JP5252339B2 - Pad4及び抗pad4抗体の測定方法並びに関節リウマチの検出方法 - Google Patents

Pad4及び抗pad4抗体の測定方法並びに関節リウマチの検出方法 Download PDF

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本発明は、抗PAD4モノクローナル抗体を利用したPAD4の測定方法及び該モノクローナル抗体を利用したサンドイッチ法による抗PAD4抗体の測定方法、並びに関節リウマチの検出方法に関する。
関節リウマチの血清学的診断法は、リウマチ因子の測定が最も信頼された測定法であったが、近年では、環状化シトルリン化ペプチドに対する自己抗体(抗CCP抗体)の測定がリウマチ因子測定を上回る効果的な方法であるとされている(非特許文献1)。関節リウマチは有用な治療法が開発され、より早期に診断することが重要とされている。CCP抗体の測定は現状では最も早期に診断できる測定法であるが、早期診断という観点からはまだ十分な方法とは言えない。
タンパク質のシトルリン化反応は、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)という酵素により構成アミノ酸のアルギニンがシトルリンに変換される反応である。PADには5種類のアイソフォームが存在し(1型、2型、3型、4型/5型及び6型)、生体内における組織分布や基質特異性等がそれぞれ異なっている。関節リウマチ患者において検出されるCCP自己抗体は、シトルリン化した蛋白(責任蛋白は明らかでない)に対して患者体内で作られると考えられるが、関節リウマチに関与する蛋白シトルリン化は4型PAD(PAD4)により行われていると考えられている。より早期診断を考えると、CCP自己抗体より早期に血中に現れる可能性が高い血中PAD4、或いは抗PAD4自己抗体は、関節リウマチの早期診断を可能にすると考えられる。
しかしながら、血中に存在するPAD4タンパク質は存在量が少ないため、精製して得ることはできず、関節リウマチ診断に好ましく用いることができる抗PAD4抗体及び血中PAD4測定方法を確立することは困難である。
抗PAD4自己抗体の測定による関節リウマチの診断方法としては、非特許文献2に記載の方法が公知である。しかしながら、非特許文献2の方法では、PAD4抗原を直接固相に結合させて免疫測定を行なっている。かかる方法では、固相化したPAD4の立体構造が変化するおそれがあり、また、抗原の精製度を高めないと非特異反応が生じ易くなるため、精度の高い測定は困難である。
Critical Reviews in Clinical Laboratory Science, 44(4):339-363 (2007) Scand J Rheumatol 2005;34:212-215
本発明は、関節リウマチを高精度に検出するために有用な、血中のPAD4でも精度よく検出することができる手段を提供することを目的とする。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、PAD4を検出可能なモノクローナル抗体を確立し、該モノクローナル抗体を用いて被検試料中のPAD4を免疫測定するに際し、カルシウムイオンキレート剤の添加等により試料中のカルシウムイオンを除去すると、カルシウムイオンを多く含む血清等の試料においてもPAD4を正確に測定できることを見出した。また、抗PAD4自己抗体を測定するに際し、該モノクローナル抗体を固相に結合させてサンドイッチ法による免疫測定を行なうことで、抗原PAD4自体を直接固相化するよりも精度良く該自己抗体を測定することができることを見出した。そして、これらの測定方法を適宜組み合わせることにより、関節リウマチを高精度に検出可能であることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、カルシウムイオンのキレート剤と接触させた被検試料について、PAD4と抗原抗体反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を用いた免疫測定を行ない、前記被検試料中に含まれ得るPAD4を測定することを含む、被検試料中のPAD4の測定方法を提供する。また、本発明は、生体から得た被検試料に対して、上記本発明のPAD4の測定方法を行なうことにより測定される、前記被検試料中のPAD4の存在量を指標とする、関節リウマチの検出方法を提供する。

本発明により、PAD4及び抗PAD4自己抗体を高精度に測定できる測定方法が提供された。本発明のPAD4測定方法によれば、PAD4を精度よく測定することができ、特に血清・血漿試料中のPAD4をも高精度に測定することができる。また、本発明の抗PAD4自己抗体測定方法によれば、PAD4抗原を特異抗体を介して固相に結合させて用いるため、PAD4抗原を直接固相化する方法よりも、固相上のPAD4抗原の立体構造を好ましく維持することができ、さらに、PAD4抗原に混入している夾雑物による悪影響も回避することができるので、抗PAD4自己抗体を高精度に測定することが可能になる。さらに、これらの測定方法を適宜組み合わせて行なうことにより、関節リウマチの診断を高精度に行なうことが可能になった。従来、環状化シトルリン化ペプチドに対する自己抗体(抗CCP抗体)を測定する方法が最も早期に関節リウマチを診断できる方法であるとされているが、該環状化シトルリン化ペプチドの生成に関与している酵素はPAD4であるため、PAD4や抗PAD4自己抗体を測定すれば、抗CCP抗体の測定による診断よりもさらに早期に関節リウマチを診断することができると考えられる。すなわち、PAD4と抗PAD4自己抗体の測定を適宜組み合わせて行なう本発明の検出方法によれば、関節リウマチを従来法よりも早期に検出することが可能になる。
本発明のPAD4の測定方法は、PAD4と抗原抗体反応する抗PAD4モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を用いた免疫測定により行なわれる。該抗PAD4モノクローナル抗体は、PAD4への特異性が高く、他のタンパク質とは実質的に抗原抗体反応しないものである。「実質的に抗原抗体反応しない」とは、検出可能なレベルで抗原抗体反応しないか、又は抗原抗体反応を起こしても、その反応の程度が、PAD4との抗原抗体反応よりも明らかに弱く、PAD4と抗原抗体反応していないことが当業者にとって明瞭な程度にしか反応しないことを意味する。
本発明のPAD4測定方法では、被検試料とカルシウムイオンのキレート剤とを接触させる。例えば、被検試料にキレート剤を添加した後に免疫測定を行なうことができる。抗体固定化固相を用いて免疫測定を行う場合には、該固相に被検試料とキレート剤とを別個に添加することにより両者を接触させてもよいが、あらかじめ被検試料にキレート剤を添加して用いることが好ましい。下記実施例に記載される通り、血清又は血漿試料にEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を添加しないで免疫測定を行なうと、正常な測定値を得ることができない。この原因としては次のことが考えられる。すなわち、スクリーニング工程において、Ca2+非存在下でPAD4タンパク質を用いると、Ca2+非存在下のPAD4タンパク質の立体構造を認識する抗体がスクリーニングされる。一方で、血清又は血漿試料中に存在するPAD4は高濃度のCa2+存在下にある。そのため、上記した方法により作製した抗PAD4モノクローナル抗体は、高濃度のCa2+存在下でPAD4がとる立体構造を適切に認識できないものと考えられる。よって、EDTA等のカルシウムキレート剤を血清又は血漿試料に添加してCa2+を除去することで、PAD4をCa2+非存在下の構造に戻すことができ、これにより上記抗PAD4モノクローナル抗体が適切に認識できるようになるものと考えられる。キレート剤としては、カルシウムイオンをキレートできるものであれば特に限定されず、他の金属イオンもキレートできるものであってもよい。具体例としては、例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA等が挙げられる。キレート剤の使用濃度は、1〜10mM程度、好ましくは3〜7mM程度であれば、試料中のPAD4を好ましい精度で測定することができる。
本発明の方法で用いられる抗PAD4モノクローナル抗体は、例えば、公知の遺伝子工学的手法により作製又は公知のペプチド合成機により合成したPAD4タンパク質を免疫原として用いて、周知のハイブリドーマ法により作製することができる。すなわち、PAD4組換えタンパク質を調製し、これを免疫原として用いて動物(ヒトを除く)を免疫し、該動物から抗体産生細胞を得てミエローマ細胞等の不死化細胞と融合させることによりハイブリドーマを作製し、該ハイブリドーマから、所望の反応性(PAD4に対する特異的な反応性)を有する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングし、スクリーニングしたハイブリドーマから抗体を回収することにより、抗PAD4モノクローナル抗体を得ることができる。
PAD4を遺伝子工学的手法により作製する方法としては、例えば、PAD4を発現している組織又は細胞から抽出した全RNAから、PAD4遺伝子のcDNAをRT-PCRにより調製し、該cDNAを発現ベクターに組み込んで宿主細胞に導入し、該宿主細胞中でPAD4を発現させてPAD4組換えタンパク質を得る方法が挙げられる。PAD4の遺伝子配列及びアミノ酸配列は、NCBIのGenBankにアクセッション番号AB017919で登録されている通り公知であり、それぞれ本願配列表の配列番号1及び2に記載されているので、当業者であれば、これらの配列情報をもとに容易にPAD4組換えタンパク質を調製することができる。なお、この分野において、PAD4はPAD5と呼ばれることもある。RNAの抽出、RT-PCR、ベクターへのcDNAの組み込み、ベクターの宿主細胞への導入は周知の方法により行なうことができる。また、用いるベクターや宿主細胞も周知であり、種々のものが市販されている。
調製したPAD4タンパク質については、免疫原として用いる前に、任意で酵素活性を確認してもよい。酵素活性を発揮できるPAD4タンパク質であれば、生体内で産生されるPAD4タンパク質と同等の立体構造を有し得るので、抗PAD4抗体作製のための免疫原として効果が高いものと考えられる。調製したPAD4組換えタンパク質の酵素活性は、例えば、下記実施例に詳述されるように、ベンゾイル−L−アルギニンエチルエステル(BAEE)を基質として用いて、10mM〜30mM程度のカルシウムイオンの存在下、37℃〜55℃程度で所定の時間(例えば1時間程度)酵素反応を行ない、公知の比色定量用試薬を用いて吸光度を測定することにより確認することができる。特に限定されないが、通常、0.01U/ml程度以上の活性が確認できれば、酵素活性を有するPAD4であると評価することができる。
免疫した動物から得た抗体産生細胞と不死化細胞との融合方法や、ハイブリドーマのスクリーニング方法、ハイブリドーマからの抗体の回収方法は、この分野において周知の常法により行なうことができる。
また、抗PAD4モノクローナル抗体と同様に、対応抗原たるPAD4との結合性を有するその抗体断片(本発明において「抗原結合性断片」という)を免疫測定に用いることができることは、この分野において周知のとおりである。従って、本発明のPAD4の測定方法においても、抗PAD4モノクローナル抗体のみならず、その抗原結合性断片を用いることができる。抗原結合性断片の例としては、例えば免疫グロブリンのFab断片やF(ab')2断片が挙げられる。これらの断片は、周知の通り、モノクローナル抗体をパパインやペプシンのようなタンパク分解酵素で処理することにより得ることができる。なお、抗原結合性断片は、Fab断片やF(ab')2断片に限定されるものではなく、対応抗原との結合性を維持しているいかなる断片であってもよく、遺伝子工学的手法により調製されたものであってもよい。また、例えば、遺伝子工学的手法により、一本鎖可変領域 (scFv : single chain fragment of variable region) を大腸菌内で発現させた抗体を用いることもできる。scFvの作製方法も周知であり、上記の通りに作製したハイブリドーマのmRNAを抽出し、一本鎖cDNAを調製し、免疫グロブリンH鎖及びL鎖に特異的なプライマーを用いてPCRを行なって免疫グロブリンH鎖遺伝子及びL鎖遺伝子を増幅し、これらをリンカーで連結し、適切な制限酵素部位を付与してプラスミドベクターに導入し、それで大腸菌を形質転換し、大腸菌からscFvを回収することによりscFvを作製することができる。このようなscFvも本発明で言う「抗原結合性断片」に包含される。
免疫測定方法自体はこの分野において周知であり、本発明のPAD4測定方法においては、周知のいずれの免疫測定方法をも採用することができる。すなわち、反応形式に基づき分類すると、サンドイッチ法、競合法、凝集法等があり、標識に基づき分類すると、酵素免疫分析、放射免疫分析、蛍光免疫分析等があるが、これらのいずれもが本発明で言う「免疫測定」に包含され、本発明の測定方法に採用することができる。
本発明のPAD4測定方法において、サンドイッチ法によりPAD4を免疫測定する場合には、固相化する抗PAD4抗体と標識抗体として用いる抗PAD4抗体のいずれか一方にモノクローナル抗体を用い、他方をポリクローナル抗体としてもよい。ただし、測定精度を高める観点からは、両者をモノクローナル抗体とすることが好ましい。固相化抗体と標識抗体とは、周知の通り、互いに異なるエピトープを認識するものでなければならず、両者をモノクローナル抗体とするときに特に問題となるが、モノクローナル抗体の組み合わせが好ましいかどうかは、実際に免疫測定を行なってみることで容易に調べることができる。所望により、抗体の認識部位の同定を行なって、異なるエピトープを認識するかどうかを調べてもよい。抗体の認識部位の同定は、この分野で周知の常法により行なうことができる。簡潔に説明すると、例えば、対応抗原であるPAD4タンパク質をトリプシン等のようなタンパク質分解酵素により部分消化し、認識部位を調べるべき抗体を結合させたアフィニティーカラムに部分消化物溶液を通じて消化物を結合させ、次いで結合した消化物を溶出させて常法の質量分析を行なうことにより、抗体の認識部位を同定することができる。
本発明のPAD4測定方法において用いられる被検試料は、ヒト等の哺乳動物から採取される生体由来成分であり、好ましくは血清又は血漿である。
本発明はまた、抗PAD4モノクローナル抗体を利用したサンドイッチ法の免疫測定により、被検試料中の抗PAD4自己抗体を測定する方法を提供する。ここでいう「自己抗体」とは、生体内で発現したPAD4タンパク質に対して産生される抗体のことをいい、健常な生体内でPAD4に対して誘導される抗体のみならず、関節リウマチ等の疾患によりPAD4タンパク質の発現量が増大している生体内において、該高発現しているPAD4タンパク質に対して誘導される抗体も包含する。なお、上記した通り、抗PAD4モノクローナル抗体の抗原結合性断片も、該抗体と同様に免疫測定に用いることができるため、本発明の抗PAD4自己抗体の測定方法においても抗原結合性断片を用いることができる。以下、本発明の説明において、「抗原結合性断片」への言及は省略する場合があるが、本発明の範囲から抗原結合性断片を除外することを意図するものではなく、免疫測定で用いられるモノクローナル抗体にはその抗原結合性断片も包含されるものとする。
本発明のPAD4自己抗体の測定方法は、PAD4抗原を固定化した固相を用いたサンドイッチ法による免疫測定により行なわれる。ここで、PAD4自己抗体の捕捉に用いるPAD4抗原は、固相に直接固定化されず、抗PAD4モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を介して固相に固定化される。すなわち、該測定方法では、固相化した抗PAD4モノクローナル抗体等にPAD4抗原を結合させて固相を調製し、該固相を用いたサンドイッチ法による免疫測定によりPAD4自己抗体の測定が行なわれる。
ここで、「PAD4抗原」とは、試料中の抗PAD4自己抗体と抗原抗体反応により結合できるPAD4タンパク質若しくはその断片、又はこれらと一定以上の相同性を有するポリペプチド(以下、該ポリペプチドを便宜的に「修飾ポリペプチド」という)のことを意味する。後述するとおり、PAD4の断片であっても、免疫測定の抗原として使用可能である。また、一般に、タンパク質抗原において、該タンパク質のアミノ酸配列のうち少数のアミノ酸残基が置換され、欠失され、挿入され又は付加された場合であっても、元のタンパク質とほぼ同じ抗原性を有している場合があることは当業者において広く知られている。該修飾ポリペプチドは、PAD4タンパク質(配列番号2)又はその断片のアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の相同性を有する。あるいはまた、該修飾ポリペプチドとしては、PAD4タンパク質(配列番号2)又はその断片のアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸が置換され、欠失され、挿入され及び/又は付加されたものも好ましい。
上記PAD4抗原は、市販のPAD4タンパク質精製品であってもよく、また、公知の遺伝子工学的手法(上述)により作製したPAD4組換えタンパク質であってもよい。遺伝子工学的手法により作製されたPAD4には、通常、多少の宿主細胞成分(例えば大腸菌成分)が混入してしまっているが、ヒトは大腸菌成分に対する抗体をもっているため、かかる大腸菌成分の混入はヒト由来試料を測定する場合にバックグラウンドを高める原因となる。上記の通り、モノクローナル抗体を介して間接的にPAD4抗原を固定化した固相を用いることにより、大腸菌成分の混入によるバックグラウンドの上昇を抑え、PAD4自己抗体の測定精度を高めることができる。また、PAD4抗原を直接固相に結合させると立体構造が変化してしまう可能性があり、PAD4の立体構造を認識する自己抗体を測定しにくくなるおそれがあるが、抗体を介してPAD4抗原を固相に固定化すると、PAD4の立体構造を維持できる可能性が高いので、PAD4自己抗体の測定精度を高めることができる。実際に、下記実施例に記載される通り、PAD4抗原を直接固相化した場合よりも、モノクローナル抗体を介して固相に固定化した方が、PAD4自己抗体の測定精度が向上する。
上記PAD4抗原は、PAD4タンパク質(配列番号2)の全長から成るものに限定されず、その断片であってもよい。測定すべきPAD4自己抗体は、PAD4タンパク質上の複数の部位を認識する抗体の集合体、すなわちポリクローナル抗体であるから、PAD4タンパク質断片であっても、該ポリクローナル抗体中には該断片を認識できる抗体が含まれ得る。従って、PAD4断片もまた、固相とPAD4抗原とを連結する抗PAD4モノクローナル抗体との結合性を有する限り、PAD4全長タンパク質と同様に、被検試料中のPAD4自己抗体の測定に用いることができ、本発明の範囲に包含される。該PAD4断片は、配列番号2中の連続する7アミノ酸残基以上、好ましくは10アミノ酸残基以上から成り、且つ、上記抗PAD4モノクローナル抗体及び被検試料中のPAD4自己抗体と抗原抗体反応する断片である。なお、約7アミノ酸残基以上のタンパク質断片であれば抗原性を発揮することがこの分野において知られている。ただし、アミノ酸残基の数があまりに少ないと、試料中に存在する、測定対象外の抗体とも交差反応してしまう可能性が高くなる。従って、測定精度を高める観点からは、PAD4抗原のアミノ酸残基数は好ましくは30以上、より好ましくは100以上、さらには300以上、500以上等とすることが好ましく、配列番号2の全長から成るPAD4抗原が最も好ましい。
本発明の抗PAD4自己抗体測定方法に用いられる固相としては、通常のサンドイッチ法による免疫測定で用いられるいかなる固相であっても用いることができ、特に限定されない。例えば、市販のELISAプレート等を好ましく用いることができる。
本発明の抗PAD4自己抗体測定方法において用いられる被検試料は、ヒト等の哺乳動物から採取される生体由来成分であり、好ましくは血清又は血漿である。
本発明はさらに、上記した本発明のPAD4測定方法及び抗PAD4自己抗体測定方法の少なくともいずれか一方を利用した関節リウマチの検出方法を提供する。該検出方法では、生体から得た被検試料に対し、PAD4測定と抗PAD4自己抗体測定の少なくともいずれか一方を行ない、PAD4及び/又は抗PAD4自己抗体の試料中存在量を指標として、上記生体が関節リウマチであるか否かを判断する。関節リウマチ患者では、下記実施例に記載される通り、PAD4及び/又は抗PAD4自己抗体が健常者よりも有意に多く存在するので、PAD4及び/又は抗PAD4自己抗体の測定により関節リウマチの検出が可能である。検出の精度を高める観点からは、1ないし複数の健常者試料についてPAD4及び/又は抗PAD4自己抗体を測定して健常者基準値を取得し、対象生体の測定値を該健常者基準値と比較することが好ましい。さらに検出精度を高めたい場合には、関節リウマチを罹患していることがわかっている多数の患者から得た試料についてPAD4及び/又は抗PAD4自己抗体量を調べて関節リウマチ患者基準値を取得し、対象生体の測定値を健常者基準値及び関節リウマチ患者基準値の双方と比較してもよい。上記基準値は、例えば、各試料におけるPAD4及び/又は抗PAD4自己抗体量を数値化し、その平均値を算出することによって定めることができる。なお、健常者基準値と関節リウマチ患者基準値は、予め多数の健常者及び関節リウマチ患者についてPAD4及び/又は抗PAD4自己抗体量を調べて定めておくことができる。そのため、本発明の関節リウマチ検出方法で基準値との比較を行なう場合には、予め定めた基準値を用いてもよい。
本発明の関節リウマチ検出方法では、1つの被検試料に対し、必ずしもPAD4測定と抗PAD4自己抗体測定の双方を行なう必要はなく、いずれか一方のみでも関節リウマチを検出できる。具体的には、下記実施例に記載される通り、関節リウマチ患者はPAD4自己抗体を持っている者と持っていない者の2種類に分けることができ、PAD4自己抗体を持っていない患者ではPAD4が高値を示す。従って、被検試料に対し、PAD4測定と抗PAD4自己抗体測定のいずれか一方を行ない、その結果、健常者基準値よりも有意に高い測定値が得られれば、必ずしも他方の測定を実施する必要はなく、該生体は関節リウマチであると判断することができる。いずれか一方の測定の結果、健常者基準値よりも有意に高い測定値が得られなかった場合には、他方の測定を行うことにより、該生体が関節リウマチであるか否かを判断することができる。例えば、まずPAD4自己抗体の測定を行ない、自己抗体測定値が健常者基準値よりも高ければ、その時点で該生体は関節リウマチであると判断できる。自己抗体測定値が健常者基準値よりも有意に高くない場合には、該試料についてPAD4測定を行なう。健常者基準値よりもPAD4測定値が有意に高ければ、該生体は関節リウマチを罹患していると判断される。PAD4測定値も健常者基準値より高くない場合には、該生体は関節リウマチを罹患していないと判断することができる。これとは逆に、まずPAD4の測定を行ない、その結果に応じてPAD4自己抗体の測定を行なってもよい。また、1つの被検試料について、PAD4測定及び抗PAD4自己抗体測定の両者を同時に又は順次に行なってもよい。被検試料が複数ある場合には、いずれか一方の測定を行ない、関節リウマチであると判断できなかった試料について、もう一方の測定を行なうこととしてもよいし、また、全ての被検試料について、2つの測定を同時に又は順次に行なってもよい。
関節リウマチの検出方法に用いられる被検試料も、上記2つの本発明の測定方法と同様に、ヒト等の哺乳動物から採取される生体由来成分であり、好ましくは血清又は血漿である。
本発明はまた、上記した本発明のPAD4測定方法を実施するためのキットを提供する。PAD4測定キットは、上記した抗PAD4モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む。該抗体又はその抗原結合性断片は、公知の免疫測定用プレート等の固相に結合させた形態であってもよい。その他、該キットは、各種免疫測定に必要な周知の試薬類等をさらに含み得る。
同様に、本発明は、上記本発明の抗PAD4抗体測定方法を実施するためのキットを提供する。抗PAD4自己抗体測定キットは、上記した抗PAD4モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と、上記PAD4抗原を含む。該モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、公知の免疫測定用プレート等の固相に結合させた形態であってもよく、さらに、該PAD4抗原は、固相化させた該抗体等に結合させた形態であってもよい。その他、該キットは、各種免疫測定に必要な周知の試薬類等をさらに含み得る。
これらのキットは、本発明の関節リウマチ検出方法を実施するために用いることもできる。すなわち、本発明は、上記PAD4測定キット及び/又は上記抗PAD4自己抗体測定キットから成る関節リウマチ検出キットをも提供する。本発明の関節リウマチ検出方法において、PAD4の測定と抗PAD4自己抗体の測定の両者を行う場合には、関節リウマチ測定キットは上記PAD4測定キット及び上記抗PAD4自己抗体測定キットから成るが、この場合、関節リウマチ測定キットにおいて、PAD4測定キットと抗PAD4自己抗体測定キットが明瞭に区別できる形態で含まれていなくともよい。具体的には、例えば、上記した2つの測定キット中に含まれる抗PAD4モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、PAD4測定用の抗体等と抗PAD4自己抗体測定用の抗体等とに分けられていてもよいし、1つの容器に一括して含まれていてもよい。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
1. ヒト4型ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD4)組換えタンパク質の作製
PAD4遺伝子(配列番号1)は、レチノイン酸処理したヒト白血病細胞HL60から抽出した全RNAを用いて、RT-PCR法により単離した。すなわち、上記全RNAからoligo-dTプライマーによりcDNAを合成し、該cDNAを鋳型として、pENTR-hPAD4-F 5'-CACCATGGCCCAGGGGACATTGA-3' (23 mer)(配列番号3)とpENTR-hPAD4-R 5'-CCGAATTCGCGGCCGCGAGCTCTTGCTTGCCACAC-3' (35 mer)(配列番号4)をプライマーとして用いてPCRを行ない(94℃−1分、55℃−1分、72℃−2分を30サイクル、Taqポリメラーゼ(インビトロジェン社)及び添付のバッファーを使用)、PAD4 cDNAを増幅した。得られたPAD4 cDNAをGateway Technology(インビトロジェン社)を用いてpENRT/D-TOPO ベクター(インビトロジェン社)に挿入した。次に、PAD4組換えタンパク質を作製するため、PAD4遺伝子をN末端に6個のヒスチジン(6×His)配列を持つpDEST17ベクター(インビトロジェン社)に組み換え、大腸菌BL21-AIを用いて6×His-PAD4として組換えタンパク質を作製した。6×His-PAD4組換えタンパク質はNi-NTA アガロースビーズ(Qiagen)を用いて電気泳動による単一のバンド(分子量約74 kDa)が得られるレベルにまで精製した(図1)。また、PAD4組換えタンパク質の酵素活性は、benzoyl-L-arginine ethyl ester (BAEE)を基質にして測定した。即ち、PAD4組換えタンパク質と200 mM Tris-HCl (pH 7.6), 20 mM CaCl2, 10 mM DTT, 20 mM BAEEを25 μlずつ混合し、50℃で1時間反応させた。1時間後、5 M過塩素酸を12.5 μl加えて反応を停止し、氷上に20分間放置した。反応液50μlに比色定量用試薬(0.0416% FeCl3・6H2O:H2SO4:H2PO4(50:25:20)と0.5% ジアセチルモノオキシム, 0.01% チオセミルバジドを2 : 1で混合)950 μlを加え、煮沸水浴で5分間反応後、530 nmで吸光度を測定した。PAD4活性は、約10 U/mlであった。
2. 抗PAD4モノクローナル抗体の樹立
抗PAD4モノクローナル抗体は、上記1.で示したPAD4組換えタンパク質をBALB/Cマウスのフットパットに免疫し、所属リンパ節リンパ球とミエローマ細胞を融合することにより作製した。即ち、BALB/Cマウスに対し、フロイント完全アジュバントでエマルジョン化したPAD4組換えタンパク質を25〜50μg/マウスでフットパットに初回免疫を行い、3週間後、リコンビナントPAD4(25〜50μg/マウス)のみを追加免疫した。3日後、マウス後ろ肢リンパ節からリンパ球を取り出し、前もってRPMI-1640培地で培養していたマウスミエローマ細胞(P3U1)と脾細胞を1:3の比率で混合し、PEG(ベーリンガー社製)を用い細胞融合を行った。融合した細胞はHAT培地に浮遊した後、96well培養プレートに分注し、37℃ CO2インキュベータで培養した。
PAD4特異抗体産生細胞のスクリーニングは抗原固相ELISA法にて行った。即ち、上記1.で示したPAD4組換えタンパク質を96well ELISAプレート(ファルコン社製)に1μg/mlの濃度で50μl/well分注し、4℃で一晩放置することにより吸着させた。1%スキムミルク(Difco社製)でブロッキングした後、洗浄Buffer(0.05% Tween20を含むPBS)で3回洗浄し、細胞融合を行ったプレートの培養上清50μlを加え、37℃で1時間反応させた。同様に、洗浄Bufferで3回洗浄後、POD標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DACO社製)を加え、さらに37℃で1時間反応させた。洗浄Bufferで4回洗浄後、基質ABTS(和光純薬社製)を加え発色の見られるwellを選択した。この様にして抗PAD4抗体産生細胞のwellを選択した。最終的にPAD4-541抗体産生細胞とPAD4-543抗体産生細胞を確立し、これらの細胞から産生される抗体をELISA系の検討に用いた。
3. PAD4測定サンドイッチELISA系の確立
PAD4組換えタンパク質を抗原としてサンドイッチELISA系を確立した。即ち、NUNC社製ELISAプレート(POLYSORB) にPAD4-541抗体を10μg/mlの濃度にPBS 7.4で希釈し、100μl/wellづつ入れ、4 ℃で一晩放置し吸着させた。次に5%スキムミルク含有トリス緩衝液(pH 7.4)を200μl/well入れ、37℃で5時間放置しMaskingを行った。洗浄緩衝液(0.05%Tween20含有PBS 7.4)で3回洗浄後、PAD4組換えタンパク質を1%BSA-PBSで10ng/mlに調整し、100μg/well入れ、37℃で1時間反応させた。特異性を確認するため、PAD1、2、3についても組換えタンパク質を作製して20ng/mlに調整後、同様に反応させた。洗浄緩衝液で3回洗浄、アルカリフォスファターゼ(ALP)標識PAD4-543抗体を100μl/well入れ、37℃で1時間反応させた。洗浄緩衝液で充分洗浄し、基質PNPPを100μl/well入れ室温で37℃、2時間放置後、405nmの波長を測定した。その結果、図2に示すように、固相抗体及び標識抗体の抗原であるPAD4を反応させた時のみ吸光度が高く(hPAD-4)、一方で、PAD4と約60%のアミノ酸相同性を持つ他のPADファミリーであるPAD1, PAD2, PAD3は、上記固相抗体と標識抗体の組み合わせではほとんど結合しないことが確認された(hPAD-1、hPAD-2、およびhPAD-3)。このように、本固相抗体と標識抗体の組合せで、PAD4組換えタンパク質が特異的に測定できることが確認された。
4. 血中のPAD4測定とEDTA添加
血清/血漿中のPAD4測定を上記3.で確立したサンドイッチELISA測定系で行った。
まず、上記3.のPAD4組換えタンパク質の代わりに、健常者血清又は血漿を、ウシ血清及び無関係なモノクローナル抗体を含有したPBS(pH 7.4)で3倍希釈したものをサンプルとして用いてELISAを行ったところ、明確な値が得られなかった。そこで、上記サンプルに一定量(5 ng/ml)のPAD4組換えタンパク質を添加したもの(Hu. Serum-1及び2)を用いて同様に測定を行なった。コントロールサンプルとして、PBSのみ又はウシ血清アルブミン(BSA)と無関係なモノクローナル抗体を含有したPBSに一定量(5 ng/ml)のPAD4組換えタンパク質を添加したものを調製し、同様に測定した。
その結果、図3(a)に示すように、血清/血漿にPAD4組換えタンパク質を添加したサンプルでは、その反応が阻害され、適切な測定値が得られなかった。これに対して、血清/血漿サンプルにEDTAを5mMの終濃度で添加した場合、その反応阻害は解消され、コントロールと同程度の適切な測定値が得られた(図3(b))。これはPAD4がCa2+要求性酵素であることによると考えられる。免疫原やスクリーニングに用いたPAD4組換えタンパク質はCa2+非存在下で用いているが、血中PAD4は高濃度のCa2+存在下にあるため立体構造が異なっていると考えられる。従って、EDTAによりCa2+を除去しCa2+非存在下の構造に戻す必要があると考えられる。
5. 関節リウマチ患者血清/血漿でのPAD4の測定
関節リウマチ患者23例、健常者10例の血清/血漿中におけるPAD4の測定を上記3.および上記4.で確立したサンドイッチELISA測定系で行った。即ち、上記3.のPAD4組換えタンパク質の代わりに、関節リウマチ患者および健常者の血清又は血漿を、ウシ血清及び無関係なモノクローナル抗体を含有したPBS(pH 7.4)でそれぞれ3倍希釈し、且つ、終濃度5mMのEDTAを添加したものをサンプルとしてELISAを行った。
その結果、図4に示すように、関節リウマチ患者23例中13例が健常者M+2SD(0.20ng/ml)以上の高値を示した。また、関節リウマチ患者23例中9例がPAD4の値が0であった。一方、健常者には0値は認められなかった。CRP(C反応性蛋白), ESR30(30分間赤血球沈降速度), ESR60(60分間赤血球沈降速度), RF(リウマチ因子), MMP-3, 抗GAL抗核抗体, 抗CCP抗体, C3(補体), C4(補体), WBC(白血球), Hb(ヘモグロビン), Plt(血小板)など他の臨床検査項目との相関性を調べたが、PAD4と有意な相関を示すものは無かった。また、抗CCP抗体以外これら測定項目が有意に関節リウマチ患者を確定するデータも得られなかった。従って、上記3.と上記4.で示したPAD4 ELISA系は既存の臨床検査項目では検出できないほど高感度に、そして特異的に関節リウマチの診断が可能であることが示された。
6. 関節リウマチ患者血清/血漿でのPAD4自己抗体の測定
関節リウマチ患者23例中9例でPAD4値が0を示した原因を明らかにするため、関節リウマチ患者の血清/血漿中でのPAD4自己抗体の有無を調べた。
PAD4自己抗体の有無を調べるため、PAD4組換えタンパク質を抗原としてサンドイッチELISA系を確立した。即ち、NUNC社製ELISAプレート(POLYSORB) にPAD4を2.5 μg/mlの濃度にPBS 7.4で希釈し、100μl/1wellづつ入れ、4 ℃で一晩放置し吸着させた。次に5%スキムミルク(Difco社製)含有トリス緩衝液(pH 7.4)を200μl/well入れ、37℃で5時間放置しMaskingを行った。洗浄緩衝液(0.05%Tween20含有PBS 7.4)で3回洗浄後、関節リウマチ患者の血清/血漿をウシ血清アルブミン含有-PBSで50倍希釈し、100μl/well入れ、37℃で1時間反応させた。洗浄緩衝液で3回洗浄、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(POD)標識ヒトIgG抗体(DAKO社製)を100μl/well入れ、37℃で1時間反応させた。洗浄緩衝液で充分洗浄し、基質ABTSを100μl /well入れ37℃で30分放置後、405nmの波長を測定した。上記5.で示したPAD4値が0値を示した関節リウマチ患者7例と健常者32例の測定結果を図5に示した。関節リウマチ患者7例中6例でPAD4自己抗体の存在が示唆された。そこで、ELISA反応時、関節リウマチ患者の血漿に予めPAD4組換えタンパク質を加えインキュベートしたところ、6例中5例で発色の阻害が確認され、自己抗体の存在が確認された。従って、PAD4自己抗体の測定系が特異的であることも確認できた。
PAD4自己抗体はウエスタンブロット法でも確認した。すなわち、PAD4組換えタンパク質を電気泳動し、PVDF膜(ミリポア社)に転写した。ELISAでPAD4自己抗体陽性を示した関節リウマチ患者5例と健常者5例の血清/血漿をPBSで200倍希釈し、PVDF膜にふりかけ、抗原抗体反応を行わせた。抗体陽性コントロールとしてPAD4-541抗体を用いた。二次抗体にはHRP標識ヒトIgG抗体を用い、ECL化学発光(アマシャムファルマシア社)によりバンドを検出した。その後、PVDF膜はCBB(クマシーブリリアントブルー)染色を行った。その結果、ELISAでPAD4自己抗体陽性を示した関節リウマチ患者5例の全てでバンドが確認され、該5例のリウマチ患者は全て自己抗体が存在することが確認できた。一方、ELISAでPAD4陰性であった健常者5例では自己抗体は存在しなかった。従って、関節リウマチ患者ではPAD4自己抗体を持っている人と持っていない人の2種類に分けることが出来ることが示された。PAD4自己抗体を持っていない関節リウマチ患者は上記5.で示したように血清/血漿中のPAD4が高値を示した。
以上のように、(1)血清/血漿中PAD4自己抗体の有無の測定、(2)血清/血漿中PAD4値の測定の2種類のELISA測定系を組み合わせることにより、87%以上の確率で関節リウマチの診断が可能である。
7. PAD4-541固相プレートを用いたPAD4自己抗体の検出法
次に、バックグラウンドの低減等のため上記6.のPAD4自己抗体を検出する方法を改良した。上記6.では抗原を直接固相化するのに対し、改良法はMabで抗原を間接的に捕らえることに特徴がある。即ち、抗PAD4MabであるPAD4−541を、96well ELISAプレート(NUNC社製poly sorp)に10μg/mlの濃度で100μl/well分注し、4℃で一晩放置することにより吸着させた。1%スキムミルクでブロッキングした後、洗浄Buffer(0.05% Tween20を含むPBS)で3回洗浄し、組み換えPAD4(0.2μg/ml)100μl/wellを加え、37℃で1時間反応させた。同様に、洗浄Bufferで3回洗浄後、新たに追加した検体を含め34例のリウマチ患者血漿を1%BSA含有PBS7.4で100倍希釈し100μl/well加え37℃、1時間反応させた。次に、洗浄Bufferで3回洗浄後、アルカリフォスファターゼ標識標識抗ヒトIgG抗体(Zymet社製)を加え、さらに37℃で1時間反応させた。洗浄Bufferで4 回洗浄後、基質pNPPを加え37℃、1時間放置後405nmの吸光度を測定した。その結果、下記表1に示すように、本自己抗体測定法(PAD541固相サンドイッチELISA法)は上記6.で示した直接抗原固相法に比較し高い陽性率を示すことが確認された。
実施例で作製し精製したヒトPAD4組換えタンパク質の泳動像である。 実施例で確立したPAD4測定サンドイッチELISA系により、PAD組換えタンパク質希釈サンプルを測定した結果を表すグラフである。hPAD-1はヒトPAD1組換えタンパク質20ng/ml、hPAD-2はヒトPAD2組換えタンパク質20ng/ml、hPAD-3はヒトPAD3組換えタンパク質20ng/ml、hPAD-4はヒトPAD4組換えタンパク質10ng/mlである。 実施例で確立したPAD4測定系により、PAD4組換えタンパク質を添加して調製したサンプルを測定した結果を表すグラフである。(a)は各サンプルをEDTA非添加で測定した結果、(b)はEDTA添加して測定した結果である。PBS;PAD4添加したPBSサンプル、BSA/PBS;PAD4添加した、BSA及び無関係なモノクローナル抗体を含むPBSサンプル、Hu.Serum-1及び2;PAD4添加したヒト血清をBSA及び無関係なモノクローナル抗体を含むPBSで希釈したサンプル。 実施例で確立したPAD4測定系により、関節リウマチ患者及び健常者の血清/血漿サンプル中のPAD4を測定した結果を表す図である。 PAD4抗原を直接結合した固相を用いるELISAにより、関節リウマチ患者及び健常者の血清/血漿サンプル中の抗PAD4自己抗体を測定した結果を表す図である。

Claims (6)

  1. カルシウムイオンのキレート剤と接触させた被検試料について、PAD4と抗原抗体反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を用いた免疫測定を行ない、前記被検試料中に含まれ得るPAD4を測定することを含む、被検試料中のPAD4の測定方法。
  2. 前記カルシウムイオンのキレート剤がエチレンジアミン四酢酸である請求項1記載の方法。
  3. 前記被検試料が血清又は血漿である請求項1又は2記載の方法。
  4. 生体から得た被検試料に対して、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のPAD4の測定方法を行なうことにより測定される、前記被検試料中のPAD4の存在量を指標とする、関節リウマチの検出方法。
  5. 前記被検試料に対し、前記PAD4の測定方法を行ない、次いで、少なくともPAD4が検出されない被検試料に対して、PAD4と抗原抗体反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を固相に結合させ、固相上の該モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片にPAD4抗原を結合させて調製された抗原固定化固相を用いたサンドイッチ法により、被検試料中に含まれ得る、生体内でPAD4に対して産生された抗PAD4自己抗体を免疫測定することを含む、被検試料中の抗PAD4自己抗体の測定方法を行なうことにより、前記測定が行なわれる、請求項記載の方法。
  6. 前記被検試料の全てに対し、前記PAD4の測定方法及び前記抗PAD4自己抗体の測定方法の両者を行なうことにより測定される、前記被検試料中のPAD4の存在量及び抗PAD4自己抗体の存在量を指標とする、請求項記載の方法。
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