JP5209875B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、エネルギー密度の高い電極群を含むリチウム二次電池に関し、詳しくは短絡に対する耐性に優れたリチウム二次電池に関する。
リチウム二次電池は、高容量電源として注目されており、特にポータブル機器用電源として期待されている。一般的なリチウム二次電池は、電極群、非水電解質およびこれらを収容する電槽缶を具備する。電極群は、正極、負極およびこれらの間に介在する樹脂多孔膜(多孔質樹脂フィルム)を含む。樹脂多孔膜は、正極と負極とを電子的に絶縁するとともに非水電解質を保持する役割を有する。正極は、例えばコバルト酸リチウムを活物質として含み、負極は、黒鉛を活物質として含む。
現在、リチウム二次電池の更なる高容量化を目指した研究が進められている。しかし、正極活物質に用いられるコバルト酸リチウムの理論容量は、約150mAh/gであり、負極活物質である黒鉛の理論容量は、約370mAh/gである。これらの理論容量は、それほど高いとは言えない。よって、電極群のエネルギー密度が700Wh/L以上であるリチウム二次電池を安定供給することは困難である。そこで、理論容量の高い活物質を利用する検討が進められている。
例えば、負極活物質としてSiを用いた、電極群のエネルギー密度が700Wh/Lを上回るリチウム二次電池が提案されている(特許文献1)。また、リチウム二次電池の充電終止電圧を高く設定することにより、正極活物質の利用率を高め、高容量を達成することも提案されている(特許文献2)。また、Ni元素を含むリチウム含有複合酸化物を正極活物質として用いることにより、リチウム二次電池のエネルギー密度を高めることができる。
特開平7−29602号公報 特開2005−85635号公報
上記のように、近年は電極群のエネルギー密度が700Wh/L以上であるリチウム二次電池の安定供給が望まれている。しかし、電極群のエネルギー密度が高くなると、内部短絡時に放出される熱エネルギーが大きくなる。特に、釘刺し試験に伴う内部短絡時の安全性は、顕著に低下する。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、エネルギー密度の高いリチウム二次電池の内部短絡時の安全性や保存特性を高めることを目的とする。
すなわち、本発明は、電極群、非水電解質およびこれらを収容する電槽缶を具備するリチウム二次電池であって、電極群は、正極、負極、正極と負極との間に介在する隔離層を含み、電極群のエネルギー密度が、700Wh/L以上となるように充電終止電圧および放電終止電圧が設定されており、隔離層は、多孔質耐熱層を含んでおり、正極と負極との間で内部短絡が生じたときの短絡面積Aと、発熱による多孔質耐熱層の減少面積Bとが、1≦(A+B)/A≦10を満たす、リチウム二次電池およびこれを含む充放電システムに関する。
ここで、短絡面積Aとは、短絡発生直後(すなわち隔離層の溶融もしくは焼失が起こる前)の隔離層の当該短絡による欠損面積である。一方、減少面積Bとは、当該短絡による発熱により溶融もしくは焼失した多孔質耐熱層の面積である。例えば、釘刺し試験の場合、釘の長さ方向に対して垂直な断面積Sが短絡面積Aに相当する。また、釘刺し後、30秒以上経過したときの多孔質耐熱層の欠損面積が、A+Bに相当する。
釘刺し試験とは、完成した電池に釘を刺し、これにより正極、負極および隔離層を同時に貫き、強制的に短絡部を形成する試験である。
多孔質耐熱層は、負極、正極または樹脂多孔膜の表面上に設けられている。
隔離層は、多孔質耐熱層を1層だけ含んでもよく、複数層含んでもよい。
隔離層は、多孔質耐熱層だけを含む場合と、多孔質耐熱層および樹脂多孔膜を含む場合がある。
隔離層が、多孔質耐熱層および樹脂多孔膜を含む場合、多孔質耐熱層は、負極の活物質層以上の面積(寸法)を有することが望ましい。なお、負極は、シート状の集電体と、集電体に担持された負極活物質層とを具備する。ここで、負極の活物質層の面積とは、負極の両面に担持された活物質層の面積の合計ではなく、負極の片面に担持された活物質層の面積をいう。
負極のシート状の集電体は、所定の幅と所定の長さを有する帯状である。同様に、負極活物質層も、所定の幅と所定の長さを有する帯状である。正極も、シート状の集電体と、集電体に担持された正極活物質層とを具備する。正極のシート状の集電体は、所定の幅と所定の長さを有する帯状である。同様に、正極活物質層も、所定の幅と所定の長さを有する帯状である。電極群は、正極と負極とを、隔離層を介して捲回することで構成される。
隔離層が、多孔質耐熱層および樹脂多孔膜を含む場合、多孔質耐熱層は、正極の表面上または樹脂多孔膜の表面上に設けられていることが望ましい。
多孔質耐熱層が、樹脂多孔膜の表面上に設けられている場合、多孔質耐熱層は、樹脂多孔膜の正極側に配置されていることが望ましい。
多孔質耐熱層は、例えば、絶縁性フィラーおよび結着剤を含む場合と、耐熱性樹脂を含む場合がある。
負極は、例えばリチウムと合金化可能な元素を含む物質およびリチウム金属よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。
正極は、例えばNi元素を含むリチウム含有複合酸化物を含む。
本発明は、リチウム二次電池の充電終止電圧を、4.2Vよりも高く設定する場合に、特に有効である。
隔離層の厚みは、24μm以下が好適であり、例えば10〜24μmもしくは12.5〜24μmが好適である。
多孔質耐熱層の厚みは、1〜20μmが好適であり、例えば1〜10μmが好適である。
樹脂多孔膜の厚みは、8〜18μmが好適である。
本発明は、特に、電極群、非水電解質およびこれらを収容する電槽缶を具備するリチウム二次電池であって、電極群は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在する隔離層を含み、正極と負極とが、隔絶層を介して捲回されることにより構成されており、負極は、リチウムと合金化可能な元素を含む物質およびリチウム金属よりなる群から選択される少なくとも1種を含み、電極群のエネルギー密度が、700Wh/L以上となるように充電終止電圧および放電終止電圧が設定されており、隔離層は、樹脂多孔膜および多孔質耐熱層を含み、多孔質耐熱層は、樹脂多孔膜の表面上に設けられており、隔離層の厚みが、24μm以下であり、正極と負極との間で内部短絡が生じたときの短絡面積Aと、発熱による多孔質耐熱層の減少面積Bとが、1≦(A+B)/A≦10を満たし、樹脂多孔膜の厚みCと、多孔質耐熱層の厚みDとの比率:C/Dが、2.4≦C/D≦8を満たすリチウム二次電池(電池X)に関する。
電池Xにおいては、多孔質耐熱層は、耐熱性樹脂を含むことが好ましい。多孔質耐熱層は、樹脂多孔膜の正極側に配置されていることが好ましい。多孔質耐熱層は、負極の活物質層以上の面積を有することが好ましい。
本発明は、特に、電極群、非水電解質およびこれらを収容する電槽缶を具備するリチウム二次電池であって、電極群は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在する隔離層を含み、正極と負極とが、隔絶層を介して捲回されることにより構成されており、負極は、リチウムと合金化可能な元素を含む物質およびリチウム金属よりなる群から選択される少なくとも1種を含み、電極群のエネルギー密度が、700Wh/L以上となるように充電終止電圧および放電終止電圧が設定されており、隔離層は、樹脂多孔膜および多孔質耐熱層を含み、多孔質耐熱層は、絶縁性フィラーおよび結着剤を含み、隔離層の厚みが、24μm以下であり、正極と負極との間で内部短絡が生じたときの短絡面積Aと、発熱による多孔質耐熱層の減少面積Bとが、1≦(A+B)/A≦10を満たし、樹脂多孔膜の厚みCと、多孔質耐熱層の厚みDとの比率:C/Dが、2.4≦C/D≦8を満たすリチウム二次電池(電池Y)に関する。
電池Yにおいては、多孔質耐熱層は、正極の表面上に設けられていることが好ましい。
電池XおよびYにおいては、リチウムと合金化可能な元素を含む物質は、Si単体および/またはSiO x (0<x<2)である。正極は、Ni元素を含むリチウム含有複合酸化物を含むことが好ましい。電池の充電終止電圧は、4.2Vよりも高く設定されていることが好ましい。
正極と負極との間で短絡が生じた場合、従来の隔離層は樹脂多孔膜だけを含むため、発熱によって溶融する。これにより、短絡部の面積は、短絡面積Aと隔離層の減少面積との合計に拡大し、さらに発熱量が増大する。短絡発生時の発熱量は、電極群のエネルギー密度が700Wh/Lを超えると、顕著に増大する。特に、高温環境に保存中に内部短絡が発生し、短絡部が拡大すると、発熱は大きく加速される。一方、本発明の隔離層は、多孔質耐熱層を有し、短絡時の発熱による多孔質耐熱層の減少面積Bが小さく制限されている。よって、短絡の継続時間を短くでき、発熱量の増大や発熱の加速を抑制できる。よって、本発明によれば、高エネルギー密度でありながら、内部短絡時の安全性や保存特性に優れたリチウム二次電池を得ることができる。
本発明のリチウム二次電池は、電極群、非水電解質およびこれらを収容する電槽缶を具備し、電極群は、正極、負極、正極と負極との間に介在する隔離層を含み、電極群のエネルギー密度は、700Wh/L以上である。隔離層は、多孔質耐熱層を含んでおり、正極と負極との間で内部短絡が生じたときの短絡面積Aと、その内部短絡による多孔質耐熱層の減少面積Bとは、1≦(A+B)/A≦10を満たす。
内部短絡は、例えば、正極と負極との間に導電性を有する異物が混入すると発生しやすい。内部短絡時の安全性は、通常、釘刺し試験により評価される。釘刺し試験において、釘が正極、負極および隔離層を同時に貫くと、短絡部が形成される。
従来の一般的なリチウム二次電池では、隔離層として、樹脂多孔膜だけが用いられている。樹脂多孔膜は、ポリオレフィンのみからなり、もしくはポリオレフィンを主成分(例えば95重量%以上がポリオレフィン)とする。よって、樹脂多孔膜は、耐熱性が低く、発熱により溶融しやすい。その結果、短絡部は、短絡面積Aに比べて飛躍的に拡大し、発熱量は一挙に増大する。一方、本発明に係る隔離層は、多孔質耐熱層を含んでおり、多孔質耐熱層は発熱による溶融や焼失が起こりにくい。よって、短絡部の拡大に起因する発熱量の増大や発熱の促進を回避でき、内部短絡に対する耐性は大きく向上する。
図1は、正極と負極との間で内部短絡が生じたときの短絡部付近の断面模式図である。正極1と負極2とは、隔離層3を介して交互に配置されている。隔離層3は、多孔質耐熱層(図示せず)を含む。仮に導電性の異物4が隔離層3を貫通した場合、正極1と負極2との間には、短絡部が形成される。本発明のリチウム二次電池は、電極群が700Wh/L以上の高エネルギー密度を有する。よって、正極1と負極2の化学的ポテンシャルが高い状態(すなわち電池の充電状態)で短絡部が形成された場合、多量の発熱が生じ、短絡部付近の多孔質耐熱層は、溶融、焼失もしくは変形する。その結果、隔離層3の欠損面積(すなわち短絡部の面積)は、短絡面積Aと多孔質耐熱層の減少面積Bとの合計に拡大する。隔離層3が樹脂多孔膜を含む場合、樹脂多孔膜の面積は多孔質耐熱層以上に減少する。よって、隔離層3の欠損面積(すなわち短絡部の面積)は、事実上、多孔質耐熱層の欠損面積と見なすことができる。
電極群のエネルギー密度が700Wh/L以上である場合、10<(A+B)/Aになるまで多孔質耐熱層の欠損面積が拡大すると、発熱量は加速度的に大きくなる。特に高温環境下に置かれた電池の場合、高温下では内部抵抗が低下するため、短絡に伴う電流が増加し、発熱量の増大は顕著となる。よって、電池の内部短絡時の安全性は急激に低下する。一方、(A+B)/A≦10であれば、正極と負極の化学的ポテンシャルが高い場合でも、発熱を最小限に抑制することが可能である。発熱を効果的に抑制する観点からは、例えば(A+B)/A≦9、もしくは、(A+B)/A≦7が好適である。
多孔質耐熱層は、耐熱性材料を含む。耐熱性材料には、例えば、無機酸化物、セラミックスおよび耐熱性樹脂が含まれる。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。ここで、耐熱性樹脂は、260℃以上の熱変形温度を有することが望ましい。ここで、熱変形温度とは、アメリカ材料試験協会の試験法ASTM−D648に準拠して、1.82MPaの荷重で求められる荷重たわみ温度である。また、耐熱性樹脂は、130℃以上のガラス転移温度(Tg)を有することが望ましい。
隔離層は、上記のような多孔質耐熱層を1層だけ含んでもよく、複数層含んでもよい。
多孔質耐熱層は、例えば、負極、正極または樹脂多孔膜の表面上に設けられている。ただし、多孔質耐熱層は、負極と正極の表面に設けてもよく、正極と樹脂多孔膜の表面に設けてもよく、樹脂多孔膜と負極の表面に設けてもよく、負極と正極と樹脂多孔膜の表面に設けてもよい。また、多孔質耐熱層は、負極からも、正極からも、樹脂多孔膜からも独立したシートとして、正極と負極との間に介在させることもできる。ただし、多孔質耐熱層は、正極の少なくとも一方の面、負極の少なくとも一方の面、または、樹脂多孔膜の少なくとも一方の面に、接着されていることが望ましい。
隔離層は、多孔質耐熱層だけを含むよりも、多孔質耐熱層および樹脂多孔膜を含むことが望ましい。樹脂多孔膜は、ポリオレフィンを含むため、柔軟性を有する。よって、多孔質耐熱層と樹脂多孔膜を含む隔離層は、多孔質耐熱層だけを含む隔離層に比べて、耐久性が高くなる。また、樹脂多孔膜は、非水電解質を保持する能力においても優れている。
正極と負極との接触を防止する観点からは、通常、負極の方が正極よりも面積が広いため、多孔質耐熱層を負極の表面上に設けることが多い。しかし、電池の電圧低下不良を未然に防止する観点からは、多孔質耐熱層を正極の表面上に設けるか、または樹脂多孔膜の表面に設けて正極と対面させることが望ましい。
多孔質耐熱層を負極の表面上に設ける場合に限らず、多孔質耐熱層の面積は、負極活物質層の面積よりも大きくすることが望ましい。すなわち、多孔質耐熱層を正極または樹脂多孔膜の表面上に設ける場合にも、電池の信頼性を高める観点からは、多孔質耐熱層の面積を負極活物質層の面積よりも大きくすることが望ましい。多孔質耐熱層の面積を負極活物質層の面積よりも大きくすることにより、充放電の繰返しや保存により電極群に歪みが生じても、正極と負極との接触が防止され、電池電圧の低下を抑制できる。
隔離層が、多孔質耐熱層および樹脂多孔膜を含む場合、多孔質耐熱層は、正極の表面上に設けるか、樹脂多孔膜の表面上に設けることが望ましい。
電極群において、Fe、Ni、Cu等の導電性異物が正極の表面上に付着すると、その後の充放電で異物が溶解するため、負極の表面上で再析出しやすい。この場合、負極上の析出物が生長し、最終的に正極に達する可能性がある。このような短絡が起こると、電池の電圧低下不良が起こる。一方、正極の表面上に多孔質耐熱層を設けると、電極群に導電性の異物が混入しても、正極表面の高電位箇所が多孔質耐熱層により保護される。よって、異物は溶解しにくくなり、負極の表面上で析出しにくくなる。よって、電池の電圧低下不良を未然に防止できる。
負極がリチウムと合金化可能な元素(例えばケイ素)を含む場合、充放電に伴う負極の体積変化は大きくなる。よって、負極の表面上に多孔質耐熱層を設けると、多孔質耐熱層が破損しやすい。負極がリチウムと合金化可能な元素を含む場合でも、多孔質耐熱層を正極の表面上に設けることにより、多孔質耐熱層の破損を防止できる。
多孔質耐熱層を樹脂多孔膜の表面上に設ける場合、多孔質耐熱層と樹脂多孔膜とが一体化されるため、隔離層の強度が強くなり、電極群の構成が容易になり、電池の生産性が向上する。
多孔質耐熱層を樹脂多孔膜の表面上に設ける場合も、多孔質耐熱層を樹脂多孔膜の正極側に配置することが望ましい。樹脂多孔膜に含まれるポリオレフィン(例えばポリエチレンやポリプロピレン)は、高電圧かつ高温環境下では、酸化される可能性がある。樹脂多孔膜の表面でポリオレフィンが酸化されると、樹脂多孔膜が変質し、もしくは目詰まりを起こし、電池特性が低下する可能性がある。一方、多孔質耐熱層を樹脂多孔膜の正極側に配置することにより、樹脂多孔膜が正極から保護され、正極電位によって樹脂多孔膜が劣化するのを防ぐことができる。
電極群のエネルギー密度の増加に伴い、電極群内の空隙は少なくなる傾向がある。さらに、充放電に伴う電極の膨張および収縮により、樹脂多孔膜が圧縮されるため、電解液が電極群内から押し出される傾向も大きくなる。よって、電極内のイオン伝導性は低下しやすくなる。イオン伝導性の低下は、一般的に負極よりも空隙の少ない正極において顕著である。一方、圧縮されにくい多孔質耐熱層を正極側に配置すると、正極近傍に、電解液を豊富に確保することが可能となり、良好な特性を維持することが可能となる。
エネルギー密度を高めるために、正極と負極に高容量の材料を用いる場合、負極活物質には、合金材料(例えばケイ素合金やスズ合金)やケイ素酸化物(例えばSiO)が適している。しかし、高容量の材料は、充放電に伴う膨張および収縮が大きい。よって、多孔質耐熱層を負極側に配置すると、多孔質耐熱層が損傷する可能性がある。以上のような観点から、多孔質耐熱層を正極側に配置することが望ましい。
多孔質耐熱層は、例えば、絶縁性フィラーおよび結着剤を含む場合と、耐熱性樹脂からなる場合があるが、特に限定されない。絶縁性フィラーおよび結着剤を含む多孔質耐熱層は、機械強度が比較的高いので、耐久性が高い。ここで、絶縁性フィラーおよび結着剤を含む多孔質耐熱層は、絶縁性フィラーを主成分とする。例えば多孔質耐熱層の80重量%以上が絶縁性フィラーである。また、耐熱性樹脂からなる多孔質耐熱層は、例えば20重量%を超える耐熱性樹脂を含む。
耐熱性樹脂からなる多孔質耐熱層は、絶縁性フィラーを主成分として含む多孔質耐熱層に比べ、柔軟性が高い。これは絶縁性フィラーよりも耐熱性樹脂の方が柔軟なためである。よって、耐熱性樹脂からなる多孔質耐熱層は、充放電に伴う極板の膨張および収縮に追従しやすく、高い耐熱性を保持できる。よって、釘刺し安全性も高くなる。
耐熱性樹脂からなる多孔質耐熱層は、例えば80重量%未満の絶縁性フィラーを含むことができる。絶縁性フィラーを含ませることにより、柔軟性と耐久性とのバランスに優れた多孔質耐熱層が得られる。耐熱性樹脂は多孔質耐熱層の柔軟性に寄与し、機械的強度の高い絶縁性フィラーは耐久性に寄与する。多孔質耐熱層に絶縁性フィラーを含ませることにより、電池の高出力特性が向上する。詳細は不明であるが、これは、柔軟性と耐久性との相乗効果により、多孔質耐熱層の空隙構造が適正化されるためと考えられる。良好な高出力特性を確保する観点から、耐熱性樹脂からなる多孔質耐熱層は、25重量%〜75重量%の絶縁性フィラーを含むことが望ましい。
多孔質耐熱層は、正極、負極および樹脂多孔膜の少なくとも1つの表面上に、多孔質耐熱層の原料をキャストして設けることができる。また、多孔質耐熱層が独立したシート状である場合には、正極と負極との間、正極と樹脂多孔膜との間、または、負極と樹脂多孔膜との間に、多孔質耐熱層からなるシートを配置する。
具体的には、例えば以下のような方法により多孔質耐熱層が形成される。
(i)絶縁性フィラーおよび結着剤を、液状成分と混合してペーストもしくはスラリーを調製し、これを正極、負極および樹脂多孔膜の少なくとも1つの表面上に塗布し、その後、液状成分を乾燥により除去する。結着剤は、絶縁性フィラー100重量部あたり、0.5〜10重量部が好適であるが、特に限定されない。
絶縁性フィラー、結着剤および液状成分の混合は、例えば双椀式練合機を用いて行う。得られたペーストもしくはスラリーは、例えばドクターブレードやダイコートを用いて、電極や樹脂多孔膜の表面上に塗布する。
(ii)耐熱性樹脂を溶媒に溶解させた樹脂溶液を、正極、負極および樹脂多孔膜の少なくとも1つの表面上に塗布し、その後、溶媒を乾燥により除去する。耐熱性樹脂を溶解させる溶媒は、特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記)などの極性溶媒が好ましい。樹脂溶液には、耐熱性樹脂100重量部あたり、500重量部以下(好ましくは33重量部〜300重量部)の絶縁性フィラーを分散させてもよい。
(iii)上記(i)と同様に、絶縁性フィラーおよび結着剤を、液状成分と混合してペーストもしくはスラリーを調製し、これを平坦な基材上に塗着し、その後、液状成分を乾燥により除去する。次に、絶縁性フィラーおよび結着剤を含む多孔質耐熱層からなるシートを、基材から剥がし、電極間または電極と樹脂多孔膜との間に配置する。基材には、例えばガラス板やステンレス鋼(SUS)製の板を用いる。
(iv)上記(ii)と同様に、耐熱性樹脂を溶媒に溶解させた樹脂溶液を、平坦な基材上に塗着し、その後、溶媒を乾燥により除去する。次に、耐熱性樹脂を含む多孔質耐熱層からなるシートを、基材から剥がし、電極間または電極と樹脂多孔膜との間に配置する。
上記(i)〜(iv)から選択される複数の多孔質耐熱層を併用してもよい。例えば、(i)または(iii)の多孔質耐熱層と(ii)または(iv)の多孔質耐熱層とを一体化してもよい。
多孔質耐熱層に含ませる絶縁性フィラーは、特に限定されないが、例えば、無機酸化物、セラミックスなどを用いることができる。また、繊維状の耐熱性樹脂を用いることもできる。これらのうちでは、特に無機酸化物が好ましい。無機酸化物としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、イットリアなどが、電池内環境における化学的安定性の観点から好ましい。絶縁性フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。絶縁性フィラーのメディアン径は、0.05〜10μmが好適である。
多孔質耐熱層に含ませる結着剤は、特に限定されないが、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと略記)、日本ゼオン株式会社製のBM−500B(商品名)に代表されるアクリル系ゴム粒子、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略記)などを用いることができる。PTFEやBM−500Bを用いる場合、ペーストもしくはスラリーの増粘剤として、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCと略記)、ポリエチレンオキシド(以下、PEOと略記)、日本ゼオン株式会社製のBM−720H(商品名)に代表される変性アクリロニトリルゴムなどと組み合わせて用いることが好ましい。結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多孔質耐熱層を構成する耐熱性樹脂は、特に限定されないが、アラミド(芳香族ポリアミド)、ポリアミドイミド、セルロースなどを用いることができる。耐熱性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、耐熱性樹脂と、他の樹脂とを組み合わせて用いてもよい。
本発明のリチウム二次電池は、電極群が700Wh/L以上のエネルギー密度を有する。よって、正極および負極の活物質には、それぞれ理論容量の高い材料を用いることが望ましい。また、電極に含ませる任意成分(結着剤、導電剤など)の量は、できるだけ少量であることが望ましい。
負極は、通常、活物質およびこれを担持するシート状の集電体(芯材)を含む。負極集電体には、銅箔を用いることが好ましく、その厚みは、例えば5〜50μmである。負極活物質には、従来からリチウム二次電池の負極活物質として用いられている種々の物質を用いることができる。具体的には、例えば炭素材料(例えば黒鉛)、リチウムと合金化可能な元素を含む物質、リチウム金属などを用いることができる。ただし、容量を高くする観点からは、リチウムと合金化可能な元素を含む物質および/またはリチウム金属を用いることが望ましい。リチウムと合金化可能な元素を含む物質としては、Siを含む物質(Si単体、SiOx(0<x<2)など)、Sn単体、SnO、Tiなどを挙げることができる。リチウム金属には、リチウム単体のほかに、Li−Alなどのリチウム合金を用いることができる。負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、負極活物質は、集電体に直接蒸着してもよいが、活物質と少量の任意成分を含む合剤を集電体に担持させてもよい。任意成分としては、結着剤(PVDF、ポリアクリル酸など)や導電剤(アセチレンブラックなど)が挙げられる。
正極は、通常、活物質およびこれを担持するシート状の集電体(芯材)を含む。正極集電体には、アルミニウム箔を用いることが好ましく、その厚みは、例えば10〜30μmである。正極活物質には、従来からリチウム二次電池の正極活物質として用いられている種々の物質を用いることができる。具体的には、例えばコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムのようなリチウム含有遷移金属酸化物を用いることができる。リチウム含有遷移金属酸化物の遷移金属の一部を他元素で置換してもよい。また、酸化物粒子の表面を、他元素で被覆してもよい。ただし、容量を高くする観点から、正極活物質は、Ni元素を含むリチウム含有複合酸化物(例えばLiNiO2、LiNi1/3Mn1/3Co1/32など)を含むことがより好ましい。Ni元素の一部は、他の元素で置換してもよい。また、Ni元素を含むリチウム含有複合酸化物と、Ni元素を含まない材料とを、混合して用いてもよい。正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。正極は、正極活物質と少量の結着剤(例えばPVDF、BM−500Bなど)を含む合剤を集電体に担持させたものであることが望ましい。結着剤がPVDFである場合、少量でも結着性を発揮できる高分子量のPVDFを選択することが好ましい。正極合剤には、導電剤としてカーボンブラックなどを少量添加してもよい。結着剤と導電剤の合計は、正極活物質100重量部あたり、2〜8重量部が好ましい。
電極群のエネルギー密度を高めるために電池の充電終止電圧を、通常用いられる4.2Vよりも高く設定してもよい。例えば充電終止電圧を4.4V、4.5V、4.6Vなどに設定してもよい。充電終止電圧を4.2Vよりも高く設定する場合、理論容量の比較的低い正極と負極の組み合わせにおいても、正極の利用率が高くなり、電池の平均電圧も高くすることができる。よって、電池のエネルギー密度は高くなる。
隔離層の厚みは、24μm以下が好適であり、例えば10〜24μm、12.5〜24μmもしくは14〜20μmが好適である。
隔離層の厚みが小さくなり過ぎると、正極と負極との間の電子的絶縁性が低下する場合がある。一方、隔離層の厚みが大き過ぎると、電池の設計容量が低下し、高出力特性が低下し、または電極群を電槽缶に挿入しにくくなる。隔離層の厚みが、例えば10〜24μmもしくは12.5〜24μmであれば、高容量設計が可能であり、正極と負極との間の電子的絶縁性も十分に保持できる。
多孔質耐熱層の厚みは、樹脂多孔膜の有無に関係なく、1〜20μmが好適であり、例えば1〜10μmもしくは2〜8μmが好適である。多孔質耐熱層の厚みが1μm未満の場合、電池の内部短絡に対する耐性を向上させる効果が十分に得られない場合がある。一方、多孔質耐熱層の厚みが20μmまたは10μmを超える場合、多孔質耐熱層が脆くなる場合がある。また、多孔質耐熱層が厚くなり過ぎると、高出力特性が低下したり、電極群のエネルギー密度を700Wh/L以上とすることが困難になったりする場合がある。多孔質耐熱層の厚みが1〜20μmもしくは1〜10μmであれば、エネルギー密度が高く、特性バランスのよい電池が得られる。
樹脂多孔膜の厚みは8〜18μmが好適である。樹脂多孔膜の厚みが8μm未満の場合、多孔質耐熱層の厚みが薄いと、正極と負極との間の電子的絶縁性を保つことが困難となる場合がある。一方、樹脂多孔膜の厚みが18μmを超える場合、電極群のエネルギー密度を700Wh/L以上とすることが困難になる場合がある。樹脂多孔膜の厚みが8〜18μmであれば、エネルギー密度が高く、特性バランスのよい電池が得られる。
無機酸化物フィラーおよび結着剤を含む多孔質耐熱層は、正極の少なくとも一方の面に形成もしくは接着されていることが好ましく、正極の両面に形成もしくは接着されていることが更に好ましい。耐熱性樹脂からなる多孔質耐熱層は、樹脂多孔膜の少なくとも一方の面に形成もしくは接着されていることが好ましく、多孔質耐熱層は比較的脆いため、樹脂多孔膜の一方の面だけに形成もしくは接着されていることが更に好ましい。耐熱性樹脂からなる多孔質耐熱層が、樹脂多孔膜の一方の面だけに形成されている場合、樹脂多孔膜の厚みAと、多孔質耐熱層の厚みBとの比率:A/Bは、内部短絡時の発熱を低減する観点から、例えば2.4≦A/B≦8、もしくは、2.8≦A/B≦6であることが望ましい。
次に、リチウム二次電池の設計基準と、エネルギー密度の算出方法について詳述する。
正極の理論容量は、以下のように求められる。
まず、作製した正極の一部(正極片)を用いてセルを組み立てる。正極片に含まれる活物質の重量は、計算などで求めることができる。正極活物質の重量を把握した後、正極片の理論容量に対して過剰量のLi箔と正極片とを対峙させ、豊富な電解質中に浸漬すれば、セルが得られる。このセルを、電池の使用電圧範囲を規定する放電終止電圧および充電終止電圧に対して、それぞれ0.1V高い領域で充放電させる。例えば所望するリチウム二次電池の使用電圧範囲が3.0〜4.2V(すなわち放電終止電圧3.0V、充電終止電圧4.2V)である場合、セルを3.1〜4.3V(すなわち放電終止電圧3.1V、充電終止電圧が4.3V)の領域で充放電させる。このとき得られた2サイクル目の放電容量から単位重量あたりの正極活物質の理論容量(mAh/g)を求めることができる。正極の理論容量は、正極に含ませる活物質重量と、単位重量あたりの正極活物質の理論容量との積となる。
負極の理論容量は、以下のように求められる。
まず、作製した負極の一部(負極片)を用いてセルを組み立てる。負極片に含まれる活物質の重量は、計算などで求めることができる。負極活物質の重量を把握した後、負極片の理論容量に対して過剰量のLi箔と負極片とを対峙させ、豊富な電解質中に浸漬すれば、セルが得られる。このセルを、Li金属の電位に対して、0〜1.5V(すなわち放電終止電圧0V、充電終止電圧1.5V)の範囲で充放電させる。このとき得られた2サイクル目の充電容量から単位重量あたりの負極活物質の理論容量(mAh/g)を求めることができる。負極の理論容量は、負極に含ませる活物質重量と、単位重量あたりの負極活物質の理論容量との積となる。
2サイクル目の充電容量から理論容量を求めることにより、負極活物質に取り込まれる不可逆容量分のLi量を反映させることができる。なお、ここでの充電は、負極活物質からリチウムが放出される反応を意味する。負極にリチウム金属を用いる場合、負極の理論容量は、用いるLi金属の重量から直に求めることができる。ただし、電池特性を適正化する観点から、用いるLi金属の重量の40%を設計容量とするのがよい。リチウム金属を負極に用いる場合、負極に集電体を用いないため、リチウム金属の全量が反応するように電池を設計すると、負極の形状維持が困難になる。なお、不可逆容量を有する活物質とリチウム金属とを併用することにより、その活物質の不可逆容量をリチウム金属で補填してもよい。
次に、理論容量が明確になった正極と負極を用いて、以下の要領で電池を設計する。
まず、電池寿命を適正化する観点から、正極の設計容量は、正極の理論容量の0.97倍とする。負極の設計容量は、所望するリチウム二次電池の使用電圧範囲において、正極の設計容量の105%とする。続いて工程歩留を高める観点から、電極群の横断面積は、その電極群を収容する電槽缶の内容空間の横断面積の(0.95)2倍とする。
ここで、円筒形電池の場合、電極群のエネルギー密度(Wh/L)は、計算式:1000×α×β/(γ×π×(0.95ε/2)2)より求められる。ただし、電池の理論容量(0.97×正極の理論容量)をα(Ah)、放電時の中間電圧(初期電池容量の1/2量を放電した時の電圧)をβ(V)、負極活物質層の幅をγ(cm)、電槽缶の内径(直径)をε(cm)とする。なお、電池の理論容量は、正極の設計容量と同義である。
角形電池の場合、電極群のエネルギー密度(Wh/L)は、計算式1000×α×β/(γ×0.952×ε)より求められる。ただし、電池の理論容量(0.97×正極の理論容量)をα(Ah)、放電時の中間電圧(初期電池容量の1/2量を放電した時の電圧)をβ(V)、負極活物質層の幅をγ(cm)、電槽缶の内底面積をε(cm2)とする。
非水電解質や電槽缶には、従来からリチウム二次電池に用いられているものを用いることができる。また、従来からリチウム二次電池に用いられている公知技術を本発明のリチウム二次電池に適用してもよい。
非水電解質には、リチウム塩を溶質として溶解する非水溶媒を用いることが好ましい。
リチウム塩には、6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO22、LiAsF6、LiN(CF3SO22、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、四クロロホウ酸リチウム、四フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド塩等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リチウム塩の非水溶媒に対する溶解量は、特に限定されないが、リチウム塩濃度は0.2〜2mol/Lが好ましく、0.5〜1.5mol/Lが更に好ましい。
非水溶媒には、エチレンカーボネ−ト(EC)、プロピレンカ−ボネ−ト(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンを用いることができる。これらは単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いることが好ましい。なかでも環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒または環状カーボネートと鎖状カーボネートと脂肪族カルボン酸エステルとの混合溶媒が好ましい。
電池の充放電特性を改良する目的で、種々の添加剤を添加することができる。添加剤には、例えばビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、フルオロベンゼンなどを用いることが好ましい。これらの添加剤は、正極および/または負極上に、良好な皮膜を形成し、過充電時の安定性を向上させる。
電槽缶は、リチウム二次電池の作動電圧範囲において電気化学的に安定でなければならない。例えば、鉄を材質とする電槽缶が好ましく、ニッケルやスズによるめっきが施されていてもよい。電槽缶に電極群を挿入し、非水電解質を注入した後、電槽缶の開口に蓋体を配置し、かしめ封口することにより、リチウム二次電池が完成する。
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
《電池A1》
リチウム二次電池の使用電圧範囲が2.5V〜4.2V(放電終止電圧2.5V、充電終止電圧4.2V)となるように電池を設計した。
(i)正極の作製
正極活物質であるニッケル酸リチウム粉末(メディアン径20μm)5kgと、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を12重量%含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(呉羽化学工業株式会社製の#1320(商品名))1kgと、導電剤であるアセチレンブラック90gと、分散媒である適量のNMPとを、双腕式練合機で攪拌し、正極合剤ペーストを調製した。正極合剤ペーストを、厚み15μmのアルミニウム箔からなる帯状の正極集電体の両面に塗布した。塗布された正極合剤ペーストを乾燥させ、圧延ロールで圧延し、正極活物質層を形成した。得られた極板を、円筒型の電槽缶(直径18mm、高さ65mm、内径17.85mm)に挿入可能な幅(57mm)に裁断して、正極を得た。
(ii)負極の作製
負極活物質であるケイ素(Si)単体粉末(メディアン径10μm)3kgと、結着剤である変性スチレンブタジエンゴム粒子を40重量%含む水分散液(日本ゼオン株式会社製のBM−400B(商品名))750gと、導電剤であるアセチレンブラック600gと、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)300gと、分散媒である適量の水とを、双腕式練合機で攪拌し、負極合剤ペーストを調製した。負極合剤ペーストを、厚み10μmの銅箔からなる帯状の負極集電体の両面に塗布した。塗布された負極合剤ペーストを乾燥させ、圧延ロールで圧延し、負極活物質層を形成した。得られた極板を、電槽缶に挿入可能な幅(58.5mm)に裁断して、負極を得た。なお、負極の幅と負極活物質層の幅とは同じとした。
(iii)多孔質耐熱層の形成
アルミナ粉末(メディアン径0.3μm)970gと、結着剤であるポリアクリロニトリル変性ゴムを8重量%含むNMP溶液(日本ゼオン株式会社製のBM−720H(商品名))375gと、分散媒である適量のNMPとを、双腕式練合機で攪拌し、耐熱層スラリーを調製した。耐熱層スラリーを、正極の表面上に、正極活物質層が覆われるように塗布した。塗布された耐熱層スラリーを120℃の真空減圧下で10時間乾燥し、多孔質耐熱層を形成した。多孔質耐熱層の厚みは5μmとした。
(iv)電池の組み立て
多孔質耐熱層を有する正極と、負極とを、厚さ14μmのポリエチレン製の樹脂多孔膜(旭化成株式会社製のハイポア(商品名))を介して捲回し、電極群を作製した。よって、隔離層は、多孔質耐熱層と樹脂多孔膜からなり、その合計厚みは19μmであった。
ニッケルめっきを施した鉄製の円筒型の電槽缶(直径18mm、高さ65mm、内径17.85mm)に、電極群を挿入した後、非水電解質を5.0g電槽缶内に注液し、電槽缶の開口を蓋体で封口して、リチウム二次電池を完成させた。非水電解質には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒にLiPF6を1モル/Lの濃度で溶解したものを用いた。混合溶媒におけるECとDMCとEMCとの体積比は、1:1:1とした。非水電解質には3重量%のビニレンカーボネート(VC)を添加した。電池の理論容量は3606mAh、電極群のエネルギー密度は928Wh/Lであった。
《電池A2》
ケイ素単体粉末の代わりにSiO粉末(メディアン径8μm)を用い、上述した設計基準に基づいて(すなわちリチウム二次電池の使用電圧範囲を2.5V〜4.2Vとし、電極群の体積を電池A1と同じにして)適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様のリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3203mAh、電極群のエネルギー密度は824Wh/Lであった。
《電池A3》
負極活物質であるスズ(Sn)単体粉末(メディアン径10μm)4kgと、結着剤である変性スチレンブタジエンゴム粒子を40重量%含む水分散液(日本ゼオン株式会社製のBM−400B(商品名))250gと、導電剤であるアセチレンブラック200gと、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)100gと、分散媒である適量の水とを、双腕式練合機で攪拌し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを用い、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様のリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3395mAh、電極群のエネルギー密度は873Wh/Lであった。
《電池A4》
負極に厚み140μmのリチウム金属箔を用い、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様のリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3242mAh、電極群のエネルギー密度は932Wh/Lであった。
《電池A5》
負極の表面に厚み5μmのリチウム金属の蒸着膜を形成し、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3529mAh、電極群のエネルギー密度は908Wh/Lであった。
《電池A6》
負極の表面に厚み5μmのリチウム金属の蒸着膜を形成し、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A2と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3135mAh、電極群のエネルギー密度は807Wh/Lであった。
《電池A7〜10》
多孔質耐熱層を正極の表面上に形成せず、負極の表面上に、負極活物質層が覆われるように形成したこと以外は、電池A5、A6、A4およびA1と同様にして、電池A7、A8、A9およびA10をそれぞれ作製した。
《電池A11〜13》
多孔質耐熱層のアルミナを、ほぼ同じ粒度分布を有するマグネシア、シリカまたはジルコニアに変更したこと以外、電池A1と同様にして、電池A11、A12またはA13をそれぞれ作製した。
《電池A14》
多孔質耐熱層の厚みを2μmに変更し、樹脂多孔膜の厚みを20μmに変更し、隔離層の厚みを22μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3510mAh、電極群のエネルギー密度は903Wh/Lであった。
《電池A15》
多孔質耐熱層の厚みを2μmに変更し、樹脂多孔膜の厚みを18μmに変更し、隔離層の厚みを20μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3587mAh、電極群のエネルギー密度は923Wh/Lであった。
《電池A16》
多孔質耐熱層の厚みを2μmに変更し、樹脂多孔膜の厚みを14μmに変更し、隔離層の厚みを16μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3702mAh、電極群のエネルギー密度は952Wh/Lであった。
《電池B1》
多孔質耐熱層の厚みを2μmに変更し、樹脂多孔膜の厚みを8μmに変更し、隔離層の厚みを10μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3913mAh、電極群のエネルギー密度は1007Wh/Lであった。
《電池B2》
多孔質耐熱層の厚みを2μmに変更し、樹脂多孔膜の厚みを6μmに変更し、隔離層の厚みを8μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池B1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3970mAh、電極群のエネルギー密度は1021Wh/Lであった。
電池A17》
多孔質耐熱層の厚みを10μmに変更し、隔離層の厚みを24μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3453mAh、電極群のエネルギー密度は888Wh/Lであった。
電池A18》
多孔質耐熱層の厚みを1μmに変更し、隔離層の厚みを15μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3740mAh、電極群のエネルギー密度は962Wh/Lであった。
《電池B3》
多孔質耐熱層の厚みを0.5μmに変更し、隔離層の厚みを14.5μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3759mAh、電極群のエネルギー密度は967Wh/Lであった。
《電池A19》
多孔質耐熱層の厚みを1μmに変更し、隔離層の厚みを12.5μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3836mAh、電極群のエネルギー密度は987Wh/Lであった。
《電池B4》
多孔質耐熱層の厚みを10μmに変更し、隔離層の厚みを26μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3357mAh、電極群のエネルギー密度は864Wh/Lであった。
《電池B5》
多孔質耐熱層の厚みを12μmに変更し、隔離層の厚みを26μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3357mAh、電極群のエネルギー密度は864Wh/Lであった。
《電池A20》
多孔質耐熱層を正極の表面上に形成せず、樹脂多孔膜の表面上(片面のみ)に形成し、多孔質耐熱層を正極側に配置したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
《電池A21》
樹脂多孔膜の表面上に多孔質耐熱層を、下記の要領で形成したこと以外、電池A20と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
まず、1kgのNMPに対し、乾燥した無水塩化カルシウムを65g添加し、反応槽内で80℃に加温して完全に溶解させた。得られた塩化カルシウムのNMP溶液を常温に戻した後、パラフェニレンジアミンを32g添加し、完全に溶解させた。この後、反応槽を20℃の恒温槽に入れ、テレフタル酸ジクロライド58gを、1時間をかけてNMP溶液に滴下した。その後、NMP溶液を20℃の恒温槽内で1時間放置し、重合反応を進行させることにより、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(以下、PPTAと略記)を合成した。
反応終了後、NMP溶液(重合液)を、恒温槽から真空槽に入れ替え、減圧下で30分間撹拌して脱気した。得られた重合液を、さらに塩化カルシウムのNMP溶液で希釈し、PPTA濃度が1.4重量%であるアラミド樹脂のNMP溶液を調製した。
得られたアラミド樹脂のNMP溶液を、樹脂多孔膜の片面に、ドクターブレードにより塗布し、80℃の熱風(風速0.5m/秒)で乾燥した。その後、アラミド樹脂の膜を、純水で十分に水洗し、塩化カルシウムを除去すると同時に膜に微孔を形成し、乾燥させた。こうして樹脂多孔膜の片面に、厚み5μmの多孔質耐熱層を形成した。なお、NMP溶液からアラミド樹脂を分離して、その熱変形温度(荷重たわみ温度)をASTMに準拠して測定したところ321℃であった。
《電池A22》
樹脂多孔膜の表面上に多孔質耐熱層を、下記の要領で形成したこと以外、電池A20と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
まず、無水トリメリット酸モノクロライド21gと、ジアミン(ジアミノジフェニルエーテル)20gとを、NMP1kgに添加し、室温で混合し、ポリアミド酸のNMP溶液(ポリアミド酸濃度3.9重量%)を調製した。得られたポリアミド酸のNMP溶液を、樹脂多孔膜の片面に、ドクターブレードにより塗布した。その後、塗膜を80℃の熱風(風速0.5m/秒)で乾燥させると同時に、ポリアミド酸を脱水閉環させて、ポリアミドイミドを生成させた。なお、ポリアミドイミドの熱変形温度(荷重たわみ温度)をASTMに準拠して測定したところ、280℃であった。
《電池A23〜25》
樹脂多孔膜が担持する多孔質耐熱層を負極側に配置したこと以外は、電池A20、A21およびA22と同様にして、電池A23、A24およびA25をそれぞれ作製した。
《電池B6》
樹脂多孔膜の厚みを12μmに変更し、多孔質耐熱層の厚みを0.5μmに変更し、隔離層の厚みを12.5μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3836mAh、電極群のエネルギー密度は987Wh/Lであった。
《電池A26》
樹脂多孔膜の厚みを12μmに変更し、多孔質耐熱層の厚みを1μmに変更し、隔離層の厚みを13μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3817mAh、電極群のエネルギー密度は982Wh/Lであった。
電池A27》
樹脂多孔膜の厚みを12μmに変更し、多孔質耐熱層の厚みを2μmに変更し、隔離層の厚みを14μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3778mAh、電極群のエネルギー密度は972Wh/Lであった。
《電池A28》
樹脂多孔膜の厚みを12μmに変更し、隔離層の厚みを17μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3683mAh、電極群のエネルギー密度は948Wh/Lであった。
《電池A29》
樹脂多孔膜の厚みを12μmに変更し、多孔質耐熱層の厚みを10μmに変更し、隔離層の厚みを22μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3510mAh、電極群のエネルギー密度は903Wh/Lであった。
《電池A30》
樹脂多孔膜の厚みを14μmに変更し、多孔質耐熱層の厚みを10μmに変更し、隔離層の厚みを24μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3453mAh、電極群のエネルギー密度は888Wh/Lであった。
《電池A31》
樹脂多孔膜の厚みを11.5μmに変更し、多孔質耐熱層の厚みを1μmに変更し、隔離層の厚みを12.5μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3836mAh、電極群のエネルギー密度は987Wh/Lであった。
《電池A32》
樹脂多孔膜の厚みを12μmに変更し、多孔質耐熱層の厚みを1.5μmに変更し、隔離層の厚みを13.5μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3817mAh、電極群のエネルギー密度は982Wh/Lであった。
《電池B7》
樹脂多孔膜の厚みを16μmに変更し、多孔質耐熱層の厚みを10μmに変更し、隔離層の厚みを26μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3357mAh、電極群のエネルギー密度は864Wh/Lであった。
《電池B8》
樹脂多孔膜の厚みを12μmに変更し、多孔質耐熱層の厚みを12μmに変更し、隔離層の厚みを24μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3453mAh、電極群のエネルギー密度は888Wh/Lであった。
《電池B9》
樹脂多孔膜の厚みを11μmに変更し、多孔質耐熱層の厚みを1μmに変更し、隔離層の厚みを12μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3836mAh、電極群のエネルギー密度は984Wh/Lであった。
《電池A33》
耐熱層スラリーを、平滑なSUS板上に塗布し、塗膜を120℃の真空減圧下で10時間乾燥し、厚さ10μmの多孔質耐熱層を形成した。これをSUS板から剥がして、多孔質耐熱層からなる独立したシートを得た。多孔質耐熱層を正極の表面上に形成せず、得られたシートを樹脂多孔膜の正極側に配置し、樹脂多孔膜の厚みを10μmに変更し、隔離層の厚みを20μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。なお、多孔質耐熱層の面積(寸法)は、負極活物質層の面積よりも大きくした。電池の理論容量は3587mAh、電極群のエネルギー密度は923Wh/Lであった。
《電池A34》
PPTA濃度が1.4重量%であるアラミド樹脂のNMP溶液を、平滑なSUS板上に塗布し、塗膜を80℃の熱風(風速0.5m/秒)で乾燥し、その後、アラミド樹脂の膜を、純水で十分に水洗し、更に乾燥させて、厚さ10μmのアラミド樹脂からなる多孔質耐熱層を形成した。これをSUS板から剥がして、多孔質耐熱層からなる独立したシートを得た。こうして得られたシートを用いたこと以外は、電池A33と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
《電池A35》
ポリアミド酸のNMP溶液を、平滑なSUS板上に塗布し、塗膜を80℃の熱風(風速0.5m/秒)で乾燥させると同時に、ポリアミド酸を脱水閉環させて、ポリアミドイミドを生成させ、厚さ10μmのポリアミドイミドからなる多孔質耐熱層を形成した。これをSUS板から剥がして、多孔質耐熱層からなる独立したシートを得た。こうして得られたシートを用いたこと以外は、電池A33と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
《電池B10》
樹脂多孔膜を用いず、多孔質耐熱層からなるシートの厚みを14μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A33と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3768mAh、電極群のエネルギー密度は972Wh/Lであった。
《電池B11》
樹脂多孔膜を用いず、多孔質耐熱層からなるシートの厚みを20μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A33と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3587mAh、電極群のエネルギー密度は923Wh/Lであった。
《電池B12》
樹脂多孔膜を用いず、多孔質耐熱層からなるシートの厚みを22μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A33と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3510mAh、電極群のエネルギー密度は903Wh/Lであった。
《電池B13》
樹脂多孔膜を用いず、多孔質耐熱層からなるシートの厚みを14μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A34と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
《電池B14》
樹脂多孔膜を用いず、多孔質耐熱層からなるシートの厚みを14μmとし、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A35と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
《電池B15》
多孔質耐熱層からなるシートを厚さ16μmのセルロース製不織布に変更し、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池B10と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3702mAh、電極群のエネルギー密度は952Wh/Lであった。
《電池A36》
正極を下記の要領で形成し、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3164mAh、電極群のエネルギー密度は838Wh/Lであった。
正極活物質であるコバルト酸リチウム粉末(メディアン径15μm)3kgと、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を12重量%含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(呉羽化学工業株式会社製の#1320(商品名))1kgと、導電剤であるアセチレンブラック90gと、分散媒である適量のNMPとを、双腕式練合機で攪拌し、正極合剤ペーストを調製した。正極合剤ペーストを、厚み15μmのアルミニウム箔からなる帯状の正極集電体の両面に塗布した。塗布された正極合剤ペーストを乾燥させ、圧延ロールで圧延し、正極活物質層を形成した。得られた極板を、円筒型の電槽缶(直径18mm、高さ65mm、内径17.85mm)に挿入可能な幅(57mm)に裁断して、正極を得た。
《電池A37》
正極を下記の要領で形成し、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3129mAh、電極群のエネルギー密度は817Wh/Lであった。
正極活物質であるニッケルマンガンコバルトリチウム酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/32)粉末(メディアン径15μm)3kgと、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を12重量%含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(呉羽化学工業株式会社製の#1320(商品名))1kgと、導電剤であるアセチレンブラック90gと、分散媒である適量のNMPとを、双腕式練合機で攪拌し、正極合剤ペーストを調製した。正極合剤ペーストを、厚み15μmのアルミニウム箔からなる帯状の正極集電体の両面に塗布した。塗布された正極合剤ペーストを乾燥させ、圧延ロールで圧延し、正極活物質層を形成した。得られた極板を、円筒型の電槽缶(直径18mm、高さ65mm、内径17.85mm)に挿入可能な幅(57mm)に裁断して、正極を得た。
《電池A38》
正極を下記の要領で形成し、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3537mAh、電極群のエネルギー密度は923Wh/Lであった。
第1正極活物質であるコバルト酸リチウム粉末(メディアン径15μm)1.5kgと、第2活物質であるニッケルマンガンコバルトリチウム酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/32)粉末(メディアン径15μm)1.5kgと、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を12重量%含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(呉羽化学工業株式会社製の#1320(商品名))1kgと、導電剤であるアセチレンブラック90gと、分散媒である適量のNMPとを、双腕式練合機で攪拌し、正極合剤ペーストを調製した。正極合剤ペーストを、厚み15μmのアルミニウム箔からなる帯状の正極集電体の両面に塗布した。塗布された正極合剤ペーストを乾燥させ、圧延ロールで圧延し、正極活物質層を形成した。得られた極板を、円筒型の電槽缶(直径18mm、高さ65mm、内径17.85mm)に挿入可能な幅(57mm)に裁断して、正極を得た。
《電池A39》
負極を下記の要領で形成し、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は2633mAh、電極群のエネルギー密度は717Wh/Lであった。
負極活物質である人造黒鉛粉末(メディアン径20μm)3kgと、結着剤である変性スチレンブタジエンゴム粒子を40重量%含む水分散液(日本ゼオン株式会社製のBM−400B(商品名))75gと、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)30gと、分散媒である適量の水とを、双腕式練合機で攪拌し、負極合剤ペーストを調製した。負極合剤ペーストを、厚み10μmの銅箔からなる帯状の負極集電体の両面に塗布した。塗布された負極合剤ペーストを乾燥させ、圧延ロールで圧延し、負極活物質層を形成した。得られた極板を、電槽缶に挿入可能な幅(58.5mm)に裁断して、負極を得た。
《電池A40》
リチウム二次電池の使用電圧範囲が2.5V〜4.4V(放電終止電圧2.5V、充電終止電圧4.4V)となるように電池設計を変更し、正極を電池A36と同様の要領で、負極を電池A39と同様の要領で作製し、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は2514mAh、電極群のエネルギー密度は742Wh/Lであった。
《電池A41》
リチウム二次電池の使用電圧範囲が2.5V〜4.4V(放電終止電圧2.5V、充電終止電圧4.4V)となるように電池設計を変更し、正極を電池A38と同様の要領で、負極を電池A39と同様の要領で作製し、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は2601mAh、電極群のエネルギー密度は728Wh/Lであった。
《電池A42》
リチウム二次電池の使用電圧範囲が2.5V〜4.4V(放電終止電圧2.5V、充電終止電圧4.4V)となるように電池設計を変更し、正極を電池A36と同様の要領で、負極を電池A39と同様の要領で作製し、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は2514mAh、電極群のエネルギー密度は742Wh/Lであった。
《電池A43》
リチウム二次電池の使用電圧範囲が2.5V〜4.4V(放電終止電圧2.5V、充電終止電圧4.4V)となるように電池設計を変更し、正極を電池A38と同様の要領で、負極を電池A39と同様の要領で作製し、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は2601mAh、電極群のエネルギー密度は728Wh/Lであった。
《電池B16》
樹脂多孔膜の厚みを20μmに変更し、多孔質耐熱層を設けず、上述した設計基準に基づいて適宜正極および負極の寸法を変更したこと以外は、電池A1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は3587mAh、電極群のエネルギー密度は923Wh/Lであった。
《電池B17》
リチウム二次電池の使用電圧範囲が2.5V〜4.2V(放電終止電圧2.5V、充電終止電圧4.2V)となるように電池設計を変更したこと以外は、電池A40と同様にしてリチウム二次電池を作製した。電池の理論容量は2314mAh、電極群のエネルギー密度は648Wh/Lであった。
《電池A44》
電池A21のアラミド樹脂のNMP溶液に、アラミド樹脂100重量部あたり200重量部のアルミナ粉末を添加したこと以外、電池A21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。アルミナ粉末には、電池A1の多孔質耐熱層に用いたのと同じものを用いた。
《電池A45》
樹脂多孔膜が担持する多孔質耐熱層を負極側に配置したこと以外は、電池A44と同様にして、電池A49を作製した。
全ての電池を、それぞれ50個ずつ作製し、以下の評価を行った。各電池の構成と評価結果を表1−1、1−2、2−1、2−2、3−1、3−2に示す。
(絶縁不良検査)
非水電解質を添加する前の電極群に関し、印加電圧25Vで直流抵抗を測定した。測定値が1MΩ以下のものを内部短絡している電池と見なし、その発生率を「絶縁不良率」として表3−1および3−2に記した。
(電圧不良検査)
内部短絡していない電池の慣らし充放電を二度行い、次いで400mAの電流値で4.1Vに達するまで充電した。その後、45℃環境下で7日間保存した。保存後の開回路電圧が保存前に対して50mV以上低下した電池の発生率を「電圧不良率」として表3−1および3−2に記した。
(高出力特性)
20℃環境下で、以下の条件で充放電を行い、高出力放電時の放電容量を求めた。
定電流充電: 時間率0.7C/充電終止電圧は設計終止電圧(電池A1〜A39、A44およびA45、ならびに電池B1〜B17は4.2V、電池A40〜A43は4.4V)
定電圧充電: 充電電圧値−設計終止電圧/充電終止電流100mA
定電流放電: 時間率0.2C/放電終止電圧は設計終止電圧(2.5V)
定電流充電: 時間率1C/充電終止電圧は設計終止電圧
定電圧充電: 充電電圧値は設計終止電圧/充電終止電流100mA
定電流放電: 時間率2C/放電終止電圧は設計終止電圧
ここで、時間率X(C)は、電池の理論容量を1/X時間で放電することを示し、X値が大きいほど電流値は大きくなる。0.2C放電時の容量に対する、2C放電時の容量の比率を「高出力特性」として表3−1および3−2に記した。
(保存特性)
20℃環境下で、以下の条件で電池の充放電を行い、その後60℃環境で、電池を20日間保存した。その後、以下の条件で電池の充放電を行った。保存前の1C放電容量に対する、保存後の1C放電容量の比率を「保存特性」として表3−1および3−2に記した。
定電流充電: 時間率0.7C/充電終止電圧は設計終止電圧+0.1V
定電圧充電: 充電電圧値は設計終止電圧+0.1V/充電終止電流100mA
定電流放電: 時間率1C/放電終止電圧は設計終止電圧
定電流充電: 時間率0.7C/充電終止電圧は設計終止電圧+0.1V
定電圧充電: 充電電圧値は設計終止電圧+0.1V/充電終止電流100mA
高温保存 : 60℃/20日間
定電流放電: 時間率0.2C/放電終止電圧は設計終止電圧
定電流充電: 時間率0.7C/充電終止電圧は設計終止電圧+0.1V
定電圧充電: 充電電圧値は設計終止電圧+0.1V/充電終止電流100mA
定電流放電: 時間率1C/放電終止電圧は設計終止電圧
(釘刺し試験)
電池に対して0.7Cで設計終止電圧+0.1Vまで充電を行った。その後、20℃環境下において、充電状態の電池の側面から、鉄製の釘(長さ方向に対して垂直な断面の直径2.5mm)を5mm/秒の速度で突き刺し、電池の発熱状態を観測した。電池の温度は、電池の側面に付した熱電対で測定した。90秒後の到達温度を表3−1および3−2に記した。
さらに、温度低下後の電池を分解して、短絡面積A(すなわち釘の長さ方向に対して垂直な断面積)と、内部短絡による多孔質耐熱層もしくは隔離層の減少面積Bを測定した。(A+B)/Aの最大値を表2−1および2−2に記した。
Figure 0005209875
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電池B17で用いたコバルト酸リチウム(正極活物質)と黒鉛(負極活物質)は、ともに理論容量が低い。よって、特性バランスおよび信頼性の高い電池は得られたが、充電終止電圧が4.2Vでは、所望の高エネルギー密度(700Wh/L)を達成できなかった。電極群のエネルギー密度を700Wh/L以上にするには、電池A1〜A38、A44およびA45のように、黒鉛よりエネルギー密度の大きい負極活物質を用いるか、電池A39のように、コバルト酸リチウムよりエネルギー密度の大きい正極活物質を用いるか、または、電池A40〜A43のように電池の充電終止電圧を4.2Vよりも高くする設定する必要がある。
隔離層が多孔質耐熱層を含まない電池B16は、釘刺し試験で内部短絡を発生させたとき、隔離層の減少面積が大きく、電池の発熱量も大きかった。内部短絡に伴う発熱によって、融点の低い樹脂多孔膜が溶融し、短絡部が拡大し、短絡電流が増大し、発熱を促進したものと考えられる。一方、隔離層が多孔質耐熱層を含む電池では、釘刺し試験で内部短絡を発生させたとき、多孔質耐熱層の減少面積Bを小さく抑制できた。よって、電池の発熱を抑制することができた。発熱を抑制する効果は、電池A1〜6から示唆されるように、負極活物質の種類に関係なく得ることができる。
多孔質耐熱層を負極の表面に設けた電池A7〜A10は、釘刺し試験における電池の発熱が大きく、電圧不良率もやや高めであった。また、保存特性も低めであった。多孔質耐熱層を正極の表面上に設けた電池A1〜A6および樹脂多孔膜上に設けた電池A20〜A21において、より好ましい結果が得られた。エネルギー密度が高い負極活物質は、体積変化が大きく、もしくは状態変化を起こしやすい。よって、多孔質耐熱層が負極の表面上に形成されると、構造的に脆弱な多孔質耐熱層が部分的に破壊されるものと考えられる。負極がリチウム金属を含む電池A7〜A9では、特に電圧不良率が高かった。これはリチウム金属によって負極の電位が低くなり、正極で溶解した導電性の異物が、負極で析出しやすくなったためと考えられる。一方、多孔質耐熱性を正極の表面上に設けた電池A4〜A6では、正極で導電性の異物が溶解しにくいため、電圧不良率は低かった。
電池A1〜A20、A23、A33およびA36〜A41の多孔質耐熱層は、絶縁性フィラーと結着剤からなるため、機械強度が比較的大きく、耐久性が高い。これに比べて、電池A21、A24、A26〜A32、A34、A42およびA43の多孔質耐熱層は、アラミド樹脂からなるため、機械強度は比較的劣る。ポリアミドイミド樹脂からなる電池A22、A25、A35および電池B14の多孔質耐熱層も同様である。よって、耐熱性樹脂からなる多孔質耐熱層を含む電池の電圧不良率は、比較的高くなった。ただし、耐熱性樹脂からなる多孔質耐熱層は、柔軟性が高いため、電極群の構成が容易であり、生産性は向上した。
樹脂多孔膜上に多孔質耐熱層を設けた電池A20〜A25の比較から示されるように、絶縁性フィラーを用いた場合よりも、耐熱性樹脂を用いた場合の方が、電池の耐熱性が向上し、釘刺し安全性が高くなることがわかる。これは、絶縁性フィラーよりも柔軟性の高い耐熱性樹脂が、充放電時の極板の膨張および収縮に追従し易いためと考えられる。なかでも絶縁性フィラーと耐熱性樹脂とを併用した電池A44およびA45では、絶縁性フィラーの利点(電圧不良率の低減)と耐熱性樹脂の利点(釘刺し安全性の向上)のほかに、高出力特性の向上が見られた。何らかの作用により、多孔質耐熱層内の空隙構造が改善され、高出力特性が向上したものと考えられる。
上述のように、多孔質耐熱層は機械強度がやや低い。よって、電池A23〜A29のように正極や樹脂多孔膜の表面上に多孔質耐熱層を設けた場合の方が、電池A33〜A35のように多孔質耐熱層からなる独立したシートを用いる場合より、電圧不良率は小さくなった。
樹脂多孔膜の表面上に多孔質耐熱層を設けた場合、電池A23〜A25のように多孔質耐熱層を負極側に配置すると、保存特性が低下する傾向があった。電池A20〜A22およびA26〜A29のように、多孔質耐熱層を正極側に配置した方が優れた保存特性が得られた。多孔質耐熱層を正極側に配置することにより、高温かつ高電圧状態で電池を保存した場合にも、ポリオレフィンからなる樹脂多孔膜の酸化が抑制され、電気特性の低下が防止されると考えられる。
隔離層の厚みは12.5〜24μmの範囲で特に好ましい結果が得られた。隔離層の厚みが12.5μm未満の電池B1、B2、B9では、絶縁不良率が高くなり、厚みが24μmを超える電池B4、B5、B7では、同じ負極活物質を用いた場合でも、電極群のエネルギー密度が低下した。また、高出力特性も低下する傾向があった。
多孔質耐熱層の厚みは、樹脂多孔膜の有無に関係なく、1〜10μmの範囲で好ましい結果が得られた。多孔質耐熱層の厚みが10μmを超えた電池B5、B8では、高出力特性が低下した。耐熱性樹脂からなる多孔質耐熱層の厚みが10μmを超えると、絶縁性フィラーおよび結着剤を含む多孔質耐熱層の厚みが10μmを超えた場合よりも、更に特性が低下した。これは、耐熱性樹脂からなる多孔質耐熱層の空隙率が相対的に低いためと考えられる。よって、耐熱性樹脂からなる多孔質耐熱層は、厚みを特に厳密に制御する必要がある。一方、多孔質耐熱層の厚みが1μm未満になると、(A+B)/A値が9以上となり、釘刺し試験における発熱が比較的著しくなった。
樹脂多孔膜の厚みは、8〜18μmの範囲で好ましい結果が得られた。
本発明のリチウム二次電池は、高いエネルギー密度と優れた安全性とを有するため、特に携帯情報端末および携帯電子機器のようなポータブル機器の電源としての利用可能性が高い。ただし、本発明のリチウム二次電池は、例えば家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電源にも用いることができ、用途は特に限定されない。本発明のリチウム二次電池の形状は、特に限定されないが、例えば円筒型や角型が好適である。本発明のリチウム二次電池は、高出力特性に優れているため、多機能化ポータブル機器(PDA)、電動工具、パーソナルコンピュータ(PC)、電動玩具、電動ロボット等の電源、大型バックアップ電源、非常用バックアップ電源(USP)、自然エネルギー発電の平準化電源、回生エネルギー利用システム等に好適である。
本発明のリチウム二次電池の短絡部付近の断面模式図である。

Claims (14)

  1. 電極群、非水電解質およびこれらを収容する電槽缶を具備するリチウム二次電池であって、
    前記電極群は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在する隔離層を含み、前記正極と前記負極とが、前記隔絶層を介して捲回されることにより構成されており、
    前記負極は、Si単体、SiO x (0<x<2)、およびリチウム金属よりなる群から選択される少なくとも1種を含み、
    前記電極群のエネルギー密度が、700Wh/L以上となるように充電終止電圧および放電終止電圧が設定されており、
    前記隔離層は、樹脂多孔膜および多孔質耐熱層を含み、前記多孔質耐熱層は、前記樹脂多孔膜の表面上に設けられており、
    前記隔離層の厚みが、24μm以下であり、
    前記正極と前記負極との間で内部短絡が生じたときの短絡面積Aと、発熱による前記多孔質耐熱層の減少面積Bとが、1≦(A+B)/A≦10を満たし、
    前記樹脂多孔膜の厚みCと、前記多孔質耐熱層の厚みDとの比率:C/Dが、2.4≦C/D≦8を満たす、リチウム二次電池。
  2. 前記隔離層の厚みが、12.5μm以上である、請求項1記載のリチウム二次電池。
  3. 前記多孔質耐熱層の厚みが、1μm以上、10μm以下である、請求項1記載のリチウム二次電池。
  4. 前記多孔質耐熱層は、耐熱性樹脂を含む、請求項1記載のリチウム二次電池。
  5. 前記多孔質耐熱層は、前記樹脂多孔膜の前記正極側に配置されている、請求項1記載のリチウム二次電池。
  6. 前記多孔質耐熱層は、前記負極の活物質層以上の面積を有する、請求項1記載のリチウム二次電池。
  7. 前記正極は、Ni元素を含むリチウム含有複合酸化物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
  8. 充電終止電圧が、4.2Vよりも高く設定されている、請求項1記載のリチウム二次電池。
  9. 電極群、非水電解質およびこれらを収容する電槽缶を具備するリチウム二次電池であって、
    前記電極群は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在する隔離層を含み、前記正極と前記負極とが、前記隔絶層を介して捲回されることにより構成されており、
    前記負極は、Si単体、SiO x (0<x<2)、およびリチウム金属よりなる群から選択される少なくとも1種を含み、
    前記電極群のエネルギー密度が、700Wh/L以上となるように充電終止電圧および放電終止電圧が設定されており、
    前記隔離層は、樹脂多孔膜および多孔質耐熱層を含み、前記多孔質耐熱層は、絶縁性フィラーおよび結着剤を含み、
    前記隔離層の厚みが、24μm以下であり、
    前記正極と前記負極との間で内部短絡が生じたときの短絡面積Aと、発熱による前記多孔質耐熱層の減少面積Bとが、1≦(A+B)/A≦10を満たし、
    前記樹脂多孔膜の厚みCと、前記多孔質耐熱層の厚みDとの比率:C/Dが、2.4≦C/D≦8を満たす、リチウム二次電池。
  10. 前記隔離層の厚みが、12.5μm以上である、請求項記載のリチウム二次電池。
  11. 前記多孔質耐熱層の厚みが、1μm以上、10μm以下である、請求項記載のリチウム二次電池。
  12. 前記多孔質耐熱層は、前記正極の表面上に設けられている、請求項記載のリチウム二次電池。
  13. 前記正極は、Ni元素を含むリチウム含有複合酸化物を含む、請求項記載のリチウム二次電池。
  14. 充電終止電圧が、4.2Vよりも高く設定されている、請求項記載のリチウム二次電池。
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