のもの、光安定剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のものを用いることもできる。また、紫外線吸収剤と光安定剤を併用すると、その高耐久性エマルジョンを用いて皮膜を形成した際に、皮膜が特に耐候性に優れるため好ましい。
ゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4 −(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN 900)などがある。ラジカル重合性ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ
−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、製品名:RUVA−93)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロ キシエチル−3−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリリルオキシプロピル−3−tert−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、3−メタクリロイル−2−ヒドロキシプロピル−3−〔3’−(2’’−ベンゾトリアゾリル)−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:CGL−104)などがある。
なおこれらの硬化用触媒が水溶性でない場合には、その使用に際して、界面活性剤と水を用いてエマルジョン化しておくことが好ましい。本発明の高耐久性エマルジョンは、エマルジョンの長期の分散安定性を保つため、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジメチルアミノエタノールなどのアミン類を用いてpH5〜10の範囲に調整することが好ましい。
本発明によって製造される高耐久性エマルジョンは、分散質の平均粒子径として、10〜1000nmであることが好ましい。得られたエマルジョン中の分散質(固形分)と分散媒としての水性媒体との質量比は70/30以下、好ましくは30/70以上65/35以下である。
本発明の高耐久性エマルジョンには、通常水系塗料などに添加配合される成分、例えば成膜助剤、 増粘剤、消泡剤、顔料、分散剤、染料、防腐剤などを任意に配合することができる。
本発明の高耐久性エマルジョンは、光触媒と組み合わせることで高耐久コーティング組成物を得ることが可能となる。本発明に用いる光触媒は、光触媒作用を有するものであれば特に限定されるものではなく、市販されているものを用いることができる。光触媒の例としては、TiO2、ZnO、SnO2等があげられ、市販されているものとしては、アナターゼ型酸化チタン粉末:石原産業(製)STS−21、日本エアロゾル社製P−25等がある。また有機成分を修飾した光触媒を用いることも可能である。有機成分を修飾した光触媒の例としては、
処理された変性光触媒がある。
R3Si− (12)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す)
−(R2SiO)− (13)
(式中、Rは式(12)で定義した通りである。)
C1〕と乳化剤〔D1〕と、必要に応じて水性媒体とからなる乳化液とシリコーン変性剤〔A1〕とを混合しながら、水性媒体中において乳化重合に付すことにより、ステップ〔1〕エマルジョンを得、ステップ〔2〕においては、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B2〕と他のエチレン性不飽和単量体〔C2〕および乳化剤〔D2〕と、および必要に応じて水性媒体とからなる乳化液と、シリコーン変性剤〔A2〕とを混合しながら、ステップ〔1〕エマルジョンに添加することによって、乳化重合を行い最終的な所望エマルジョンを得、また紫外線吸収剤および/または光安定剤を乳化重合中に存在させることも可能である。上記ステップ〔1〕において、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B1〕は、ラジカル重合性カルボン酸単量体を2.5質量%以上〜20質量%以下含み、上記ステップ〔2〕において、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B2〕は、ラジカル重合性カルボン酸単量体を含まないか又は含んでも2.5質量%未満であることが好ましい。
エチレン性不飽和単量体〔C〕が均一状態にあり、組成の偏在の無い状態を形成することが肝要である。特に好ましい態様は、シリコーン変性剤〔A〕の式(1)におけるR1がフェニル基又はシクロヘキシル基からなるシラン(1)を導入することにより、シリコーン変性剤〔A〕と少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕、他のエチレン性不飽和単量体〔C〕の相溶化が進行し、より均一化されたポリマーからなるエマルジョン粒子を得ることが可能となり、さらに均一化されたエマルジョン粒子から形成される塗膜組成も均一化される結果、強靭な塗膜を形成することができる。
1/5≦{単量体〔B〕+単量体〔C〕}/シリコーン変性剤〔A〕≦500/138で表される関係を満足する量を用いることを特徴とするシリコーン含有高分子エマルジョンと光触媒を混合することによって得られる。上記式よりシリコーン変性剤量が少なければ、光触媒機能による有機成分の分解が進行し、バインダーとしての機能を劣化させ高耐久機能を発現することができない。また上記式よりシリコーン変性剤量が多ければ、シリコーン含有高分子エマルジョンの製造の際に、重合安定性を損ない、多量の乳化剤等を使用する結果、耐水性の劣るバインダーとなり高耐久機能を発現することが困難となる。本発明におけるシリコーン含有高分子エマルジョンのシリコーン変性剤〔A〕のより好ましい変性量は、下記の式
1/1≦{単量体〔B〕+単量体〔C〕}/シリコーン変性剤〔A〕≦500/272で表される関係を満足する量である。上記式におけるシリコーン変性量では、光触媒機能による有機成分の分解を長期に渡って抑制でき、長期間の耐候性機能を付与することが可能となる。またシリコーン変性量を実用性能範囲内に設定することにより、副生アルコールの処理及び原料費のコスト上昇を抑制でき、汎用的な製品を提供可能となる。
<重合安定性の評価>
乳化重合後に得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンを100メッシュの濾布で凝固物を濾過し、その残渣質量を水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンの固形分質量で割り、残渣率とした。
(判断基準) ○ :残渣率が100ppm未満
△ :残渣率が100ppm以上
× :多量の凝集物が発生
乳化重合後に得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンを100メッシュの濾布で凝固物を濾過し、終了するまでに要する時間で評価した。
(判断基準) ○ :濾過時間が30秒未満
△ :濾過時間が30秒以上60秒未満
× :濾過時間が60秒以上
<粒子径の測定>
得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンの平均粒子径を、リーズ
&ノースラップ社製のマイクロトラック粒度分布計にて測定した。
乳化重合後に得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンに対して下記に示す配合組成でエナメル塗料、クリヤ塗料を調整し、No.50のバーコーターにて塗工し、23℃にて1日養生した後、50℃にて7日養生し、膜厚20〜50μmの白エナメル塗膜を作製した。下記に示した条件アイスーパーUVテスター(岩崎電気(株)製)により下記に示す試験条件にて1000時間照射試験を実施し、塗膜の外観(クラック、はがれなど)を目視にて観察した。また同時に光沢保持率の評価も行った。
(判断基準) ○ :外観に変化無し
△ :つや引けあり
× :クラック、はがれあり
各実施例、比較例のエマルジョン(固形分40%換算)250部
エチレングリコールモノブチルエーテル 20部
エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル 40部
酸化チタン(ルチル型、タイペークCR97) 130部
増粘剤 0.1部
クリヤ塗料配合物の調整
各実施例、比較例のエマルジョン(固形分40%換算)250部
エチレングリコールモノブチルエーテル 20部
エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル 40部
アナターゼ型酸化チタンゾル
(石原産業製、STS−21、固形分15%) 133部
増粘剤 0.1部
アイスーパーUVテスター試験条件
照度:1000W/m2
照射:63℃、50%RH、8時間
暗黒・湿潤:30℃、96%RH以上、4時間
光触媒を組み合わせた高耐久コーティング組成物の物性試験については、下記に示す評価に従って実施した。
水性シリコーン変性アクリレートエマルジョン(商品名:ポリデュレックスG633、旭化成ケミカルズ製)に対して下記に示す配合組成でエナメル塗料を調整した。
エナメル塗料配合物の調整
シリコーン変性アクリレートエマルジョン(固形分40%換算)
250部
エチレングリコールモノブチルエーテル 20部
エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル 40部
酸化チタン(タイペークCR97) 130部
増粘剤 0.1部
次に各実施例及び比較例で得たエマルジョンを用い、下記に示す配合組成でクリヤ塗料
を調整した。
クリヤ塗料配合物の調整
各実施例、比較例のエマルジョン(固形分40%換算)250部
エチレングリコールモノブチルエーテル 20部
エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル 40部
アナターゼ型酸化チタンゾル
(石原産業製、STS−21、固形分15%) 133部
増粘剤 0.1部
(判断基準) ◎ :外観に変化無し
・ :雨筋若干あり
△ :雨筋が目立ち、微細なクラックあり
× :クラック、はがれあり
これらの評価結果を表3に示す。
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、水320部、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中に持つスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(製品名:ラムテルS−180A、花王(株)製)の20%水溶液10部を入れ、温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を10部添加した5分後に、ステップ(1)として、メタクリル酸メチル87部、メタクリル酸シクロヘキシル50部及びアクリル酸ブチル110部、メタクリル酸3部とラテムルS−180Aの20%水溶液30部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液15部、水290部の混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、プレ乳化液を得た。得られたプレ乳化液をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.3部、メチルトリメトキシシラン46部、ジメチルジメトキシシラン36部からなるシリコーン変性剤〔A〕の混合液とY字管〔Y字管の出口には100メッシュの金網を詰め2つ滴下槽の液が混じり合うところまで、モレキュラシーブス3A(製品名:和光純薬(株)製)を充填し、プレ乳化液とシリコーン変性剤〔A〕との緩やかな混合ができるように調整した。〕を介して反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして30分保った。
トリメトキシシラン30部、ジメチルジメトキシシラン24部からなるシリコーン変性剤〔A〕の混合液とY字管内の金属メッシュで混合しながら反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして120分保った。
続いて、内容量2リットルのSUS製セパラブルフラスコに、上述の乳化重合で得られたシリコーン変性アクリル系エマルジョン1kgをこのフラスコに仕込んだ。フラスコをウォーターバスに浸してラテックスを80℃まで加熱した。適量の消泡剤を添加した後、フラスコ内を40kPaまで減圧にして、固形分が45質量%に上がるまで濃縮を行った。
室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところpH7.2であった。
その後、25質量%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整してから100メッシュの金網で濾過した。濾過された凝集物の乾燥質量は、全単量体に対して60ppmと非常にわずかであった。
ステップ(1)及びステップ(3)に使用するシリコーン変性剤〔A〕を表1の質量部とした以外は、参考実施例1と同一の処理を行った。得られたエマルジョンの固形分、平均粒子径は表2に記載した。その後、参考実施例1と同一の濃縮処理を行った。
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、水320部、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中に持つスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(製品名:ラムテルS−180A、花王(株)製)の20%水溶液10部を入れ、温度を50℃に上げた。ステップ(1)として、メタクリル酸メチル34部、メタクリル酸シクロヘキシル30部及びアクリル酸ブチル83部、メタクリル酸3部とラテムルS−180Aの20%水溶液30部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液15部、水320部の混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、プレ乳化液を得た。
得られたプレ乳化液反応容器に入れ、温度を60℃に上げた。次にシリコーン変性剤〔A〕として、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.3部、メチルトリメトキシシラン183部、ジメチルジメトキシシラン146部の混合液を反応容器中へ滴下槽より約1分かけて流入させた。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして、過硫酸アンモニウムの2%水溶液10部を添加し、60分保った。
上記の混合液に25%アンモニア水溶液を 添加してpH8に調整してから100メッシュの金網で ろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して20ppm以下と非常にわずかで、また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は40.0%、平均粒子径113nmであった。その後、参考実施例1と同一の濃縮処理を行った。
ステップ(1)及びステップ(3)に使用するシリコーン変性剤〔A〕を表1の質量部とした以外は、実施例7と同一の処理を行った。得られたエマルジョンの固形分、平均粒子径は表2に記載した。その後、参考実施例1と同一の濃縮処理を行った。
[比較例1〜2]
ステップ(1)及びステップ(3)に使用するシリコーン変性剤〔A〕を表1の質量部
とした以外は、参考実施例1と同一の処理を行った。得られたエマルジョンの固形分、平均粒子径は表2に記載した。その後、参考実施例1と同一の濃縮処理を行った。
ステップ(1)及びステップ(3)においてシリコーン変性剤〔A〕を使用せずに、参考実施例1と同一の処理を行った。得られたエマルジョンは濃縮処理を行い、固形分40%に調整した。平均粒子径は表2に示した。
各実施例及び比較例の屋外実曝露試験結果とアイスーパーUVテスターによる耐候性促進試験結果を表3に示す。
のと考えられる。比較例3では、バインダーがアクリル成分のみであり、さらに光触媒自身による劣化が進行したため、汚染度が低下する結果となった。
アイスーパーUVテスターによる耐候性促進試験においても比較例1、2及び3では光沢値が短時間で低下したのに対し、実施例1〜9では、光沢値の低下の進行が緩やかである。これは光触媒機能を有する酸化チタンによる塗膜の分解速度が異なるためで、屋外実曝露試験の結果と同一の傾向を示した。これらの結果は、即ちシリコーン変性量の増加に伴い塗膜の劣化は緩やかとなり、光触媒作用による低汚染機能も長期間発現が可能となることを示している。実施例2、3、5、6、8,9の光沢値の低下がさらに少ない理由は、使用したシリコーン変性剤〔A〕のシラン(1)としてフェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランを用いたことにより、シリコーン成分がエチレン性不飽和単量体からなるポリマー中に均質に分散されたためと考えられる。
Claims (5)
- シリコーン変性剤[A]と、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と、少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体〔C〕との付加重合物からなり、
カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と他のエチレン性不飽和単量体〔C〕の合計質量に対して、該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕及び他のエチレン性不飽和単量体〔C〕を、それぞれ90〜99.5質量%及び0.5〜10質量%用い、又、上記シリコーン変性剤〔A〕を下記の式
1/5≦{単量体〔B〕+単量体〔C〕}/シリコーン変性剤〔A〕≦500/138
で表される関係を満足する量を用いて得られることを特徴とするシリコーン含有高分子エマルジョンであって、シリコーン変性剤〔A〕が、
下記式(1):
下記式(2):
CH3−Si−(R4)3 ・・・(2)
(式中R4はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水
酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
下記式(3):
(CH3)2−Si−(R5)2 ・・・(3)
(式中R5はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水
酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群より選ばれる少なくとも一種及び/又は環状シランを含み、
さらに、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランから選ばれる少なくとも1種を含む加水分解縮合物であることを特徴とするシリコーン含有高分子エマルジョンと、光触媒からなることを特徴とする高耐久コーティング用組成物。 - シリコーン含有高分子エマルジョンが、シリコーン変性剤〔A〕と、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と、少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体〔C〕とを乳化重合に付して得られることを特徴とする請求項1記載の高耐久コーティング用組成物。
- シリコーン含有高分子エマルジョンの上記シリコーン変性剤〔A〕が、上記式(2)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、上記環状シラン及び式(3)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の合計質量に対して、該式(2)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対する、上記環状シラン及び式(3)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモル比が少なくとも1/100であり、又、上記式(1)で表されるシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を下記の式
1/100≦シラン(1)/{シラン(2)+シラン(3)}≦10/1
で表される関係を満足するモル比で用いることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の高耐久コーティング用組成物。 - シリコーン含有高分子エマルジョンが、該シリコーン変性剤〔A〕が、同じか異なった(A−1)と(A−2)よりなり、該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕が、同じか異なった(B−1)と(B−2)よりなり、該他のエチレン性不飽和単量体〔C〕が、同じか異なった(C−1)と(C−2)よりなり、上記乳化重合をステップ(1)およびステップ(2)の順で行い、ステップ(1)においては、該シリコーン変性剤(A−1)と、少なくとも1種の該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体(B−1)と、少なくとも1種の該他のエチレン性不飽和単量体(C−1)とを同時に乳化重合してシリコーンを含むシードエマルジョンを得、この存在下で、ステップ(2)においては該シリコーン変性剤(A−2)と、少なくとも1種の該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体(B−2)と、少なくとも1種の該他のエチレン性不飽和単量体(C−2)を乳化重合して得られる重合体からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高耐久コーティング用組成物。
- シリコーン含有高分子エマルジョンの少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体〔B〕が、該エチレン性不飽和単量体〔B〕の質量に対して5質量%以上のアクリル酸、メタクリル酸の炭素数が5〜12のシクロアルキルエステルを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高耐久コーティング用組成物。
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