JP5248076B2 - 木目調床材、及び木目調床材の製造方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、木目模様を印刷したパターンシートが着色接着剤を介して基材の上面に貼着され、基材の上面にV溝が形成されている床材が開示されている。
また、特許文献2には、化粧合板の表面を下地処理し、ベタ塗り状の隠蔽層を形成し、この隠蔽層の上に木目柄を版ロールにより転写印刷して転写印刷層を形成し、この転写印刷層の表面に紫外線硬化型透明塗料により仕上げ塗装をしてなる木質系床材が開示されている。
しかしながら、天然木は、明暗差が徐々に変化しているため、上記特許文献3に記載のようにシャープなデザインを形成する技術を用いて木目模様を形成しても、天然木の外観を呈さない。さらに、特許文献3の床材は、エンボス凹部の底部に細チップ片を充填した後、該凹部に下地層の表面と同じ位置まで透明樹脂層が充填されているので、該床材の表面が略鏡面となり、天然木の触感を有しない。
また、年輪は、交互に形成された早材と晩材によって輪状に現れる。早材は、木質が粗く軟らかい部分であり、外観上、薄く見える。晩材は、木質が緻密で硬い部分であり、外観上、濃く見える。柾目及び板目の何れにおいても、晩材の部分は、光沢性があり且つツルツルとした触感(以下、この触感を「鏡面的な触感」という)であり、一方、早材の部分は、光沢性が低く且つざらついた触感(以下、この触感を「粗面的な触感」という)である。さらに、晩材から早材に向かうに従って、光沢性は徐々に低下し、且つ触感についても徐々に粗面的な触感となっていく。
本発明者らは、上記天然木の木目の特性を考慮し、これを再現すべく鋭意研究を重ねることによって、本発明を完成した。
さらに、上記凹部は、凹部と凸部の境界部から凹部の底部に向かって下方に傾斜する傾斜面が形成されている。この凹部の傾斜面に従い、凹部内に充填された短繊維含有樹脂層の厚みは、凸部の境界部近傍において非常に薄く、且つ凹部の底部に向かうに従って厚くなっている。このため、短繊維含有樹脂層の表面は、凹部と凸部の境界部から凹部の中央側に向かうに従って、徐々に光沢性が低下し、且つ触感についても徐々に粗面的な触感となっていく。
よって、上記木目調床材は、天然木の木目の晩材及び早材がリアルに現されており、触感においても天然木に比して遜色がない。
また、繊維長が0.05〜1.00mmの短繊維を用いることにより、短繊維含有樹脂層の表面を早材のような外観とすることができる。
上記好ましい木目調床材は、前記短繊維含有樹脂層の表面が前記凹部の中央側に向かうに従って僅かに凹んで形成されているので、天然木の早材の触感をよりリアルに現すことができる。
上記木目調床材の製造方法によれば、上記木目調床材を簡易に製造できる。
また、本発明の木目調床材の製造方法によれば、上記木目調床材を簡易に且つ確実に製造できる。
次に、本発明の実施形態を図面を参照しつつ詳述する。
図1は、本発明の木目調床材の一実施形態の部分平面図である。図2は、図1のI−I線で切断した端面図である。なお、各図において、実際の寸法とは異なっていることに留意されたい。
上記凸部4及び凹部5は、樹脂層3の表面に木目模様を模したエンボス加工を施すことによって形成されている。
従って、上記木目調床材1は、外観及び触感の何れにおいても、天然木の木目模様に極めて近似している。
以下、各構成要素毎に分説しつつ、本発明の木目調床材1を具体的に説明する。
一つの実施形態において、床材本体2は、上から順に、樹脂層3と、中間層7と、バッキング層8と、を有する。
樹脂層3は、従来公知の合成樹脂を使用することができる。また、該樹脂層3は、所望の色彩に着色されている。該色彩は、特に限定されないが、天然木の木目又は天然木の焼き板などの色彩に近似させるため、樹脂層3の色彩は、黒色、赤茶色、黄土色などが好ましい。
もっとも、後述するように、樹脂層3の下方に意匠印刷層(着色層)が設けられる場合には、樹脂層3は、透明または半透明とされる。
また、樹脂層3には、樹脂の種類に応じて、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和酸化物などの難燃剤;炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、マイカ等の充填材;ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、リン酸エステル系、塩素化パラフィン、トリメリット酸エステルなどの可塑剤;ステアリン酸カルシウム、無機塩、有機スズ化合物などの安定剤;滑剤;酸化防止剤などの各種の添加剤を適宜混合してもよい。
塩化ビニル系樹脂を用いる場合、平均重合度500〜2500程度、好ましくは平均重合度700〜2000程度の塩化ビニル系樹脂が用いられる。平均重合度が前記範囲のような比較的小さい塩化ビニル系樹脂を用いることにより、表面光沢性の高い樹脂層3を形成できる。従って、凸部4の表面の光沢性を高めることができ、天然木の晩材の光沢性をよりリアルに現すことができる。
なお、本明細書において、平均重合度は、JIS K 6720−2で求められる値をいう。
上記樹脂層3の厚みは、特に限定されないが、通常、0.5mm〜2.5mm程度に形成される。
樹脂層3として塩化ビニル系樹脂を用いる場合には、中間層7についても塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。樹脂層3と中間層7をより一体化させることができ、容易に床材本体2を製造することができるからである。また、中間層7は、樹脂層3の塩化ビニル系樹脂よりも平均重合度が大きい塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。具体的には、中間層7は、平均重合度800〜3500程度、好ましくは平均重合度1000〜3000程度の塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。上述のように、表面光沢性を高めるため、樹脂層3の樹脂は平均重合度が比較的小さい塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましいが、その反面、樹脂層3の強度などが低下する。このため、中間層7として、樹脂層3よりも平均重合度の大きい塩化ビニル系樹脂を用いることにより、床材本体2の全体の強度を高めることができる。
なお、上記中間層7の厚みは、通常、0.5mm〜2.5mm程度に形成される。
上記意匠印刷層81が設けられる場合、樹脂層3は、透明または半透明な樹脂が用いられる。該樹脂層3の透明度合いは、樹脂層3の光線透過率が50%以上、好ましくは80%以上である。ただし、光線透過率は、JIS K 7105−1981(プラスチックの光学的特性試験方法)に準じた方法によって測定した値であり、光線透過率(%)=(T2/T1)×100、で求められる。T2は、全光線透過量(試験片を通過した全光量)を表し、T1は、入射光量を表す。
このオーバーコート層82の厚みは、3〜7μm程度に形成される。余りに厚いオーバーコート層82を設けると、樹脂層3の表面及び短繊維含有樹脂層6の表面の光沢性や触感が損なわれる虞があるからである。
凸部4及び凹部5は、樹脂層3の表面に、例えば、メカニカルエンボス加工を施すことによって形成されている。すなわち、樹脂層3の表面は、凹凸状に形成されている。
凸部4の平面形状は、図1に示すように、天然木の晩材の部分に対応するように、樹脂層3の面内の一方向Xに延びる比較的幅狭な曲線状に形成されている。凹部5は、隣合う凸部4間に形成された凹みであり、該凹部5の平面形状は、天然木の早材の部分に対応するように、樹脂層3の面内の一方向Xに延びる比較的幅広な曲線状に形成されている。
なお、凸部4及び凹部5の平面形状は、一方向Xに沿って概略延びており、一方向Xに平行に延びるという厳格な意味ではない。
よって、傾斜面53の傾斜角度が小さい凹部5や傾斜面53の傾斜角度が大きい凹部5を、適宜組み合わせて樹脂層3に形成することにより、より天然木の木目模様に近似した木目調床材1を形成できる。
短繊維含有樹脂層6は、短繊維61と、樹脂と、を有する。短繊維含有樹脂層6は、上記凹部5に埋め込むように充填されている。
凹部5内に充填された短繊維含有樹脂層6の表面は、含有された短繊維が光を乱反射するので、光沢性が低く、更に、短繊維が露出するので、粗面的な触感となる。
好ましくは、短繊維含有樹脂層6の表面は、凹部5の中央側に向かうに従って僅かに凹んで形成されている。このように短繊維含有樹脂層6の表面の中央部が僅かに凹んでいると、天然木の早材の部分をよりリアルに現すことができる。
該樹脂成分としては、ペーストタイプ(またはサスペンジョンタイプ)の塩化ビニル系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂などを溶剤に溶解させた溶剤型樹脂又はエマルジョン型樹脂;紫外線硬化樹脂などの電離放射線硬化型樹脂などが挙げられる。
上記短繊維61の繊度は、特に限定されないが、好ましくは1.0〜5.5dtexであり、より好ましくは1.5〜3.5dtexである。短繊維が余りに細いと、短繊維含有樹脂層6の表面のざらつき感が殆どなくなり、一方、短繊維が余りに太いとざらつき感が大きくなり過ぎるからである。
短繊維の含有量が余りに少ないと、短繊維含有樹脂層6の表面の光沢性を抑制できず、短繊維含有樹脂層6の表面と樹脂層3の表面(凸部4の表面)の質感に差が生じなくなる。一方、短繊維の含有量が余りに多いと、短繊維含有樹脂層6の剥離または亀裂を生じる虞があり、更に、短繊維含有樹脂層6の表面に露出する短繊維の量が多くなり過ぎるからである。
なお、上記短繊維含有樹脂層6には、適宜添加剤が配合されていてもよい。該添加剤としては、上記樹脂層3で例示した添加剤などを適宜選択して用いることができる。
上記木目調床材1は、例えば、下記の方法によって製造することができる。
一つの実施形態においては、木目調床材1は、長尺状に形成される。なお、長尺状とは、一方向に於ける長さが他方向に比して十分に長い形状を言い、例えば、一方向に於ける長さが他方向に於ける長さの10倍以上である。
まず、長尺状のバッキング層(例えば、長尺状の不織布)の上に、中間層を形成する樹脂組成物(主成分:ペースト塩化ビニルなど)を塗工し、更に、この上に樹脂層を形成する樹脂組成物(主成分:ペースト塩化ビニルなど)を塗工し、これをオーブンに通してプレゲル化し、各層を一体化する。このようにして床材本体長尺物28を得ることができる。
エンボス加工を施すことにより、床材本体長尺物28の樹脂層の表面に、木目模様を模した凸部及び凹部が形成される。該凸部及び凹部は、床材本体長尺物28の長手方向に延びて形成されている。
なお、エンボスローラ91の表面には、凹部の形状に対応したエンボス突状部が形成されており、該エンボス突状部を樹脂層の表面に押圧することにより、凹部が形成され、凹部以外の部分は凹まずに凸部として残る。
該短繊維含有樹脂92の粘度は、特に限定されないが、短繊維含有樹脂の塗工性が良好であること及び該樹脂を掻き取り易くすることなどを考慮すると、2000〜4000mPa・sに調製されていることが好ましい。
掻取り板93を当てた状態で、床材本体長尺物28を長手方向に移動させることにより、凸部の表面上の短繊維含有樹脂を掻き取ることができる。これにより、凹部内に短繊維含有樹脂が残り、且つ、凸部の表面が露出した床材本体長尺物28を得ることができる。
また、掻取り板93は、樹脂層の表面に対して垂直状に当てられていてもよいが、掻取り板93は、図示したように、樹脂層の表面に対して鋭角状(又は鈍角状)に当てられることが好ましい。床材本体長尺物28が上下に揺れた際、掻取り板93の先端部93a(樹脂層に当てられた端部)が追従して上下に撓み、凸部の表面の短繊維含有樹脂92を確実に掻き取ることができるからである。
このようにして掻き取ると、図2に示すように、短繊維含有樹脂層6の表面が、凹部5の中央側に向かうに従って僅かに凹んでいる木目調床材1を製造できる。
長尺状のバッキング層(例えば、長尺状の不織布)の上に、中間層を形成する樹脂組成物(主成分:ペースト塩化ビニルなど)を塗工し、更に、この上に樹脂層を形成する樹脂組成物(主成分:ペースト塩化ビニルなど)を塗工し、これをオーブンに通してゲル化する。得られた床材本体長尺物28は、そのまま床材として使用できるが、本発明では、前記床材本体長尺物28は、一対のエンボスローラ91に導かれ、床材本体長尺物28の表面にエンボス加工が施される。
エンボス加工の具体的な方法は、上記長尺状の木目調床材の製造方法と同様である。
エンボス加工によって、樹脂層の表面に凸部及び凹部が形成された床材本体長尺物28は、裁断機96にて所定形状に打ち抜かれる。この裁断によって、床材本体タイル29が得られる。
次に、樹脂層の表面に掻取り板92を当てて、余分な短繊維含有樹脂92を掻き取る。
掻取り板93による短繊維含有樹脂92の掻き取り方法は、上記長尺状の木目調床材の製造方法と同様である。簡単に説明すると、掻取り板93は、樹脂層の表面に対して鋭角状(又は鈍角状)にして、圧力を加えられながら当てられる。また、掻取り板93の先端部は、凸部及び凹部の延びる方向に対して直交する方向に延在して当てられる。
本発明の木目調床材1は、外観及び触感の何れも天然木の木目模様に極めて近似している。
具体的には、樹脂層3の表面である凸部4の表面は、光沢性が高く、且つ鏡面的な触感となっている。従って、凸部4の表面は、天然木の晩材に近似している。また、凹部5に充填された短繊維含有樹脂層6の表面は、短繊維が光を乱反射するので、光沢性が低く、且つ短繊維が露出するので、粗面的な触感となっている。従って、凹部5に充填された短繊維含有樹脂層6の表面は、天然木の早材に近似している。
特に、上記製造方法のように、短繊維含有樹脂を塗工後、これを掻き取る方式によれば、凹部5の中央部に位置する短繊維含有樹脂を、境界部51近傍に於ける短繊維含有樹脂よりも、深く掻き取ることができる。このため、短繊維含有樹脂層6の表面の僅かに凹んだ部分に、短繊維が比較的多く露出する。従って、天然木の早材の触感をよりリアルに現わすことができる。
ポリエステル製不織布の上に、厚み1.2mmの下記樹脂組成物Aを積層し、この上に、厚み0.8mmの下記樹脂組成物Bを積層した後、160〜180℃で2分間加熱し、プリゲル化した。得られた樹脂層の表面に、木目模様を模したエンボスローラを用いて、傾斜面を有する凹部(深さ0.2mm)及び凸部を形成した。
次に、上記樹脂層の表面に、セルロース系短繊維(繊維長:0.2mm。繊度:1.9dtex)が5質量%配合された下記樹脂組成物Cを塗工した後、金属ヘラを用いて、樹脂層の表面を擦り、凸部の表面上の短繊維含有樹脂組成物Cを除去した。
これをオーブンで180〜200℃で5分間加熱することにより、木目調床材を得た。
不織布の上に、厚み2.5mmの下記樹脂組成物Aを積層し、この上に、厚み0.5mmの下記樹脂組成物Bを積層した後、180〜200℃で5分間加熱し、これらを完全にゲル化させて一体化した。得られた樹脂層の表面に、木目模様を模したエンボスローラを用いて、傾斜面を有する凹部(深さ0.2mm)及び凸部を形成した後、これを縦横10×90cmのタイル状に打ち抜いた。
次に、上記樹脂層の表面に、ポリエステル短繊維(繊維長:0.5mm。繊度:2.5dtex)が3質量%配合された紫外線硬化型樹脂(中国塗料株式会社製、商品名「オーレックスNo.190」)を塗工した後、金属ヘラを用いて、樹脂層の表面を擦り、凸部の表面上の短繊維含有紫外線硬化型樹脂を除去した。
これに紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させることにより、木目調床材を得た。
PVC樹脂(ペーストレジン、平均重合度1500)…100質量部。
ジオクチルフタレート…60質量部。
炭酸カルシウム…80質量部。
安定剤…5質量部。
酸化チタン…2質量部。
(樹脂組成物B)
PVC樹脂(ペーストレジン、平均重合度720)…100質量部。
ジオクチルフタレート…45質量部。
炭酸カルシウム…35質量部。
安定剤…5質量部。
着色トーナー…2質量部。
(樹脂組成物C)
PVC樹脂(ペーストレジン、平均重合度1000)…100質量部。
ジオクチルフタレート…35質量部。
安定剤…3質量部。
Claims (4)
- 床材本体の樹脂層の表面に木目模様を模したエンボス加工を施すことにより、凸部と凹部が形成され、
前記凹部は、前記凸部の境界部から凹部の底部に向かって傾斜する傾斜面が形成されている部分を有し、
前記凹部内に、短繊維含有樹脂層が充填されており、
前記凸部の境界部近傍の短繊維含有樹脂層の厚みが、前記凹部の底部における短繊維含有樹脂層の厚みよりも薄く、
前記短繊維が、合成樹脂繊維又は天然繊維であることを特徴とする木目調床材。 - 前記短繊維の繊度が1.0〜5.5dtexで且つその繊維長が0.05〜1.00mmである請求項1に記載の木目調床材。
- 前記短繊維含有樹脂層の表面が前記凹部の中央側に向かうに従って僅かに凹んでいる請求項1または2に記載の木目調床材。
- 床材本体の樹脂層の表面に、木目模様を模したエンボス加工を施すことにより、前記樹脂層の一方向に延びる凸部と凸部の境界部から底部に向かって傾斜する傾斜面を有する凹部とを形成し、
前記樹脂層の凹部及び凸部を含む表面に、合成樹脂繊維又は天然繊維の短繊維を含む短繊維含有樹脂を塗工し、
前記樹脂層の表面に掻取り板を当て、前記床材本体及び掻取り板の少なくとも何れか一方を一方向に移動させながら前記凸部の表面上の短繊維含有樹脂を掻き取ることにより、前記凹部内に短繊維含有樹脂を残しつつ、凸部の表面を露出させることを特徴とする木目調床材の製造方法。
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