JP5260255B2 - 塗装方法およびそれにより得られる塗装体 - Google Patents

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Description

本発明は、2種類の塗料をウェットオンウェットで積層して焼き付ける塗装方法およびそれにより得られる塗装体に関する。
2種類の塗料をウェットオンウェットで積層した後、焼き付ける塗装方法により積層塗膜を形成する場合において、従来から、すべての塗料を積層した後に積層塗膜を構成するすべての層が同じ加熱温度で硬化するように各層を形成する熱硬化型塗料を選択し、積層塗膜全体を硬化させる方法が用いられていた。しかしながら、従来の塗装方法では、下層を焼き付けてから最上層を形成する塗料を積層して焼き付けた場合に比べて、積層塗膜の肌および光沢が劣るという問題があった。このため、積層塗膜の肌および光沢を向上させるために種々の方法が提案されている。
例えば、特開2007−283271号公報(特許文献1)には、水性ベース塗料および硬化剤としてイソシアネート化合物を用いた水性クリア塗料をウェットオンウェットで塗装し、次いで両塗膜を一緒に加熱硬化させる複層塗膜形成方法において、水性クリア塗料の塗装時にベース塗膜の固形分濃度を85質量%以上且つ20℃におけるベース塗膜の吸水率を10質量%以下にすることによって、水性クリア塗料の塗装後にクリア層からベース層への水の拡散および浸透を抑制することができ、ベース塗膜の水の吸収によるクリア塗膜の粘度上昇を抑えることが可能となることが開示されている。さらに、これによって複層塗膜の仕上り外観を向上させることも可能となることが開示されている。
しかしながら、硬化剤としてイソシアネート化合物を用いたクリア塗膜は焼付時の硬化が速く、ベース塗料が硬化する前にクリア塗膜が流動性を失うことから、従来のベース塗料とクリア塗料を用いたウェットオンウェットによる塗装においては、クリア塗膜の硬化後に、ベース塗膜の硬化の進行に伴う硬化収縮によって形成された凹凸が緩和されることなく、クリア塗膜表面に転写されるため、外観品質が損なわれ、肌および光沢を自動車の外観品質に要求されるレベルまで向上させることが困難であった。
特開2007−283271号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、2種類の塗料をウェットオンウェットで積層して焼き付けて高耐久性の確保などのために各層を硬化させても、最上層表面の凹凸が少ない積層塗膜を得ることができる塗装方法、およびそれにより得られる外観品質に優れた塗装体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、2種類の熱硬化型塗料をウェットオンウェットで積層して焼き付け塗装をする場合において、その硬化温度における重量減少率が所定の範囲の熱硬化型塗料を使用して積層塗膜の最上層を形成し、且つガラス転移温度(Tg)が低い基体樹脂を含有する熱硬化型塗料を使用して最上層の下層を形成することによって、最上層が硬化して流動性が著しく低下した後においても下層の流動性が確保され、さらにその後の硬化状態においても下層の高緩和性(分子の高運動性)も得られ、その結果、積層塗膜の収縮による凹凸の形成を最小限に抑えることができ、2種類の塗料をウェットオンウェットで積層した後に焼き付けを実施しても外観品質に優れた積層塗膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の塗装方法は、基材上に形成された下層と前記下層上に形成された最上層とを備える積層塗膜を形成する塗装方法であって、
記最上層を形成するための最上層用塗料としてその硬化温度における重量減少率が0.5質量%以下の熱硬化型塗料を準備し、前記下層を形成するための下層用塗料としてガラス転移温度が5℃以下の基体樹脂を含有し且つ前記最上層用塗料のゲル化開始時における損失弾性率が1MPa以下である熱硬化型塗料を準備する工程と、
前記基材上に前記下層用塗料および前記最上層用塗料をウェットオンウェットで積層して未硬化積層塗膜を形成する工程と、
前記未硬化積層塗膜に加熱処理を施して前記下層用塗料および前記最上層用塗料を硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
本発明の塗装方法においては、前記下層用塗料として前記最上層用塗料の硬化温度における重量減少率が0.5質量%以下の塗料を用いることが好ましい
また、本発明の塗装方法においては、前記未硬化積層塗膜に[前記最上層用塗料の硬化温度−20℃]未満の温度で加熱処理を施し、次いで[前記最上層用塗料の硬化温度−20℃]以上の温度で加熱処理を施すことが好ましい。
本発明の塗装体は、基材上に形成された下層と前記下層上に形成された最上層とを備える積層塗膜を有する塗装体であって、前記本発明の塗装方法により得られたものであり、肌や光沢などの外観品質に優れた積層塗膜を備えることを特徴とするものである。
なお、本発明の塗装方法によって2種類の塗料をウェットオンウェットで積層して焼き付けた場合にも積層塗膜の表面の凹凸が少なくなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、従来のウェットオンウェットにより形成した積層塗膜では、最上層を含めすべての層で熱硬化型塗料が用いられ、各層を同じ加熱温度で同時に硬化させたり、下層から順に硬化を開始するように設計されているため、最上層を形成する熱硬化型塗料を加熱処理(焼き付け処理)により硬化させる際には、その下層においても熱硬化型塗料の硬化が進行して既に流動性を失った状態となっている。このような積層塗膜の各層では縮合反応や硬化剤の脱ブロック反応の後の付加反応により熱硬化型塗料を硬化させるため、この縮合反応や脱ブロック反応により生成した揮発性生成物が、残存する溶媒とともに揮発し、積層塗膜が収縮して塗膜表面に凹凸が形成される。この塗膜表面の凹凸は各層が十分に流動性を有している間はその流動などにより緩和されるが、最上層の流動性が硬化により著しく低下した場合には下層も硬化して流動性をほぼ失っているため、凹凸は緩和されず、基材表面や各層の界面の凹凸が最上層表面に転写され、積層塗膜の肌や光沢が悪化するものと推察される。
また、硬化剤としてイソシアネート化合物やイソシアネート樹脂を含有する熱硬化型塗料を最上層用塗料として用いた場合などにおいては、最上層用塗料の硬化速度が速いため、下層が硬化する前に最上層が流動性を失うことが多い。この場合、最上層が硬化した後に下層の硬化が進行するが、従来のウェットオンウェット塗装に用いられていた下層用塗料は、硬化状態における緩和性に乏しく、下層の硬化の進行に伴う収縮により形成された凹凸が十分に緩和されず、基材表面や各層の界面の凹凸が最上層表面に転写され、積層塗膜の肌や光沢が悪化するものと推察される。
一方、本発明の塗装方法では、下層を、Tgが低い基体樹脂を含有する熱硬化型塗料を使用して形成するため、最上層が硬化する際にも前記下層においては高流動性が確保され、さらにその後の硬化状態においても高緩和性(分子の高運動性)が得られるため、積層塗膜が収縮して塗膜表面に凹凸が形成した場合でもこの下層の流動性により凹凸が緩和され、塗膜表面における凹凸の顕在化が抑制されるものと推察される。
本発明によれば、2種類の塗料をウェットオンウェットで積層して焼き付けて高耐久性の確保などのために各層を硬化させても最上層表面の凹凸が少ない積層塗膜を得ることが可能となる。これにより、肌(表面平滑性)や光沢など外観品質に優れた塗装体を得ることができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の塗装方法は、基材上に形成された下層と前記下層上に形成された最上層とを備える積層塗膜を形成する塗装方法であって、
前記下層を形成するための下層用塗料としてガラス転移温度が5℃以下の基体樹脂を含有する熱硬化型塗料を準備し、前記最上層を形成するための最上層用塗料としてその硬化温度における重量減少率が0.5質量%以下の熱硬化型塗料を準備する工程と、
前記基材上に前記下層用塗料および前記最上層用塗料をウェットオンウェットで積層して未硬化積層塗膜を形成する工程と、
前記未硬化積層塗膜に加熱処理を施して前記下層用塗料および前記最上層用塗料を硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
本発明の塗装方法では、先ず、基材上に下層用塗料を塗布し、必要に応じて乾燥等により溶媒等を蒸発させて未硬化の下層を形成する。このとき、下層用塗料としてガラス転移温度が5℃以下の基体樹脂を含有する熱硬化型塗料(以下、「低Tg熱硬化型塗料」という)を使用する。次いで、この未硬化の下層の上に最上層用塗料を塗布し、必要に応じて乾燥等により溶媒等を蒸発させて未硬化の最上層を形成する。その後、得られた未硬化積層塗膜に加熱処理(焼き付け処理)を施して各層を硬化させる。
本発明に用いられる基材としては特に限定されず、例えば、金属(鉄、銅、アルミニウム、錫、亜鉛およびこれらの金属の合金など)、鋼板、プラスチック、発泡体、紙、木、布、ガラスなどが挙げられる。中でも、外観品質に対する要求特性が高い自動車用鋼板に本発明は好適に適用される。これら基材表面には、予め電着塗装、または電着塗装と中塗り塗装などの処理が施されていてもよい。
本発明の塗装方法においては、前記基材上に熱硬化型塗料を使用して下層を形成するが、この下層は、ガラス転移温度が5℃以下の基体樹脂を含有する低Tg熱硬化型塗料を用いて形成される。このように、下層を前記低Tg熱硬化型塗料を用いて形成することによって最上層が硬化して流動性が著しく低下した場合においても下層の流動性が十分に確保され、且つこの下層が硬化状態にあっても十分な緩和性が確保されるため、積層塗膜の収縮による表面の凹凸を緩和し、外観品質に優れた積層塗膜を得ることが可能となる。
本発明に用いられる低Tg熱硬化型塗料は、Tgが5℃以下の基体樹脂を含むものであり、Tgが−5℃以下の基体樹脂を含むものが好ましく、Tgが−15℃以下の基体樹脂を含むものがより好ましい。前記基体樹脂のTgが前記上限を超えると最上層の流動性が硬化により著しく低下した場合に下層も硬化して流動性が十分に確保できず、さらに下層が硬化状態になった場合の緩和性も十分に確保できないため、塗膜表面の凹凸が緩和されず、積層塗膜の肌や光沢が悪化する傾向にある。
なお、本発明において、「基体樹脂」とは塗料に含まれる樹脂の主体成分を意味するものである。このような基体樹脂のガラス転移温度(Tg(単位:K))は下記のFox式(Bulletin of the American Physical Society,13,p123(1956))を参照):
1/Tg=w/Tg+・・・+w/Tg+・・・+w/Tg
(式中、wはモノマーi(i=1〜nの整数)の質量分率を表し、Tgはモノマーi(i=1〜nの整数)のホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。)
を用いて算出することができる。なお、ホモポリマーのTgとしてはJ.Jpn.Soc.Colour Mater.,64,p594-p595(1991)に記載された値を適用することができ、この文献に記載されていないホモポリマーのTgとしては“POLYMER HANDBOOK(FOURTH
EDITION)”、J.BRANDRUP,E.H.IMMERGUTおよびE.A.GRULKE編、JOHN WILEY & SONS,INC.に記載された値を適用することができる。また、モノマー組成を調整することによって所定のTgの基体樹脂を調製することができる。
このような低Tg熱硬化型塗料に用いられる基体樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。このような基体樹脂のTgは、前記Fox式により算出でき、モノマー組成を調整することによって所定のTgの基体樹脂を得ることができる。
前記低Tg熱硬化型塗料に含まれる硬化剤としては、イソシアネート化合物、イソシアネート樹脂、アミン化合物、アミノ樹脂などが挙げられる。これらの硬化剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明において、前記低Tg熱硬化型塗料の形態は、溶剤型、水性のいずれでもよいが、揮発性有機化合物の排出量を削減できる点で水性が好ましい。また、前記低Tg熱硬化型塗料には、必要に応じて従来公知の着色顔料や光輝性顔料などが従来公知の範囲で含まれていてもよい。さらに、各種物性を調整するために粘性制御剤、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤などの各種添加剤を従来公知の範囲で配合してもよい。
本発明の塗装方法において、前記下層用塗料としては、使用する最上層用塗料の硬化温度における重量減少率が0.5質量%以下のものが好ましく、0.3質量%以下のものがより好ましく、0.1質量%以下のものが特に好ましい。このような重量減少率が小さい下層用塗料を使用すると加熱処理により最上層が硬化して流動性が著しく低下した後の塗膜の収縮を最小限にできる傾向にある。また、このような観点から最上層を硬化させる際に揮発性生成物を生成しない下層用塗料(重量減少率が0質量%)が最も好ましい。
なお、本発明において、「塗料の硬化温度」とは、一般的には塗料毎に設定(設計)されている焼付温度をいう。本発明では、この硬化温度(焼付温度)としてカタログ値を採用することができる。また、「塗料の重量減少率」は、以下の方法により測定される値である。すなわち、対象とする塗料を加熱処理後の膜厚が積層塗膜での目標膜厚となるようにアルミ箔上に塗装し、得られたアルミ箔試料を最上層用塗料の硬化温度よりも40℃低い温度および10−2Torr以下の真空条件で90分間乾燥した後、加熱脱着導入装置(例えば、GERSTEL社製Thermal Desorption System)付きガスクロマトグラフ/質量分析装置(例えば、Agilent社製6890GC/5975MSD)を用いて最上層用塗料の硬化温度で30分間加熱して揮発性生成物量(Rc(単位:g))と残存溶媒量を定量し、式(1)により重量減少率を算出する。この重量減少率は、塗膜中の全バインダー量に対する前記揮発性生成物量の割合である。
重量減少率=100×Rc/W×100/(100−P) (1)
式(1)中、Wは前記真空乾燥工程で得られた塗膜の質量(単位:g)であり、Pはその塗膜100gに含まれる顔料の質量(単位:g)である。なお、顔料の質量は塗料の配合表の値(カタログ値など)を採用できる。
また、本発明の塗装方法において、前記下層用塗料としては、使用する最上層用塗料のゲル化開始時における損失弾性率が1MPa以下のものが好ましく、0.7MPa以下のものがより好ましく、0.5MPa以下のものが特に好ましい(以下、「低損失弾性率塗料」という)。このような低損失弾性率塗料を下層用塗料として使用することにより最上層が硬化して流動性が著しく低下しても下層においては流動性が確保され、さらにその後の硬化状態においても高緩和性が得られるため、積層塗膜の収縮による表面の凹凸をより緩和することができ、外観品質に優れた積層塗膜を得ることができる。
なお、本発明において、「最上層用塗料のゲル化開始時における損失弾性率」とは、以下の方法により測定される損失弾性率で定義されるものである。すなわち、先ず、最上層用塗料を40mm×50mmのステンレス鋼板(厚さ0.5mm)に加熱処理後の膜厚が35±5μmとなるように塗布する。具体的には、前記ステンレス鋼板を水平な台に配置し、前記ステンレス鋼板の対向する2辺の縁からそれぞれ5mm程度の領域に厚さ70μmの粘着テープを貼り付け、刃先が直線であるナイフを前記テープ上で滑らせて、前記ステンレス鋼板とナイフの刃先との隙間に最上層用塗料を塗り込む。
このようにして最上層用塗料からなる塗膜を形成してから7±1分間後に、前記塗膜の相対貯蔵弾性率(E’)を測定する。測定は、刃先角度40°のナイフエッジを取り付けた直径74mmの円環状振子を装着した剛体振子型物性試験器((株)エー・アンド・デイ製RPT−5000型)を使用して実施する。測定時の温度プログラムは、室温(25℃)から硬化処理温度T(目的とする積層塗膜を焼き付ける温度であり、一般的には、最上層用塗料の硬化温度を採用する)まで昇温速度20±4℃/分で昇温し、その後、前記硬化処理温度Tを維持するように設定する。測定は、以下の変曲点以降15分以上経過するまで実施する。
得られた相対貯蔵弾性率(E’)の測定値を時間に対してプロットすると、図1に示すように、時間の経過に従って下に凸の曲線から上に凸の曲線に変化する(以下、この変化する時点を「変曲点」という)という結果が得られる。この変曲点以降15分間の部分について下記式(2):
’=A〔1−exp{k(t−t)}〕 (2)
(式(2)中、Aおよびkは定数であり、tは時間を示す。)
を当てはめ、非線形最小二乗法により時間軸切片tを求める。このtは、測定を開始してから最上層用塗料がゲル化を開始するまでの時間を表す。
次に、対象とする下層用塗料について、前記最上層用塗料の場合と同様にして加熱処理後の膜厚が所定の値となるように塗布膜厚を調節して塗膜を形成し、前記最上層用塗料の場合と同一条件で相対損失弾性率(E”)を測定する。測定は、目的とする積層塗膜の熱硬化処理時間(焼付時間)tまで実施し、前記時間tおよび前記熱硬化処理時間tにおける下層用塗料からなる塗膜の相対損失弾性率(それぞれ、E”(t)およびE”(t))を求める。
次に、対象とする下層用塗料を、ガラス板またはポリプロピレン板などの加熱処理後の塗膜が剥離可能な表面が平滑な基材に、加熱処理後の膜厚が所定の値となるように塗布膜厚を調節しながら塗布し、必要に応じて所定の予備乾燥処理を施し、目的とする積層塗膜の熱硬化処理条件で塗膜に熱硬化処理を施す。その後、得られた硬化膜を基材から剥離する。この硬化膜を所定の形状に切断し、動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御(株)製DVA−220型)を使用して、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で硬化膜の損失弾性率(E”)を測定し、前記硬化処理温度Tにおける下層用塗料からなる硬化膜の損失弾性率(E”(T))を求める。
前記熱硬化処理時間tにおける下層用塗料からなる塗膜の相対損失弾性率E”(t)は下層用塗料からなる硬化膜の相対損失弾性率とみなすことができることから、上記測定によって得られた下層用塗料からなる塗膜の相対損失弾性率E”(t)およびE”(t)ならびに下層用塗料からなる硬化膜の損失弾性率E”(T)から、下記式(3):
E”(t)=E”(t)×E”(T)/E”(t) (3)
により前記時間tにおける下層用塗料からなる塗膜の損失弾性率(E”(t))を求め、本発明においては、これを「最上層用塗料のゲル化開始時における下層用塗料の損失弾性率」とする。
また、本発明においては、前記熱硬化性樹脂および前記硬化剤の組成や配合比を調整したり、添加剤を配合するなどして、例えばガラス転移温度や架橋密度などを調整することによって、最上層用塗料のゲル化開始時における下層用塗料の損失弾性率を制御することができる。
本発明では最上層用塗料として、加熱処理による硬化反応において実質的に揮発性生成物を生成しない熱硬化型塗料、すなわち、その硬化温度における重量減少率が0.5質量%以下の熱硬化型塗料を使用する。このような重量減少率が小さい熱硬化型塗料を最上層用塗料として使用すると加熱処理による塗膜の収縮を最小限にすることができる。また、このような観点から、重量減少率が0.3質量%以下の塗料が好ましく、0.1質量%以下の塗料より好ましく、揮発性生成物を生成しない塗料(重量減少率が0質量%)が特に好ましい。
最上層用塗料に含まれる基体樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい硬化剤としてはイソシアネート化合物およびイソシアネート樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂および硬化剤はそれぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの基体樹脂と硬化剤とを、重量減少率が前記範囲となるように組み合わせて最上層用塗料を調製する。加熱処理による硬化反応において実質的に揮発性生成物を生成しない前記熱硬化性樹脂と前記硬化剤との組み合わせとしては、水酸基含有アクリル樹脂とイソシアネート化合物および/またはイソシアネート樹脂との組み合わせなどが挙げられる。
前記最上層用塗料の形態は溶剤型、水性のいずれでもよい。また、最上層用塗料の硬化温度は、特に限定されないが、通常40〜200℃であり、60〜160℃であることが好ましい。
このような最上層用塗料のうち、Tgが5℃を超える基体樹脂を含有する熱硬化型塗料が好ましい。最上層用塗料としてTgが前記下限以下の基体樹脂を含有する熱硬化型塗料を用いると積層塗膜の機械的特性や耐久性が低下する傾向にある。最上層用塗料に用いられる基体樹脂のTgは、前記Fox式により算出でき、モノマー組成を調整することによって所定のTgの基体樹脂を得ることができる。
また、前記最上層用塗料には、必要に応じて従来公知の着色顔料や光輝性顔料などが従来公知の範囲で含まれていてもよい。また、各種物性を調整するために粘性制御剤、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤などの各種添加剤を従来公知の範囲で配合してもよい。
本発明の塗装方法では、先ず、前記基材上に前記低Tg熱硬化型塗料を塗布し、必要に応じて乾燥などにより溶媒を蒸発させて未硬化の下層を形成する。下層用塗料を塗布する際、エアスプレー塗装やエアー静電スプレー塗装、回転霧化式静電塗装などの従来公知の方法を適用することができる。
下層の膜厚は所望の用途により適宜設定することができるが、例えば、加熱処理後の膜厚で5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。下層の膜厚が前記下限未満では均一な下層の塗膜が得にくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると最上層の塗膜に含まれる溶媒などを多く吸収する傾向にあるとともに下層自身に含まれる溶媒の揮発も抑制され積層塗膜の外観品質を悪化させる傾向にある。
次に、前記未硬化の下層の上に前記最上層用塗料を塗布し、必要に応じて乾燥などにより溶媒を蒸発させて未硬化の最上層を形成する。最上層用塗料の塗布方法としては、エアスプレー塗装やエアー静電スプレー塗装、回転霧化式静電塗装や回転霧化式静電塗装などの従来公知の方法が挙げられる。
最上層の膜厚は所望の用途により適宜設定することができるが、例えば、加熱処理後の膜厚で15〜60μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。最上層の膜厚が前記下限未満では流動性が不十分であり積層塗膜の外観品質が悪化する傾向にあり、他方、前記上限を超えると流動性が過度に大きくなり鉛直方向に塗装する場合にはタレなどの欠陥が発生する傾向にある。
このようにして、前記下層用塗料および前記最上層用塗料をウェットオンウェットで積層して形成された未硬化積層塗膜に加熱処理(焼き付け処理)を施して各層を硬化させる。本発明の塗装方法において、前記加熱処理は、少なくとも最上層が硬化する温度以上、例えば[前記最上層用塗料の硬化温度−20℃]以上の温度での加熱処理(以下、「高温加熱処理」という)を含んでいることが好ましい。
高温加熱温度は、さらに、[前記最上層用塗料の硬化温度±20℃]の範囲の温度が好ましい。具体的には、最上層用塗料の硬化温度が140℃の場合、高温加熱温度は120℃以上であることが好ましく、120℃以上160℃以下であることが好ましい。高温加熱時間は最上層用塗料の硬化時間の50%以上150%以下であることが好ましく、60%以上100%以下であることが好ましい。具体的には、最上層用塗料の硬化時間が30分の場合、高温加熱時間は15分以上45分以下であることが好ましく、18分以上30分以下であることが好ましい。
また、本発明の塗装方法では、前記高温加熱処理を施す前に最上層を硬化させずに積層塗膜の揮発分濃度を低減することが好ましい。これにより高温加熱処理により最上層が硬化して流動性が著しく低下した後の積層塗膜の収縮を最小限にすることができる傾向にある。
最上層を硬化させずに積層塗膜の揮発分濃度を低減する方法としては、[前記最上層用塗料の硬化温度−20℃]未満の温度で加熱処理(以下「低温加熱処理」という)を施す方法が好ましい。低温加熱温度は、さらに[前記最上層用塗料の硬化温度−30℃]未満の温度が好ましく、[前記最上層用塗料の硬化温度−40℃]未満の温度が特に好ましい。具体的には、最上層用塗料の硬化温度が140℃の場合、低温加熱温度は120℃未満であることが好ましく、110℃未満であることがより好ましく、100℃未満であることが特に好ましい。低温加熱時間は最上層用塗料の硬化時間の10%以上50%未満であることが好ましく、20%以上40%以下であることが好ましい。具体的には、最上層用塗料の硬化時間が30分の場合、低温加熱時間は3分以上15分以下であることが好ましく、6分以上12分以下であることが好ましい。前記低温加熱温度および低温加熱時間の範囲で未硬化積層塗膜を加熱処理すると最上層を実質的には硬化させずに積層塗膜の揮発分濃度を低減することができる傾向にある。
さらに、本発明の塗装方法では、ウェットオンウェットにより積層された未硬化状態の塗膜を安定させるために、前記加熱処理前に室温で静置(セッティング)させることが好ましい。セッティング時間は通常1〜20分に設定される。
また、本発明において、さらに高級な外観を有する塗装体を得るためには、前記塗装方法により得られた塗装体の前記最上層の上にさらに1種以上の塗料を塗布して加熱処理を施し、表面層を形成することが好ましい。前記塗料としては、前記最上層用塗料として例示したものを使用することができる。また、前記塗料の塗布方法としては、エアスプレー塗装やエアー静電スプレー塗装、回転霧化式静電塗装などの従来公知の方法が挙げられる。
本発明の塗装体は、前記本発明の塗装方法により製造されたものであり、積層塗膜表面の凹凸が従来のウェットオンウェットで製造した積層塗膜よりも少なく、外観品質に優れている。このような塗装体は、特に乗用車、トラック、バス、オートバイなどの自動車用車体やその部品として有用である。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、基体樹脂のガラス転移温度(Tg)および塗料の加熱処理による重量減少率は以下の方法により測定した。
<ガラス転移温度の算出>
下記のFox式:
1/Tg=w/Tg+・・・+w/Tg+・・・+w/Tg
(式中、wはモノマーi(i=1〜nの整数)の質量分率を表し、Tgはモノマーi(i=1〜nの整数)のホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。)
を用いて算出した。なお、実施例および比較例で使用したモノマーのホモポリマーのTgを以下に示す。
メチルメタクリレート 105℃
ブチルアクリレート −54℃
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 55℃
スチレン 100℃
アクリル酸 106℃
<重量減少率の測定>
対象とする塗料を加熱処理後の膜厚が積層塗膜の目標膜厚となるようにアルミ箔上に塗装し、得られたアルミ箔試料を最上層用塗料の硬化温度よりも40℃低い温度および10−2Torr以下の真空条件で90分間乾燥した後、加熱脱着導入装置(例えば、GERSTEL社製Thermal Desorption System)付きガスクロマトグラフ/質量分析装置(例えば、Agilent社製6890GC/5975MSD)を用いて最上層用塗料の硬化温度で30分間加熱して揮発性生成物量(Rc(単位:g))と残存溶媒量を定量し、式(1)により重量減少率を算出した。この重量減少率は、塗膜中の全バインダー量に対する前記揮発性生成物量の割合である。
重量減少率=100×Rc/W×100/(100−P) (1)
式(1)中、Wは前記真空乾燥工程で得られた塗膜の質量(単位:g)であり、Pはその塗膜100gに含まれる顔料の質量(単位:g)である。なお、顔料の質量は塗料の配合表の値を使用した。
(合成例1)アクリルエマルションR−1の合成
下記モノマーを混合してモノマー混合液を調製した。
<モノマー混合組成>
メチルメタクリレート 10.7質量部
ブチルアクリレート 203.2質量部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 50.4質量部
スチレン 42.5質量部
アクリル酸 8.2質量部
このモノマー混合液315質量部、n−ドデシルメルカプタン4質量部、水105質量部およびアニオン界面活性剤(日本乳化剤(株)製「ニューコール707−SN」)14質量部を混合し、ミキサーを用いて攪拌して乳化させ、モノマープレエマルションを調製した。
次に、攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器および窒素導入管を備えた通常のアクリル系樹脂エマルション製造用反応容器に、水280質量部、アニオン界面活性剤(日本乳化剤(株)製「ニューコール707−SN」)5.6質量部、および重合開始剤として過硫酸アンモニウム水溶液(過硫酸アンモニウム(Aldrich社製)0.7質量部と水13.3質量部とを攪拌混合して調製したもの)20質量部を仕込み、攪拌しながら80℃に昇温した。この溶液に、前記モノマープレエマルションのうちの5質量%を添加し、80℃で10分間保持した。その後、残りのモノマープレエマルションを4時間かけて攪拌しながら滴下した。滴下終了後、さらに80℃で1時間攪拌を継続して反応させた。その後、水56質量部を添加し、室温まで冷却した。冷却後、10質量%のジメチルエタノールアミン水溶液を用いて反応溶液のpHを7.4に調整し、不揮発分38.1質量%、Tg=−20℃のアクリルエマルションR−1を得た。
(合成例2)アクリルエマルションR−2の合成
下記モノマーを混合してモノマー混合液を調製した。
<モノマー混合組成>
メチルメタクリレート 22.7質量部
ブチルアクリレート 178.6質量部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 50.4質量部
スチレン 55.1質量部
アクリル酸 8.2質量部
合成例1に記載のモノマー混合液の代わりにこのモノマー混合液315質量部を用いた以外は合成例1と同様にして、不揮発分38.1質量%、Tg=−10℃のアクリルエマルションR−2を得た。
(合成例3)アクリルエマルションR−3の合成
下記モノマーを混合してモノマー混合液を調製した。
<モノマー混合組成>
メチルメタクリレート 36.2質量部
ブチルアクリレート 155.6質量部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 50.4質量部
スチレン 64.6質量部
アクリル酸 8.2質量部
合成例1に記載のモノマー混合液の代わりにこのモノマー混合液315質量部を用いた以外は合成例1と同様にして、不揮発分38.1質量%、Tg=0℃のアクリルエマルションR−3を得た。
(合成例4)アクリルエマルションR−4の合成
下記モノマーを混合してモノマー混合液を調製した。
<モノマー混合組成>
メチルメタクリレート 48.8質量部
ブチルアクリレート 133.6質量部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 50.4質量部
スチレン 74.0質量部
アクリル酸 8.2質量部
合成例1に記載のモノマー混合液の代わりにこのモノマー混合液315質量部を用いた以外は合成例1と同様にして、不揮発分38.1質量%、Tg=10℃のアクリルエマルションR−4を得た。
(調製例1)メラミン硬化型水性ベース塗料B−1の調製
容器に、合成例1で得たTg=−20℃のアクリルエマルションR−1を183.7質量部仕込み、これに、攪拌しながらメチル化メラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ(株)製「サイメル325」)40質量部、水150質量部およびブチルグリコール20質量部を加えて5分間攪拌した。さらに、アルカリ増粘剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製「Viscalex HV30」)、ジメチルエタノールアミンおよび水を適量加えて、不揮発分23質量%、pH8.5の水性樹脂溶液を得た。
また、別の容器に、ブチルグリコール53質量部およびリン酸エステル化合物(日本ルーブリゾール(株)製「Lubrizol2062」)5質量部を仕込み、5分間攪拌した。この溶液に、2種類のアルミペースト(Eckart GmbH製「Hydrolan2154」およびEckart GmbH製「Hydrolan2156」)をそれぞれ30質量部添加し、その後、1時間攪拌してアルミペースト溶液を得た。
次に、前記水性樹脂溶液457.7質量部にこのアルミペースト溶液101.6質量部を撹拌しながら添加し、さらに1時間攪拌して不揮発分24.7質量%、pH8.0のメラミン硬化型水性ベース塗料B−1を得た。この水性ベース塗料B−1の140℃での重量減少率は3.6質量%(P=22.4として算出)であった。
(調製例2)メラミン硬化型水性ベース塗料B−2の調製
アクリルエマルションR−1の代わりに合成例2で得たTg=−10℃のアクリルエマルションR−2を183.7質量部用いた以外は調製例1と同様にして、不揮発分24.7質量%、pH8.0のメラミン硬化型水性ベース塗料B−2を得た。この水性ベース塗料B−2の140℃での重量減少率は3.7質量%(P=22.4として算出)であった。
(調製例3)メラミン硬化型水性ベース塗料B−3の調製
アクリルエマルションR−1の代わりに合成例3で得たTg=0℃のアクリルエマルションR−3を183.7質量部用いた以外は調製例1と同様にして、不揮発分24.7質量%、pH8.0のメラミン硬化型水性ベース塗料B−3を得た。この水性ベース塗料B−3の140℃での重量減少率は3.8質量%(P=22.4として算出)であった。
(調製例4)メラミン硬化型水性ベース塗料B−4の調製
アクリルエマルションR−1の代わりに合成例4で得たTg=10℃のアクリルエマルションR−4を183.7質量部用いた以外は調製例1と同様にして、不揮発分24.7質量%、pH8.0のメラミン硬化型水性ベース塗料B−4を得た。この水性ベース塗料B−4の140℃での重量減少率は3.8質量%(P=22.4として算出)であった。
(調製例5)イソシアネート硬化型水性ベース塗料B−5の調製
Tg=−20℃のアクリルエマルションR−1の仕込み量を210質量部に変更し、メチル化メラミン樹脂の代わりに水分散性ポリイソシアネート(DIC(株)製「バーノックDNW5000」)25質量部を用いた以外は調製例1と同様にして、不揮発分24.7質量%、pH8.0のイソシアネート硬化型水性ベース塗料B−5を得た。この水性ベース塗料B−5の140℃での重量減少率は0質量%(P=22.4として算出)であった。
(調製例6)イソシアネート硬化型水性ベース塗料B−6の調製
アクリルエマルションR−1の代わりに合成例2で得たTg=−10℃のアクリルエマルションR−2を210質量部用いた以外は調製例1と同様にして、不揮発分24.7質量%、pH8.0のイソシアネート硬化型水性ベース塗料B−6を得た。この水性ベース塗料B−6の140℃での重量減少率は0質量%(P=22.4として算出)であった。
(調製例7)イソシアネート硬化型水性ベース塗料B−7の調製
アクリルエマルションR−1の代わりに合成例3で得たTg=0℃のアクリルエマルションR−3を210質量部用いた以外は調製例1と同様にして、不揮発分24.7質量%、pH8.0のイソシアネート硬化型水性ベース塗料B−7を得た。この水性ベース塗料B−7の140℃での重量減少率は0質量%(P=22.4として算出)であった。
(調製例8)イソシアネート硬化型水性ベース塗料B−8の調製
アクリルエマルションR−1の代わりに合成例4で得たTg=10℃のアクリルエマルションR−4を210質量部用いた以外は調製例1と同様にして、不揮発分24.7質量%、pH8.0のイソシアネート硬化型水性ベース塗料B−8を得た。この水性ベース塗料B−8の140℃での重量減少率は0質量%(P=22.4として算出)であった。
(調製例9)熱硬化型(イソシアネート硬化型)クリア塗料Cの調製
表1に示す割合でポリオールおよび添加剤を混合して2液型の熱硬化型(イソシアネート硬化型)クリア塗料の主剤80.51質量部を調製した。また、前記熱硬化型クリア塗料の硬化剤として表1に示すイソシアネート硬化剤を使用した。以下の実施例および比較例ではこの主剤と硬化剤とを表1に示す割合で混合したもの(固形分濃度55質量%)を熱硬化型(イソシアネート硬化型)クリア塗料Cとして使用した。この熱硬化型クリア塗料Cの硬化温度は140℃であり、140℃での重量減少率は0質量%(P=0として算出)であった。また、ゲル化が開始するまでの時間tは10.2分であった。
Figure 0005260255
(実施例1)
中塗り塗装および電着塗装を施した鋼板(日本ルートサービス(株)製)の表面に、調製例1で得たメラミン硬化型水性ベース塗料B−1(基体樹脂のTg=−20℃)を、焼き付け後の膜厚が15μmになるように塗装し、80℃で3分間加熱して水および有機溶剤などを揮発させた。次いで、この水性ベース塗料B−1の層の上に調製例9で得た熱硬化型クリア塗料Cを、焼き付け後の膜厚が35μmになるように塗装し、メラミン硬化型水性ベース塗料B−1と熱硬化型クリア塗料Cとをウェットオンウェットで積層した未硬化積層塗膜を得た。なお、前記熱硬化型クリア塗料Cのゲル化開始時における前記水性ベース塗料B−1の損失弾性率は0.20MPaであった。
この未硬化積層塗膜を室温で10分間静置(セッティング)した後、90℃で10分間の加熱処理(焼き付け処理)と140℃で30分間の加熱処理(焼き付け処理)を順次施して各層を硬化させ、積層塗膜を得た。
得られた積層塗膜について、ウェーブスキャン(BYK−Gardner社製「Wave−Scan Dual」)を用いてウェーブスキャン値〔Wa(波長<0.3mm)、Wb(波長0.3〜1mm)、Wc(波長1〜3mm)、Wd(波長3〜10mm)〕を測定した。その結果を表2に示す。これらのウェーブスキャン値は、Waが小さいほど光沢が優れ、Wdが小さいほど肌がよいことを意味する。
(実施例2)
メラミン硬化型水性ベース塗料B−1の代わりに調製例2で得たメラミン硬化型水性ベース塗料B−2(基体樹脂のTg=−10℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Wdを測定した。その結果を表2に示す。なお、前記熱硬化型クリア塗料Cのゲル化開始時における前記水性ベース塗料B−2の損失弾性率は0.45MPaであった。
(実施例3)
メラミン硬化型水性ベース塗料B−1の代わりに調製例3で得たメラミン硬化型水性ベース塗料B−3(基体樹脂のTg=0℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Wdを測定した。その結果を表2に示す。なお、前記熱硬化型クリア塗料Cのゲル化開始時における前記水性ベース塗料B−3の損失弾性率は0.72MPaであった。
(実施例4)
メラミン硬化型水性ベース塗料B−1の代わりに調製例5で得たイソシアネート硬化型水性ベース塗料B−5(基体樹脂のTg=−20℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Wdを測定した。その結果を表2に示す。なお、前記熱硬化型クリア塗料Cのゲル化開始時における前記水性ベース塗料B−5の損失弾性率は0.22MPaであった。
(実施例5)
メラミン硬化型水性ベース塗料B−1の代わりに調製例6で得たイソシアネート硬化型水性ベース塗料B−6(基体樹脂のTg=−10℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Wdを測定した。その結果を表2に示す。なお、前記熱硬化型クリア塗料Cのゲル化開始時における前記水性ベース塗料B−6の損失弾性率は0.48MPaであった。
(実施例6)
メラミン硬化型水性ベース塗料B−1の代わりに調製例7で得たイソシアネート硬化型水性ベース塗料B−7(基体樹脂のTg=0℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Wdを測定した。その結果を表2に示す。なお、前記熱硬化型クリア塗料Cのゲル化開始時における前記水性ベース塗料B−7の損失弾性率は0.78MPaであった。
(比較例1)
メラミン硬化型水性ベース塗料B−1の代わりに調製例4で得たメラミン硬化型水性ベース塗料B−4(基体樹脂のTg=10℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Wdを測定した。その結果を表2に示す。なお、前記熱硬化型クリア塗料Cのゲル化開始時における前記水性ベース塗料B−4の損失弾性率は1.12MPaであった。
(比較例2)
メラミン硬化型水性ベース塗料B−1の代わりに調製例8で得たイソシアネート硬化型水性ベース塗料B−8(基体樹脂のTg=10℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Wdを測定した。その結果を表2に示す。なお、前記熱硬化型クリア塗料Cのゲル化開始時における前記水性ベース塗料B−8の損失弾性率は1.15MPaであった。
Figure 0005260255
表2に示した結果から明らかなように、本発明のように、下層および最上層の各層に熱硬化型塗料を使用し、そのうち、下層用塗料として、ガラス転移温度が5℃以下の基体樹脂を含有する熱硬化型塗料を使用したウェットオンウェットによる積層塗膜(実施例1〜6)のWa〜Wdはいずれも、ガラス転移温度が5℃を超える基体樹脂を含有する熱硬化型塗料を下層用塗料として使用した従来の積層塗膜(比較例1〜2)に比べて小さく、外観品質に優れたものであった。
また、実施例1〜3と比較例1の積層塗膜および実施例4〜6と比較例2の積層塗膜を比較すると、下層用熱硬化型塗料に含まれる基体樹脂のTgが低くなるにつれてWa〜Wdは小さくなり、外観品質がより向上することが確認された。特に、実施例1、2、4、5の積層塗膜においては、非常に優れた外観品質を有するものであることが確認された。
さらに、実施例1〜3の積層塗膜と実施例4〜6の積層塗膜を比較すると、イソシアネート硬化型水性ベース塗料を使用した場合(実施例4〜6)には、メラミン硬化型水性ベース塗料を使用した場合(実施例1〜3)に比べて、Wa〜Wd(特にWa)がより小さくなり、外観品質がさらに向上することが確認された。これは、イソシアネート硬化型水性ベース塗料の140℃での重量減少率がメラミン硬化型水性ベース塗料に比べて小さく、イソシアネート硬化型水性ベース塗料を使用したことによって加熱処理時の塗膜の収縮が抑制されたためであると推察される。
以上説明したように、本発明によれば、2種類の塗料をウェットオンウェットで積層して焼き付けて各層を硬化させても、最上層表面の凹凸が少ない積層塗膜を得ることができる。これにより、肌(表面平滑性)や光沢など外観品質により優れた塗装体を得ることができる。
したがって、本発明は、2種類の塗料をウェットオンウェットで積層して焼き付ける場合においても外観品質に優れた塗装体を得ることができる塗装方法として有用であり、特に乗用車、トラック、バス、オートバイなどの自動車用車体やその部品の塗装方法として有用である。
相対貯蔵弾性率(E’)および相対損失弾性率(E”)の経時変化を示すグラフである。
符号の説明
P…変曲点、t…最上層用塗料について相対貯蔵弾性率の測定を開始してからゲル化が開始するまでの時間。

Claims (4)

  1. 基材上に形成された下層と前記下層上に形成された最上層とを備える積層塗膜を形成する塗装方法であって、
    記最上層を形成するための最上層用塗料としてその硬化温度における重量減少率が0.5質量%以下の熱硬化型塗料を準備し、前記下層を形成するための下層用塗料としてガラス転移温度が5℃以下の基体樹脂を含有し且つ前記最上層用塗料のゲル化開始時における損失弾性率が1MPa以下である熱硬化型塗料を準備する工程と、
    前記基材上に前記下層用塗料および前記最上層用塗料をウェットオンウェットで積層して未硬化積層塗膜を形成する工程と、
    前記未硬化積層塗膜に加熱処理を施して前記下層用塗料および前記最上層用塗料を硬化させる工程と、
    を含むことを特徴とする塗装方法。
  2. 前記下層用塗料は、前記最上層用塗料の硬化温度における重量減少率が0.5質量%以下の塗料であることを特徴とする請求項1に記載の塗装方法。
  3. 前記未硬化積層塗膜に[前記最上層用塗料の硬化温度−20℃]未満の温度で加熱処理を施し、次いで[前記最上層用塗料の硬化温度−20℃]以上の温度で加熱処理を施すことを特徴とする請求項1または2に記載の塗装方法。
  4. 基材上に形成された下層と前記下層上に形成された最上層とを備える積層塗膜を有する塗装体であって、請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の塗装方法により得られたものであることを特徴とする塗装体。
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