以下に、本発明にかかる受信装置、送信装置および伝送路推定方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる送信装置(以下、送信機という)の実施の形態1の機能構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の送信機は、送信信号生成部10−1〜10−M(Mは2以上の整数)と、送信アンテナ15−1〜15−Mと、を備えている。また、送信信号生成部10−i(i=1〜M)は、符号化処理部11−iと、シンボル生成部12−iと、D/A(Digital-Analog)変換部13−iと、アナログ信号処理部14−iと、で構成される。
送信信号生成部10−1〜10−Mは、情報ビットを入力とし、それぞれ同一の枝番号に対応する送信アンテナ15−1〜15−Mから送信される高周波アナログ送信信号を作成する処理を行う。そして、送信アンテナ15−1〜15−Nは、それぞれ送信信号生成部10−1〜10−Mが作成した高周波アナログ送信信号を送信する。送信信号生成部10−1〜10−Mは、処理対象の情報ビット系列は異なるが、それぞれの情報ビット系列に同一の処理を行うため、以降、送信信号生成部10−1について詳細な処理内容を説明する。送信信号生成部10−2〜10−Mの処理は、送信信号生成部10−1の処理と同様である。
符号化処理部11−1には情報ビット系列が入力され、アナログ信号処理部14−1の出力は、送信アンテナ15−1に入力される。符号化処理部11−1は、入力された情報ビット系列に対して、受信機側で当該情報ビット系列が正しく復号されているかどうかを確認するために付加される、パリティビットを付加する。この処理には、たとえば、Cyclic Redunduncy Check(CRC)のような良く知られた手法などが適用できる。パリティビットの付加処理の方法としては、これに限らずどのようなものを用いてもよい。符号化処理部11−1は、その後、パリティビットが付加された情報ビット系列に対して、畳み込み符号や、ターボ符号、LDPC符号等の誤り訂正符号化を行い、符号化ビット系列を生成する。また、符号化処理部11−1は、符号化ビット系列に対して、必要に応じてインタリーブ処理を行う。符号化ビット系列(インタリーブ処理を行う場合は、インタリーブ処理後の符号化ビット系列)は、シンボル生成部12−1に出力する。
シンボル生成部12−1は、符号化処理部11−1から出力される符号化ビット系列を送信変調シンボル系列に変換する処理を行い、送信変調シンボル系列をD/A変換部13−1へ出力する。ここで用いる変調方式としては、たとえば、BPSK(Binary Phase Shift Keying),QPSK(Quadrature Phase Shift Keying),8相PSK(Phase Shift Keying)等のPSK変調や、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation),64QAM等の直交振幅変調方式等、任意の方式が適用できる。
D/A変換部13−1は、シンボル生成部12−1から出力された送信変調シンボル系列をアナログ信号に変換し、アナログ信号処理部14−1へ出力する。アナログ信号処理部14−1は、D/A変換部13−1から出力されたアナログ信号に対し、アップコンバート等のアナログ信号処理を施し高周波アナログ送信信号として送信アンテナ15−1へ出力する。そして、送信アンテナ15−1は、高周波アナログ送信信号を電波として送信する。
図2は、本実施の形態の受信装置(以下、受信機と呼ぶ)の機能構成例を示す図である。図2に示すように、本実施の形態の受信機は、受信アンテナ20−1〜20−N(Nは自然数)と、アナログ信号処理部21−1〜21−Nと、A/D(Analog-Digital)変換部22−1〜22−Nと、等化処理部23と、伝送路推定処理部24と、軟ビット計算部25と、シンボル期待値計算部26と、復号処理部27と、で構成される。
つづいて、本実施の形態の受信機の全体動作について説明する。アンテナ20−1〜20−Nは、上述の本実施の形態の送信機から送信された高周波アナログ信号を受信し、受信した高周波アナログ信号をそれぞれ同一の枝番のアナログ信号処理部21−1〜21−Nへ出力する。アナログ信号処理部21−1〜21−Nは、それぞれ高周波アナログ信号をベースバンド信号に変換し、同一の枝番号のA/D変換部22−1〜22−Nに出力する。そして、A/D変換部22−1〜22−Nは、ベースバンド信号をディジタル信号へ変換し、等化処理部23と伝送路推定処理部24へ出力する。以下では、A/D変換部22−1〜22−Nの出力(ディジタル信号)を受信信号系列と表記することとする。
等化処理部23は、A/D変換部22−1〜22−Nから出力されるN系統の受信信号系列受信信号系列に対して、信号が伝送路で受けた波形歪みの補償,M本の送信アンテナから送信された信号の分離を行い、M系統の送信変調シンボル系列の推定値を求めて軟ビット計算部25へ出力する。伝送路推定処理部24は、等化処理部23の処理で必要になる伝送路を推定する。送信アンテナ数がM本であり受信アンテナ数がN本である場合、送受信アンテナの総組み合わせはN×M個通りとなる。したがって、伝送路推定処理部24は、N×M個の異なる伝送路を推定することになる。
軟ビット計算部25は、等化処理部23から出力されるM系統の送信変調シンボル系列の推定値に対して、送信変調シンボル系列を符号化ビット系列に変換する処理を行う。ここで、軟ビット計算部25が変換する符号化ビット系列は、当該符号化ビット系列に対する信頼度で重み付けされた軟判定符号化ビット系列である。軟ビット計算部25は、M系統の軟判定符号化ビット系列に変換した後、軟判定符号化ビット系列を復号処理部27へ出力する。
復号処理部27は、MAP(Maximum A posteriori Probability)復号器やSOVA(Soft Output Viterbi Algorithm)復号器のような、いわゆる軟入力軟出力復号器を用いて、送信機において施されたインタリーブ処理および誤り訂正符号に対応する任意の復号方法で、軟判定符号化ビット系列から情報ビット系列を復号する。そして、復号処理部27は、復号された情報ビット系列に誤りが含まれるかどうかを判定する、誤り検出復号処理を行い、誤り検出結果(誤り検出復号処理の結果)を伝送路推定処理部24へ出力する。さらに、復号処理部27は、入力されたM系統の軟判定符号化ビット系列に対する復号器から見た信頼度を表す外部値系列を求め、シンボル期待値計算部26へ出力する。
シンボル期待値計算部26は、復号処理部27から出力された外部値系列を用いて送信変調シンボル系列の期待値を計算し、等化処理部23および伝送路推定処理部24へ出力する。そして、上述した、伝送路推定処理部24、等化処理部23、軟ビット計算部25、復号処理部27およびシンボル期待値計算部26の一連の処理は、所定の回数繰り返される。最終的に、復号処理部27から、情報ビット系列が出力される。
つづいて、本実施の形態の受信機の動作を詳細に説明する。図3は、本実施の形態の受信機の特徴である伝送路推定処理部24の機能構成例を示す図である。図3に示すように、本実施の形態の伝送路推定処理部24は、N系統の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−1〜38−Nで構成されている。また、各々の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−j(j=1〜N)は、初期伝送路推定処理部30と、第一の信号選択部31と、レプリカ作成部32と、減算処理部33と、重み計算部34と、乗算処理部35と、メモリ36と、第二の信号選択部37と、で構成される。
シンボル期待値計算部26から出力される送信変調シンボル系列の期待値と、復号処理部27から出力される誤り検出結果は、受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−1〜38−Nに対して、それぞれM系統分の全ての信号が等しく入力される。受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−1〜38−Nは、所定の伝送路推定処理を実行した後、受信アンテナ20−1〜20−Nにそれぞれ対応した伝送路推定値を等化処理部23へ出力する。受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−1〜38−Nは、入力される信号が異なるが、それぞれ同様の処理を実行するため、以降の説明では、受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−1に関してのみ、その処理内容を詳細に説明する。受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−2〜38−Nの処理は、受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−1の処理と同様である。
受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−1では、はじめに、初期伝送路推定処理部30が、従来知られている任意の技術を用いて、各送信アンテナと各受信アンテナ間の伝送路を推定する。たとえば、送信機が既知のパイロット信号を各送信アンテナから送信し、受信機が受信したパイロット信号を実際に送信されたパイロット信号と比較することにより伝送路の歪みを推定する手法が広く知られている。推定された伝送路応答は第一の信号選択部31へ出力される。
第一の信号選択部31は、初回の処理では、初期伝送路推定処理部30から出力された伝送路推定結果である初期伝送路推定結果をレプリカ作成部32へ出力するとともに、初期伝送路推定結果をメモリ36に書き込む。2回目以降の処理では、第一の信号選択部31は、メモリ36に書き込まれている信号を読み出して伝送路推定結果としてレプリカ作成部32へ出力する。
第二の信号選択部37は、受信品質の指標の一種である、復号処理部27から出力された誤り検出結果に基づいて、誤り有りと判定されている送信アンテナ15−1〜15−Nから順番に送信アンテナの順序付けを実施する。すなわち、受信品質の低い順に送信アンテナの順序付けを行う。そして、第二の信号選択部37は、シンボル期待値計算部26から出力されるM系統の送信変調シンボル系列の期待値を、当該送信アンテナの順序付け結果に従って順序を入れ替え、順序付けられた送信変調シンボル系列の期待値をレプリカ作成部32および重み計算部34へ出力する。
レプリカ作成部32は、第一の信号選択部31から出力される伝送路推定結果と、第二の信号選択部37から出力される順序付けられた送信変調シンボル系列の期待値と、を乗算することで受信信号系列のレプリカを作成する。このとき、レプリカ作成部32は、初回の処理では、M系統の送信変調シンボル系列の期待値のうち、最初に順序付けられた(1番目の)系統の送信変調シンボル系列の期待値を削除した、M−1系統の送信信号成分が含まれるレプリカを作成する。そして、2回目の処理では2番目に順序付けられた系統の送信変調シンボル系列の期待値を削除した、M−1系統の送信信号成分が含まれるレプリカを作成する。以降、i回目の処理では、i番目に順序付けられた系統の送信変調シンボル系列の期待値を削除した、M−1系統の送信信号成分が含まれるレプリカを作成する。そして、作成されたレプリカを減算処理部33へ出力する。
減算処理部33は、レプリカ生成部32から出力される受信信号系列のレプリカを、受信信号系列から減算し、減算結果を乗算処理部35に出力する。
重み計算部34は、入力信号である順序付けられたM系統の送信変調シンボル系列の期待値を用いて伝送路推定用重み係数を算出し、算出した伝送路推定用重み係数を乗算処理部35へ出力する。重み計算部34は、初回の処理では最初に順序付けられた(1番目の)系統の送信変調シンボル系列の期待値を用いて重み係数を算出し、2回目の処理では2番目に順序付けられた系統の送信変調シンボル系列の期待値を用いて重み係数を算出する。以降、同様の処理を逐次実行し、i回目の処理では、i番目に順序付けられた系統の送信変調シンボル系列の期待値を用いて重み係数を算出する。ここで用いる重み係数の計算方法としては、例えば、最小2乗規範に基づく方式を用いることができる。最小2乗規範に基づく方式では、受信信号系列を表すベクトルをr、送信変調シンボル系列を表すベクトルをs、重み係数を表すベクトルをwで表し、ベクトルの複素転置を上付きの添え字“H”で表すと、伝送路推定値を表すベクトルhは、以下の式(1)のように表現することができる。
h=wr=(sHs)-1sHr …(1)
乗算処理部35は、減算処理部33から出力されたレプリカ減算後の受信信号系列に対して、重み計算部34から出力された伝送路推定用重み係数を乗算し、伝送路推定値を算出する。そして、乗算処理部35は、伝送路推定値をメモリ36に書き込む。
乗算処理部35の出力がメモリ36に書き込まれた後、第一の信号選択部31は、上述したように、2回目以降の処理として、メモリ36の信号を読み出してレプリカ作成部32へ伝送路推定値として出力する。また、レプリカ作成部32は、2番目に順序付けられた系統の送信変調シンボル系列の期待値を削除した、M−1系統の送信信号成分が含まれるレプリカを作成する。さらに、重み計算部34は、2番目に順序付けられた系統の送信変調シンボル系列の期待値を用いて伝送路推定用重み係数を生成する。そして、上述の減算処理部33、乗算処理部35の処理を経て、乗算処理部35が伝送路推定値をメモリ36に書き込む。以上の処理を所定回数繰り返した後、乗算処理部35は、メモリ36に最終的に記憶されている値を伝送路推定値として等化処理部23に出力するよう指示する。
つづいて、等化処理部23の処理について説明する。図4は、本実施の形態の等化処理部23の機能構成例を示す図である。図4に示すように、本実施の形態の等化処理部23は、干渉キャンセル処理部40−1〜40−Nと、DFT(Discrete Fourier Transform)処理部41−1〜41−Nと、乗算処理部42と、重み計算部43と、IDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)処理部44と、DFT処理部45と、で構成される。また、A/D変換処理部22−1〜22−Nから出力されるN系統の受信信号系列は、等化処理部23の干渉キャンセル処理部40−1〜40−Nに入力され、伝送路推定処理部24から出力されるN系統の伝送路推定値はDFT処理部41−1〜41−Nに入力され、シンボル期待値計算部26から出力される送信変調シンボル系列の期待値はDFT処理部45に入力される。N系統の干渉キャンセル処理部40−1〜40−NおよびDFT処理部41−1〜41−Nは、それぞれが対応するN系統の受信信号系列について同一の処理を実行する。以下の説明では、代表して干渉キャンセル処理部40−1およびDFT処理部41−1についてのみ詳細な説明を行う。干渉キャンセル処理部40−2〜40−Nの処理は干渉キャンセル処理部40−1と同様であり、DFT処理部41−2〜41−Nの処理は、DFT処理部41−1の処理と同様である。
図5は、本実施の形態の干渉キャンセル処理部40−1の機能構成例を示す図である。図5に示すように、本実施の形態の干渉キャンセル処理部40−1は、DFT処理部50と、レプリカ作成部51と、減算処理部52と、で構成される。DFT処理部50は、A/D変換処理部22−1から出力される受信信号系列に対して離散フーリエ変換を行い、周波数領域の受信信号系列を生成し、周波数領域の受信信号系列を減算処理部52へ出力する。
レプリカ作成部51は、後述する処理によって生成される、DFT処理部41−1から出力される周波数領域の伝送路推定値と、DFT処理部45から出力される周波数領域の送信変調シンボル系列の期待値と、を用いて、周波数領域の受信信号系列のレプリカを作成し、減算処理部52へ出力する。
減算処理部52は、DFT処理部50から出力される周波数領域の受信信号系列から、レプリカ作成部51から出力される周波数領域の受信信号系列のレプリカを減算し、乗算処理部42へ出力する。具体的には、はじめに、周波数領域の受信信号系列から、1番目の送信アンテナから送信されている送信信号成分のみ残し、2番目〜M番目の送信アンテナから送信されている送信信号成分を低減するように、周波数領域の受信信号系列のレプリカを選択して減算する。つぎに、周波数領域の受信信号系列から、2番目の送信アンテナから送信されている送信信号成分のみ残し、1番目、および、3番目〜M番目の送信アンテナから送信されている送信信号成分を低減するように、周波数領域の受信信号系列のレプリカを選択して減算する処理を実行する。以下、M番目の送信アンテナから送信されている送信信号成分のみ残し、他の送信アンテナから送信されている送信信号成分を低減するように、周波数領域の受信信号系列のレプリカを選択して減算する処理まで、同様の処理を実行する。そして、レプリカが減算された周波数領域のM系統の受信信号系列を乗算処理部42へ出力する。
一方、図4のDFT処理部41−1は、伝送路推定処理部24から出力される、1番目の受信アンテナに関する伝送路推定値に対して離散フーリエ変換を行い、周波数領域の伝送路推定値を生成する。そして、周波数領域の伝送路推定値を、干渉キャンセル処理部40−1および重み計算部43へ出力する。
DFT処理部45は、M系統の送信変調シンボルの期待値に対して離散フーリエ変換を行い、周波数領域の送信変調シンボル系列の期待値を生成する。そして、周波数領域の送信変調シンボル系列の期待値を重み計算部43および干渉キャンセル処理部40−1〜40−Nへ出力する。
重み計算部43は、DFT処理部41−1〜41−Nから出力される周波数領域の伝送路推定値と、DFT処理部45から出力される、周波数領域の送信変調シンボル系列の期待値と、を用いて、重み係数を算出し、算出した重み係数を乗算処理部42へ出力する。重み係数計算部43が算出する重み係数は、乗算処理部42の出力が、M本の送信アンテナから送信されたM系統の送信信号を分離するために算出される係数である。重み係数の算出方法としては、たとえば、最小平均2乗誤差(Minimum Mean Square Error:MMSE)基準を用いて、各送信アンテナに対応する送信信号毎に重み係数を算出する手法を適用できる。
乗算処理部42は、干渉キャンセル処理部40−1〜40−Nの処理結果である、N系統の、レプリカが減算された周波数領域のM系統の受信信号系列に対して、重み計算部43から受け渡された重み係数を乗算し、M本の送信アンテナから送信された、M系統の送信変調シンボル系列の周波数領域の推定値を求める。乗算処理部42は、このM系統の送信変調シンボル系列の周波数領域における推定値を、IDFT処理部44へ出力する。
IDFT処理部44は、乗算処理部42から出力されるM系統の送信変調シンボル系列の周波数領域の推定値に対して逆離散フーリエ変換を行い、変換結果をM系統の送信変調シンボルの推定値として軟ビット計算部25へ出力する。
軟ビット計算部25は、M系統の送信変調シンボル系列の推定値を用いて各送信変調シンボルに含まれる符号化ビットの推定値である軟判定ビット系列を算出する。符号化ビットの軟判定ビット値は、たとえば、各符号化ビット値を0または1で表すものと仮定すると、下記式(2)で示すように、当該符号化ビットのビット値が0である確からしさ(尤度)と、当該符号化ビットのビット値が1である尤度との比を計算し、その対数で表すことができる。
(符号化ビットの軟判定値)
=Log((ビット1に対する尤度)÷(ビット0に対する尤度)) … (2)
軟ビット計算部25は、符号化ビット系列に含まれる全ての符号化ビットについて軟判定値を算出し、軟判定ビット系列として復号処理部27へ出力する。復号処理部27は、上述のように、軟入力軟出力復号器を用いて、軟判定符号化ビット系列から情報ビット系列を復号するとともに、誤り検出復号処理を行い、当該誤り検出結果を伝送路推定処理部24へ出力する。さらに、復号処理部27は、軟判定ビット系列の形で入力された、M系統の符号化ビット系列に対する復号器から見た信頼度を表す外部値系列をシンボル期待値計算部26へ出力する。
シンボル期待値計算部26は、復号処理部27から出力される外部値を用いて、送信変調シンボル系列の期待値を計算し、計算した送信変調シンボル系列を等化処理部23および伝送路推定処理部24へ出力する。具体的には、つぎのような計算を行う。はじめに、外部値系列から、各ビットの事前確率を計算する。事前確率は、符号化ビット系列中の各ビットに対しての、ビット値が0である確率、および、ビット値が1である確率を表す。この計算は、たとえば、k番目のビットに対する復号処理部27から出力された外部値をLで表し、Lの値が正である場合をビット0に対応させ、Lの値が負である場合をビット1に対応させると、以下の式(3)、(4)に従って計算することができる。
(ビット番号kが1である事前確率)= eL/(eL + 1) …(3)
(ビット番号kが0である事前確率)= 1/(eL + 1) …(4)
つぎに、事前確率を用いて送信変調シンボルの期待値を計算する。送信変調シンボルの期待値は、たとえば、送信変調シンボルの候補として4通りの信号点を有し、1送信変調シンボル当たり2ビットを伝送するQPSK変調が用いられていると仮定し、QPSK変調の送信変調シンボルの候補をそれぞれS(00),S(01),S(10),S(11)のように表し、各送信変調シンボルの候補の生起確率をそれぞれP(00),P(01),P(10),P(11)で表すと、以下の式(5)で計算することができる。
(送信変調シンボルの期待値)
= S(00)*P(00)+S(01)*P(01)+S(10)*P(10)
+S(11)*P(11)… (5)
また、各送信変調シンボルの候補の生起確率は、たとえば、P(01)の場合は以下の式(6)に従って計算することができる。
P(01)
=(1番目のビットが0である確率)*(2番目のビットが1である確率)…(6)
以降、上述の、伝送路推定処理部24、等化処理部23、軟ビット計算部25、シンボル期待値計算部26および復号処理部27の処理を所定の回数繰り返し、最終的に復号処理部27で復号された情報ビット系列が、送信機から送信された情報ビット系列として出力される。
このように、本実施の形態では、等化処理および復号処理を繰り返す受信機が、伝送路推定値を更新する際に、復号処理部27の誤り検出の結果を参照し、復号結果に誤りを含んでいた送信アンテナから順に順序付けを行い、その順序付け結果に基づいて受信信号系列からレプリカ減算を実行し、レプリカ減算後の受信信号系列を用いて伝送路推定を実行する構成とした。さらに、伝送路推定が行われた送信アンテナに関する伝送路推定値を、他の送信アンテナに関する伝送路推定に反映させるようにした。このため、初期伝送路推定精度が悪いと考えられる送信アンテナの伝送路推定を優先的に実行することになり、後の伝送路推定におけるレプリカ減算による残留誤差成分を抑圧することが可能になる。その結果、伝送路推定精度が向上し、良好な通信を実現することが可能になる。
なお、本実施の形態では、等化処理部23が、干渉キャンセル処理および重み係数乗算処理を周波数領域で実行する構成としたが、等化処理部23の処理は、これに限定されずあらゆる構成をとることが可能である。例えば、干渉キャンセル処理および重み係数乗算処理を時間領域で実行する構成としてもよい。また、等化技術として良く知られているMAP等化器を用いてもよい。
また、本実施の形態では、シンボル期待値計算部26が、送信変調シンボル系列の期待値を計算する際に用いる各送信変調シンボルの候補の生起確率を、単に送信変調シンボル候補に内包されるビットの事前確率の積として計算したが、これに限らず、送信変調シンボル候補に内包されるビット間の相関性、または、送信変調シンボルの候補に内包されるビットを含む外部値系列の一部のビット間の相関性などを用いて計算してもよい。また、外部値系列のビット間の相関性を考慮し、ビットの事前確率の積ではなく、ビット系列の事前確率を用いて計算するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、第二の信号選択部37が、復号処理部27から受け渡される誤り検出結果を参照しながら送信アンテナ間の順序付けを行う構成としたが、送信アンテナの順序付けのみならず、各送信アンテナについて伝送路推定を行うかどうかを判断するようにしてもよい。この場合、伝送路推定を行わないと判断した送信アンテナについては、初期伝送路推定処理部30の処理結果を以降の処理でも伝送路推定値として用いることになる。このような構成にすることにより伝送路推定に係る処理を減らすことができ、受信機の回路規模を削減することができる。
実施の形態2.
図6は、本発明にかかる送信機の実施の形態2の機能構成例を示す図である。図6に示すように本実施の形態の送信機は、符号化処理部60と、信号分割処理部61と、送信信号生成部62−1〜62−Mと、送信アンテナ15−1〜15−Mと、で構成される。実施の形態1と同一の機能を有するものは、同一の番号を付してその説明を省略する。
本実施の形態では、符号化処理部60が、情報ビット系列に対し、当該情報ビット系列が正しく復号されているかどうかを確認するために付加されるパリティビットを付加する。その後、符号化処理部60は、パリティビットが付加された情報ビット系列に対して、畳み込み符号や、ターボ符号、LDPC符号等の誤り訂正符号化が行い、符号化ビット系列を生成し、符号化ビット系列を信号分割処理部61へ出力する。また、符号化処理部60は、符号化ビット系列に対して必要に応じてインタリーブ処理を行う。
信号分割処理部61は、符号化処理部60から出力された符号化ビット系列をM系統の符号化ビット系列に分割し、それぞれ、送信信号生成部62−1〜62−Mへ出力する。送信信号生成部62−1〜62−Mは、信号分割処理部61から出力された符号化ビット系列に対し所定の送信信号生成処理を施した後、それぞれ同一の枝番号を有する送信アンテナ15−1〜15−Mへ処理結果を出力する。送信信号生成部62−1〜62−Mは、M系統の分割された符号化ビット系列に対して、それぞれが同様の処理を実行する。そのため、以降の説明では、代表して送信信号生成部62−1についてのみ説明する。
送信信号生成部62−1は、誤り検出符号化処理部63−1と、シンボル生成部12−1と、D/A変換部13−1と、アナログ信号処理部14−1と、で構成される。シンボル生成部12−1,D/A変換部13−1,アナログ信号処理部14−1は、それぞれ実施の形態1のシンボル生成部12−1,D/A変換部13−1,アナログ信号処理部14−1と同様の機能を有する。
誤り検出符号化処理部63−1は、信号分割処理部61から出力された符号化ビット系列に対し、受信機側で送信アンテナ15−1から送信された符号化ビット系列が正しく推定されたかどうかを判定することができるように、パリティビットを付加し、パリティビットが付加された符号化ビット系列を、シンボル生成部12−1へ出力する。以降、図1の送信信号生成部10−1のシンボル生成部12−1,D/A変換部13−1,アナログ信号処理部14と同様の処理を実行し、送信アンテナ15−1へ、高周波アナログ送信信号を出力する。送信アンテナ15−1は、入力された高周波アナログ送信信号を送信する。
図7は、本実施の形態の受信機の機能構成例を示す図である。本実施の形態の受信機は、実施の形態1の受信機の軟ビット計算部25,シンボル期待値計算部26,復号処理部27を、それぞれ軟ビット計算部25a,シンボル期待値計算部26a,復号処理部27aに替え、誤り検出復号化処理部70を追加する以外は、実施の形態1の受信機と同様である。実施の形態1と同一の機能を有するものは、同一の番号を付してその説明を省略する。
つづいて、本実施の形態の受信機の処理を説明する。受信アンテナ20−1〜20−Nが高周波アナログ信号を受信し、アナログ信号処理部21−1〜21−N,A/D変換部22−1〜22−Nは、それぞれ実施の形態1のアナログ信号処理部21−1〜21−N,A/D変換部22−1〜22−Nと同様の所定の処理を行い、A/D変換部22−1〜22−Nは、N系統の受信信号系列を等化処理部23および伝送路推定処理部24へ出力する。伝送路推定処理部24は、N系統の伝送路推定値を算出して、伝送路推定値を等化処理部23へ出力し、等化処理部23は、伝送路推定値と受信信号系列に基づいて実施の形態1の等化処理部23と同様に送信変調シンボル系列を推定する。そして、等化処理部23は、送信変調シンボル系列の推定値を軟ビット計算部25aへ出力する。
軟ビット計算部25aでは、図2における軟ビット計算部25と同じ処理によって軟判定符号化ビット系列を生成するが、軟ビット計算部25と異なり、当該軟判定符号化ビット系列を復号処理部27a、誤り検出復号化処理部70、および、シンボル期待値計算部26aへ出力する。
誤り検出復号化処理部70は、軟ビット計算部25aから出力される軟判定符号化ビット系列の符号を判別して硬判定符号化ビット系列に変換する。その後、誤り検出復号化処理部70は、送信機の検出符号化処理部63−1〜63−Mが付加した誤り検出符号に対応する誤り検出復号を実施する。この処理によって、受信機が推定する信号分割処理部61が分割したM系統のそれぞれの符号化ビット系列中に、誤りが存在するかどうかを判別できる。M系統の分割された符号化ビット系列それぞれに対する誤り検出結果を伝送路推定処理部24へ出力する。
シンボル期待値計算部26aでは、実施の形態1のシンボル期待値計算部26と同様の処理を、軟ビット計算部25aから出力される軟判定ビット系列に対して実行し、送信変調シンボル系列の期待値を算出する。そして、算出された送信変調シンボル系列の期待値を等化処理部23および伝送路推定処理部24へ出力する。
以降、伝送路推定処理部24、等化処理部23、軟ビット計算部25a、シンボル期待値計算部26aおよび誤り検出復号化処理部70の処理を、所定の回数繰り返し、軟ビット計算部25aは、最後の繰り返しで算出した軟判定ビット系列を復号処理部27aへ出力する。復号処理部27aは、付加されているパリティビットを除去し、信号分割処理部61がM系統に分割した符号化ビットを一つの符号化ビット系列にまとめた後、所定の復号処理を実行する。この復号処理に用いる復号器は、実施の形態1の復号処理部27と異なり、必ずしも軟入力軟出力復号器である必要はなく、どのような復号器を用いてもよい。そして、復号処理部27aは、復号結果を情報ビット系列として出力する。本実施の形態の以上に示した以外の処理は、実施の形態1と同様である。
このように、本実施の形態では、送信機が、誤り訂正符号化処理が行われた符号化ビット系列をM系統の符号化ビット系列に分割し、当該M系統の分割された符号化ビット系列に対し、誤り検出符号化処理を実施する構成とした。また、受信機が、等化処理と復号処理の間で繰り返し処理は行わず、伝送路推定処理部24、等化処理部23、軟ビット計算部25a、シンボル期待値計算部26aおよび誤り検出復号化処理部70の間でのみ繰り返し処理を実行し、最終的に得られた軟判定ビット系列を用いて復号処理を行うこととした。このため、復号処理を繰り返すことなく、本発明の特徴である、送信アンテナ間の順序付けを適用した伝送路推定処理を繰り返し実行することができる、通信品質の劣化を抑えながら、実施の形態1に比べ大幅に受信機の演算量を削減することができる。
なお、本実施の形態では、上述のように、復号処理を繰り返さないことにより受信機の演算量削減効果を実現しているが、復号処理部27aに実施の形態1と同様に軟入力軟出力復号器を用い、復号処理が終了した後、外部値を伝送路推定処理部24およびシンボル期待値計算部26aへ受け渡す構成とし、再度本実施の形態の受信処理を実行する構成としてもよい。この場合、伝送路推定処理部24、等化処理部23、軟ビット計算部25a、シンボル期待値計算部26aおよび誤り検出復号化処理部70の間での繰り返し処理と、復号処理部27aを含んだ繰り返し処理の2通りの繰り返し処理を実行することとなり、結果的に非常に精度の高い情報ビット系列の復号が可能になる。
また、本実施の形態の誤り検出符号化処理部63−1〜63−Nが、誤り検出符号化と誤り訂正符号化の両方を行い、受信機の誤り検出復号化処理部70が誤り訂正復号化と誤り検出復号化を行う構成にしてもよい。この場合、送信系列毎に誤り訂正符号化を実施することになるため、誤り検出精度がより向上し、良好な伝送路推定精度を達成できる。
実施の形態3.
図8は、本発明にかかる受信機の実施の形態3の伝送路推定処理部24aの機能構成例を示す図である。本実施の形態の受信機は、実施の形態1の受信機の伝送路推定処理部24を伝送路推定処理部24aに替える以外は、実施の形態1の受信機と同様である。また、本実施の形態の送信機の機能構成は実施の形態1と同様である。以下、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については、実施の形態1と同一の符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、本実施の形態の伝送路推定処理部24aは、N系統の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38a−1〜38a−Nで構成される。N系統の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38a−1〜38a−Nは、それぞれN系統の各々に対応する受信信号系列に対して、同様の処理を行うため、以下では、代表して受信アンテナ毎伝送路推定処理部38a−1についてのみ説明する。
図8に示すように本実施の形態の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38a−iは、実施の形態1の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−iの第二の信号選択部37に替えて第三の信号選択部80を備える以外は、実施の形態1の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−iと同様である。
第三の信号選択部80は、復号処理部27から出力される誤り検出結果に加えて、初期伝送路推定結果を用いて、伝送路推定を行う送信アンテナの順序を決定する。初期伝送路推定処理部30は、実施の形態1と同様の処理を行い、伝送路推定を実行し、伝送路推定値を第一の信号選択部31へ出力するとともに第三の信号選択部80に対して出力する。第三の信号選択部80は、初期伝送路推定処理部30から出力された各送信アンテナに対応する伝送路推定値を、それぞれ2乗し、その2乗値が小さいほうから順に、M系統の送信アンテナを順序付ける。同時に、第三の信号選択部80は、復号処理部27から出力される誤り検出結果を参照し、前述の伝送路推定値の2乗値による順序付けとは別に、M系統の送信アンテナを順序付ける。第三の信号選択部80は、これら二つの送信アンテナの順序付け結果に基づいて、最終的な送信アンテナの順序付けを実施する。
最終的な送信アンテナの順序付け方法としては、たとえば、はじめに、復号処理部27からの出力である誤り検出結果を参照して実行された送信アンテナの順序付けに従い、M系統の送信アンテナを順序付ける。このとき、誤り検出の結果は、誤りの有無の二通りのみであるため、誤り有りの送信アンテナ間,誤り無しの送信アンテナ間についての順序付けはできない。そこで、伝送路推定値の2乗値による送信アンテナの順序付けに基づいてさらに、誤り有りの送信アンテナ間の順序付け、および、誤り無しの送信アンテナ間の順序付けを実行する。そして、第三の信号選択部80は、最終的な順序付けの結果に従って順序付けたM系統の送信変調シンボル系列の期待値を、レプリカ作成部32および重み計算部34へ出力する。以降の処理は、実施の形態1の受信機と同様の処理を行い、最終的な復号結果として、情報ビット系列が復号される。本実施の形態のこれ以外の処理は実施の形態1と同様である。
このように、本実施の形態では、伝送路推定処理部24aが、復号処理部27から出力される送信アンテナに関する誤り検出結果のみならず、初期伝送路推定結果にも基づいて、よりきめ細かい送信アンテナの順序付けを実行できる構成とした。このため、実施の形態1に比べ精度の高い伝送路推定が実行でき、良好な通信を提供することが可能になる。また、初期伝送路推定結果を参照することで、受信アンテナ毎に異なる送信アンテナの順序付けを行うことも可能になる。そのため、更に良好な通信品質を実現可能である。
なお、本実施の形態は、上述のように誤り検出結果のみならず初期伝送路推定値の2乗値に基づいて伝送路推定を実行する送信アンテナの順序付けを行っているが、これに限らず、伝送路推定値の2乗値の替りに、たとえば、伝送路推定値の絶対値や送信変調シンボルのマッピングと送信変調シンボルの期待値との誤差電力または誤差振幅など、その他の基準値を用いるようにしてもよい。また、送信アンテナの順序付けの際には、初期伝送路推定結果をはじめに参照し、その後、誤り検出結果を反映させるという手順で順序付けを行っても良い。
また、本実施の形態では、実施の形態1の送受信機構成に伝送路推定処理部24aを適用した場合について説明したが、実施の形態2の送信機および受信機の構成で、実施の形態2の送路処理推定処理部24を伝送路推定処理部24aに替えて、本実施の形態と同様に初期伝送路推定値を参照した送信アンテナの順序付けを行うようにしてもよい。
実施の形態4.
図9は、本発明にかかる受信機の実施の形態4の伝送路推定処理部24bの機能構成例を示す図である。本実施の形態の受信機は、実施の形態1の送信機の伝送路推定処理部24を伝送路推定処理部24bに替える以外は、実施の形態1の受信機と同様である。また、本実施の形態の送信機の機能構成は実施の形態1と同様である。以下、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については、実施の形態1と同一の符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、本実施の形態の伝送路推定処理部24bは、N系統の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38b−1〜38b−Nで構成される。また、受信アンテナ毎伝送路推定処理部38b−iは、実施の形態1の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−iの第二の信号選択部37を第四の信号選択部90に替え、2乗値計算部91を追加する以外は、実施の形態1の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−iと同様である。また、本実施の形態の伝送路推定処理部24bでは、シンボル期待値計算部26から出力される送信変調シンボル系列の期待値が、第四の信号選択部90および2乗値計算部91に入力され、2乗値計算部91の処理結果が第四の信号選択部90へ入力されている。
つづいて、本実施の形態の伝送路推定処理部24bの処理について説明する。A/D変換部22−1〜22−Nは実施の形態1と同様の処理を行い、等化処理部23および伝送路推定処理部24bに受信信号系列を出力する。等化処理部23は、実施の形態1と同様の所定の処理を行う。その後、軟ビット計算部25,復号処理部27が、実施の形態1と同様に軟判定系列の計算,所定の復号処理をそれぞれ実施し、シンボル期待値計算部26が、実施の形態1と同様にM系統の送信変調シンボル系列の期待値が計算して、当該送信変調シンボル系列の期待値を等化処理部23および伝送路推定処理部24bへ出力する。
伝送路推定処理部24bの2乗値計算部91は、シンボル期待値計算部26から出力された送信変調シンボル系列の期待値について、それぞれその2乗値を計算し、送信変調シンボル系列毎に累積加算する。そして、2乗値計算部91は、送信変調シンボル系列の期待値の2乗値累積加算値を第四の信号選択部90へ出力する。
第四の信号選択部90は、2乗値計算部91の処理結果である送信変調シンボル系列の期待値の2乗値累積加算値と、復号処理部27の処理結果である誤り検出結果と、に基づいて送信アンテナの順序付け処理を行う。具体的には、たとえば、はじめに、誤り検出結果を参照して、誤り有りの送信アンテナから順に順序付け、さらに、誤り有りの送信アンテナ間、および、誤り無しの送信アンテナ間では、送信変調シンボル系列の期待値の2乗値累積加算値が小さいほうから順に順序付ける。そして、送信アンテナの順序付け結果に従って順序付けたM系統の送信変調シンボル系列の期待値を、レプリカ作成部32および重み計算部34へ出力する。以降、実施の形態1の受信機と同様の処理を実施し、最終的な復号結果として、情報ビット系列が復号される。本実施の形態のこれ以外の処理は実施の形態1と同様である。
このように、本実施の形態では、伝送路推定処理部24bが、復号処理部27から出力される送信アンテナに関する誤り検出結果のみならず、送信変調シンボル系列の期待値の2乗値にも基づいて、よりきめ細かい送信アンテナの順序付けを実行できる構成とした。このため、実施の形態1に比べ精度の高い伝送路推定が実行でき、良好な通信を提供することが可能になる。
なお、本実施の形態では、2乗値計算部91が、送信変調シンボル系列の期待値の2乗値に基づいて送信アンテナの順序付けを行っているが、これに限らず、送信アンテナ間の品質を比較できるような値であれば任意のものを適用できる。たとえば、送信変調シンボル系列の絶対値を累積加算した値に基づいて順序付けを行うようにしてもよい。また、送信変調シンボル系列の期待値の2乗値の累積加算は、送信変調シンボル系列全体の累積加算値を用いる必要は無く、状況に応じて、系列長の一部のみの累積加算値を用いることもできる。この場合、送信アンテナの順序付けに係る演算量を削減することができる。
また、本実施の形態では、実施の形態1の送受信機構成に伝送路推定処理部24bを適用した場合について説明したが、実施の形態2の送信機および受信機の構成で、実施の形態2の伝送路推定処理部24を伝送路推定処理部24bに替えて、本実施の形態と同様に送信変調シンボル系列の期待値の2乗値を参照した送信アンテナの順序付けを行うようにしてもよい。
また、本実施の形態の送信変調シンボル系列の期待値の2乗値を参照した送信アンテナの順序付けを、実施の形態3で説明した、初期伝送路推定処理結果を用いた送信アンテナの順序付けと併用するようにしてもよい。この場合、第四の信号選択部90が、さらに、実施の形態3と同様に初期伝送路推定処理結果に基づいた順序付けも行い、初期伝送路推定処理結果に基づいた順序付けと送信変調シンボル系列の期待値の2乗値による順序付けの間に所定の規則により優先順序を設けるなどして、全体の順序付けを行うようにすればよい。
実施の形態5.
図10は、本発明にかかる受信機の実施の形態5の機能構成例を示す図である。本実施の形態の受信機は、実施の形態1の受信機の伝送路推定処理部24を伝送路推定処理部24cに替える以外は、実施の形態1の受信機と同様である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は、同一の番号を付してその説明を省略する。
図11は、本実施の形態の伝送路推定処理部24cの機能構成例を示す。図11に示すように、本実施の形態の伝送路推定処理部24cは、N系統の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38c−1〜38c−Nで構成される。また、受信アンテナ毎伝送路推定処理部38c−iは、実施の形態1の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38−iの第二の信号選択部37を第五の信号選択部110に替え、2乗値計算部111を追加する以外は、実施の形態1の第二の信号選択部37と同様である。
つづいて、本実施の形態の受信機の動作について説明する。A/D変換部22−1〜22−Nが実施の形態1と同様の処理を行いN系統の受信信号系列を等化処理部23と伝送路推定処理部24へ出力する。等化処理部23,軟ビット計算部25,復号処理部27は、それぞれ実施の形態1と同様の処理を行い、復号処理部27は、算出した外部値系列を、シンボル期待値計算部26へ出力されると同時に、伝送路推定処理部24cにも出力される。また、復号処理部27は、誤り検出結果を伝送路推定処理部24cへ出力する。シンボル期待値計算部26は、外部値系列が入力されると、実施の形態1と同様の処理を行い、送信変調シンボル系列の期待値を生成し、等化処理部23および伝送路推定処理部24cへ出力する。
伝送路推定処理部24cの2乗値計算部111は、復号処理部27から出力される外部値系列を2乗して累積加算することにより累積2乗値を計算し、第五の信号選択部110へ出力する。第五の信号選択部110は、復号処理部27から出力される誤り検出結果と、2乗値計算部111から出力される外部値系列の累積2乗値と、を用いて送信アンテナの順序付けを行う。はじめに、誤り検出結果に基づいて、誤り有りの送信アンテナから順に送信アンテナの順序付けを行う。その後、誤り有りの送信アンテナ間、および、誤り無しの送信アンテナ間を、それぞれ外部値系列の累積2乗値が小さい順に順序付けを行う。そして、その送信アンテナの順序付け結果に基づいて送信変調シンボル系列の期待値をレプリカ作成部32および重み計算部34へ出力する。以降は、実施の形態1の受信機と同様の処理を実行する。また、本実施の形態の送信機の動作は実施の形態1と同様である。
このように、本実施の形態では、伝送路推定処理部24cが、復号処理部27から出力される送信アンテナに関する誤り検出結果のみならず、外部値系列の2乗累積値にも基づいて、よりきめ細かい送信アンテナの順序付けを実行できる構成とした。このため、実施の形態1に比べ精度の高い伝送路推定が実行でき、良好な通信を提供することが可能になる。
また、本実施の形態では、外部値を2乗し、それを全系列に渡って累積加算した累積2乗値に基づいて送信アンテナの順序付けを行うようにしたが、これに限らず、累積2乗値の替りに外部値の絶対値を累積加算した累積加算値に基づいて送信アンテナの順序付けを行うようにしてもよい。
また、本実施の形態の送信変調シンボル系列の期待値の2乗値を参照した送信アンテナの順序付けを、実施の形態3で説明した、初期伝送路推定処理結果を用いた送信アンテナの順序付けと併用するようにしてもよい。この場合、第五の信号選択部110が、さらに、実施の形態3と同様に初期伝送路推定処理結果に基づいた順序付けも行い、初期伝送路推定処理結果に基づいた順序付けと外部値の累積2乗値による順序付けの間に所定の規則により優先順序を設けるなどして、全体の順序付けを行うようにすればよい。
実施の形態6.
図12は、本発明にかかる受信機の実施の形態6の伝送路推定処理部24dの機能構成例を示す図である。本実施の形態の受信機は、実施の形態1の送信機の伝送路推定処理部24を伝送路推定処理部24dに替える以外は、実施の形態1の受信機と同様である。また、本実施の形態の送信機の機能構成は実施の形態1と同様である。以下、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については、実施の形態1と同一の符号を付して説明を省略する。
図12に示すように、本実施の形態の伝送路推定処理部24dは、N系統の受信アンテナ毎伝送路推定処理部38d−1〜38d−Nで構成される。また、受信アンテナ毎伝送路推定処理部38d−iは、実施の形態1の受信アンテナ伝送路推定処理部38−iの重み計算部34,レプリカ作成部32をそれぞれ重み計算部122,レプリカ作成部121に替え、シンボル選択部120,平均化処理部123を追加する以外は、実施の形態1の受信アンテナ伝送路推定処理部38−iと同様である。また、シンボル選択部120には、初期伝送路推定処理部30から初期伝送路推定値が入力され、シンボル期待値計算部26から送信変調シンボル系列の期待値が入力されている。
つづいて、本実施の形態の伝送路推定処理部24dの処理について説明する。A/D変換部22−1〜22−Nは実施の形態1と同様の処理を行い、等化処理部23および伝送路推定処理部24dに受信信号系列を出力する。等化処理部23,軟ビット計算部25,復号処理部27は、それぞれ実施の形態1の等化処理部23,軟ビット計算部25,復号処理部27と同様の処理を行う。
伝送路推定処理部24dのシンボル選択部120は、シンボル期待値計算部26から出力される送信変調シンボル系列の期待値に基づいて、送信変調シンボル系列内のうち伝送路推定に用いるシンボルを選択する。具体的には、たとえば、初期伝送路推定処理部30から出力された初期伝送路推定結果に基づいてマルチパス伝送路等に起因するシンボル間干渉の長さがLシンボルであると判定された場合、シンボル選択部120は、送信変調シンボル系列の期待値を参照し、送信変調シンボル系列の期待値があらかじめ定めるしきい値を連続Lシンボル以上満足するシンボル区間を検出する。このしきい値は、たとえば、送信変調シンボルの期待値が送信変調シンボルのマッピングと一致している場合にしきい値を満たすと判断する手法が考えられる。そして、この検出したシンボル区間に含まれるシンボルを伝送路推定に用いるシンボル区間として選択する。シンボル選択部120は、選択結果をレプリカ作成部121および重み計算部122へ出力する。
レプリカ作成部121,重み計算部122の基本的な処理は、それぞれ実施の形態1のレプリカ作成部32,重み計算部34の処理と同様の処理を行うが、処理の際にはシンボル選択部120から出力される選択結果に基づいて、選択されたシンボル区間に含まれる送信変調シンボル系列の期待値を用いる。
また、シンボル選択部120が、シンボル区間を選択する際に、複数のシンボル区間が選択される場合もある。そこで、本実施の形態では、平均化処理部123が、乗算処理部35の出力である伝送路推定結果を平均化した後に、メモリ36へ出力する。本実施の形態のこれ以外の処理は実施の形態1と同様である。
このように、本実施の形態では、伝送路推定処理部24dが、送信変調シンボル系列の期待値に基づいて、所定のしきい値を満足するシンボル区間のみを伝送路推定に使用する構成とした。このため、送信変調シンボル系列の期待値に関して信頼度が低いシンボル区間を除いて伝送路推定を行うことができ、実施の形態1に比べさらに伝送路推定誤りを抑圧し、良好な通信品質を提供することができる。
なお、本実施の形態では、実施の形態1の受信アンテナ伝送路推定処理部38−iの重み計算部34,レプリカ作成部32をそれぞれ重み計算部122,レプリカ作成部121に替え、シンボル選択部120,平均化処理部123を追加するようにしたが、これに限らず、実施の形態2の受信アンテナ伝送路推定処理部38−iを本実施の形態の受信アンテナ伝送路推定処理部38d−iに替えて、同様に伝送路推定に用いるシンボル区間を選択するようにしてもよい。また、実施の形態3の38a−i,実施の形態4の38b−i,実施の形態5の38c−iの重み計算部37,レプリカ作成部32をそれぞれ重み計算部122,レプリカ作成部121に替え、シンボル選択部120,平均化処理部123を追加して、本実施の形態と同様に伝送路推定に用いるシンボル区間を選択するようにしてもよい。