以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、自動車用直列型4気筒ガソリンエンジンに本発明を適用した場合について説明する。また、本実施形態では、図1に示すように、自動車に搭載されるエンジンとして4気筒DOHCエンジンを例に挙げて説明する。ただし、図1にはエンジンの1気筒の構成のみを示している。尚、エンジンは、ディーゼルエンジンであってもよく、エンジンの気筒数は4気筒以外であってもよい。また、エンジンの型式はV型であっても、水平対向型であってもよい。
−エンジンの概略構成−
図1に示すように、本実施形態に係るエンジンは、シリンダブロック1と、シリンダヘッド2とを備えている。シリンダブロック1に備えられる4つの気筒(シリンダ)1aには、それぞれピストン4が往復動可能に収容されている。
シリンダブロック1の各気筒1aのシリンダボアとシリンダヘッド2とピストン4とにより燃焼室6が区画形成されている。燃焼室6には、吸気通路21及び吸気ポート2aから導入される空気と、インジェクタ(燃料噴射弁)7から噴射される燃料とからなる混合気が供給され、この混合気が、シリンダヘッド2に設置された点火プラグ8の火花放電によって着火燃焼される。この燃焼により、ピストン4が下降されて、コネクティングロッド9を介してクランクシャフト10が回転されてエンジンの駆動力(トルク)が得られるようになる。燃焼室6で燃焼された後の排気ガスは、排気ポート2bから排気通路22へ排出される。
上記吸気通路21には、その上流端にエアクリーナ(図示省略)が、その途中にスロットルバルブ5がそれぞれ配設されている。シリンダヘッド2には、それぞれ、吸気ポート2aを開閉する吸気バルブ11と、排気ポート2bを開閉する排気バルブ12とが配置されている。吸気バルブ11及び排気バルブ12は、何れもバルブスプリング11a,12aによって、吸気ポート2a及び排気ポート2bを閉塞する方向へ付勢されている。
上記吸気バルブ11は吸気側カムシャフト13によって、また、排気バルブ12は排気側カムシャフト14によって、それぞれ開閉動作されるようになっている。吸気側カムシャフト13には、吸気バルブ11を開閉駆動するためのカムロブ13aが設けられている。また、排気側カムシャフト14には、排気バルブ12を開閉駆動するためのカムロブ14aが設けられている。
上記吸気側カムシャフト13及び排気側カムシャフト14は、シリンダヘッド2によって回転自在に支持されている。そして、各カムシャフト13,14及びクランクシャフト10の軸線方向の一端部には、それぞれスプロケットが取り付けられており、これらスプロケットにタイミングチェーンが掛け渡されている。そのため、クランクシャフト10が回転すると、その回転が各スプロケット及びタイミングチェーンを介して、各カムシャフト13,14に伝達され、各カムシャフト13,14が回転することによって各バルブ11,12が開閉駆動するようになっている。尚、スプロケット及びタイミングチェーンに代えて、プーリ及びタイミングベルトを用いてもよい。
吸気バルブ11の上端部と吸気側カムシャフト13のカムロブ13aとの間、及び、排気バルブ12の上端部と排気側カムシャフト14のカムロブ14aとの間には、それぞれ、ローラ17aを有するロッカーアーム17が揺動自在に配置されている。また、吸気バルブ11及び排気バルブ12の各上端部の近傍には、油圧式のラッシュアジャスタ18がそれぞれ配置されている。ロッカーアーム17には、上記バルブスプリング11a,12aの圧縮反力とラッシュアジャスタ18の押し上げ力とが作用している。これにより、ロッカーアーム17のローラ17aがほぼ上方に付勢されている。そして、このローラ17aは、排気側カムシャフト14のカムロブ14aに対しては直接的に接触されている一方で、吸気側カムシャフト13のカムロブ13aに対しては以下に述べる可変動弁機構30を介して間接的に接触されている。
−可変動弁機構30の構成−
本実施形態に係るエンジンには、上記吸気バルブ11の作用角等を可変とするための上記可変動弁機構30が設けられている。
上記吸気バルブ11の作用角は、図2に示すように、吸気側カムシャフト13の回転方向(図2ではクランク角で表現)についての吸気バルブ11の開弁期間である。本実施形態における可変動弁機構30では、吸気バルブ11の作用角を変更するのに伴って最大リフト量も連続的に変更される構成となっている。この最大リフト量は、吸気バルブ11が最も下方まで移動(リフト)したときの移動量である。これらの作用角及び最大リフト量は、可変動弁機構30によって互いに同期して変化させられ、例えば、作用角が小さくなるほど最大リフト量も小さくなる。作用角が小さくなるに従い、吸気バルブ11の開弁時期と閉弁時期とが互いに近寄って開弁期間が短くなる。
図1に示すように、可変動弁機構30は、気筒1a毎の仲介駆動機構31を備えるとともに、全ての仲介駆動機構31に共通のコントロールシャフト32を備えている。コントロールシャフト32は図1の紙面に対して直交する方向に延びるように配置されているが、ここでは説明の便宜上、コントロールシャフト32の一部が紙面の左右方向に延びるように向きを変えて図示している。
各仲介駆動機構31は、例えば特開2008−255851号公報にも開示されているように、コントロールシャフト32上に入力アーム33及び出力アーム34を備えるとともに、上記コントロールシャフト32及び各アーム33,34間に介在された動力伝達用のスライダギヤ35を備えている。
そして、吸気側カムシャフト13が回転すると、可変動弁機構30では、入力アーム33がコントロールシャフト32を揺動中心として上下に揺動する。この揺動はスライダギヤ35を介して出力アーム34に伝達され、この出力アーム34が上下に揺動する。この揺動する出力アーム34によって、吸気バルブ11がバルブスプリング11aの付勢力に抗して押し下げられて開弁する。
コントロールシャフト32には、これを軸方向へ移動させるための電動アクチュエータ36が連結されている。この電動アクチュエータ36は、電動モータ37と、その電動モータ37の回転を直線運動に変換して上記コントロールシャフト32に伝達する回転直線運動変換機構38とを備えている。そして、電動モータ37の回転に伴いコントロールシャフト32が軸方向へ変位すると、可変動弁機構30では、スライダギヤ35が同方向へ変位しながら回転し、入力アーム33及び出力アーム34の揺動方向について、これらの相対位相差が変更される。
本実施形態では、電動モータ37を所定の方向へ回転させて、コントロールシャフト32を可変動弁機構30側(図1中の右側)へ変位させると、入力アーム33と出力アーム34との揺動方向についての相対位置が互いに接近するように変更され、相対位相差が小さくなる。また、電動モータ37を上記とは反対方向へ回転させて、コントロールシャフト32を電動アクチュエータ36側(図1中の左側)へ変位させると、入力アーム33と出力アーム34との揺動方向についての相対位置が互いに離間するように変更され、相対位相差が増大する。
そして、上記入力アーム33と出力アーム34との揺動方向についての相対位相差の変更に伴い各吸気バルブ11の作用角が連続的に変化する。相対位相差が小さいときには作用角が小さくなるのに対し、相対位相差が増大すると、作用角が大きくなる。
本実施形態におけるエンジンでは、上記電動モータ37から出力アーム34までの動力伝達経路における何れかの可動部(例えば、コントロールシャフト32)との当接によって可変動弁機構30の可動範囲を規制する一対のストッパ41,42が設けられている。可変動弁機構30は、この可動範囲内で作動して、吸気バルブ11の作用角を変化させる。この可動範囲の両端位置、すなわち、コントロールシャフト32がストッパ41,42に当接する位置(可動限界位置)について、作用角を小さくする側の可動限界位置を「Lo端」と表現し、作用角を大きくする側の可動限界位置を「Hi端」と表現する。可変動弁機構30は、ストッパ42との当接により、「Lo端」よりも作用角を小さくする側へは作動できず、ストッパ41との当接により、「Hi端」よりも作用角を大きくする側へは作動できない。尚、上記両ストッパ41,42による可変動弁機構30の可動範囲の規制に際しては、コントロールシャフト32のストロークが規制されるのに加えて、電動モータ37の回転量も規制される。
このように、吸気バルブ11の作用角を変更することによって吸入空気量を調整可能であることから、同一の吸入空気量を様々なスロットル開度及び吸気バルブ11の作用角の組合せで実現することが可能である。例えば、吸気バルブ11の作用角を大きくするときにはスロットル開度を相対的に小さくし、逆に、吸気バルブ11の作用角を小さくするときにはスロットル開度を相対的に大きくすることで気筒1aへの吸入空気量を一定に保持することが可能である。
尚、吸入空気量の調整に際し、吸気バルブ11の作用角を小さくすることにより吸入空気量を減少させる場合には、スロットルバルブ5の開度のみを小さくすることで吸入空気量を減少させる場合と比較して、ポンピングロスを小さくすることができる。そのため、エンジンの出力ロスを抑えることが可能となり、燃料消費率の改善を図ることができる。
本実施形態におけるエンジンの各部位には、各種センサが取り付けられており、それぞれの部位の環境条件や、エンジンの運転状態に関する信号を出力するようになっている。これらのセンサとしては、例えばクランク角センサ111、カム角センサ112、回転角センサ113、エアフローメータ114、アクセル開度センサ115、スロットル開度センサ116等が用いられている。
クランク角センサ111は、クランクシャフト10が一定角度回転する毎にパルス状の信号を発生する。この信号は、クランクシャフト10の回転角度であるクランク角や、単位時間当たりのクランクシャフト10の回転数(以下、エンジン回転数と呼ぶ場合もある)の算出等に用いられる。
カム角センサ112は、吸気側カムシャフト13の近傍に設けられ、その吸気側カムシャフト13の回転角度(カム角)を検出する。
回転角センサ(作用角センサ)113は、吸気バルブ11の作用角の現状値、換言すれば可変動弁機構30の動作位置を検出する。
エアフローメータ114は、吸気通路21を流れる空気量(吸入空気量)を検出する。アクセル開度センサ115は、運転者によるアクセルペダル25の踏み込み量を検出する。スロットル開度センサ116は、スロットルバルブ5の近傍に設けられ、そのスロットルバルブ5の開度(スロットル開度)を検出する。
上記回転角センサ113は、電動モータ37から出力アーム34までの動力伝達経路における何れかの可動部の動作位置を検出できるものであればよく、本実施形態では、電動モータ37が一定角度回転する毎に、すなわち可変動弁機構30が一定量動作する毎にパルス信号を出力するエンコーダが用いられている。そして、このパルス信号を計数することで電動モータ37の回転角が検出され、この回転角に基づき可変動弁機構30の動作位置、ひいては吸気側カムシャフト13の実際の作用角(実作用角)が算出される。
また、車両には、上記各種センサ111〜116の検出信号等に基づいて各部の駆動を制御する電子制御装置(エンジンECU)100が設けられている。この電子制御装置100は、マイクロコンピュータを中心として構成されており、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、制御マップ等に従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。
また、電子制御装置100は、例えば、インジェクタ7に対する通電を制御することで、このインジェクタ7からの燃料噴射を制御する。この燃料噴射制御では、エンジン回転数及びエンジン負荷といったエンジンの運転状況に基づき、混合気の空燃比を所定の値とするための燃料の噴射量を基本噴射量(基本噴射時間)として算出する。エンジン負荷は、例えばエンジンの吸入空気量、又はそれに関係するパラメータ(例えば、スロットル開度、アクセル踏込み量等)に基づき求められる。こうして求めた基本噴射量を、各センサ111〜116からの信号に基づき補正し、その補正後の噴射量に対応する時間、インジェクタ7に通電する。この通電によりインジェクタ7が開弁して、上記補正後の噴射量の燃料が噴射されることになる。
また、電子制御装置100は、吸入空気量の調整に際し、次の制御を行う。先ず、エンジンの運転状態、例えばアクセル踏込み量及びエンジン回転数に基づいてマップから、空気量についての制御目標値(要求吸入空気量)を算出する。尚、上記マップには、アクセル踏込み量及びエンジン回転数によって定まるエンジン運転状態と、このエンジン運転状態に見合う吸入空気量との関係が実験等を通じて予め求められ、設定されている。
続いて、要求吸入空気量及びエンジン回転数に基づく各別のマップ演算を通じて、スロットル開度についての制御目標値(目標スロットル開度)、作用角についての制御目標値(目標作用角)をそれぞれ算出する。それらのマップ演算に用いられる各マップには、要求吸入空気量及びエンジン回転数により定まるエンジン運転状態と、このエンジン運転状態に適した制御目標値との関係が実験等を通じて予め求められ、設定されている。ここでは、上記目標作用角を実現するために可変動弁機構30に要求される制御目標位置(電動モータ37の制御目標位置)を算出する。
そして、実際のスロットル開度が目標スロットル開度に一致するようにスロットルモータ16の駆動制御(スロットル制御)が実行され、また、吸気バルブ11の実際の作用角が目標作用角に一致するように電動モータ37の駆動制御が実行される。
−エンスト回避作用角制御−
次に、エンスト回避作用角制御について説明する。これは、エンジン回転数が低下する状況(例えばアイドリング回転数よりも低下する状況)においてエンジンストールを回避するために上記可変動弁機構30によって吸気バルブ11の作用角を小さくする制御動作である。以下、具体的に説明する。
上記クランク角センサ111からの信号に基づいて算出されたエンジン回転数が所定回転数(例えば500rpm)まで低下した場合、エンジンストールの虞があるとして、上記電子制御装置100は、吸気バルブ11の作用角を小さくするように可変動弁機構30を制御する。つまり、上記電動モータ37を駆動し、コントロールシャフト32を可変動弁機構30側(図1中の右側)へ変位させる。これにより、入力アーム33と出力アーム34との揺動方向についての相対位置が互いに接近するように変更され、相対位相差が小さくなる。このようにして相対位相差が小さくなるのに伴い吸気バルブ11の作用角が小さくなる。
図3は、吸気バルブ11の開閉タイミングをクランク回転位置に対応して示した図である。つまり、図3のTDCはピストン4の吸入上死点に対応するクランク回転位置を示し、BDCはピストン4の吸入下死点に対応するクランク回転位置を示している。そして、図3(a)は通常制御時における吸気バルブ11の開閉タイミングの一例を示し、図3(b)はエンスト回避作用角制御の実行時における吸気バルブ11の開閉タイミングの一例を示している。
この図3に示すように、通常制御時における吸気バルブ11の開タイミングとしては、吸入上死点近傍(吸入上死点よりも僅かに進角側)に設定されている(図3(a)に示す開タイミングを参照)。
この状態からエンスト回避作用角制御が開始されると、作用角が小さくなるのに伴って吸気バルブ11の開タイミングが遅角側に移行され(図3(b)に示す開タイミングを参照)、その開タイミングは吸入上死点よりも遅角側に移行することになる。これにより、ピストン4が下死点に向かって移動していく途中まで(吸入上死点から所定クランク角度に対応する位置に達するまで)吸気バルブ11は閉弁状態となるため、吸気バルブ11の開タイミングにおける吸入負圧が大きく得られる。このため、吸気バルブ11の開弁後には、吸気ポート2aの内圧と気筒内圧との差圧が大きいことに起因して高い流速で吸気が気筒1a内に流入される。そして、インジェクタ7から噴射された燃料は、この高い流速の吸気と共に気筒1a内に流れ込むため、吸気ポート2aの壁面へは付着しにくくなり、インジェクタ7から噴射された燃料の大部分が気筒1a内に導入されることになる。その結果、気筒1a内の空燃比が大きくリーン側に移行してしまうことはなく、例えば理論空燃比程度に維持される。また、吸気の流速が高められることで気筒1a内でのスワール流やタンブル流が大きく得られることになり、燃料の気化が促進され、気筒1a内の全体に亘って略均一な混合気が生成されることになる。
また、通常制御時における吸気バルブ11の閉タイミングとしては、吸入下死点に対して比較的大きく遅角側に設定されている(図3(a)に示す閉タイミングを参照)。
この状態からエンスト回避作用角制御が開始されると、作用角が小さくなるのに伴って吸気バルブ11の閉タイミングが進角側に移行され(図3(b)に示す閉タイミングを参照)、その閉タイミングは吸入下死点に近付くことになる。これにより、ピストン4が下死点近傍にある状態から吸気バルブ11が閉鎖されることになるため、有効圧縮比が高められる。この有効圧縮比が高められることにより、その後の圧縮行程で圧縮される気筒1a内の空気量(空気充填量)が多くなり、また、ピストン4が圧縮上死点に達した状況では、筒内圧力及び筒内温度が共に高くなる。このため、筒内に供給された燃料の気化が促進されることになり、ボア壁面の燃料付着量が減少することに伴って筒内の空燃比を例えば理論空燃比に近付けることができ、気筒1a内の空燃比が大幅にリーンになることが回避される。
このように、吸気バルブ11の作用角を小さくするといったエンスト回避作用角制御を実行することにより、燃焼室6内での燃焼が良好に行われ、エンジンストールが回避されることになる。
−エンスト回避作用角制御の実行判定動作−
次に、本実施形態の特徴とする動作であるエンスト回避作用角制御の実行判定動作について説明する。この動作は、エンスト回避作用角制御の実行及び非実行を判定するための動作である。具体的には、吸気ポート2aの壁面温度を推定しておき、エンジン回転数が所定回転数(例えば500rpm)まで低下した場合であっても、この吸気ポート2aの壁面温度が所定温度未満であると推定される状況の場合には上述したエンスト回避作用角制御の実行を禁止する(エンスト回避作用角制御を非実行とする)ものである。つまり、エンジン回転数が所定回転数まで低下した状態において吸気ポート2aの壁面温度が所定温度以上に達していると推定された場合に限り、上述したエンスト回避作用角制御を実行するものである。
以下、この動作の手順について図4〜図6のフローチャートに沿って説明する。図4に示すフローチャートは、エンスト回避作用角制御の実行判定動作のメインルーチンである。また、図5に示すフローチャートは、上記メインルーチンにおいてエンスト回避作用角制御の実行及び禁止を判定する際に利用される吸気ポート2aの壁面温度を推定するための壁面温度推定動作の第1の実施形態を示すフローチャートである。また、図6に示すフローチャートは、上記メインルーチンにおいてエンスト回避作用角制御の実行及び禁止を判定する際に利用される吸気ポート2aの壁面温度を推定するための壁面温度推定動作の第2の実施形態を示すフローチャート図である。
<壁面温度推定動作の第1の実施形態>
先ず、上記吸気ポート2aの壁面温度を推定する手順(壁面温度推定ルーチン)についての第1の実施形態を図5に沿って説明する。このフローチャートに示される処理は、上記電子制御装置100により所定の周期で(例えば16msec毎に)繰り返し実行される。
先ず、ステップST11において、エンジン始動フラグが「1」に設定されているか否かを判定する。このエンジン始動フラグは、エンジンが始動されていない場合には「0」にリセットされ、イグニッションON操作等によってエンジンが始動すると「1」にセットされるものである。
未だエンジンが始動されておらず、エンジン始動フラグが「0」にリセットされている場合には、ステップST11でNO判定されてステップST12に移る。このステップST12では、イグニッションON操作が行われたか否か、つまり、エンジンが始動したか否かの判定を行う。イグニッションON操作が行われず、エンジンが停止したままの状態である場合にはステップST12でNO判定されリターンされる。
一方、イグニッションON操作が行われ、エンジンが始動すると、ステップST12でYES判定されてステップST13に移る。このステップST13では、上記エアフローメータ114により検出される吸入空気量の読み込みが行われる。
その後、ステップST14に移り、前回ルーチンまでに積算されていた吸入空気量の積算値(Gm)に、上記ステップST13で読み込まれた吸入空気量(Gp)を加算し、これを新たな吸入空気量の積算値(Gm)として記憶する。この吸入空気量の積算値(Gm)は、エンジンの始動時には「0」に設定されており、上記ステップST13で吸入空気量(Gp)が読み込まれる度に、ステップST14において加算されていくものである。
ステップST15では、イグニッションOFF操作が行われたか否か、つまり、エンジンが停止されたか否かの判定を行う。イグニッションOFF操作が行われず、エンジンの駆動状態が継続されている場合にはステップST15でNO判定されリターンされる。
この場合、既にエンジン始動フラグは「1」に設定されているため、ステップST11ではYES判定され、上述したステップST13における吸入空気量の読み込み動作、ステップST14における吸入空気量の積算値(Gm)の算出動作が行われる。
この動作が、イグニッションOFF操作が行われるまで、つまり、ステップST15でYES判定されるまで繰り返され、吸入空気量の積算値(Gm)が増加してしていくことになる。
イグニッションOFF操作が行われてエンジンが停止し、ステップST15でYES判定されると、ステップST16に移り、エンジン始動フラグが「0」にリセットされる。その後、ステップST17で上記吸入空気量の積算値(Gm)が「0」にリセットされる。
このようにして、この壁面温度推定ルーチンでは、エンジン始動からエンジン停止までの期間中、上記読み込まれた吸入空気量(Gp)が順次加算されていき、吸入空気量の積算値(Gm)が求められていくことになる。
この吸入空気量の積算値(Gm)は、エンジンの暖機状態、ひいては吸気ポート2aの壁面温度に相関のある値として求められる。つまり、この吸入空気量の積算値(Gm)が大きいほど、吸気ポート2aの壁面温度としては高温になっていると推定でき、吸気ポート2aの壁面には燃料が付着しにくい状況、または、燃料が付着しても比較的短時間でその燃料が蒸発する状況にあると推定されることになる。このため、上述したステップST13及びステップST14の動作が本発明でいう壁面温度認識手段による吸気通路の壁面温度推定動作に相当する。
<壁面温度推定動作の第2の実施形態>
次に、上記吸気ポート2aの壁面温度を推定する手順(壁面温度推定ルーチン)についての第2の実施形態を図6に沿って説明する。このフローチャートに示される処理は、上記電子制御装置100により所定の周期で(例えば16msec毎に)繰り返し実行される。
先ず、ステップST21において、エンジン始動フラグが「1」に設定されているか否かを判定する。
未だエンジンが始動されておらず、エンジン始動フラグが「0」にリセットされている場合には、ステップST21でNO判定されてステップST22に移る。このステップST22では、イグニッションON操作が行われたか否か、つまり、エンジンが始動したか否かの判定を行う。イグニッションON操作が行われず、エンジンが停止したままの状態である場合にはステップST22でNO判定されリターンされる。
一方、イグニッションON操作が行われ、エンジンが始動すると、ステップST22でYES判定されてステップST23に移る。このステップST23では、エンジン回転数及びエンジン負荷率の読み込みが行われる。エンジン回転数は、上記クランク角センサ111から出力されるパルス信号に基づいて算出される。また、エンジン負荷率は、エンジンの最大機関負荷に対する現在の負荷割合を示す値であって、例えば、エアフローメータ114により検出される吸入空気量と上記エンジン回転数とに基づいた負荷率マップを参照することにより求められる。または、上記スロットル開度センサ116によって検出されるスロットル開度やアクセル開度センサ115によって検出されるアクセル踏込み量等に基づいて算出される。
その後、ステップST24に移り、読み込まれた上記エンジン回転数及びエンジン負荷率に基づいてポート壁面温度推定指標(Tp)が取得される。このポート壁面温度推定指標(Tp)は、例えば、上記ROMに書き込まれたポート壁面温度推定指標テーブルから取得される。図7は、このポート壁面温度推定指標テーブルの一例を示している。この図7に示すように、ポート壁面温度推定指標テーブルは、エンジン回転数(図7の縦軸)及びエンジン負荷率(図7の横軸)からポート壁面温度推定指標を取得するためのものであり、エンジン回転数が高いほどポート壁面温度推定指標も高く得られ、エンジン負荷率が高いほどポート壁面温度推定指標も高く得られるものとなっている。
例えば、エンジン回転数が1000rpmでエンジン負荷率が20%である場合にはポート壁面温度推定指標としては「1.0」が取得され、また、エンジン回転数が3000rpmでエンジン負荷率が60%である場合にはポート壁面温度推定指標としては「4.0」が取得され、また、エンジン回転数が5000rpmでエンジン負荷率が80%である場合にはポート壁面温度推定指標としては「6.0」が取得されることになる。尚、エンジン回転数及びエンジン負荷率が、このポート壁面温度推定指標テーブル上に示されている値同士の間の値である場合(例えば、エンジン回転数が1500rpmでエンジン負荷率が30%である場合等)には、所定の補間計算によってポート壁面温度推定指標が算出されることになる。
このようにしてポート壁面温度推定指標が算出された後、ステップST25において、予め上記RAM等に記憶されている現在の推定指標積算値(Tm)に、上記ステップST24で取得されたポート壁面温度推定指標(Tp)を加算し、これを新たな推定指標積算値(Tm)として記憶する。この推定指標積算値(Tm)は、エンジンの始動時には「0」に設定されており、上記ステップST24でポート壁面温度推定指標(Tp)が取得される度に、ステップST25において加算されていくものである。
ステップST26では、イグニッションOFF操作が行われたか否か、つまり、エンジンが停止されたか否かの判定を行う。イグニッションOFF操作が行われず、エンジンの駆動状態が継続されている場合にはステップST26でNO判定されリターンされる。
この場合、既にエンジン始動フラグは「1」に設定されているため、ステップST21ではYES判定され、上述したステップST23におけるエンジン回転数及びエンジン負荷率の読み込み動作、ステップST24におけるポート壁面温度推定指標(Tp)の取得動作、ステップST25における推定指標積算値(Tm)の算出動作が行われる。
この動作が、イグニッションOFF操作が行われるまで、つまり、ステップST26でYES判定されるまで繰り返され、推定指標積算値(Tm)が増加してしていくことになる。
イグニッションOFF操作が行われてエンジンが停止し、ステップST26でYES判定されると、ステップST27に移り、エンジン始動フラグが「0」にリセットされる。その後、ステップST28で上記推定指標積算値(Tm)が「0」にリセットされる。
このようにして、この壁面温度推定ルーチンでは、エンジン始動からエンジン停止までの期間中、上記エンジン回転数及びエンジン負荷率に基づいて取得されたポート壁面温度推定指標(Tp)が順次加算されていき、推定指標積算値(Tm)が求められていくことになる。
この推定指標積算値(Tm)は、エンジンの吸入空気量に相関のある値であり、その結果、エンジンの暖機状態、ひいては吸気ポート2aの壁面温度に相関のある値として求められる。つまり、この推定指標積算値(Tm)が大きいほど、吸気ポート2aの壁面温度としては高温になっていると推定でき、吸気ポート2aの壁面には燃料が付着しにくい状況、または、燃料が付着しても比較的短時間でその燃料が蒸発する状況にあると推定されることになる。このため、上述したステップST23〜ステップST25の動作(推定指標積算値(Tm)の算出動作)が本発明でいう壁面温度認識手段による吸気通路の壁面温度推定動作に相当する。
<エンスト回避作用角制御の実行判定動作>
次に、上述した壁面温度推定ルーチン(図6)で求められる推定指標積算値(Tm)を利用したエンスト回避作用角制御の実行判定動作について図4のフローチャートに沿って説明する。尚、ここでは推定指標積算値(Tm)を利用したエンスト回避作用角制御の実行判定動作について説明するが、上記吸入空気量の積算値(Gm)を利用してエンスト回避作用角制御の実行判定動作を行うようにしてもよい。その場合には、下記の「推定指標積算値(Tm)」を「吸入空気量の積算値(Gm)」と読み替え、また、下記の「推定指標閾値(Tthr)」を「吸入空気量閾値」と読み替えることになる。
図4のフローチャートに示される処理は、上記電子制御装置100により所定の周期で(例えば16msec毎に)繰り返し実行され、上記壁面温度推定ルーチンと同時並行される。
このエンスト回避作用角制御の実行判定動作では、先ず、ステップST1において、エンジン始動フラグが「1」に設定されているか否かを判定する。
未だエンジンが始動されておらず、エンジン始動フラグが「0」にリセットされている場合にはステップST1でNO判定されてステップST10に移る。このステップST10では、作用角制御実行フラグを「0」にリセットする。この作用角制御実行フラグは、上記エンスト回避作用角制御が実行されることに伴って「1」にセット(ステップST7でセット)されるフラグである。
一方、エンジンが始動し、ステップST1でYES判定されると、ステップST2に移り、エンジン回転数(Ne)の読み込みが行われる。つまり、上記クランク角センサ111から出力されるパルス信号に基づいてエンジン回転数(Ne)が算出される。
その後、ステップST3で、上記算出されたエンジン回転数(Ne)が、予め設定されているエンスト予測エンジン回転数(Nst:エンジンストール予測回転数)以下にまで低下しているか(エンスト回避作用角制御実行条件が成立したか)否かを判定する。このエンスト予測エンジン回転数(Nst)としては、例えばアイドリング回転数よりも低い値(例えば500rpm)に設定されている。つまり、このエンジン回転数(Ne)がエンスト予測エンジン回転数(Nst)以下にまで低下する状況は、その後に、エンジンストールに至る可能性のある状態であり、このステップST3では、エンジンストールの可能性の有無を判定している。
エンジン回転数(Ne)がエンスト予測エンジン回転数(Nst)以下にまで低下しており、ステップST3でYES判定された場合には、ステップST4に移り、上記壁面温度推定ルーチン(図6)で求められている現在の推定指標積算値(Tm)が、予め設定されている推定指標閾値(Tthr)以上であるか否かを判定する(または、上記壁面温度推定ルーチン(図5)で求められている現在の吸入空気量の積算値(Gm)が、予め設定されている吸入空気量閾値以上であるか否かを判定する)。上記推定指標閾値(Tthr)は、エンジンの気筒数や排気量に応じて任意に設定されるものであって、例えば「500」に設定される。また、この推定指標閾値(Tthr)は、例えば外気温度が0℃である場合におけるエンジンの冷間始動時に、始動後の冷却水温度が20℃程度に達するまでの積算吸入空気量に相当する値として設定される。尚、上記吸入空気量閾値も同様にして設定される。
また、上記推定指標閾値(Tthr)を必要以上に大きな値に設定してしまうと(または、吸入空気量閾値を必要以上に大きな値に設定してしまうと)、エンスト回避作用角制御が開始される前に(ステップST4でYES判定される前に)エンジンストールに至ってしまう可能性がある。このため、この推定指標閾値(Tthr)(または吸入空気量閾値)は、吸気ポート2aの壁面温度が、ある程度の燃料付着抑制効果を奏する温度(例えば30℃)に達する値として設定しておく必要がある。これは、エンジンの排気量や気筒数などに応じて実験やシミュレーションにより適宜設定される。
そして、上述した如く、推定指標積算値(Tm)(または吸入空気量の積算値(Gm))はエンジンが継続運転されることで徐々に大きくなっていく値であるので、エンジンの冷間始動初期時にあっては、上記推定指標積算値(Tm)は推定指標閾値(Tthr)未満となっている(または上記吸入空気量の積算値(Gm)は吸入空気量閾値未満となっている)。このため、エンジンの冷間始動初期時にエンジン回転数(Ne)がエンスト予測エンジン回転数(Nst)以下にまで低下する状況では、ステップST3でYES判定されると共にステップST4でNO判定され、エンスト回避作用角制御が実行されることなくリターンされることになる。つまり、従来では、エンスト回避作用角制御が実行される状況(従来ではエンジン回転数が所定回転数まで低下したことのみを条件としてエンスト回避作用角制御が実行していた)であっても、本実施形態では、上記推定指標積算値(Tm)が推定指標閾値(Tthr)未満となっていることを条件として(または、上記吸入空気量の積算値(Gm)が吸入空気量閾値未満となっていることを条件として)、エンスト回避作用角制御の実行を禁止するようにしている(エンスト回避作用角制御禁止手段によるエンスト回避作用角制御の実行禁止動作)。
このようにしてエンスト回避作用角制御の実行が禁止されている状況で、エンジンが継続運転され、上記壁面温度推定ルーチンで求められている推定指標積算値(Tm)が大きくなっていき、この推定指標積算値(Tm)が推定指標閾値(Tthr)以上になると(または、吸入空気量の積算値(Gm)が大きくなっていき、この吸入空気量の積算値(Gm)が吸入空気量閾値以上になると)、ステップST4でYES判定されて、ステップST5以降の動作に移る。
ステップST5では、上記作用角制御実行フラグが「0」であるか、つまり、未だエンスト回避作用角制御は開始されていないか否かを判定する。作用角制御実行フラグが「0」であり、ステップST5でYES判定されると、ステップST6に移ってエンスト回避作用角制御を開始する。つまり、上記可変動弁機構30によって吸気バルブ11の作用角を小さくし、吸気バルブ11の開タイミングを遅角側に移行することに起因する吸気流速の高速化による空燃比の安定化、吸気バルブ11の閉タイミングを吸入下死点に向けて進角させることに起因する有効圧縮比の上昇によってエンジンストールを回避する制御を実行する。
このエンスト回避作用角制御の開始に伴い、ステップST7では作用角制御実行フラグを「1」にセットし、リターンされる。
このようにしてエンスト回避作用角制御が開始されると、エンジン回転数(Ne)がエンスト予測エンジン回転数(Nst)よりも高くなるまで(ステップST3でNO判定されるまで)、このエンスト回避作用角制御は継続されることになる。この場合、ステップST5ではNO判定されてリターンされる。
エンジン回転数(Ne)がエンスト予測エンジン回転数(Nst)よりも高くなり、ステップST3でNO判定されると、ステップST8に移り、作用角制御実行フラグが「1」にセットされているか否かを判定する。つまり、現在、エンスト回避作用角制御が実行されているか否かを判定する。エンスト回避作用角制御が実行されており、ステップST8でYES判定されると、ステップST9に移り、エンスト回避作用角制御を解除(中止)する。つまり、エンジン回転数(Ne)がエンスト予測エンジン回転数(Nst)よりも高くなっており、エンジンストールの虞が無くなったと判断してエンスト回避作用角制御を解除する。その後、ステップST10において、作用角制御実行フラグを「0」にリセットする。
一方、エンスト回避作用角制御の実行中にイグニッションOFF操作が行われてエンジンが停止した場合には、作用角制御実行フラグが「1」にセットされたままステップST1でNO判定されることになる。この場合、上述した如く、ステップST10において作用角制御実行フラグを「0」にリセットし、エンジンを停止することになる。
以上説明したように、本実施形態では、推定される吸気ポート2aの壁面温度が十分に高い状況では、エンジン回転数(Ne)がエンスト予測エンジン回転数(Nst)以下にまで低下したことを条件(エンスト回避作用角制御実行条件)としてエンスト回避作用角制御を実行する。
一方、エンジンの冷間始動初期時等であって、推定される吸気ポート2aの壁面温度が未だ低く、所定温度未満(上記推定指標積算値(Tm)が推定指標閾値(Tthr)未満)である状況では、エンジン回転数(Ne)がエンスト予測エンジン回転数(Nst)以下にまで低下しても(エンスト回避作用角制御実行条件が成立しても)エンスト回避作用角制御の実行を禁止している。これにより、エンスト回避作用角制御の終了後であって通常の作用角制御への復帰時に、吸気ポート2aの壁面温度が低いことに起因するエンジンストールの発生を防止することができる。
このように、本実施形態では、エンスト回避作用角制御が行われた場合、その終了後の吸気ポート2aの壁面温度は常に十分に高いものとなっている。このため、通常の作用角制御への復帰時に空燃比が大きく変動することに起因するエンジンストールを防止でき、エンスト回避作用角制御が実行されたことに起因する不具合(上記通常の作用角制御への復帰時におけるエンジンストールの発生)を回避することができる。
(変形例)
次に、本発明の変形例について説明する。本変形例はエンスト回避作用角制御実行条件が上記実施形態の場合と異なっている。その他のエンジンの構成及び制御は上記実施形態のものと同様であるので、ここでは上記実施形態との相違点についてのみ説明する。
上記実施形態は、エンジン回転数(Ne)がエンスト予測エンジン回転数(Nst)以下にまで低下した場合にエンスト回避作用角制御実行条件が成立するものとしていた。本変形例は、これに代えて、気筒1a内の空燃比が所定のエンジンストール予測空燃比まで上昇(リーン側に移行)した場合にエンスト回避作用角制御実行条件が成立するものとしている。
具体的には、排気通路22に備えられたA/Fセンサ(図示省略)の出力信号から排気ガス中の酸素濃度を検出することで気筒1a内の空燃比を推定する。そして、この推定された空燃比が所定空燃比(例えば空燃比20.0)以上になっている場合にはエンジンストールの虞があると判断する。
そして、本変形例においても、推定される吸気ポート2aの壁面温度が十分に高い状況では、気筒1a内の空燃比がエンジンストール予測空燃比まで上昇したことを条件(エンスト回避作用角制御実行条件)としてエンスト回避作用角制御を実行する。一方、エンジンの冷間始動初期時等であって、推定される吸気ポート2aの壁面温度が未だ低く、所定温度未満(上記推定指標積算値(Tm)が推定指標閾値(Tthr)未満、または、上記吸入空気量の積算値(Gm)が吸入空気量閾値未満)である状況では、気筒1a内の空燃比がエンジンストール予測空燃比まで上昇しても(エンスト回避作用角制御実行条件が成立しても)エンスト回避作用角制御の実行を禁止している。これにより、上記実施形態の場合と同様に、エンスト回避作用角制御の終了後であって通常の作用角制御への復帰時に、吸気ポート2aの壁面温度が低いことに起因するエンジンストールの発生を防止することができる。また、本変形例においてもエンジンストールの予測を高い精度で且つエンジンストールに至る前段階で認識することが可能である。
(他の実施形態)
以上説明した実施形態及び変形例では、自動車に搭載されるエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、自動車以外の機器に搭載されるエンジンに対しても適用が可能である。
また、上記実施形態及び変形例では、吸気バルブ11に対してのみ可変動弁機構30を備えたエンジンに対して本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、排気バルブ12に対しても可変動弁機構を備えたエンジンにも適用が可能である。
また、上記実施形態及び変形例では、上記吸入空気量の積算値(Gm)や推定指標積算値(Tm)によって吸気ポート2aの壁面温度を推定するようにしていたが、この吸気ポート2aの壁面温度を直接的に検出するようにしてもよい。例えば、吸気ポート2aの壁面に薄膜熱電対等の温度センサを取り付ける構成等が挙げられる。この場合の温度センサの取り付け位置としては、吸気ポート2aにおけるインジェクタ7の取付位置よりも下流側(吸気流れの下流側)であって、このインジェクタ7から噴射された燃料の付着量が最も多くなる領域であることが好ましい。また、エンジンの継続運転時間や冷却水温度等から吸気ポート2aの壁面温度を推定するようにしてもよい。