JP5227694B2 - ナノインプリント用組成物 - Google Patents
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Description
第一の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合である。例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。第二の技術は、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、これをμ−TAS(Micro - Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものである。第三の技術としては、形成されたパターンをマスクとし、エッチング等の方法により基板を加工する用途に利用されるものである。かかる技術では高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィ技術に代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製、パターンドメディアと呼ばれる次世代ハードディスクの磁性体加工等に応用できる。前記の技術を始め、これらの応用に関するナノインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
このような経緯から、近年では、ナノインプリント用組成物自体の基材密着性とモールド剥離性の両立、およびエッチング耐性の向上という3要素を全て満たすことが求められることとなっている。特に、エッチング耐性の中でも工業上の有用性の観点から基板加工に用いられるドライエッチング耐性の向上が求められている。
(1)(A)芳香族基と末端に−CF 3 を有するフロロアルキル基を有する重合性単量体(Ax)少なくとも1種と、(B)光重合開始剤とを含有するナノインプリント用組成物。
(2)前記重合性単量体(Ax)が(メタ)アクリレート誘導体である、(1)に記載のナノインプリント用組成物。
(3)前記重合性単量体(Ax)が有する芳香族基が、炭化水素系芳香族基である、(1)または(2)に記載のナノインプリント用組成物。
(4)前記重合性単量体(Ax)が有する重合性基の数が、1〜3個である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
(5)前記重合性単量体(Ax)が有するフロロアルキル基の数が、1〜3個である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
(6)前記重合性単量体(Ax)が式(I)で表される化合物である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
式(I)
(7)さらに、他の重合性単量体(Ay)少なくとも1種を含む、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
(8)前記他の重合性単量体(Ay)が(メタ)アクリレート誘導体である、(7)に記載のナノインプリント用組成物。
(9)前記他の重合性単量体(Ay)が、重合性基を2個以上有する重合性単量体を少なくとも1種含有することを特徴とする、(7)または(8)に記載のナノインプリント用組成物。
(10)前記他の重合性単量体(Ay)の重量比が、全重合性単量体中の50〜99質量%である、(7)〜(9)のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
(11)分子量2000以上のポリマー成分の含有量が、溶剤を除く成分中に30重量%以下である、(1)〜(10)のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
(12)さらに、(C)界面活性剤を含有する、(1)〜(11)のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
(13)前記(C)界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤である、(12)に記載のナノインプリント用組成物。
(14)さらに、(D)酸化防止剤を含有する、(1)〜(13)のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
(15)(1)〜(14)のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物を硬化させてなる硬化物。
(16)(15)に記載の硬化物を製造する方法であって、少なくとも(1)〜(14)のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物を基板に設置する工程と、前記ナノインプリント用組成物にモールドを押圧する工程と、前記ナノインプリント用組成物に光照射する工程とを、含むことを特徴とするパターン形成方法。
(17)(16)記載のパターン形成方法により得られたパターン。
また、本発明でいうナノインプリントとは、およそ数十nmから数十μmのサイズのパターン転写をいい、ナノオーダーのものに限定されるものではない。
本発明のナノインプリント用組成物(以下、単に「本発明の組成物」と称する場合もある)は、少なくとも、芳香族基とフロロアルキル基を有する重合性単量体(Ax)と、光重合開始剤(B)とを含み、通常、ナノインプリントに使われるものである。そして、光ナノインプリント法に用いられるナノインプリント用組成物は、通常、重合性官能基を有する重合性単量体と、光照射によって前記重合性単量体の重合反応を開始させる光重合開始剤とを含み、さらに必要に応じて、溶剤、界面活性剤または酸化防止剤等を含んで構成される。本発明の組成物においては、重合性官能基を有する重合性単量体として少なくとも重合性単量体(Ax)を含む。本発明の組成物は、重合性単量体(Ax)を含むことで、ナノインプリント法によって基材密着性、モールド剥離性、およびエッチング耐性に優れたパターンを形成することができる。
重合性単量体(Ax)
本発明における重合性単量体(Ax)は、芳香族基と、フロロアルキル基と、重合性官能基を含む化合物である。前記重合性官能基としては、カチオン重合性官能基、ラジカル重合性官能基が挙げられ、ラジカル重合性官能基が好ましい。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基が好ましい。また、ラジカル重合性官能基としては、エチレン性不飽和結合を有する官能基が挙げられ、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基が好ましく、特に好ましくは、(メタ)アクリル基である。このため、本発明における重合性単量体(Ax)は、(メタ)アクリレート誘導体であることが好ましい。本発明における重合性単量体(Ax)中に含まれる重合性官能基の数は、硬化性の向上および組成物の粘度の低下の観点から1〜3個が好ましく、より好ましくは1または2個、さらに好ましくは1個である。
フロロアルキル基は、芳香族基に結合していてもよいし、重合性官能基に結合していてもよいし、連結基を介してこれらに結合していてもよい。
本発明における重合性単量体(Ax)は、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
R1および前記アルキル基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
式(I)中、Rfのフロロアルキル構造を有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基などが挙げられ、これら置換基のアルキル鎖部分の一部または全ての水素原子がフッ素原子で置換されたものを挙げることができる。アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を連結基として有していても良い。本発明では、特に、末端にフッ素原子で置換されたアルキル鎖を有するものが好ましく、末端に炭素数3以上であって、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル鎖を有するものがより好ましい。
式(I)中、n1は0〜6の整数を示し、1〜3の整数が好ましく、基板密着性の向上および組成物の粘度の低下の観点から1または2がより好ましく、1がさらに好ましい。
式(I)中、n2は1〜3の整数であり、1または2が好ましい。
他の重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体、オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)、ビニルエーテル化合物、スチレン誘導体、フッ素原子を有する化合物、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを挙げることができ、硬化性の向上の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体がより好ましく、(メタ)アクリレート誘導体であることがより好ましい。重合性基の数が2個以上である重合性単量体(Ay)を少なくとも1種含有していることが好ましい。
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては具体的に、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、が例示される。
これらの中で特に、芳香族基あるいは脂環炭化水素基を有する(メタ)アクリレートがドライエッチング耐性の観点で好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが本発明に好適に用いられる。
本発明で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
他の重合性単量体としては、重合性官能基としてアクリレート基を1または2個有し、且つ芳香族基を有する重合性単量体を少なくとも1種含有することが好ましい。
1官能の重合性不飽和単量体は、通常、反応性希釈剤として用いられ、本発明のナノインプリント用組成物の粘度を低下させる効果を有し、重合性単量体の総量に対して、15質量%以上添加されることが好ましく、20〜80質量%添加されることがより好ましく、25〜70質量%添加されることがさらに好ましく、30〜60質量%添加されることが特に好ましい。
不飽和結合含有基を2個有する単量体(2官能重合性不飽和単量体)は、全重合性不飽和単量体の好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下の範囲で添加される。1官能および2官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは30〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%の範囲で添加される。不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは、40質量%以下の範囲で添加される。重合性不飽和結合含有基を3個以上有する重合性不飽和単量体の割合を80質量%以下とすることにより、組成物の粘度を下げられるため好ましい。
本発明のナノインプリント用組成物には、光重合開始剤が含まれる。本発明に用いられる光重合開始剤は、光照射により上述の重合性単量体を重合する活性種を発生する化合物であればいずれのものでも用いることができる。光重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤、光照射により酸を発生するカチオン重合開始剤が好ましく、より好ましくはラジカル重合開始剤であるが、前記重合性単量体の重合性基の種類に応じて適宜決定される。すなわち、本発明における光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合など)に応じて適切な活性種を発生させるものを用いる必要がある。また、本発明において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量%以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
本発明のナノインプリント用組成物は、(A)重合性単量体および(B)光重合開始剤の他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、(C)界面活性剤、(D)酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分等その他の成分を含んでいてもよい。本発明のナノインプリント用組成物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素・シリコーン系界面活性剤から選ばれる界面活性剤の少なくとも1種、および、酸化防止剤を含有することが好ましい。
本発明のナノインプリント用組成物には、界面活性剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる界面活性剤の含有量は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%であり、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
このような界面活性剤を用いることによって、半導体素子製造用のシリコンウエハーや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成される基板上に本発明のナノインプリント用組成物を塗布したときに起こるストリエーションや、鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決するが可能となる。また、モールド凹部のキャビティ内への本発明の組成物の流動性の向上、モールドとレジストとの間の剥離性の向上、レジストと基板間との密着性の向上、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明のナノインプリント用組成物は、前記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
また、ノニオン性シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、KP−341(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
また、前記フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも、大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
さらに、本発明のナノインプリント用組成物は、公知の酸化防止剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる酸化防止剤の含有量は、重合性単量体に対し、例えば、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色の防止や、分解による膜厚の減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
本発明の組成物には、種々の必要に応じて、溶剤を用いることができる。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には溶剤を含有していることが好ましい。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜200℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
本発明の組成物中における前記溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性の観点から、全組成物中、0〜99質量%が好ましく、10〜99質量%がさらに好ましい。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には50〜99質量%が好ましく、60〜99質量%がさらに好ましく、70〜98質量%が特に好ましい。
本発明の組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%であり、さらに好ましくは0〜10質量%であり、最も好ましくは0〜5質量%である。
本発明の組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点からも、ポリマー成分を含有していてもよい。このようなポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。該ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性単量体との相溶性の観点から、2,000〜100,000が好ましく、5,000〜50,000がさらに好ましい。ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%であり、さらに好ましくは0〜10質量%であり、最も好ましくは2質量%以下である。本発明の組成物において溶剤を除く成分中、分子量2,000以上のポリマー成分の含有量が30質量%以下であると、モールド充填性が向上し、スループットが改善され、且つ、パターン形成性が向上する傾向にある。従って、パターン形成性の観点から樹脂成分はできる限り少ない方が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
次に、本発明の組成物を用いたパターン(特に、微細凹凸パターン)の形成方法について説明する。本発明のパターン形成方法では、本発明の組成物を基板または支持体(基材)上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を経て本発明の組成物を硬化することで、微細な凹凸パターンを形成することができる。
ここで、本発明の組成物は、光照射後にさらに加熱して硬化させることが好ましい。具体的には、基材(基板または支持体)上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を塗布し、必要に応じて乾燥させて本発明の組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体(基材上にパターン形成層が設けられたもの)を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射により硬化させる。本発明のパターン形成方法による光インプリントリソグラフィは、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
本発明のパターン形成方法においては、まず、本発明の組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する。
本発明の組成物を基材上に塗布する際の塗布方法としては、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法、インクジェット法などを挙げることができる。また、本発明の組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μm程度である。また、本発明の組成物を、多重塗布により塗布してもよい。さらに、基材と本発明の組成物からなるパターン形成層との間には、例えば平坦化層等の他の有機層などを形成してもよい。これにより、パターン形成層と基板とが直接接しないことから、基板に対するごみの付着や基板の損傷等を防止することができる。尚、本発明の組成物によって形成されるパターンは、基材上に有機層を設けた場合であっても、有機層との密着性に優れる。
本発明で用いることのできるモールド材について説明する。本発明の組成物を用いた光ナノインプリントリソグラフィは、モールド材および/または基材の少なくとも一方に、光透過性の材料を選択する。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基材の上に本発明の組成物を塗布してパターン形成層を形成し、この表面に光透過性のモールドを押接し、モールドの裏面から光を照射し、前記パターン形成層を硬化させる。また、光透過性基材上にナノインプリント用組成物を塗布し、モールドを押し当て、基材の裏面から光を照射し、ナノインプリント用組成物を硬化させることもできる。
前記光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドとナノインプリント用組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、本発明のパターン形成方法中、光照射時における好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御してもよい。
化合物(I−1)の合成
4−トリデカフロロヘキシルエチルベンジルアルコール5gをアセトン70mlに溶解させ、これにトリエチルアミン1.8gを加えた。この溶液に氷冷下アクリル酸クロリド1.3gを滴下した。室温で3時間反応させた後、水100mlを加えた。これを酢酸エチルで抽出し、有機相を1N−HCl水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機相を乾燥、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにて精製して4gの化合物I−1を得た。
表1に示す重合性単量体に、重合開始剤P−1(2重量%)、界面活性剤W−1(0.1重量%)、界面活性剤W−2(0.04重量%)、酸化防止剤A−1およびA−2(各1重量%)を加えて組成物を調整した。表1中、重合性単量体の種類の後の括弧は、重合性単量体の添加量(単位:g)を示している。
P−1:2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィンオキシド(BASF社製:Lucirin TPO−L)
W−1:フッ素系界面活性剤(トーケムプロダクツ社製)
W−2:シリコーン系界面活性剤(大日本インキ化学工業社製:メガファックペインタッド31)
A−1:スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)
A−2:アデカスタブAO503((株)ADEKA製)
シリコンウェハ上に硬化後の膜厚が1μmとなるように各組成物を塗布した後、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で露光量240mJ/cm2で露光し硬化膜を得た。得られた硬化膜を、日立ハイテクノロジー社製ドライエッチャー(U−621)を用いてAr/C4F6/O2=100:4:2のガスで2分間プラズマドライエッチングを行い、残膜量を測定し、1秒間当りのエッチングレートを算出した。得られたエチングレートを比較例1の値が1となるように規格化した。値が小さいほどドライエッチング耐性が良好であることを示す。
各組成物をシリコン基板上にスピンコートした。1つの組成物につき10枚の塗布膜を準備した。得られた塗布膜に線幅100nm、溝深さが100nmの矩形ライン/スペースパターン(1/1)を有し、パターン表面がフッ素系処理された石英モールドをのせ、ナノインプリント装置にセットした。装置内を真空とした後、窒素パージを行って装置内を窒素置換した。25℃で1MPaの圧力でモールドをシリコン基板に圧着させ、これに石英モールドの裏面から240mJ/cm2の条件で露光し、露光後、石英モールドを離し、パターンを得た。この操作を、石英モールドを変えずに連続して10枚の塗布膜について実施した。10回のパターン形成に使用した石英モールドに組成物の成分が付着しているか否かを走査型電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡にて観察し、剥離性を以下のように評価した。
A:モールドに組成物の付着がまったく認められなかった。
B:モールドにわずかな組成物の付着が認められた。
C:モールドの組成物の付着が明らかに認められた。
すなわち、フロロアルキル基を有し、かつ、芳香族基を有する重合性単量体を用いることにより、ドライエッチング耐性およびモールド剥離性の両方について高いレベルを有するナノインプリント用組成物となることが分かった。
さらに、他の本発明の組成物である、実施例2〜5についても、高いドライエッチング耐性と、良好なモールド剥離性を示すことが確認された。
Claims (17)
- (A)芳香族基と末端に−CF 3 を有するフロロアルキル基を有する重合性単量体(Ax)少なくとも1種と、(B)光重合開始剤とを含有するナノインプリント用組成物。
- 前記重合性単量体(Ax)が(メタ)アクリレート誘導体である、請求項1に記載のナノインプリント用組成物。
- 前記重合性単量体(Ax)が有する芳香族基が、炭化水素系芳香族基である、請求項1または2に記載のナノインプリント用組成物。
- 前記重合性単量体(Ax)が有する重合性基の数が、1〜3個である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
- 前記重合性単量体(Ax)が有するフロロアルキル基の数が、1〜3個である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
- 前記重合性単量体(Ax)が式(I)で表される化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
式(I)
- さらに、他の重合性単量体(Ay)少なくとも1種を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
- 前記他の重合性単量体(Ay)が(メタ)アクリレート誘導体である、請求項7に記載のナノインプリント用組成物。
- 前記他の重合性単量体(Ay)が、重合性基を2個以上有する重合性単量体を少なくとも1種含有することを特徴とする、請求項7または8に記載のナノインプリント用組成物。
- 前記他の重合性単量体(Ay)の重量比が、全重合性単量体中の50〜99質量%である、請求項7〜9のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
- 分子量2000以上のポリマー成分の含有量が、溶剤を除く成分中に30重量%以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
- さらに、(C)界面活性剤を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
- 前記(C)界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤である、請求項12に記載のナノインプリント用組成物。
- さらに、(D)酸化防止剤を含有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物。
- 請求項1〜14のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物を硬化させてなる硬化物。
- 請求項15に記載の硬化物を製造する方法であって、少なくとも請求項1〜14のいずれか1項に記載のナノインプリント用組成物を基板に設置する工程と、
前記ナノインプリント用組成物にモールドを押圧する工程と、
前記ナノインプリント用組成物に光照射する工程とを、
含むことを特徴とするパターン形成方法。 - 請求項16記載のパターン形成方法により得られたパターン。
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