以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の各実施の形態においては、本発明の文字入力装置の一例として、例えば携帯電話やPDAなどのタッチパネルを有する携帯端末を想定して説明する。しかしながら、本発明の文字入力装置は携帯端末に限定されるものではなく、銀行のATMや駅の乗車券販売機など、タッチパネルを有する任意の入力端末にも適用できる。また、本発明の文字入力装置は、後述するように、タッチパネルを有する入力端末に限定されるものでもない。すなわち、本発明の文字入力装置は、ユーザの押圧入力(または押下入力)を受け付ける入力部を備えるものであれば、種々の文字入力装置に適用することができる。
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る文字入力装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、第1実施の形態に係る文字入力装置1は、制御部10と、入力部20と、入力領域判別部22と、表示部30と、を備えている。制御部10は、文字入力装置1の全体の動作を制御する。また、この制御部10は、移行入力検知部12と、文字選定部14と、を備えている。制御部10に含まれるこれらの各機能部については後述する。
入力部20は、本実施の形態では、押圧(接触)による入力を検知するタッチパッドなどで構成する。この入力部20は、ユーザ(操作者)による押圧入力を受け付ける。ユーザは、指またはスタイラスペンなどのペン型入力デバイスなどを用いて、この入力部20に接触することにより、押圧入力を行う。入力領域判別部22は、入力部20においてユーザにより押圧入力が行われた入力領域(押圧入力の位置)を特定および判別する。
表示部30は、本実施の形態では、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどで構成する。この表示部30は、入力された文字を表示する。具体的には、文字選定部14により選定された文字を表示する。また、後述するように、表示部30はさらに、ユーザの入力を受け付けるに際し、キーやボタンなどのオブジェクトも描画して表示する。
本実施の形態では、入力部20および入力領域判別部22を透明電極などの部材で構成し、表示部30の前面に重ねて配置することにより、入力部20および入力領域判別部22と表示部30とでタッチパネルを構成している。したがって、本実施の形態のタッチパネルは、表示部30にキーやボタンなどのオブジェクトを表示することにより、当該オブジェクトの位置に対応する入力部20の入力領域が、ユーザによる押圧入力を受け付ける。このように、入力部20はユーザによる押圧入力を受け付け、その押圧入力の位置を入力領域判別部22が検出し、当該検出結果を制御部10に出力する。なお、本実施の形態で使用するタッチパネルは、抵抗膜方式または静電容量方式など、任意の方式のものを用いることができる。
次に、本実施の形態に係る移行入力検知部12に関連する動作について説明する。
本実施の形態においては、タッチパネルの表示部30に、文字入力に用いるテンキーの各キーを画像で表示することにより、入力部20が各キーに対応する入力領域を有していることをユーザに認識させる。ここでは、ユーザがテンキーの各キーを用いて平仮名の各文字を入力する場合について説明する。そのため、テンキーの各数字キーには、それぞれ五十音の各「行」を構成する平仮名の文字が割り当てられている。このことをユーザに認識させるため、表示部30に表示される各キーのキートップ(キーの表面)には、割り当てられた平仮名の各行の最初の文字(例えば「あ」、「か」、「さ」など)を表示する。これにより、ユーザは、各入力領域には所定の文字群が割り当てられていることを認識できる。
また、本実施の形態においては、各キーに対応した入力部20の各入力領域を、それぞれ第1のサブ領域と第2のサブ領域とに区分けする。このことをユーザに認識させるため、表示部30に表示される各キーのキートップには、それぞれのキーの入力領域が第1のサブ領域と第2のサブ領域とに区分けされていることを表すような表示を行う。なお、このような区分けの表示については後述する。このように、入力部20は、所定の文字群が割り当てられた入力領域であって第1のサブ領域と第2のサブ領域とに区分けされた入力領域を有し、当該入力領域に対してユーザが押圧入力する。
本実施の形態では、移行入力検知部12は、あるキーに対応する入力領域においてユーザの押圧入力が、第1のサブ領域および第2のサブ領域の一方から他方へ移行する入力を検知する。すなわち、移行入力検知部12は、入力部20が受け付けている押圧入力の位置が、押圧状態のまま、あるキーに対応する入力領域において第1のサブ領域から第2のサブ領域へ移行した場合、この押圧入力を「移行する入力」として検知する。また、移行入力検知部12は、入力部20が受け付けている押圧入力の位置が、押圧状態のまま、あるキーに対応する入力領域において第2のサブ領域から第1のサブ領域へ移行した場合も、この押圧入力を「移行する入力」として検知する。以下、この「移行する入力」は、単に「移行入力」と記す。
本実施の形態では、このように移行入力が検知されると、当該移行入力が検知された入力領域に対応する文字群の文字を所定の順序で変化させて表示する。このように、所定の文字群の文字を所定の順序で変化させて選定し、選定された文字を表示することにより、ユーザは従来のマルチタップと同様の動作を行うことができる。
ここで、移行入力検知部12が、入力部20に対する押圧入力を「移行入力」として検知する態様には、いくつもの態様が考えられる。例えば、入力部20の入力領域において検出された押圧の面積の重心点をユーザの押圧入力として検出する場合、サブ領域の一方への押圧入力がオンからオフになるのとほぼ同時に、他方への押圧入力がオンになった状態を、「移行入力」として検知することができる。また、検出された押圧の面積をそのままユーザの押圧入力として検出する場合、サブ領域の一方への押圧入力がオンのまま他方への押圧入力もオンになり、その後前記一方への押圧入力のみがオフになった状態を、「移行入力」として検知することもできる。
図2は、入力部20における各入力領域がそれぞれ第1および第2のサブ領域に区分けされていることを、タッチパネルの表示部30上の表示により示した例を表す図である。図2(A)〜(C)は、どれも、タッチパネルの表示部30に複数のキーを画像で表示し、これらのキーに対応する各入力領域に平仮名の各行の文字群を割り当て、さらに、各入力領域が区分けされたサブ領域をそれぞれ表示した例を示している。図2(A)、図2(B)、および図2(C)ともに、「あ行」、「か行」、「さ行」など、それぞれ平仮名の各「行」に対応する入力領域を表すキーを表示している。
図2(A)は、各キー同士の境界を破線で示し、各キー中央に縦方向に表示する実線により、それぞれのキーに対応する入力領域を第1のサブ領域および第2のサブ領域に区分けした様子を示す例である。また、図2(B)は、各キー同士の境界を実線で示し、各キー中央に縦方向に表示する破線により、それぞれのキーに対応する入力領域をサブ領域に区分けした様子を示す例である。さらに、図2(C)は、各キー同士の境界を実線で示し、各キー中央に横方向に表示する破線により、それぞれのキーに対応する入力領域をサブ領域に区分けした様子を示す例である。
なお、図2(A)、図2(B)、および図2(C)は、それぞれサブ領域の区分けのデザインが異なるのみであり、これらを用いて行う操作、および当該操作に基づく処理などは、どの例においても実質的に同じである。ただし、サブ領域の区分けを縦方向にするか、または横方向にするかによって、入力操作に際してユーザに要求する動作の方向が、縦方向になるか横方向になるか異なる。これらは、あくまでも、サブ領域の区分けのいくつかの例を示したに過ぎず、他にも種々のデザインを想定することができる。本実施の形態において、このサブ領域の区分けは、ユーザが、上述した移行入力を行うための基準とするためのものであり、その基準となり得るものであれば、任意のサブ領域の区分けを施すことができる。なお、このようなサブ領域の区分けは、後述するように、表示部30に表示して表すのではなく、入力部20において直接示す、すなわち各キーに直接印刷等の処理を施して示すこともできる。
このように、サブ領域に区分けされた入力領域に対応する各キーを表示部30に表示して、その前面に配置された入力部20は、ユーザによる押圧入力を受け付ける。入力部20がユーザによる押圧入力を検出したら、移行入力検知部12は、入力領域において受け付けられている押圧入力が、第1のサブ領域および第2のサブ領域の一方から他方へ移行した場合、当該押圧入力を「移行入力」として検知する。本実施の形態では、このようにして移行入力を検知するたびに、入力領域に対応する文字群に属する文字を、順次、選定して表示する。
図3は、上述した移行入力が検知された際に行う文字群の選定の順序を説明する図である。
本実施の形態において行う文字の選定、すなわち、移行入力が検知されるたびに、順次、平仮名を変化させて表示することについては、従来のマルチタップの入力方式と同じ技術的思想に基づいている。図3に示す平仮名の各「行」(「あ行」、「か行」、「さ行」など)は、それぞれ図2に示した各キー(または各入力領域)に対応する。本実施の形態では、これら各「行」に属する文字を「文字群」と記す。例えば「た行」の文字群には「た・ち・つ・て・と」の仮名文字が属する。本実施の形態においては、これらの文字を、移行入力が検知された回数に応じて、上から下の順序で順次選定する。
本実施の形態では、例えば、入力部20において「た行」のキーに対応する入力領域に最初の押圧入力が受け付けられたら、文字入力装置1は、「た行」の文字群に属する文字のうち、最初の文字「た」を選定して表示する。ここで、最初の押圧入力を受け付けたのが、当該入力領域における第1のサブ領域であっても、また第2のサブ領域であっても、最初の押圧入力によるものであれば、文字入力装置1は、最初の文字「た」を選定して表示する。
また、本実施の形態の文字入力装置1は、最初の押圧入力が受け付けられた後、当該入力に係る押圧がされたまま、移行入力を最初に(第1回目)検知すると、所定の順序に従い次の文字を選定する。すなわち、この場合、「た行」の文字群に属する文字のうち、移行入力の回数が1回目の「ち」の文字の表示に変化させる。その後、引き続き押圧がされたまま、さらに第2回目の移行入力を検知すると、「た行」の文字群に属する文字のうち、移行入力回数が2回目の「つ」の文字の表示に変化させる。なお、図3において、各「行」の平仮名の文字群の末尾に示した上方の矢印(↑)は、その矢印を示した回数の移行入力を検知すると、各行の最初に戻って、文字の選定が繰り返されることを意味している。このように、本実施の形態では、文字選定部14は、上述した移行入力が検知されるたびに、所定の文字群に属する文字を順次選定する。
なお、入力部に最初の押圧が受け付けられた後、入力部20に対する押圧入力が解除されたら(つまりユーザが入力部20から指を離したら)、表示部30に表示されている文字を入力文字として確定する。その後再び入力部20に対する押圧入力が受け付けられたら、当該押圧入力は再び「最初の」押圧入力として処理を行う。
図4は、本実施の形態による、移行入力の検知に基づく動作を説明する図である。
図4は、簡略化のために、図2(A)に示した入力領域のうち「あ行」のものだけを示している。このように、入力領域がサブ領域に区分けされていることをユーザが視認可能なように表示部30に表示して、この表示に対して行われるユーザの押圧入力を、入力部20が受け付ける。なお、以下の説明において、入力領域をサブ領域に区分けする際には、説明の便宜上、各入力領域の左半分を第1のサブ領域として、また右半分を第2のサブ領域として説明する。しかしながら、これら第1および第2のサブ領域の区別はあくまでも便宜上のものであり、この区別に限定されるものではない。
図4において、黒丸の印(●)は、その点においてユーザの最初の押圧入力が受け付けられたことを示している。また、矢印のついた曲線は、ユーザの押圧入力の位置が(押圧状態のまま)移動した軌跡を示している。さらに、図4に示す白丸の印(○)は、ユーザの押圧入力の位置がサブ領域間を移行することにより移行入力が検知されたことに応じて、文字の選定が行われたことを表す。このように、移行入力が検知された際には、ユーザに認識可能なように、表示部30上に目印となる表示を行うこともできる。また、このような表示の代わりに、あるいはこのような表示と共に、所定の音を発したり、あるいは所定の振動を発生させたりして、移行入力が検知されたことをユーザに報知してもよい。図4に示すカッコ内の仮名文字は、移行入力の検知に応じて、表示部30において入力文字が表示される箇所に表示すべき仮名文字を示している。
図4(A)に示すように、ユーザの最初の押圧入力が入力部20に検出されると(黒丸の印(●)に接触した状態)、この入力領域に割り当てられた文字群「あ」行の最初の仮名文字である「あ」を表示する。図4(A)においては、「あ」行のキーに対応する入力部20の入力領域における第1のサブ領域に、ユーザの最初の押圧入力が受け付けられた様子を表している。この時点で、ユーザの押圧入力が入力部20に検出されなくなったら(すなわち図4(A)に示す黒丸の印(●)の位置でユーザが押圧入力をやめたら)、「あ」の文字を入力文字として確定する。
一方、最初の押圧入力に引き続き(図4(A)に示す黒丸の印(●)の位置でユーザが押圧入力をやめずに)、入力部20がユーザの押圧入力を検出したままの状態で、ユーザが、図4(B)に示す矢印に沿って押圧位置をスライドする入力を行ったとする。このように、当該押圧入力の位置が第1のサブ領域から第2のサブ領域へ移行することにより移行入力が検知されたら、この時点で表示部30の「あ」の文字の表示を「い」の文字に変更する。このように「い」の文字が表示された状態で、ユーザの押圧入力が入力部20に検出されなくなったら(すなわち図4(B)に示す矢印の終点の位置でユーザが押圧入力をやめたら)、「い」の文字を入力文字として確定する。
一方、図4(B)に示す状態で押圧入力が維持されたまま、図4(C)に示すように、押圧位置をスライドする入力の方向が反転して、第2のサブ領域から再び第1のサブ領域に移行したとする。このようにして、再び移行入力が検知されると、図4(C)に示すように、その時点で表示部30に表示されている文字を「い」から「う」に変化させる。このように「う」の文字が表示された状態で、ユーザの押圧入力が入力部20に検出されなくなったら(すなわち図4(C)に示す矢印の終点の位置でユーザが押圧入力をやめたら)、「う」の文字を入力文字として確定する。
この後は、押圧入力が維持されたままで移行入力が検知されるたびに、入力領域に対応する文字群に属する文字を、順次変更して表示する。なお、文字群に属する最後の順序の文字が表示された状態で、さらに移行入力が検知された場合、図3に示したように、文字群に属する最初の順序の文字に戻って、順次変更する表示を繰り返す。
このように、本実施の形態では、ユーザの押圧入力の位置がサブ領域間を移行することにより移行入力が検知されるたびに、所定の順序で文字の選定を行う。したがって、ユーザが文字入力の操作を行う際に、文字の選定が行われる基準となるのは、押圧入力の軌跡がサブ領域間を移行するか否かであって、押圧入力の軌跡の経路は問題にならない。そのため、例えば図4(D)に示すように、非常に緩い角度で押圧入力の移動方向を変化させて押圧入力を行ったり、また図4(E)に示すように、例えば円を描くようにして押圧位置を移動する入力を行っても、文字の選定を行うことができる。
なお、本実施の形態では、押圧入力の位置がサブ領域間を移行する方向の差異は検出しない。サブ領域を移行する移行入力の「方向」とは、当該移行入力に係る押圧入力が第1のサブ領域から第2のサブ領域へ移行したか、または逆に第2のサブ領域から第1のサブ領域へ移行したか、の区別のことである。本実施の形態では、このような区別を行わずに、移行入力の検知に応じて所定の順序で文字の選定を行う。したがって、例えば図4(F)に示すように、図4(C)とは異なる方向で、すなわち最初に第2のサブ領域に検知された押圧入力が、第1のサブ領域に移行し、それから再び第2のサブ領域に移行しても、図4(C)の場合と同じ結果が出力される。
次に、本実施の形態による文字入力を行うための処理の流れについて説明する。
図5は、第1実施の形態による文字入力処理を説明するフローチャートである。図5に示すフローチャートにおいて、第1実施の形態による文字入力処理は、ユーザによる押圧入力が入力部20の入力領域に検出された時点から開始する。
本実施の形態による文字入力処理が開始すると、まず、入力領域判別部22は、入力部20において押圧入力が受け付けられている入力領域を特定する。すなわち、入力領域に対する最初の押圧入力に基づいて、文字選定部14は、当該入力領域に割り当てられた文字群に属する文字を選定する(ステップS11)。例えば、「あ」行の入力領域については「あ」行の文字群に属する最初の文字「あ」を選定する。また、入力領域判別部22は、押圧入力が受け付けられた入力領域を特定した際、当該押圧入力を受け付けたのが、当該入力領域における第1のサブ領域か、または第2のサブ領域かを判別する。
ステップS11において文字が選定されたら、制御部10は、当該選定された文字を表示部30に表示する(ステップS12)。
ステップS12において選定した文字が表示されたら、制御部10は、入力部20に対する押圧入力が、押圧状態のまま継続しているか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13において、入力部20に対する押圧入力が継続している場合、移行入力検知部12は、移行入力の検知の有無を判定する(ステップS14)。すなわち、ステップS14において、移行入力検知部12は、入力領域において受け付けられている押圧入力が第1のサブ領域および第2のサブ領域の一方から他方へ移行する移行入力を検知したか否かを判定する。ステップS14にて移行入力が検知されない場合、すなわちユーザが移行入力を行っていない場合は、ステップS13に戻って処理を続行する。
一方、ステップS14にて移行入力が検知された場合、文字選定部14は、既に選定して表示されている文字が属する文字群に属する文字のうち、当該既に選定して表示されている文字の次の文字を選定する(ステップS15)。例えば、既に選定して表示されている文字が「あ」の文字の場合、次の文字である「い」を選定する(図3参照)。また、例えば、既に選定して表示されている文字が「い」の文字の場合、次の文字である「う」を選定する。つまり、ステップS11およびステップS15において、文字選定部14は、入力領域に対する最初の押圧入力に基づいて当該入力領域に割り当てられた所定の文字群に属する文字を選定し、引き続き当該入力領域において移行入力が検知されるごとに、所定の文字群に属する文字を所定の順序で選定する。ステップS15において文字が選定されたら、ステップS12に戻り、制御部10は、当該選定された文字を表示部30に表示して、ステップS13以降の処理を続行する。
ステップS13において、入力部20に対する押圧入力が継続しなくなった場合、すなわち、ユーザが押圧入力をやめた場合、ステップS16に移行する。ステップS16においては、制御部10は、選定されて表示部30に表示されている文字を入力文字として確定する。したがって、制御部10は、選定された文字が表示部30に表示された状態で、入力部20が押圧入力を受け付けなくなった場合、当該表示された文字を入力文字として確定するように制御を行う。ステップS16で入力文字が確定したら、本実施の形態による文字入力処理を終了する。
このように、本実施の形態によれば、図2に示したような入力領域において、区分けされたサブ領域間を移行する入力により、図4に示したような文字の選定を行うことができる。
また、本実施の形態に係る文字入力装置1によれば、最初に押圧入力を開始する入力領域さえ正確に押圧する入力を行えば、以後、表示部30に表示される文字が変化することによって、ユーザは、移行入力が適切に検知されていることを認識できる。したがって、ユーザは、最初の押圧入力を開始した後は、入力領域またはサブ領域同士の境界をいちいち注視しながら入力を行う必要はない。
さらに、本実施の形態に係る文字入力装置1によれば、入力領域において受け付けられている押圧入力が、サブ領域間を移行したか否かの判定によって、所定の順序で文字の選定を行う。したがって、ユーザが行う操作の個人差にほとんど左右されることなく、正確な入力を行うことができる。このため、本実施の形態に係る文字入力装置1は、一連の文字入力を行う操作において、入力ミスを低減させることができる。
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2実施の形態に係る文字入力装置について説明する。
第2実施の形態に係る文字入力装置は、上述した第1実施の形態に係る文字入力装置1において、入力領域判定部22および文字選定部14の動作を変更するものである。したがって、第2実施の形態に係る文字入力装置は、第1実施の形態で説明した文字入力装置1と同じ構成により実施することができる。このため、上述した第1実施の形態と同じ説明は、適宜省略する。
第2実施の形態に係る文字入力装置2は、図2に示したように、表示部30に複数のキーを表示して、入力部20において各キーに対応する入力領域に対する押圧入力を受け付ける際に、複数の入力領域に跨ってスライドする押圧入力にも対応できる。このような複数の入力領域に跨ってスライドする押圧入力にも対応できるように、入力部30は、所定の文字群がそれぞれ割り当てられた複数の入力領域であって、それぞれが第1のサブ領域と第2のサブ領域とに区分けされた複数の入力領域を有する。そして、操作者は、入力部30の複数の入力領域に対して押圧入力する。すなわち、文字入力装置2は、最初に押圧入力が受け付けられた入力領域に割り当てられた文字群に属する最初の文字を表示した後は、どの入力領域において移行入力を検知しても、所定の順序に従って次の文字の選定を行う。
例えば、文字入力装置2は、図2(A)に示す「ま行」のキーに対応する入力領域に対する最初の押圧入力に基づいて「ま」の文字を表示するところは第1実施の形態と同じである。この後、第2実施の形態に係る文字入力装置2は、引き続き任意の入力領域において移行入力を検知すると、既に選定された「ま行」に属する文字群において文字を選定する。
ただし、文字入力装置2は、押圧入力が入力領域に受け付けられてから最初の移行入力を検知して次の文字の選定を行ったら、以後、移行入力が検知された際、サブ領域を移行する方向が直前の移行入力の方向と異なる場合にのみ、文字の選定を行う。ここで、サブ領域を移行する移行入力の「方向」とは、当該移行入力に係る押圧入力がサブ領域の一方から他方へ移行する方向(順序)のことである。すなわち、第2実施の形態においては、押圧入力がサブ領域を移行する入力が検知された際の方向が、第1のサブ領域から第2のサブ領域への方向で移行したのか、またはその逆(第2から第1)の方向で移行したのかを区別する。この区別については後述する。
例えば、図2(A)に示す「あ行」のキーに対応する入力領域において、入力部20に対する最初の押圧入力が第1のサブ領域に受け付けられたら、文字入力装置2は、「あ」の文字を表示する。この後、当該押圧入力が、この入力領域において、押圧状態のまま、第1のサブ領域から第2のサブ領域へ(つまり左側から右側へ)移行した場合、この文字入力装置2は、「あ」の文字を「い」の文字に変化させる。ここまでの動作は、上述した第1実施の形態と同じである。その後、文字入力装置2は、当該押圧入力が、押圧状態のまま、右隣の「か行」のキーに対応する入力領域に突入した場合、その入力領域のサブ領域を、前回とは異なる方向で移行しない限り、文字の選定を行わない。すなわち、文字入力装置2は、その入力領域において第2のサブ領域から第1のサブ領域へ(つまり右側から左側へ)移行する入力を検知しない限り、「い」の文字を「う」の文字に変化させる表示は行わない。
したがって、例えば、ユーザが、複数の入力領域を横方向に(例えば左から右へ)一気にスライドする押圧入力を行ったとしても、文字入力装置2は、最初に移行入力が検知された入力領域に割り当てられた文字群に属する最初の文字を、次の文字へと1回変化させるだけである。つまり、文字の選定は1回のみ行われる。その後、維持したままの押圧入力が、任意の入力領域において、最初に検知された移行入力の方向とは逆方向(この場合、第2から第1へ(つまり右側から左側へ))の移行入力が検知された場合、文字入力装置2は、表示された文字の更に次の文字を選定する。これ以降は、維持したままの押圧入力が、任意の入力領域において、前回(直前)と逆方向の移行入力が検知されるたびに、文字入力装置2は、表示された文字の次の文字を選定する。
このような処理のため、第2実施の形態においては、移行入力検知部12が移行入力を検知した際、文字選定部14は、当該移行入力に係る押圧入力が一方のサブ領域から他方のサブ領域へ移行した方向を区別して検知する。すなわち、移行入力検知部12は、入力領域において押圧入力が、第1(左側)のサブ領域から第2(右側)のサブ領域へ移行する入力を「順方向」の移行入力として検知する。また、移行入力検知部12は、入力領域において押圧入力が、第2(右側)のサブ領域から第1(左側)のサブ領域へ移行する入力を「逆方向」の移行入力として検知する。
また、文字選定部14は、一の入力領域に対する最初の押圧入力に基づいて、一の入力領域に割り当てられた所定の文字群に属する文字を選定し、引き続き任意の入力領域において順方向の移行入力または逆方向の移行入力が検知されるごとに、当該移行入力が連続した同じ方向の移行入力でない限り、所定の文字群に属する文字を所定の順序で選定する。具体的には、文字選定部14は、ある入力領域において最初の移行入力が検知された時点で、当該入力領域に割り当てられた文字群に属する文字のうち順序が最初の文字(最初の押圧入力に応じて表示した文字)を、次の文字に変化させて表示する。その後は、任意の入力領域において、前回(直前)の移行入力と異なる方向の移行入力が検知された場合に、文字選定部14は、表示されている文字を次の文字に変化させて表示する。
次に、本実施の形態による文字入力を行うための処理の流れについて説明する。
図6は、第2実施の形態による文字入力処理を説明するフローチャートである。図6に示すフローチャートにおいて、第2実施の形態による文字入力処理は、ユーザによる押圧入力が入力部20に検出された時点から開始する。
本実施の形態による文字入力処理が開始すると、まず、入力領域判別部22は、複数の入力領域のうち、押圧入力された入力領域を特定する(ステップS31)。すなわち、入力領域判別部22は、ユーザの押圧入力を受け付けたのが、入力部20における「あ」行に対応する入力領域であるか、または「か」行に対応する入力領域であるか、などを特定する。なお、入力領域判別部22は、押圧入力が受け付けられた入力領域を特定した際、当該押圧入力されたのが、当該入力領域における第1のサブ領域か、または第2のサブ領域かも判別する。
ステップS31において入力領域が特定された結果、当該入力領域がテンキーに対応する領域でない場合には(ステップS32のNo)、本実施の形態による文字入力処理は行わないため、処理を終了する。一方、ステップS31において入力領域が特定された結果、当該入力領域がテンキーに対応する領域である場合(ステップS32のYes)、文字選定部14は、特定された入力領域に基づいて、当該入力領域に割り当てられた文字群を選定する(ステップS33)。例えば、「あ」行のキーに対応する入力領域については、文字選定部14は、「あ」行の文字群を選定する。
ステップS33において文字群が選定されたら、文字選定部14は、当該入力領域に割り当てられた文字群に属する文字のうち、最初の文字を選定する(ステップS34)。すなわち、例えば「あ行」の入力領域に対する押圧入力が受け付けられたら、文字選定部14は、「あ行」の最初の文字「あ」を選定する。ステップS34において文字が選定されたら、制御部10は、当該選定された文字を表示部30に表示する(ステップS35)。
ステップ35において選定した文字が表示されたら、制御部10は、入力部20に対する押圧入力が、押圧状態のまま継続しているか否かを判定する(ステップS36)。ステップS36において、入力部20に対する押圧入力が継続している場合、入力領域判別部22は、入力部20において押圧入力が受け付けられている入力領域を特定する(ステップS37)。このステップS37にて行う処理は、上述したステップS31の処理と同様であり、入力領域判別部22は、当該押圧入力を受け付けたのが、当該入力領域における第1のサブ領域か、または第2のサブ領域かも判別する。
ステップS37において入力領域が特定されたら、移行入力検知部12は、移行入力の検知の有無を判定する(ステップS38)。すなわち、ステップS38において、移行入力検知部12は、入力領域において受け付けられている押圧入力が第1のサブ領域および第2のサブ領域の一方から他方へ移行する入力を検知したか否かを判定する。ステップS38にて移行入力が検知されない場合、すなわちユーザが移行入力を行っていない場合は、ステップS36に戻って処理を続行する。
一方、ステップS38にて移行入力が検知された場合、文字選定部14は、当該移行入力が、押圧入力を受け付けてから最初の移行入力であるか否かを判定する(ステップS39)。ステップS39において、当該移行入力が最初の移行入力であると判定された場合、文字選定部14は、既に選定して表示されている文字が属する文字群に属する文字のうち、当該既に選定して表示されている文字の次の文字を選定する(ステップS41)。例えば、既に選定して表示されている文字が「あ」の文字の場合、文字選定部14は、次の文字である「い」を選定する(図3参照)。また、例えば、既に選定して表示されている文字が「い」の文字の場合、文字選定部14は、次の文字である「う」を選定する。ステップS41において文字が選定されたら、制御部10は、当該選定された文字を表示部30に表示する(ステップS35)。
なお、ステップS39において、当該移行入力が最初の移行入力ではないと判定された場合、文字選定部14は、検知された移行入力が前回(直前)の移行入力と同じ方向の移行入力であるか否かを判定する(ステップS40)。ここで、当該移行入力が最初の移行入力ではないと判定された場合とは、すなわち2回目以降の移行入力が検知された場合に相当する。ステップS40において、検知された移行入力が前回(直前)の移行入力と同じ方向の移行入力であると判定された場合は文字の選定を行わないため、ステップS36に戻って処理を続行する。なお、検知された移行入力が前回(直前)の移行入力と同じ方向の移行入力である場合とは、前回、順方向の移行入力が検知された場合において、今回も順方向の移行入力が検知される場合に相当する。また、前回、逆方向の移行入力が検知された場合において、今回も逆方向の移行入力が検知される場合も、検知された移行入力が前回(直前)の移行入力と同じ方向の移行入力である場合に相当する。
一方、ステップS40において、検知された移行入力が前回(直前)の移行入力と同じ方向の移行入力ではない、すなわち異なる方向の移行入力であると判定された場合、文字選定部14は、ステップS41に進んで文字の選定を行う。ここで、検知された移行入力が前回(直前)の移行入力と異なる方向の移行入力である場合とは、前回、順方向の移行入力が検知された場合において、今回は逆方向の移行入力が検知される場合に相当する。また、前回、逆方向の移行入力が検知された場合において、今回は順方向の移行入力が検知される場合も、検知された移行入力が前回(直前)の移行入力と異なる方向の移行入力である場合に相当する。ステップS41において文字が選定されたら、制御部10は、当該選定された文字を表示部30に表示する(ステップS35)。
ステップS36において、入力部20に対する押圧入力が継続しなくなった場合、すなわち、ユーザが押圧入力をやめた場合、ステップS42に移行する。ステップS42においては、制御部10は、選定されて表示部30に表示されている文字を入力文字として確定する。ステップS42で入力文字が確定したら、本実施の形態による文字入力処理を終了する。
このように、本実施の形態によれば、上述した第1実施の形態と同様の効果を維持しつつ、さらに、ユーザは、入力部20(表示部30)を広く用いて入力に係る操作を行うことができる。本実施の形態においては、入力領域に対する最初の押圧入力を行った後は、移行入力を行う位置がずれてしまい例えば隣の入力領域まで侵入してしまったとしても、その位置において、もとの入力領域に対する操作と同様の操作を行うことができる。したがって、本実施の形態においては、最初に押圧入力を行う入力領域に対して確実に押圧入力を行いさえすれば、その後は、入力領域の位置をほとんど意識することなく、文字入力を行うことができる。そのため、ユーザが入力ミスをしてしまうおそれを一層低減する効果が期待できる。
(第3実施の形態)
次に、本発明の第3実施の形態に係る文字入力装置について説明する。
第3実施の形態に係る文字入力装置は、第2実施の形態と同様に、上述した第1実施の形態に係る文字入力装置1において、入力領域判定部22および文字選定部14の動作を変更するものである。したがって、第3実施の形態に係る文字入力装置は、第1実施の形態で説明した文字入力装置1と同じ構成により実施することができる。このため、上述した第1および第2実施の形態と同じ説明は、適宜省略する。
第3実施の形態に係る文字入力装置3は、図2に示したように、表示部30に複数のキーを表示して、入力部20において各キーに対応する入力領域に対する押圧入力を受け付ける際に、ユーザの意図しない入力ミスを低減することができる。すなわち、第3実施の形態に係る文字入力装置3においては、ユーザが最初に押圧入力を行うべき入力領域を誤ってしまったとしても、ユーザの意図通りの文字を選定することができる。また、本実施の形態に係る文字入力装置3においては、ユーザの意図通りの入力領域に押圧入力が受け付けられた後で、ユーザが間違えて他の入力領域に押圧入力をしてしまった場合でも、ユーザの意図通りの文字を選定することができる。
このような処理のため、第3実施の形態においては、第2実施の形態と同様に、移行入力検知部12が移行入力を検知した際、文字選定部14は、当該移行入力に係る押圧入力が一方のサブ領域から他方のサブ領域へ移行した方向を区別して判定する。すなわち、移行入力検知部12は、入力領域において受け付けられている押圧入力が、第1のサブ領域から第2のサブ領域へ移行する入力を順方向の移行入力として検知する。また、移行入力検知部12は、入力領域において受け付けられている押圧入力が、第2のサブ領域から第1のサブ領域へ移行する入力を逆方向の移行入力として検知する。
さらに、第3実施の形態においては、文字選定部14は、一の入力領域に対する最初の押圧入力に基づいて、一の入力領域に割り当てられた所定の文字群に属する文字を選定し、引き続き任意の入力領域において順方向の移行入力または逆方向の移行入力が検知されるごとに、順方向の移行入力または逆方向の移行入力が最も多く検知された入力領域に割り当てられた所定の文字群に属する文字を、順次選定する。なお、この場合、文字選定部14は、当該移行入力が連続した同じ方向の移行入力でない限り、移行入力が最も多く検知された入力領域に割り当てられた所定の文字群に属する文字を、所定の順序で選定する。以下、具体例を用いて説明する。
図7は、第3実施の形態による文字入力処理を説明する図である。図7は、図2(A)に示した複数の入力領域のうち、簡略化のため、「あ行」および「か行」のキーに対応する入力領域のみを示したものである。
例えば、図7(A)に示すように、ユーザが、本来は「か行」のキーに対応する入力領域から押圧入力を開始すべきであったところ、押圧を開始する位置を間違えて、左隣の「あ行」のキーに対応する入力領域から押圧入力を開始してしまったとする。なお、図中に示す矢印の曲線は、ユーザの押圧入力がスライドする軌跡を示している。このような入力に基づいて、ユーザの押圧入力が「あ行」のキーに対応する入力領域(の第1のサブ領域)に受け付けられると、文字入力装置3は、選定された文字として「あ」の文字を表示部30に表示する。この文字を見ることで、ユーザは、本来「か行」のキーに対応する入力領域から押圧入力を開始すべきであったが、間違えて「あ行」のキーに対応する入力領域から押圧入力を開始してしまったことに気が付く。
しかしながら、ここでユーザは、誤った入力に基づいて表示された「あ」の文字を削除して入力のやり直しを行うのではなく、押圧状態のままで、本来押圧すべきであった「か行」の入力領域までスライドする押圧入力を行うようにする。すると、このような押圧入力の過程で、まず、「あ行」の入力領域において第1のサブ領域から第2のサブ領域への順方向の移行入力が検知されることにより、文字入力装置3は、表示していた「あ」の文字の次の文字「い」を選定して表示する。次に、ユーザが継続して指をスライドする押圧入力に基づいて、「あ行」の入力領域における移行入力に引き続き、「か行」の入力領域においても移行入力が検知される。しかしながら、当該移行入力は、図7(A)に示すように、前回の移行入力と同じ方向(順方向)の移行入力である。この場合、文字入力装置3は、表示部30に表示されている「い」の文字を、そのまま変化させない。なお、図7(A)に示すバツ印(×)は、移行入力が検知されたが、文字の選定を行わないことを示す。
その後、ユーザがさらに押圧状態を保ったまま、「か行」の入力領域において、直前の移行入力と異なる方向(例えば順方向に対して逆方向、または逆方向に対して順方向)の移行入力を行ったとする。すると、この場合、「か行」の入力領域において、前回とは異なる方向の移行入力が検知される。したがって、この時点で、文字入力装置3は、表示部30に表示している「い」の文字を、「い」の次の文字「う」に対応する(同じ段の)「か行」の文字である「く」の文字に変化させて表示する。
このような処理は、最初の移行入力が検知されてから、複数の入力領域において、移行入力が最も多く検知された入力領域が変更された際に行う。すなわち、「あ行」の入力領域において移行入力が1回検知された後、「か行」の入力領域における移行入力が1回検知された時点では、どちらの入力領域においても1回の移行入力が検知されている。このため、この時点では、移行入力が最も多く検知された入力領域を1つに特定することはできず、移行入力が最も多く検知された入力領域は変更されていない。
ところが、次に「か行」の入力領域において直前と異なる方向の移行入力が検知された時点では、「か行」の入力領域における移行入力は2回検知されている。このため、この時点で、移行入力が最も多く検知された入力領域は「か行」の入力領域となる。したがって、移行入力が最も多く検知された入力領域を1つに特定することができ、移行入力が最も多く検知された入力領域が変更されたことになる。このようにして、移行入力が最も多く検知された入力領域が変更されると、文字入力装置3は、当該入力領域に対応する文字群を新たに選定する。なお、図7(A)に示す二重丸の印(◎)は、ユーザの移行入力が最も多く検知された入力領域が変更されたことにより、表示される文字が属する文字群の選定も変更されたことを示す。
このように、ユーザの移行入力を最も多く検知した入力領域が変更された際は、文字入力装置3は、それまでに行われた移行入力に基づく文字の選定を反映した上で、変更された後の文字群に属する文字の選定を行う。すなわち、図7(A)に示す二重丸の印(◎)の手前までに、すでに1回目の移行入力が検知されており、文字の選定が(白丸の印(○)を付した時点で)行われて、「あ」の次の文字「い」が選定されている。このため、ユーザの移行入力を最も多く検知した入力領域が変更された際、文字入力装置3は、新たに選定された文字群「か行」において、最初の押圧入力から2回目の移行入力が行われた場合に選定されるべき文字「く」を選定する。
この後、「か行」の入力領域において検知された移行入力に引き続き、前回とは異なる方向の移行入力が再び「か行」の入力領域において検知されたら、文字入力装置3は、表示部30に表示している「く」の文字を「け」の文字に変化させて表示する。なお、この時点では、「あ行」の入力領域における移行入力は1回であるのに対し、「か行」の入力領域における移行入力は3回検知されている。この後も、押圧入力が継続している限り、引き続き文字の選定を行うことができる。したがって、ユーザが、最初に押圧すべき入力領域を間違えてしまった場合でも、間違えて入力した文字を削除して入力をやり直すことなく、ユーザの意図通りの文字を選定することができる。
次に、図7(B)に示すように、例えば、ユーザが「あ行」の入力領域にて押圧入力を開始して意図通りの操作を行った後に、操作を誤って、右隣の「か行」の入力領域において移行入力を行ってしまった場合について説明する。図7(B)は、「あ行」の入力領域において押圧入力が開始されたことにより「あ」の文字を表示させた後、「あ行」の入力領域において移行入力を3回連続して行い、「い」→「う」→「え」の順に文字の選定がユーザの意図通りに行われた例を示している。
しかしながら、その後、ユーザが操作を誤って、右隣の「か行」の入力領域に侵入し、さらに「か行」の入力領域において移行入力が受け付けられている。しかしながら、当該移行入力は、前回の移行入力と同じ方向(順方向)の移行入力であるため、文字入力装置3は、表示部30に表示されている「え」の文字を、そのまま変化させない。なお、図7(B)に示すバツ印(×)は、移行入力が検知されたが、文字の選定を行わないことを示す。
したがって、ユーザが、意図通りの移行入力が行われた後に、間違えて他の入力領域において移行入力をしまった場合でも、ユーザの意図通りの文字を選定することができる。なお、図7(B)に示す状態において、「か行」の入力領域における移行入力に引き続き、当該入力領域において前回と異なる方向の移行入力が検知されたら、文字入力装置3は、表示部30に表示された「え」の文字を「お」の文字に変化させて表示する。この時点で、「あ行」の入力領域における移行入力は3回検知されているのに対し、「か行」の入力領域における移行入力は2回検知されている。したがって、移行入力が最も多く検知された入力領域は変更されないため、文字入力装置3は、選定される文字が属する文字群の変更も行わない。この後も、押圧入力が継続している限り、引き続き文字の選定を行うことができる。
次に、本実施の形態による文字入力を行うための処理の流れについて説明する。
図8は、第3実施の形態による文字入力処理を説明するフローチャートである。図8に示すフローチャートは、図6に示した第2実施の形態による文字入力処理において、ステップS38の後に、ステップS51およびステップS52を追加するものである。したがって、第2実施の形態による文字入力処理と同じ説明は、適宜省略する。図8に示すフローチャートにおいて、第3実施の形態による文字入力処理は、第2実施の形態と同様に、ユーザによる押圧入力が入力部20に検出された時点から開始する。
本実施の形態による文字入力処理が開始すると、入力領域判別部22は、最初の押圧入力が受け付けられた入力領域がテンキー領域であるか否かを判定する(ステップS31)。最初の押圧入力が受け付けられた入力領域がテンキー領域である場合(ステップS32のYes)、文字選定部14は、当該入力領域に割り当てられた文字群を選定し(ステップS33)、当該文字群に属する文字のうち最初の文字を選定する(ステップS34)。制御部10は、このようにして選定された文字を表示部30に表示する(ステップS35)。
この後、押圧入力が押圧状態のまま継続している場合(ステップS36のYes)、押圧入力が受け付けられている入力領域を特定(ステップS37)した後、移行入力検知部12は、移行入力の検知の有無を判定する(ステップS38)。ステップS38にて、移行入力が検知されない場合は、ステップS36に戻って処理を続行する。
一方、ステップS38にて移行入力が検知されたと判定された場合、文字選定部14は、移行入力が最も多く検知された入力領域が変更されたか否かを判定する(ステップS51)。
ステップS51において、移行入力が最も多く検知された入力領域が変更されていない場合、ステップS39に移行し、以後、上述した第2実施の形態と同様の処理を行う。すなわち、当該移行入力が、押圧入力を受け付けてから最初の移行入力であるか否かを判定し(ステップS39)、最初の移行入力である場合、ステップS41に進んで次の文字の選定を行う。したがって、現在最も多くの移行入力が判定されている入力領域に割り当てられた文字群において、所定の順序に従い次の文字を選定して(ステップS41)、当該選定された文字を表示部30に表示する(ステップS35)。
また、ステップS39において、当該移行入力が、押圧入力を受け付けてから最初の移行入力でない場合、移行入力が前回の移行入力と同じ方向か否かを判定し(ステップS40)、同じ方向であればステップS36に戻る。一方、ステップS40において、前回の移行入力と同じ方向の移行入力ではない、すなわち異なる方向の移行入力であると判定された場合、文字の選定を行い(ステップS41)、表示部30に表示する(ステップS35)。
一方、ステップS51において、移行入力が最も多く検知された入力領域が変更された場合、文字選定部14は、当該移行入力が最も多く検知された入力領域に割り当てられた文字群を選定し直す(ステップS52)。すなわち、ここでは、選定された文字群を変更する。なお、ステップS51において移行入力が最も多く検知された入力領域が変更され、ステップS52にて文字群が選定し直される場合というのは、移行入力の検知が2度目以降の場合である。したがって、その後の処理は、ステップS39のNoを経てステップS40に移行する。
これ以降、新たに選定された文字群に属する文字を用いて文字の選定を行うが、ステップS40において、移行入力が前回の移行入力と異なる方向である場合、既に行われた移行入力に基づく文字の選定を反映した上で、所定の順序に従い次の文字を選定する(ステップS41)。すなわち、ステップS52にて文字群が選定し直された際、例えば、当該文字群に変更される前の文字群において既に文字の選定が3回行われていた場合、ステップS41にて、選定し直された文字群において4回目の選定に対応する文字の選定を行う。
このように、本実施の形態によれば、ユーザが最初に押圧すべき入力領域を間違えて押圧してしまった場合でも、引き続き押圧入力を維持して正しい入力領域において移行入力を行うことで、それまでの文字の選定を反映しつつ文字入力を継続できる。また、本実施の形態によれば、ユーザが意図通りの移行入力を行った後に、間違えて他の入力領域において移行入力を行ってしまった場合でも、それまでに意図通りに入力した文字に影響を与えない。したがって、本実施の形態によれば、上述した第1実施の形態と同様の効果を維持しつつ、ユーザが入力ミスをしてしまったとしても、当該入力ミスを修正して文字入力をやり直すという手間と時間を省くことができる。
(第4実施の形態)
次に、本発明の第4実施の形態に係る文字入力装置について説明する。
第4実施の形態に係る文字入力装置は、上述した第1〜第3実施の形態に係る文字入力装置1において、文字選定部14の動作を変更するものである。したがって、第4実施の形態に係る文字入力装置4は、第1〜第3実施の形態で説明した文字入力装置1と同じ構成により実施することができるため、上述した各実施の形態と同じ説明は、適宜省略する。
本発明の第4実施の形態では、上述した第1〜第3の各実施の形態において、入力部20の入力領域において最初の移行入力が検知された際、当該移行入力が順方向の移行入力であるか、または逆方向の移行入力であるかを判定する。本発明の第4実施の形態においては、このような判定の結果に基づいて、逆方向で開始した移行入力に対しては、逆の順序で文字の選定を行う。
なお、上述した第1実施の形態においては、各入力領域における移行入力の方向の差異は検出していない。そのため、第4実施の形態の処理を第1実施の形態に係る文字入力装置1に適用する場合、移行入力検知部12が、入力領域において最初の移行入力を検知した際、当該入力領域における当該移行入力の方向も区別して判定できるようにする。すなわち、本実施の形態において、移行入力検知部12は、入力領域において受け付けられている押圧入力が、第1(左側)のサブ領域から第2(右側)のサブ領域へ移行する入力を順方向の移行入力として検知する。また、移行入力検知部12は、入力領域において受け付けられている押圧入力が、第2(右側)のサブ領域から第1(左側)のサブ領域へ移行する入力を逆方向の移行入力として検知する。
本実施の形態において、文字選定部14は、最初の移行入力が逆方向で開始された場合、入力領域に割り当てられた所定の文字群に属する文字を、所定の順序とは逆の順序で順次選定する。なお、最初の移行入力が順方向で開始された場合は、上述した第1〜第3実施の形態と同様の処理を行う。以下、具体的に説明する。
図9は、第4実施の形態による文字入力処理を説明する図である。本実施の形態を実施するに際しては、文字入力装置4がユーザの押圧入力を受け付けるにあたり、各入力領域において移行入力の「順方向」をユーザに意識させる必要がある。したがって、本実施の形態において、表示部30に表示する各入力領域は、例えば図9(A)に示す「か行」のキーに対応する入力領域のように、入力領域における移行入力の「順方向」を示唆する矢印などと共に表示するのが好適である。図9(A)においては、この「か行」の入力領域において、第1のサブ領域(左側)から第2のサブ領域(右側)の順に移行する入力が「順方向」であることを、「か」の文字のそばに矢印で示してある。
本実施の形態において、ユーザの移行入力が検知された際、例えば図9(B)に示すように、当該移行入力が順方向で開始された場合、文字選定部14は、上述の第1〜第3実施の形態で説明した順序で文字の選定を行う。図9(B)は、入力領域において最初に順方向の移行入力が検知されることにより、文字の選定が所定の順序で行われる様子を示す図である。まず、「か行」の入力領域(の第1のサブ領域)においてユーザの押圧入力が検知された時点で、文字入力装置4は、「か」の文字を表示する。次に、順方向(第1のサブ領域から第2のサブ領域へ)の移行入力が検知された時点で、文字入力装置4は、「か」の文字を「き」の文字へと所定の順序で文字を選定する。さらに、引き続き逆方向の移行入力が検知されたら、文字入力装置4は、「き」の文字を「く」の文字へと所定の順序で文字を選定する。このように、平仮名の文字の各行において、段の順序に従って例えば「か→き→く→け→こ」の順に文字を選定する際の順序を、「第1の順序」とする。
一方、ユーザの移行入力が検知された際、例えば図9(C)に示すように、当該移行入力が逆方向で開始された場合、文字選定部14は、上述の第1〜第3実施の形態で説明した順序とは逆の順序で文字の選定を行う。つまり、文字選定部14は、最初の押圧入力に基づく一の入力領域における最初の移行入力が、逆方向の移行入力であると検知された場合、所定の文字群に属する文字を、所定の順序とは逆の順序で選定する。図9(C)は、入力領域において最初に逆方向の移行入力が検知されることにより、文字の選定が所定の順序と逆の順序で行われる様子を説明する図である。まず、「か行」の入力領域(の第2のサブ領域)においてユーザの押圧入力が検知された時点で、文字入力装置4は、「か」の文字を表示する。次に、逆方向(第2のサブ領域から第1のサブ領域へ)の移行入力が検知された時点で、文字入力装置4は、「か」の文字を「こ」の文字へと所定の順序と逆の順序で文字を選定する。引き続き、さらに直前の移行入力と異なる方向の移行入力が検知されたら、文字入力装置1は、「こ」の文字を「け」の文字へと所定の順序と逆の順序で文字を選定する。
このように、平仮名の文字の各行において、段の順序と逆の順序に従って例えば「こ→け→く→き→か」の順に文字を選定する際の順序を、第1の順序とは逆の「第2の順序」とする。以下、本実施の形態では、「第2の順序」の文字の選定を、単に「逆の順序」の文字の選定と記す。なお、この「逆の順序」の文字の選定において、各行の「あ」「か」「さ」など最初の文字について、逆の順序に従って次の文字を選定する場合、上述した例のように、各行の最後の「お」「こ」「そ」などの文字を選定する(図3参照)。
次に、本実施の形態による文字入力を行うための処理の流れについて説明する。
図10は、第4実施の形態による文字入力処理を説明するフローチャートである。上述したように、第4実施の形態は、第1〜第3実施の形態の処理を一部変更するものである。具体的には、第4実施の形態を第1実施の形態に適用する場合、図5のフローチャートにおけるステップS15を、図10に示す処理に変更する。また、第4実施の形態を、第2または第3実施の形態に適用する場合、図6または図8のフローチャートにおけるステップS41を、図10に示す処理に変更する。
図10は、本実施の形態において、入力部20の入力領域において移行入力が検知された際に、当該入力領域に割り当てられた文字群に属する文字を選定する処理を説明するフローチャートである。
この処理が開始すると、まず、文字選定部14は、押圧入力が検知された入力領域において最初に検知された移行入力の方向が順方向であるか否かを確認する(ステップS71)。ステップS71にて、最初の移行入力の方向が順方向である場合、既に選定されている文字群に属する文字のうち、所定の順序に従い次の文字を選定して(ステップS72)、本処理を終了する。これは、上述した第1〜第3実施の形態で説明した通常の処理と変わらない。すなわち、押圧入力が受け付けられた入力領域において最初に検知された移行入力が順方向である場合には、当該押圧入力が維持される限り、以後の文字の選定は所定の(第1の)順序で行われる。
一方、ステップS71にて、最初の移行入力の方向が逆方向である場合、既に選定している文字群に属する文字のうち、順序が前の文字を選定して(ステップS73)、本処理を終了する。この処理により、図9(C)に示したように、ユーザの押圧入力が逆方向の移行入力から開始されたものである場合、前回の移行入力とは異なる方向の移行入力により、文字群に属する文字を逆の順序で選定する。
このように、本実施の形態によれば、逆方向の移行入力により、通常の(第1の)順序と逆の(第2の)順序で文字を選定する。したがって、本実施の形態によれば、ユーザは、文字の選定の順序を使い分けることにより、通常の文字入力よりも少ない手間と時間で文字入力を行うことができる。
なお、本発明は、上述した各実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変更または変形が可能である。上述した第1乃至第3実施の形態において、「所定の順序」とは、第4実施の形態における「第1の順序」、すなわち、例えば「あ」→「い」のような順序を想定して説明した。さらに、第1乃至第3実施の形態において、「所定の順序とは逆の順序」とは、第4実施の形態における「第2の順序」、すなわち、例えば「い」→「あ」のような、第1の順序とは逆の順序を想定して説明した。しかしながら、本発明は、これら各実施の形態で説明した文字の選定の順序に限定されるものではない。例えば、第1乃至第3実施の形態における「所定の順序」を、第4実施の形態における「第2の順序」とし、「所定の順序とは逆の順序」を、第4実施の形態における「第1の順序」とすることも想定できることはもちろんである。
また、上述した各実施の形態では、サブ領域の区分けを表示部30に表示して示すことによりユーザの移行入力を受け付けたが、当該サブ領域の区分けは、必ずしも表示部30に表示しなくてもよい。すなわち、上述した各実施の形態においては、入力部20および入力領域判別部22と表示部30とでタッチパネルを構成するものとして説明したが、入力部20と表示部30とを別個の部材にして、タッチパネルを用いない構成にすることもできる。
本発明は、入力部20のキーに対応する入力領域において、押圧入力がサブ領域の一方から他方に移行する入力を検知するため、入力部20は、例えば機械式のスイッチを採用して構成することもできる。以下に、変形例の具体例として想定できるものを、いくつか挙げて説明する。
図11は、本発明の各実施の形態における入力部20の変形例を示す図である。
入力部20の「あ行」のキーに対応する入力領域のサブ領域は、例えば図11(A)に示すように、2つのスイッチを用いて区分けすることもできる。図11(A)は、例えば図4に示した「あ行」のキーを、サブ領域を表す2枚の板状部材により区分けし、これら板状部材のそれぞれにスイッチの接点を対応させた構成を概略的に示している。このようなキーを複数配列した入力部20によっても、ユーザが押圧入力を入力部20上でスライドする入力を受け付けることができる。なお、図11(A)においては、図の明瞭化のために、2枚の板状部材同士の間隔を多少誇張して示してある。
入力部20を図11(A)に示すような構成にする場合、移行入力検知部12が、入力部20に対する押圧入力を移行入力として検知する態様は、上述した各実施の形態に準じて想定することができる。例えば、一方のサブ領域のスイッチに対する入力がオンからオフになるのとほぼ同時に、他方のサブ領域のスイッチに対する入力がオンになった状態を、移行入力として検知することができる。また、一方のサブ領域のスイッチに対する入力がオンのまま他方のサブ領域のスイッチに対する入力もオンになり、その後前記一方のサブ領域のスイッチに対する入力のみがオフになった状態を、移行入力として検知することもできる。このような、移行入力の各態様の設定は、文字入力装置の用途やユーザの好みに合わせて、適宜設定変更できるようにするのが好適である。
なお、このような構成のキーを入力部20に採用する場合、サブ領域を表す板状部材は2枚に区分けすることは必須ではなく、例えば図11(B)に示すように、2つのサブ領域を1枚の板状部材で構成することもできる。図11(B)に示すような構成によっても、押圧入力を受け付ける位置によって、2つのスイッチのうち1つのみがオンになったり、または2つのスイッチが両方オンになったりする入力を受け付けることができる。すなわち、キーの右端付近または左端付近の片方に対する押圧入力を受け付ける時は、それぞれ右側または左側の片方のスイッチのみがオンになり、キーの中央付近に対する押圧入力を受け付ける時は、右側および左側のスイッチが両方ともオンになる。このようなキーを構成する板状部材の表面において、ユーザが指をスライドさせる入力を受け付けることにより、2つのスイッチのオン/オフを連続的に変化させることが可能である。したがって、このような構成でも、上述したような、一方のサブ領域のスイッチに対する入力がオンのまま他方のサブ領域のスイッチに対する入力もオンになり、その後前記一方のサブ領域のスイッチに対する入力のみがオフになる入力を受け付けることができる。
このように、2つのサブ領域を1枚の板状部材で構成する場合、図11(B)に示すように、サブ領域の区分けを表す線を予め塗料などでペイントして描いておくのが好適である。このようにすれば、ユーザは、各キーに対応する入力領域において区分けされた2つのサブ領域を容易に視認して入力を行うことができる。
また、このようなサブ領域の区分けをユーザに認識させる手段は、区分けを表す線を塗料などでペイントする以外の態様も想定できる。例えば、図11(C)に示すように、キーに対応する入力領域に線状の凸部を設けるなどして、サブ領域の区分けの境界を、ユーザが指先の感触により認識できるようにすることもできる。上述した第2実施の形態に係る文字入力装置2によれば、ユーザは、最初の入力さえミスせずに正確な位置を押圧すれば、その後は任意の入力領域において、すなわち入力部20を注視せずに押圧入力を行うことができる。このような場合、指先の感触でサブ領域の区分けの境界が認識できれば、ユーザは、文字グループ(すなわち「行」)を決定する最初の入力の時だけ入力部を注視すれば、それ以後の押圧入力においては入力部20を視認する必要はなくなる。
なお、従来の文字入力端末を用いて文字入力を行うことに慣れているユーザが、本発明による文字入力装置を用いて文字入力を行うと、操作に慣れないうちは、最初の押圧の際に、キーの中央部分を押圧してしまう恐れがある。このようなことに備えて、「移行入力」の判定を、上述したように一方のサブ領域から他方のサブ領域へ移行した場合のみならず、最初に両方のサブ領域に対する入力が検知された後に一方のサブ領域へ移行した場合も、「移行入力」と判定することもできる。すなわち、最初に両方のサブ領域(つまり入力領域の中央部分)に対する押圧入力が検知された後に、第1(左側)のサブ領域へと移行する入力を、「第2のサブ領域から第1のサブ領域への移行入力」とみなすようにする。同様に、最初に両方のサブ領域(つまり入力領域の中央部分)に対する押圧入力が検知された後に、第2(右側)のサブ領域へと移行する入力を、「第1のサブ領域から第2のサブ領域への移行入力」とみなすようにする。これらのような入力も移行入力として扱うことにより、より一層ユーザの意図通りに文字入力装置の動作を実行させることができる。
また、ユーザが最初の押圧の際にキーの中央部分から押圧を開始してしまうことを抑止するために、入力部20におけるキーの配置の構成に工夫を施すこともできる。例えば、図11(D)に示すような、入力部20におけるキーの配置の構成を想定することができる。図11(D)においては、各キーに対応する入力領域においてサブ領域の区分けの境界線上で、キーを構成する2枚の板状部材の端辺を隣接させている点については図11(A)に示した例と共通している。しかしながら、図11(D)においては、隣接するキー同士にそれぞれ対応する入力領域同士の境界線上においては、隣接するキーを構成する板状部材を一体化させた構成にしている。この構成は、図11(B)で説明した入力部の構成において、各キーのキートップが表す表示の位置は各入力領域に対応させたまま、各キーを構成する板状部材のみを、キーの半分の幅だけ横方向にずらして配置したものである。このようなデザインの入力部を採用すれば、ユーザが最初の押圧入力を行おうとする際に、各キーに対応する入力領域の中央部分(すなわちキーを構成する板状部材の切れ目)から押圧入力を開始することを抑止する効果が期待できる。
また、上述した各実施の形態においては、説明の便宜上、制御部10が移行入力検知部12および文字選定部14を含むものとして記したが、本発明を具現する機器の構成および仕様に応じて、これら各機能部を別個のものとして構成することもできる。また、本発明を具現する機器の構成および仕様に応じて、移行入力検知部12および文字選定部14の機能を、制御部10が兼ねる構成にすることもできる。なお、これらの各機能部は、ハードウェアにより構成することも、またはソフトウェアによる処理で代替することもできる。
上述した各実施の形態においては、表示部30に選定された文字が表示された状態で、入力部20が押圧入力を受け付けなくなった場合に、当該表示された文字を入力文字として確定した。しかしながら、入力部20が押圧入力を受け付けているままの状態であっても、所定の時間が経過したら、当該表示された文字を入力文字として確定するようにもできる。