上記従来の空気調和装置においては、室内電動膨張弁の開度が小さい状態になる場合がある。室内電動膨張弁の開度が小さい状態になると、室内電動膨張弁の開度が大きい状態に比べて、開度変化に対する流量変化の割合が大きくなる。このため、冷媒回路内を循環する冷媒の挙動が不安定になり、ハンチングが生じるという問題がある。このようなハンチングが大きくなると、冷凍サイクル運転における高圧や低圧が乱れてしまい、所望の空調運転を行うことができないおそれがある。
このように、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度になるように膨張弁の開度を制御する空気調和装置では、ハンチングの発生を抑えて安定的に過熱度制御を行うことが望まれている。
本発明の課題は、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度になるように膨張弁の開度を制御する空気調和装置において、ハンチングの発生を抑えて、安定的な過熱度制御を行うことができるようにすることにある。
第1の観点にかかる空気調和装置は、冷媒回路と制御部とを有している。冷媒回路は、圧縮機と放熱器と第1膨張弁と第2膨張弁と蒸発器とが順次接続されることによって構成されている。圧縮機は、冷媒の圧縮を行う。放熱器は、圧縮機において圧縮された冷媒の放熱を行う。第1膨張弁は、放熱器において放熱した冷媒の減圧を行う。第2膨張弁は、第1膨張弁において減圧された冷媒の減圧を行う。蒸発器は、第2膨張弁において減圧された冷媒を蒸発させる。制御部は、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度になるように第2膨張弁の開度を制御する過熱度制御を行う。そして、制御部は、過熱度制御において第2膨張弁の開度が改善開始開度まで小さくなった場合に、第1膨張弁の開度を小さくする第1制御を行う。
この空気調和装置では、第1制御によって第1膨張弁における冷媒の減圧幅を大きくすることができるため、第1膨張弁から第2膨張弁に送られる冷媒の圧力が低くなる。しかも、第1膨張弁における冷媒の減圧によって冷媒が気液二相状態になる場合には、冷媒が液状態の場合よりも第1膨張弁と第2膨張弁との間を流れる際の冷媒の圧力損失が大きくなるため、第1膨張弁から第2膨張弁に送られる冷媒の圧力がさらに低くなる。すると、第1制御の前後における第2膨張弁の開度が同じである場合には、蒸発器の出口における冷媒の圧力が低くなり、蒸発器の出口における冷媒の過熱度が大きくなる傾向になる。このため、過熱度制御を行っている第2膨張弁の開度は、蒸発器の出口における冷媒の過熱度を目標過熱度に維持するために大きくなり、改善開始開度まで小さくなった第2膨張弁の開度を改善開始開度よりも大きくすることができる。
これにより、この空気調和装置では、過熱度制御において第1制御を行うことによって、第2膨張弁の開度変化に対する流量変化の割合が大きい状態が改善されるため、ハンチングの発生を抑えて、安定的な過熱度制御を行うことができる。
第2の観点にかかる空気調和装置は、第1の観点にかかる空気調和装置において、制御部が、過熱度制御において冷媒回路の冷凍サイクル運転における高圧が第1改善禁止圧力よりも低い場合に、第1制御を行う。
第1制御を行うと、第1膨張弁の開度が小さくなるため、少なくとも一時的には、高圧が高くなるおそれがある。そして、高圧が高い運転条件において第1制御を行うことは、高圧を過度に高くするおそれがあるため、好ましいとはいえない。
そこで、この空気調和装置では、高圧が第1改善禁止圧力よりも低い場合だけ第1制御を行うようにしている。
これにより、この空気調和装置では、高圧が高い運転条件においては第1制御が行われなくなり、高圧が安定した状態において第1制御を行うことができる。
第3の観点にかかる空気調和装置は、第1又は第2の観点にかかる空気調和装置において、制御部が、第1制御を行った後に第2膨張弁の開度が改善終了開度まで大きくなった場合に、第1膨張弁の開度を大きくする第2制御を行う。
第1制御によって第1膨張弁と第2膨張弁との間を流れる際の冷媒の圧力損失が大きくなると、圧縮機の消費動力の増大や運転効率の低下が生じるおそれがある。このため、第1制御を行った後に第1制御を行わなくても安定的な過熱度制御を行うことができる状態になっているにもかかわらず、第1制御を行うことは、圧縮機の消費動力の増大や運転効率の低下が生じた状態を維持することになるため、好ましいとはいえない。
そこで、この空気調和装置では、第1制御を行った後に第2膨張弁の開度が改善終了開度まで大きくなった場合に第2制御を行うようにしている。このため、第1制御によって小さくなった第1膨張弁の開度が再び大きくなり、第1膨張弁と第2膨張弁との間を流れる際の冷媒の圧力損失を小さくすることができる。
これにより、この空気調和装置では、第1制御を行った後に第2膨張弁の開度が改善終了開度まで大きくなった場合には第2制御が行われて、第1制御による圧縮機の消費動力の増大や運転効率の低下を抑えることができる。
第4の観点にかかる空気調和装置は、第3の観点にかかる空気調和装置において、改善終了開度が、改善開始開度よりも大きい。
この空気調和装置では、改善終了開度を改善開始開度よりも大きくしているため、第2膨張弁の開度が改善開始開度よりも十分に大きくなり、第1制御が不要な状態になっている場合に第2制御を行うことができる。
これにより、この空気調和装置では、第2制御を行った直後に再び第1制御が必要な状態になることを抑えて、安定的な過熱度制御を行うことができる。
第5の観点にかかる空気調和装置は、第3又は第4の観点にかかる空気調和装置において、制御部が、第1制御を行った後に冷媒回路の冷凍サイクル運転における高圧が第2改善禁止圧力まで高くなった場合にも、第2制御を行う。
第1制御を行うと、第1膨張弁の開度が小さくなるため、少なくとも一時的には、冷媒回路の冷凍サイクル運転における高圧が高くなるおそれがある。このため、第1制御を行うことによって高圧が過度に高くなる場合に第1制御を行った状態を維持することは、好ましいとはいえない。
そこで、この空気調和装置では、第1制御を行った後に高圧が第2改善禁止圧力まで高くなった場合にも第2制御を行うようにしている。このため、第1制御によって小さくなった第1膨張弁の開度が再び大きくなり、高圧が過度に高くなることを抑えることができる。
これにより、この空気調和装置では、第1制御を行った後に第2膨張弁の開度が改善終了開度まで大きくなった場合だけでなく、第1制御を行った後に高圧が第2改善禁止圧力まで高くなった場合にも第2制御が行われて、高圧が過度に高くなることを抑えることができる。
第6の観点にかかる空気調和装置は、第1〜第5の観点のいずれかにかかる空気調和装置において、制御部が、第1制御を行った後に冷媒回路の冷凍サイクル運転における高圧が復旧圧力まで高くなった場合に、第1制御を解除する。
第1制御を行うと、第1膨張弁の開度が小さくなるため、少なくとも一時的には、冷媒回路の冷凍サイクル運転における高圧が高くなるおそれがある。このため、第1制御を行うことによって高圧が過度に高くなる場合に第1制御を行った状態を維持することは、好ましいとはいえない。
そこで、この空気調和装置では、第1制御を行った後に高圧が復旧圧力まで高くなった場合には第1制御を解除するようにしている。このため、第1制御によって小さくなった第1膨張弁の開度が再び大きくなり、高圧が過度に高くなることを抑えることができる。
これにより、この空気調和装置では、第1制御を行った後に高圧が復旧圧力まで高くなった場合は第1制御が行われなくなり、高圧が過度に高くなることを抑えることができる。
第7の観点にかかる空気調和装置は、第1〜第6の観点のいずれかにかかる空気調和装置において、制御部が、放熱器の出口における冷媒の過冷却度が目標過冷却度になるように第1膨張弁の開度を制御する過冷却度制御を行っている。そして、制御部は、第1制御を、目標過冷却度を大きくすることによって行う。
この空気調和装置では、放熱器の出口における冷媒の過冷却度が目標過冷却度よりも小さい場合には、放熱器の出口における冷媒の過冷却度を目標過冷却度に維持するために、過冷却度制御を行っている第1膨張弁の開度が小さくなる。
そこで、この空気調和装置では、第1制御が必要な場合には、過冷却度制御における目標過冷却度を大きくすることによって、第1膨張弁の開度を小さくするようにしている。
これにより、この空気調和装置では、第1膨張弁を用いた過冷却度制御を行いつつ、第1制御を行うことができる。
第8の観点にかかる空気調和装置は、第3〜第5の観点のいずれかにかかる空気調和装置において、放熱器の出口における冷媒の過冷却度が目標過冷却度になるように第1膨張弁の開度を制御する過冷却度制御を行っている。そして、制御部は、第2制御を、目標過冷却度を小さくすることによって行う。
この空気調和装置では、放熱器の出口における冷媒の過冷却度が目標過冷却度よりも大きい場合には、放熱器の出口における冷媒の過冷却度を目標過冷却度に維持するために、過冷却度制御を行っている第1膨張弁の開度が大きくなる。
そこで、この空気調和装置では、第2制御が必要な場合には、過冷却度制御における目標過冷却度を小さくすることによって、第1膨張弁の開度を大きくするようにしている。
これにより、この空気調和装置では、第1膨張弁を用いた過冷却度制御を行いつつ、第2制御を行うことができる。
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
第1の観点にかかる空気調和装置では、過熱度制御において第1制御を行うことによって、第2膨張弁の開度変化に対する流量変化の割合が大きい状態が改善されるため、ハンチングの発生を抑えて、安定的な過熱度制御を行うことができる。
第2の観点にかかる空気調和装置では、高圧が高い運転条件においては第1制御が行われなくなり、高圧が安定した状態において第1制御を行うことができる。
第3の観点にかかる空気調和装置では、第1制御を行った後に第2膨張弁の開度が改善終了開度まで大きくなった場合には第2制御が行われて、第1制御による圧縮機の消費動力の増大や運転効率の低下を抑えることができる。
第4の観点にかかる空気調和装置では、第2制御を行った直後に再び第1制御が必要な状態になることを抑えて、安定的な過熱度制御を行うことができる。
第5の観点にかかる空気調和装置では、第1制御を行った後に第2膨張弁の開度が改善終了開度まで大きくなった場合だけでなく、第1制御を行った後に高圧が第2改善禁止圧力まで高くなった場合にも第2制御が行われて、高圧が過度に高くなることを抑えることができる。
第6の観点にかかる空気調和装置では、第1制御を行った後に高圧が復旧圧力まで高くなった場合は第1制御が行われなくなり、高圧が過度に高くなることを抑えることができる。
第7の観点にかかる空気調和装置では、第1膨張弁を用いた過冷却度制御を行いつつ、第1制御を行うことができる。
第8の観点にかかる空気調和装置では、第1膨張弁を用いた過冷却度制御を行いつつ、第2制御を行うことができる。
以下、本発明にかかる空気調和装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
(1)空気調和装置の構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことによって、室内の冷房に使用される装置である。空気調和装置1は、主として、室外ユニット2と、室内ユニット3と、室外ユニット2と室内ユニット3とを接続する液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6とを有している。すなわち、本実施形態の空気調和装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路10は、室外ユニット2と室内ユニット3と冷媒連絡管5、6とが接続されることによって構成されている。
<室内ユニット>
室内ユニット3は、室内に設置されている。室内ユニット3は、液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6を介して室外ユニット2に接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
次に、室内ユニット3の構成について説明する。室内ユニット3は、主として、冷媒回路10の一部を構成する室内側冷媒回路10aを有している。この室内側冷媒回路10aは、主として、圧縮機31と、第2膨張弁としての室内膨張弁34と、室内熱交換器33と、アキュムレータ35とを有している。
圧縮機31は、冷媒を圧縮する圧縮機である。圧縮機31は、圧縮機用モータ31aによって駆動される容積式圧縮機である。
室内熱交換器33は、冷媒の蒸発器として機能して室内空気を冷却する熱交換器である。室内熱交換器33のガス側は、アキュムレータ35に接続されており、室内熱交換器33の液側は、室内膨張弁34に接続されている。
室内膨張弁34は、室内熱交換器33に流入する冷媒を減圧する電動膨張弁である。室内膨張弁34は、室内熱交換器33の液側と液冷媒連絡管5との間に接続されている。
アキュムレータ35は、冷媒回路10内を循環する冷媒を圧縮機31に吸入される前に一時的に溜めるための容器である。アキュムレータ35は、室内熱交換器33のガス側と圧縮機31の吸入側との間に接続されている。
また、室内ユニット3は、ユニット内に室内空気を吸入して、室内熱交換器33において冷媒と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給するための室内ファン36を有している。室内ファン36は、本実施形態において、室内ファン用モータ36aによって駆動される遠心ファンや多翼ファン等である。
また、室内ユニット3には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室内ユニット3には、吸入圧力センサ38と、吐出圧力センサ39と、吸入温度センサ40と、吐出温度センサ41と、室内熱交液側温度センサ42と、室内熱交ガス側温度センサ43とが設けられている。吸入圧力センサ38は、圧縮機31の吸入圧力Psを検出する圧力センサである。吐出圧力センサ39は、圧縮機31の吐出圧力Pdを検出する圧力センサである。吸入温度センサ40は、圧縮機31の吸入温度Tsを検出する温度センサである。吐出温度センサ41は、圧縮機31の吐出温度Tdを検出する温度センサである。室内熱交液側温度センサ42は、室内熱交換器33の液側(すなわち、冷媒の蒸発器として機能する際の入口)における冷媒の温度Tilを検出する温度センサである。室内熱交ガス温度センサ43は、室内熱交換器33のガス側(すなわち、冷媒の蒸発器として機能する際の出口)における冷媒の温度Tigを検出する温度センサである。
さらに、室内ユニット3は、室内ユニット3を構成する各部の動作を制御する室内側制御部37を有している。そして、室内側制御部37は、室内ユニット3の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータ、メモリや圧縮機用モータ31aを制御するインバータ回路等を有している。室内側制御部37は、室外ユニット2との間で伝送線7aを介して制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
<室外ユニット>
室外ユニット2は、室外に設置されている。室外ユニット2は、液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6を介して室内ユニット3に接続されており、室内ユニット3との間で冷媒回路10を構成している。
次に、室外ユニット2の構成について説明する。室外ユニット2は、主として、冷媒回路10の一部を構成する室外側冷媒回路10bを有している。この室外側冷媒回路10bは、主として、室外熱交換器21と、第1膨張弁としての室外膨張弁22と、レシーバ23とを有している。
室外熱交換器21は、冷媒の放熱器として機能する熱交換器である。室外熱交換器21のガス側は、ガス冷媒連絡管6に接続されており、室外熱交換器21の液側は、室外膨張弁22に接続されている。
室外膨張弁22は、室外熱交換器21から流出する冷媒を減圧する電動膨張弁である。室外膨張弁22は、室外熱交換器21の液側とレシーバ23との間に接続されている。
レシーバ23は、室内膨張弁34と室外膨張弁22との間を流れる冷媒を溜めることが可能な容器である。レシーバ23は、室外膨張弁22と液冷媒連絡管5との間に接続されている。
また、室外ユニット2は、ユニット内に室外空気を吸入して、室外熱交換器21において冷媒と熱交換させた後に、室外に排出するための室外ファン24を有している。室外ファン24は、本実施形態において、室外ファン用モータ24aによって駆動されるプロペラファン等である。
また、室外ユニット2には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室外ユニット2には、室外熱交液側温度センサ26が設けられている。室外熱交液側温度センサ26は、室外熱交換器21の液側(すなわち、冷媒の放熱器として機能する際の出口)における冷媒の温度Tolを検出する温度センサである。
さらに、室外ユニット2は、室外ユニット2を構成する各部の動作を制御する室外側制御部25を有している。そして、室外側制御部25は、室外ユニット2の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、室内ユニット3の室内側制御部37との間で伝送線7aを介して制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。すなわち、室内側制御部37と室外側制御部25との間を接続する伝送線7aとによって、空気調和装置1全体の運転制御を行う制御部7が構成されている。
制御部7は、図2に示すように、各種センサ38〜43、26の検出信号を受けることができるように接続されるとともに、これらの検出信号等に基づいて各種機器及び弁24a、22、31a、36a、34を制御することができるように接続されている。ここで、図2は、空気調和装置1の制御ブロック図である。
<冷媒連絡管>
冷媒連絡管5、6は、空気調和装置1をビル等の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒管であり、設置場所や室外ユニット2と室内ユニット3との組み合わせ等の設置条件に応じて種々の長さや管径を有するものが使用される。
以上のように、圧縮機31、室内熱交換器32及び室内膨張弁34等を有する室内側冷媒回路10aと、室外熱交換器21等を有する室外側冷媒回路10bとが接続されることによって、空気調和装置1の冷媒回路10が構成されている。そして、空気調和装置1は、室内側制御部37と室外側制御部25とから構成される制御部7によって、室外ユニット2及び室内ユニット3の各機器の制御を行うことができるようになっている。
(2)空気調和装置の基本動作
次に、空気調和装置1の基本動作(ここでは、冷房運転)について、図1を用いて説明する。
冷媒回路10内の冷媒は、室内ユニット3の圧縮機31に吸入されて圧縮されて高圧のガス冷媒となる。この高圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡管6を経由して室内ユニット3から室外ユニット2に送られる。室外ユニット2に送られた高圧のガス冷媒は、冷媒の放熱器としての室外熱交換器21に送られる。この高圧のガス冷媒は、室外熱交換器21において、室外ファン24によって供給される室外空気と熱交換を行って放熱することによって凝縮して、高圧の液冷媒となる。この高圧の液冷媒は、第1膨張弁としての室外膨張弁22に送られ、室外膨張弁22において減圧される。室外膨張弁22において減圧された冷媒は、レシーバ23において一時的に溜められた後に、液冷媒連絡管5を経由して室外ユニット2から室内ユニット3に送られる。室内ユニット3に送られた冷媒は、第2膨張弁としての室内膨張弁34によって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となる。この低圧の気液二相状態の冷媒は、冷媒の蒸発器としての室内熱交換器33に送られ、室内熱交換器33において、室内ファン36によって供給される室内空気と熱交換を行って加熱されることによって蒸発して、低圧のガス冷媒となる。この際、室内空気は、室内熱交換器33における冷媒との熱交換によって冷却されて室内に供給される。そして、室内熱交換器33において蒸発した低圧のガス冷媒は、アキュムレータ35に送られ、再び、圧縮機31に吸入される。このようにして、冷房運転が行われる。
(3)室内膨張弁及び室外膨張弁の制御
上記の基本動作中において、制御部7は、冷媒の蒸発器としての室内熱交換器33の出口における冷媒の過熱度SHが目標過熱度SHsになるように第2膨張弁としての室内膨張弁34の開度を制御する過熱度制御を行っている。ここで、室内熱交換器33の出口における冷媒の過熱度SHは、室内熱交ガス温度センサ43によって検出される室内熱交換器33のガス側における冷媒の温度Tigから、室内熱交液側温度センサ42によって検出される室内熱交換器33の液側における冷媒の温度Tilを差し引くことによって得られる。尚、過熱度SHの算出方法は、これに限定されず、例えば、吸入圧力センサ38によって検出される吸入圧力Psを冷媒の飽和温度Teに換算して、温度Tig又は吸入温度センサ40によって検出される吸入温度Tsから、この飽和温度Teを差し引くことによって得るようにしてもよい。
しかし、上記の過熱度制御を行っただけでは、室内膨張弁34の開度が小さい状態になる場合がある。室内膨張弁34の開度が小さい状態になると、室内膨張弁34の開度が大きい状態に比べて、開度変化に対する流量変化の割合が大きくなる。このため、冷媒回路10内を循環する冷媒の挙動が不安定になり、ハンチングが生じるおそれがある。このようなハンチングが大きくなると、冷媒回路10の冷凍サイクル運転(ここでは、冷房運転)における高圧HP(ここでは、圧縮機31の吐出圧力Pd)や低圧LP(ここでは、圧縮機31の吸入圧力Ps)が乱れてしまい、所望の冷房運転を行うことができないおそれがある。
そこで、本実施形態では、ハンチングの発生を抑えて安定的な過熱度制御を行うことができるようにするために、以下に説明するような第1膨張弁としての室外膨張弁22の制御を行うようにしている。ここで、図3は、本実施形態にかかる空気調和装置1の室外膨張弁22の制御を示すフローチャートである。
まず、ステップS1において、上記の過熱度制御を伴う冷媒回路10の冷凍サイクル運転(ここでは、冷房運転)が開始されてから所定の時間t1が経過したかどうかを判定する。ここで、「冷凍サイクルの運転の開始」とは、空気調和装置1の運転が停止している状態から運転が開始される場合だけでなく、室内温度が所定の目標温度に達して圧縮機31の運転が一時的に停止された状態(いわゆるサーモオフ状態)も含んでいる。そして、ステップS1において時間t1が経過した後に、ステップS2に移行する。
次に、ステップS2において、室外膨張弁22の開度(図3における「室外EV開度」)を所定の開度Qに設定する。ここで、開度Qは、全開状態又はそれに近い開度である。例えば、室外膨張弁22の全閉状態を0%とし全開状態を100%として表す場合には、開度Qは、100%又はそれに近い開度に設定される。
次に、ステップS3において、室内膨張弁34の開度(図3における「室内EV開度」)が所定の改善開始開度Xまで小さくなったかどうかを判定する。より具体的には、室内膨張弁34の開度が改善開始開度Xよりも小さく、かつ、高圧HPが所定の第1改善禁止圧力αよりも低い状態が、所定の時間t2継続したかどうかを判定する。ここで、改善開始開度Xは、開度変化に対する流量変化の割合が大きくなってハンチングが生じるおそれがある開度を意味しており、5%〜20%程度の開度に設定される。また、過熱度制御において室内膨張弁34が全閉状態になることを防ぐために下限開度を設定することがあるが、改善開始開度Xは、このような下限開度よりも大きな開度に設定される。また、第1改善禁止圧力αは、高圧HPが安定した状態にあるかどうかを判定するために設定されている。また、時間t2は、室内膨張弁34の開度が改善開始開度Xよりも小さく、かつ、高圧HPが第1改善禁止圧力αよりも低い状態が継続しているかどうかを判定するために設定されている。例えば、時間t2は、数10秒〜数分程度に設定される。そして、ステップS3において、室内膨張弁34の開度が改善開始開度Xよりも小さく、かつ、高圧HPが第1改善禁止圧力αよりも低い状態が、時間t2継続したと判定されるまで、ステップS3の処理が繰り返される(すなわち、室外膨張弁22の開度が開度Qに設定された状態で過熱度制御が行われる)。そして、ステップS3において、室内膨張弁34の開度が改善開始開度Xよりも小さく、かつ、高圧HPが第1改善禁止圧力αよりも低い状態が、時間t2継続したと判定された場合には、ステップS4の処理に移行する。
次に、ステップS4において、室外膨張弁22の開度(図3における「室外EV開度」)を現在開度(ここでは、開度Q)に所定の閉め率Vを乗算して得られる開度に変更する第1制御を行う。ここで、閉め率Vは、0.9〜0.99程度の1未満の値に設定されている。すなわち、この第1制御は、室外膨張弁22の開度を小さくする制御である。尚、室外膨張弁22の開度を小さくする手法は、上記に限定されるものではなく、例えば、現在開度から所定の開度を減算して得るようにしてもよい。そして、この第1制御によって、室外膨張弁22における冷媒の減圧幅が大きくすることができるため、室外膨張弁22から室内膨張弁34に送られる冷媒の圧力が低くなる。しかも、室外膨張弁22における冷媒の減圧によって冷媒が気液二相状態になる場合には、冷媒が液状態の場合よりも室外膨張弁22と室内膨張弁34との間を流れる際の冷媒の圧力損失が大きくなるため、室外膨張弁22から室内膨張弁34に送られる冷媒の圧力がさらに低くなる。すると、第1制御の前後における室内膨張弁34の開度が同じである場合には、冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器33の出口における冷媒の圧力が低くなり、室内熱交換器33の出口における冷媒の過熱度SHが大きくなる傾向になる。このため、過熱度制御を行っている室内膨張弁34の開度は、過熱度SHを目標過熱度SHsに維持するために大きくなり、改善開始開度Xまで小さくなった室内膨張弁34の開度を改善開始開度Xよりも大きくすることができる。このように、過熱度制御において第1制御を行うことによって、室内膨張弁34の開度変化に対する流量変化の割合が大きい状態が改善されるため、ハンチングの発生を抑えて、安定的な過熱度制御を行うことができる。尚、ステップS3において、高圧HPが第1改善禁止圧力αよりも低い状態であるかどうかを判定しているが、これは、第1制御を行うと、室外膨張弁22の開度が小さくなり、少なくとも一時的には、高圧HPが高くなるおそれがあるためである。すなわち、第1制御を行うことによって高圧HPが過度に高くなることを極力抑えるために、高圧HPが第1改善禁止圧力αよりも低い状態であるかどうかを判定し、この判定条件を満たす場合に、第1制御を行うようにしているのである。
次に、ステップS5において、第1制御を行った後に高圧HPが復旧圧力α+β+γまで高い状態になったかどうかを判定する。ここで、復旧圧力α+β+γは、第1制御を行うことによって高圧HPが過度に高くなっているかどうかを判定するために設定されている。復旧圧力α+β+γは、第1改善禁止圧力αに圧力β+γを加算した圧力に設定されている。そして、ステップS5において、高圧HPが復旧圧力α+β+γよりも高い状態になっていると判定された場合には、第1制御を行うことによって高圧HPが過度に高くなっているものと考えられるため、第1制御を行った状態を維持することは、好ましいとはいえない。このため、この場合には、ステップS2の処理に戻して、第1制御を解除して室外膨張弁22の開度をもとの開度Qに戻すようにしている。これにより、第1制御によって小さくなった室外膨張弁22の開度が再び大きくなり、高圧HPが過度に高くなることを抑えることができる。そして、ステップS5において、高圧HPが復旧圧力α+β+γよりも高い状態になっていないと判定された場合には、第1制御を行った状態を維持してもよい。このため、この場合には、ステップS6の処理に移行する。
次に、ステップS6において、上記のステップS4における第1制御が行われた状態で、再度、ステップS3と同様の判定処理を行う。すなわち、ステップS4における第1制御が行われた状態において、さらに、第1制御が必要であるかどうかを判定する。尚、ステップS6の判定処理自体は、ステップS3と同様であるため、ここでは説明を省略する。そして、ステップS6において、室内膨張弁34の開度が改善開始開度Xよりも小さく、かつ、高圧HPが第1改善禁止圧力αよりも低い状態が、時間t2継続したと判定された場合には、ステップS7の処理に移行し、再度、ステップS4と同様の第1制御を行う。すなわち、室外膨張弁22の開度を現在開度(ここでは、開度Q×V)に閉め率Vを乗算して得られる開度まで小さくする第1制御を行い、ステップS5の処理に移行する。これにより、改善開始開度Xまで小さくなった室内膨張弁34の開度が改善開始開度Xよりも大きくなるまで第1制御(すなわち、ステップS5、S6、S7の処理)が繰り返し行われることになる。そして、ステップS6において、上記の判定条件を満たさないと判定された場合には、ステップS8の処理に移行する。
次に、ステップS8において、第1制御(すなわち、ステップS4、S7の処理)を行った後に室内膨張弁34の開度が所定の改善終了開度X+Yまで大きくなったかどうかを判定する。より具体的には、室内膨張弁34の開度が改善終了開度X+Yよりも大きい状態が、所定の時間t3継続したかどうかを判定する。ここで、改善終了開度X+Yは、開度変化に対する流量変化の割合が大きい状態が解消されてハンチングが生じるおそれが少なくなる開度を意味しており、15%〜30%程度の開度に設定される。また、改善終了開度X+Yは、改善開始開度Xよりも大きな開度に設定されている。例えば、改善終了開度X+Yは、開度Yを10%程度の開度に設定することで、改善開始開度Xよりも10%程度大きな開度に設定することができる。また、ステップS8においては、第1制御(すなわち、ステップS4、S7の処理)を行った後に高圧HPが所定の第2改善禁止圧力α+βまで高くなったかどうかを判定する。より具体的には、高圧HPが第2改善禁止圧力α+βよりも高い状態が、時間t3継続したかどうかを判定する。ここで、第2改善禁止圧力α+βは、第1制御を行った後においても高圧HPが安定した状態にあるかどうかを判定するために設定されている。第2改善禁止圧力α+βは、第1改善禁止圧力αに圧力βを加算した圧力に設定されている。また、第2改善禁止圧力α+βは、復旧圧力α+β+γよりも圧力γだけ小さい圧力に設定されている。すなわち、ここでは、第2改善禁止圧力α+βは、第1改善禁止圧力αよりも大きく、かつ、復旧圧力α+β+γよりも小さい圧力に設定されている。また、時間t3は、室内膨張弁34の開度が改善終了開度X+Yよりも大きい状態、又は、高圧HPが第2改善禁止圧力α+βよりも低い状態が継続しているかどうかを判定するために設定されている。例えば、時間t3は、数10秒〜数分程度に設定される。そして、ステップS8において、室内膨張弁34の開度が改善終了開度X+Yよりも大きい状態、又は、高圧HPが第2改善禁止圧力α+βよりも高い状態が、時間t3継続したと判定されるまで、ステップS5〜S8の処理が繰り返される(すなわち、第1制御を伴う過熱度制御が行われる)。そして、ステップS8において、室内膨張弁34の開度が改善終了開度X+Yよりも大きい状態、又は、高圧HPが第2改善禁止圧力α+βよりも高い状態が、時間t3継続したと判定された場合には、ステップS9の処理に移行する。
次に、ステップS9において、室外膨張弁22の開度を現在開度(ここでは、開度Q×V等)に所定の開け率Wを乗算して得られる開度に変更する第2制御を行う。ここで、開け率Wは、1.01〜1.1程度の1より大きい値に設定されている。すなわち、この第2制御は、室外膨張弁22の開度を大きくする制御である。尚、室外膨張弁22の開度を大きくする手法は、上記に限定されるものではなく、例えば、現在開度に所定の開度を加算して得るようにしてもよい。そして、この第2制御によって、第1制御によって小さくなった室外膨張弁22の開度が再び大きくなり、室外膨張弁22と室内膨張弁34との間を流れる際の冷媒の圧力損失を小さくすることができ、また、高圧HPが過度に高くなることを抑えることができる。ところで、第1制御によって室外膨張弁22と室内膨張弁34との間を流れる際の冷媒の圧力損失が大きくなると、圧縮機31の消費動力の増大や運転効率の低下が生じるおそれがある。このため、第1制御を行った後に第1制御を行わなくても安定的な過熱度制御を行うことができる状態になっているにもかかわらず、第1制御を行うことは、圧縮機31の消費動力の増大や運転効率の低下が生じた状態を維持することになるため、好ましいとはいえない。また、第1制御によって室外膨張弁22の開度が小さくなると、少なくとも一時的には、高圧HPが高くなるおそれがある。このため、第1制御を行うことによって高圧HPが過度に高くなる場合に第1制御を行った状態を維持することは、好ましいとはいえない。すなわち、第1制御を行った後に室内膨張弁34の開度が改善終了開度X+Yよりも大きい状態になった場合に第2制御を行うことによって、第1制御による圧縮機31の消費動力の増大や運転効率の低下を抑えることができる。また、第1制御を行った後に高圧HPが第2改善禁止圧力α+βよりも高い状態になった場合に第2制御を行うことによって、高圧HPが過度に高くなることを抑えることができる。また、ここでは、改善終了開度X+Yを改善開始開度Xよりも大きな開度に設定しているため、室内膨張弁34の開度が改善開始開度Xよりも十分に大きくなり、第1制御が不要な状態になっている場合に第2制御を行うことができる。そして、これにより、第2制御を行った直後に再び第1制御が必要な状態になること(すなわち、第2制御を行った直後にステップS6、S7の処理が行われること)を抑えて、安定的な過熱度制御を行うことができる。
次に、ステップS10において、第2制御(すなわち、ステップS9の処理)によって室外膨張弁22の開度が開度Qより大きくなっているかどうかを判定する。そして、ステップS10において、室外膨張弁22の開度が開度Qより大きくなっていないと判定された場合には、ステップS5の処理に戻る。そして、ステップS10において、室外膨張弁22の開度が開度Qより大きくなっていると判定された場合には、ステップS11において、室外膨張弁22の開度が開度Qに変更されて、ステップS5の処理に戻る。ここで、ステップS10、S11の処理を行うのは、室外膨張弁22の開度が開度Qよりも大きい状態になると、高圧HPの過度の低下等が生じるおそれがあり、これを抑えるためである。
(4)変形例
本変形例では、上記の基本動作中において、制御部7が、冷媒の放熱器としての室外熱交換器21の出口における冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度SCsになるように第1膨張弁としての室外膨張弁22の開度を制御する過冷却度制御を行うようにしている。ここで、室外熱交換器21の出口における冷媒の過冷却度SCは、吐出圧力センサ39によって検出される吐出圧力Pdを冷媒の飽和温度Tcに換算して、この飽和温度Tcから室外熱交液側温度センサ26によって検出される室外熱交換器21の液側における冷媒の温度Tolを差し引くことによって得られる。
このような過冷却度制御を行う場合には、上記の実施形態の第1制御や第2制御(すなわち、図3のステップS4、S7、S9の処理)とは異なり、室外膨張弁22の開度を直接的に変更や設定を行うことができない。
そこで、本変形例では、図4に示すように、室外膨張弁22の開度を直接的に変更や設定を行うステップS2、S4、S7、S9、S10、S11の処理に代えて、目標過冷却度SCsの変更や設定を行うステップS12、S14、S17、S19、S20、S21を採用するようにしている。
具体的には、ステップS2に代えて採用されるステップS12においては、過冷却度制御(図4における「SC制御」)における目標過冷却度SCs(図4における「目標SC」)を所定の過冷却度Aに設定する。
また、ステップS4、S7に代えて採用されるステップS14、S17においては、現在の目標過冷却度SCs(ここでは、過冷却度Aや過冷却度A+B等)に所定の過冷却度Bを加算して得られる過冷却度に変更することによって第1制御を行う。すなわち、この第1制御は、目標過冷却度SCsを大きくする制御である。ここで、室外熱交換器21の出口における冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度SCsよりも小さい場合には、室外熱交換器21の出口における冷媒の過冷却度SCを目標過冷却度SCsに維持するために、過冷却度制御を行っている室外膨張弁22の開度が小さくなる。このため、上記のように目標過冷却度SCsを大きくすることによって、ステップS7と同様に、室外膨張弁22の開度を小さくすることができる。これにより、本変形例では、室外膨張弁22を用いた過冷却度制御を行いつつ、第1制御を行うことができる。
また、ステップS9に代えて採用されるステップS19においては、現在の目標過冷却度SCs(ここでは、過冷却度A+B等)から所定の過冷却度Cを減算して得られる過冷却度に変更することによって第2制御を行う。すなわち、この第2制御は、目標過冷却度SCsを小さくする制御である。ここで、室外熱交換器21の出口における冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度SCsよりも大きい場合には、室外熱交換器21の出口における冷媒の過冷却度SCを目標過冷却度SCsに維持するために、過冷却度制御を行っている室外膨張弁22の開度が大きくなる。このため、上記のように目標過冷却度SCsを小さくすることによって、ステップS9と同様に、室外膨張弁22の開度を大きくすることができる。これにより、本変形例では、室外膨張弁22を用いた過冷却度制御を行いつつ、第2制御を行うことができる。
また、ステップS10、S11に代えて採用されるステップS20、S21においては、第2制御(すなわち、ステップS19の処理)によって目標過冷却度SCsが過冷却度Aより小さくなっているかどうかを判定する。そして、ステップS20において、目標過冷却度SCsが過冷却度Aより小さくなっていないと判定された場合には、ステップS5の処理に戻る。そして、ステップS20において、目標過冷却度SCsが過冷却度Aより小さくなっていると判定された場合には、ステップS21において、目標過冷却度SCsが過冷却度Aに変更されて、ステップS5の処理に戻る。ここで、ステップS20、S21の処理を行うのは、過冷却度SCが過冷却度Aよりも大きい状態になると、高圧HPの過度の低下等が生じるおそれがあり、これを抑えるためである。
このように、本変形例では、第1膨張弁としての室外膨張弁22を用いた過冷却度制御を行いつつ、第1制御や第2制御を行うことができ、これにより、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(5)他の実施形態
以上、本発明の実施形態及びその変形例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
<A>上記の実施形態及びその変形例では、第1制御や第2制御を行うにあたり、高圧HPが安定した状態を維持することを重視している。このため、上記の実施形態及びその変形例では、ステップS3、S5、S6、S8のような高圧HPの制限や、ステップS10、S11、S20、S21のような第1膨張弁としての室外膨張弁22の開度や目標過冷却度の制限を加えるようにしている。しかし、高圧HPの変動が多少許容される場合には、要求される高圧HPの安定度合いに応じて、これらの制限を省略してもよい。
<B>
上記の実施形態及びその変形例では、室内ユニット3に圧縮機31が設けられたリモートコンデンサ型の空気調和装置1に本発明を適用した例を説明したが、これに限定されず、室外ユニット2に圧縮機31が設けられたセパレート型の空気調和装置等の他のユニット構成の空気調和装置に本発明を適用してもよい。
<C>
上記の実施形態及びその変形例では、冷房専用の冷媒回路10を備えた空気調和装置1に本発明を適用した例を説明したが、これに限定されず、冷房運転と暖房運転とが切り換え可能に構成された冷媒回路を備えた空気調和装置に本発明を適用してもよい。
例えば、図5に示すような冷媒回路110を備えた空気調和装置101に本発明を適用してもよい。ここで、空気調和装置101は、主として、室外ユニット2と、室内ユニット103と、室外ユニット2と室内ユニット103とを接続する液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6とを有している。すなわち、空気調和装置101の蒸気圧縮式の冷媒回路110は、室外ユニット2と室内ユニット103と冷媒連絡管5、6とが接続されることによって構成されている。
そして、室内ユニット103は、主として、冷媒回路110の一部を構成する室内側冷媒回路110aを有している。この室内側冷媒回路110aは、主として、圧縮機31と、切換機構32と、第2膨張弁としての室内膨張弁34と、室内熱交換器33と、アキュムレータ35とを有している。すなわち、空気調和装置101では、室内ユニット103が切換機構32を有する点が、上記の実施形態及びその変形例の空気調和装置1とは異なっている。ここで、切換機構32は、室内熱交換器33を冷媒の蒸発器として機能させる冷房運転状態と室内熱交換器33を冷媒の放熱器として機能させる暖房運転状態とを切り換え可能な四路切換弁である。ここで、図5の切換機構32における実線が冷房運転状態を示し、図5の切換機構32における破線が暖房運転状態を示す。切換機構32は、圧縮機31の吐出側、圧縮機31の吸入側、ガス冷媒連絡管6、及び、室内熱交換器33のガス側に接続されている。尚、切換機構32は、四路切換弁に限定されるものではなく、例えば、複数の電磁弁を組み合わせる等によって、上記と同様の冷媒の流れの方向を切り換える機能を有するように構成したものであってもよい。また、室内熱交換器33は、冷房運転時に冷媒の蒸発器として機能して室内空気を冷却し、暖房運転時に冷媒の放熱器として機能して室内空気を加熱するようになっている。室内熱交換器33のガス側は、切換機構32に接続されており、室内熱交換器33の液側は、室内膨張弁34に接続されている。室内膨張弁34は、冷房運転時に室内熱交換器33に流入する冷媒を減圧し、暖房運転時に室内熱交換器33から流出する冷媒を減圧する。室内膨張弁34は、室内熱交換器33の液側と液冷媒連絡管5との間に接続されている。アキュムレータ35は、切換機構32と圧縮機31の吸入側との間に接続されている。また、制御部7には、他の機器や弁とともに、切換機構32を制御することができるように接続されている。
尚、空気調和装置101の構成は、上記の点を除いては、上記の実施形態及びその変形例の空気調和装置1の構成と同様である。このため、空気調和装置101では、冷房運転時には、冷房運転状態に切り換えられた切換機構32が介在するという違いはあるが、上記の実施形態及びその変形例の空気調和装置1と同様の冷房運転時の基本動作、室内膨張弁34及び室外膨張弁22の制御を行うことができる。また、暖房運転時には、切換機構32を暖房運転状態に切り換えることによって、冷媒回路110内の冷媒を、圧縮機31、切換機構32、冷媒の放熱器としての室内熱交換器33、第1膨張弁としての室内膨張弁34、レシーバ23、第2膨張弁としての室外膨張弁22、及び、冷媒の蒸発器としての室外熱交換器21、切換機構32、及び、アキュムレータ35の順に循環させることができる。そして、このような暖房運転において、室外熱交換器21の出口における過熱度SHが目標過熱度SHsになるように室外膨張弁22の開度を制御する過熱度制御を行う場合には、室内膨張弁34に対して、上記の実施形態における第1制御や第2制御を適用することができる。また、室内熱交換器33の出口における過冷却度SCが目標過冷却度SCsになるように室内膨張弁34の開度を制御する過冷却度制御をさらに行う場合には、上記の変形例における第1制御や第2制御を適用することができる。