JP5273368B2 - 液晶表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は液晶表示装置に関する。
携帯型情報機器の通信速度の高速化、メモリ容量増大に伴い、より大容量の画像情報やよりコマ数の多い動画が取り扱われるようになる。インターフェイスである表示装置にも、今まで以上の高画質化と大画面化、更には画素数増大が要求される。その一方で、携帯型情報機器が成熟する中でデザインも見直されており、薄型のスマートなデザインが好まれる傾向にある。これに伴い、表示装置にも薄型化が要求されている。
IPS(In-Plane Switching)方式液晶表示装置は、同一基板上に形成した共通電極と画素電極の間に液晶面内に平行な成分を主とする横電界を形成し、これにより液晶層を駆動する。そのため、IPS方式液晶表示装置では電界印加に伴う液晶層の配向変化が液晶層内における回転が主になる。VA(Vertically Aligned)方式やECB (Electrically Controlled Birefringence)方式やOCB(Optically Compensated Birefringence)方式などでは、電界印加に伴う液晶層の配向変化はチルト角の変化が主であるが、IPS方式液晶表示装置ではチルト角の変化が少ない。このことにより、IPS方式液晶表示装置では電圧印加に伴うリタデーションの実効値の変化が少なく、広い視角範囲において階調再現性に優れた表示が得られる。そのため、IPS方式液晶表示装置では高画質化の要求をより満足できる。
また、中小型の液晶表示方式に用いられるVA方式ではマルチドメイン化により視角特性を向上するが、この時に透過率の低下を防ぐため液晶パネルと上下の偏光板との間に四分の一波長板を積層する。四分の一波長板はVA方式液晶表示装置の厚さ増大の一因になっている。しかし、IPS方式液晶表示装置では四分の一波長板を必要としないことから、薄型化の要求をより満足することができる。
IPS方式に限らず液晶表示装置は非発光型の表示装置なので、表示の明るさは光源の明るさの他に透過率で決定される。IPS方式の透過率向上を目的として液晶層の弾性定数に着目した検討例としては、例えば下記特許文献1がある。
特開2002−296611号公報
IPS方式の中でも画素電極と共通電極を電極絶縁層を介して積層し、一方の電極形状をベタ(隙間のない一様の)平面状にしたIPS-Pro(Provectus)方式は、各種IPS方式の中でも高透過率である。これは、異なる層にある電極を結ぶようにアーチ状の電気力線が形成されて液晶層中にはみ出し、かつ電極の中央近傍にまで分布するためである。このような異層間の電極を結ぶアーチ状の電界は、フリンジ電界と呼ばれている。
IPS方式の平面構造に着目すると、画素中央ではストライプ状の電極とスリットが規則正しく配列している。画素中央の液晶層には電圧印加時に捩れ配向が生じており、この部分の透過率を向上するには捩れ配向の回転を増大すべきである。画素端部の少なくとも一方では櫛歯状の電極を互いに連結しなければならない。連結部のない画素端部では、櫛歯先端のような平面構造が形成される。何れの場合にも画素端部において電極は閉じた構造になるため、フリンジ電界の方向は180度回転するように分布する。
このため画素端部の一部では、画素中央において生じる回転とは逆向きの回転を液晶層に与えるようなフリンジ電界が必ず発生する。液晶層の厚さ方向の全体に渡って逆捩れになれば、正常な捩れ配向との境界で配向状態がほとんど変化しない部分が発生する。この部分の透過率は電圧無印加時とほぼ同じなので、暗線として観測される。暗線はドメインと呼ばれており、画素端部における透過率の向上にはこれの低減が必要である。
携帯型情報機器に搭載される液晶表示装置では高精細化が進展しており、これに伴い画素のサイズも縮小する傾向にある。画素サイズが縮小すると画素全体に対する画素端部の寄与が相対的に増加するので、画素中央に於ける捩れ配向増大に加えて、ドメインによる透過率低下も無視できなくなる。
本発明が解決しようとする課題は、画素中央に於ける捩れ配向増大と、画素端部に発生するドメインの抑制を両立し、IPS-Pro方式液晶表示装置の透過率を向上することである。
第一の基板と、第二の基板と、前記第一の基板と第二の基板間に挟持された液晶層からなる液晶パネルを有し、液晶パネルはその上下に第一の偏光板と第二の偏光板を有し、液晶パネルは独立制御可能な複数の画素を有し、各画素は第二の基板の液晶層側の面上の表示部に一対の画素電極と共通電極を有し、画素電極と共通電極は電極間絶縁層を介して積層し、画素電極と共通電極のうち液晶層からより離れた方の平面構造はベタ平面状であり、液晶面内に平行な成分を主とする電界を印加して液晶層を駆動する液晶表示装置において、櫛歯電極の幅と櫛歯電極を隔てるスリットの幅の和を櫛歯電極ピッチとすると、(櫛歯電極ピッチ×電極間絶縁膜の比誘電率/電極間絶縁層厚)を81以上、162以下の範囲とし、櫛歯電極ピッチを2.5μm以上、8.5μm以下の範囲とし、(櫛歯電極幅/櫛歯電極ピッチ)を0.3以上、0.5以下の範囲とする。
本発明によれば、IPS-Pro方式液晶表示装置において櫛歯電極の主要部における液晶層の捩れ配向を増大し、櫛歯電極の端部に現れるドメインを抑制し、IPS-Pro方式液晶表示装置の透過率を向上できる。
実施形態1
本実施形態の液晶表示装置の一画素の断面を図2に模式的に示す。図2の切断面S1、S2、S3、S4は、平面図である図3に記載してある。本実施形態の液晶表示装置は主に第一の基板と第二の基板と液晶層からなり、第一の基板と第二の基板は液晶層を挟持する。第一の基板と第二の基板は液晶層に近接する面上に液晶層の配向状態を安定化するための配向膜を備える。また、第二の基板の液晶層に近接する面上には、液晶層に電圧を印加するための手段を備える。
第一の基板は厚さ約0.4mmのホウケイサンガラス製であり、画素に対応する部分に着目すると、液晶層に近接する側より第一の配向膜、平坦化膜、カラーフィルタ、ブラックマトリクスが順次積層されている。第一の配向膜はポリイミド系の有機高分子膜であり、ラビング法で配向処理されており、近接する液晶層に約1.5度のプレチルト角を付与する水平配向膜である。平坦化膜はアクリル系樹脂であり、透明性に優れ、下地の凹凸を平坦化すると共に溶液の浸透を防止する機能を有する。カラーフィルタは赤色、緑色、青色を呈する顔料を含むレジストから構成される。
第二の基板は第一の基板と同様にホウケイサンガラス製であり、液晶層に近接する側より順に、主に第二の配向膜、画素電極、電極間絶縁膜、共通電極、TFT(Thin Film Transistor)、走査配線、信号配線を備える。第二の配向膜は、第一の配向膜と同様の水平配向膜である。画素電極と共通電極はいずれもITO(Indium Tin Oxide)であり、透明性と導電性に優れており、層厚は80nmである。画素電極と共通電極は窒化珪素(SiN)製の電極間絶縁膜で絶縁しており、電極間絶縁膜の層厚は300nmである。画素電極の平面形状は画素端部において結合された櫛歯状であるのに対し、共通電極は画素の透明部分においてベタ平面状である。
以上のように画素電極と共通電極を電極間絶縁膜で隔て、かつ電極間絶縁膜の膜厚を十分に薄くすることにより、画素電極と共通電極の間にアーチ状の電気力線が形成される。この時、電気力線は電極間絶縁膜を貫いて主に液晶層中に分布し、なおかつ主に基板平面に対して平行な成分を有する横電界を形成する。これにより、電圧印加時において液晶配向方向が主に層平面内で回転するように変化する、IPS方式に特有の配向変化を与える。
また、図2に示したように、画素電極と共通電極が重畳する部分が多数存在するが、この部分は液晶層に対して並列に結合しているため、保持期間中に液晶層に印加される電圧値を一定に保つ透明保持容量として機能する。保持容量が透明でかつ保持容量上の液晶層も駆動できることから、高い開口率と保持特性を両立できる。
尚、図3に示したように画素電極のストライプは画素長辺方向に平行であり、スリット構造の方向は画素内において一様である。走査配線方向を0度とし、方位角を反時計回りに定義すると、各ストライプ構造の方向は90度であり、液晶配向方向は85度である。各ストライプは図3の下側において結合されており、上側では各ストライプの先端が櫛歯の先端の様に並んでいる。
図4はこれとは異なる画素電極の例であり、画素電極のストライプは画素短辺により近い方向を向いている。スリット構造の方向の角度が5度である領域と、-5度である領域が一画素内に上下に分かれて存在し、面積比は一対一である。これら2つの領域では電圧印加時における液晶配向方向の回転方向が互いに異なり、すなわち一方において時計回りであれば、他方において反時計回りである。各領域は明表示が黄色い色相の着色を示す視角方向と、青色の色相の着色を示す視角方向とをそれぞれ有するが、両者が同時に観察されるため着色が相殺される。その結果、視角方向においてより無着色の表示が得られる。
図3に示した様に信号配線と走査配線は互いに交差しており、交差部の近傍にはそれぞれTFTを有し、画素電極と1対1に対応している。画素電極にはTFTとコンタクトホールを介して信号配線より画像信号に対応した電位が付与される。また、TFTの動作は走査配線の走査信号により制御される。TFTのチャネル部はアモルファスシリコン層から成る。あるいはまた、より移動度の高いポリシリコン層で形成しても良い。チャネル部はチャネル部無機絶縁膜で被覆することにより動作を安定化し、かつチャネル部有機絶縁膜により凹凸を平坦化し、かつ寄生容量を低減する。各画素電極は長方形状で互いに独立に制御され、かつ第二の基板上に格子状に配置されている。画素電極はスルーホール部においてTFTに接続している。
液晶層には、室温を含む広い温度範囲でネマチック相を示し、誘電率異方性が正で高抵抗の液晶材料を用いる。画素書込みTFTがオフとなる保持期間中における電圧低下が十分に少なく、保持期間中に透過率を維持し、かつフリッカの発生を防ぐことができる。
第一の配向膜と第二の配向膜にラビング法で配向処理を施した後、第一の基板と第二の基板を組み立てる。第一の基板と第二の基板の間のギャップは、第一の基板側に配置したポストスペーサによって均一に維持される。ポストスペーサは概略円柱状であり、画素間に分布している。第一の基板と第二の基板の間のギャップに液晶材料を真空封入して、前述の液晶層とする。液晶層はホモジニアス配向で、その配向方向は走査配線に対して5度を成す。電圧印加時の電界方向と配向方向のなす角度が85度と充分に大きいため、電圧印加時に大きな液晶配向方向の回転が生じ、高透過率が得られる。
第一の基板と第二の基板の外側には第一の偏光板と第二の偏光板を配置しており、第一の偏光板と第二の偏光板はヨウ素系色素を含み、その2色性により自然光を直線偏光に極めて近い部分偏光に変換する。第一の偏光板と第二の偏光板の吸収軸はその平面法線方向から観察して互いに直交しており、かつ第一の偏光板の吸収軸は液晶配向方向に平行である。
図3、4に示したIPS-Pro方式液晶表示装置の画素構造より明らかなように、一画素の中央では櫛歯電極とスリットが規則的に配列しているが、画素端部ではこれが寸断されている。櫛歯電極とスリットの分布が異なれば、フリンジ電界の分布も異なるので電圧印加時の液晶層の配向変化も異なる。具体的には、櫛歯電極とスリットが規則的に配列している部分ではフリンジ電界は一定方向を向いている。これに対し、櫛歯構造の先端では櫛歯電極が閉じた構造になっており、結合部ではスリットが閉じた構造になっており、フリンジ電界の方向も180度回転して分布している。IPS-Pro方式液晶表示装置の透過率向上を図る際にはこれらの部分を分離して、それぞれについて透過率向上策を検討すべきである。尚、これ以降櫛歯電極とスリットが規則的に配列している部分を櫛歯電極部、その端部を櫛歯電極端部と呼ぶことにする。また、後者を連結部端部と先端部に分類する。
本実施形態では、櫛歯電極部に着目することにする。電圧印加時におけるIPS-Pro方式液晶表示装置の液晶層配向状態をシンテック社製の2次元配向計算プログラムで計算した。計算結果を配向方向のチルト角と方位角の分布で表すと図5のようになる。図5の横軸は液晶層内における液晶層厚方向の位置を示し、液晶層厚で規格化してあり、第一の基板端が1であり、第二の基板端が0である。方位角は電圧無印加時の方位角を0度とし、時計回りに増大するように定義してある。図5中の3つのプロットは、IPS-Pro方式液晶表示装置の画素内で代表的な3つの部分に対応している。即ち、櫛歯電極の中央と、スリットの中央と、櫛歯電極とスリットの境界である。全体的に見て、図5(b)に示したチルト角に比較して図5(a)に示した方位角の方が大きく、電圧印加時のIPS-Pro方式液晶表示装置の液晶層配向変化は液晶層内における回転で表されることを示している。また、方位角はフリンジ電界強度の大きい第二の基板近傍で急速に増大しており、第一の基板端との間で方位角は液晶層厚に比例して変化している。このことは、第二の基板近傍と第一の基板端との間で捩れ配向が形成されていることを示している。
このような液晶層配向状態は、図6に図示した捩れ配向モデルで近似的に表される。第一の基板端における液晶配向の方位角は、第一の配向膜の配向処理方向とする。第二の基板端における液晶配向の方位角は、第二の配向膜の配向処理方向からずれており、両者の間で捩れ配向が生じているものとする。また、チルト角の変動は無視し、電圧無印加時に等しいものとする。
透過率向上の観点から捩れ配向モデルを見ると、TN(Tweited Nematic)方式と同様のウエーブガイドモードが理想的である。すなわち、捩れ角が90度であり、Δndが550nmであれば、視感度最大となる波長550nmの光が液晶層の配向方向に従い90度回転し、第一の基板端に到達した時点において、第一の偏光板の透過軸に振動方向の平行な直線偏光になり、この時に最大の透過率が得られる。
ところが、ウエーブガイドモードを実現するために液晶層のΔndを550nmまで増大すれば、中間調の色相変化が増大する。また、捩れ角を90度にするには液晶層の配向方向を櫛歯方向に平行にしなければならないが、この時には液晶層の動作が不安定になる。このようにウエーブガイドモードを完璧に実現することは出来ないが、これに近い配向状態を実現すればウエーブガイドモードに近い高透過率が得られる。そのため、中間調の色相変化や液晶層動作を良好に保ちながら透過率を向上することが可能であり、捩れ配向モデルはIPS-Pro方式液晶表示装置の透過率向上のための指針を与える。即ち、捩れ角(最大の方位角)の増大とチルト角の減少である。このうち後者は、液晶材料のΔnと液晶層厚を一定に保ちながら、実効的なΔndを増大することを意味する。
捩れ配向モデルのような液晶配向を実現するには、フリンジ電界を第二の基板端により局在化させ、なおかつその強度を増大すれば良い。フリンジ電界の分布を第二の基板端に寄せれば、捩れ角が最大となる部分も第二の基板端により近づくからである。また、チルト角を低減するには、フリンジ電界をより短い周期で配置すればよい。チルト角の増大はアーチ状のフリンジ電界に沿って液晶層が配向することに起因するが、フリンジ電界はアーチ状であるためその両端で異なる符合のチルト角を発生させる。その結果、フリンジ電界に沿って液晶層にベンド配向が発生する。応力とベンド弾性定数k33が一定の場合、単位長さあたりのチルト角変化は一定なので、櫛歯ピッチを低減するほどチルト角が減少する。
また、櫛歯ピッチの低減はフリンジ電界を第二の基板端に局在化させるにも有効であり、フリンジ電界は櫛歯電極ピッチに比例して縮小する。フリンジ電界に対して電極間絶縁膜と液晶層は直列に結合しているので、液晶層中に分布するフリンジ電界の強度を増大するには電極間絶縁膜をより薄くするか、あるいはまた電極間絶縁膜の比誘電率を増大すれば良い。しかしこの時、フリンジ電界の分布は液晶層の厚さ方向に拡大し、第二の基板端に局在しなくなる。櫛歯電極ピッチと電極間絶縁膜厚の比率に電極間絶縁膜の比誘電率を掛けた値を一定に保ちながら櫛歯電極ピッチを縮小すれば、フリンジ電界の分布も櫛歯電極ピッチや電極間絶縁膜厚と相似の関係を保ちながら縮小する。これにより、フリンジ電界の強度を保ちながら、これを第二の基板端に局在化させることができる。
フリンジ電界の分布の均一性は櫛歯電極部内における透過率を向上する際に重要であり、これには後述する電極幅比の他に、電極間絶縁膜の厚さとその比誘電率が関与する。電極間絶縁膜厚を低減し、電極間絶縁膜の比誘電率を増大して液晶層内部でのフリンジ電界強度を増大すると、フリンジ電界の分布がより不均一になる。また、これらを減少すると前述の様に液晶層中に分布するフリンジ電界の強度が減少する。フリンジ電界の均一性と強度を両立するには、櫛歯電極ピッチと電極間絶縁膜厚の比率に電極間絶縁膜の比誘電率を掛けた値を一定範囲に保つべきである。櫛歯電極ピッチが5μm、電極間絶縁膜厚の比誘電率が6.5の場合に好適な電極間絶縁膜厚は0.2μm以上0.4μm以下であることから、櫛歯電極ピッチと電極間絶縁膜厚の比率に電極間絶縁膜の比誘電率を掛けた値の最適範囲は81以上162以下と求められる。
現在中小型液晶表示装置の高精細化が進んでおり、携帯電話のモニターとして主流になりつつあるワイドVGA(Video Gate Array) 仕様液晶表示装置では画素数が800×480×3である。また、デジタルカメラのモニターとして主流になりつつあるVGA仕様液晶表示装置では画素数が640×480×3である。このような画素仕様を対角3インチ程度の液晶表示装置に適用すると、一画素のサイズは75μm×25μmになる。
このような微小な画素では、配置する櫛歯電極の本数により透過率が大きく変化する。例えば、画素長辺方向に対して平行に櫛歯電極を配置すると、隣接画素間での混色を防ぐためには画素端におよそ6.5μmの間隙を配置しなければならないので、櫛歯電極を配置できる部分の幅は12μmになる。この部分に櫛歯電極を1本だけ配置すれば、透過率は著しく低下する。即ち、この時フリンジ電界は画素内に2列形成されるのみで、画素内の液晶層を充分に配向変化させるにはその分布が不足である。櫛歯電極の本数を2本、3本、4本と増やせばフリンジ電界も4列、6列、8列と増大し、これに伴い透過率も増大する。櫛歯電極が一本の場合を基準にすると、透過率は1.52倍、1.65倍、1.71倍に増大する。ここで、後述する電極幅比をその最適値である0.4としており、櫛歯電極ピッチはそれぞれ8.5μm、5.0μm、3.5μmに相当する。このように、櫛歯電極数を1本から2本に増大した際の透過率増大がとりわけ大きい。
ここで隣接画素間での混色とは、隣接した電圧が印加されていない画素の液晶層が、自画素の影響で配向変化を起こすことによって生じる現象である。これを防止するには、画素内の櫛歯電極のうち最も画素端に位置するものと画素境界との間隙を充分広く設定する必要があり、これが前述の6.5μmの間隙である。
櫛歯電極ピッチには製造上の制約から下限がある。電極間絶縁膜の下層にある共通電極は完全に平坦ではなく、ITOを成膜する際に生じる結晶粒等により凹凸が存在する。そのため、電極間絶縁膜を薄くすれば凹凸が電極間絶縁膜を貫通して共通電極と画素電極が短絡する可能性が増大する。現状では電極間絶縁膜の厚さの下限は約0.1μmであり、この条件で十分な透過率を得るためには、電極間絶縁膜の比誘電率をSiN膜の6.5とすると、櫛歯電極ピッチの下限は2.5μm程度と求められる。
その他にも、櫛歯電極幅とスリット幅の比率もフリンジ電界の強度に影響を及ぼす。IPS−Pro方式液晶表示装置では一方が櫛歯状、他方がベタ平面状の電極間に電圧を印加し、電気力線の湧き出し口はスリット部になる。そのため、以下に示すように、スリット部の幅がやや広い電極幅比0.4においてフリンジ電界の分布が最も均一になる。尚、電極幅比は{電極幅/(電極幅+スリット幅)}で定義される。
櫛歯電極の一ピッチを5μmに固定し、電極幅とスリット幅の比率を変えてB-V特性を計算した結果を図7に示す。図7では電極幅比を0.1から0.9までの範囲で0.1ずつ変えており、図7中の数字は各B-V特性の電極幅比を示している。電極幅比が0.4の時にB-V特性が最も低電圧側にシフトし、かつ最大透過率を与える印加電圧の低電圧側の電圧における透過率、例えば4.5Vにおける透過率もまた最大になる。電極幅比がこれよりずれるとB-V特性は全体的に高電圧側にシフトし、これに伴い4.5Vにおける透過率も減少する。低電圧域での透過率に、例えば4.5Vでの透過率に着目すれば、電極幅比が0.4の時に最大になる。
また、電極幅比が0.4の場合と0.5の場合を比較すると、後者のB-V特性は若干高電圧側にシフトしているものの、変化は比較的少ない。電極幅比が0.4の場合と0.3の場合にも同様にして変化は比較的少ない。しかし、電極幅比が0.6と0.7のB-V特性を比較すると、後者は高電圧側へ大きくシフトしていることが分かる。電極幅比が0.3と0.2のB-V特性を比較しても、同様にして後者は高電圧側へ大きくシフトしている。
以上は図8(a)に示した印加電圧4.5Vにおける透過率の電極幅比依存性からも明らかである。印加電圧4.5Vにおける透過率は電極幅比0.4で最大であり、その周辺での変化は緩やかである。また、図7のB-V特性を0.5Vmaxの電極幅比依存性に直し図8(b)に示した。ここで、0.5Vmaxは各B-V特性の最大透過率の半分の値を与える印加電圧値である。0.5Vmaxは電極幅比0.4にて最小になり、その周辺での変化は緩やかである。以上より、電極幅比0.4の近傍では印加電圧4.5V程度の低電圧域で高透過率を与え、かつ電極幅比が揺らいでもB-V特性の変化は小さい。しかし、電極幅比が0.4から大きると電極幅比が揺らいだ時のB-V特性の変化が大きくなる。
IPS-Pro方式液晶表示装置における液晶層の配向変化と透過率分布を図8〜10に示す。図9は電極幅比が0.4の場合であり、櫛歯電極のピッチにして約2ピッチ分の断面を含む。スリット中央、櫛歯電極中央、スリット-櫛歯電極境界に依らず、配向変化は櫛歯電極の一ピッチ内において比較的一定であり(図9(b))、透過率分布もまた櫛歯電極の一ピッチ内において比較的一定である(図9(a))。図10は電極幅比が0.2の場合であり、スリット中央で電界が疎になり液晶層の配向変化が小さくなる(図10(b))。また、透過率分布を実線で図10(a)
に示した。図10(a)中の破線は図9(a)に示した電極幅比が0.4の場合の透過率分布である。スリット中央において透過率が減少しており、破線と比較して低透過率である。図11は電極幅比が0.7の場合であり、図10とは逆に画素電極中央の電界が疎になる。画素電極中央の液晶層の配向変化が小さいため(図11(a))、透過率が減少している(図11(b))。これより、電極幅比を0.4近傍の値に設定することにより、画素内における端部から離れた部分の透過率を増大できる。図8より明らかなように電極幅比は0.3から0.5が最適範囲である。
IPS-Pro方式液晶表示装置の櫛歯電極部に着目し、捩れ配向モデルに基づき液晶層中のフリンジ電界強度を強めながらかつその分布を第二の基板端に局在かするべく、櫛歯電極と電極間絶縁膜のパラメータを求めた。その結果、(櫛歯電極ピッチ×電極間絶縁膜の比誘電率/電極間絶縁層厚)を81以上、162以下の範囲に設定し、櫛歯電極ピッチを2.5μm以上、 8.5μm以下の範囲に設定し、(櫛歯電極幅/櫛歯電極ピッチ)を0.3以上、0.5以下の範囲に設定すべきとの結論を得た。櫛歯電極と電極間絶縁膜のパラメータを上記範囲に設定することにより、IPS-Pro方式液晶表示装置の櫛歯電極部の透過率を向上できる。
実施形態2
本実施形態では櫛歯電極端部の透過率向上を試みた。具体的には画素端部ドメインに着目し、これを抑制することでIPS-Pro方式液晶表示装置の透過率向上を試みた。まず始めに、画素端部ドメインの発生原因の解明を試みた。IPS方式において電圧印加時に生じる液晶配向変化は、液晶層内における回転であり、ドメイン内部ではこの回転方向が逆向きになる。電圧印加時に生じる液晶配向変化は右回りと左回りのうち、より小さな回転で液晶配向方向がフリンジ電界に平行になる方が選択される。これは、フリンジ電界の方向と電圧無印加時の液晶配向方向の関係によって決まる。
IPS-Pro方式の画素電極は、連結部を画素端両側に有する構造と片側のみに有する構造に分類される。これ以降、前者をスリット構造、後者を櫛歯構造と呼ぶことにする。図3と図4に示した画素電極は櫛歯構造であり、これらに対応するスリット構造の画素電極を図12(a)、(b)に示す。スリット構造と櫛歯構造のいずれの場合も、画素端部ではフリンジ電界の方向が180度回転するので、液晶層に逆回転を与える部分が必ず存在する。図3、4、12はいずれも加工精度が充分に高い場合に想定される理想的な画素電極であり、画素電極の端部に鋭角が現れている。
図13(a)、(b)は櫛歯構造とスリット構造の画素電極の拡大図であり、このうち図13(a)は後で述べるドメイン抑制のための三角構造を含んでいる。図13(a)、(b)は電圧印加時に生じる液晶配向の回転方向を示しており、実線は電圧無印加時の液晶配向方向であり、破線はフリンジ電界の方向である。液晶配向の異なる部分をA〜Dの記号を付けて分類しており、逆回転を与える部分を円で囲って示した。Gは櫛歯電極の外側に位置しており、画素電極の内側の液晶配向状態に影響を及ぼさない。画素電極の内側に位置して逆回転を与える部分は、櫛歯構造では角の頂点のBとEのみである。スリット構造の場合にも、同様にして角の頂点のBのみである。このように、画素端部に鋭角を有する場合には、逆回転を与える部分は画素電極内側の角の頂点にしか存在しないはずである。
実際には加工精度に限界があるので、画素端部は鋭角が消失して丸みを帯びる。この場合、電圧印加時に生じる液晶配向の回転方向を図14(a)、(b)に示す。画素端部の鋭角が消失したことにより、BとEは一点に限定されずに幅を持つことになる。そのため、鋭角を有する場合に比較して液晶層に逆回転を与える部分が拡大する。
画素端部の透過率と配向状態をシンテック社製の3次元液晶配向計算プログラムであるLCDマスターで再現した結果を図15に模式的に示す。図15(b)は図6に示したS5、S6断面における液晶配向状態であり、図15(a)はこれに対応する透過率分布である。太線で囲った部分が逆捩れ配向であり、画素電極に近接する液晶界面に現れている。このように逆ねじれの液晶配向は、画素電極に近接する液晶界面には常に存在するものと思われる。しかし、周囲の正常配向部からの規制力が強ければ、これ以上成長しない。この時の透過率分布は図15(a)に示したように、明確な極小点を示さない。透過率分布との関連に着目しても、逆捩れ配向の分布に関連した透過率分布は見られないので、ドメインとして観察されない。
ところが、逆捩れ配向が周囲の正常配向部からの規制力に打ち勝って液晶層の厚さ方向全体に渡って成長する場合がある。画素端部の鋭角が消失した場合などがこれに相当し、この時の画素端部の電気光学計算結果を図16に示す。図16(b)は図14に示したS7、S8断面における液晶配向状態であり、図16(a)はこれに対応する透過率分布である。太線で囲った逆捩れ配向は、液晶層の厚さ方向全体に及んでいる。また、透過率分布にも逆捩れ配向の分布に関連した明確な極小点が現れている。逆捩れ配向と正常配向部の境界は液晶配向変化が小さく、電圧無印加時とほぼ同じ配向状態なので暗線として観察される。このように、画素電極の端部の鋭角が消失するとドメインが出現しやすくなる。
なお、ここでは液晶層の配向状態を示すのに円筒型の模型と釘型の模型の両方を用いているが、特に平面図においてチルト角を明記する場合に後者を用いることにした。
画素端にある連結部では、液晶層に電圧が印加されないので透過率が増大しない。そのため、透過率向上には連結部が両端にあるスリット構造よりも、片側のみにある櫛歯構造の方が有利である。この場合ドメインは櫛歯構造の先端と連結部端に発生するが、本実施形態ではこのうち後者の連結部端ドメインに注目した。これを液晶配向計算で再現し、連結部端ドメイン内部の配向状態を観察した。図17(a)は連結部端ドメインの分布状態を示しており、連結部端ドメインは近接する画素電極とスリットの中央部を連結するように分布し、横に倒したU字型の形状を示す。図17(b)は配向方向の方位角分布に注目して連結部端ドメイン内と正常部の配向状態を示した図であり、液晶層内においてフリンジ電界が最も強い層平面における液晶配向状態を示している。これより、連結部端ドメインの内部では正常部とは逆の捩れ配向が生じている。
また、ドメイン内部の配向状態をチルト角まで含めて詳細に検討した結果を図17(d)に示す。ここで、図17(d)の右側に向けて立上るチルト角を正、左側に向けて立上るチルト角を負と定義する。ドメイン内部にはチルト角が正の部分と負の部分があり、両者の境界(チルト角=0度)で回転角が最大になっている。また、チルト角が正の部分と負の部分の面積は等しくなく、図17(d)では正の部分の面積がより大きい。一方、図16(b)では負の部分が大きい。連結部が左側にある場合についての同様の計算では、図17(c)に示したように負の部分の面積がより大きい。以上をまとめると、ドメイン内部におけるチルト角分布には偏りがあり、連結部が左側にある場合と右側にある場合では、優勢なチルト角成分が逆である。
次に、連結部端ドメイン内部の配向状態が上記のような分布となる原因について、図18に示したように考察した。図18は連結部端が左端にある画素電極の2ピッチ分の連結部を示しており、図18(a)、(b)、(c)はそれぞれスリット幅が画素電極幅より広い場合、両者が等しい場合、画素電極幅がスリット幅より広い場合である。連結部端ドメイン内部の配向状態と画素電極構造の関連を観察したところ、正負のチルト角領域の境界は図18中の破線のように画素電極とスリットの境界に位置していることを見出した。この部分はフリンジ電界が液晶層に逆回転を与えるので、回転角が最大になるものと思われる。また、前述のように連結部端ドメインの位置は電極構造に関係しており、横に倒したU字型の直線部分は画素電極の中央部とスリットの中央部に位置する。画素電極の中央部とスリットの中央部は透過率が極小になるため、連結部端ドメインほど明瞭でないものの、暗線として観察される。連結部端ドメインは互いに近接する画素電極の中央部からスリットの中央部に渡って分布し、正負のチルト角領域の境界は画素電極とスリットの境界に位置する。そのため、電極幅とスリット幅が同一でなければ、図18(a)、(c)に示したように連結部端ドメイン内部にチルト角分布の偏りが生じる。また、電極幅とスリット幅が同一であれば、図18(b)に示したように連結部端ドメイン内部にチルト角分布の偏りが生じない。
一方、実施形態1で述べたようにIPS-Pro方式液晶表示装置の透過率-印加電圧特性(B-V特性)は電極幅とスリット幅の比率に依存し、これを2:3とすると低電圧域での透過率が向上する。透過率向上のために電極幅とスリット幅の比率を不均一にしているので、連結部端ドメイン内部にチルト角分布の偏りが生じることになる。
本実施形態では、以上のような連結部端ドメイン内部におけるチルト角分布の偏りを利用して、連結部端ドメインのサイズをプレチルト角で制御することを試みた。その原理について以下に説明する。まず始めに、液晶変形の相互作用について、図19に示したように考察した。液晶層の変形には捩れ変形とスプレー変形があるが、注目する液晶層の上下端面のチルト角が0度であれば捩れ変形とスプレー変形は互いに独立である。図19では捩れ変形が生じた場合の例として、捩れ角が180度の場合を示した。図19(a)、(b)に示したように、注目する液晶層の上下端面のチルト角が0度であれば、捩れ角が0度であっても180度であっても、捩れ角によらずスプレー変形は生じない。ところがチルト角が0度でなければ、捩れ変形とスプレー変形が互いに関係しあう。液晶層の上下端面でチルト角が同じ符号であれば、図19(c)、(d)に示したように捩れ角が増大するにつれてスプレー変形が増大する。液晶層の上下端面でチルト角が逆符号であれば、図19 (e)、(f)に示したように捩れ角が増大するにつれてスプレー変形が減少する。
以上をもとに、連結部端ドメイン内部のチルト角と電極に近接する液晶層界面のプレチルト角の関係について図20に示したように考察した。図20には、上下端面のチルト角がそれぞれ正と負の場合の4通りの組み合わせと、チルト角がいずれも0度の場合について記載してある。この場合、注目する液晶層の上下端面は、それぞれフリンジ電界の最も強い部分と、電極に近接する液晶界面になる。特に、後者のチルト角はプレチルト角に相当する。電圧印加時には液晶層に捩れ変形とスプレー変形が同時に生じるが、通常k11はk22より2倍以上大きいので、急峻なスプレー変形を緩和するように捩れ角に変化が生じる。この時の捩れ角の変化の仕方は、プレチルト角の符号によって異なる。図20(c)に示した上下端面のチルト角が0度の場合を基準にすると、連結部端ドメイン内部のチルト角とプレチルト角が同符号の場合は、図20(a)、(e)に示したようにスプレー変形を緩和するために捩れ角が増大する。逆符号の場合には、図20(b)、(d)に示したように捩れ角が減少する。
更に、液晶層の配向方向は連続体のように変化するため、捩れ角の大きさに応じて連結部端ドメインの大きさが変化する。前述のようにドメイン内部の捩れ配向は逆捩れのため、周囲の正常な液晶配向との間に配向変化のない部分が形成される。この部分が暗線になり連結部端ドメインとして観察されるが、連結部端ドメイン内部の逆捩れ角が大きいほど配向変化のない部分が正常配向側に押しやられるので、その結果連結部端ドメインが拡大する。前述のようにドメインの分布は横に倒したU字型であるが、連結部端ドメインが拡大するとU字の直線部分が伸長する。逆捩れ角が小さいと、U字の直線部分が短縮するようにして連結部端ドメインが縮小する。
連結部端ドメインが右側にある場合と左側にある場合について、プレチルト角による連結部端ドメインの大きさの変化を図21にまとめて示した。図21中の符号は、フリンジ電界の最も強い部分におけるチルト角の符号である。連結部端ドメイン内にはチルト角が正の部分と負の部分があるが、両者の面積が同じならば伸長と収縮の効果が相殺して連結部端ドメインの大きさはプレチルト角に寄らず変化しない。しかし、実際には透過率向上のため、電極幅よりもスリット幅を広く設定する。この内の一方はプレチルト角の符号と逆符号になって伸長し、他方は順符号になって縮小するが、連結部端ドメイン全体の大きさはおよそ両者の足し合わせになる。そのため、連結部端ドメインの全体の大きさは優勢なプレチルト角成分により決定される。
ポリイミド系配向膜をラビング工程で配向処理した場合、液晶層にプレチルト角が付与されるが、一方で黒表示時の視角特性向上にはプレチルト角の低減が有効である。両者を勘案してプレチルト角を1.5度に設定したが、このような比較的小さいプレチルト角でも、その符号の順逆によりドメインの大きさが変化する。また、プレチルト角の絶対値がドメインの大きさに与える変化は少ないので、ドメイン制御のためにはフリンジ電界の最も強い部分におけるチルト角と、プレチルト角の符号の順逆に着目すべきである。
連結部が右側にある場合は、連結部端ドメインにおいてチルト角が正の部分が優勢になるので、プレチルト角が正になるようにラビング条件を設定すれば、図21(b)に示したように連結部端ドメインが縮小する。連結部が左側にある場合は、チルト角が負の部分が優勢になるので、プレチルト角が負になるようにラビング条件を設定すれば、図21(e)に示したように連結部端ドメインが縮小する。
連結部端ドメインは、高電圧の印加や外部からの圧力で短時間残像の原因になる。即ち、これらの刺激により画素端部ドメインが拡大して画素の中央部まで伸長する。刺激を除いた後に伸長したドメインが元の大きさに戻るのに時間を有するので、短時間の残像となる。上記のようなプレチルト角の設定による連結部端ドメインの抑制は、これらのドメインが関係した残像の防止にも有効である。
尚、プレチルト角の符号は、暗表示時の視角特性より評価可能である。第一の偏光板と第二の偏光板は法線方向から観察して吸収軸が直交するように配置している。ところがこれを斜め方向から観察すると、T.Ishinabe、T.Miyashita、T.Uchda、Y.Fujimuraによる非特許文献Asia Display/IDW‘01 Proceedings 485頁〜488頁に記載されているように、二枚の偏光板の直交関係が変化するため透過率が増大する。特に、偏光板の吸収軸に対して45度を成す方位角方向において、極角を増大して観察した場合の透過率増大が顕著である。即ち、暗表示透過率の視角特性において、高透過率と低透過率の領域が方位角にして90度周期で分布する。IPS方式液晶表示装置の暗表示時視角特性のプレチルト角依存性を図22に示す。図22において斜体字は極角を示し、正体字は方位角を示す。プレチルト角が0度であると図22(c)に示したように暗表示時の視角特性は対称になるが、プレチルト角が0度でないと図22(a)、(b)に示したように非対称になる。この時、透過率がより大きくなる方向がプレチルト角が立上る方向である。図22では液晶層がホモジニアス配向でかつ水平方向を液晶配向方向としており、図22(a)、(b)はそれぞれプレチルト角が正の場合と負の場合である。暗表示時における視角方向での透過率を低減するため、前記非特許文献にあるように偏光板と液晶表示パネルの間に位相板を積層する場合があるが、この時にも図22に示した透過率分布の傾向は保たれる。
以上の考察をもとに、図4に示した連結部が片側のみにある電極構造のIPS-Pro方式液晶表示装置を作成し、画素電極に近接する液晶層のプレチルト角を櫛歯先端から根元に向かって立上るように設定した。本実施形態の場合に連結部は右側なので、プレチルト角が正になるようにラビング条件を設定した。以上の施策により画素両端のドメインを抑制し、画素両端に連結部を有する画素構造のIPS-Pro方式液晶表示装置に比較して5%以上の透過率向上を実現した。これと同時に、ドメインが関係した残像現象を防止することができた。
一方、櫛歯電極先端部のドメインについには、櫛歯の先端部分にドメイン抑制構造を導入して低減を試みた。ドメイン抑制構造は斜めスリット構造と三角構造があり、これらのドメイン抑制構造を備えた画素電極の例をそれぞれ図23、24に示す。何れも櫛歯方向が画素長辺に平行な例と、櫛歯方向が画素短辺に概略平行な例を示してある。
ドメイン抑制構造によるドメイン抑制効果を図25に説明する。図25(a)はドメイン抑制構造のない場合であり、図25(b)は斜めスリット構造、図25(c)は三角構造である。何れも櫛歯先端部分でかつスリット部に面した部分を中心に拡大してあり、加工時に生じる鋭角の消失を考慮してある。電界方向と配向方向の表記は図13、14と同じであり、円で囲んだ部分E、Gにおいて逆捩れ配向の原因になるフリンジ電界が存在する。
E、Gのうち櫛歯電極部により近いのはEであり、Eに起因する逆捩れ配向が成長すればドメインになる。正常配向を与えるフリンジ電界でかつEに最も近接するのがFであり、図25(b)の斜めスリット構造では図25(a)に比較してFがEにより近接していることがわかる。同様にして、図25(b)の三角構造でも図25(a)に比較してFがEにより近接している。これによりEはFからの配向規制力をより強く受けるため、逆捩れ配向の成長が抑制される。
連結部側にドメイン抑制構造を配置すれば、連結部側ドメインも抑制できる。しかし、櫛歯電極の先端に加えて連結部側にもドメイン抑制構造を配置すると、透過率がスリット構造並みに低下して透過率向上の目的を達成できなくなる。即ち、斜めスリット構造では電圧無印加時の液晶配向方向とフリンジ電界の成す角が小さいため、電圧印加時における液晶配向の回転角が減少して透過率が低下する。従って、櫛歯構造の連結部側にはドメイン抑制構造を導入せず、プレチルト角の設定により連結部端ドメインを抑制した。
以上の画素電極形状と液晶層チルト角の関係をまとめると、図1に示したようになる。図1の液晶層チルト角は図21(b)に相当し、即ち連結部が片側のみにある電極構造において、プレチルト角は画素電極の櫛歯先端から根元に向かって立上るように設定すれば、連結部端ドメインを抑制できる。連結部端と先端部端のドメインを抑制したことにより、本実施形態では実施形態1よりも更に透過率を向上することができた。また、ドメイン抑制構造の導入は、連結部端や先端部端のドメインに起因する短時間の残像現象の抑制にも有効である。
実施形態3
本実施形態では液晶材料のパラメータの最適化により、IPS-Pro方式液晶表示装置の櫛歯電極部の透過率向上を試みた。前述の様に電圧印加時のIPS-Pro方式液晶表示装置の配向変化は捩れ配向であるため、弾性定数の中でも配向変化に関与するのは捩れ弾性定数k22である。k22を低減すれば液晶層の配向変化が容易になり、B-V特性が低電圧側にシフトする。しかしこの時、Δεを一定としてk22を低減すればB-V特性のシフトに伴いTmaxも低下するので、十分な透過率向上が得られない。
実施形態1で述べたように、電極幅比を0.4近傍に設定すると画素内におけるフリンジ電界の分布が最も均一になる。しかし、この場合でもフリンジ電界の分布が完全に均一になったわけではなく、櫛歯電極とスリットの境界部においてより密で、櫛歯電極中央とスリット中央において疎である傾向に変わりはない。k22を低減したことによりフリンジ電界の密な部分ではより配向変化しやすくなるが、密な部分おける配向変化が疎な部分に伝播しにくくなり、疎な部分おける配向変化は小さくなる。その結果、櫛歯電極とスリットの境界部の透過率は増大するものの、櫛歯電極中央とスリット中央の透過率が減少するので、櫛歯電極部全体の透過率は向上しない。
k22低減時に画素全体の透過率を向上するためには、Δε低減が有効である。即ち、液晶層に配向変化を生じさせる力が弱まることにより、画素内の電界分布がより均一になる高電圧側において大きな捩れ変形が生じるようになるからである。これより、B-V曲線を一定の形状に保ちながら透過率を増大すべきであり、電圧印加時にIPS方式の透過率が変化し始めるしきい値電圧をVthとすると、B-V曲線はVthによって特徴付けられる。M.Oh-e、M.Ohta、S.Aratani、K.Kondoによる非特許文献ASIA DISPLAY‘95 577頁〜580頁によれば、Vthは以下の式で表される。
[数1]
Vth=π{k22/(ε0Δε)}/d・・・(1)
ここでε0、dはそれぞれ平均誘電率、液晶層厚である。このうち平均誘電率は室温を含む広範な温度範囲でネマチック相を示し、かつ高い抵抗値を示す液晶材料ではほぼ一定である。また、充分な応答特性と透過率を両立するため液晶層厚もほぼ一定値とする。そのため、k22とΔεを最適化して櫛歯電極部の透過率を向上するには、k22/Δεを一定範囲内に保つことが有効な指針になる。
k22が4.5pN、5.0pN、5.5pNの場合について、印加電圧4.5Vでの透過率のΔε依存性を計算した結果を図26に示す。図26において透過率は標準条件に於ける値で規格化しており、標準条件のk22とΔεはそれぞれ6.5pNと6.5とした。k22=4.5pN、5.0pN、5.5pNにおいて最大透過率を与えるΔεはそれぞれ4.5、5.5、6.5であり、これよりk22/Δεを求めると1.0pN、0.91pN、1.0pNとなる。このように、最大透過率を与える条件をk22/Δεで表すと0.91pNから1.0pNのごく狭い範囲内に収まる。
いずれのk22においても透過率はΔεと共に急激に変化しており、最大値と標準条件の透過率の中間を半値とし、これより半値幅を求める。k22が4.5pNの場合にはΔεが3.2以上8.6以下、k22が5.0pNの場合には3.8以上8.4以下、k22が5.5pNの場合には4.2以上8.2以下が半値幅である。これより半値以上の高透過率を与えるk22/Δεの値を求めると、k22が4.5pNの場合は0.52pN以上1.41pN以下であり、k22が5.0pNの場合は0.60pN以上1.31pN以下であり、k22が5.5pNの場合は0.67pN以上1.31pN以下であった。何れのk22においても高透過率を与えるk22/Δεはほぼ同じ範囲内にあり、3つの計算結果をまとめると0.52以上1.41以下となる。
以上のように、液晶材料のk22/Δεを0.52pN以上1.41pN以下の範囲に設定することにより、IPS-Pro方式液晶表示装置において主要な櫛歯電極部の透過率を向上することができる。
実施形態4
IPS-Pro方式液晶表示装置の表示特性の中で応答特性も重要であり、透過率向上の際に応答特性を維持できればより好ましい。多くの場合IPS-Pro方式液晶表示装置の一画素内において櫛歯電極部の影響が主であり、応答時間についてもこれが当てはまるため、櫛歯電極部の応答時間に注目する。電圧印加時において液晶層は捩れ配向状態となり、その配向変形に寄与する弾性定数は捩れ弾性定数k22である。そのため、電圧Vを印加した際、電圧Vを除去した際の配向変化に要する応答時間をそれぞれTon、Toffとすると、それぞれ以下の式で表される。
[数2]
Ton=4πηd2/(ε0ΔεV2-4π3k22)・・・(2)
Toff=ηd2/π2k22 ・・・(3)
ここで、ηは粘性定数である。液晶層及び液晶材料のパラメータのうち、Ton、Toffの両方に寄与するのはη、d
、k22であり、このうちηは室温を含む広範な温度範囲でネマチック相を示し、かつ高い抵抗値を示す液晶材料で、Δnが0.08から0.12の範囲にある場合にはほぼ一定値を取る。また、dは液晶層のパラメータであるが、液晶材料の物性値であるΔnと組み合わせて一定値をとる。即ち、透過率向上にはΔndを増大すべきであるが、中間調の色相変化を抑制するにはこれを低減すべきで、これらを両立するためにΔndは380nm近傍の値にしなければならない。以上より、応答特性維持のための指標を液晶材料の物性値で表せば、k22Δn2が得られる。k22低減により透過率増大を図る際に応答特性を維持するには、k22Δn2を一定値に保つべきである。
Δε、k22、Δnを変えて透過率と応答時間を計算した結果を図27に示す。Δεは4.5、5.5、6.5、k22は4.5pN、5.5pN、6.5pN、Δnは0.10、0.11、0.12、0.13とした。また、透過率と応答時間は標準条件において得られた値で規格化している。応答時間は図27の右側ほど短くなるようにプロットしており、標準条件より右上側の領域において透過率と応答時間の向上が同時に得られる。標準条件においてk22は6.5pNであり、これを5.5pN、4.5pNと低減するほど透過率が向上する。この時、これと同時にΔnを0.11、0.12と増大すれば、応答時間をほぼ一定に保つことが出来る。k22を6.5pN、5.5pN、4.5pN、Δnを.10、0.11、0.12と変えた時の透過率と応答時間の変化を図26中に矢印て示した。矢印はほぼ垂直方向を向いていることから、この時応答時間をほぼ一定に保ちながら透過率が増大していることが分かる。
標準条件においてk22Δn2は0.065pNであり、k22=5.5pN、Δn=0.11では0.067pNであり、k22=4.5pN、Δn=0.12では0.065pNである。標準条件並びにこれとほぼ同じ応答時間を与える何れの場合においても、k22Δn2はほぼ同じ値になる。以上のように、k22Δn2を0.065pNにしながら透過率を増大することにより、応答時間をほぼ一定に保つことができる。更には、k22Δn2を0.065pN以上にすれば、応答時間を低減しながら透過率を向上できる。
以上の結果は、Δndを一定に保ちながらdを低減した際に、透過率が変化しないことによって得られる。実施形態1で述べたように、IPS-Pro方式液晶表示装置の電圧印加時の配向状態は捩れ配向モデルで表されるが、このことは液晶層はその第二の基板端に局在化したフリンジ電界で駆動されていることを示している。最もフリンジ電界の強い部分と第一の基板端の間では捩れ配向が形成され、dを多少低減しても第一の配向膜の配向規制力はフリンジ電界の最も強い部分に於ける液晶層の回転角にほとんど影響を与えない。Δndを一定に保ちながらΔnを0.10から0.12に増大した場合、dの低減は0.87倍程度である。
また、Δnを0.12よりも大きくすると粘性定数が増大するので、応答時間が増大する。従って、ここで求めた応答時間をほぼ一定に保つk22Δn2の値である0.065pNは、Δnが0.12以下の場合に有効である。Δnが0.12以上の場合に応答時間を保持しながら透過率を向上するにはk22Δn2η/ηが有効な指標であり、ここでηはΔnが0.12以下の標準条件における粘性定数である。
実施形態5
本実施形態では実施形態2に引き続き、連結部端ドメイン低減によるIPS-Pro方式液晶表示装置の透過率向上を試みた。実施形態2では液晶層の配向状態と電極構造の最適化を行ったが、本実施形態では液晶物性の最適化による連結部端ドメイン低減を試みた。
前述の様にフリンジ電界が最も強いのは第二の基板近傍の液晶層である。そのため、第二の基板に近接し、かつ界面に平行な面内における液晶層の配向状態に着目した。連結部端ドメインが発生した際の配向分布を図17(c)、(d)に模式的に示す。ドメイン内の捩れ方向は、その周囲の正常配向部とは逆であり、画素端に平行な方向でこれを観察すると、逆配向部と正常配向部が繰り返し分布している。逆配向部と正常配向部の間は暗線として観察されるドメインであり、配向変化がほとんど生じていない。ドメインを中心にしてその上の部分と下の部分の液晶配向方向を観察すれば、両者は互いに逆向きに傾いている。これより、逆配向部と正常配向部の間にはスプレー変形が生じていることがわかる。
逆配向部と正常配向部の繰り返しの周期は、電極幅とスリット幅の和で定義される櫛歯電極ピッチと同じである。電極幅とスリット幅はそれぞれ2μm、3μmなので、櫛歯電極ピッチは5μmである。これは液晶層厚とほぼ同じ長さであり、逆配向部と正常配向部の間で発生しているスプレー変形は、縦電界方式液晶表示装置において電圧印加時に液晶層厚方向に発生する配向変形と同じ程度の急峻性を有する。従って、連結部端ドメインは液晶材料の弾性定数の影響を受け易く、弾性定数により抑制可能である。スプレー変形に関連する弾性定数はk11なので、k11を増大すれば連結部端ドメインの出現に必要な配向エネルギーが増大し、連結部端ドメインが出現しにくくなる。
その一方で、スプレー変形は図20、21に図示したように連結部端ドメインの内部において捩れ変形を増大、減少する作用を有し、k11を増大するほどその作用も強まるはずである。本実施形態では画素電極の平面形状を櫛歯型にして、櫛歯先端のドメインをドメイン抑制構造で抑制し、連結部端ドメインは液晶層のチルト角を櫛歯先端から根元に向けて立ち上がるように設定したことで抑制している。このようなチルト角設定は、連結部端ドメインを縮小するが、櫛歯先端のドメインは拡大するように作用する。k11を増大して行くとドメイン抑制構造は櫛歯先端のドメインを抑制しきれなくなり、櫛歯先端のドメインが成長して透過率が減少に転じる。このように、k11は増大するほど良いわけではなく、透過率向上のために最適な範囲が存在する。
k11の値を変えて、櫛歯構造の画素電極に電圧印加した時の配向状態を計算した。連結部端ドメインはk11を増大するにつれて縮小し、更には消滅した。一方、櫛歯先端部のドメインはk11の値が十分に小さい場合に大きさはほぼ一定であるが、k11の値が更に増大すると拡大してドメイン抑制構造の内側にまで分布を広げた。
次に、k11の値が異なり、かつほぼ同一のB-V特性を示す液晶材料を2種類用意し、その混合比を変えてk11の値をより細かい幅で変えた。それぞれの液晶材料について印加電圧4.5Vにおける透過率を測定したところ、図28に示したような結果が得られた。k11の値が13.5pNの時に印加電圧4.5Vにおける透過率は極大になった。それ以上のk11では透過率が減少し、k11の値が15.5pNの時には10pNにおける値とほぼ同じ透過率が得られた。
このようにIPS-Pro方式液晶表示装置の透過率向上のためには、k11の値に最適な範囲が存在する。現状の液晶材料のk11は10pNを前後とした範囲内にあるので、これと同等以上の透過率を得るためには、k11の値に最適な範囲は10 pN 以上、15.5 pN以下である。
実施形態6
実施形態3で述べたように、櫛歯電極部の液晶層の配向変形にはk11、k22、k33のうちk22が関与する。Δεと一定の関係を保ちながらk22を低減すれば、捩れ変形が生じ易くなるため液晶層の配向変化が増大し、透過率が向上する。また、実施形態7で述べたように現状の液晶材料に典型的な値よりもk11を増大することにより連結部端ドメインを抑制できる。
櫛歯電極の方向が長方形の画素の短辺方向の場合には、一画素内の長辺に沿って櫛歯端部が多数存在する。更には、画素サイズが小さい場合には、連結部端ドメインが透過率に与える影響を無視できなくなる。以下の条件1から条件9の弾性定数と誘電率異方性の液晶材料について、櫛歯電極の長さを変ながら透過率を計算した結果を図29(a)に示す。透過率は櫛歯電極の長さと共に増大しており、このことは櫛歯端部が櫛歯電極部に比較して透過率が低いことを示している。条件1から条件9の中で条件1が標準条件であり、図29中に破線で示した。各透過率を標準条件で規格化して表すと、図31(b)のようになる。櫛歯電極の長さが概略100μm以上の領域では規格化透過率がほぼ一定になっていることから、櫛歯電極の長さが100μm以下において櫛歯電極端部の影響を無視できないことがわかる。
尚、条件1の弾性定数と誘電率異方性はそれぞれk11=12.9pN、k22=6.5pN、k33=16.4pN、Δε=6.5であり、条件2はk11=14.4pN、k22=6.5pN、k33=16.4pN、Δε=6.5であり、条件3はk11=15.9pN、k22=6.5pN、k33=16.4pN、Δε=6.5であり、条件4はk11=12.9pN、k22=5.2pN、k33=16.4pN、Δε=6.5であり、条件5はk11=14.4pN、k22=5.2pN、k33=16.4pN、Δε=6.5であり、条件6はk11=15.9pN、k22=5.2pN、k33=16.4pN、Δε=6.5であり、条件7はk11=12.9pN、k22=5.2pN、k33=16.4pN、Δε=5.5であり、条件8はk11=14.4pN、k22=5.2pN、k33=16.4pN、Δε=5.5であり、条件9はk11=15.9pN、k22=5.2pN、k33=16.4pN、Δε=5.5である。電極形状は櫛歯構造であり、連結部の幅は2.0μmとした。櫛歯電極幅とスリット幅はそれぞれ2.0μm、3.0μmとし、電極間絶縁膜厚は0.3μm、電極間絶縁膜の比誘電率は6.5とした。また、櫛歯電極の連結部側と先端側のそれぞれ1.5μmはBMによって遮蔽され、この部分は透過率に寄与しないものとした。
櫛歯電極端部の影響を無視できない場合、透過率向上には結合部側ドメインを抑制し、これと同時に捩れ配向を増大する必要がある。結合部側ドメインの抑制にはk11最適化が有効であり、捩れ配向増大にはk22/Δεが有効である。実施形態3において高透過率を与えたk22/Δεの範囲と、実施形態5において高透過率を与えたk11の範囲を同時に満足する液晶材料を用いることにより、櫛歯電極の長さが100μm以下のIPS-Pro方式液晶表示装置の透過率をより向上することができる。
実施形態7
図3に示した画素電極では一画素内に電圧印加時における液晶配向の回転方向が互いに異なる二つの領域が存在しており、視角方向においてより無着色の表示が得られる。このように長方形の画素電極の内部に傾きの異なるスリットを一定の幅で形成すると、画素中央が二領域の境界部となり、液晶層に電圧印かできない無効領域が三角形状に形成される。一画素内にはコンタクトホール、TFT、走査配線などの不透明な構成要素が存在するが、この部分にこれらを配置することにより、無効領域を有効活用できる。一方、画素端部でも電極幅が広くなり、液晶層にフリンジ電界が印加されない無効領域が生じる。このような無効領域は、図30に示したように画素電界の形状を台形にすれば除くことができる。画素電界の形状を台形にしたことにより、図30では近接する画素電極の境界が鋸歯状になっているが、走査配線は画素中央にある二領域の境界部の下層を通過するので、走査配線の形状は直線である。
また、連結部端ドメインを抑制するためには画素電極構造を櫛歯構造にし、かつ全ての画素において連結部端を同一の側に揃える。具体的には、台形の頂辺側に連結部を配置した画素電極と、台形の底辺側に連結部を配置した画素電極を、図30に示したように交互に配置する。これにより全ての画素において連結部による無効領域を低減し、なおかつ実施形態1と同様にして連結部端ドメインを抑制できる。
本発明の表示装置を携帯電話やデジタルカメラ等のモバイル機器のインターフェイスに用いれば、高輝度で屋外視認性に優れた画像表示が得られる。
櫛歯構造の画素電極において連結部端ドメインを抑制するのに好適なプレチルト角を示す透視図である。 実施形態1の液晶表示装置の一画素の断面図である。 実施形態1の液晶表示装置の一画素の各種電極、配線の分布を示す平面図である。 電圧印加時における液晶配向の回転方向が互いに異なる二つの領域を配置した画素電極を示す平面図である。 電圧印加時における液晶層内の配向方向の方位角とチルト角分布を示す図である。 捩れ配向モデルを示す図である。 B-V特性の電極幅とスリット幅の比率依存性を示す図である。 B-V特性の電極幅とスリット幅の比率依存性を示す図である。 透過率と液晶配向状態の画素内分布を示す断面図である。 透過率と液晶配向状態の画素内分布を示す断面図である。 透過率と液晶配向状態の画素内分布を示す断面図である。 連結部を画素端両側に有する画素電極の平面図である。 画素端に鋭角のある理想的な画素電極において電圧印加時に生じる液晶配向の回転方向を示す平面図である。 鋭角が消失した画素電極において電圧印加時に生じる液晶配向の回転方向を示す平面図である。 連結部端ドメインの出ていない連結部側画素端部における透過率分布配向分布を示す断面図である。 連結部端ドメインの出ている連結部側画素端部における透過率分布配向分布を示す断面図である。 連結部端ドメイン内部における配向状態を示す平面図である。 連結部端ドメインと電極構造との関係を示す平面図である。 捩れ変形とスプレー変形の相互作用を説明する模式図である。 連結部端ドメイン内部のチルト角と電極に近接する液晶層界面のプレチルト角の関係によって生じる配向状態の変化を説明する模式図である。 プレチルト角によって生じる連結部端ドメインサイズの変化を説明する模式図である。 プレチルト角の符号と暗表示時の視角特性の関係を説明する模式図である。 斜めスリット構造を有する画素の例を示す平面図である。 三角構造を有する画素の例を示す平面図である。 斜めスリット構造と三角構造によるドメイン抑制効果を示す図である。 透過率のk22、Δε依存性を示す図である。 透過率と応答時間の関係を示す図である。 透過率のK11依存性を示す図である。 透過率の櫛歯電極長さ依存性を示す図である。 電圧印加時における液晶配向の回転方向が互いに異なる二つの領域を配置した画素電極の配列例を示す平面図である。
符号の説明
CL 液晶層、PE 画素電極、AD 配向方向、RD 配向処理方向、PL1 第一の偏光板、PL2 第二の偏光板、SU1 第一の基板、SU2 第二の基板、LL 平坦化層、CF カラーフィルタ、AL1 第一の配向膜、AL2 第二の配向膜、GL 走査配線、SE ソース配線、CE 共通電極、CH コンタクトホール、BM ブラックマトリクス、PCIL 電極間絶縁膜、CEIL 共通電極絶縁膜、GIL 走査配線絶縁膜、SL 信号配線、TFT アクティブ素子、RT 逆捩れ配向部、DO 連結部端ドメイン、DL 暗線、EF 電気力線。

Claims (7)

  1. 第一の基板と、第二の基板と、前記第一の基板と第二の基板間に挟持された液晶層からなる液晶パネルを有し、液晶パネルはその上下に第一の偏光板と第二の偏光板を有し、液晶パネルは独立制御可能な複数の画素を有し、各画素は第二の基板の液晶層側の面上の表示部に一対の画素電極と共通電極を有し、画素電極と共通電極は電極間絶縁を介して積層し、画素電極と共通電極のうち液晶層からより離れた方の平面構造はベタ平面状であり、画素電極と共通電極のうち液晶層側の電極は、連結部を片側のみに備えた櫛歯状の平面構造を有する櫛歯電極であり、液晶面内に平行な成分を主とする電界を印加して液晶層を駆動する液晶表示装置において、
    櫛歯電極の幅と櫛歯電極を隔てるスリットの幅の和を櫛歯電極ピッチとすると、(櫛歯電極ピッチ×電極間絶縁膜の比誘電率/電極間絶縁厚)が81以上、162以下の範囲にあり、櫛歯電極ピッチは2.5μm以上、8.5μm以下の範囲にあり、(櫛歯電極幅/櫛歯電極ピッチ)が0.3以上であって0.5よりも小さい範囲にあり、
    液晶層の配向は電極側の界面において櫛歯状構造の先端部から根元に向けて立ち上がるようなプレチルト角を有する液晶表示装置。
  2. 画素電極と共通電極のうち液晶層側の電極の先端部構造は、画素中央における櫛歯状構造に対してスリット方向が傾斜した構造である請求項1の液晶表示装置。
  3. 画素電極と共通電極のうち液晶層側の電極の先端部構造は、櫛歯状構造の先端部に三角形を付加した構造である請求項1の液晶表示装置。
  4. 液晶材料のツイスト弾性定数をk22とし、液晶材料の誘電率異方性をΔεとすると、(k22/Δε)が0.52pN以上1.41pNの範囲にあり、かつk22の値が4.5pN以上、5.5pN以下の範囲にある請求項1の液晶表示装置。
  5. 液晶材料のツイスト弾性定数をk22とし、液晶層の複屈折をΔnとすると、(k22×Δn2)が0.065pN以上であり、Δnが0.12以下の範囲にある請求項1の液晶表示装置。
  6. 液晶層のスプレー弾性定数をk11とすると、k11が10pN以上、15.5pN以下の範囲にある請求項1の液晶表示装置。
  7. 画素電極と共通電極のうち液晶層側の電極は、台形に内接する平面構造を有し、かつ台形の底辺側に連結部を備えた構造と、台形の頂辺側に連結部を備えた構造があり、前記二種類の構造が交互に配置された請求項1の液晶表示装置。
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