JP5253038B2 - シート・フィルムのロール成形装置およびロール成形方法 - Google Patents
シート・フィルムのロール成形装置およびロール成形方法 Download PDFInfo
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Description
金属ロール挟圧成形法は、押出成形機からTダイを介して互いに平行に配置された主ロールと押さえロール上にシート状の溶融樹脂が供給され、主ロールと押さえロールの間で挟圧されて主ロールの表面に巻き付けられつつ、正確な成形厚みで両ロールの表面の鏡面またはエンボス面が転写成形され、ガイドロールを介して引き出される。これら主ロールと押さえロールは、多くの場合、径が200〜500mmで肉厚が15〜30mmと剛性の高い金属ロールにより構成され、主ロールと押さえロールは、それぞれ中空部に水や油などの冷却流体が供給されて樹脂を適正な温度に冷却するように構成されている。そして、これら主ロールと押さえロールは剛性の高いロールであるため、溶融樹脂シートを挟圧している状態で主ロールと押さえロールの表面の変形は無く、主ロールと押さえロールの間に溶融樹脂シートの余剰分が溜まるバンクが発生する。
上記金属ロール挟圧成形法において、バンクの量は、挟圧力およびシート状溶融樹脂の成形圧とロール間隔との差、溶融シート供給速度とロール周速度との差、溶融樹脂の粘度と温度に依存しているが、シート・フィルムの成形厚みが薄くなるほどバンク量を少なくする必要があり、溶融樹脂が許容する以上にバンク量が多くなると、製品の表面にバンクマークと呼ばれる横波状の凹凸模様が発生する。このバンク量を適正に許容範囲内で保持することで、緩衝作用となって挟圧部で良好に密着し、鏡面やエンボス面が良好に転写される。他方、このバンク量が許容範囲を越える場合には、挟圧部で樹脂シートに歪みが付与され、この歪みは、樹脂の弾性性質により左右されるが、ロール挟圧力やバンク量、溶融シート、ロール温度差が大きいと比例して大きくなる傾向にある。このような残留歪みがあるシートは、特に光の乱反射や複屈折現象を起こすために、光学的用途たとえば液晶などの表示装置には使用できず、また経時的に歪みが回復するために変形が生じて初期形状を保持できないため、文具類などに適用できないという問題があった。
[実施の形態1]
このシート・フィルムのロール成形装置は、図1,図2に示すように、押出機からTダイDを介して押出されたシート状溶融樹脂Pを、第1挟圧部1で主ロール10と第1金属弾性ロール(押さえロール)20との間で挟圧成形し、主ロール10の外周面に沿って案内されるシート状溶融樹脂Pを、第2挟圧部2で主ロール10と第2金属弾性ロール(押さえロール)30との間で挟圧成形するものである。
主ロール10は、回転軸12に軸心O1上に配置された内筒軸13と、この内筒軸13から一定角度ごとに半径方向に突設され内筒軸13の外周空間を周方向に分割して複数の冷却通路(冷却空間)15を形成する複数のリブ14と、両端部が回転軸12にそれぞれ支持されるとともにリブ14の外周部に外嵌されて支持される剛性外筒11とを具備し、剛性外筒11は、成形圧で変形しない厚肉金属製で高剛性に形成され、たとえば肉厚が20〜30mm程度の継ぎ目無し鋼管(シームレス管)により形成されて、外周面が鏡面またはエンボス面に仕上げられている。
これらスパイラル状に形成された複数の冷却通路25により、より均一な冷却が可能となる。
[第1金属弾性ロール]
第1金属弾性ロール20は、回転軸22の軸心O2上に配置された内筒軸23と、この内筒軸23のロール全幅にわたって一定角度(図では60°)ごとに半径方向に突設されて冷却通路(冷却空間)25を周方向に沿って区画する複数(図では6枚)のリブ24と、両端が回転軸22に支持されるとともにリブ24の外周側に、第1挟圧部1の成形圧:F1による弾性変形で第1弾性外筒21が接触せず、かつ近接する隙間をあけて外嵌された第1弾性外筒21とを具備している。この第1弾性外筒21は、シームレス鋼管などにように継ぎ目の無い薄肉鋼管(シームレス管)により形成された弾性(可撓性)を有する肉厚:t2の薄肉金属製で、成形圧:F1により変形して主ロール10にシート状溶融樹脂Pを介して所定の実面接触長さK1(後述の面接触長さk1とは異なる)で周方向に面接触するように構成されている。
[第2金属弾性ロール]
第2金属弾性ロール30は、回転軸32のロール軸心O3上に配置された内筒軸33と、この内筒軸33からロール全幅にわたって一定角度(図では60°)ごとに半径方向に突設されて冷却通路(冷却空間)35を区画する複数(図では6枚)のリブ34と、両端が回転軸32に支持されるとともにリブ14の外周部に、第2挟圧部2の成形圧:F2による弾性変形で接触、かつ近接する隙間をあけて外嵌された第2弾性外筒31とを具備している。そして第2弾性外筒31は、シームレス鋼管などにように継ぎ目の無い薄肉鋼管(シームレス管)により形成された弾性(可撓性)を有する肉厚:t3の薄肉金属製で、成形圧:F2により変形して主ロール10にシート状溶融樹脂Pを介して所定の実接触長さK2(後述の面接触長さk2とは異なる)で面接触するように構成されている。
[成形方法]
上記構成において、第1挟圧部1で、押出機からTダイDを介して押出されたシート状溶融樹脂Pが、主ロール10と第1金属弾性ロール20との間の第1挟圧部1に供給される。第1挟圧部1では、周速度V1で回転される主ロール10と、周速度V2(樹脂の種類や温度、性状により、V1>V2、V1=V2、V1<V2から選択される)で回転され、かつ主ロール10に対して所定の成形圧(線圧力:F1)で押圧される第1金属弾性ロール20との間にシート状溶融樹脂Pが供給されて挟圧形成される。この時、第1弾性外筒21が弾性変形して、主ロール10の表面にシート状溶融樹脂Pを介して面接触し、この接触面における周方向の長さが実面接触長さ:K1である。なお、この第1挟圧部1で、バンクはほとんど確認できず、実面接触長さ:K1で余分な樹脂を外端側に押出して分散させ成形厚みを均一化するというバンクと同様の作用効果を奏しているものと考えられる。
主ロール10は、TダイDの出口から第1挟圧部1までのエアギャップを小さくするために、特別なロール成形装置を除いて外径:D1=600mm以下に形成されており、また第1金属弾性ロール20の外径:D2および第2金属弾性ロール30の外径:D3は、薄肉のシームレス管を使用することなどの製造上の問題などから、通常、主ロール10の外径:D1と同じか、または幾分小径に形成され、D2=D3=(0.65〜1.00)×D1の範囲に形成されている。
ところで、第1,第2弾性外筒21,31は、肉厚t2,t3を小さくすることで弾性と復元性が高くなるが、成形圧:F1,F2を高めてゆくと、第1,第2金属弾性ロール20,30の両端部の弾性(可撓性)が低いため、第1,第2金属弾性ロール20,30は中央部から端部にかけて凹状の鼓形に湾曲する。これは、後述の実験2の図7に表れている。これによりシート状溶融樹脂Pの成形厚みが中央部ほど厚くなり、極端な場合には両端部で主ロール10と第1,第2金属弾性ロール20,30が接触するおそれがある。そのため、図3に示すように、第1,第2弾性外筒21,31の中央部(CL)の外径が両端部の外径よりも所定のクラウニング量:Cだけ大きい太鼓形に形成されている。このクラウニング量:Cは、ロール幅や樹脂特性にもよるが、ロール幅が800mm〜1200mm程度では、C=0.05〜0.2mmの範囲で補正効果が得られ、これによりシート状溶融樹脂Pの中央部の厚肉化を防止できる。
[実験1]
上記実験例1〜4と比較例1,2の実験結果を、図5を参照して説明する。
・第1(弾性)ロール20Aは、外径:300mm、第1弾性外筒21の材質はSCM440(クロムモリブデン鋼)で、肉厚2.0mmである。
・第2(弾性)ロール30は、外径:350mm、第2弾性外筒31の材質はSACM440(クロムモリブデン鋼)で、肉厚:3.0mmである。
図5によれば、実験例1〜4において、成形シートの成形厚みが0.3〜0.5mmの範囲で、鏡面転写も良好なシートを成形することができた。
ところで、薄肉金属製の弾性外筒21,31は、同一の肉厚で同一の成形圧であれば、外径D2,D3が小さいほど弾性変形が小さくなる。第1金属弾性ロール20の第1弾性外筒21について、たとえば最小外径:D2min=300mmとした場合、肉厚:t2=2.0〜2.5mmが適正と考えられ、また最大外径:D2max=400mmとした場合、肉厚:t2=3.0〜3.5mmが適正と考えられる。すると、
t2/D2min=(2.0〜2.5)/300=0.0067〜0.0083
t2/D2max=(3.0〜3.5)/400=0.0075〜0.0086
となり、0.0067≦t2/D2≦0.0086となる。
この近似値において、0.005≦t2/D2≦0.010が適正範囲と推測できる。
t3/D3min=(3.0〜4.0)/300=0.010〜0.0150
t3/D3max=(4.0〜5.0)/450=0.0089〜0.011
となり、0.0089≦t3/D3≦0.015となる。
この近似値において、0.008≦t3/D3≦0.015が適正範囲と推測できる。
ここで、第1挟圧部1の成形圧F1による第1金属弾性ロール20と主ロールの面接触による周方向の面接触長さk1(実面接触長さK1とは異なる)と、第2挟圧部2の成形圧F2による第2金属弾性ロール30と主ロール10との面接触による周方向の面接触長さk2(実面接触長さK2とは異なる)とを、シート状溶融樹脂Pに替えて、感圧紙(厚み0.2mm、フジフィルム製、商標名:プレースケール、品番LLL−W)を使用して測定した結果を図6、図7を参照して説明する。
・第1金属弾性ロール20Aは、実験1と同じであり、ロール幅:1500mm、ロール有効幅:1060mmである。
・第2金属弾性ロール30は、実験1と同じであり、ロール幅:1200mm、ロール有効幅:1090mmである。
上記実施の形態によれば、第1挟圧部1で第1弾性外筒21による弾性変形により、第1金属弾性ロール20をシート状溶融樹脂Pを介して主ロール10に面接触させて挟圧成形した後、シート状溶融樹脂Pの温度がガラス転位点以上でガラス転位点から40℃高い温度以下の範囲で、主ロール10の外周面に案内されるシート状溶融樹脂Pを第2挟圧部2に導入する。そして第2挟圧部2で、第2弾性外筒31の弾性変形により第2金属弾性ロール30をシート状溶融樹脂Pを介して主ロール10に面接触させて再度挟圧成形する。これにより、第1挟圧部10で挟圧成形されたシート状溶融樹脂Pの裏面が、外気に触れて空冷されることにより成形精度が低下していても、ガラス転位点まで冷却される前に第2挟圧部2で再度挟圧成形することにより、成形厚みの薄いシート状溶融樹脂Pに、鏡面やエンボス面を良好に転写して、残留歪みがなく光学的用途に好適なシート・フィルムを成形することができる。また第2挟圧部2で、第1弾性外筒21よりも肉厚が大きい第2弾性外筒31を使用し、かつ第1挟圧部1の成形圧F1より大きい成形圧F2で挟圧成形することにより、温度が低下して硬化が進むシート状溶融樹脂Pと第2金属弾性ロール30との密着性を高めて高精度で転写することができる。これにより、成形厚みの薄いシート・フィルムを、歩留まりもよく安定して成形することができる。
D Tダイ
F1 第1挟圧部の成形圧
F2 第2挟圧部の成形圧
1 第1挟圧部
2 第2挟圧部
10 主ロール
11 剛性外筒
15 冷却通路
20 第1金属弾性ロール
21 第1弾性外筒
25 冷却通路
30 第2金属弾性ロール
31 第2弾性外筒
35 冷却通路
Claims (4)
- 押出成形機から押出されるシート状溶融樹脂を主ロールと第1押さえロールとにより挟圧成形する第1挟圧部と、当該第1挟圧部から主ロールの外周面に沿って送り出されたシート状溶融樹脂を主ロールと第2押さえロールとにより挟圧成形する第2挟圧部とを具備したシート・フィルムのロール成形装置であって、
主ロールは、外周部に厚肉金属製の剛性外筒が配置されて成形圧で変形しない高剛性に形成されるとともに、当該剛性外筒の内周部に冷却空間が形成され、
第1押さえロールを、外周部に弾性を有する薄肉金属製の弾性外筒が配置されその内周部に冷却空間が形成された第1金属弾性ロールとし、
第2押さえロールを、外周部に弾性を有する薄肉金属製の弾性外筒が配置されその内周部に冷却空間が形成された第2金属弾性ロールとし、
第2金属弾性ロールの弾性外筒の肉厚が第1金属弾性ロールの弾性外筒の肉厚をより厚く形成されるとともに、第2挟圧部の成形圧が第1挟圧部の成形圧より大きく設定され、
第2挟圧部は、主ロールの外周面に沿って案内されるシート状溶融樹脂の温度が、ガラス転位点以上で当該ガラス転位点から40℃高い温度以下の範囲に配置された
ことを特徴とするシート・フィルムのロール成形装置。 - 弾性外筒を有する第1金属弾性ロールおよび弾性外筒を有する第2金属弾性ロールの少なくとも一方は、
主ロールと平行な軸心上に配置された内筒軸と、
当該内筒軸から一定角度ごとに半径方向に突設されて冷却空間を周方向に区画する複数のリブとを具備し、
前記少なくとも一方の弾性外筒は、前記リブの外周側に成形圧による弾性変形で接触しない隙間をあけて外嵌され、
前記内筒軸に、当該内筒軸の軸心穴から供給された冷却流体を複数の前記冷却空間に分散供給する開口部が形成された
ことを特徴とする請求項1記載のシート・フィルムのロール成形装置。 - 第1金属弾性ロールの外径:D2と第1弾性外筒の肉厚:t2とを、
0.005≦t2/D2≦0.010の範囲とし、
第2金属弾性ロールの外径:D3と第2弾性外筒の肉厚:t3とを、
0.008≦t3/D3≦0.015(但し、t2<t3)の範囲とし、
第1挟圧部の成形圧:F1と第2挟圧部の成形圧:F2とを、
1.5≦F2/F1≦10の範囲とした
ことを特徴とする請求項1または2記載のシート・フィルムのロール成形装置。 - 押出成形機から押出されるシート状溶融樹脂を、外周部に厚肉金属製の剛性外筒が外嵌されて内周部に冷却空間を形成した主ロールと第1押さえロールとにより挟圧する第1挟圧部に導入し、当該第1挟圧部から主ロールの外周面に沿って送り出されるシート状溶融樹脂を、主ロールと第2押さえロールとにより挟圧成形する第2挟圧部に導入して、シート・フイルムを成形するに際し、
第1挟圧部の第1押さえロールに、外周部に弾性を有する薄肉金属製の第1弾性外筒が外嵌されるとともに、第1弾性外筒の内周部に冷却空間が形成された第1金属弾性ロールを使用し、
第1挟圧部から送り出されて第2挟圧部に導入されるシート状溶融樹脂の温度を、ガラス転位点以上で当該ガラス転位点から40℃高い温度以下の範囲とし、
第2挟圧部の第2押さえロールに、外周部に前記第1弾性外筒より肉厚が大きくかつ弾性を有する薄肉金属製の第2弾性外筒が外嵌されるとともに、当該第2弾性外筒の内周部に冷却空間が形成された第2金属弾性ロールを使用し、さらに第2挟圧部で、第1挟圧部の成形圧より大きい成形圧で挟圧成形する
ことを特徴とするシート・フィルムのロール成形方法。
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