添付図面を参照して、この発明に係る尿処理用の着用物品の詳細を説明すると、以下のとおりである。
図1は、この発明に係る尿処理用の着用物品1が使用されている自動尿処理装置100の構成図である。自動尿処理装置100は、部分的に破断して示されている着用物品1と、その着用物品1に対して離脱可能に接続される真空吸引手段100aを含む制御部101とを有する。着用物品1は、着用者(図示せず)の肌に向けられる内面2とその反対側であって着用者の着衣に向けられる外面3とを有するもので、図では、着衣である仮想線で示されたパンツ300とともに着用され、そのパンツ300によって内面2が肌に密着可能な状態にある。パンツ300は、前胴周り域301と、後胴周り域302と、股下域303とを有するもので、外面3を容易に透視することができるように、メッシュタイプの布地を使用したものであることが好ましい。
自動尿処理装置100は、着用者が***した尿を着用物品1に集めて処理することができる装置である。その着用物品1は、集尿容器部102と、尿検出部150と、吸液性パッド160とを含んでいる。集尿容器部102は、着用者の***する尿を受け容れることができ、尿検出部150は、着用者の肌と集尿容器部102との間にあって、尿が***されたことを電気的に検出することができる。真空吸引手段100aは、集尿容器部102に接続される継手部材104、導尿チューブ106、尿タンク107、ポンプユニット108、電気配線116等を含む。着用物品1は、着用者が寝たきりの状態にあるときに着用するのが好ましいもので、集尿容器部102は股下域303のうちでも後胴周り域302に寄った部位に位置するように形成されている。
ポンプユニット108は、尿検出部150から配線116を介して送られる電気信号を処理する制御回路108aやその回路108aによって運転が制御される吸引ポンプ108b等を含んでいる。着用物品1では、集尿容器部102の周壁部に形成された尿排出口114(図5を併せて参照)に対して継手部材104を介して導尿チューブ106が接続される。ポンプユニット108から延びる配線116の先端には、尿検出部150の上端部分266に含まれている尿検出用電極218a,218bと便検出用電極143a,143bとの端子部218c、218d、143c、143dを配線116へ電気的に接続するためのクリップ120が取り付けられている(図3,7を併せて参照)。
かような自動尿処理装置100では、尿が***されると尿検出部150らの検出信号をポンプユニット108に送り、吸引ポンプ108bを作動させて尿タンク107内の空気を吸引することにより、尿を集尿容器部102の内部へ吸引し、その吸引した尿を継手部材104と導尿チューブ106とを介してさらに吸引し、尿タンク107に集めることができる。また、着用物品1に便が存在すると便検出用電極143a,143bからの検出信号をポンプユニット108に送り、ポンプユニット108に含まれる制御回路108aを介して警報ランプ(図示せず)を点滅させて便の存在を介護者に知らせることができる。
図2,3は、着用物品1の内面2を示す図と外面3を示す図であって、これらの図2,3における着用物品1は、互いに直交する縦方向Pと横方向Qと厚さ方向R(図4,5参照)とを有している。この着用物品1はまた、それが平らな状態になるように縦方向Pと横方向Qとに伸展された状態にある。図2に示されているように、着用物品1の内面2には、一対の防漏堤136が縦中心線L1−L1に関して対称に配置されていて、着用物品1を着用するときには、尿道口が防漏堤136と136との間に来るようにする。図3において、着用物品1の外面3における縦中心線L1−L1上には、尿検出部150の上端部分266と集尿容器部102の尿排出口114とが現われている。パンツ300の股下域303に着用物品1がセットされるときに、尿検出部150の上端部分266は、股下域303からパンツ300の前胴周り域301に向かって延びた状態にある(図1参照)。
図4,5において、図4は図2のIV−IV線に沿う切断面を示す図であって、IV―IV線は集尿容器部102を横断している。図5は図2のV−V線に沿う切断面を示す図であって、V−V線は縦中心線L1―L1に一致している。図4,5では、着用物品1の厚さ方向Rにおいて重なり合うべき各部材が互いに離間した状態で示されている。その厚さ方向Rは、集尿容器部102の深さ方向でもある。
着用物品1では、集尿容器部102の上方に、その厚さ方向Rの下方から順に、難通気性シート124、拡散シート126、クッションシート128、電極部118、スペーサ130、フィルタ132、透液性肌当てシート134からなるいずれも透液性のシート状部材が重なり、肌当てシート134には一対の防漏堤136の内側縁部136dが重なっている。なお、図2に示されているように、防漏堤136の上端縁部136eと下端縁部136fとには、エンドシート138と139とが重なっている。また、図2,5に示されるように、エンドシート139と肌当てシート134との間には、繊維ブロック141が設けられている。
難通気性シート124と拡散シート126とは、集尿容器部102の頂部開口102cを尿の進入が可能となるように覆う集尿シート部140を形成している。また、クッションシート128、電極部118、スペーサ130、フィルタ132、肌当てシート134は互いに重なり合って尿検出部150を形成している。集尿容器部102の下方には、尿を吸収可能な吸収性パッド60と、集尿容器部102とパッド60との間に介在する防漏性シート61とが位置している。
集尿容器部102は、縦方向Pに長く作られた椀状のものであり、軟質ポリエチレンやシリコンゴム等の軟質弾性材料で形成され、縦方向Pにも横方向Qにも湾曲できる可撓性を有しているが、吸引ポンプ108bで尿を吸引するときに作用する負圧によっては変形することがないように作られている。集尿容器部102はまた、頂部開口102cと対向するように形成された底部102dと、頂部開口102cの周縁に形成された周縁フランジ部152とを有し、周縁フランジ部152には難通気性シート124が接着または溶着によって接合している。
集尿シート部140における難通気性シート124は、透液性は高いが空気を殆どまたは全く通さないもので、頂部開口102cが難通気性シート124で覆われている集尿容器部102は、ポンプユニット108の吸引ポンプ108bが作動すると容易に負圧となり、尿を速やかに吸引することができる。難通気性シート124は、例えば坪量が22g/m2のスパンボンド不織布と10g/m2のメルトブローン不織布と22g/m2のスパンボンド不織布とからなるSMS不織布を、好ましくは界面活性剤で親水化処理して使用することができる。難通気性シート124の通気性は、JIS L 1096のセクション6.27.1に規定される通気性測定方法のA法に従って測定したときに、湿潤状態においては0〜100cc/cm2/秒、好ましくは0〜50cc/cm2/秒の範囲にある。また、乾燥状態においては20〜200cc/cm2/秒、好ましくは20〜100cc/cm2/秒、さらに好ましくは20〜50cc/cm2/秒の範囲にある。この通気性を測定するときの湿潤状態とは、下記の式(1)で算出される難通気性シート124の含水率が100%以上である状態を意味し、乾燥状態とは、難通気性シート124を20℃、RH50%の室内に24時間以上放置したときの同シート124の状態を意味している。
含水率=(湿潤状態のシート重量−乾燥状態のシート重量)/(乾燥状態のシート重量)・・・式(1)
拡散シート126は、レーヨン繊維を一例とする親水性繊維を含む不織布等の透液性シート片で形成され、尿が***されたときにその尿を難通気性シート124の上方において速やかに拡散させて難通気性シート124を広い面積にわたって湿潤状態にするために使用される。難通気性シート124が湿潤状態になることによって、集尿容器部102の内部を負圧にして尿をその内部に吸引することが容易になる。拡散シート126と難通気性シート124とは、互いの透液性を阻害することがないように間欠的に接合していることが好ましい。
尿検出部150におけるクッションシート128は、例えば坪量が20〜30g/m2のサーマルボンド不織布等の透液性シート片で形成されていて、尿を速やかに浸透させることができるもので、拡散シート126や難通気性シート124に存在する尿が電極部118に向かって逆流することを防いでいる。クッションシート128はまた、着用物品1の製造工程においてそれがキャリヤシートとなるように、その上に電極部118、スペーサ130、フィルタ132等のシート状部材を予め重ねておけば、これらシート状部材を一括して集尿シート部140に重ねることができる。クッションシート128は、拡散シート126に対して、それぞれの透液性が実質的に阻害されることのないように間欠的に接合していることが好ましい。
電極部118は、尿を検出するための所要形状の電極と便を検出するための所要形状の電極とを合成樹脂フィルムに対して導電性インクを使用して印刷することにより形成することができるもので、形状の詳細は図6,7に示されている。電極部118は、クッションシート128に対して接合して尿検出部150における位置を安定させることができる。
スペーサ130は、尿検出部150におけるシート状部材のうちで厚さが最も厚いもので、ネット状の透液性シート片で形成される。着用物品1では、尿の吸引後にも尿が肌当てシート134に残り、その尿によって肌当てシート134が湿潤状態にあるということがある。そして、その肌当てシート134が、体圧等の作用を受けて電極部118に直接的または間接的に接触し、自動尿処理装置100を誤動作させるということがある。スペーサ130は、そのような誤動作を防止するために電極部118とフィルタ132とを厚さ方向Rにおいて離間させておく手段であって、吸尿能力がなくて撥水性であり、かつ難通気性シート124よりも高い通気性と透液性とを有し、体圧を受けてもその厚さが変化しないものである。そのようなスペーサ130は、例えばエチレン酢酸ビニル等の柔軟な合成樹脂で形成された厚さ0.5〜1mmのネットで作ることができる。スペーサ130とクッションシート128とは、互いの透液性が実質的に阻害されることのない態様で接合していることが好ましい。
フィルタ132は、尿に含まれる固形分が電極部118に付着して電極部118が恒久的に通電状態になるというような事態を防止するためのもので、難通気性シート124よりも高い通気性と透液性とを有するシート片、例えば通気・透液性の不織布片によって形成される。フィルタ132とスペーサ130とは、互いの透液性が実質的に阻害されることのない態様で接合することができる。
肌当てシート134は、フィルタ132の上方に設けられるもので、着用物品1が着用されたときには着用者の肌と向かい合う。かかる肌当てシート134は、例えば坪量が15〜25g/m2のサーマルボンド不織布等の柔軟性と透液性とを有するシート片で形成される。肌当てシート134は、クッションシート128と同様に排尿の初期段階で尿を速やかに浸透させることができるもので、フィルタ132に対して、互いの透液性が実質的に阻害されることのない態様で接合していることが好ましい。肌当てシート134には、親水性のものである場合と、撥水性のものである場合とがある。
防漏堤136は、図4に示されるように一対を成すもので、尿が肌当てシート134の上を横方向Qへ流れて着用物品1から横漏れすることを防止するために使用される。図4の防漏堤136は、横方向Qの外側寄りに位置する外側縁部136cが縦中心線L1−L1に平行な折曲案内線G(図2を併せて参照)に沿って折曲されていて、防漏性シート61の下側にまで延びており、好ましくはその外側縁部136cが防漏性シート61に接合している。防漏堤136において、横方向Qの内側寄りに位置する内側縁部136dは、防漏堤136の上端部136eと下端部136f(図2参照)との間にあって肌当てシート134の上方へ起立することができるように肌当てシート134に接合されることのない部位である。すなわち、内側縁部136dは、厚さ方向Rの上方に向かって肌当てシート134から離間可能な状態にあることに加え、内側縁部136dには糸ゴム等の弾性部材136bが縦方向Pへ伸長した状態で取り付けられているので、着用物品1が着用されて図1の如く縦方向Pにおいて湾曲してその弾性部材136bが収縮すると、内側縁部136dが、仮想線で示される如く、肌当てシート134から離間するように、換言すると着用者の肌に接近するように自動的に起立する。防漏堤136は、柔軟なシート片によって形成されるもので、より好ましくは柔軟にして不透液性のシート片によって形成される。そのようなシート片には、熱可塑性合成繊維で形成された不織布や熱可塑性合成樹脂フィルム、そのフィルムと不織布との積層シート等で形成されるものがある。なお、図2に示される如く、平坦な状態にあるときの着用物品1の防漏堤136は、縦方向Pにおける両端部であって肌当てシート134に接合される上端部136eと下端部136fとを有し、これら上端部136eと下端部136fそれぞれの一部分が上端部エンドシート138と下端部エンドシート139それぞれによって被覆されている。ただし、図4は、防漏堤136の外側縁部136cと内側縁部136dとの間の寸法を誇張することによって、防漏堤136が肌当てシート134の上方から防漏性シート61の下方にまで延びるものであることを示している。
吸収性パッド60は、透液性の内面シート62と、不透液性の外面シート63と、これら両シート62,63の間に介在する吸収性の芯材64とを有するもので、縦方向Pと横方向Qとにおいて、集尿容器部102よりも大きくつくられる。より好ましい吸収性パッド60は、図示例の如く集尿容器部102、集尿シート部140および尿検出部150よりも大きく作られる。内面シート62と外面シート63とは、芯材64の周縁から延出する部分において重なり合い互いに接合している。これら両シート62,63は、図示例の如く同形同大のものであってもよいが、外面シート63は、縦方向Pと横方向Qとにおいて、内面シート62よりも大きく作られているものであってもよい。芯材64は、縦方向Pと横方向Qとにおいて、集尿容器部102よりも大きく、横方向Qにおいてはまた、図4に示されているように一対の防漏堤136の外側縁部136cよりもさらに外側へ延びていて内面シート2とともに尿に対しての吸収領域167を形成している。図示例の芯材64はまた、パッド60と集尿容器部102との縦方向Pと横方向Qとにおける相互の位置を安定させるために、集尿容器部102の直下にその集尿容器部102に対しての受容部68を有している。受容部68では、芯材64が図示例の如く存在していないか、存在しているとしても厚さが局部的に薄くなるような状態にある。また、図5に示されているように、内外面シート62,63と芯材64とには、集尿容器部102における尿排出口114をのぞかせることのできる第1開口部66と、電極部118の上端部分266をパッド60から延出させるための第2開口部67とが形成されている。これら第1,第2開口部66,67の周縁部では、内面シート62と外面シート63とが接合して、芯材64から滲出する尿の漏洩を防いでいる。かようなパッド60において、内面シート62には不織布や開孔プラスチックフィルム等が使用される。外面シート63には、プラスチックフィルムやプラスチックフィルムと不織布との積層シート等が使用される。芯材64には、粉砕パルプや粉砕パルプと高吸水性ポリマー粒子との混合物等が使用される。
防漏性シート61は、縦方向Pと横方向Qとにおいて集尿容器部102の周縁から延出するように延びているもので、好ましくは通気性シート124と肌当てシート134とのうちのいずれか大きい方のシートと同じ大きさに作られるか、その大きい方のシートよりもさらに大きくなるように作られる。厚さ方向Rにおいて、防漏性シート61の側縁部61cは、防漏堤136の外側縁部136cと直接的または間接的いずれかの態様で重なり合い連結されている。図4においては、側縁部61cと外側縁部136cとが側縁部61cを上にして直接的に重なり合い、ホットメルト接着剤等の接合手段(図示せず)を介して互いに接合している。かような防漏性シート61は、防漏堤136と協働して、防漏堤136と136との間に***された尿をそれら防漏堤136どうしの間に保持し、尿が集尿容器部102に集められることを容易にしたり確実にしたりする。このように作用する防漏性シート61は、不透液性シートで形成されることが好ましいが、難通気性シート124が有する透液性よりも低い透液性を有するシートで形成されることもある。防漏性シート61は、集尿容器部102と、パッド60の内面シート62とにホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合しており、集尿容器部102とパッド60とが互いにずれることがないように固定された状態にある。
エンドシート138,139は、それと向かい合う部材に対してホットメルト接着剤等で接合されるもので、不織布やプラスチックフィルム、不織布とプラスチックフィルムとの積層シート等によって形成される。繊維ブロック141は、熱可塑性合成繊維やレーヨン繊維等の短繊維の集合体であって、肌当てシート134上の軟便の縦方向Pにおける流れを止めるように作用する。
図6は、電極部118の平面図である。電極部118は、合成樹脂フィルムで形成された絶縁性のフィルム部260と、フィルム部260の片面に形成された一対の尿検出用電極218a,218bと、同じくその片面に形成された一対の便検出用電極143a,143bと、これらの電極218a,218b,143a,143bの大部分を覆っている絶縁性の塗膜170とを有する。フィルム部260は、縦方向Pへ延びる短冊状のものであるが、横方向Qの中央部が縦方向Pへ長く切り取られることによって形成された矩形の開口171を有する。かようなフィルム部260は、図6における上方にクリップ120で把持するための上端部分266を有し、上端部分266の下方には電極部118の幅を二等分する縦中心線L1−L1の両側に側部267a,267bを有し、さらに下方には側部267aと側部267bとにつながる下端部268を有する。フィルム部260の上端部分266では、電極218a,218bと電極143a,143bとが露出している。また、側部267a,267bの絶縁性の塗膜170には幅狭い非塗装部分である第1窓部169a,169bが複数形成されている。ここでは、一対の尿検出用電極218a,218bのそれぞれが底部102dとなって現われていて、尿で濡れることが可能である。側部267a,267bの絶縁性の塗膜170にはまた、第1窓部169a,169bよりも幅の広い非塗装部分である第2窓部269a,269bが複数形成されている。ここでは、一対の便検出用電極143a,143bのそれぞれ底部102eとなって現れていて、便に含まれる水分で濡れることが可能である。
図7は、絶縁性の塗膜170が剥離された状態にある電極部118の平面図である。フィルム部260の側部267a,267bには、一対の尿検出用電極218a,218bが互いに離間並行して縦方向Pへ延びる態様で形成されている。これらの電極218a,218bに形成されている複数の部分175a,175bは、図6の第1窓部169a,169bにおいて露出している。尿検出用電極218aと218bとの間には、断線検出用回路250が形成されている。断線検出用回路250は、尿検出用電極218a,218bそれぞれの下端部分173a,173bに電気的につながるとともに、図示の如く開口171の縁に沿って延びている。フィルム部260の側部267a,267bにはまた、一対の便検出用電極143a,143bが互いに離間並行して縦方向Pへ延びる態様で形成されている。これらの便検出用電極143a,143bに形成されている複数の部分475a,475bは図6の第2窓部269a,269bにおいて露出している。一対の便検出用電極143a,143bはまた、それらの下端部144a,144bが尿検出用電極218a,218bの長さを越えてさらに下方へ延びており、その下端部分144a,144bにも部分475a,475bが形成されている。
電極部118のうちのフィルム部260には、好ましくは厚さが50〜100μmのポリエステルフィルムが使用される。尿検出用電極218a,218bは、導電性インクや導電性塗料を使用して所要の形状をフィルム部260に印刷することによって得ることができる。導電性インクや導電性塗料には、導電性材料として例えば3〜7重量%のカーボンブラック、10〜30重量%のカーボングラファイト等の人造黒鉛、適宜量の銀粉等が含まれる。尿検出用電極218a,218bのそれぞれは、例えば幅が0.5〜2mm、抵抗が150kΩ以下となるように作られ、部分175a,175bは第1窓部169a,169bにおいての露出が容易となるような適宜の幅に作られる。断線検出用回路250は、例えばカーボンブラックが3〜7重量%、人造黒鉛が5〜10重量%含まれるインクを使用して所要の形状をフィルム部260に印刷することによって得ることができる。この回路250は、その抵抗値が尿検出用電極218a,218bの抵抗値よりもはるかに高いものであって、その抵抗値は導電性インクの導電性の他に、そのインクによって形成される回路250の幅や長さ等によって調整することができる。前記のインクを使用した場合の回路250は、幅が0.3〜1mm、抵抗値が2〜10MΩ程度となるように作られることが好ましい。便検出用電極143a,143bは、尿検出用電極218a,218bと同様なインクや塗料を使用して作られる他に、アルミニゥムを真空蒸着することによって作られることもある。便検出用電極143a,143bもまた幅が例えば0.5〜2mmとなるように作られ、部分475a,475bは第2窓部269a,269bにおいての露出が容易となるような適宜の幅に作られる。互いに離間並行する便検出用電極143aと143bとの間の電気抵抗は無限大である。
電極部118と制御部101とがクリップ120を介して電気的につながると、制御部101に含まれている電源116a(図1参照)から微弱な電流が尿検出用電極218a,218bと便検出用電極143a,143bとに供給される。ポンプユニット108の制御回路108aでは、尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗またはその電気抵抗に相等する他の物理量と、便検出用電極143aと143bとの間の電気抵抗またはその電気抵抗に相等する他の物理量とが連続的または間欠的に測定される。ただし、尿検出用電極218a,218bは断線検出用回路250を介してつながっており、制御回路108aではこれらを通る微弱な電流を検出する。そして、所定の時間が経過してもその電流を検出することができなくなったときに、自動尿処理装置100では、尿検出用電極218a,218bに異常があるとみなしてランプやブザー等の警報手段(図示せず)を作動させ、使用者に対して警報を出す。
着用物品1において尿が***されると、尿検出用電極218aと218bとにおける底部102dどうしが電気的につながり、尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗が低下するように変化し、制御回路108aではその変化を尿が尿検出域102bに存在すること、換言すると尿が***されたことを検出した信号と判断して吸引ポンプ108bを始動させる。電気抵抗の低下の程度は、着用物品1の諸条件、例えば第1窓部169a,169bにおける尿検出用電極218a,218bの露出面積等に依存するから、図示例の着用物品1では、例えば尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗が、尿が***されると0.4kΩ以下に容易に低下するようにしておいて、0.4kΩまたはそれ以下の電気抵抗が所定の時間、例えば0.2秒間継続することを吸引ポンプ108bを始動させる規定抵抗値、すなわち閾値とすることができる。また、吸引ポンプ108bは、着用物品1による尿の吸引を1〜2分以内で完了することができる能力を有することが好ましく、そのような吸引ポンプ108bを使用するときには、吸引ポンプ108の運転が例えば3分間以上継続するときに、自動尿処理装置100に異常があると判断することができる。
着用している着用物品1に軟便等の便が***されて、一対の便検出用電極143aと143bとにおける底部102eどうしが便に含まれる水分によって電気的につながると、便検出用電極143aと143bとの間の電気抵抗が低下する。一般的に、便による電気抵抗の低下は、尿による電気抵抗の低下ほどには顕著ではないが、便による電気抵抗の低下も着用物品1の諸条件に依存するから、図示例の着用物品1では例えば0.5kΩ程度にまで低下するようにしておいて、ポンプユニット108では、便検出用電極143aと143bとの間の電気抵抗が0.5kΩまたはそれ以下であって0.4kΩよりも高い値で所定の時間、例えば10分間継続することを便が着用物品1に存在すると判断するための規定抵抗値、すなわち閾値とし、その判断に基づいて着用物品1の交換を促すための警報を出すことができる。
制御部101では、尿検出用電極218a,218bが例えば0.4kΩという規定抵抗値を検出するように使用され、便検出用電極143a,143bが例えば0.4kΩよりも高い規定抵抗値を検出するように使用されているから、尿によって便検出用電極143a,143bが電気的につながっても、また便によって尿検出用電極218a,218bが電気的につながっても、自動尿処理装置100には誤動作が生じない。ただし、この発明は、尿検出部150において、便検出用電極143a,143bを省いて実施することもできれば、断線検出用回路250を省いて実施することもできる。
図8と図9とは、この発明の実施形態の一例を示す図2と同様な図と、図4と同様な図である。図8,9に示された着用物品1では、一対の防漏堤136それぞれの外側に互いに平行して縦方向Pへ延びる一対の外側防漏堤166が形成され、隣り合う防漏堤136と外側防漏堤166との間には、パッド60の一部分である内面シート62と外面シート63と芯材64とがあって、内面シート62と芯材64とが吸収領域167を形成している。外側防漏堤166は、外側縁部166c、内側縁部166d、上端部166e、下端部166fを有し、内側縁部166dには糸状の弾性部材166bが伸長状態で取り付けられている。外側縁部166cと、上端部166eと、下端部166fとは、厚さ方向Rにおいてそれらの直下に位置する内面シート62または外面シート63に対して接合されている。内側縁部166dは、内面シート62に対して非接合状態にあり、弾性部材166bが収縮すると、内面シート62から離間するように厚さ方向Rの上方に向かって起立する。図9には起立したときの外側防漏堤166が仮想線で示されている。
図8,9の着用物品1では、着用者の股間において着用物品1の位置がずれて防漏堤136の外側に尿が流れるということがあっても、その尿が着用物品1から漏れることを外側防漏堤166で防ぐことができる。加えて、防漏堤136の外側へ流れた尿は、集尿容器部102へ導くことはできないが、防漏堤136と外側防漏堤166との間に形成されている吸収領域167において吸収することができる。外側防漏堤166は、防漏堤136と同じシート材料で作ることができる。図示例の外側防漏堤166は、横方向Qの寸法を大きくして、内側縁部166dを防漏堤136に重なるように作ることもできる。
図10もまた、この発明の実施形態の一例を示す図4と同様な図である。図10の着用物品1では、防漏堤136の外側縁部136cと防漏性シート61の側縁部61cとが外側縁部136cを上にして重なり合っている。好ましい外側縁部136cは、ホットメルト接着剤等の接合手段(図示せず)を介して側縁部61cに接合している。図10ではまた、芯材64の厚さが受容部68においては薄くなり、受容部68の周囲においては厚くなる例が示されている。芯材64は、図4,5に示されるように集尿容器部102の直下に存在していなくてもよいものであるが、その直下に図10に示されるように僅かでも存在しているときには、集尿容器部102と外面シート63とが直接的に接触して外面シート63が損傷するという問題を防ぐことができる。
図11もまた、実施形態の一例を示す図4と同様な図である。図11の着用物品1では、防漏堤136の外側縁部136cが難通気性シート125と拡散シート126との間にあって、難通気性シート125および/または拡散シート126にホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合している。防漏堤136の外側縁部136cは、図示例の他に拡散シート126とクッションシート128との間に挿入したり、フィルタ132と肌当てシート134の間に挿入したりして、これらシート126,128,132,134のいずれかに接合することができる。
図12もまた、実施形態の一例を示す図4と同様な図である。図12の着用物品1では、防漏堤136の外側縁部136cが横方向Qの外側へ延びていて防漏性シート61の側縁部61cと合掌状に重なり合い、接着または溶着によって互いに接合して連結した状態になる。この場合においても、吸収領域167が形成されるように、外側縁部136cと側縁部61cとは重なり合う部位における横方向Qの寸法を極力小さくしておく。
図13もまた、実施形態の一例を示す図4と同様な図である。図13の着用物品1では、図4における防漏堤136と防漏性シート61とが1枚のシート70によって形成されているということによって、防漏堤136の外側縁部136cと防漏性シート61の側縁部61cとが互いに連結された状態にある。そのシート70には、図4において防漏堤136を形成しているシートや防漏性シート61を形成しているシートを使用することができる。この形態の着用物品1では、互いに別体である防漏堤136と防漏性シート61との接合状態の悪いことが原因となって、これら両者136,61の間から尿が滲出するという問題を生じることがない。
これまでの図示例によって明らかなように、この発明においては、防漏堤136の外側縁部136cと防漏性シート61の側縁部61cとを、図4や図10、図12の例の如く直接的に接合したり、図11の如く難通気性シート124等のシート状部材を介して間接的に接合したりすることによって、直接的または間接的に連結して、防漏堤136と136との間に***された尿の集尿容器部102への流入を容易にしたり確実にしたりすることができる。加えて、横方向Qにおいて、防漏堤136の外側に吸収領域167を設けることによって、防漏堤136の外側へ流れた尿を吸収し、着用物品1における横漏れを防ぐことができる。また、外側防漏堤166が形成されている態様のこの発明では、横漏れを防止する効果を一層向上させることができる。
この発明においてはまた、集尿シート部140を形成している難通気性シート124と拡散シート126とのうちの難通気性シート124が尿を拡散させることにおいて優れている場合には、拡散シート126を省くことが可能である。尿検出部150を形成しているクッションシート128、スペーサ130、フィルタ132、肌当てシート134については、尿検出部150の機能の低下を許容できるのであれば、クッションシート128を省いてこの発明を実施することも可能であり、肌当てシート134にスペーサとフィルタとの機能を持たせてスペーサ130やフィルタ132を省いてこの発明を実施することも可能である。すなわち、尿検出部150は、電極部118と、それを被覆しかつ肌に当接可能な少なくとも1枚の透液性シートとによって形成することもできる。さらには、図8に例示の外側防漏堤166を、図9〜13に例示の着用物品1においても採用することができる。