JP5252577B2 - 酸化還元物質の分離分析方法及び分離分析装置 - Google Patents

酸化還元物質の分離分析方法及び分離分析装置 Download PDF

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Description

本発明は、試料溶液中の酸化還元物質を分離して分析するための分離分析方法及び分離分析装置に関する。
従来、例えば成分分析や環境測定の分野において、液体クロマトグラフィ(LC)と呼ばれる分離分析技術が利用されている。例えば特許文献1〜4には、フロー型カラム電極を用い、カラム電極に電圧を印加することで、試料溶液中の対象成分を分離分析する手法が提案されている。
非特許文献1には、フロー型電解セルを用いる電解クロマトグラフィと称する分離分析法が提案されている。この方法は、酸化還元反応を分離に利用したものであり、原理を説明すると次のようになる。クロマト用カラムに充填した銀粒などの作用電極材の電位を、流出口側が負になるように電位勾配を与えて一定に保つ。この電極に金属イオンを含む試料溶液を流し、析出電位が正の金属から順に電極上に析出させる。次いで、カラム電極に溶離液(移動相)を流しながら、電位勾配を徐々に減少させていくと、析出電位が負の金属から順に電極から溶離(ストリッピング)される。このストリッピングにより金属イオンが分離されることになる。そして、その溶離液をポーラログラフ用セルに導き、定電位における拡散電流(電解電流)を追跡することで得られた電流‐時間曲線中の電流ピークの面積、即ち電気量を測定することによって定量を行う。
また、この電解クロマトグラフィの発想は、その後、多段のカラム電極を直列に連結して用いる多段階カラム電極電解法へと発展した。
非特許文献2には、カラム電極に多重掃引法を適用することで、金属イオン相互の分離に際し、2成分の溶出電位差及び析出電位差の両方を利用することが提案されている。具体的な操作は、試料溶液をマイクロシリンジでカラムの試料注入口から導入する。分離カラム電極は、試料導入時には定電位に設定し、試料がカラム電極上に電着(析出)後、多重掃引を開始する。多重掃引による分離後、カラム中に残留した成分は電極電位を±0.0Vに設定してカラムから溶出させる。そして、分離カラムの溶出成分は、-0.90Vに設定した検出カラム電極によって定量する。
非特許文献3には、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)と電気化学とを融合した電気化学クロマトグラフィ(EMLC)と称する分離分析法が提案されている。この方法は、導電性物質(固定相)を充填したHPLC用カラムに外部から電位を印加することで、固定相の表面電場を変化させる、平たく言えば固定相の吸着性を変化させることによって、対象成分がカラム内で捕捉(保持)される時間を変えるものである。この方法における成分の捕捉は、基本的にはHPLCと同じ(イオン性相互作用やサイズ排除など)であり、固定相を変質させるために電場を利用している。そして、この方法は、対象成分が電気化学的に不活性な物質(酸化還元物質でない)であり、酸化還元反応を利用するものではない。
非特許文献4には、上記非特許文献3と同じくHPLCの発展形であり、EMLCを利用した分離分析法が提案されている。この方法では、HPLC用カラムに外部から電位を印加することで、対象成分の酸化還元反応を固定相で引き起こし、対象成分のカラム内での捕捉時間を変えるものである。ただし、印加電位は定電位である。
藤永太一郎、外3名、「電解を用いる新しいクロマトグラフ法」、日本化学雑誌、1963年、第84巻、第11号、p.941‐942 富田豊、外2名、「多重掃引法を用いるフロークーロメトリックカラム電極による鉛,スズの分離」、分析化学(Bunseki Kagaku)、1977年、Vol.26、p.209‐213 T.Nagaoka、外4名、「Dynamic elution control in electrochemical ion chromatography using pulse perturbation of stationary phase potential」、Journal of Electroanalytical Chemistry、1994、371、p.283‐286 Kazunori Saitoh、外5名、「On-column electrochemical redox derivatization for enhancement of separation selectivity of liquid chromatography Use of redox reaction as secondary chemical equilibrium」、Journal of Chromatography A、2008、1180、p.66‐72
上記非特許文献のうち、非特許文献1、2及び4の分離分析法は、分離対象成分が酸化還元物質(金属イオンなど)であり、酸化還元反応を分離に利用するものであるが、本発明者らが鋭意検討したところ、次の問題点があることが分かった。
非特許文献1において、銀粒などの金属粒子を充填した単一のカラム電極に電位勾配を与えることは困難であり、この方法では、試料溶液中の対象成分の分離が不十分になる。そのため、多段階カラム電極電解法へと発展した。
多段階カラム電極電解法により、2成分以上の多成分の分離が十分に行えるようになったが、一つのカラムに1成分を捕捉することから、分離したい成分と少なくとも同じ数だけカラム電極を直列に連結する必要がある。そのため、多段階化は装置の複雑化を招く。また、移動相の送液圧力を上げる必要があるので、カラムの内圧上昇によるカラムや装置の破損など不具合が多発する。
非特許文献2では、単一のカラム電極に多成分を析出させ、一つのカラムに多成分を捕捉することを提案しているが、定電位に設定した電極表面の同じ位置に異種の成分(金属イオン)が析出した場合、その状態である程度の時間続くと、これら成分が化学反応(合金化)することから、その後溶出できなくなる不具合が発生する。また、非特許文献4でも、印加電位は定電位であり、合金化の問題が残る。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、酸化還元反応を利用し、試料溶液中の酸化還元物質を分離するのに有用な分離分析方法及び分離分析装置を提供することにある。
本発明の分離分析方法は、試料溶液中の酸化還元物質を分離分析する方法であり、次の工程を備えることを特徴とする。
(1)分離カラム電極に移動相を送液する送液工程
(2)移動相に試料溶液を注入し、分離カラム電極に試料溶液を流す注入工程
(3)分離カラム電極に試料溶液を流しながらパルス電圧を繰り返し印加する電圧印加工程
なお、パルス電圧は、酸化還元物質のうち特定の酸化還元物質を析出させる析出電圧と、析出した特定の酸化還元物質を再溶出させる溶出電圧とを含むパルス状の波形を有する電圧である。そして、電圧印加工程において、特定の酸化還元物質を分離カラム電極に析出・再溶出を繰り返し起こさせることで電極表面に断続的に捕捉(保持)させ、当該物質が分離カラム電極を通過する時間を電極表面に捕捉されない他の物質に比べて遅延させることにより、試料溶液中に含まれる酸化還元物質を分離することを特徴とする。
また、本発明の分離分析装置は、試料溶液中の酸化還元物質を分離分析する装置であり、分離カラム電極と、分離カラム電極に移動相を送液する送液手段と、移動相に試料溶液を注入する注入手段と、分離カラム電極にパルス電圧を繰り返し印加する電圧印加手段とを備える。なお、パルス電圧は、酸化還元物質のうち特定の酸化還元物質を析出させる析出電圧と、析出した特定の酸化還元物質を再溶出させる溶出電圧とを含むパルス状の波形を有する電圧である。
本発明における試料溶液中の酸化還元物質としては、代表的には金属イオンが挙げられるが、金属イオンに限定されるものではなく、酸化還元反応を起こすことで電極への吸着能が変化する物質であれば利用できる。
本発明の分離分析方法及び分離分析装置によれば、単一の分離カラム電極を用いても、多成分(多物質)の分離が可能である。そのため、多段階化による装置の複雑化、内圧上昇に起因する装置の破損や液漏れなどの不具合を回避できる。
例えば3物質の分離に適用する場合は、析出電圧として、第一の物質が析出する第一析出電圧と、第一と第二の物質が析出する第二析出電圧とを設定することが挙げられる。つまり、多物質の分離を行う場合には、それぞれの酸化還元反応を起こす電位に応じて析出電圧を制御すればよい。パルス電圧の波形は、矩形波、正弦波、三角波、鋸歯状波などを選択することができ、その他、階段状やスロープ状といった波形の集合であってもよい。このようなパルス波形は、例えば任意波形発生器(ファンクションジェネレータ)によって発生させることができる。
また、本発明では、パルス電圧の印加により、酸化還元物質が析出と再溶出とを繰り返すことになる。そのため、電極表面の同じ位置に異種の物質が析出した場合であっても、これら物質(例、金属イオン)が化学反応(合金化)する前に溶出させることができ、再溶出ができないという不具合が生じ難い。さらに、副反応である溶媒(例えば水)の電気分解なども生じ難く、精度の向上が期待できる。
1パルスにおける析出電圧の印加時間(パルス幅)は、短時間であることが望ましいが、電極表面の同じ位置に異種の物質が析出したときに、これら物質が化学反応する不具合を起こさない範囲であればよい。析出電圧のパルス幅は、例えば0.1秒〜10秒の範囲で設定することが挙げられる。ただし、上記した不具合を起こさないパルス幅は、分離カラム電極の電解効率にも影響されるため、例えば分離に用いる電解セルの構造や電極材料に応じて設定することが望ましい。また、このような範囲内で析出電圧のパルス幅を設定することで、析出した物質と電極材料とが化学反応することも抑制でき、電極の劣化や目詰まりなどの不具合を回避し易い。なお、パルス電圧が析出電圧と溶出電圧とから構成されているとき、析出電圧のパルス幅は、換言すれば、溶出電圧が印加されてから次の溶出電圧が印加されるまでの時間のことである。
本発明の分離分析方法において、より好ましい形態は、次の工程を備える。
(4)分離カラム電極を通過した移動相を、分離カラム電極に直列に接続した検出カラム電極に供給する工程
(5)検出カラム電極にパルス電圧を印加して、印加した際に流れる電流値から試料溶液中の酸化還元物質の濃度を分析する工程
また、本発明の分離分析装置において、より好ましい形態は、分離カラム電極を通過した移動相が供給される検出カラム電極と、試料溶液中の酸化還元物質の濃度を分析する分析手段とを備える。検出カラムは、分離カラム電極に直列に接続されている。分析手段は、検出カラム電極にパルス電圧を印加して、印加した際に流れる電流値から酸化還元物質の濃度を分析する。
これら好ましい方法及び好ましい装置によれば、分離と分析とを同一流路内で行うことができる。具体的には、分離プロセスでは、分離カラム電極に所定のパルス電圧を印加し、試料溶液中の特定の酸化還元物質を断続的に捕捉することで、酸化還元物質毎の移動時間、即ち分離カラム電極を通過する時間を変え、酸化還元物質の分離を行う。そして、分析プロセスでは、分離カラム電極を通過した移動相(この時点で酸化還元物質毎に分離されている)を連続的に検出カラム電極に供給し、検出カラム電極では分離したそれぞれの酸化還元物質の定性と定量とを行う。定性及び定量は、検出カラム電極に電圧を印加して電解を行い、その際に流れる電解電流と時間との関係を記録して得られる電流−時間曲線を測定することで行う。例えば、取得した電流−時間曲線のピークから、分離したそれぞれの酸化還元物質の通過時間を求め、これを予め同じ条件で取得しておいた特定の酸化還元物質(標準試料)の通過時間と比較して同定することができる。また、例えば、電解中に流れた電気の量を求めたり、取得した電流−時間曲線のピーク面積と標準試料のピーク面積とを比較したりすることで、酸化還元物質の濃度を求めることができる。
本発明における分離カラム電極には、炭素を主成分とする材料が充填されていることが好ましい。
分離カラム電極の構造は、多孔質ガラス管に電極材料を充填した構造が一例として挙げられる。ここで、電極材料としては、グラッシーカーボン(GC)、多孔質グラファイトカーボン(PGC)などの炭素系材料、白金、銅、銀、金などの金属系材料を用いることができるが、炭素系材料は、金属系材料と比べて析出した物質と化学反応が生じ難い点で好ましい。また、電極材料の形状としては、粒状、繊維状とすることが挙げられるが、電解効率の観点から粒状とすることが好ましい。また、ガラス管には、例えば多孔質バイコールガラス管を用いることができる。検出カラム電極も、分離カラム電極と同様に、炭素を主成分とする材料が充填されていることが好ましい。
本発明の分離分析方法及び分離分析装置は、単一の分離カラム電極を用いて試料溶液中に含まれる酸化還元物質を分離でき、また、電圧印加時における試料溶液の化学反応による変質を抑制できるので、非常に有用である。
さらに、本発明は、酸化還元物質の酸化還元電位の違いにより物質毎の分離を行うため、従来技術では困難であった例えば同一金属イオンの価数別分離(例、Cr(III)イオンとCr(VI)イオン)などが可能であると考えられる。
本発明に係る分離分析装置の構成の一例を説明する図である。 フロー型電解セルの構造を説明する模式図である。 (A)は分離カラム電極における分離プロセスを説明する図であり、(B)は分離分析装置により得られる電流‐時間曲線の例である。 分離カラム電極に印加するパルス電圧を説明する図である。 実験例1で得られた電流‐時間曲線を示す図である。(A)はCd(II)イオンが溶解した溶液及びCu(II)イオンが溶解した溶液のそれぞれの電流‐時間曲線を示し、(B)はCd(II)イオンとCu(II)イオンが溶解した溶液の電流‐時間曲線を示す。
本発明の実施の形態を図を用いて説明する。なお、図中において同一部材には同一符号を付している。
(分離分析装置)
図1に例示する分離分析装置は、分離用のフロー型電解セル10と分析用のフロー型電解セル20とを備え、これら電解セルの分離カラム電極100と検出カラム電極200とが直列に接続されている。この分離分析装置は、溶離液R(移動相)がポンプ31(送液手段)によりサンプルインジェクタ32(注入手段)を介して、分離用のフロー型電解セル10(分離カラム電極100)、分析用のフロー型電解セル20(検出カラム電極200)の順に送液され、排液されるように構成されている。また、それぞれの電解セル10、20には、電気化学測定装置41,42(電圧印加手段)が接続されており、一方の電気化学測定装置41にはファンクションジェネレータ45が接続され、他方の電気化学測定装置42にはデータ記録用のPC50が接続されている。このPC50は、装置全体を制御する。
試料溶液中の酸化還元物質を分離分析するときは、溶離液Rを送液した状態で、注射器を用い、サンプルインジェクタ32から試料溶液を注入し、分離カラム電極100に導入する。また、試料溶液を注入すると同時にデータ記録を開始する。分離カラム電極100に試料溶液を流しながら電気化学測定装置41からパルス電圧を繰り返し印加して、電極表面に特定の酸化還元物質を断続的に捕捉し、試料溶液中に含まれる酸化還元物質を分離する。次に、分離カラム電極100を通過した溶離液Rを検出カラム電極200に連続的に供給する。検出カラム電極200に電気化学測定装置42からパルス電圧を印加して、その際に流れる電流値から試料溶液中の酸化還元物質の濃度を分析する。具体的には、検出カラム電極200に電圧を印加して電解を行い、その際に流れる電流の時間変化をPC50に記録して得られる電流−時間曲線を測定することで行う。
(フロー型電解セル)
分離用のフロー型電解セル10の構造を図2を参照して説明する。電解セル10は、分離カラム電極100が収納され、カラム電極100の外側に電解液が満たされている。カラム電極100は、多孔質バイコールガラス管102に電極材料となるグラッシーカーボン(GC)粒101を充填して構成され、GC粒101と多孔質ガラス管102がそれぞれ作用電極と電解隔膜として機能する。GC粒を充填したカラム電極100には、リードとなるGC棒103が挿通されている。また、多孔質ガラス管102内のGC粒101が充填された空間の一端側から他端側に向かって溶離液Rが移動するように、液流入口106と液流出口107とが設けられている。
カラム電極100外側の電解液には、コイル状にした白金線104とAg/AgCl電極105とが配置され、白金線104とAg/AgCl電極105がそれぞれ対極と参照電極として機能する。GC棒103(作用電極)、白金線104(対極)及びAg/AgCl電極105(参照電極)のそれぞれの一方の端部は外部に引き出されている。
分析用のフロー型電解セル20の構造も、分離用のフロー型電解セル10の構造と同じである。なお、このような3電極系のフロー型電解セルは、市販品を使用することができる。
図1に示す分離分析装置では、分離カラム電極100の液流出口と検出カラム電極200の液流入口とを直列に接続し、分離カラム電極100を通過した溶離液Rがそのまま検出カラム電極200に供給されるように構成されている。これにより、分離と分析とを同一流路内で行うことができる。また、電解セル10,20の外部に引き出された作用電極、対極及び参照電極の端部が電気化学測定装置41,42に接続され、電気化学測定装置41,42から所定の電圧がカラム電極100,200に印加されるように構成されている。例えば、電気化学測定装置41においては、ファンクションジェネレータ45によって分離カラム電極100に印加される電圧を任意のパルス波形の電圧に変えることができる。カラム電極100,200に電圧を印加するときは、作用電極と対極との両電極間に電圧を印加し、また両電極間の電位を参照電極で規制して行う。
(分離プロセス)
分離カラム電極100における分離プロセスを図3(A)を参照して詳しく説明する。ここでは、試料溶液中の3種類の酸化還元物質A〜Cを分離する場合を例に説明する。なお、図中左側には分離カラム電極100に印加するパルス電圧の波形を、図中右側には分離カラム電極100にパルス電圧が印加された際の3種類の酸化還元物質の挙動をそれぞれ模式的に示す。図中パルス電圧Eは、酸化還元物質のうち特定の酸化還元物質を析出させる析出電圧Edと、析出した特定の酸化還元物質を再溶出させる溶出電圧Eeとから構成されている。また、図中において、酸化還元物質Aを○、酸化還元物質Bを□、酸化還元物質Cを△で表し、溶離液Rの流れ方向は紙面左から右である。
酸化還元物質A〜Cの酸化還元電位の関係は、A>B>Cになっている。図3(A)ではパルス電圧Eの波形を簡略的に示しているが、実際には、析出電圧Edは、物質Aが析出する第一析出電圧EdAと物質Aと物質Bが析出する第二析出電圧EdBとの2つのパルス電圧からなる。また、溶出電圧Eeは、物質Aと物質Bが再溶出する電圧である。
まず、分離カラム電極100に導入された試料溶液中の酸化還元物質A〜Cは、溶離液Rの流れ方向に移動する。また、分離カラム電極100に溶出電圧Eeを印加している間は、物質A〜Cは溶離液Rと一緒に移動し続ける(図3(A)の(a)を参照)。
分離カラム電極100に析出電圧Edのうち第一析出電圧EdAを印加すると、電極表面に物質Aが析出し、物質Aが分離カラム電極100に捕捉されることになる。この間、物質Bと物質Cは捕捉されず、移動し続ける。その後、分離カラム電極100に溶出電圧Eeを印加することで、物質Aが再溶出し、物質Bと物質Cに遅れて物質Aが再度移動し始める。次に、分離カラム電極100に析出電圧Edのうち第二析出電圧EdBを印加すると、電極表面に物質Aと物質Bが析出し、物質Aと物質Bが分離カラム電極100に捕捉されることになる。この間も、物質Cは捕捉されず、移動し続ける。その後、分離カラム電極100に再び溶出電圧Eeを印加することで、物質Aと物質Bが再溶出し、物質Aと物質Bが物質Cに遅れて再度移動し始める(図3(A)の(b)を参照)。
このように、物質A〜Cが分離カラム電極100を移動している間、分離カラム電極100にパルス電圧Eを繰り返し印加することで、物質Aと物質Bとが析出・再溶出を繰り返すことになり、物質Aと物質Bとが電極表面に断続的に捕捉されることになる。その結果、物質A、物質B及び物質Cのそれぞれの移動速度が変わるので、徐々に物質A〜Cが分離されることになる(図3(A)の(c)〜(f)を参照)。
ここで、物質Aと物質Bの移動速度は、それぞれの分離カラム電極100に捕捉される時間、即ち第一析出電圧EdA及び第二析出電圧EdBの印加時間(パルス幅)に依存する。そこで、それぞれのパルス幅は、十分に分離が行われるように設定されている。また、パルス幅は、電極表面の同じ位置に物質Aと物質Bが析出したときに、これら物質が化学反応する不具合を起こさない範囲で設定されている。
図3(B)は、試料溶液中の酸化還元物質A〜Cを分離カラム電極に通過させることによって物質A〜Cを分離させた溶離液Rを、検出カラム電極に供給し、検出カラム電極での電解電流の時間変化を記録して得られた電流−時間曲線の例である。図中のピークA、ピークB及びピークCがそれぞれ、物質A、物質B及び物質Cに対応する。
[実験例1]
以上説明したような図1の分離分析装置を用いて、試料溶液中に含まれる酸化還元物質の分離分析を行った。試料溶液及び分離分析条件は次のとおりとした。
<試料溶液>
試料溶液として、以下の溶液1〜3を用意した。
溶液1:0.1mol/dm3の硝酸溶液にCd(II)イオンが100ppm溶解
溶液2:0.1mol/dm3の硝酸溶液にCu(II)イオンが10ppm溶解
溶液3:0.1mol/dm3の硝酸溶液にCd(II)イオン50ppmとCu(II)イオン5ppmが溶解
<溶離液>
溶離液は、0.1mol/dm3の硝酸溶液を用い、送液量を150μL/minに設定した。送液量はポンプで制御した。
<電解セル>
カラム電極は、粒径が80〜200μmのGC粒を充填したものを使用し、電解液には、溶離液と同じ0.1mol/dm3の硝酸溶液を用いた。
<分離カラム電極に印加するパルス電圧>
分離カラム電極に印加するパルス電圧は、図4に示す波形とし、析出電圧Ed:-200mV(パルス幅td:5.0sec)、溶出電圧Ee:+800mv(パルス幅te:0.8sec)に設定した。なお、-200mVでは、分離カラム電極にCu(II)イオンは析出するが、Cd(II)イオンは析出しない電圧である。他方、+800mVでは、分離カラム電極に析出したCu(II)イオンが再溶出する電圧である。
<検出カラム電極に印加するパルス電圧>
検出カラム電極に印加するパルス電圧も、分離カラム電極に印加するパルス電圧と同じ図4に示す波形とし、析出電圧Ed:-800mV(パルス幅td:0.25sec)、溶出電圧Ee:+800mV(パルス幅te:0.75sec)に設定した。
以上の条件で、サンプルインジェクタから溶液1〜3をそれぞれ20μL注入し、それぞれの場合における電流‐時間曲線を測定した。その結果を、図5に示す。図5(A)では、Cd(II)イオンが溶解した溶液1の電流‐時間曲線(太線)と、Cu(II)イオンが溶解した溶液2の電流‐時間曲線(細線)とを一図にまとめて示した。また、図5(B)では、さらに、Cd(II)イオンとCu(II)イオンが溶解した溶液3の電流‐時間曲線(極太線)を一図にまとめて示した。
図5(A)に示すように、溶液1のピークに比べて溶液2のピークが遅延して現れているのが分かる。このことから、Cd(II)イオンの場合は、分離カラム電極に捕捉されず、分離カラム電極を通過する時間が短いのに対し、Cu(II)イオンの場合は、分離カラム電極に断続的に捕捉され、分離カラム電極を通過する時間を制御できていることが分かる。したがって、本発明によれば、試料溶液中の複数の酸化還元物質を十分に分離することができると考えられる。
実際に、図5(B)に示すように、溶液3の2つのピークは、溶液1のピーク及び溶液2のピークとほぼ一致しており、Cd(II)イオンとCu(II)イオンとが十分に分離され、同定することが十分に可能である。また、溶液3の2つのピークはそれぞれ、溶液1のピーク及び溶液2のピークのほぼ半分であることから、試料溶液中の酸化還元物質毎の濃度を分析することも可能である。
[変形例1]
図1に例示した分離分析装置では、試料溶液中の酸化還元物質を分離用電解セル10(分離カラム電極100)によって分離した後、分析用電解セル20(検出カラム電極200)を用いて分析しているが、分析には、公知の各種検出器を用いてもよい。例えば、UV検出器、質量分析検出器、ICP発光分析装置、ICP質量分析装置などを用いることができる。また、このような検出器を用いる場合は、必要に応じて、脱気装置やミキシングポンプなどを設けてもよい。
なお、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、分離対象の酸化還元物質に応じてパルス電圧を変更する他、電解セルの構造や電極材料をそれぞれ適宜変更してもよい。
本発明の分離分析方法及び分離分析装置は、試料溶液中の酸化還元物質を分離するのに有用である。例えば、成分分析や環境測定など、より具体的な例としては、めっき液中の金属イオン濃度の測定などに好適に利用することができる。
10 分離用フロー型電解セル 20 分析用フロー型電解セル
31 ポンプ(送液手段) 32 サンプルインジェクタ(注入手段)
41,42 電気化学測定装置(電圧印加手段)
45 ファンクションジェネレータ
50 PC(電子計算機)
R 溶離液(移動相)
100 分離カラム電極 200 検出カラム電極
101 GC粒(作用電極)
102 多孔質バイコールガラス管(電解隔膜)
103 GC棒
104 白金線(対極)
105 Ag/AgCl電極(参照電極)
106 液流入口 107 液流出口

Claims (5)

  1. 試料溶液中の酸化還元物質を分離分析する方法であって、
    分離カラム電極に移動相を送液する送液工程と、
    前記移動相に試料溶液を注入し、前記分離カラム電極に試料溶液を流す注入工程と、
    前記分離カラム電極に試料溶液を流しながらパルス電圧を繰り返し印加する電圧印加工程とを備え、
    前記パルス電圧は、前記酸化還元物質のうち特定の酸化還元物質を析出させる析出電圧と、析出した特定の酸化還元物質を再溶出させる溶出電圧とを含むパルス状の波形を有する電圧であり、
    前記電圧印加工程において、前記特定の酸化還元物質を前記分離カラム電極に析出・再溶出を繰り返し起こさせることで電極表面に断続的に捕捉させ、当該物質が前記分離カラム電極を通過する時間を電極表面に捕捉されない他の物質に比べて遅延させることにより、試料溶液中に含まれる酸化還元物質を分離することを特徴とする酸化還元物質の分離分析方法。
  2. 前記分離カラム電極を通過した移動相を、前記分離カラム電極に直列に接続した検出カラム電極に供給する工程と、
    前記検出カラム電極にパルス電圧を印加して、印加した際に流れる電流値から試料溶液中の酸化還元物質の濃度を分析する工程とを備えることを特徴とする請求項1に記載の酸化還元物質の分離分析方法。
  3. 前記分離カラム電極には、炭素を主成分とする材料が充填されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸化還元物質の分離分析方法。
  4. 前記酸化還元物質が、金属イオンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化還元物質の分離分析方法。
  5. 試料溶液中の酸化還元物質を分離分析する装置であって、
    分離カラム電極と、
    前記分離カラム電極に移動相を送液する送液手段と、
    前記移動相に試料溶液を注入する注入手段と、
    前記分離カラム電極にパルス電圧を繰り返し印加する電圧印加手段とを備え、
    前記パルス電圧は、前記酸化還元物質のうち特定の酸化還元物質を析出させる析出電圧と、析出した特定の酸化還元物質を再溶出させる溶出電圧とを含むパルス状の波形を有する電圧であることを特徴とする酸化還元物質の分離分析装置。
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