JP5227576B2 - 近赤外線領域光反射性能を有する暗色複合成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、車輌用インスツルメントパネル、ドアトリム、グローブボックス等の車輌用内装材や、駅、バス停、飛行場、野球場、サッカー場等のベンチの座面等の家具といった構造物として利用可能な近赤外線領域光反射性能を有する暗色複合成形体に関する。
自動車等の車輌用内装材、特にインスツルメントパネル(インパネ)は、運転者の前面に配されるため、可視光線領域の光が反射して運転者が眩しく感じることは好ましいものではない。このような観点から、自動車のインパネには黒色等の暗色を有する部材が一般的に使用されている。しかしながら、一般的に用いられるこれらの暗色物は、可視光線領域以外の近赤外線領域の光も同時に吸収してしまうため、太陽光に曝された際にはその表面が加熱され車内の温度の上昇を招く。また、車内温度の上昇に伴い、空調機器を使用することによって結果的に燃費の悪化を招くこととなる。このような太陽光による車輌内の温度の上昇は、インパネに限らず、車輌用内装材のすべての暗色物に生じる問題であった。
また、野球場、サッカー場等の球技場においてもベンチ座面の色相が可視光線領域の光を反射するようなものは望ましくない。そのため、これらのものにも暗色物が使用されているが、前述の通り表面温度が上昇するという問題があった。
これらの問題を解決するために、上記のような構造物の表面に遮熱性を有するフィルム又はシートを形成する技術が検討されており、例えば、特開2002−12679号公報(特許文献1)には、熱可塑性樹脂フィルムに遮熱特性を持たせた顔料を2種以上混合して成形される遮熱性カラーフィルムが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載されているようなフィルムは、構造物に色彩を付与することは可能であるが、近赤外線領域だけでなく可視光線領域での日射反射性も発生してしまうため、フィルムの遮熱性を十分に確保し、太陽光に曝された際の構造物の表面温度の上昇を十分に抑制すると共に、構造物を暗色とすることは困難であるという問題があった。
また、特表2004−505808号公報(特許文献2)には、380〜720nmの可視光域における反射率が50%未満であり、かつ720〜1500nmの近赤外域における反射率が60%を超える性質を有する基板と、当該基板上に設けられた特定の性質を有する2種の顔料を含有する塗膜とからなる構造体が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載されているような構造体においては、太陽光に曝された際の表面温度の上昇を十分に抑制することが困難であるという問題があった。
特開2002−12679号公報 特表2004−505808号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、380〜720nmの可視光線領域において90%以上の日射吸収率を有し、しかも太陽光に曝された際の表面温度の上昇を十分に抑制することが可能な暗色複合成形体を提供することを目的とする。
720〜1500nmの波長領域は一般に近赤外線領域と表現され、この波長領域の光が一般に熱に変換されやすいと言われている。この波長領域の光の吸収を抑えることにより、熱線が吸収されず、その為に表面での発熱が抑制される。そこで、本発明者らは、この波長領域の光を吸収せずに、反射させることを検討したが、可視光線領域において高い日射吸収率を有し、しかも近赤外線領域において高い日射反射率を有するような材料を見出すことは困難であり、暗色で且つ近赤外線領域の光の吸収を抑えた構造物を得ることは困難であることが分かった。そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、380〜1500nmの波長領域において85%以上という極めて高い日射反射率を有する反射成形体の表面上に、380〜720nmの可視光線領域において90%以上の日射吸収率を有し、且つ720〜1500nmの近赤外線領域において50%以上の日射透過率を有する表面層を設けることにより、太陽光に曝された際における暗色複合成形体の表面温度の上昇を十分に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の近赤外線領域光反射性能を有する暗色複合成形体は、日射を受ける表面層(A)と反射成形体(B)とを備える合成樹脂複合成形体であって、
前記表面層(A)が合成樹脂100重量部と、アゾ系顔料、アゾメチンアゾ系顔料、ペリレン系顔料からなる群から選択される少なくとも一つの顔料1〜5重量部とを含有しており、380〜720nmの波長領域において90%以上の日射吸収率を有し、720〜1500nmの近赤外線領域において30%未満の日射吸収率を有し、且つ720〜1500nmの近赤外線領域において50%以上の日射透過率を有する、暗色を呈する合成樹脂層であり、
前記反射成形体(B)が380〜1500nmの波長領域において90%以上の日射反射率を有する合成樹脂成形体であり、且つ、
前記反射成形体(B)の表面に前記表面層(A)を積層した複合成形体の720〜1500nmの近赤外線領域における日射反射率が70%以上であるものである。
また、本発明の暗色複合成形体においては、前記表面層(A)が、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及び熱可塑性エラストマー系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの合成樹脂からなることが好ましい。
また、本発明の暗色複合成形体においては、前記反射成形体(B)が、合成樹脂100重量部と、酸化チタン系白色顔料5〜70重量部とを含有するものであることが好ましい。
さらに、本発明の暗色複合成形体においては、前記反射成形体(B)が発泡構造を有するものであることが好ましい。
このような本発明の暗色複合成形体によれば、380〜720nmの可視光線領域において90%以上の日射吸収率を有し、しかも近赤外線領域の光に対する十分な反射性能を有し、太陽光に曝された際の表面温度の上昇が十分に抑制された暗色複合成形体を提供することが可能となる。そして、本発明の近赤外線領域光反射性能を有する暗色複合成形体は、可視光線領域の光を吸収し表面が暗色を呈する構造物でありながら白色等の明色の構造物と同等の熱反射性能を発揮する。このように表面が暗色を呈する構造物でありながら白色等の明色の構造物と同等の熱反射性能を発揮する理由については必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、380〜720nmの波長領域は可視光線領域と表現され、人間が肉眼で感じることのできる光であり、可視光線領域の光の吸収率が高い(例えば、吸収率が90%以上である)と暗色を呈するものとなる。さらに、近赤外線領域の光は、一般に熱に変換されやすいと言われている。よって太陽光のうち近赤外線領域の光のみの吸収を抑え、透過又は反射させれば、暗色の構造物でありながら表面での吸熱が抑制される。そして、本発明の近赤外線領域光反射性能を有する暗色複合成形体は、380〜1500nmの波長領域において85%以上という極めて高い日射反射率を有する反射成形体の表面上に、380〜720nmの可視光線領域において90%以上の日射吸収率を有し、且つ720〜1500nmの近赤外線領域において50%以上の日射透過率を有する表面層が積層された複合成形体である。このような複合成形体が太陽光に曝された場合には、太陽光のうち可視光線領域の光は表面層(A)において高率で吸収され、また、表面層(A)を透過した光は反射成形体(B)により反射され、さらにその反射光は表面層(A)において高率で吸収される。そのため、本発明の複合成形体は暗色のものとなる。また、このような可視光線領域の光を吸収してもほとんど熱エネルギーに変換しないため、複合成形体の表面温度にはほとんど影響を与えない。一方、太陽光のうち物体に当たると熱エネルギーに変換しやすい近赤外線領域の光は、表面層(A)においてほとんど吸収されずに透過し、また、表面層(A)を透過した光は反射成形体(B)により反射され、さらにその反射光は表面層(A)においてほとんど吸収されずに透過し、外部に放出される。そのため、本発明の複合成形体においては、太陽光に曝された際の表面温度の上昇が十分に抑制され、しかも表面が暗色でありながら白色等の明色の構造物と同等の熱反射性能を有するものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、380〜720nmの可視光線領域において90%以上の日射吸収率を有し、しかも太陽光に曝された際の表面温度の上昇を十分に抑制することが可能な暗色複合成形体を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の近赤外線領域光反射性能を有する暗色複合成形体は、日射を受ける表面層(A)と反射成形体(B)とを備える合成樹脂複合成形体であって、
前記表面層(A)が380〜720nmの波長領域において90%以上の日射吸収率を有し、720〜1500nmの近赤外線領域において30%未満の日射吸収率を有し、且つ720〜1500nmの近赤外線領域において50%以上の日射透過率を有する、暗色を呈する合成樹脂層であり、
前記反射成形体(B)が380〜1500nmの波長領域において85%以上の日射反射率を有する合成樹脂成形体であり、且つ、
前記反射成形体(B)の表面に前記表面層(A)を積層した複合成形体の720〜1500nmの近赤外線領域における日射反射率が70%以上であるものである。
<表面層(A)>
本発明にかかる表面層(A)は、380〜720nmの波長領域において90%以上の日射吸収率を有し、720〜1500nmの近赤外線領域において30%未満の日射吸収率を有し、且つ720〜1500nmの近赤外線領域において50%以上の日射透過率を有する、暗色を呈する合成樹脂層である。本発明に用いる合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、これらの樹脂からなる熱可塑性エラストマー系樹脂が挙げられる。これらの合成樹脂の中でも、風合い、耐光性及び加工性の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂が好ましい。また、このような表面層(A)は、密着性及びリサイクル性の観点から、後述する反射成形体(B)を構成する合成樹脂と同一系の合成樹脂からなることが好ましい。このように表面層(A)及び反射成形体(B)が同一系の合成樹脂から構成される場合には、接着剤層を設けなくとも密着性が優れたものを得ることができる。また、このように表面層(A)及び反射成形体(B)が同一の合成樹脂から構成される場合には、積層したものを分離せずにリサイクルを行うことができる点で有利である。
そして、本発明にかかる表面層(A)は、例えば、このような合成樹脂を含有する配合組成物を用いて形成することができる。
このような合成樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を使用する場合、このようなポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルモノマーの単独重合体、塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマー、アクリロニトリルモノマー等の塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体が使用できる。これらのポリ塩化ビニル系樹脂の重合方法に関しては特に制限されるものではないが、可塑剤を配合した際にペースト状のプラスチゾル状態を呈するエマルジョン重合法(乳化重合法)が特に好適に使用され、他にマイクロサスペンジョン重合法、ソープフリーエマルジョン重合法、サスペンジョン重合法(懸濁重合法)等を用いることも可能である。
また、このような合成樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を使用する場合、前記配合組成物に更に可塑剤を添加してもよい。このような可塑剤としては、通常のポリ塩化ビニル系樹脂に使用されている化合物を使用することができ、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)等のフタル酸エステル系可塑剤;トリオクチルトリメリテート(TOTM)等のトリメリット酸エステル系可塑剤;ジオクチルアジペート(DOA)、ジオクチルセバケート(DOS)、ジオクチルアゼレート(DOZ)等の脂肪酸エステル系可塑剤;ポリプロピレンアジペート等のポリエステル系可塑剤を使用することができる。
さらに、このような可塑剤の添加量としては特に制限されるものではないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、25〜150重量部の範囲であることが好ましく、60〜100重量部であることがより好ましい。可塑剤が少なすぎるとペーストプラスチゾルのゾル粘度が高く、流動しにくく、良好な硬化膜が得られにくい傾向にある。他方、可塑剤が多すぎると、硬化膜そのものが柔らかくなり過ぎて使用時に軟化し、耐熱性が悪化する傾向にある。
また、このような合成樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を使用する場合、前記配合組成物には、必要に応じて通常のポリ塩化ビニル系樹脂に使用されている安定剤を添加することが好ましく、具体的にはBa−Zn系、Ca−Zn系、酸化亜鉛系等の金属安定剤を広範囲に使用することができる。さらに、前記配合組成物に、ヒンダートアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、酸化防止剤を添加してもよく、更には加工性を向上させるために、減粘剤、増粘剤等の各種添加剤を添加してもよい。
このような合成樹脂としてポリウレタン系樹脂を使用する場合、このようなポリウレタン系樹脂としては、ポリオール成分とイソシアネート成分の重合体の所謂ウレタン結合を有する樹脂を使用することができ、例えば、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカプロラクトン系ポリウレタン、ポリエステル/ポリエーテル共重合系ポリウレタン、ポリアミノ酸/ポリウレタン共重合樹脂或いはこれらの混合物を使用することができる。
また、このような合成樹脂としてポリウレタン系樹脂を使用する場合においては、特に直射日光に曝されるような用途であるいう観点から、特に耐光性の良好なポリウレタン系樹脂を使用することが好ましく、特にポリカーボネートジオール成分、無黄変型ジイソシアネート成分及び低分子鎖伸長剤等を反応させて得られる無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタンが好適に使用される。ポリカーボネートジオール成分としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート等を使用することができ、特にイソホロンジイソシアネート或いはイソホロンジイソシアネートを主体としたシクロヘキシルジイソシアネート又は/及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートとの混合物を使用することが好ましい。
また、低分子鎖伸長剤としては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジアミン、ヒドラジン誘導体等の活性水素原子を2個以上有する化合物が使用される。そして、このようにして重合されたポリウレタン系樹脂は通常の有機溶媒、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチル/n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジオキサン、シクロヘキサノン等、或いはこれらの混合物に溶解させて、ポリウレタン溶液として使用される。
さらに、このような合成樹脂としてポリウレタン系樹脂を使用する場合、前記配合組成物に必要に応じて、酸化防止剤、光安定化剤、耐電防止剤、難燃剤等の各種添加剤を更に添加してもよい。
このような合成樹脂として熱可塑性エラストマー系樹脂を使用する場合、このような熱可塑性エラストマー系樹脂としては、特にオレフィン系熱可塑性エラストマー(所謂TPO)が好適に使用される。具体的には、ポリオレフィン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム及び/又はエチレン−α−オレフィン・非共役ポリエン共重合ゴム、並びにプロピレン・エチレン共重合体及び/又はプロピレン・1−ブテン共重合体を動的に部分架橋したものであり、さらに詳しくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、EPDM(エチレンプロピレンターポリマー)を主成分とするオレフィン系樹脂とゴム成分とを混合し、動的に架橋させたものである。
また、このような合成樹脂として熱可塑性エラストマー系樹脂を使用する場合、前記配合組成物に必要に応じて、酸化防止剤、光安定化剤、耐電防止剤、難燃剤等の各種添加剤を更に添加してもよい。
本発明にかかる表面層(A)は、可視光線領域の光を吸収して暗色を呈し、近赤外線領域の光を高率で透過させるような層である。すなわち、このような表面層(A)は、380〜720nmの可視光線領域において90%以上の日射吸収率を有することが必要である。このように表面層(A)が380〜720nm可視光線領域で90%以上の日射吸収率を有することにより、本発明の複合成形体は人間が感知できる光を実質的に吸収することができるため暗色を呈し、眩しいと感じることはない。
また、このような表面層(A)の日射吸収率は720〜1500nmの近赤外線領域において30%未満(好ましくは10%未満)であることが必要である。日射吸収率が30%以上であると、入射光が反射成形体(B)に到達する前に表面層(A)が吸収してしまうとともに、反射成形体(B)で反射された反射光を表面層(A)の外側に到達する前に表面層(A)が吸収してしまうため、結果的に複合成形体が蓄熱することになる。
さらに、このような表面層(A)の日射透過率は720〜1500nmの近赤外線領域において50%以上であることが必要である。すなわち、720〜1500nmの近赤外線領域において30%未満の日射吸収率を維持するためには、近赤外線領域の光を反射又は透過させる必要があるが、近赤外線領域の光を反射させようとすると、一部380〜720nmの可視光線領域においても反射性を発現するため、暗色を呈するものを得ることが困難である。そのため、本発明においては、このような表面層(A)の日射透過率を720〜1500nmの近赤外線領域において50%以上とすることが必要となる。
なお、このような表面層(A)の日射吸収率、日射透過率及び日射反射率(以下場合により、これらを日射特性と総称する)は以下に示す方法によって測定することができる。すなわち、先ず、表面層(A)からなる単層シートを試料とし、自記分光光度計を用いて、アルミナ白色基板を反射率100%とし、各波長での反射率(分光反射率)を測定する。そして、JIS A5759付表3を用いて、分光反射率に各波長での重価係数を乗じた値の和を計算し、日射反射率を導き出すことができる(分光日射反射率試験法)。また、前記試料について、自記分光光度計を用いて、試料を入れない状態での透過率を100%とし、各波長での透過率(分光透過率)を測定する。そして、JIS A5759付表3を用いて、分光透過率に各波長での重価係数を乗じた値の和を計算し、日射透過率を導き出すことができる。さらに、得られた日射反射率及び日射透過率の値から、下記数式:
(日射吸収率)=100%−(日射反射率)−(日射透過率)
を用いて計算することにより、日射吸収率を導き出すことができる。
本発明にかかる表面層(A)の厚みは、0.05〜0.5mmの範囲であることが好ましく、0.1〜0.5mmの範囲であることがより好ましい。表面層(A)の厚みが前記下限未満では、充分に可視光線領域の光を吸収することができず、暗色を呈することが困難となる傾向にある。他方、表面層(A)の厚みが前記上限を超えると、近赤外線領域の日射吸収率を30%未満に確保して日射透過率を50%以上に維持することが難しくなる傾向にあり、表面層(A)での蓄熱が発生して複合成形体の熱反射性能が阻害され易くなる傾向にあるため好ましくない。
本発明にかかる表面層(A)は、前述した合成樹脂及び各種添加剤の他に、以下説明するような近赤外線領域の光を透過する特殊顔料を含有していてもよい。このように近赤外線領域の光を透過させる特殊顔料としては、例えば、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサン系、キナクリドン系、イソインノリドン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系、アゾメチンアゾ系等の顔料が挙げられる。これらの特殊顔料の中でも、可視光線領域における光の吸収性、及び近赤外線領域における光の透過性のバランスという観点から、特にアゾ系、アゾメチンアゾ系、ペリレン系の顔料が好ましい。
また、これらの特殊顔料の添加量としては、前記合成樹脂100重量部に対し、1〜5重量部の範囲であることが好ましい。添加量が1重量部未満では、可視光線領域で暗色になりにくい傾向にあり、他方、5重量部を超えると、近赤外線領域における日射吸収量が増加して得られる複合成形体の近赤外線領域光反射性能が損なわれ易くなる傾向にある。
なお、このような表面層(A)を形成するための配合組成物は、前述した各成分を計量の上、ディゾルバーミキサー等の混合攪拌機で均質混合させることにより得られる。さらに、このような配合組成物は、必要に応じて、未分散物を取り除く目的で濾過してもよく、気泡を取り除くために減圧脱泡してもよい。
<反射成形体(B)>
本発明にかかる反射成形体(B)は、380〜1500nmの波長領域において85%以上の日射反射率を有する合成樹脂成形体である。本発明に用いる合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、これらの樹脂からなる熱可塑性エラストマー系樹脂が挙げられる。これらの合成樹脂の中でも、耐光性及び成形性の観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂が好ましい。
このような合成樹脂としてポリオレフィン系樹脂を使用する場合、このようなポリオレフィン系樹脂としては、直鎖線状低密度ポリエチレン等の低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン;エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体及びこれらのエステル化物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のオレフィン−ビニル化合物共重合体;また、これらのグラフト共重合体やブロック共重合体、ランダム共重合体を使用することができる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
このような合成樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂を使用する場合は、前述の表面層(A)を構成する樹脂と同様の樹脂が使用される。
そして、本発明にかかる反射成形体(B)は、例えば、このような合成樹脂を含有する配合組成物を用いて形成することができる。このような反射成形体(B)を成形するための配合組成物は、前記合成樹脂を含有し、且つ射出成形、ブロー成形、圧縮成形、回転成形、スプレー成形等の成形法によって成形できるものであればよい。また、このような配合組成物には、必要に応じて、前述した表面層(A)を形成するために用いる配合組成物と同様に、可塑剤、安定剤、減粘剤、増粘剤、酸化防止剤、光安定化剤、耐電防止剤、難燃剤等の各種添加剤を添加してもよい。
本発明にかかる反射成形体(B)においては、380〜1500nmの波長領域における日射反射率が85%以上であることが必要である。このような反射成形体(B)が380〜1500nm波長領域において85%以上の日射反射率を有することにより、表面層(A)を透過してきた光を高率で反射し、その結果、複合成形体に近赤外線領域光反射性能を付与することができる。そのため、本発明によれば、優れた熱反射性能を有する複合成形体を得ることができる。また、近赤外線領域光反射性能を更に向上させるという観点から、前記日射反射率が90%以上であることが好ましい。なお、近赤外線領域光反射性能を向上させるためには、近赤外線領域だけでなく、380〜720nmの波長領域における日射反射率も高いことが必要である。例えば、380〜720nmの波長領域における日射反射率が低い(例えば、50%未満である)場合には、720〜1500nmの近赤外線領域における日射吸収率を高くする(例えば、85%以上とする)ことは困難である。また、このような反射成形体(B)の380〜720nmの波長領域における日射反射率が高い場合には、表面層(A)で吸収しきれなかった可視光線領域の光を反射成形体で反射させ、再度表面層(A)にて吸収させることができるため、極めて暗色性の強い色相を呈する複合成形体を得ることができる。なお、このような反射成形体(B)の日射特性は、前述した表面層(A)の日射特性の測定方法と同様の方法によって測定することができる。
本発明にかかる反射成形体(B)は、前述した合成樹脂及び各種添加剤の他に、以下説明する顔料を含有していてもよい。このような顔料としては、例えば、酸化チタン系白色顔料が挙げられる。また、このような酸化チタン系白色顔料としては、ルチル型及びアナターゼ型のいずれの酸化チタンも使用可能であるが、ルチル型の酸化チタンが好ましい。さらに、このような酸化チタンの一次粒子径は200nm〜1000nmの範囲であることが好ましい。また、このような白色顔料の添加量としては、前記合成樹脂100重量部に対し、5〜70重量部の範囲であることが好ましく、10〜20重量部の範囲であることがより好ましい。添加量が前記下限未満では日射反射性能が不十分となり易くなる場合があり、他方、前記上限を超えて添加してもそれほどの日射反射効果の増大が認められず、却って反射成形体の力学的物性に問題が生じ易くなる場合がある。なお、このような酸化チタン系白色顔料は、あらかじめ可塑剤等に分散させたトーナー状態で配合してもよい。
また、本発明にかかる反射成形体(B)は、発泡構造を有するものであることが好ましい。このように反射成形体(B)が発泡構造を有するものであると、光の屈折率が大きくなり、より反射率を向上させることができるとともに、耐衝撃性能を付与したり軽量化したりすることも可能となる。このような発泡構造を発現させる方法としては、中空ガラスバルーン、マイクロカプセル等の充填剤を含有させる方法、化学発泡剤により合成樹脂を発泡させる方法、機械的に気泡を樹脂内に混合する方法(メカニカル発泡)等を採用することができる。
このように発泡構造を発現させる方法として、中空ガラスバルーン、マイクロカプセル等の充填剤を含有させる方法を採用する場合、このような充填剤の粒子径は、1〜150μmの範囲であることが好ましく、5〜100μmの範囲であることがより好ましく、8〜80μmの範囲であることが特に好ましい。粒子径が150μmを超えると、組成物の調製時或いは成形時の作業性が悪化する傾向にあり、他方、1μm未満のものを使用しても、充填剤の添加による所望の日射反射効果を得ることが難しくなる傾向にある。
さらに、このような充填剤の添加量としては、前記合成樹脂100重量部に対し、3〜20重量部の範囲であることが好ましく、5〜15重量部の範囲であることがより好ましい。添加量が前記下限未満では十分な日射反射効果を確保しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えて添加してもそれほど日射反射効果の増大は認められず、却って反射成形体(B)の力学的物性に問題が生じやすくなる傾向にある。また、充填剤として中空ガラスバルーンを用いる場合には、ガラス組成、比重(中空率)等は特に制限されず、樹脂成分との密着を高めるために各種のカップリング処理等を施してもよい。さらに、充填剤としてマイクロカプセルを用いる場合には、殻組成に関して特に制限はなく、加熱可膨張型のものや既膨張型のものが使用することができ、中空型やビーズ型のものを使用することもできる。
このように発泡構造を発現させる方法として、化学発泡剤により合成樹脂を発泡させる方法、或いは機械的に気泡を樹脂内に混合する方法を採用する場合、発泡倍率は2〜30倍の範囲内とすることが好ましい。
さらに、本発明にかかる反射成形体(B)は、その表面に織布、不織布又は樹脂層を更に有していてもよい。これらの織布、不織布又は樹脂層は、反射成形体(B)の可視光線吸収性能、或いは近赤外線領域光反射性能に悪影響を及ぼさないものであればよく、その材質は特に限定されない。さらに、本発明にかかる反射成形体(B)は、芯材を更に有していてもよい。このような芯材の材質としては、特に限定されず、アルミニウム、鉄、金、銀、銅等の金属;ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックが挙げられる。また、このような芯材は中空のものであってもよい。
<暗色複合成形体>
本発明の暗色複合成形体は、前述した反射成形体(B)の表面に前述した表面層(A)を積層した複合成形体である。
このように反射成形体(B)の表面に表面層(A)を積層する方法としては、各種の方法が選択可能である。例えば、(i)表面層(A)からなるシート状物を形成しておき、そのシート状物を成形型に密着せしめた後に、成形型に反射成形体(B)の原料を射出するという、所謂シートインモールド成形を用いた方法、(ii)先ず、表面層(A)を形成するための配合組成物を反射成形体(B)の形状を有する加熱した金型に投入し、その金型の表面上に硬化膜を形成せしめ、その後、特定の形状に形成された表面層(A)を成形型に設置した後に、成形型に反射成形体(B)の原料を射出する方法、(iii)離型剤を塗布した成形型に表面層(A)を形成するための配合組成物を塗布した後に、成形型に反射成形体(B)の原料を射出するという、所謂インテグラルスキンを用いた方法、(iv)反射成形体(B)を加熱した後に、表面層(A)の原料中にディッピングし、反射成形体(B)の表面に硬化膜を形成する方法、(v)反射成形体(B)の表面に表面層(A)を形成するための配合組成物を塗布した後に硬化せしめ、反射成形体(B)の表面に硬化膜を形成する方法、(vi)表面層(A)からなるシート状物を形成しておき、そのシート状物を反射成形体(B)の形に合うように縫製して被覆する方法を採用することができる。また、このように反射成形体(B)の表面に表面層(A)を積層するにあたり、必要に応じて、接着剤を用いてもよい。このような接着剤としては、複合成形体の可視光線吸収性能、或いは近赤外線領域光反射性能に悪影響を及ぼさないものであればよく特に限定されない。また、このような接着剤からなる層の厚みも、複合成形体の可視光線吸収性能、或いは近赤外線領域光反射性能に悪影響を及ぼさない範囲であればよく特に限定されない。
これらの手法により反射成形体(B)に表面層(A)を積層させることにより、太陽光全体を構成する波長のうち発熱に寄与する近赤外線領域において高い反射率を有し、且つ可視光線領域において表面層(A)が高い吸収率を有することにより暗色を呈し、人間には眩しくない構造の複合成形体が得られる。
本発明の暗色複合成形体は、適宜手段により車輌用インスツルメントパネル、ドアトリム、グローブボックス等の車輌用内装材や、駅、バス停、飛行場、野球場、サッカー場等のベンチの座面等の家具等の構造物として利用できる。
なお、本発明の暗色複合成形体においては、必要に応じて最表面に防汚層を設けてもよい。防汚層は、本願出願の目的とする可視光線吸収性能、或いは近赤外線領域光反射性能に悪影響を及ぼさないように考慮し、溶剤系、水系或いは紫外線硬化型塗料からなる防汚塗料を塗工することによって形成することができる。
このような防汚塗料のうち溶剤系塗料としては、例えば、アクリル樹脂系、塩化ビニル樹脂系、セルロース樹脂系、フッ素樹脂系、ポリアミド樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系等の塗料が使用できる。
また、このような防汚塗料のうち水系塗料としては、例えば、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系等の塗料が使用できる。
さらに、このような防汚塗料のうち紫外線硬化型塗料としては、例えば、アクリル樹脂系、アクリル変性ウレタン樹脂系、アクリル変性エポキシ樹脂系、メルカプト誘導体系、エポキシ樹脂系等の塗料が使用できる。
また、本発明の暗色複合成形体においては、前記表面層(A)に意匠性を付与するために凸凹のシボ加工を施してもよい。このようなシボ加工は、エンボスロール等による加工や離型紙等によるもの等、合成皮革を得る際に行うシボ加工と同じ手法を採用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例においては、樹脂、顔料、充填剤及び各種添加剤としてそれぞれ以下のものを用いた。
ポリ塩化ビニル系樹脂1:鐘淵化学工業社製「PSH-23」
熱可塑性オレフィン系エラストマー樹脂1:三井化学社製「ミラストマー N-8030」
ウレタン系樹脂1:大日精化工業社製「レザミン NE-8875」
ポリプロピレン系樹脂1:プライムポリマー社製「プライムポリプロ J105G」
可塑剤:ジイソノニルフタレート、積水化学工業社製
安定剤1:旭電化工業社製「AC-183」
安定剤2:旭電化工業社製「AO-60」
充填剤1:中空ガラスバルーン、旭ガラス社製「セルスターZ27」
充填剤2:セラミックバルーン、太平洋セメント社製「E-SPHERES」
発泡剤1:化学発泡剤、大塚化学(株)社製「ユニフォームAZ」
顔料1:酸化チタン系白色顔料、テイカ(株)社製「JR600A」
顔料2:酸化チタン系白色顔料、テイカ(株)社製「JR1000」
顔料3:茶色顔料:富士色素工業(株)社製「Brown FT-9000」
顔料4:黒色顔料:レジノカラー工業社製「DPF-T-7939」
顔料5:黒色顔料:BASF AG 社製「Pariogen Black S0084」
顔料6:黒色顔料:特殊色料工業(株)社製「Black FT-10」
顔料7:黒色顔料:Shepherd Japan 社製「ARCTIC Black 10C909」
顔料8:黒色顔料:Shepherd Japan 社製「ARCTIC Black 411」。
(調製例及び作製例)
(I)ペースト状プラスチゾル及び成形用組成物の調製
樹脂、顔料、充填剤及び各種添加剤を、それぞれ表1に記載の通りの組成となるように、混合してペースト状プラスチゾル及び成形用組成物を作製した。
すなわち、表面層(A1〜A7)成形用に、エマルジョン重合ポリ塩化ビニル(鐘淵化学工業社製、商品名「PSH-23」)に、充填剤、顔料、可塑剤(ジイソノニルフタレート)及び熱安定剤をそれぞれ表1に記載の通りの組成となるように配合し、ディゾルバーミキサーにて均一に混合してペースト状プラスチゾルを調製した。
また、表面層(A8及びA9)成形用に、オレフィン系熱可塑性エラストマー(三井化学(株)社製、商品名「ミラストマー N-8030」)に安定剤(酸化防止剤)及び顔料をそれぞれ表1に記載の通りの組成となるようにドライブレンドして成形用組成物を調製した。
さらに、表面層(A10)成形用に、ポリカーボネートジオールとイソシアネートとの重合体であるウレタン系樹脂(大日精化工業(株)社製、商品名「レザミン NE-8875」)に溶剤として酢酸エチルを加え、その後、充填剤及び顔料をそれぞれ表1に記載の通りの組成となるように配合し、ディゾルバーミキサーにて均一に混合して成形用組成物を調製した。
また、反射成形体(B1〜B5)成形用に、ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「プライムポリプロ J105G」)に充填剤、顔料、発泡剤、熱安定剤をそれぞれ表2に記載の通りの組成となるようにドライブレンドして成形用組成物を調整した。
Figure 0005227576
Figure 0005227576
(II)表面層シートの作製及び日射特性の評価
表面層(A)の日射特性を評価するために、以下に示すようにして表面層(A1〜A10)の単層シートを作製した。そして、得られた表面層シートの日射特性(日射吸収率、日射透過率、日射反射率)を以下に示すようにして評価した。
(i)表面層シートの作製
調製例で得られた表面層(A1〜A7)成形用のペースト状プラスチゾルを、それぞれ表1に記載の通りの厚みとなるように、ナイフコーティング法により離型紙上にコーティングし、140℃で2分間加熱し、次いで195℃で3分間加熱した。その後、冷却して離型紙を剥離し、表面層(A1〜A7)の単層シートをそれぞれ作製した。
また、調製例で得られた表面層(A8及びA9)成形用の組成物を、Tダイ押出機にてそれぞれ表1に記載の通りの厚みとなるように押出し、表面層(A8及びA9)の単層シートをそれぞれ作製した。
さらに、調製例で得られた表面層(A10)成形用の組成物を、それぞれ表1に記載の通りの厚みとなるように、ナイフコーティング法により離型紙上にコーティングし、80℃の熱風で乾燥した。その後、冷却して離型紙を剥離し、表面層(A10)の単層シートを作製した。なお、得られた表面層(A1〜A10)の単層シートの色相を、表3にそれぞれ示す。
(ii)日射特性の評価
作製例で得られた表面層(A1〜A10)の単層シートの日射特性(日射吸収率、日射透過率、日射反射率)を前述した通りの方法で評価した。なお、自記分光光度計としては日立製作所社製の「U−4000」を用いた。また、表面層(A1〜A10)の単層シートについては、380〜720nmの波長領域における日射吸収率、日射透過率及び日射反射率、並びに720〜1500nmの波長領域における日射吸収率、日射透過率及び日射反射率を評価した。得られた結果を表3に示す。
Figure 0005227576
(実施例1)
先ず、作製例で得られた表面層(A1)の単層シートを成形型に設置した後に、真空引きすることによって単層シートを成形型に密着せしめた。その後、射出成形機(Engel社製)を用いて、調製例で得られた反射成形体(B1)成形用の組成物を成形型に射出し成形して、複合成形体を得た。なお、実施例1で得られた複合成形体の表面色相を表5に示す。
(実施例2〜4、比較例1〜8)
調製例及び作製例で得られた表面層(A1)の単層シート及び反射成形体(B1)成形用の組成物に代えてそれぞれ表5及び表6に記載の通りのものを用いた以外は実施例1と同様にして複合成形体を得た。なお、実施例2〜4及び比較例1〜8で得られた複合成形体の表面色相を、表5及び表6にそれぞれ示す。
<複合成形体の日射特性、熱反射性能及び眩しさの評価>
(I)評価方法
以下の方法によって、複合成形体の日射特性、熱反射性能及び眩しさ、並びに複合成形体を構成する反射成形体(B1〜B5)の日射特性を評価した。
(i)日射特性の評価
反射成形体(B1〜B5)の日射特性は以下のようにして評価した。すなわち、実施例及び比較例で得られた複合成形体から表面層(A)を除去し、反射成形体(B1〜B5)の表面を露出せしめたものを試料として、単層シートにおける日射特性の評価方法と同様の方法により評価した。
また、複合成形体の日射特性は、実施例及び比較例で得られた複合成形体を試料として、単層シートにおける日射特性の評価方法と同様の方法により評価した。
(ii)熱反射性能の評価(太陽光暴露温度上昇試験)
実施例及び比較例で得られた複合成形体を試料とし、試料を太陽光に曝した際の表面温度の上昇値を測定した。すなわち、厚み30mmの発泡ポリスチレンで作製した上面が開口した箱(高さ150mm、巾240mm、長さ340mm)の底面に、試料を載置し、箱の上面に厚み1.5mmのソーダガラス板を乗せて、箱内部の試料表面の温度を熱電対で測定しつつ、北関東8月の晴天の日に太陽光に暴露した。その後、試料表面の温度上昇を観測し、上昇温度が一定になった所の温度とそのときの日陰における気温との差をΔT(℃)として記録した。
(iii)眩しさの評価
実施例及び比較例で得られた複合成形体を斜め45度に傾けて設置し、複合成形体を晴天下において1mの距離から肉眼で観察し、眩しさを感じるか否かを下記の基準で評価した。
A:反射が感じられず、眩しさは無い。
B:ほとんど反射は感じられないが、長時間見ていると疲れる。
C:光が反射してきて、眩しさが感じられる。
D:非常に眩しく感じられ、長時間目を向けていられない。
(II)評価結果
実施例1〜4及び比較例1〜8で得られた複合成形体の日射特性、熱反射性能及び眩しさを評価した。なお、日射特性については、380〜720nmの波長領域における日射吸収率、日射透過率及び日射反射率、並びに720〜1500nmの波長領域における日射吸収率、日射透過率及び日射反射率を評価した。得られた結果を表5及び表6にそれぞれ示す。また、複合成形体を構成する反射成形体(B1〜B5)の日射特性を評価した。得られた結果を表4に示す。
Figure 0005227576
Figure 0005227576
Figure 0005227576
表5及び表6に示した結果から明らかなように、本発明の暗色複合成形体(実施例1〜4)においては、表面層(A)の可視光線領域の光の吸収が大きいために眩しくなく、また複合成形体の近赤外線領域の光の反射が大きいため、太陽光に曝されたときに複合成形体の表面温度の上昇が少ないことが確認された。
一方、比較例1及び8で得られた複合成形体においては、表面層(A)に通常のカーボンブラック系の黒色顔料を使用しており、可視光線領域はもとより、近赤外線領域の光も高率で吸収してしまうため、太陽光に曝されたときに複合成形体の表面温度が上昇してしまうことが確認された。
また、比較例2及び5で得られた複合成形体においては、表面層(A)が可視光線領域の光を吸収し、近赤外線領域の光を高率で透過するが、反射層(B)の反射率が十分でないため表面層(A)で透過した光を有効に反射させることができず、結果的に太陽光に曝されたときに複合成形体の表面温度が上昇してしまうことが確認された。
さらに、比較例3で得られた複合成形体においては、表面層(A)が若干可視光線領域の光を吸収するため多少眩しさは軽減されるが、やはり太陽光に曝されたときに複合成形体の表面温度が上昇してしまうことが確認された。
また、比較例4で得られた複合成形体においては、表面層(A)の日射反射率の高いため太陽光に曝されたときの温度上昇は低く抑えられるが、同時に可視光領域の光も高率で反射されるため、人目に眩しいことが確認された。
さらに、比較例6及び7で得られた複合成形体においては、表面層(A)が近赤外線領域の光を比較的に高率で反射するものの、近赤外線領域の光の吸収を十分に抑えることができないため、太陽光に曝されたときに複合成形体の表面温度が上昇してしまうことが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、380〜720nmの可視光線領域において90%以上の日射吸収率を有し、しかも太陽光に曝された際の表面温度の上昇を十分に抑制することが可能な暗色複合成形体を提供することが可能となる。

Claims (4)

  1. 日射を受ける表面層(A)と反射成形体(B)とを備える合成樹脂複合成形体であって、
    前記表面層(A)が合成樹脂100重量部と、アゾ系顔料、アゾメチンアゾ系顔料、ペリレン系顔料からなる群から選択される少なくとも一つの顔料1〜5重量部とを含有しており、380〜720nmの波長領域において90%以上の日射吸収率を有し、720〜1500nmの近赤外線領域において30%未満の日射吸収率を有し、且つ720〜1500nmの近赤外線領域において50%以上の日射透過率を有する、暗色を呈する合成樹脂層であり、
    前記反射成形体(B)が380〜1500nmの波長領域において90%以上の日射反射率を有する合成樹脂成形体であり、且つ、
    前記反射成形体(B)の表面に前記表面層(A)を積層した複合成形体の720〜1500nmの近赤外線領域における日射反射率が70%以上であることを特徴とする近赤外線領域光反射性能を有する暗色複合成形体。
  2. 前記表面層(A)が、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及び熱可塑性エラストマー系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの合成樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の暗色複合成形体。
  3. 前記反射成形体(B)が、合成樹脂100重量部と、酸化チタン系白色顔料5〜70重量部とを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の暗色複合成形体。
  4. 前記反射成形体(B)が発泡構造を有するものであることを特徴とする請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の暗色複合成形体。
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