本発明は、ウエハを加熱するのに用いられるシャフト付きヒータに関する。
従来より、ウエハを加熱するのに用いられるシャフト付きヒータが知られている。こうしたシャフト付きヒータは、一般に真空チャンバ内に設置されて使用される。例えば、特許文献1には、図13に示すように、ウエハを支持可能で抵抗発熱体が埋設されたセラミック基板20と、そのセラミック基板20をアルミナリング112を介して背面側から支持する金属製の筒状シャフト30とを備えたシャフト付きヒータ110が開示されている。筒状シャフト30とアルミナリング112とセラミック基板20とは、ボルト114により固定されている。すなわち、筒状シャフト30のフランジを貫通する貫通孔と、アルミナリング112を貫通する貫通孔と、セラミック基板20の背面に設けられたボルト穴116とを同軸になるように位置決めしたあと、筒状シャフト30のフランジの貫通孔の下方からボルト114を差し込んでボルト穴116に螺合することにより、筒状シャフト30とアルミナリング112とセラミック基板20とを一体化している。また、セラミック基板20の材質としては、窒化アルミニウムなどが例示され、筒状シャフト30の材質としては、アルミニウム合金などが例示されている。ここで、筒状シャフト30とセラミック基板20とをボルト114で締結しているのは、熱膨張係数が窒化アルミニウムとアルミニウム合金とで大きく異なるからである。
特開2005−166368号公報
しかしながら、特許文献1のシャフト付きヒータ110では、筒状シャフト30とアルミナリング112とセラミック基板20とがボルト114で締結されているため、筒状シャフト30とアルミナリング112との微小な隙間やアルミナリング112とセラミック基板20との微小な隙間からガスリークが生じることがあった。このようなガスリークが生じると、筒状シャフト30の内部空間を大気にした場合には真空チャンバの内部空間が大気によって汚染されるおそれがあった。また、前出の微小な隙間は熱障壁となりやすいため、セラミック基板20の熱が筒状シャフト30へ逃げにくく、ウエハの温度を制御しにくいという問題があった。一方、セラミックス製のシャフトを固相接合したシャフト付きヒータも考えられるが、こうしたシャフト付きヒータでは、ガスリークの問題はないものの、接合温度がセラミックスの焼結温度(約2000℃)と同程度に高く、非常に特殊な設備が必要であるという問題があった。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、比較的簡易な製造工程で作製でき、且つ、筒状シャフトの内部空間からガスがリークするのを防止可能で、筒状シャフトから熱を逃がしやすいシャフト付きヒータを提供することを主目的とする。
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明のシャフト付きヒータは、
ウエハを支持可能で抵抗発熱体が埋設された窒化アルミニウム製のセラミック基板と、
該セラミック基板の背面に接合された筒状シャフトと、
を備え、
前記筒状シャフトは、少なくとも前記セラミック基板側の端部がアルミニウム−シリコン合金製であり、該端部が前記セラミック基板の背面に接合されている
ものである。
このシャフト付きヒータでは、筒状シャフトのうちセラミック基板側の端部がアルミニウム−シリコン合金製であり、該端部がセラミック基板の背面に接合されている。このため、筒状シャフト自身の気密化や筒状シャフトとセラミック基板との接合部位の気密化を図ったり、筒状シャフトのうちセラミック基板側の端部の熱膨張係数をセラミック基板の熱膨張係数に近付けたりすることが可能となる。したがって、シャフト付きヒータをチャンバ内に設置したときに、筒状シャフトの内部空間からチャンバの内部空間へのガスのリークを防止することができる。また、筒状シャフトとセラミック基板との間に熱障壁が存在しない。このため、シャフト付きヒータをチャンバ内に設置してプラズマを発生させたときにセラミック基板の中央付近の熱を筒状シャフトを介して効率よく除去することができる。したがって、セラミック基板上の各点の温度差を小さくすることができ、セラミック基板に支持されるウエハの温度を制御しやすくなる。
本発明のシャフト付きヒータにおいて、前記筒状シャフトは、ロウ材なしで前記端部を加熱することにより接合することができる。すなわち、筒状シャフトの少なくとも端部はアルミニウム−シリコン合金製であることから、アルミニウム−シリコン合金の共晶点(577℃)に加熱すると液相が発生するが、それより低い温度で圧力をかけながら加熱することで、合金の接合界面における拡散流動性を高め、且つ、全体の変形を伴わないようにしながら固相接合することができる。ここで、アルミニウム−シリコン合金は、シリコン量が比較的多い方が好ましい。こうすれば、高融点のシリコンが骨格をなし、共晶組成のアルミニウム−シリコン合金が結合材の役目を果たす。そのため、接合に伴う変形が生じにくくなる。なお、筒状シャフトは、接合温度を下げる目的で、アルミニウム−シリコン共晶合金からなるロウ材を用いてセラミックス基板に接合してもよい。
本発明のシャフト付きヒータにおいて、前記筒状シャフトは、全体がアルミニウム−シリコン合金製であり、熱膨張係数が前記セラミック基板の0.9〜1.1倍としてもよい。こうすれば、筒状シャフトとセラミック基板との熱膨張係数の差が僅少なため、筒状シャフトとセラミック基板との接合をより気密化しやすくなる。熱膨張係数がセラミック基板の0.9〜1.1倍を外れる場合には、セラミックス基板に発生する接合時の熱膨張係数の際に伴う残留応力が過大となり、セラミックス基板にクラックが発生するおそれがある。筒状シャフトにアルミニウム−シリコン合金を用いることで、筒状シャフトをセラミック基板と同等の熱膨張係数とすることができるようになる。また、アルミニウム−シリコン合金は、そのアルミニウムとシリコンの組成比に伴い熱膨張係数がアルミニウムの23ppm/Kからシリコンの3ppm/K近傍まで比較的容易に変化させることができるので、本発明に好適な材料といえる。
本発明のシャフト付きヒータにおいて、前記筒状シャフトは、前記セラミック基板側の端部を含むアルミニウム−シリコン合金製の第1パートと、該第1パートの前記セラミック基板とは反対側の端部に接合されたアルミニウム製の第2パートとを有していてもよい。こうすれば、第2パートはアルミニウム製のため、セラミック基板の熱をより効率よく逃がすことができるし、筒状シャフトの全体がアルミニウム−シリコン合金製の場合に比べてコスト的にも有利になる。ここで、「アルミニウム製」とは、純アルミニウムで作製されている場合のほか、アルミニウムを主体とするアルミ合金であって第1パートのアルミニウム−シリコン合金に比べてシリコン含有量が低いもので作製されている場合も含む意である。
このように第1パートと第2パートとを有する筒状シャフトを用いた本発明のシャフト付きヒータにおいて、前記第1パートは、全体がアルミニウム−シリコン合金製であり、熱膨張係数が前記セラミック基板の0.9〜1.1倍としてもよい。こうすれば、筒状シャフトとセラミック基板との熱膨張係数の差が僅少なため、筒状シャフトとセラミック基板との接合をより気密化しやすくなる。
また、第1パートと第2パートとを有する筒状シャフトを用いた本発明のシャフト付きヒータにおいて、前記第1パートは、複数のアルミニウム−シリコン合金製のセグメントが接合されたものであり、前記複数のセグメントは、前記セラミック基板側から前記第2パートに向かって熱膨張係数が窒化アルミニウムに近い値からアルミニウムに近い値まで徐々に高くなるように配設されていてもよい。こうすれば、セラミック基板と筒状シャフトの第1パートとの熱膨張差や筒状シャフトの第1パートと第2パートとの熱膨張差が小さくなるため、発生する熱応力が小さくなり、熱サイクルを長期にわたって繰り返したとしても筒状シャフトの内部空間の気密性を保持することができる。
このとき、前記第1パートは、アルミニウム−シリコン合金製であることから、前記複数のセグメントがロウ材なしで加熱することにより接合することができる。あるいは、前記第1パートは、前記複数のセグメントがアルミニウム−シリコン共晶合金製のロウ材を用いて加熱することにより接合されていてもよい。こうすれば、ロウ材を用いない場合に比べて各セグメントが互いに密着するように押圧する必要がないため、接合作業を簡単に行える。すなわち、ロウ材を用いない場合に比べて接合面の寸法精度が緩くてもよい。また、ロウ材を用いることで、微視的により良いシール性が得られる。また、アルミニウム−シリコン合金製の第1パートとアルミニウム製の第2パートとを接合する際にロウ材を用いて加熱してもよい。アルミニウム製の第2パートは加熱時に押圧すると変形しやすいが、ロウ材を用いることにより押圧する必要がないため、第2パートの変形のおそれがなくなる。
本発明のシャフト付きヒータにおいて、筒状シャフトはアルミニウムとシリコンを含み、アルカリ金属や重金属を含まないものとしてもよい。こうすれば、半導体製造装置に用いた場合にコンタミネーションを発生しない。
本発明のシャフト付きヒータは、種々の製法により作製可能である。例えば、本発明のシャフト付きヒータを作製するにあたり、筒状シャフトのセラミック基板側の端部をセラミック基板の背面に押圧しながら所定の温度に加熱したあと冷却することにより該端部をロウ材なしでセラミック基板の背面に接合させてもよい。ここで、押圧力や温度については、セラミック基板に筒状シャフトが液相接合又は固相接合する数値範囲に設定すればよく、例えば、押圧力は9.8×102〜9.8×103Pa、好ましくは9.8×102〜2.9×103Paの範囲に設定し、温度は500〜580℃、好ましくは520〜560℃の範囲に設定してもよい。あるいは、筒状シャフトのセラミック基板側の端部とセラミック基板との間にロウ材(アルミニウム−シリコン共晶合金からなるロウ材など)を介在させた状態で所定の温度に加熱したあと冷却することにより該端部をセラミック基板の背面に接合させてもよい。
また、筒状シャフトとして、セラミック基板側の端部を含むアルミニウム−シリコン合金製の第1パートと、該第1パートのセラミック基板とは反対側の端部に接合されたアルミニウム製の第2パートとを有するものを採用してもよい。その場合、第1パートと第2パートとを接合して筒状シャフトとしたあと該筒状シャフトとセラミック基板とを接合してもよいし、第1パートとセラミック基板とを接合したあと第1パートと第2パートとを接合してもよいし、第1パートと第2パートとセラミック基板とを同時に接合してもよい。このとき、第1パートとして、複数のアルミニウム−シリコン合金製のセグメントを、熱膨張係数が窒化アルミニウムに近い値からアルミニウムに近い値まで徐々に高くなるように接合したものを採用してもよい。その場合、予め複数のセグメントを接合して第1パートとしたあとセラミック基板や第2パートと接合してもよいし、複数のセグメントを互いに接合すると同時にセラミック基板と該セラミック基板に接するセグメントとを接合してセラミック基板−第1パートのアセンブリとしたあと第1パートと第2パートとを接合してもよいし、複数のセグメントを互いに接合すると同時に第2パートと該第2パートに接するセグメントとを接合して第1パート−第2パートのアセンブリとしたあとセラミック基板と第1パートとを接合してもよい。なお、第1パートと第2パートとを接合する際、第1パートの接合面に設けた凹凸と第2パートの接合面に設けた凹凸とを嵌め合わせた状態で接合してもよい。このとき、第1及び第2パートの熱膨張係数差を考慮して、常温では第2パートの凹凸を第1パートの凹凸に比べて小さめに設計しておき、接合温度に達したとき又は接合温度に達する直前に第2パートが第1パートよりも大きく膨張して第1パートの凹凸と第2パートの凹凸とが嵌り合うようにしてもよい。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は実施例1のシャフト付きヒータ10の断面図、図2は筒状シャフト30の斜視図、図3は筒状シャフト30の寸法入り断面図、図4はシャフト付きヒータ10の製造工程図である。
シャフト付きヒータ10は、プラズマCVD工程などの加熱処理を施すウエハを加熱するのに用いられるものであり、図示しない真空チャンバ内に設置される。このシャフト付きヒータ10は、ウエハを支持可能で抵抗発熱体22が埋設されたセラミック基板20と、このセラミック基板20の背面に接合された筒状シャフト30とを備えている。
セラミック基板20は、窒化アルミニウム製の円板部材である。このセラミック基板20は、抵抗発熱体22としてモリブデン抵抗発熱体が埋設されている。また、セラミック基板20の背面の中央付近には、第1孔24と第2孔26が開けられている。抵抗発熱体22は、セラミック基板20の略中央に位置する一端22aから端を発し、いわゆる一筆書きの要領でセラミック基板20のほぼ全面にわたって配線されたあと、セラミック基板20の略中央に位置する他端22bに至っている。この抵抗発熱体22の一端22a及び他端22bは、それぞれセラミック基板20の第1孔24及び第2孔26から外部に露出している。なお、セラミック基板20には、高周波電極として平板電極23も埋設されている。
筒状シャフト30は、全体がアルミニウム−シリコン合金製の部材である。この筒状シャフト30は、途中に段差32を有しており、段差32を境にしてセラミック基板側が大径部34、セラミック基板20と反対側が小径部36となっている。大径部34の端部及び小径部36の端部には、それぞれフランジ34a,36aが形成されている。そして、筒状シャフト30のうち大径部34の端部がセラミック基板20の背面に接合されている。筒状シャフト30の内部には、抵抗発熱体22の一端22a及び他端22bにそれぞれロウ接合されたニッケル製の給電ロッド38,38が軸方向に沿って設けられている。セラミック基板20の抵抗発熱体22には、この給電ロッド38,38を介して電力が供給される。
次に、このシャフト付きヒータ10の製造方法について説明する。まず、セラミック基板20として、直径340mm、厚み18mmの窒化アルミニウム製のものを準備した。このセラミック基板20の熱膨張係数は5.0ppm/Kであった。そして、このセラミック基板20の背面つまり筒状シャフト30との接合面を、表面粗さRaが0.5μmとなるように研磨加工した。なお、このようなセラミック基板20は、例えば特開2006−232576の実施例の記載に準じて作製可能である。一方、20wt%Al−80wt%Si合金(熱膨張係数4.9ppm/K)製のインゴットをスプレーフォーミング法で作製し、このインゴットから切削加工により図3に示す形状及び寸法を有する筒状シャフト30を作製した。この筒状シャフト30の大径部34の端部表面つまりセラミック基板20との接合面を、表面粗さRaが0.5μmとなるように研磨加工した。続いて、図4に示すように、筒状シャフト30の大径部34の端部が下になるようにして、セラミック基板20の背面に筒状シャフト30を載せた。このとき、筒状シャフト30の軸中心とセラミック基板20の中心とが一致するようにした。そして、この状態で不活性ガス雰囲気(ここでは窒素ガス雰囲気、減圧100Pa以下)の真空炉中に入れ、大径部34の端部に形成されたフランジ34aを円筒状のアルミナ治具40で10kg(1000Pa)の荷重をかけて押圧しながら540℃に加熱し、1時間保持した後、炉内で冷却した。こうすることにより、筒状シャフト30の大径部34の端部がセラミック基板20の背面に接合された。20wt%Al−80wt%Si合金中の共晶成分(88wt%Al−12wt%Si)が540℃での押圧により拡散流動し半液相化することにより、窒化アルミニウムとの界面で、主として固相接合(拡散接合)により接合される。なお、アルミナ治具40とフランジ34aとの押圧面には、予め窒化ホウ素パウダをスプレーして両者がくっつくのを防止した(以下の実施例でも同じ)。
次に、こうして得られたシャフト付きヒータ10の性能について説明する。ヘリウムリークディテクタ(型名:MSE−2000、メーカ名:島津製作所)を用いて、フード法により、筒状シャフト30の内部を真空引きした状態で筒状シャフト30の外側をヘリウムガス雰囲気とすることでセラミック基板20と筒状シャフト30との接合面の気密性を測定したところ、リーク量は1×10-9Pa・m3/sec以下であった。この結果から、シャフト付きヒータ10のセラミック基板20と筒状シャフト30との接合面は極めて良好な気密性を有していることがわかった。
また、シャフト付きヒータ10を図示しない真空チャンバ内に設置し、窒素ガス50Pa中でセラミック基板20に埋設された抵抗発熱体22に給電ロッド38,38を介して電力を供給して350℃に昇温した。このときのセラミック基板20の温度分布を赤外線温度モニタ(型名:JTG6400、メーカ名:JEOL)を用いて測定したところ、プラズマなしで6℃、プラズマありで8℃であった。ここで、温度分布とは、セラミック基板20のウエハ載置面のφ300mmの領域を赤外線温度モニタで測定したときの最高温度と最低温度との差をいう。この結果から、プラズマの有無によって温度分布にほとんど差がみられないことがわかった。なお、プラズマは、セラミック基板20に埋設された平板電極23と真空チャンバ内に設置された平板電極(図示せず)との間に13.56MHz、1200Wの高周波電力を印加することにより発生させた。
更に、室温と450℃の間の熱サイクルを1000回繰り返した後に先ほどと同様にして気密性を測定したところ、リーク量は依然として1×10-9Pa・m3/sec以下であり、良好な気密性を維持していた。
以上詳述した実施例1のシャフト付きヒータ10によれば、真空チャンバ内に設置したときに、筒状シャフト30の内部空間から真空チャンバの内部空間へのガスのリークを防止することができる。また、筒状シャフト30とセラミック基板20との間に熱障壁が存在しないため、シャフト付きヒータ10を真空チャンバ内に設置してプラズマを発生させたときにセラミック基板20の中央付近の熱を筒状シャフト30を介して効率よく除去することができ、セラミック基板20上の各点の温度差を小さくすることができる。これにより、セラミック基板20に支持されるウエハの温度を制御しやすくなる。
比較例
図13は比較例のシャフト付きヒータ110の断面図である。シャフト付きヒータ110は、実施例1と同様のセラミック基板20と、そのセラミック基板20をアルミナリング112(直径120mm、内径80mm、厚み10mm)を介して背面側から支持する実施例1と同様の筒状シャフト30とを備えている。このシャフト付きヒータ110は以下のようにして製造した。すなわち、筒状シャフト30の大径部34の端部に設けられたフランジ34aを貫通する貫通孔と、アルミナリング112を貫通する貫通孔と、セラミック基板20の背面に設けられたボルト穴116とを同軸になるように位置決めしたあと、フランジ34aの貫通孔の下方からボルト114を差し込んでボルト穴116に螺合することにより、筒状シャフト30とアルミナリング112とセラミック基板20とを一体化した。
次に、こうして得られたシャフト付きヒータ110の性能について説明する。実施例1と同様にしてセラミック基板20と筒状シャフト30との接合面の気密性を測定したところ、リーク量が1×10-3Pa・m3/sec以上であり、ヘリウムガスの漏れが確認された。また、実施例1と同様にして350℃におけるセラミック基板20の温度分布を測定したところ、プラズマなしで6℃、プラズマありで12℃であり、プラズマの有無により温度分布に大きな差があることがわかった。
図5は実施例2のシャフト付きヒータ50の断面図、図6は筒状シャフト60の寸法入り断面図、図7及び図8はシャフト付きヒータ50の製造工程図である。
シャフト付きヒータ50は、実施例1の筒状シャフト30の代わりに筒状シャフト60を採用した以外は、実施例1と同様であるため、実施例1と同じ構成要素については同じ符号を付してその説明を省略する。
筒状シャフト60は、途中に段差62を有しており、段差62を境にしてセラミック基板側が大径部64、セラミック基板20と反対側が小径部66となっている。大径部64の端部及び小径部66の端部には、それぞれフランジ64a,66aが形成されている。そして、筒状シャフト60のうち大径部64の端部がセラミック基板20の背面に接合されている。また、筒状シャフト60は、第1パートP1と第2パートP2とを接合することにより作製されたものである。第1パートP1は、大径部64の端部から段差62の手前までの部分であり、アルミニウム−シリコン合金製である。この第1パートP1のセラミック基板側とは反対側の端面P1aは、外周側に比べて内周側が突出した凹凸形状となっている。一方、第2パートP2は、大径部64の一部と小径部66の全体を含む部分であり、アルミニウム製である。この第2パートP2の第1パートP1に対向する側の端面P2aは、外周側に比べて内周側が没入した凹凸形状となっている。そして、第1パートP1の端面P1aと第2パートP2の端面P2aとは、互いの凹凸が隙間なく嵌り合った状態で接合されている。このような接合形態は、インロー継ぎと呼ばれる。なお、筒状シャフト60の寸法を図6に示した。
次に、このシャフト付きヒータ50の製造方法について図7及び図8に基づいて説明する。まず、実施例1と同様のセラミック基板20を準備した。また、20wt%Al−80wt%Si合金(熱膨張係数4.9ppm/K)製のインゴットをスプレーフォーミング法で作製し、このインゴットから切削加工により第1パートP1を作製した。このとき、第1パートP1の端面P1aを、外周側に比べて内周側が突出した凹凸形状になるように切削加工した。そして、第1パートP1のセラミック基板20との接合面を、表面粗さRaが0.5μmとなるように研磨加工した。一方、第2パートP2を耐食アルミニウム伸展材A6061を用いて作製した。このとき、第2パートP2の端面P2aを、外周側に比べて内周側が没入した凹凸形状となるように切削加工した。第1パートP1と第2パートP2は、接合温度で互いの凹凸が嵌り合うように、熱膨張係数差を考慮して、第2パートP2が第1パートP1より小さくなるように寸法を設定した。ここでは、540℃でクリアランスが径方向に0.1mm以下となるように設定した。
続いて、図7に示すように、加熱炉内で、第1パートP1のフランジ64aが下になるようにしてセラミック基板20の背面に第1パートP1を載せ、更に第2パートP2の端面P2aが下になるようにして第1パートP1の端面P1aに第2パートP2を載せた。このとき、第1パートP1及び第2パートP2の軸中心とセラミック基板20の中心とが一致するようにした。この状態では、第2パートP2と第1パートP1は互いの凹凸が嵌り合わないので、円筒状の内側アルミナ治具42で第2パートP2の外周を支持した。そして、この状態で加熱炉を不活性ガス雰囲気とし、第1パートP1のフランジ34aを円筒状の外側アルミナ治具44により10kg(1000Pa)の荷重をかけて押圧しながら540℃に加熱し、540℃に達した時点で内側アルミナ治具42により第2パートP2の段差62に4kg(1300Pa)の荷重をかけて押圧しながら540℃まで加熱した。540℃に到達するより前に、第2パートP2は熱膨張により端面P2aの凹凸が広がり、図8に示すように、重力の作用によって下がって第1パートP1の凹凸に嵌り合った。その後、540℃で1時間保持した後、炉内で冷却した。こうすることにより、第1パートP1のフランジ側の端部がセラミック基板20の背面に接合されると共に、第1パートP1と第2パートP2とが接合された。
次に、こうして得られたシャフト付きヒータ50の性能について説明する。実施例1と同様にしてセラミック基板20と筒状シャフト60との接合面の気密性を測定したところ、リーク量は1×10-9Pa・m3/sec以下であり、良好な気密性を有していた。また、実施例1と同様にして350℃におけるセラミック基板20の温度分布を測定したところ、プラズマなしで6℃、プラズマありで7℃であり、プラズマの有無により温度分布にほとんど差がなかった。更に、室温と450℃の間の熱サイクルを1000回繰り返した後に気密性を測定したところ、リーク量は5×10-9Pa・m3/secであった。
以上詳述した実施例2のシャフト付きヒータ50によれば、実施例1の効果に加えて以下の効果も得られる。すなわち、第1パートP1と第2パートP2との熱膨張係数差を利用して焼き嵌めの効果を得ることができる。また、内側アルミナ治具42による第2パートP2の押圧面(段差62)を端面P2aの直近にすることにより、接合面に直接押圧力が掛かり易くなり、しかも押圧面以外の部分(中空部分やフランジ部分)の高温加熱時の加重による変形を防ぐことができる。このため、良好な寸法精度を得ることができる。更に、実施例1と比較してアルミニウム−シリコン合金製のインゴットを小さなサイズにすることができるため、コスト的に極めて有利であると共に、アルミニウム製の第2パートP2はアルミニウム−シリコン合金製の第1パートP1に比べて熱伝導率が大きいため、セラミック基板20の中央付近の熱を筒状シャフト60を介して一層効率よく除去することができる。更にまた、第1パートP1が十分長く設計されている(ここでは70mm以上)ため、第1パートP1と第2パートP2との接合部分の温度が高くなりすぎず、両者の熱膨張係数差に起因する気密性の低下が有効に防止される。70mm未満とすると、シャフト付きヒータを450℃と室温で熱サイクルをかけた場合、300回で2×10-7Pa・m3/secのリークが発生したが、70mm以上では上記のような良好な結果が得られた。
実施例3は、実施例2の第1パートP1の作製方法を変更した以外は、実施例2とほぼ同様であるため、実施例2と同じ構成要素については同じ符号を付してその説明を省略する。図9は実施例3の第1パートP1を作製する際に使用するセグメントの説明図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。また、図10は実施例3の第1パートP1の製造工程図である。なお、実施例3の第1パートP1は高さ28mm、第2パートP2は高さ142mmとした。
この実施例3では、第1パートP1を、アルミニウム−シリコン合金製のリング状の第1〜第4セグメントS1〜S4を接合することにより作製した。第1セグメントS1は20wt%Al−80wt%Siの合金(熱膨張係数4.9ppm/K)、第2セグメントS2は30wt%Al−70wt%Siの合金(熱膨張係数7ppm/K)、第3セグメントS3は55wt%Al−45wt%Siの合金(熱膨張係数12ppm/K)、第4セグメントS4は75wt%Al−25wt%Siの合金(熱膨張係数17ppm/K)を使用した。各セグメントS1〜S4は、いずれもスプレーフォーミング法で作製したインゴットから研削加工して作製したものであり、それぞれの接合面にはシリコン製のピン(位置決め用)を挿入可能な座繰り孔をリング中心に対して点対称となるように2箇所ずつ設けた。なお、第1セグメントS1にはフランジ64aを形成し、第4セグメントS4には凹凸を有する端面P1aを形成した。
そして、図10に示すように、加熱炉内でセラミック基板20の背面に第1セグメントS1から第4セグメントS1までを順番に座繰り孔にピンを差し込みながら積層した。このとき、各セグメントS1〜S4の軸中心とセラミック基板20の中心とが一致するようにした。この状態で、第4セグメントS4に内側アルミナ治具46より4kg(1300Pa)の荷重をかけて押圧すると共にフランジ64aに外側アルミナ治具48により10kg(1000Pa)の荷重をかけて押圧しながら、不活性ガス雰囲気中で540℃に加熱し、1時間保持した後、炉内で冷却した。こうすることにより、第1セグメントS1の端部がセラミック基板20の背面に接合されると共に第1〜第4セグメントS1〜S4がそれぞれ接合された。その後、第1パートP1の端面P1aに、第2パートP2(高さ142mm)を実施例2の製造工程に準じて接合することにより、実施例3のシャフト付きヒータを得た。
こうして得られたシャフト付きヒータについて、実施例1と同様にして気密性を測定したところ、リーク量は1×10-9Pa・m3/sec以下であり、良好な気密性を有していた。また、実施例1と同様にして350℃におけるセラミック基板20の温度分布を測定したところ、プラズマなしで6℃、プラズマありで6℃であり、プラズマの有無により温度分布に差がなかった。更に、室温と450℃の間の熱サイクルを1000回繰り返した後に気密性を測定したところ、リーク量は依然として1×10-9Pa・m3/sec以下であり、良好な気密性を維持していた。
以上詳述した実施例3のシャフト付きヒータによれば、実施例1,2の効果に加えて以下の効果も得られる。すなわち、第1パートP1は熱膨張係数がセラミック基板20に近い値から第2パートP2に近い値まで段階的に徐々に変化しているため、第1パートP1の長さを短くし第2パートP2の長さを長くしても熱膨張差に起因する両パート間の気密性の低下を招くおそれがない。また、第1パートP1に比べて熱伝導率の高い第2パートP2の長さを長くすることができるため、プラズマの有無による温度分布の発生をよりよく抑制することができる。更に、各セグメントS1〜S4の接合面や第1パートP1と第2パートP2との接合面は強固且つ気密な界面になると共に発生する熱応力が小さくなるため、長期の繰り返し熱サイクルの後でも高い気密性が保持される。更に、シャフト部の大部分が熱伝導率の良いアルミニウムでできているため、シャフト部からの熱の逃げが良好であり、プラズマの有無によるプレートの温度変化をよりよく制御できる。
実施例4は、実施例2の第1パートP1の作製方法を変更した以外は、実施例2とほぼ同様であるため、実施例2と同じ構成要素については同じ符号を付してその説明を省略する。図11は実施例4の第1パートP1を作製する際に使用するセグメントの断面図、図12は実施例4のシャフト付きヒータの製造工程図である。なお、実施例4の第1パートP1は、高さ28mm、第2パートP2は高さ142mmとした。
この実施例4では、第1パートP1を、図11に示したリング状の第1〜第4セグメントS11〜S14を接合することにより作製した。各セグメントS11〜S14の材質は実施例3の各セグメントS1〜S4と同じである。また、各セグメントS11〜S14は、いずれもスプレーフォーミング法で作製したインゴットから研削加工して作製したものであり、それぞれの接合面には互いに嵌り合う凹凸を設け、インロー継ぎが可能なようにした。
そして、図12に示すように、加熱炉内でセラミック基板20の背面に、88wt%Al−12wt%Siの合金でできたドーナツ形状の箔(外径100mm、内径91mm、厚み0.05mm)を載せ、そこに第1セグメントS1から第4セグメントS1までを順番に先ほどと同様の箔を挟みながら積層し、更にその上に箔を介して第2パートP2を載せた。このとき、各セグメントS1〜S4の軸中心とセラミック基板20の中心と第2パートP2の軸中心とが一致するようにした。こうした位置決めは、実施例2で用いた内側アルミナ治具42と外側アルミナ治具44を用いることにより行った。このとき、外側アルミナ治具44は、内側アルミナ治具42のガイドとしての役割も果たした。この状態で、各アルミナ治具42,44に荷重をかけることなく、不活性ガス雰囲気中で540℃に加熱し、1時間保持した後、炉内で冷却した。こうすることにより、シャフト付きヒータを得た。
こうして得られたシャフト付きヒータについて、実施例1と同様にして気密性を測定したところ、リーク量が1×10-9Pa・m3/sec以下であり、良好な気密性を有していた。また、実施例1と同様にして350℃におけるセラミック基板20の温度分布を測定したところ、プラズマなしで6℃、プラズマありで6℃であり、プラズマの有無により温度分布に差がなかった。更に、室温と450℃の間の熱サイクルを1000回繰り返した後に気密性を測定したところ、リーク量は依然として1×10-9Pa・m3/sec以下であり、良好な気密性を維持していた。
以上詳述した実施例4のシャフト付きヒータによれば、実施例3の効果に加えて以下の効果も得られる。すなわち、各部品と治具の自重のみで接合することができるため、実施例3に比べて製造工程が簡素化される。
なお、本発明は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した各実施例では、筒状シャフト30,60に段差32,62を設けたが、こうした段差32,62をなくしてストレートなシャフトにしてもよい。
上述した実施例1〜3では、セラミック基板20と筒状シャフト30,60との間にロウ材を用いずに固相接合又は液相接合するとしたが、ロウ材(例えば実施例4の88wt%Al−12wt%Siの合金でできた箔など)を用いて接合してもよい。
上述した実施例3では、セラミック基板20に第1〜第4セグメントS1〜S4を積層し、その状態で加熱して接合することによりセラミック基板20と第1〜第4セグメントS1〜S4とのアセンブリを得るようにしたが、第1〜第4セグメントS1〜S4だけを積層して第1パートP1を作製し、その後、実施例2と同様にしてシャフト付きヒータを作製してもよい。あるいは、第1〜第4セグメントS1〜S4に第2パートP2を積層し、その状態で加熱して接合することにより筒状シャフト60を作製し、その後、実施例1と同様にしてシャフト付きヒータを作製してもよい。
実施例1のシャフト付きヒータ10の断面図。
筒状シャフト30の斜視図。
筒状シャフト30の寸法入り断面図。
シャフト付きヒータ10の製造工程図。
実施例2のシャフト付きヒータ50の断面図。
筒状シャフト60の寸法入り断面図。
シャフト付きヒータ50の製造工程図。
シャフト付きヒータ50の製造工程図。
実施例3で用いる第1〜第4セグメントS1〜S4の説明図で、(a)は断面図、(b)は平面図である。
実施例3で用いる筒状シャフトの製造工程図。
実施例4で用いる第1〜第4セグメントS11〜S14の断面図。
実施例4のシャフト付きヒータの製造工程図。
比較例のシャフト付きヒータ110の断面図。
符号の説明
10,50,110 シャフト付きヒータ、20 セラミック基板、22 抵抗発熱体、22a 一端、22b 他端、23 平板電極、24 第1孔、26 第2孔、30,60 筒状シャフト、32,62 段差、34,64 大径部、34a,36a,64a,66a フランジ、36,66 小径部、38 給電ロッド、40 アルミナ治具、42,46 内側アルミナ治具、44,48 外側アルミナ治具、112 アルミナリング、114 ボルト、116 ボルト穴、P1 第1パート、P1a,P2a 端面、P2 第2パート、S1〜S4,S11〜S14 第1〜第4セグメント。