JP5240103B2 - 積層位相差板、位相差板製造用フィルム及びそれを用いた積層位相差板の製造方法 - Google Patents
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また、特許文献4のような技術も知られている。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔6〕を要旨とする。
〔2〕前記A層におけるスチレン成分の含有量が、前記A層に含有される樹脂全体の0.5〜5重量%である、〔1〕記載の積層位相差板。
〔3〕ポリカーボネート、及び、ポリカーボネートとポリスチレンとの共重合物を含有するA層と、スチレン系樹脂を含有するB層とが、直接に積層されてなる積層位相差板製造用フィルムであって、一軸延伸した際に、延伸方向をX軸、延伸方向に対してフィルム面内で直交する方向をY軸、およびフィルム厚さ方向をZ軸としたときに、フィルム面に垂直に入射しかつ電気ベクトルの振動面がXZ面にある直線偏光の、フィルム面に垂直に入射しかつ電気ベクトルの振動面がYZ面にある直線偏光に対する位相が、温度T1でX軸方向に一軸延伸したときには遅れ、温度T1とは異なる温度T2でX軸方向に一軸延伸したときには進む、位相差板製造用フィルム。
〔4〕前記A層に含有される樹脂のガラス転移温度TgAと、前記B層に含有される樹脂のガラス転移温度TgBとの差の絶対値が5℃以上である、〔3〕に記載の位相差板製造用フィルム。
〔5〕前記A層におけるスチレン成分の含有量が、前記A層に含有される樹脂全体の0.5〜5重量%である、〔3〕又は〔4〕記載の位相差板製造用フィルム。
〔6〕〔1〕又は〔2〕記載の積層位相差板の製造方法であって、〔3〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の位相差板製造用フィルムを温度T1またはT2のいずれかの温度で一方向に一軸延伸処理を行う第一延伸工程と、前記第一延伸工程で一軸延伸処理を行った方向と直交する方向に、前記と異なる温度T2またはT1で一軸延伸処理を行う第二延伸工程とを有する、積層位相差板の製造方法。
本発明の位相差板製造用フィルム及び積層位相差板の製造方法によれば、観察角度による色調の変化が少なく、且つ積層された層間の接着強度が強い積層位相差板を、容易に製造することができる。
本発明の積層位相差板は、少なくともA層とB層とを有し、前記のA層とB層とは直接に積層されている。また、A層はポリカーボネート、及び、ポリカーボネートとポリスチレンとの共重合物(以下、適宜「ポリカポリスチレン共重合物」という。)を含有し、B層はスチレン系樹脂を含有する。なお、A層の符号「A」、及び、B層の符号「B」は、いずれもその符号が付された層を他の層から区別するために付した符号であり、層の区別以外の意味を有するものではない。
A層は、ポリカーボネートとポリカポリスチレン共重合物とを含有する層である。したがって、A層は、少なくともポリカーボネート及びポリカポリスチレン共重合物を含む樹脂を含む層である。
ポリカーボネートとしては、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)による繰り返し単位(以下、適宜「カーボネート成分」という。)を有する重合体であれば任意のものを使用できる。また、ポリカーボネートは、1種類の繰り返し単位からなるものを用いてもよく、2種類以上の繰り返し単位を任意の比率で組み合わせてなるものを用いてもよい。さらに、ポリカーボネートは、カーボネート成分以外の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。ポリカーボネートが共重合体である場合、ポリカーボネートはランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体でもよく、グラフト共重合体でもよい。ただし、ポリカーボネートがカーボネート成分以外の繰り返し単位を有する場合でも、ポリカーボネートが含むカーボネート成分の含有率が高いことが好ましく、具体的には、80重量%以上が好ましく、85重量%以上がより好ましい。
A層に含まれる成分のうち、ポリカーボネート及びポリカポリスチレン共重合物のカーボネート成分は正の固有複屈折値を有する。一方、ポリカポリスチレン共重合物のスチレン成分は負の固有複屈折値を有する。このため、A層におけるスチレン成分の量によって、ポリカーボネートの複屈折を打ち消し、発現するA層の位相差を調整することができる。
例えば、A層はポリカーボネート及びポリカポリスチレン共重合物以外の重合体を含んでいても良い。中でも、A層を構成する樹脂の固有複屈折値を正にすることが好ましいことから、その他の重合体は正の固有複屈折値を有する重合体であることが好ましい。その具体例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル重合体;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド重合体;ポリフェニレンエーテル重合体等のポリアリーレンエーテル重合体;ポリビニルアルコール重合体、ポリアリレート重合体、セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン重合体、ポリスルホン重合体、ポリアリルサルホン重合体、ポリ塩化ビニル重合体、ノルボルネン重合体、棒状液晶ポリマーなどが挙げられる。また、その他の重合体の構成成分はポリカーボネート及びポリカポリスチレン共重合物の一部に繰り返し単位として含有されていても良い。ただし、本発明の利点を顕著に発揮させる観点からは、A層においてその他の重合体の量は少ないことが好ましい。その他の重合体の具体的な量は、例えばポリカーボネート及びポリカポリスチレン共重合物の合計100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が更に好ましい。中でも、その他の重合体は含まないことが特に好ましい。
B層はスチレン系樹脂を含有する層である。スチレン系樹脂とは、スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体、またはこれらと他のモノマーとの共重合体、などのスチレン系重合体を含む樹脂をいう。
スチレン系重合体は位相差発現性に優れた重合体であり、位相差板の材料として優れる。さらに、本発明の積層位相差板ではA層に含有されるポリカポリスチレン共重合物がスチレン成分を含むので、A層及びB層が同じスチレン系の重合体成分を含むことになり、A層とB層との親和性が高まるため、A層とB層との間の接着強度を高めることが可能となっている。
例えば、B層はスチレン系重合体以外の重合体を含んでいても良い。中でも、B層を構成する樹脂の固有複屈折値を負にすることが好ましいことから、その他の重合体は負の固有複屈折値を有する重合体であることが好ましい。その具体例を挙げると、ポリアクリロニトリル重合体、ポリメチルメタクリレート重合体、あるいはこれらの多元共重合ポリマーなどが挙げられる。また、その他の重合体の構成成分はスチレン系重合体の一部に繰り返し単位として含有されていても良い。ただし、本発明の利点を顕著に発揮させる観点からは、B層においてその他の重合体の量は少ないことが好ましい。その他の重合体の具体的な量は、例えばスチレン系重合体100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が更に好ましい。中でも、その他の重合体は含まないことが特に好ましい。
なお、B層は、その他の成分を、1種類を単独で含んでいてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含んでいても良い。
A層とB層とは、その層界面の少なくとも一部が接着層を介さずに直接に接しており、好ましくはその層界面の全体が接着層を介さずに直接に接している。このように接着層を介することなくA層とB層とが直接に積層されていても、A層とB層とが共にスチレン成分を含んでいるため、A層とB層とは強固に接着される。したがって、接着剤が不要となることで本発明の積層位相差板の厚みを薄くすることが可能となる。また、A層とB層とが直接に接することは、光学的機能の発現の点でも有利である。
本発明の積層位相差板は、A層の厚さとB層の厚さとのバランスを改善することができる点を利点の一つとしている。A層及びB層の厚みが相対的に厚くなりすぎたり薄くなりすぎると、各層の厚み精度が悪化し、ひいては位相差の精度が悪化する可能性がある。ここで、A層及びB層の厚さとは、A層及びB層がそれぞれ1層であればその厚さをいい、2層以上であればその合計の厚さをいう。A層の厚さ/B層の厚さの比の具体的な値は後述する位相差に関係するため、発現させたい所望の位相差に応じて設定されることになるが、通常0.12以上、好ましくは0.17以上であり、通常8以下、好ましくは6以下である。
なお、厚さのばらつきは、上記で測定した測定値の算術平均値Taveを基準とし、測定した厚さTの内の最大値をTmax、最小値をTminとして、以下の式から算出する。
厚さのばらつき(μm)=Tave−Tmin、及び
Tmax−Tave のうちの大きい方。
本発明の積層位相差板は、A層及びB層以外の層を有してもよい。例えば、積層位相差板の滑り性をよくするマット層、耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層、反射防止層、防汚層等を有することができる。
本発明の積層位相差板は、入射角0°におけるレターデーションReと、入射角40°におけるレターデーションR40との比R40/Reが、0.92以上、好ましくは0.95以上であり、1.08以下、好ましくは1.05以下である。ReとR40とがこのような関係を満たすことにより、観察角度による色調の変化を少なくすることができる。
ReとR40との前記の関係を満たすようにするには、A層を構成する樹脂の固有複屈折値が正であり、B層を構成する樹脂の固有複屈折値が負であることが望ましい。本発明においてA層が含むポリカーボネート及びポリカポリスチレン共重合物のカーボネート成分は正の固有複屈折値を有し、B層が含むスチレン系樹脂は負の固有複屈折値を有するため、特段の手段を講じなくても通常は本発明の積層位相差板は、A層を構成する樹脂の固有複屈折値が正となり、B層を構成する樹脂の固有複屈折値が負となっている。
また、レターデーションReとR40との対比をする波長は、可視光線領域内のいずれかの波長とすることができ、好ましくは550nmとすることができる。
前記の入射角0°及び40°におけるレターデーションRe及びR40は、王子計測器社製KOBRA−WRを用いて、平行ニコル回転法により測定することができる。
nave=Σ(ni×Li)/ΣLi
ni:i層の樹脂の屈折率
Li:i層の膜厚
本発明の積層位相差板の製造方法に制限は無いが、本発明の位相差板製造用フィルムに対して、温度T1またはT2のいずれかの温度で一方向に一軸延伸処理を行う第一延伸工程と、第一延伸工程で一軸延伸処理を行った方向と直交する方向に、前記と異なる温度T2またはT1で一軸延伸処理を行う第二延伸工程と行う製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」という。)によれば、本発明の積層位相差板を容易に製造することができる。
位相差板製造用フィルムは、ポリカーボネート及びポリカポリスチレン共重合物を含有するA層と、スチレン系樹脂を含有するB層とが、直接に積層されてなるフィルムである。ここで、位相差板製造用フィルムにおけるA層及びB層は、前記[1−1.A層]、[1−2.B層]及び[1−3.A層とB層との積層関係]の項で説明したA層及びB層と同様である。また、位相差板製造用フィルムがA層及びB層以外にその他の層を有していてもよい点は[1−5.その他の層]と同様である。
なお、位相差板製造用フィルムの面内の様々な方向のうち、少なくとも一の方向をX軸とした場合に前記の要件を満たせば、その方向を延伸方向として、本発明の積層位相差板の製造に用いうる。位相差板製造用フィルムが、延伸前において特に配向処理をしていない等方な原反フィルムであれば、面内の一の方向をX軸としたときに当該要件を満たせば、通常は、他のどの方向をX軸としたときも当該要件を満たすことができる。
ところで、本発明の位相差板製造用フィルムは、遅相軸または進相軸の現れ方が延伸温度に依存するフィルムである。このような位相差の発現の温度依存性を有するフィルムは、正の固有複屈折値を有する樹脂を含むA層と、負の固有複屈折値を有する樹脂を含むB層とを、樹脂の固有複屈折値および各樹脂層の厚さ比などの関係を調整して積層することで得られる。
このように、一軸延伸によってA層およびB層のそれぞれに発現するX軸方向の屈折率nxとY軸方向の屈折率nyとの差と、A層の厚さの総和と、B層の厚さの総和とを、調整することで、XZ偏光(即ち、フィルム面に垂直に入射しかつ電気ベクトルの振動面がXZ面にある直線偏光)の、YZ偏光(即ち、フィルム面に垂直に入射しかつ電気ベクトルの振動面がYZ面にある直線偏光)に対する位相が、温度T1でX軸方向に一軸延伸したときには遅れ、温度T1とは異なる温度T2でX軸方向に一軸延伸したときには進むフィルムを得ることができる。
なお、温度T1は、THまたはTLのいずれか一方の温度であり、温度T2は、T1とは異なるTHまたはTLのいずれか一方の温度である。
図2及び図3に図示される積層フィルム1及び積層フィルム2はいずれも、固有複屈折値が正である樹脂からなるA層及び固有複屈折値が負である樹脂からなるB層を有する。また、図4及び図5はそれぞれ、積層フィルム1及び積層フィルム2をX軸方向に種々の温度において延伸した場合における、延伸後のA層及びB層の位相差(XZ偏光の、YZ偏光に対する位相の差)を示すグラフである。図4及び図5において、横軸は延伸温度であり、縦軸は、A層及びB層それぞれの(位相差の絶対値/延伸倍率)の値であり、曲線A及び曲線Bはそれぞれ、A層及びB層におけるこれらの関係を示す。積層フィルム1及び積層フィルム2はいずれもA層とB層との積層体であるので、A層及びB層は、常に同じ倍率で延伸されたものとなる。
一方、積層フィルム2は、図5に示すように、点X3を境に、それより低い温度範囲においてはXZ偏光がYZ偏光より進み、高い温度範囲においてはXZ偏光がYZ偏光より遅れる。したがって、積層フィルム2においては、点X3における温度より高い温度にT1が、点X3における温度より低い温度にT2が存在することとなり、前記の要件を満たす。
位相差板製造用フィルムの製法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形法;各樹脂層の材料を順次流延し積層させる共流延法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形法;及び樹脂フィルム表面に樹脂溶液をコーティングする等のコーティング成形法などの公知の方法が挙げられる。中でも、製造効率や、フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出成形法が好ましい。共押出成形法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法にはフィードブロック方式およびマルチマニホールド方式があるが、A層の厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式が特に好ましい。
冷却ドラムの数は特に制限されないが、通常は2本以上である。また、冷却ドラムの配置方法としては、例えば、直線型、Z型、L型などが挙げられるが特に制限されない。またダイスの開口部から押出された溶融樹脂の冷却ドラムへの通し方も特に制限されない。
本発明の製造方法では、まず、位相差板製造用フィルムを温度T1またはT2のいずれかの温度で一方向に一軸延伸処理を行う第一延伸工程を行う。温度T1で延伸すると、XZ偏光のYZ偏光に対する位相が遅れる。一方、温度T2で一軸延伸したときには、XZ偏光のYZ偏光に対する位相が進む。
一方、TgB>TgAであるとき、温度T2は、好ましくはTgA+3℃以上かつTgB+5℃以下であり、より好ましくはTgA+5℃以上かつTgB+3℃以下である。また温度T1は、好ましくはTgA+3℃以下であり、より好ましくはTgA以下である。この場合、第一延伸工程においては温度T2で行うことが好ましい。
延伸温度T1及びT2を前記の範囲に収めることにより、A層及びB層の屈折率を容易に所望の範囲に調整することができる。
一軸延伸処理では、延伸ムラや厚さムラを小さくするために、延伸ゾーンにおいてフィルム幅方向に温度差がつくようにすることができる。延伸ゾーンにおいてフィルム幅方向に温度差をつけるには、例えば、温風ノズルの開度を幅方向で調整したり、IRヒーターを幅方向に並べて加熱制御したりするなど、公知の手法を用いることができる。
第一延伸工程を行った後で、第一延伸工程で一軸延伸処理を行った方向と直交する方向に、第一延伸工程とは異なる温度T2またはT1で一軸延伸処理を行う第二延伸工程を行う。第二延伸工程においては、ガラス転移温度の関係がTgA>TgBであるとき温度T2で一軸延伸処理を行うことが好ましく、TgB>TgAであるとき温度T1で一軸延伸処理を行うことが好ましい。
第二延伸工程での一軸延伸処理は、第一延伸工程での一軸延伸処理で採用できる方法と同様の方法が適用できる。ただし第二延伸工程での一軸延伸処理は、第一延伸工程での一軸延伸処理よりも小さい延伸倍率で行うことが好ましい。
さらに、本発明の製造方法では、面内の遅相軸方向の屈折率nxとそれに面内で直交する方向の屈折率nyと厚さ方向の屈折率nzとがnx>nz>nyの関係を満たす位相差板が広い面積で容易に得られる。この点を図3及び図5に示した積層フィルム2を、X軸方向に延伸し、続いてY軸方向に延伸する場合を参照して説明する。まず、図5における点X3より高い温度(XZ偏光がYZ偏光より遅れる温度=T1)においてX軸方向に延伸することにより、A層の面内方向の屈折率がnx>ny=nz(ここではnxはX軸方向の屈折率)となり、一方B層は、高い温度での延伸であるため屈折率が変化しない。続いて、図5における点X3より低い温度(XZ偏光がYZ偏光より進む温度=T2)においてY軸方向に延伸することにより、得られたA層におけるnx及びnzは低下し、一方B層においてはnyが低下しnx=nz>nyのB層となる。そのため、各延伸の延伸倍率及び各層の厚さを適宜調整することにより、A層及びB層全体でみた屈折率が望ましいnx>nz>nyの関係を有する積層位相差板を得ることができる。
本発明の製造方法では、前記の第一延伸工程及び第二延伸工程以外にその他の工程を行うようにしても良い。
例えば、第一延伸工程で位相差板製造用フィルムを延伸する前に、位相差板製造用フィルムを予め加熱する工程(予熱工程)を設けても良い。位相差板製造用フィルムを加熱する手段としては、例えば、オーブン型加熱装置、ラジエーション加熱装置、又は液体中に浸すことなどが挙げられる。中でもオーブン型加熱装置が好ましい。予熱工程における加熱温度は、通常は延伸温度−40℃以上、好ましくは延伸温度−30℃以上であり、通常は延伸温度+20℃以下、好ましくは延伸温度+15℃以下である。なお延伸温度とは、加熱装置の設定温度を意味する。
本発明の積層位相差板は、複屈折の高度な補償が可能なので、それ単独であるいは他の部材と組み合わせて、例えば液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ表示装置、FED(電界放出)表示装置、SED(表面電界)表示装置などに適用することができる。
液晶セルの駆動方式としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどが挙げられる。
偏光板は、通常、偏光子とその両面に貼り合わせられた保護フィルムとを備える。また、保護フィルムに代えて、本発明の積層位相差板を偏光子に直接貼り合わせ、積層位相差板を保護フィルムとして用いることもできる。この場合、保護フィルムが省略されるので、液晶表示装置の薄型化、軽量化、低コスト化を実現できる。
(1)ガラス転移温度の測定方法
JISK7121に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により、中間点ガラス転移温度を測定した。
平行ニコル回転法(王子計測機器社製、KOBRA−WR)を用いて、波長590nmの光に関して、入射角0°におけるレタデーションRe、入射角40°におけるレターデーションR40、およびフィルム長手方向に対する遅相軸の角度を測定した。
JISK7136によりヘイズを測定した。
JISK6854−1により、50mm/分のつかみ移動速度で、A層とB層との剥離接着強さを測定し、層間接着力の指標とした。
ポリカーボネート樹脂(旭化成社製、ワンダーライトPC−110)のペレット100.0重量部、ポリカーボネート−ポリスチレングラフト共重合体(日油社製、モディパーCL130D、ポリスチレン成分20重量%)のペレット11.1重量部を、二軸押出機にて溶融混錬し、樹脂1のペレットを得た。樹脂1のガラス転移温度は145℃であった。
二種二層の共押出成形用のフィルム成形装置を準備し、樹脂1のペレットを、ダブルフライト型のスクリューを備えた一方の一軸押出機に投入して、溶融させた。
ポリカーボネート樹脂(旭化成社製、ワンダーライトPC−110)のペレットの量と、ポリカーボネート−ポリスチレングラフト共重合体のペレットの量とを、その重量比が95%:5%となるようにしたこと以外は製造例1と同様にして、積層体2を製造した。
製造された積層体2について、製造例1と同様の要領で、130℃、135℃、140℃、145℃及び150℃のそれぞれで延伸を行い、直線偏光ΨXと直線偏光ΨYとの位相差を測定した。結果を表1に示す。さらに、延伸温度と、延伸後の直線偏光ΨXと直線偏光ΨYとの位相差を図6に示す。
ポリカーボネート−ポリスチレングラフト共重合体を使用しなかったこと以外は製造例1と同様にして、積層体3を製造した。
製造された積層体3について、製造例1と同様の要領で、130℃、135℃、140℃、145℃及び150℃のそれぞれで延伸を行い、直線偏光ΨXと直線偏光ΨYとの位相差を測定した。結果を表1に示す。さらに、延伸温度と、延伸後の直線偏光ΨXと直線偏光ΨYとの位相差を図6に示す。
製造例1で得られた積層体1を縦一軸延伸機に供給し、延伸温度145℃、延伸倍率1.5で縦方向に延伸した。続いて、延伸されたフィルムをテンター延伸機に供給し、延伸温度130℃、延伸倍率1.2で横方向(前記145℃で延伸した縦方向と直交する方向)に延伸して、位相差板1を得た。
得られた位相差板1は、R40/Reが0.997で、0.92≦R40/Re≦1.08の関係を満たすものであった。その位相差板1の評価結果を表2に示す。
製造例1で得られた積層体1の代わりに製造例2で得られた積層体2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、位相差板2を得た。
得られた位相差板2は、R40/Reが1.05で、0.92≦R40/Re≦1.08の関係を満たすものであった。その位相差板2の評価結果を表2に示す。
製造例1で得られた積層体1の代わりに比較製造例1で得られた積層体3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、位相差板3を得た。
得られた位相差板3は、R40/Reが1.12で、0.92≦R40/Re≦1.08の関係を満たさないものであった。その位相差板3の評価結果を表2に示す。
表2から分かるように、実施例1,2の位相差板は、0.92≦R40/Re≦1.08の関係を満たすことから観察角度による色調の変化が少ないものであり、且つ、層間の接着強度が高い。これに対し、比較例1の位相差板は.92≦R40/Re≦1.08の関係を満たさないことから観察角度による色調の変化が大きく、層間の接着強度が低い。したがって、本発明によってはじめて、観察角度による色調の変化が少なく、積層された層間の接着強度が強い積層位相差板を、簡単に製造できることが分かる。
Claims (6)
- 入射角0°におけるレターデーションReと、入射角40°におけるレターデーションR40とが、0.92≦R40/Re≦1.08の関係を満たし、
ポリカーボネート、及び、ポリカーボネートとポリスチレンとの共重合物を含有するA層と、スチレン系樹脂を含有するB層とが、直接に積層されてなる積層位相差板。 - 前記A層におけるスチレン成分の含有量が、前記A層に含有される樹脂全体の0.5〜5重量%である、請求項1記載の積層位相差板。
- ポリカーボネート、及び、ポリカーボネートとポリスチレンとの共重合物を含有するA層と、スチレン系樹脂を含有するB層とが、直接に積層されてなる積層位相差板製造用フィルムであって、
一軸延伸した際に、延伸方向をX軸、延伸方向に対してフィルム面内で直交する方向をY軸、およびフィルム厚さ方向をZ軸としたときに、フィルム面に垂直に入射しかつ電気ベクトルの振動面がXZ面にある直線偏光の、フィルム面に垂直に入射しかつ電気ベクトルの振動面がYZ面にある直線偏光に対する位相が、温度T1でX軸方向に一軸延伸したときには遅れ、温度T1とは異なる温度T2でX軸方向に一軸延伸したときには進む、位相差板製造用フィルム。 - 前記A層に含有される樹脂のガラス転移温度TgAと、前記B層に含有される樹脂のガラス転移温度TgBとの差の絶対値が5℃以上である、請求項3に記載の位相差板製造用フィルム。
- 前記A層におけるスチレン成分の含有量が、前記A層に含有される樹脂全体の0.5〜5重量%である、請求項3又は4記載の位相差板製造用フィルム。
- 請求項1又は2記載の積層位相差板の製造方法であって、
請求項3〜5のいずれか一項に記載の位相差板製造用フィルムを温度T1またはT2のいずれかの温度で一方向に一軸延伸処理を行う第一延伸工程と、
前記第一延伸工程で一軸延伸処理を行った方向と直交する方向に、前記と異なる温度T2またはT1で一軸延伸処理を行う第二延伸工程とを有する、積層位相差板の製造方法。
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