JP5219663B2 - カバレージを測定する装置、方法、プログラム - Google Patents
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Description
カバレージを測定する手法としては、例えば、日本ばね工業会が規定する標準測定法が知られている。この測定法では、ショットピーニング面を20倍から30倍の拡大鏡で観察し、標準写真と比較することによってカバレージの値を決定する。この測定法では、人の目視判断によってカバレージが決定されるため、カバレージの測定値に個人差が生じやすい。
本発明は、上記の問題を解決する。本発明は、上記のような特殊なパラメータを用いることなく、ショットピーニング処理面のカバレージを定量的に測定することができる技術を提供する。
この構成によると、ショットピーニング面が例えば湾曲している場合でも、その湾曲に起因する影響を排除して、カバレージを正しく測定することができる。ショットピーニング処理では、ショットピーニング面に反りが生じることも多い。このような場合でも、カバレージを正しく測定することができる。
ショットピーニング面のカバレージが100パーセントに近い場合、ショットピーニング面全体の確率密度分布は、主に第2確率密度分布のみで構成される。この場合、ショットピーニング面全体の確率密度分布に、第1確率密度分布のピークがほとんど現われなくなる。確率密度分布の双峰性が失われると、確率密度分布の分離が正しく行われず、第1確率密度分布と第2確率密度分布が誤って抽出されることも多い。具体的には、カバレージが100パーセントであるにもかかわらず、カバレージが50パーセントと求められることがある。
そこで、本発明の技術では、第1確率密度分布の分散に、制約を与えている。第1確率密度分布は、ショット未衝突領域の表面形状を示すものであり、その分散が取り得る範囲を予測することができる。従って、抽出した第1確率密度分布の分散が予測された範囲にない場合には、第1確率密度分布と第2確率密度分布が誤って抽出されたと判断することができる。この場合、第1確率密度分布と第2確率密度分布の抽出を再実行することで、真の第1確率密度分布と第2確率密度分布を抽出する。
ショット衝突領域では、ショット非衝突領域に比して、その表面高さが平均的に低くなる。従って、ショット衝突領域を示す第2確率密度分布の平均値は、ショット非衝突領域を示す第1確率密度分布の平均値よりも、その値が小さくなる。また、ショット衝突領域では、ショット非衝突領域に比して、その表面粗さが粗くなる。従って、ショット衝突領域を示す第2確率密度分布の分散は、ショット非衝突領域を示す第1確率密度分布分散よりも、その値が大きく。また、ショット衝突領域では、ショット非衝突領域に比して、その表面粗さが粗くなる。これらのことを利用し、分離した2つの確率密度分布から、第1確率密度分布と第2確率密度分布を識別することができる。
この方法によっても、ショットピーニング面のカバレージを定量的に求めることができる。
このプログラムによっても、ショットピーニング面のカバレージを定量的に求めることができる。
(形態1) カバレージ測定装置は、ショットピーニング面の各位置における表面高さを測定し、測定した表面高さを記述する表面測定データを作成する表面高さ測定装置を備えている。
(形態2) カバレージ測定装置は、ショットピーニング面全体における表面高さの確率密度分布を、ガウス分布関数を用いて2つのガウス分布に分離する。
(形態3) カバレージ測定装置は、計算したカバレージを表示するディスプレイを備えている。
表面高さ測定装置20は、レーザ式の変位センサ22と、アルメンストリップ100を載置するステージ装置26を備えている。レーザ式の変位センサ22は、ステージ装置26に載置されたアルメンストリップ100に対向しており、ショットピーニング面100aまでの距離を測定する。変位センサ22は、レーザ式のものに限られず、例えば探触子による接触式のものであってもよく、その測定方式は特に限定されない。ステージ装置26は、載置されたアルメンストリップ100を、X方向及びY方向に移動可能となっている。以上の構成により、表面高さ測定装置20は、ショットピーニング面100aの各位置(X、Y)における表面高さZを測定できる構成となっている。表面高さ測定装置20は、各位置で測定した表面高さを記述する表面測定データを作成し、コンピュータ40へと出力する。コンピュータ40は、入力した表面測定データから、ショットピーニング面100aのカバレージを計算する。コンピュータ40が計算したカバレージは、ディスプレイ60に表示される。
確率密度分布計算部42は、表面高さ測定装置20から入力した表面測定データを用い、図12に示すような表面高さの確率密度分布f(Z)を計算することができる。
確率密度分布分離部44は、確率密度分布計算部42によって計算された確率密度分布f(Z)を2つの確率密度分布に分離し、図12に示すようなショット未衝突領域の確率密度分布を示す第1確率密度分布f1(Z)と、ショット衝突領域の確率密度分布を示す第2確率密度分布f2(Z)を抽出することができる。
カバレージ計算部46は、第1確率密度分布f1(Z)と第2確率密度分布f2(Z)の少なくとも一方の積算値k1、k2から、ショットピーニング面100aのカバレージを計算することができる。計算されたカバレージは、ディスプレイ60に表示可能となっている。
表面高さデータ修正部48は、表面測定データに記述された表面高さを二次関数で近似することによって、ショットピーニング面100aの各位置における基準高さを計算することができる。そして、計算した基準高さを用い、表面測定データに記述された表面高さを修正することができる。
制約条件設定部50は、確率密度分布分離部44の演算処理に対して、制約条件を与えるために用意されている。特に、制約条件設定部50は、第1確率密度分布f1(Z)の分散σ1について、その正常値を示す制約範囲を設定することができる。
先ず、ステップS12では、表面高さ測定装置20により、ショットピーニング面100aの測定が行われる。表面高さ測定装置20は、X方向及びY方向に関して所定間隔毎に、ショットピーニング面100aの表面高さZを測定していく。本実施例では、X方向及びY方向の両方向に関して、10μmピッチで測定するように設定されている。このステップS12の処理により、ショットピーニング面100aの各位置で測定された表面高さを記述する表面測定データが得られる。得られた表面測定データは、コンピュータ40に入力される。
図7に示すように、ショットピーニング面100a全体の確率密度分布(グラフA)は、ショット未衝突領域の確率密度分布を示す第1確率密度分布(グラフB)と、ショット衝突領域の確率密度分布を示す第2確率密度分布(グラフC)によって構成されている。従って、ショットピーニング面100a全体の確率密度分布(グラフA)を、2つの確率密度分布に分離することによって、ショット未衝突領域の第1確率密度分布と、ショット衝突領域の第2確率密度分布を抽出することができる。本実施例のように、アルメンストリップ100が鉄鋼材料の場合、第1確率密度分布と第2確率密度分布は、ガウス分布と見なすことができることが確認されている。従って、本実施例では、ショットピーニング面100a全体の確率密度分布を2つのガウス分布に分離することによって、第1確率密度分布と第2確率密度分布を抽出する。
ショット衝突領域では、ショットの衝突による陥没等が生じている。従って、ショット衝突領域では、ショット非衝突領域と比較して、その表面高さが平均的に低くなる。確率密度分布分離部44は、この事象を利用することによって、第1確率密度分布と第2確率密度分布の識別を行っている。
図8に示すように、カバレージが略87パーセントである場合、ショットピーニング面100a全体の確率密度分布Aには、第1確率密度分布Bに起因するピークと第2確率密度分布Cに起因するピークが比較的にはっきりと現われる。一方、図9に示すように、カバレージが略98パーセントまで高まると、ショットピーニング面100a全体の確率密度分布は、主に第2確率密度分布Cのみで構成され、第1確率密度分布Bのピークがほとんど現われなくなる。この場合、確率密度分布の分離が正しく行われず、第1確率密度分布と第2確率密度分布が誤って抽出されることも多い。
最後に、ステップS22では、ステップS20で計算されたカバレージが、ディスプレイ60に表示される。
例えば、上記したカバレージ測定装置10では、表面高さの確率密度分布を用いて、カバレージを測定している。しかしながら、表面高さの確率密度分布に代えて、表面角度(法線方向)の確率密度分布を用いても、カバレージを正しく測定できることが確認されている。ここで、表面角度の確率密度分布を計算する場合には、ショットピーニング面100aを撮影した画像データを用いることもできる。ショットピーニング面100aを撮影した画像データでは、各画素の輝度(グレースケール値)が、ショットピーニング面100aの各位置における表面角度に対応する。従って、ショットピーニング面100aを撮影した画像データを用い、その輝度の確率密度分布を計算すれば、表面角度の確率密度分布に相当するものを得ることができる。
20:表面高さ測定装置
22:変位センサ
26:ステージ装置
40:コンピュータ
42:確率密度分布計算部
44:確率密度分布分離部
46:カバレージ計算部
48:表面高さデータ修正部
50:制約条件設定部
60:ディスプレイ
100:アルメンストリップ
100a:ショットピーニング面
Claims (9)
- ショットピーニング面のカバレージを測定する装置であり、
ショットピーニング面の各位置で測定された表面形状に関する指標を記述する表面測定データから、その表面形状に関する指標の確率密度分布を計算する分布計算手段と、
分布計算手段によって計算された確率密度分布を、所定の確率分布関数を用いて2つの確率密度分布に分離し、ショット未衝突領域の確率密度分布を示す第1確率密度分布と、ショット衝突領域の確率密度分布を示す第2確率密度分布を抽出する分布抽出手段と、
第1確率密度分布と第2確率密度分布の少なくとも一方の積算値を用いてカバレージを計算するカバレージ計算手段と、
を備えるカバレージを測定する装置。 - 前記表面形状に関する指標は、表面高さ又は表面角度であることを特徴とする請求項1に記載のカバレージを測定する装置。
- 前記表面形状に関する指標は、表面高さであることを特徴とする請求項2に記載のカバレージを測定する装置。
- 前記表面測定データに記述された表面高さを二次関数で近似することによってショットピーニング面の各位置における基準高さを計算するとともに、計算した基準高さを用いて前記表面測定データに記述された表面高さを修正する修正手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のカバレージを測定する装置。
- 前記分布抽出手段は、前記所定の確率分布関数に、ガウス分布関数を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のカバレージを測定する装置。
- 前記分布抽出手段は、抽出した第1確率密度分布の分散が所定範囲内にないときに、制約条件を追加した上で、第1確率密度分布と第2確率密度分布の抽出を再実行することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のカバレージを測定する装置。
- 前記分布抽出手段は、分離した2つの確率密度分布の平均値又は分散に基づいて、分離した2つの確率密度分布から前記第1確率密度分布と前記第2確率密度分布を識別することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のカバレージを測定する装置。
- ショットピーニング面のカバレージを測定する方法であり、
ショットピーニング面の各位置で測定された表面形状に関する指標を記述する表面測定データから、その表面形状に関する指標の確率密度分布を計算する分布計算工程と、
分布計算手段によって計算された確率密度分布を、所定の確率分布関数を用いて2つの確率密度分布に分離し、ショット未衝突領域の確率密度分布を示す第1確率密度分布と、ショット衝突領域の確率密度分布を示す第2確率密度分布を抽出する分布抽出工程と、
第1確率密度分布と第2確率密度分布の少なくとも一方の積算値からカバレージを計算するカバレージ計算工程と、
を備えるカバレージを測定する方法。 - ショットピーニング面のカバレージを測定するためのプログラムであり、コンピュータに、
ショットピーニング面の各位置で測定された表面形状に関する指標を記述する表面測定データから、その表面形状に関する指標の確率密度分布を計算する分布計算処理と、
分布計算手段によって計算された確率密度分布を、所定の確率分布関数を用いて2つの確率密度分布に分離し、ショット未衝突領域の確率密度分布を示す第1確率密度分布と、ショット衝突領域の確率密度分布を示す第2確率密度分布を抽出する分布抽出処理と、
第1確率密度分布と第2確率密度分布の少なくとも一方の積算値からカバレージを計算する計算処理と、
を実行させるプログラム。
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