電子写真方式の画像形成装置には、感光ドラムが設けられており、画像形成を行う際には、感光ドラムの表面を所定の電位に均一に帯電させる帯電処理が行われる。この帯電処理には、例えば、帯電ローラを感光ドラムの表面に当接させ、この帯電ローラに電圧を印加して感光ドラムの表面を帯電させる接触帯電方式が用いられる。接触帯電方式においては、感光ドラムの表面を所望の電位Vdに帯電させるために、帯電ローラには、電圧値Vd+Vthの直流電圧が印加される。ここで、電圧値Vthは、帯電ローラに直流電圧を印加したときの被帯電体である感光ドラムへの放電開始電圧である。
また、感光ドラムに対する帯電の均一化をさらに図るために、AC帯電方式と呼ばれる帯電方式が用いられる(特許文献1参照)。このAC帯電方式は、所望の電位Vdに相当する電圧値の直流電圧に、電圧値Vthの2倍以上のピークツピーク電圧値(p−p電圧値)を有する交流電圧を重畳した帯電電圧を、帯電ローラに印加する方式である。このAC帯電方式の場合、上記交流電圧を重畳することにより、プラス側、マイナス側への放電が交互に起こり、感光ドラムの表面を均一に帯電させることができる。
ここで、正弦波の交流電圧を上記帯電ローラに印加した場合、帯電ローラと感光ドラム間の抵抗性負荷に流れる抵抗性負荷電流、帯電ローラと感光ドラム間の容量性負荷に流れる容量性負荷電流、帯電ローラと感光ドラム間の放電電流のそれぞれが流れる。即ち、これらの電流を合計したものが、帯電ローラに流れることになる。この際、安定した帯電を得るために、放電電流量を所定量以上にすることが経験的に知られている。
しかし、必要以上の量の放電電流が流れると、感光ドラムが削られるなどして感光ドラムの劣化が促進され、また、放電生成物による高温高湿環境での画像流れなどの異常画像が発生する。このような感光ドラムの劣化の促進、異常画像の発生を抑制するためには、プラス側、マイナス側に交互に起こる放電を最小限にするような、交流電圧を印加することが望ましい。
ここで、正弦波の交流電圧の電圧値Vcと当該交流電圧を帯電ローラに印加した際に感光ドラムを介して帯電ローラに流れる電流の電流値Icの関係について図6を参照しながら説明する。図6は正弦波の交流電圧の電圧値(p−p電圧値)Vcと当該交流電圧を帯電ローラに印加した際に感光ドラムを介して帯電ローラに流れる交流電圧の電流値Icとの関係を示す図である。図6の横軸は、帯電ローラに印加する正弦波の交流電圧の電圧値(p−p電圧値)Vcを示し、縦軸は、帯電ローラに流れる交流電圧の電流値Ic(実効値)を示す。
図6に示すように、帯電ローラに印加する交流電圧の電圧値Vc(振幅)を徐々に大きくすると、これに伴い帯電ローラに流れる交流電圧の電流値Icは大きくなる。ここで、上記交流電圧の電圧値Vcが所定電圧値(Vth×2)以下である場合、上記電圧値Vcと電流値Icは、ほぼ比例の関係にある。これは、帯電ローラと感光ドラム間の抵抗性負荷と容量性負荷に対して流れる電流が、上記交流電圧の電圧値Vcに比例するためである。そして、上記交流電圧の電圧値Vcを、所定電圧値(Vth×2)を超えるほどに大きくすると、帯電ローラと感光ドラム間で放電が始まり、放電電流値Isの分、電流値Icは大きくなる。
このような交流電圧の電圧値Vcと帯電ローラに流れる交流電圧の電流値Icの関係は、実際には常に一定ではなく、感光ドラムの膜厚、帯電ローラの長期通電による劣化の度合い、環境温度などにより変化する。例えば、帯電ローラの長時間の使用により、そのインピーダンスが上昇すると、同じ電圧値Vcに対して、帯電ローラに流れる交流電圧の電流値Icは小さくなる。
また、低温低湿環境(L/L)下においては、材料が乾燥して抵抗値が上昇し、放電し難くなるため、均一な帯電を得るために、交流電圧の電圧値Vc(振幅)を大きくする必要がある。逆に高温高湿環境(H/H)下においては、材料が吸湿し抵抗値が低下するため、同じ電圧値Vcに対して、帯電ローラと感光ドラム間で、必要以上の放電を起こすことになる。
そこで、長期に亘り、高品質な画像を安定して供給するためには、過剰放電を起こさず、均一な帯電を行うことができるように、帯電ローラに印加する交流電圧の電圧値および帯電ローラに流れる交流電圧の電流値を制御する必要がある。この制御方法として、画像形成時に所望の放電電流量を得るための交流電圧の電圧値を決定する放電電流制御方法が提案されている(特許文献2参照)。
上記放電電流制御方法においては、非画像形成時において、電圧値Vthの2倍未満の異なる電圧値Vcを有する交流電圧のそれぞれが帯電ローラに印加され、それぞれの交流電圧の印加時に帯電ローラに流れる交流電圧の電流値Icが測定される。また、電圧値Vthの2倍以上の異なる電圧値Vcを有する交流電圧のそれぞれが帯電ローラに印加され、それぞれの交流電圧の印加時に帯電ローラに流れる交流電圧の電流値Icが測定される。そして、帯電ローラに印加された交流電圧の各電圧値Vcと測定された各電流値Icの関係から、所望の放電電流量が得られる交流電圧の電圧値が決定される。この制御方法を用いれば、環境変動、帯電ローラの長期通電による劣化度合いの変化、製造のばらつきなどに関係なく、所望の放電電流量が得られる電圧値の交流電圧を帯電ローラに印加することができる。
上記放電電流制御方法の場合、時間の経過とともに環境は変動し、帯電ローラの長期通電による劣化度合いは変化するので、所望の放電電流量を常に維持するためには、一定時間毎または一定の画像形成枚数毎に当該制御を行う必要がある。よって、例えば連続動作中に上記放電電流制御を行うタイミングが到来する場合がある。この場合、画像形成動作が一旦中断されることになるので、生産性が落ち、ユーザの利便性を損なうことになる。
そこで、交流電圧の電圧値と電流値の関係が変化することに伴う放電電流量の変化を小さく抑えるためには、定電流方式により、画像形成時において交流電圧の電圧値を制御する方法が好ましい。この方法によれば、連続動作に伴う機内昇温により帯電ローラの抵抗が低下した場合、交流電圧の電圧値が低くされるので、定電圧方式に比して放電電流量を小さくすることができる。
即ち、上記放電電流制御により、交流電圧の電圧値を、所望の放電電流量が得られる交流電圧の電圧値に制御するための定電流制御値を決定し、この定電流制御値を用いて定電流制御を行う方法が好ましい。この方法を用いることによって、放電電流制御を行う間隔を広くすることができ、生産性の低下を抑えることができる。
また、ユーザのニーズの多様化に伴い、厚紙、OHPなどの多種の用紙に対して画像形成を可能にすること、高解像度化(高画素密度化)などが要求されている。この要求に対応するために、複数のプロセススピードの中から、使用する用紙に応じたプロセススピードを選択し、当該選択されたプロセススピードで画像形成を行う装置が登場している。
ここで、プロセススピードのそれぞれに対して、帯電ローラに印加する交流電圧の周波数が対応付けられている。例えば通常のプロセススピードPS1の1/2のスピードPS2が選択された場合、帯電ローラに印加する交流電圧の周波数を、プロセススピードPS1の周波数の1/2の周波数にすることが求められる。これは、帯電ローラと感光ドラム間においては、交流電圧の周波数分に対応する回数の放電が発生するからである。よって、プロセススピードPS2が選択された場合において、交流電圧の周波数をプロセススピードPS1に保持すると、プロセススピードPS1の周波数の1/2の周波数にした場合に比して、帯電ローラと感光ドラム間の放電回数が2倍になる。その結果、感光ドラムのけずれの度合いが増し、感光ドラムの劣化が促進されるとともに、放電生成物による高温高湿環境での画像流れなどの異常画像が多く発生することになる。
特開昭63−149668号公報
特開2001−201921公報
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の構成を模式的に示す縦断面図である。図2は図1の帯電ローラに印加する帯電電圧を生成する帯電電圧生成回路と該帯電生成回路を制御する制御部との構成を示すブロック図である。
本実施の形態の画像形成装置100は、図1に示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーによりカラー画像を形成する電子写真方式の画像形成装置からなる。この画像形成装置100は、各色のトナー像をそれぞれ形成するための複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kを備える。各画像形成ユニット1Y〜1Kは、画像信号に基づいて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のうち、対応する色のトナー像をそれぞれ形成する。
画像形成ユニット1Yは、像担持体である感光ドラム1、帯電部材である帯電ローラ2、レーザ露光装置3、現像器4および一次転写ローラ5を有する。
ここで、帯電ローラ2は、感光ドラム1と接触され、感光ドラム1の回転に従動して回転する。帯電ローラ2には帯電電圧が印加され、この帯電ローラ2を介して感光ドラム1の表面は、所定の電位(マイナスの電位)に均一に帯電される。本実施の形態においては、AC帯電方式が用いられ、直流電圧(例えば−300V〜−900V)に、後述するプロセススピードに対応する周波数を有する正弦波の交流電圧(1300V〜2000V)が重畳されている帯電電圧が帯電ローラ2に印加される。
また、本実施の形態においては、帯電部材として感光ドラム1に接触する帯電ローラが用いられているが、これに代えて、他の形状のものを用いることも可能である。また、帯電部材と感光ドラム1間の放電が保障されていれば、当該帯電部材を感光ドラム1と近接して配置する(両者の間に例えば10μm程度の間隙を空けて配置する)ことも可能である。
レーザ露光装置3は、画像信号に基づいてレーザ光を変調する。そして、レーザ露光装置3は、上記変調されたレーザ光を感光ドラム1に照射し、感光ドラム1の表面を露光走査する。これにより、感光ドラム1の表面には、対応する色即ちイエローの静電潜像が形成される。
現像器4は、現像スリーブ4aを有し、現像スリーブ4aは、イエローのトナーを感光ドラム1に供給するように回転する。ここで、現像スリーブ4aには、−150V〜−700Vの直流電圧に1000V〜2000Vの交流電圧が重畳されている現像電圧が印加される。これにより、負の電位に帯電されているトナーが感光ドラム1に供給され、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像がイエローのトナー像に現像される。
一次転写ローラ5は、感光ドラム1の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト6に転写させるためのローラであって、中間転写ベルト6の移動に従動して回転される。一次転写ローラ5には、トナーと逆電位の直流電圧が一次転写電圧として印加され、感光ドラム1の表面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト6に転写される。
各画像形成ユニット1M,1C,1Kは、画像形成ユニット1Yと同様に、感光ドラム1、帯電ローラ2、レーザ露光装置3、現像器4および一次転写ローラ5を有する。各画像形成ユニット1M,1C,1Kは、それぞれ、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のうち、対応する色のトナー像をそれぞれ形成し、中間転写ベルト6に転写する。
各画像形成ユニット1Y〜1Kによりそれぞれ形成されたトナー像は、中間転写ベルト6に順に重ね合わされて転写される(一次転写)。これにより、中間転写ベルト6上には、カラーのトナー像が形成されて担持されることになる。中間転写ベルト6に担持されたトナー像は、+500V〜+7000Vの電圧が印加されている二次転写ローラ8により、当該二次転写ローラ8と中間転写ベルト6を介して対向する転写対向ローラ7の間に送り込まれた用紙P上に転写される(二次転写)。ここで、用紙Pは、給紙カセット10に収納されており、所定のタイミングに合わせて、給紙カセット10から二次転写ローラ8と転写対向ローラ7の間に送られる。
トナー像が転写された用紙Pは、定着器11に送られる。定着器11は、用紙P上のトナー像を加熱、加圧し、当該トナー像を用紙P上に定着させる。トナー像が定着された用紙Pは、搬送パス12および排紙ローラ13を経て、排紙トレイ14上に排紙される。
ここで、各画像形成ユニット1Y〜1Kの感光ドラム1は、図中の矢印の方向に、プロセススピードと呼ばれる回転速度(感光ドラム1の表面の線速度)で回転される。本実施の形態においては、画像形成条件の1つのである画像形成に使用する用紙の坪量(厚さ)に応じて、複数のプロセススピードPS1,PS2のうち、対応するプロセススピードが選択され、選択されたプロセススピードで感光ドラム1が回転される。即ち、選択されたプロセススピードで画像形成が行われる。プロセススピードPS1は、最大のプロセススピードであって、例えば150mm/secである。プロセススピードPS2は、プロセススピードPS1の1/2のスピードであって、75mm/secである。
例えば坪量100g以下の用紙(例えば普通紙)に対しては、プロセススピードPS1が選択され、坪量100gを超える用紙(例えば厚紙)に対しては、当該用紙が厚いことによる定着性能の不足を補うためにプロセススピードPS2が選択される。また、プロセススピードPS1が選択された場合、直流電圧に1800Hzの周波数の交流電圧が重畳されている帯電電圧が、各画像形成ユニット1Y〜1Kの帯電ローラ2に印加される。プロセススピードPS2が選択された場合、直流電圧に900Hzの周波数の交流電圧が重畳されている帯電電圧が、各画像形成ユニット1Y〜1Kの帯電ローラ2に印加される。
画像形成ユニット1Yには、図2に示すように、帯電電圧生成回路201が設けられている。帯電電圧生成回路201は、帯電ローラ2と共働して、直流電圧に上記選択されたプロセススピードに対応する周波数の交流電圧を重畳して帯電ローラ2に印加する帯電手段を構成する。
帯電電圧生成回路201は、直流電圧を生成する直流電圧生成回路202および直流電圧生成回路202により生成された直流電圧に重畳する正弦波の交流電圧を生成する交流電圧生成回路203を有する。交流電圧生成回路203は、生成した交流電圧を上記直流電圧に重畳し、その電圧を帯電電圧として出力する。交流電圧生成回路203には、交流電圧生成部206、定電圧制御回路207、定電流制御回路208が含まれる。また、交流電圧生成部206には、帯電ローラ2に帯電電圧が印加されたときに帯電ローラ2に流れる交流電圧の電流値を検出する検出回路206aを含み、検出回路206aは、検出した電流値を示す検出信号Sig5を出力する。更に、交流電圧生成部206には、交流電圧の電圧値を検出する検出回路206bを含み、検出回路206bは、検出した電圧値を示す検出信号Sig6を出力する。
後に述べる放電電流制御等において、交流電圧生成回路203は、その出力の交流電圧の振幅が一定になるよう、定電圧動作を行う。定電圧動作において、定電圧制御回路207は、定電圧制御信号Sig2で指示された目標電圧と、電圧検出回路206bが検出し出力した電圧検出信号Sig6が示す電圧値が同じになるように、電圧制御信号Sig7を制御する。
画像形成動作中は、交流電圧生成回路203は、その出力の交流電圧の電流値が一定になるよう、定電流動作を行う。定電流動作において、定電流制御回路208は、定電流制御信号Sig3で指示された目標電流と、電流検出回路206aが検出し出力した電流検出信号Sig5が示す電流値が同じになるように、電圧制御信号Sig7を制御する。
直流電圧生成回路202が生成する直流電圧の電圧値および交流電圧生成回路203が生成する交流電圧の電圧値および周波数は、制御部204により制御される。
制御部204は、CPU204a、ROM204b、RAM204cを含み、CPU204aは、ROM204bに格納されているプログラムに従い、RAM204cを作業領域として、装置全体の制御を行うとともに、放電電流制御を行う。この放電電流制御の詳細については、後述する。
制御部204(CPU204a)は、画像形成時に、直流電圧生成回路202が生成する直流電圧の電圧値を所定の電圧値に制御するための制御信号Sig1を直流電圧生成回路202に出力する。
また、制御部204は、交流電流生成回路203が生成する交流電圧の周波数を設定するための制御信号Sig4を出力する。ここで、画像形成時のプロセススピードとしてプロセススピードPS1が選択された場合、交流電流生成回路203が生成する交流電圧の周波数を1800Hzに設定するための制御信号Sig4が出力される。また、プロセススピードPS2が選択された場合、交流電流生成回路203が生成する交流電圧の周波数を900Hzに設定するための制御信号Sig4が出力される。また、制御信号Sig4は、後述するプロセススピードPS1に対する定電流制御値を決定するための放電電流制御時またはプロセススピードPS2に対する定電流制御値の決定時のプロセススピードに対応する周波数を設定する際に出力される。
また、制御部204は、交流電圧生成回路203が生成する交流電圧の電圧値(p−p電圧値)Vcを所定の電圧値(p−p電圧値)に制御するための制御信号Sig2を出力する。この制御信号S2は、プロセススピードPS1に対する定電流制御値を決定するための放電電流制御時またはプロセススピードPS2に対する定電流制御値の決定時に出力される。
また、制御部204は、画像形成時、交流電圧生成回路203の上記検出回路206aから出力された検出信号Sig5を取り込み、当該検出信号Sig5に基づいて、帯電ローラ2に流れる電流の平均値を算出する。ここで、上記帯電ローラ2に流れる電流の平均値を用いるのは、正弦波の交流電圧が重畳されている帯電電圧に関しては、その波形歪みが大きくなければ、帯電ローラ2に流れる電流の実効値と平均値がほぼ比例するからである。
制御部204には、画像形成装置100内の温度および湿度を検知するための環境センサ205が接続されている。環境センサ205が検知した湿度および温度は、後述する放電電流制御において、交流電圧生成回路203が生成する交流電圧の電圧値の決定に用いられる。そして、制御部204は、上記制御信号S2により、上記決定された電圧値の交流電圧を生成するように、交流電圧生成回路203を制御する。
次に、上記放電電流制御について図3を参照しながら説明する。図3は図2の制御部204が放電電流制御を行う際の帯電電圧の電圧値と帯電ローラ2に流れる電流値との関係を模式的に示す図である。
本実施の形態の放電電流制御においては、図3に示すように、まず、帯電ローラ2に印加する交流電圧の電圧値Vcとして、電圧値Vth×2未満の領域(未放電領域)において、異なる2つの電圧値V1,V2が決定される。また、電圧値Vth×2以上の領域(放電領域)においては、異なる2つの電圧値V3,V4が決定される。この電圧値V1〜V4の決定は、制御部204により、温度および湿度と電圧値が対応付けられている環境テーブルと、環境センサ205が検出した温度および湿度に基づいて行われる。上記環境テーブルは、ROM204bに予め保持されている。ここで、各電圧値V1〜V4に関しては、環境が低温低湿環境(L/L環境)にあれば、それぞれが高い電圧値に決定され、高温高湿環境(H/H環境)にあれば、それぞれが低い電圧値に決定される。
次いで、プロセススピードとして、最大のプロセススピードであるプロセススピードPS1が選択され、プロセススピードPS1で感光ドラム1が回転され、帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転に従動して回転する。
交流電圧生成回路203は、制御信号Sig4および制御信号Sig2に基づいて、プロセススピードPS1に対応する1800Hzの周波数で、上記決定された電圧値V1〜V4の交流電圧をそれぞれ生成する。生成された電圧値V1〜V4の交流電圧のそれぞれは、順に帯電ローラ2に印加される。そして、電圧値V1〜V4の交流電圧がそれぞれ印加されたときの検出回路203aからの検出信号Sig5により、帯電ローラ2に流れる電流の電流値I1,I2,I3,I4が取得される。
各電圧値V1〜V4と各電流値I1〜I4は、対応付けられてRAM204aに保持される。ここで、電流値の検出が行われた点をP1〜P4とすると、各点P1〜P4は、(V1,I1)、(V2,I2)、(V3,I3)、(V4,I4)のそれぞれで表されることになる。
次いで、各電圧値V1〜V4の帯電電圧がそれぞれ印加されたときの帯電ローラ2に流れる電流の電流値I1〜I4に基づいて、プロセススピードPS1に対する定電流制御値が決定される。また、プロセススピードPS1の1/2であるプロセススピードPS2に対する定電流制御値が決定される。
プロセススピードPS1に対する定電流制御値の決定においては、まず、点P1(V1,I1)と点P2(V2,I2)を結ぶ直線L1が求められ、点P3(V3,I3)と点P4(V4,I4)を結ぶ直線L2が求められる。そして、直線L1と直線L2の交点が求められ、当該交点が放電開始点Pcとされる。また、放電開始点Pcより高い電圧領域において、直線L1に対して電流値の差Is(所定の放電電流量)が60uAとなる直線L2上の点P5、即ち、当該点P5の帯電電圧の電圧値V5と電流値I5が求められる。この求められた電圧値V5は、感光ドラム1と帯電ローラ2間の放電電流量を所定の放電電流量Isとする電圧値であり、電流値I5は、プロセススピードPS1に対する定電流制御値として決定される電流値である。
プロセススピードPS1に対する定電流制御値が決定されると、続いて、プロセススピードPS2に対する定電流制御値が決定される。プロセススピードPS2の定電流制御値の決定においては、制御信号Sig4により、交流電圧生成回路203が生成する交流電圧の周波数が、プロセススピードPS2に対応する周波数である900Hzに設定される。但し、感光ドラム1の回転速度は変更せずに、通常のプロセススピードPS1に保持される。
次いで、周波数が900Hzで電圧値がV5の交流電圧が帯電ローラ2に印加され、ことのときに帯電ローラ2に流れる電流の電流値I6が、検出回路203aからの検出信号S5から、取得される。この電流値I6は、プロセススピードPS2に対する定電流制御値として決定される電流値である。
このように、本実施の形態においては、放電電流制御により、プロセススピードPS1に対応する周波数の交流電圧に対して得られた交流電圧の電圧値と電流値に基づいて、プロセススピードPS1,PS2のそれぞれに対する定電流制御値が決定される。よって、プロセススピードPS1,PS2のそれぞれを決定するための放電電流制御を行う必要がなく、放電電流制御に要する時間を短縮することができる。
また、プロセススピードPS2で画像形成を行う際の定電流制御値を決定する際には、交流電圧の周波数をプロセススピードPS2に対応する周波数に設定するが、電圧値Vth×2未満の電圧領域(未放電領域)における電流値の検出を行う必要がない。よって、電圧値Vth×2未満の電圧領域における電流値Icの検出精度を考慮する必要がない。
次に、制御部204による制御について図4を参照しながら説明する。図4は図2の制御部204による放電電流制御を含む制御の手順を示すフローチャートである。図4のフローチャートに示す手順は、CPU204aにより、ROM204bに格納されているプログラムに従って実行されるものである。
画像形成装置100に電源が投入されると、図4に示すように、制御部204(CPU204a)は、まず、画像形成装置100を画像形成可能な状態にするための初期化処理を行う(ステップS1)。この初期化処理により、感光ドラム2、中間転写ベルト6、帯電電圧生成回路201などが動作可能な状態になる。
次いで、制御部204は、上述したプロセススピードPS1に対する定電流制御値を決定するための放電電流制御を行い、当該放電電流制御により得られた結果に基づいてプロセススピードPS1に対する定電流制御値を決定する(ステップS2)。また、制御部204は、上記放電電流制御により得られた結果を用いてプロセススピードPS2に対する定電流制御値を決定する。続いて、制御部204は、内蔵するタイマ(図示せず)の計時時間tと画像形成枚数をカウントするカウンタ(図示せず)のカウント値nをそれぞれ「0」にリセットする(ステップS3)。そして、制御部204は、画像形成装置100を、ユーザからの原稿コピー指示または外部PC(パーソナルコンピュータ)からのプリント指示などのジョブ開始指示の入力を受け付け可能なスタンバイ状態へ移行させる(ステップS4)。このスタンバイ状態においては、上記タイマの計時時間tの監視および上記ジョブ開始指示の入力などが監視されている。
次いで、制御部204は、タイマの計時時間tが60分を超えたか否かを判定する(ステップS5)。ここで、タイマの計時時間tが60分を超えてないと判定された場合、制御部204は、上記ジョブ開始指示が入力されたか否かを判定する(ステップS6)。上記ジョブ開始指示が入力されていないと判定された場合、制御部204は、上記ステップS4に戻り、スタンバイ状態を保持する。
上記ジョブ開始指示が入力されることなく、上記ステップS5においてタイマの計時時間tが60分を超えたと判定された場合、制御部204は、上記ステップS2に戻る。これは、時間の経過に伴う環境変動などにより、帯電ローラ2のインピーダンスが変動する可能性があるからである。
タイマの計時時間tが60分を超える前に、上記ステップS6において上記ジョブ開始指示が入力されたと判定された場合、制御部204は、上記入力されたジョブ開始指示に対応する画像形成動作を実行するように制御する(ステップS7)。ここでは、画像形成に使用される用紙の坪量(厚さ)に基づいて、プロセススピードPS1またはプロセススピードPS2の一方が選択され、選択されたプロセススピードで、ページ単位での画像形成が行われる。ここで、用紙の坪量の認識の方法としては、例えば用紙の種類と坪量を対応付けたテーブルを予め保持しておき、当該テーブルを参照してジョブの入力の際に設定された用紙の種類から当該用紙の坪量を認識する方法を用いることができる。また、1ページの画像形成が終了する毎に、上記カウンタのカウント値nが+1インクリメントされる。
また、直流電圧生成回路202に対しては、制御信号Sig1により、直流電圧の電圧値が所定の電圧値になるように制御される。交流電圧生成回路203に対しては、制御信号Sig4により交流電圧の周波数が選択されたプロセススピードに対応する周波数になるように設定される。交流電圧生成回路203に対しては、制御信号S3により、上記選択されたプロセススピードに対して決定された定電流制御値が指示され、定電流制御回路208により交流電圧生成回路203が生成する交流電圧の電圧値が制御される。
1ページの画像形成が終了すると、制御部204は、最終ページの画像形成が終了したか否かを判定する(ステップS8)。最終ページの画像形成が終了していないと判定された場合、制御部204は、カウンタのカウント値nが200枚以上に達したか否かまたはタイマの計時時間tが60分を超えたか否かの判定を行う(ステップS9)。上記カウンタのカウント値nが200枚以上に達しておらずかつタイマの計時時間tが60分を超えていないと判定された場合、制御部204は、上記ステップS7に戻り、次ページの画像形成を行うように制御する。
上記ステップS9においてページカウンタのカウント値nが200枚以上に達しているまたはタイマの計時時間tが60分を超えていると判定された場合、制御部204は、画像形成動作に放電電流制御を割り込ませ、当該放電電流制御を行う(ステップS10)。ここでは、上述したように、通常のプロセススピードPS1で感光ドラム1が回転される。
次いで、制御部204は、上記タイマの計時時間tと上記カウンタのカウント値nをそれぞれ「0」にリセットし(ステップS11)、上記ステップS7に戻り、次ページに対する画像形成動作を行う。
ページカウンタのカウント値nが200枚に達する前でかつタイマの計時時間tが60分を超える前に、上記ステップS8において最終ページの画像形成が終了していないと判定された場合、制御部204は、上記ステップS4に戻る。
このように、本実施の形態によれば、プロセススピードPS1に対する放電電流制御のみで、プロセススピードPS1,PS2のそれぞれに対する定電流制御値を決定することができ、生産性の向上を図ることができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図5を参照しながら説明する。図5は本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置の放電電流制御を含む制御の手順を示すフローチャートである。
ここで、本実施の形態は、上記第1の実施の形態と同じ構成を有し、その説明は省略する。また、本実施の形態においては、上記第1の実施の形態と異なる点を説明し、その説明には、上記第1の実施の形態と同じ符号を用いる。
本実施の形態は、上記第1の実施の形態と同じ手順で、プロセススピードPS1に対する定電流制御値を決定するが、これに合わせてプロセススピードPS2に対する定電流制御値を決定しない。即ち、本実施の形態においては、画像形成時に用紙の坪量(厚さ)に応じてプロセススピードPS2が選択された場合に、プロセススピードPS2に対する定電流制御値を決定する。この点で、本実施の形態と上記第1の実施の形態とは異なる。
プロセススピードPS2に対する定電流制御値を決定する手順について上記第1の実施の形態において用いた図3を参照しながら説明する。
本実施の形態においては、画像形成時に用紙の坪量(厚さ)に応じてプロセススピードPS2が選択された場合にプロセススピードPS2に対する定電流制御値を決定するので、このときには、プロセススピードPS2が選択されている。よって、プロセススピードPS2で感光ドラム1が回転される。
また、制御信号Sig4により、交流電圧生成回路203が生成する交流電圧の周波数がプロセススピードPS2に対応する周波数である900Hzに設定される。また、制御信号Sig2により、交流電圧の電圧値が、プロセススピードPS1に対する定電流制御値として決定された電流値I5に対応する電圧値V5になるように制御される。
そして、図3に示すように、周波数が900Hzで上記電圧値V5の交流電圧が帯電ローラ2に印加され、当該交流電圧が印加されたときの検出信号Sig5から、帯電ローラ2に流れる電流の電流値I6が取得される。この電流値I6が、プロセススピードPS2で画像形成を行う際の定電流制御値として決定される電流値となる。
次に、制御部204による制御について図5を参照しながら説明する。図5のフローチャートに示す手順は、CPU204aにより、ROM204bに格納されているプログラムに従って実行されるものである。
画像形成装置100に電源が投入されると、図5に示すように、制御部204(CPU204a)は、まず、画像形成装置100を画像形成可能な状態にするための初期化処理を行う(ステップS21)。この初期化処理により、感光ドラム2、中間転写ベルト6、帯電電圧生成回路201などが動作可能な状態になる。
次いで、制御部204は、上述したプロセススピードPS1に対する定電流制御値を決定するための放電電流制御を行い、プロセススピードPS1に対する定電流制御値を決定する(ステップS22)。但し、ここでは、プロセススピードPS2に対する定電流制御値は決定されない。続いて、制御部204は、タイマの計時時間tとカウンタのカウント値nをそれぞれ「0」にリセットする(ステップS23)。そして、制御部204は、画像形成装置100を、ジョブ開始指示の入力を受け付け可能なスタンバイ状態へ移行させる(ステップS24)。
次いで、制御部204は、タイマの計時時間tが60分を超えたか否かを判定する(ステップS25)。ここで、タイマの計時時間tが60分を超えてないと判定された場合、制御部204は、上記ジョブ開始指示が入力されたか否かを判定する(ステップS26)。上記ジョブ開始指示が入力されていないと判定された場合、制御部204は、上記ステップS24に戻り、タイマの計時時間tを監視する。
上記ジョブ開始指示が入力されることなく、上記ステップS25においてタイマの計時時間tが60分を超えたと判定された場合、制御部204は、上記ステップS22に戻る。
タイマの計時時間tが60分を超える前に、上記ステップS26において上記ジョブ開始指示が入力されたと判定された場合、制御部204は、画像形成に使用される用紙の坪量が100gを超えているか否かを判定する(ステップS27)。上記用紙の坪量が100gを超えていると判定された場合、制御部204は、プロセススピードとしてプロセススピードPS2を選択し、当該プロセススピードPS2に対する定電流制御値を決定する(ステップS28)。ここでは、上述したように、プロセススピードPS2で感光ドラムが回転され、周波数が900Hzで電圧値V5の帯電電圧が帯電ローラ2に印加される。そして、帯電ローラ2に流れる電流の電流値I6が検出され、この電流値I6が、プロセススピードPS2に対する定電流制御値として決定される。
次いで、制御部204は、上記入力されたジョブ開始指示に対応する画像形成動作を実行するように制御する(ステップS29)。ここでは、画像形成に使用される用紙の坪量(厚さ)が100gを超えていることによって、プロセススピードPS2が既に選択されている状態にある。そして、プロセススピードPS2での画像形成が行われるとともに、上記ステップS28で求められた定電流制御値を用いて交流電圧の電圧値が制御される。また、1ページの画像形成が終了すると、カウンタのカウント値nが「+1」インクリメントされる。
1ページの画像形成が終了すると、制御部204は、最終ページの画像形成が終了したか否かを判定する(ステップS30)。最終ページの画像形成が終了していないと判定された場合、制御部204は、ページカウンタのカウント値nが200枚以上に達したか否かまたはタイマの計時時間tが60分を超えたか否かの判定を行う(ステップS31)。ページカウンタのカウント値nが200に達しておらずかつタイマの計時時間tが60分を超えていないと判定された場合、制御部204は、上記ステップS29に戻り、次ページの画像形成を行うように制御する。
上記ステップS31においてカウンタのカウント値nが200枚に達しているまたはタイマの計時時間tが60分を超えていると判定された場合、制御部204は、画像形成動作に放電電流制御を割り込ませ、当該放電電流制御を行う(ステップS32)。ここでは、上記ステップS22と同じように、プロセススピードPS1に対する定電流制御値を決定するための放電電流制御とその定電流制御値の決定が行われる。そして、制御部204は、タイマの計時時間tとカウンタのカウント値nをそれぞれ「0」にリセットし(ステップS33)、上記ステップS27に戻る。
ページカウンタのカウント値nが200枚以上に達する前でかつタイマの計時時間tが60分を超える前に、上記ステップS30において最終ページの画像形成が終了したと判定された場合、制御部204は、上記ステップS24に戻る。
上記ステップS27において上記用紙の坪量が100gを超えていないと判定された場合、制御部204は、上記ステップS28をスキップして、ステップS29に進み、上記入力されたジョブ開始指示に対応する画像形成動作を実行するように制御する。ここでは、画像形成に使用される用紙の坪量(厚さ)が100gを超えていないので、プロセススピードPS1が選択され、当該プロセススピードPS1での画像形成が行われる。また、上記ステップS22またはステップS32で決定された定電流制御値を用いて交流電圧の電圧値が制御される。そして、制御部204は、ステップS30に進む。
このように、本実施の形態においては、用紙の坪量(厚さ)に基づいてプロセススピードPS2が選択された場合に、プロセススピードPS2に対する定電流制御値が決定される。これにより、プロセススピードPS1で画像形成を行う際には、プロセススピードPS2に対する定電流制御値を決定する必要がなく、上記第1の実施の形態に対して、さらに生産性を向上させることができる。
また、本実施の形態においては、プロセススピードPS2に対する定電流制御値が決定した後に、プロセススピードPS2での画像形成を行うので、プロセススピードの切り換えを行う必要がなく、速やかに画像形成動作を開始することができる。
また、本実施の形態においては、用紙の坪量(厚さ)に基づいてプロセススピードPS2が選択される毎にプロセススピードPS2に対する定電流制御値が決定される。これに代えて、最初のプロセススピードPS1に対する定電流制御値の決定後の最初に決定されたプロセススピードPS2に対する定電流制御値を、次のプロセススピードPS1に対する定電流制御値の決定まで、使用し続けるようにしてもよい。この場合、さらに生産性を向上させることができる。