JP5277439B2 - 核酸内包高分子ミセル複合体 - Google Patents
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Description
非ウイルス型遺伝子ベクターとしては、これまでに、ポリエチレングリコール(PEG)とポリカチオン(カチオン性のポリペプチド)から構成されるブロックコポリマーと、ポリアニオンであるDNAとの間の静電的相互作用により形成されたミセル状のポイリオンコンプレンクス(PIC)が報告されている(S.Katayose et al.,Bioconjugate Chem.,8,702−707(1997);S.Fukushima et al.,J.Am.Chem.Soc.,127,2810−2811(2005)を参照)。
このPICは、DNAが、ブロックコポリマー中のポリカチオン部分との相互作用により凝縮してコア部分を形成し、ブロックコポリマー中の親水性及び生体適合性に優れたPEG部分がコア部分の周囲にシェル部分を形成したような構造となっている。そのため、例えば血中でもDNAを安定に内包することができる。しかも、粒径がウイルスと同程度(約100nm)であるため、生体内の異物認識機構を回避することができる。さらに、ブロックコポリマー中のポリカチオンの側鎖に含まれるエチレンジアンミンユニット(−(CH2)2−NH−(CH2)2−NH2)が、2段階のpKaを有しているため、DNAとのコンプレックスが形成されながら、細胞内ではプロトンスポンジ効果によりエンドソームエスケープが促進されるという効果も有する。上記PICは、このような特性により遺伝子発現効率の向上が図られたものである。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、ポリエチレングリコールとポリカチオンとをジスルフィド結合(−S−S−)させたブロックコポリマーを用いれば、得られるポリイオンコンプレックスは上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)ポリエチレングリコール及びポリカチオンがジスルフィド基を介して結合したブロックコポリマーと、核酸とを含むことを特徴とする、ポリイオンコンプレックス。
本発明のポリイオンコンプレックスにおいて、前記ポリカチオンとしては、例えば、側鎖にカチオン性基を有するポリペプチドが挙げられる。また、前記ブロックコポリマーとしては、例えば、下記一般式(1)で示されるポリマーが挙げられる。
〔式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、
R3は、一級アミンを有するアミン化合物由来の残基を表し、
L1は、NH、CO、下記一般式(4):
−(CH2)p1−NH− (4)
(式中、p1は1〜5の整数を表す。)
で示される基、又は下記一般式(5):
−L2a−(CH2)q1−L3a− (5)
(式中、L2aは、OCO、OCONH、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONH又はCOOを表し、L3aは、NH又はCOを表す。q1は1〜5の整数を表す。)
で示される基を表し、
m1は30〜150の整数を表し、m2は1〜5の整数を表し、nは100〜400の整数を表す。〕
ここで、一般式(1)で示されるポリマー中の−R3としては、例えば、下記一般式(2):
−NH−(CH2)r−X1 (2)
(式中、X1は、一級、二級若しくは三級アミン化合物又は四級アンモニウム塩由来のアミン化合物残基を表し、rは0〜5の整数を表す。)
で示される基、又は下記一般式(3):
−〔NH−(CH2)s〕t−X2 (3)
(式中、X2は、一級、二級若しくは三級アミン化合物又は四級アンモニウム塩由来のアミン化合物残基を表す。s及びtは、それぞれ独立し、かつ〔NH−(CH2)s〕ユニット間で独立して、sは1〜5の整数を表し、tは2〜5の整数を表す。)
で示される基が挙げられる。より具体的には、−R3としては、例えば、−NH−NH2又は−NH−(CH2)2−NH−(CH2)2−NH2が挙げられる。
また、本発明のポリイオンコンプレックスとしては、例えば、前記ブロックコポリマー中のポリカチオン部分と前記核酸とが静電的相互作用により結合したものが挙げられ、さらに、前記核酸と前記ブロックコポリマー中のポリカチオン部分とがコア部分を形成し、前記ブロックコポリマー中のポリエチレングリコールを含む部分が前記コア部分の周囲にシェル部分を形成したものも挙げられる。
(2)上記(1)に記載のポリイオンコンプレックスを含むことを特徴とする、細胞内への核酸送達デバイス。
(3)ポリエチレングリコール及びポリカチオンがジスルフィド基を介して結合したブロックコポリマーを含む、細胞内への核酸送達用キット。
本発明のキットにおいて、上記ブロックコポリマーとしては、例えば、一般式(1)(前記と同様)で示されるポリマーが挙げられる。
(4)ポリエチレングリコール及びポリカチオンがジスルフィド基を介して結合したブロックコポリマー。
本発明のブロックコポリマーとしては、例えば、一般式(1)(前記と同様)で示されるものが挙げられる。
また、本発明の他の一態様としては、ポリエチレングリコール及びポリカチオンがジスルフィド基を介して結合したブロックコポリマーと、アニオン性物質とを含むことを特徴とするポリイオンコンプレックスを挙げることができる。この態様において、上記ブロックコポリマーとしては、例えば、一般式(1)(前記と同様)で示されるポリマーが挙げられる。
図2は、PEG−SS−NH2の合成過程におけるGPCチャートを経時的に示す図である。
図3は、PEG−SS−NH2の1H NMRスペクトルを示す図である。
図4は、PEG−SS−PBLAの1H NMRスペクトルを示す図である。
図5は、PEG−SS−P(Asp(DET))のGPCチャートを示す図である。
図6は、PEG−SS−P(Asp(DET))の1H NMRスペクトルを示す図である。
図7は、PEG−SS−P(Asp(DET))を用いたPICのアガロースゲル電気泳動の結果を示す写真である。
図8は、各PICのエチジウムブロマイドアッセイの結果を示すグラフである。
図9は、各PICの粒径の測定結果を示すグラフである。
図10は、各PICのゼータ電位の測定結果を示すグラフである。
図11は、各PICを用いたトランスフェクションにおける遺伝子発現効率の評価結果を示すグラフである。
2 ポリエチレングリコール(PEG)
3 ポリカチオン
4 核酸
5 ポリイオンコンプレックス(PIC)
なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2006−054332号明細書の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての先行技術文献、並びに公開公報、特許公報及びその他の特許文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
1.本発明の概要
本発明者は、前述した従来のポリイオンコンプレックスにおける遺伝子発現効率を改善するためには、シェル部分を構成するブロックコポリマー中のポリエチレングリコール(PEG)部分を、標的細胞内において分離させる必要があると考えた。これは、以下の知見に基づくものである。すなわち、ポリカチオン(PEG部分無しのポリマー)と核酸とを用いて形成したポリイオンコンプレックスは、PEG−ポリカチオンを用いて形成したポリイオンコンプレックスに比べて、in vitroで細胞内に導入した場合、遺伝子発現効率が非常に高くなるというものである。
そこで本発明者は、細胞内でPEG部分が容易に分離するポリイオンコンプレックスとして、細胞外と細胞内での何らかの環境変化に応答してPEG部分が分離するポリイオンコンプレックスが最適ではないかと考えた。そして、細胞外と細胞内とではグルタチオンの濃度差による酸化還元環境の違いがあることに着目し(細胞外(約10μM):酸化的環境、細胞内(約10mM):還元的環境)、さらに、ジスルフィド結合(−S−S−)が還元的環境下において容易に開裂するという知見を利用して、PEG部分を分離させる手段について検討した。
その結果、本発明者は、使用するブロックコポリマーとして、PEGとポリカチオンとをジスルフィド基を介して結合させたコポリマーを合成し、このブロックコポリマーと核酸とを用いて、コア−シェル型の構造を有するミセル状のポリイオンコンプレックスを調製した(図1を参照)。
得られたポリイオンコンプレックスは、血中等の細胞外では従来のものと同様にPEGの効果によって構造安定性が保持され、細胞内に取り込まれた後は、還元的環境への変化に応答してジスルフィド結合が開裂しPEG部分が容易に分離した。PEG部分の分離後は、内包された核酸と細胞内のポリアニオンとの置換が促進されて、ポリイオンコンプレックスが解離した。これにより、核酸が細胞質内へスムーズに放出され、遺伝子発現効率が飛躍的に向上した。
以上のように、ジスルフィド結合を有するブロックコポリマーと、核酸とから構成されたポリイオンコンプレックスは、細胞外から細胞内への環境変化に応答して効率的に核酸導入できるインテリジェント遺伝子ベクターとして極めて有用である。
2.ポリイオンコンプレックス
本発明のポリイオンコンプレックス(PIC)は、ジスルフィド結合を有する特定のブロックコポリマーと、核酸とを含むことを特徴とする、ミセル状の核酸内包高分子複合体である。
(1)ブロックコポリマー
本発明のPICの構成成分である特定のブロックコポリマーは、PEG及びポリカチオンを構成成分として含み、これらがジスルフィド基を介して結合したブロックコポリマーである。
上記PEG及びポリカチオンとしては、その構造(例えば重合度)は限定されず、任意の構造のものを選択できるが、なかでもポリカチオンとしては、カチオン性基を側鎖に有するポリペプチドであることが好ましい。なお、ここで言うカチオン性基とは、水素イオンが配位して既にカチオンとなっている基に限らず、水素イオンが配位すればカチオンとなる基も含む意味である。このようなカチオン性基としては、公知のものが全て含まれる。カチオン性基を側鎖に有するポリペプチドとは、塩基性側鎖を有する公知のアミノ酸(リシン、アルギニン、ヒスチジン等)がペプチド結合してなるもののほか、各種アミノ酸がペプチド結合し、その側鎖がカチオン性基を有するように置換されたものも含む。
上記特定のブロックコポリマーとしては、具体的には、例えば、下記一般式(1)で示されるブロックコポリマーが好ましく挙げられる。
一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表す。
上記炭素数1〜12の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、デシル基及びウンデシル基等が挙げられる。
また上記アルキル基の置換基としては、例えば、アセタール化ホルミル基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7のアシルアミド基、シロキシ基、シリルアミノ基、及びトリアルキルシロキシ基(各アルキルシロキシ基は、それぞれ独立に、炭素数1〜6である)等が挙げられる。
上記置換基がアセタール化ホルミル基である場合、酸性の温和な条件下で加水分解することにより、他の置換基であるホルミル基(アルデヒド基;−CHO)に転化することができる。また、上記置換基(特にR1における置換基)がホルミル基、又はカルボキシル基若しくはアミノ基の場合は、例えば、これらの基を介して、抗体若しくはその断片又はその他の機能性若しくは標的指向性を有するタンパク質等を結合させることができる。
一般式(1)中、カチオン性基を含む部分となるR3は、一級アミンを有するアミン化合物由来の残基を表す。−R3基としては、例えば、下記一般式(2)又は下記一般式(3)で示される基が挙げられ、中でも下記一般式(3)で示される基が好ましい。
−NH−(CH2)r−X1 (2)
〔式(2)中、X1は、一級、二級若しくは三級アミン化合物又は四級アンモニウム塩由来のアミン化合物残基を表し、rは0〜5の整数を表す。〕
−〔NH−(CH2)s〕t−X2 (3)
〔式(3)中、X2は、一級、二級若しくは三級アミン化合物又は四級アンモニウム塩由来のアミン化合物残基を表す。s及びtは、それぞれ独立し、かつ〔NH−(CH2)s〕ユニット間で独立して、sは1〜5(好ましくは2)の整数を表し、tは2〜5(好ましくは2)の整数を表す。〕
一般式(2)及び(3)中、末端の−X1基及び−X2基(アミン化合物残基)としては、例えば、−NH2、−NH−CH3、−N(CH3)2、及び下記式(i)〜(viii)に示される基等が好ましく挙げられ、中でも−NH2が特に好ましい。なお、下記式(vi)中、Yとしては、例えば、水素原子、アルキル基(炭素数1〜6)、及びアミノアルキル基(炭素数1〜6)等が挙げられる。
一般式(1)中、−R3基としては、具体的には「−NH−NH2」又は「−NH−(CH2)2−NH−(CH2)2−NH2」が特に好ましく、中でもエチレンジアンミンユニットを含む後者がより好ましい。なお、上記「−NH−(CH2)2−NH−(CH2)2−NH2」は、pKaが6.0及び9.5という2段階を示し、コンプレックスを形成するpH7.4では、gauche型のシングルプロトン化状態であるので(下記反応式1参照)、核酸と静電相互作用をすることができる。一方、エンドソーム内(pH5.5)では、上記「−NH−(CH2)2−NH−(CH2)2−NH2」は、さらにプロトン化され、anti型に変化するので(下記反応式1参照)、バッファー効果によるエンドソームエスケープを促進させる効果を有する。
一般式(1)中、ジスルフィド結合(−S−S−)とともにリンカー部分となるL1は、NH、CO、下記一般式(4):
−(CH2)p1−NH− (4)
〔式(4)中、p1は1〜5(好ましくは2〜3)の整数を表す。〕
で示される基、又は下記一般式(5):
−L2a−(CH2)q1−L3a− (5)
〔式(5)中、L2aは、OCO、OCONH、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONH又はCOOを表し、L3aは、NH又はCOを表す。q1は1〜5(好ましくは2〜3)の整数を表す。〕
で示される基を表す。
一般式(1)中、m1及びnは、各ブロック部分の繰り返し単位の数(重合度)を表す。具体的には、m1は、30〜150(好ましくは60〜100)の整数を表し、nは、100〜400(好ましくは200〜300)の整数を表す。また、m2は、1〜5(好ましくは1〜2)の整数を表す。
以上より、一般式(1)で示されるポリマーは、以下の2つのブロック部分を必須構成要素とするポリマーであると言える。
・核酸と静電結合する側鎖を持つブロック部分(側鎖にカチオン性基を有する重合度m1のブロック部分:ポリカチオン部分)
・親水性であり生体適合性に優れたポリエチレングリコール(PEG)鎖からなるブロック部分(重合度nのブロック部分:PEG部分)
一般式(1)で示されるブロックコポリマーの分子量(Mw)は、限定はされないが、23,000〜45,000であることが好ましく、より好ましくは28,000〜34,000である。また、個々のブロック部分については、PEG部分の分子量(Mw)は、8,000〜15,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜12,000であり、ポリカチオン部分の分子量(Mw)は、15,000〜30,000であることが好ましく、より好ましくは18,000〜22,000である。
一般式(1)で示されるポリマーの製造方法は、限定はされないが、例えば、R1とPEG鎖のブロック部分とを含むセグメント(PEGセグメント)を予め合成しておき、このPEGセグメントの片末端(R1と反対の末端)に、所定のモノマーを順に重合し、その後必要に応じて側鎖をカチオン性基を含むように置換又は変換する方法、あるいは、上記PEGセグメントと、カチオン性基を含む側鎖を有するブロック部分とを予め合成しておき、これらを互いに連結する方法などが挙げられる。当該製法における各種反応の方法及び条件は、常法を考慮し適宜選択又は設定することができる。
上記PEGセグメントは、例えば、WO96/32434号公報、WO96/33233号公報、WO97/06202号公報に記載のブロックコポリマーのPEGセグメント部分の製法を用いて調製することができる。PEGセグメントのうち−R1基と反対側の末端は、一般式(1)において「S−S−L1」となる部分であり、−S−S−NH2、−S−S−COOH、下記一般式(6):
−S−S−(CH2)p2−NH2 (6)
〔式(6)中、p2は1〜5(好ましくは2〜3)の整数を表す。〕
で示される基、又は一般式(7):
−S−S−L2b−(CH2)q2−L3b (7)
〔式(7)中、L2bは、OCO、OCONH、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONH又はCOOを表し、L3bは、NH2又はCOOHを表す。q2は1〜5(好ましくは2〜3)の整数を表す。〕
で示される基であることが好ましい。
一般式(1)で示されるポリマーの具体的な製造方法としては、例えば、末端にジスルフィド基を介してアミノ基を有するPEGセグメント誘導体を用いて、そのアミノ末端に、β−ベンジル−L−アスパルテート(BLA)及びNε−Z−L−リシン等の保護アミノ酸のN−カルボン酸無水物(NCA)を重合させてブロックコポリマーを合成し、その後、各ブロック部分の側鎖が前述したカチオン性基を有する側鎖となるように、ジエチレントリアミン(DET)等で置換又は変換する方法が挙げられる。
(2)核酸
本発明のPICにおいて、コア部分の構成成分となる核酸としては、限定はされず、遺伝子治療等に用い得る各種DNA及びRNA、又はPNA(ペプチド核酸)が挙げられるが、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴDNA、及びsiRNA等が好ましく挙げられる。
核酸分子はポリアニオンとなるため、上述したブロックコポリマーのポリカチオン部分の側鎖と静電的相互作用により結合することができる。
なお本発明においては、必要に応じ、上記核酸と共に、生理活性タンパク質や各種ペプチドなど、細胞内で機能発現する様々な物質をコア部分に含有させることもできる。
また、本発明のPICの他の一態様においては、コア部分の構成成分として、高分子量又は低分子量の「アニオン性物質」を用いることができ、例えば、ペプチドホルモン、タンパク質、酵素及び核酸(DNA、RNA又はPNA)等の高分子物質、あるいは分子内に荷電性官能基を有する低分子物質(水溶性化合物)等が挙げられる。なお、当該アニオン性物質としては、複数の異なる帯電状態の官能基(アニオン性基及びカチオン性基)を有する分子について、pHを変化させることにより分子全体としての帯電状態をアニオン性に変化させることができるものも含む。これらアニオン性物質は、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよく、限定はされない。
(3)ポリイオンコンプレックス(PIC)
本発明のPICは、核酸と、上述したブロックコポリマー中の一部(ポリカチオン部分)とが相互作用してコア部分を形成し、当該ブロックコポリマー中の他の部分(PEG部分を含む部分)がコア部分の周囲にシェル部分を形成したような状態の、コア−シェル型のミセル状複合体ということができる(図1参照)。
本発明のPICは、例えば、核酸とブロックコポリマーとを任意のバッファー(例えばTrisバッファー等)中で混合することにより容易に調製することができる。
ブロックコポリマーと核酸との混合比は、限定はされないが、例えば、ブロックコポリマー中のカチオン性基(例えばアミノ基)の総数(N)と、核酸中のリン酸基の総数(P)との比(N/P比)が、1.5〜60であることが好ましく、より好ましくは1.5〜32、さらに好ましくは2〜8である。特に、ブロックコポリマーが前記一般式(1)のコポリマーである場合は、N/P比は、限定はされないが、1.5〜32であることが好ましく、より好ましくは1.5〜8であり、さらに好ましくは2〜8、特に好ましくは4〜6である(この場合のNは、ポリカチオン部分の側鎖に含まれる1級アミンと2級アミンの合計数である。)。N/P比が上記範囲のときは、遊離のポリマーが存在せず、in vivoでの高い発現効率が得られる等の点で好ましい。なお、上記カチオン性基(N)は、内包する核酸中のリン酸基と静電的に相互作用してイオン結合を形成することができる基を意味する。
本発明のPICの大きさは、限定はされないが、例えば、動的光散乱測定法(DLS)による粒径が30〜150nmであることが好ましく、より好ましくは50〜100nmである。
3.核酸送達デバイス
本発明においては、上述したポリイオンコンプレックス(PIC)を含む核酸送達デバイスが提供される。本発明の核酸送達デバイスは、細胞内外の酸化還元環境の変化を利用し、PICのコア部分に内包した所望の核酸を、標的細胞内に効率的に導入する手段として使用できる。
具体的には、所望の核酸を内包したPICを含む溶液を被験動物に投与して、体内の標的細胞に取り込ませる。その後、細胞内に取り込まれたPICがエンドソームから細胞質に移行すると、細胞質内の還元的環境に応答して、ブロックコポリマー中のジスルフィド結合が開裂し、PEG部分が分離する。その結果、PICに内包された核酸と細胞内に存在するポリアニオンとの置換が促進され、PICが解離することにより、所望の核酸を細胞質内に放出することができる。
本発明の核酸送達デバイスは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、ネコ等の各種動物に適用することができ、限定はされない。被験動物への投与方法は、通常、点滴静注などの非経口用法が採用され、投与量、投与回数及び投与期間などの各条件は、被験動物の種類及び状態に合わせて適宜設定することができる。
本発明の核酸送達デバイスは、各種疾患の原因となる細胞に所望の核酸を導入する治療(遺伝子治療)に用いることができる。よって本発明は、前述したPICを含む医薬組成物、及び、前述したPICを用いる各種疾患の治療方法(特に遺伝子治療方法)を提供することもできる。なお、投与の方法及び条件は前記と同様である。
上記医薬組成物については、薬剤製造上一般に用いられる賦形材、充填材、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤及び等張化剤等を適宜選択して使用し、常法により調製することができる。また、医薬組成物の形態は、通常、静脈内注射剤(点滴を含む)が採用され、例えば、単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態等で提供される。
上記医薬組成物及び治療方法は、例えば癌に対して有効に適用される。
4.核酸送達用キット
本発明の核酸送達用キットは、前記特定のブロックコポリマーを含むことを特徴とする。当該キットは、癌細胞等の各種標的細胞に対する遺伝子治療などに好ましく用いることができる。
本発明のキットにおいて、ブロックコポリマーの保存状態は、限定はされず、その安定性(保存性)及び使用容易性等を考慮して溶液状又は粉末状等の状態を選択できる。
本発明のキットは、前記特定のブロックコポリマー以外に他の構成要素を含んでいてもよい。他の構成要素としては、例えば、各種バッファー、細胞内に導入する各種核酸(プラスミドDNA、アンチセンスオリゴDNA、siRNA等)、溶解用バッファー、各種タンパク質及び使用説明書(使用マニュアル)等を挙げることができる。
本発明のキットは、標的細胞内に導入する所望の核酸をコア部分としたポリイオンコンプレックス(PIC)を調製するために使用され、調製したPICは、標的細胞への核酸送達デバイスとして有効に用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)ブロックコポリマーの合成
下記スキーム1に示す反応を経て、ポリエチレングリコール(PEG)とポリカチオンとがジスルフィド結合したブロックコポリマー(PEG−SS−P(Asp(DET)))を得た。スキーム1に示す各反応ステップ、すなわちPEG−SS−NH2の合成、PEG−SS−PBLAの合成、及びPEG−SS−P(Asp(DET))の合成について、以下に具体的に説明する。
(1−1)PEG−SS−NH2の合成
予め、PEG(重合度(n)=227)の片末端にチオール基を導入したPEGセグメント「PEG−SH(Mn=10,227)」を、日本油脂(株)より購入した。
このPEG−SH 1gと2−aminoethanethiol 0.77g(100倍量)をMeOH 100mLに溶解させ、室温で13日間攪拌(4,6,8,13日後にGPC測定)して反応させた。得られた反応物を、MeOHに対して透析後、イオン交換カラムクロマトグラフィーにより精製し、「PEG−SS−NH2」を得た。なお、攪拌開始後、4,6,8,13日後、透析後、イオン交換精製後に、一部サンプリングしてGPC測定を行った。
図2に、各GPCチャートをまとめて示す。経時的にみると、PEGの二量体が一旦増加した後、減少していることから、反応初期はPEG同士でS−S結合して二量体を形成した後、徐々に2−aminoethantiolと置き換わっていったものと考えられる。攪拌開始から8日後には、上記二量体はほとんど認められなくなったため、実質的に8日で反応は終了したものと考えられる。また、反応後のメタノール透析とイオン交換でS−S結合の交換が起こる恐れがあったが、今回のGPC結果ではそれがほとんどないことが確かめられた。
PEG−SS−NH2の収率は57%(0.57g)であった。
図3に示す1H NMRスペクトルより、アミノエタンチオールの導入率は93%となり、定量的な導入が確認された。
(1−2)PEG−SS−PBLAの合成
PEG−SS−NH2 300mgをCH2Cl2 4.5mLに溶解させ、CH2Cl2/DMF(10:1)11.5mLに溶解したβ−benzyl−L−aspartate−N−carboxyanhydride(BLA−NCA)859mgを添加した後、35℃で2日間攪拌した。IRにより、BLA−NCAに由来するピークの消失から反応が終了したことを確認した後、ヘキサン/酢酸エチル(6:4)200mLに再沈し、吸引ろ過し、減圧乾燥により精製して、「PEG−SS−PBLA」を得た。
図4に示す1H NMRスペクトルにより、ポリBLA(PBLA)に由来するピークが認められることから、BLA−NCAの重合が進行したことが確認された。PEGの主鎖のピークbを基準にして、PBLA部分の側鎖のベンゼン環のピークfの積分値を比較することにより、PBLA部分の重合度(m)は100と算出された。PEG−SS−PBLAの収量は910mgであった。
(1−3)PEG−SS−P(Asp(DET))の合成
得られたPEG−SS−PBLAのPBLA部分の側鎖にdiethylenetriamine(DET)を導入して(アミノリシス反応)ポリカチオンとした。なお、S−S結合はアルカリに弱く、アミノリシス反応においては過剰のアミンが存在するため、S−S結合の交換を防ぐことに留意しつつDETを導入する必要がある。
具体的には、PEG−SS−PBLA 40mgにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)2mLを加えて攪拌し、50倍量のDET 0.73mLを添加して、さらに3分間室温で攪拌した。攪拌後5% AcOHaq 15mLに滴下し、最後に0.01N HClに対して透析後、凍結乾燥により回収した。
図5に示すGPCチャートから単峰性のピークが確認されたことにより、S−S結合の切断や交換は起きなかったと考えられる。
図6に示す1H NMRスペクトルから、DET由来のピークが認められ、さらにピークcを基準としたピークfとの積分比よりDETの定量的導入も確認された。
このようにして、PEGと、ポリカチオン(アスパラギン骨格にエチレンジアンミンユニットが結合したアミノ酸のポリマー)とがS−S結合した目的のブロックコポリマー「PEG−SS−P(Asp(DET))」が得られた。なお、前記のとおり、PEG部分の重合度(n)は227、ポリカチオン部分の重合度(m)は100であった。
(2)使用する核酸
細胞内送達用の核酸としては、レポーター遺伝子であるルシフェラーゼ発現プラスミド(プロメガ社製,製品名:pGL3;以下「pDNA」と言う)を使用した。
(3)PICの調製
10mMトリス緩衝液(pH7.4)中で、pDNAとPEG−SS−P(Asp(DET))とを混合することにより、pDNAをコア部分として内包するPICを調製した。具体的には、10mM Trisバッファーに溶解させたpDNA(濃度:50μg/mL)100μLに対して、同様のバッファー50μLに溶解させたPEG−SS−P(Asp(DET))を添加することにより、PICを含む溶液を得た。
なお、PICとしては、PEG−SS−P(Asp(DET))の溶解量を適宜調整して、N/P比(下記式を参照)が、「0,1,1.5,2,2.5,3,4,8,16,32」であるものを、それぞれ個別に調製した。
N/P比=
〔ポリカチオン部分の側鎖のアミノ基の総数(1級アミンと2級アミンの合計)〕
/〔pDNAのリン酸基の総数〕
(4)PIC形成の確認
上記(3)で得られた溶液中にPICが形成されているかどうかを、アガロースゲル電気泳動とエチジウムブロマイドアッセイを利用して評価した。
上記(3)で得られた溶液にローディングバッファーを加え、アガロースゲル電気泳動を行った。その結果を図7に示す。N/P=1まではフリーのpDNAのバンドが、N/P=1.5からはフリーのpDNAのバンドが消失したことから、PICが形成されたと考えられる。
また、上記(3)で得られた溶液にエチジウムブロマイド(EtBr)を添加した後、蛍光を測定した結果を図8に示す。比較のため、上記(3)において、PEG−SS−P(Asp(DET))の代わりに、S−S結合の無いブロックコポリマー「PEG−P(Asp(DET))」又はPEGの無いポリマー(ホモポリマー)「P(Asp(DET))」(下記一般式参照)を使用して得られた溶液に関する結果も併せて示した。N/P=2あたりから蛍光の減少がほぼ一定値に達したことから、そのあたりでPICの形成が完了したと考えられる。PIC形成の条件では、DETの1級アミンの部分だけプロトン化していると考えられるので、N/P=2はブロックコポリマーのポリカチオンの電荷とpDNAのアニオンの電荷がちょうど釣り合う点であると言える。
(5)粒径の測定
PICの粒径を動的光散乱測定法(DLS)により測定した。その結果を図9に示す。PEG−SS−P(Asp(DET))を用いたPICの粒径は、N/P比に関わらず約80nmであった(PEG−P(Asp(DET))を用いたPICも同様)。これに対し、P(Asp(DET))を用いたPICの粒径は、N/P=2前後において急激に大きくなったことから、電荷の中和により凝集することが示された。この結果より、PEG−SS−P(Asp(DET))を用いたPICは、最外殻に位置するPEGの立体反発効果により凝集が抑制されたと言える。
(6)ゼータ電位の測定
PICのゼータ電位を測定した。但し、PEG−SS−P(Asp(DET))を用いたPICについては、測定後、還元剤のジチオスレイトール(DTT)25mMを添加して、再度ゼータ電位を測定した。その結果を図10に示す。PEG−SS−P(Asp(DET))やPEG−P(Asp(DET)を用いたPIC(PEG有り)は、P(Asp(DET))を用いたPIC(PEG無し)に比べて、高いN/P比でも0に近いゼータ電位を示したことから、PEGによる電荷の遮蔽効果が示された。しかしながら、PEG−SS−P(Asp(DET))を用いたPICに上記DTTを添加した後は、P(Asp(DET))を用いたPICのゼータ電位に近づいたことから、還元環境下ではPEG−SS−P(Asp(DET))のS−S結合が開裂しPEGが分離することが示された。これらの結果より、PEG−SS−P(Asp(DET))を用いたPICは、還元環境に応答してPEGが分離する(ひいては内包した核酸を放出する)インテリジェントキャリアであると言える。
24ウェルプレート上にHeLa細胞(40,000cells/well)を播き、24時間インキュベーションした。次いで、実施例1で得られた「PEG−SS−P(Asp(DET))を用いたPIC」を、pDNAが1ウェル当たり1μgとなる量で添加し、さらに24時間インキュベーションして、HeLa細胞内へのpDNAのトランスフェクションを行った。その後、pDNAの遺伝子発現効率をルシフェラーゼアッセイにより評価した(N=4,mean±SE)。遺伝子発現量はRelative Light Unit(RLU)/mgタンパク量の単位で得られる。なお、PEG−SS−P(Asp(DET))を用いたPICの代わりに、「PEG−P(Asp(DET)を用いたPIC」又は「P(Asp(DET))を用いたPIC」を添加した場合についても同様の評価を行った。
上記アッセイの結果を図11に示す。「PEG−SS−P(Asp(DET))を用いたPIC」は、N/P=8以上では、「PEG−P(Asp(DET)を用いたPIC」(S−S結合無し)より1〜2桁高い値となり、「P(Asp(DET))を用いたPIC」とほぼ同程度の遺伝子発現効率を示し、さらにN/P=4では、「P(Asp(DET))を用いたPIC」との比較でも1桁高い値となり優れた遺伝子発現効率を示した。以上のように、「PEG−SS−P(Asp(DET))を用いたPIC」は、細胞内の還元環境下で開裂し得るS−S結合の効果により、比較的低いN/P比であっても、S−S結合がないものより格段に高い遺伝子発現効率を示したことから、極めて有用な環境応答性の遺伝子ベクターであると言える。
また本発明によれば、上記ポリイオンコンプレックスを用いた、細胞内への核酸送達デバイス及び核酸送達用キットを提供することもできる。
Claims (11)
- ポリエチレングリコール及びポリカチオンがジスルフィド基を介して結合した下記一般式(1)で示されるブロックコポリマーと、核酸とを含むことを特徴とする、ポリイオンコンプレックス。
R3は、下記一般式(3):
-〔NH-(CH2)s〕t -X2 (3)
(式中、X2は、一級、二級若しくは三級アミン化合物又は四級アンモニウム塩由来のアミン化合物残基を表す。s及びtは、それぞれ独立し、かつ〔NH-(CH2)s〕ユニット間で独立して、sは1〜5の整数を表し、tは2〜5の整数を表す。)
で示される基を表し、
L1は、NH、CO、下記一般式(4):
-(CH2)p1-NH- (4)
(式中、p1は1〜5の整数を表す。)
で示される基、又は下記一般式(5):
-L2a-(CH2)q1-L3a- (5)
(式中、L2aは、OCO、OCONH、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONH又はCOOを表し、L3aは、NH又はCOを表す。q1は1〜5の整数を表す。)
で示される基を表し、
m1は30〜150の整数を表し、m2は1〜5の整数を表し、nは100〜400の整数を表す。〕 - 前記ポリカチオンが、側鎖にカチオン性基を有するポリペプチドである、請求項1記載のポリイオンコンプレックス。
- 前記ポリマー中のR3基が、-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH2である、請求項1又は2記載のポリイオンコンプレックス。
- 前記ブロックコポリマー中のポリカチオン部分と前記核酸とが静電的相互作用により結合したものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイオンコンプレックス。
- 前記核酸と前記ブロックコポリマー中のポリカチオン部分とがコア部分を形成し、前記ブロックコポリマー中のポリエチレングリコールを含む部分が前記コア部分の周囲にシェル部分を形成したものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイオンコンプレックス。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイオンコンプレックスを含むことを特徴とする、細胞内への核酸送達デバイス。
- ポリエチレングリコール及びポリカチオンがジスルフィド基を介して結合した下記一般式(1)で示されるブロックコポリマーを含む、細胞内への核酸送達用キット。
R3は、下記一般式(3):
-〔NH-(CH2)s〕t -X2 (3)
(式中、X2は、一級、二級若しくは三級アミン化合物又は四級アンモニウム塩由来のアミン化合物残基を表す。s及びtは、それぞれ独立し、かつ〔NH-(CH2)s〕ユニット間で独立して、sは1〜5の整数を表し、tは2〜5の整数を表す。)
で示される基を表し、
L1は、NH、CO、下記一般式(4):
-(CH2)p1-NH- (4)
(式中、p1は1〜5の整数を表す。)
で示される基、又は下記一般式(5):
-L2a-(CH2)q1-L3a- (5)
(式中、L2aは、OCO、OCONH、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONH又はCOOを表し、L3aは、NH又はCOを表す。q1は1〜5の整数を表す。)
で示される基を表し、
m1は30〜150の整数を表し、m2は1〜5の整数を表し、nは100〜400の整数を表す。〕 - 前記ポリマー中のR3基が、-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH2である、請求項7記載のキット。
- ポリエチレングリコール及びポリカチオンがジスルフィド基を介して結合した下記一般式(1)で示されるブロックコポリマー。
R3は、下記一般式(3):
-〔NH-(CH2)s〕t -X2 (3)
(式中、X2は、一級、二級若しくは三級アミン化合物又は四級アンモニウム塩由来のアミン化合物残基を表す。s及びtは、それぞれ独立し、かつ〔NH-(CH2)s〕ユニット間で独立して、sは1〜5の整数を表し、tは2〜5の整数を表す。)
で示される基を表し、
L1は、NH、CO、下記一般式(4):
-(CH2)p1-NH- (4)
(式中、p1は1〜5の整数を表す。)
で示される基、又は下記一般式(5):
-L2a-(CH2)q1-L3a- (5)
(式中、L2aは、OCO、OCONH、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONH又はCOOを表し、L3aは、NH又はCOを表す。q1は1〜5の整数を表す。)
で示される基を表し、
m1は30〜150の整数を表し、m2は1〜5の整数を表し、nは100〜400の整数を表す。〕 - 前記ポリマー中のR3基が、-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH2である、請求項9記載のブロックコポリマー。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイオンコンプレックスを含む溶液を非ヒト被験動物に投与し、該動物の体内の各種細胞のエンドソームに該ポリイオンコンプレックスを取り込ませることを含む、非ヒト被験動物の体内の標的細胞に核酸を送達する方法。
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