JP5270296B2 - 固体酸化物形燃料電池用インターコネクタおよび固体酸化物形燃料電池 - Google Patents
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Description
このようなインターコネクタ材料として、金属材料またはセラミック材料が提案されている。かかるセラミック材料としては、特許文献1〜9に示されるように、種々のペロブスカイト型酸化物材料が提案されている。例えば、La1−pApCrO3(ここで、AはMg,Ca,Sr,Baからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、0≦p<1である。)等のランタンクロマイト(LaCrO3)系のペロブスカイト型酸化物、あるいはそのBサイトを他の元素(例えばSi,Ti,Co,NiあるいはZr)で一部置換(ドープ)したペロブスカイト型酸化物、さらにはMTiO3(ここで、MはLi,Ca,Cu,Sr,Ba,La,Ce,Pb,Biからなる群から選ばれる少なくとも1種である。)等のチタネート系のペロブスカイト型酸化物等が例示される。
Ln1−xAexZr1−yFeyO3−δ (1)
(ここで、Lnはランタノイドから選択される少なくとも1種の元素であり、Aeは、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)およびCa(カルシウム)からなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、0≦x≦1であり、0.4≦y<1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
で表わされるペロブスカイト型酸化物から構成されていることを特徴とする。
本発明に係るインターコネクタは、上記一般式(1)のペロブスカイト型酸化物材料から構成されるので、以下に示す少なくとも一つの効果が奏される。すなわち、1)Crを含まないのでCr被毒による電池性能の低下が防止される。2)上記材料に含まれるZr(ジルコニウム)やFe(鉄)は、代表的な単セルの電解質材料(例えば安定化ジルコニア(YSZ等))や空気極(カソード)材料(例えばランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、ランタンストロンチウムコバルタイト(LSC))の成分元素であるため、長期使用によりZrやFeが拡散しても電池性能は劣化(低下)しにくい。3)導電性を有する。4)還元膨張率が非常に小さく、かかるインターコネクタを備えた燃料電池の長期使用にも耐え得る高い耐久性を有する。5)熱膨張係数がセル材料に類似しているため、単セルとインターコネクタ間の熱膨張差によるクラック等の発生が防止される。6)インターコネクタとしての機能を好ましく発揮し得る程度に緻密な構造を有するため、空気や燃料ガスのガス漏れが防止される。したがって、本発明により、上記の優れた効果を発揮する好適なインターコネクタを提供することができる。
かかる態様では、上記の効果に加えて導電性がより一層向上した好適なインターコネクタを提供することができる。
かかる態様のインターコネクタでは、還元雰囲気に曝される燃料極側と酸化雰囲気に曝される空気極側との応力差の低減がより確実となるので、耐久性がより向上した好適なインターコネクタを提供することができる。
ここで、還元膨張率とは、還元雰囲気(水素ガス)下における熱膨張率をER(%)、空気雰囲気下における熱膨張率をEA(%)としたとき、下記(2)式で与えられる。
[{(1+ER/100)−(1+EA/100)}/(1+EA/100)]×100 (2)
また、本発明に係るインターコネクタは、種々の構造の固体酸化物形燃料電池(例えば、平板型(Planar)、円筒型(Tubular)、あるいは円筒の周側面を垂直に押し潰したフラットチューブラー(Flat tubular)型等)に対して好ましく適用することができ、燃料電池の形状に特に限定されない。
Ln1−xAexZr1−yFeyO3−δ (1)
で表わされるペロブスカイト型酸化物から構成される。ここで、上記Lnは、Lnはランタノイドから選択される少なくとも1種の元素であり、好ましくはLaである。また、Aeは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、好ましくはSrである。また、上記一般式における「x」は、このペロブスカイト型構造においてLnがAeによって置き換えられた割合を示す値である。このxの取り得る範囲は0≦x≦1(好ましくは0≦x<1、例えば0.4≦x≦0.6)である。
ここで、上記δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。上記一般式(1)における酸素原子数は、ペロブスカイト型構造の一部を置換する原子の種類および置換割合その他の条件により変動するため正確に表示することは困難である。このため、電荷中性条件を満たすように定まる値として、1を超えない正の数δ(0<δ<1)を採用し、酸素原子の数を3−δと表示するのが妥当であるが、以下では便宜的に3と表示することとする。ただし、該酸素原子の数を便宜的に3として表示しても、異なる化合物を表しているわけではない。
すなわち、製造しようとするインターコネクタ(上記一般式(1)で表わされるペロブスカイト型酸化物)を構成する金属原子(すなわち、上記一般式(1)におけるLn(例えばLa)、Ae(例えばSr)、Zr、およびFe)を含む化合物の粉末(原料粉末)を所定の配合割合(すなわち、上記ペロブスカイト型酸化物全体を1モルとして、上記各金属原子が所定の組成比でそれぞれ含まれるように決定された配合比)で混合する。この混合物を所定形状に成形し、酸化性雰囲気(例えば大気中)または不活性ガス雰囲気で焼成して所定形状のインターコネクタを得る。ここで、上記原料粉末としては、かかるペロブスカイト型酸化物を構成する上記各金属原子を含む酸化物あるいは加熱により酸化物となり得る化合物(当該金属原子の炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、オキシハロゲン化物等)の一種以上を含有するものを用いることができる。この原料粉末は、上記金属原子のうち二種以上の金属原子を含む化合物(複合金属酸化物、複合金属炭酸塩等)を含有してもよい。上記各原料粉末の平均粒径は、例えば0.5μm〜3μm(好ましくは凡そ1μm〜2μm)である。ここで平均粒径とは、原料粉末の粒度分布におけるD50(メジアン径)をいう。
なお、上記原料粉末の代わりに、所定組成比からなるペロブスカイト型酸化物粉末の市販品を使用しても良い。
例えば、原料粉末を仮焼し、湿式ボールミル等を用いて当該仮焼原料を粉砕することにより、仮焼粉末(本焼成用原料粉末)を得ることができる。さらに原料粉末(または仮焼粉末)に、水、有機バインダ等の成形助剤、および分散剤を添加・混合してスラリーを調製し、スプレードライヤー等の造粒機を用いて所望する粒径(例えば平均粒径が10〜100μm)に造粒することができる。
なお、原料粉末の成形、あるいは仮焼工程後に得られる仮焼物を粉砕して得られた仮焼粉末(本焼成用原料粉末)の成形には、一軸圧縮成形、静水圧プレス、押出し成形等の、従来公知の成形法を採用することができる。この成形のために従来公知のバインダ等を使用することができる。なお、本発明のインターコネクタは、その性能(Cr被毒による電池劣化防止性、低還元膨張率による高耐久性、またはセル材料と類似の熱膨張係数による歪みやクラックの発生防止性等)を顕著に損なわない範囲で、前記一般式(1)で表されるペロブスカイト酸化物以外の成分を含有することができる。
本実施形態に係るインターコネクタ20は、その両面を二つの単セル10で挟まれており、一方の面(空気極側面)22が一方の単セル10の空気極14と隣接し、他方の面(燃料極側面)24が他方の単セル10の燃料極16と隣接している。また、空気極側面22には、複数の溝が形成されており、供給された空気が流れるための空気用流路23となっている。同様に、燃料極側面24には、供給された燃料ガス(H2ガス)が流れる燃料ガス用流路25としての溝が複数形成されている。かかる形態のインターコネクタ20では、図1に示されるように、空気用流路23と燃料ガス用流路25は、その流路の方向が互いに直交するように形成されている。なお、SOFC1は、典型的には、スタック内に供給されるガスが漏れないようにガラスシーリング等の封止部材で密閉された密閉構造を有している。
なお、上記単セル10としては、上記の構成に限られず一般的なSOFCに適用可能な従来公知の構成を特に制限なく適宜選択して用いることができる。また、SOFCに適用可能なこれら以外の他の構成(例えば、空気極14と固体電解質12との間に配置される空気極中間層や、燃料極16と固体電解質12との間に配置される燃料極中間層)を備えていてもよい。
次いで、両側面に空気極材料と燃料極材料とが付与された上記固体電解質12を焼成することにより、該固体電解質12の両側面にと燃料極とがそれぞれ形成された単セル10を得る。
市販の酸化ランタン(La2O3)粉末(平均粒径約2μm)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)粉末(平均粒径約2μm)、酸化ジルコニウム(ZrO2)粉末(平均粒径約1μm)および酸化鉄(Fe2O3)粉末(平均粒径約2μm)を、焼成後に得られる焼成体の組成の化学量論比で混合した。すなわち、Laは0.6、Srは0.4、Zrは0.1、Feは0.9モルとなるように配合して、ボールミルを用いて混合した。これにより得られた混合粉末を1200℃の焼成温度で6時間仮焼した。このようにして得られた仮焼物を湿式ボールミルにより粉砕して、インターコネクタ材料の原料粉末を得た。
次に、この原料粉末に対して、バインダを混合して約80μmの粒子に造粒した。この造粒粉末を100MPaでのプレス成形により直径約30mm、厚さ約4mmの円板状に成形した。この成形体を2個作製し、大気中で1400℃〜1600℃まで昇温して6時間保持して焼成し、その後研磨することにより、サンプル(1)(La0.6Sr0.4Zr0.1Fe0.9O3)を2個得た。
ほかのサンプル(2)〜(6)についても上記サンプルと同様にして2個ずつ得た。以下に、サンプル(1)〜(6)の組成を示す。
サンプル(1);La0.6Sr0.4Zr0.1Fe0.9O3
サンプル(2);La0.6Sr0.4Zr0.2Fe0.8O3
サンプル(3);La0.6Sr0.4Zr0.3Fe0.7O3
サンプル(4);La0.6Sr0.4Zr0.4Fe0.6O3
サンプル(5);La0.6Sr0.4Zr0.5Fe0.5O3
サンプル(6);La0.6Sr0.4Zr0.6Fe0.4O3
サンプル(7);La0.6Sr0.4CrO3
サンプル(8);La0.6Sr0.4Cr0.5Fe0.5O3
サンプル(9);La0.6Sr0.4Zr0.1Cr0.1Fe0.8O3
サンプル(10);La0.6Sr0.4Zr0.1Cr0.2Fe0.7O3
サンプル(11);La0.6Sr0.4Zr0.1Cr0.3Fe0.6O3
サンプル(12);La0.6Sr0.4Zr0.1Cr0.4Fe0.5O3
<例2:還元膨張率の評価>
上記例1により得られたサンプル(1)において、サンプル(1)の一つを空気雰囲気(酸素分圧約200hPa(約0.2atm))下で室温から1000℃まで維持した。その温度領域におけるサンプル(1)の体積の増加分を測定し、その増加分を室温における体積に対する百分率で表した。これを空気雰囲気下における熱膨張率EAとした。
同様にして、還元雰囲気(水素5vol%、窒素の95vol%を含有する)下におけるサンプル(1)の熱膨張率ERを求めた。これら熱膨張率EAおよびERを上記(2)式にあてはめることによりサンプル(1)の還元膨張率[%]を算出した。
サンプル(2)〜(12)についても、サンプル(1)と同様にして還元膨張率[%]を求めた。これらの結果を表1に示す。
一方、サンプル(7)および(8)については、還元膨張率がそれぞれ0.38%、0.29%となり、サンプル(1)〜(6)を上回る結果となった。また、サンプル(9)〜(12)(La0.6Sr0.4Zr0.1Cr1−pFepO3(0.5≦p≦0.8))では、各還元膨張率は0.17%〜0.24%の範囲内に収まった。
次に、上記サンプル(1)における導電率を以下のようにして測定した。まず、上記サンプル(1)の表面に電極となる白金ペーストを塗布した後、該電極部分に電流端子および電圧端子を接続するための白金線を取り付けて850〜1100℃で10〜60分間焼き付け、任意の温度に調整可能な装置内で、直流四端子法で導電率[S/cm]を求めた。サンプル(2)〜(12)における導電率についても、上記と同様にして求めた。一定の温度条件(1000℃)下における導電率の測定結果を表1に示す。
一方、サンプル(7)および(8)については、導電率がそれぞれ30S/cm、100S/cmとなり、サンプル(1)〜(6)を上回る結果となった。また、サンプル(9)〜(12)(La0.6Sr0.4Zr0.1Cr1−pFepO3(0.5≦p≦0.8))では、各還元膨張率は9S/cm〜36S/cmの範囲内だった。
次に、サンプル(1)〜(12)について、サンプルの一方の面に空気、他方の面に水素(H2)ガス(燃料ガス)を暴露し、所定時間経過後にリークが生じているか否かを測定した。その試験方法について図2を参照しつつ説明する。図2は、円板状に形成された上記サンプル(1)〜(12)を空気雰囲気および還元雰囲気に暴露してリーク発生を測定するための装置を模式的に示した図である。
<測定装置>
この測定装置100は、サンプル(1)〜(12)(以下、単に「サンプル40」ということもある。)を収容するケーシング30と、サンプル40を所定の使用温度に維持するためのヒータ50とを備える。ケーシング30は、サンプル40の一方の面側に接続された空気極側外管32と、空気極側外管32の内部に挿入された空気供給内管34と、サンプル40の他方の面側に接続された燃料極側外管36と、燃料極側外管36の内部に挿入された燃料ガス供給内管38とを有する。上記内管34,38および外管32,36は、いずれもアルミナ、ムライト等の緻密なセラミック(ここではアルミナ)により形成されている。サンプル40の外周部にはガラスシール35がリング状に形成されている。このガラスシール35は、外管32,36の一端をサンプル40に気密に接合するとともに、サンプル40の外周端を気密にシールしている。サンプル40の上記一方の面側には、該サンプル40および空気極側外管32によって空気供給空間33が区画形成されている。また、サンプル40の上記他方の面側には、該サンプル40および燃料極側外管36によって燃料ガス供給空間37が区画形成されている。
このような構成の測定装置100にサンプル40をセットすることにより、サンプル40の一方の面は、空気供給空間33に供給された空気と接触するとともに、該サンプル40の他方の面は、燃料ガス供給空間37に供給された燃料ガスと接触することができる。このことにより、かかるサンプル40を、一方の単セルの空気極と他方の単セルの燃料極とに挟まれたインターコネクタの状態に模擬することができる。
次に、測定方法について説明する。
サンプル40を上記測定装置100にセットし、空気供給空間33に、空気(酸素分圧約200hPa(約0.2atm))を所定流量で供給した。また、燃料ガス供給空間37には、水素(H2)含有混合ガス(H2を5vol%、窒素(N2)を95vol%)を所定流量で供給した。この状態で測定装置100(サンプル40)の温度を1000℃にして10時間維持した後、燃料ガス供給空間37から排出されるガスの組成をガスクロマトグラフにより測定し、空気供給空間33に空気の構成成分として供給された酸素(O2)ガスが含まれるか否か(すなわち、O2ガスがリークしているか否か)を測定した。
上記のようにして、サンプル(1)〜(12)のそれぞれについて測定した。
次に、市販のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末に適当なバインダ等を加えてスラリー状に調製し、これを従来公知の方法により塗布し、その表面に上記サンプル(1)を作製するために調製したスラリー状のインターコネクタ材料をさらに付与(塗布)して2層構造の未焼成膜を作製した。かかる未焼成膜を乾燥させ、上記と同様の焼成温度で焼成することにより、サンプル(1)と同組成の層(層の厚みは約100μm)が形成された2層構造の焼成膜(YSZ層単体の厚みは約50μm)を作製した。かかる2層構造膜をEDXによりYSZ層内部にCrの拡散が起こっているかどうかを観察した。サンプル(2)〜(12)についても同様にCrの拡散の有無を観察した。その結果を表1に示した。
以上の通り、La0.6Sr0.4Zr1−yFeyO3(0.4≦y<1、より好ましくは0.5≦y≦0.8)で表わされるペロブスカイト型酸化物は、Cr拡散に伴うCr被毒を防止するとともに、高い導電性と低い還元膨張率とを両立させるインターコネクタを実現し得る好適なインターコネクタ材料である。したがって、ここで開示されるインターコネクタは、このような効果を発揮する優れたインターコネクタである。
10 単セル
12 固体電解質
14 空気極
16 燃料極
20 インターコネクタ
22 空気極側面
23 空気用流路
24 燃料極側面
25 燃料ガス用流路
30 ケーシング
32 空気極側外管
33 空気供給空間
34 空気供給内管
35 ガラスシール
36 燃料極側外管
37 燃料ガス供給空間
38 燃料ガス供給内管
40 サンプル
50 ヒータ
100 測定装置
Claims (5)
- 正極である空気極と、負極である燃料極と、両極間に配置された固体酸化物電解質とからなるセルを複数備える固体酸化物形燃料電池において、該複数のセルを電気的に接続するために、該セル間に配置される固体酸化物形燃料電池用インターコネクタであって、
一般式:
La 1−x Sr xZr1−yFeyO3−δ (1)
(ここで、0≦x≦1であり、0.4≦y<1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
で表わされるペロブスカイト型酸化物から構成されていることを特徴とする、固体酸化物形燃料電池用インターコネクタ。 - 前記一般式(1)において、0.5≦y≦0.8であることを特徴とする、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用インターコネクタ。
- 還元膨張率が0.1%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池用インターコネクタ。
- 導電率が10S/cm以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用インターコネクタ。
- 正極である空気極と負極である燃料極と両極間に配置された固体酸化物電解質とからなるセルを複数備える固体酸化物形燃料電池であって、該複数のセルを電気的に接続するために、該セル間に請求項1〜4のいずれかのインターコネクタが配置されている固体酸化物形燃料電池。
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