JP5200707B2 - 容器用ポリエステル樹脂被覆金属板 - Google Patents
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Description
一方、上記(2)のフィルムの表面に、改質剤を含む樹脂をコーティングする方法は、付加機能の変更が容易であるため、食品缶詰の多様なニーズに対応できる。改質剤を含むコーティング液の入ったタンクを、洗浄・交換することで、すばやく機能変更に対応できるからである。
ポリエステルを主成分とする複層構造の樹脂層を、少なくとも片面に有する。そして、特定の分子構造有するポリエステル樹脂を金属板との密着層とし、密着層の上層に特定の残存配向度を有するポリエステル樹脂を積層し、更に最上層となるポリエステル樹脂層にブロックフリーイソシアネート化合物、アルキレンビス脂肪酸アミドを含有させることで、優れた深絞り成形性、加工後密着性などの基本特性に加え、レトルト処理環境下での意匠性に関わる性能等、多くの機能を有する容器用ポリエステル樹脂被覆金属板を得ることができる。
[1]ポリエステルを主成分とする複層構造の樹脂層を、少なくとも片面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、前記複層構造の樹脂層は、以下(A)〜(C)を特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
(A)金属板との密着層となるポリエステル樹脂層は、ブロックフリーイソシアネート化合物を含有し、該ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基のモル数が前記ポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の0.5倍以上20.0倍以下である。
(B)密着層の上層であり中間層を形成するポリエステル樹脂層は、残存配向度が2%〜30%の範囲である。
(C)最上層となるポリエステル樹脂層は、ブロックフリーイソシアネート化合物を含有し、該ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基のモル数が前記ポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の0.5倍以上20.0倍以下であり、アルキレンビス脂肪酸アミドを含有する。
[2]前記[1]において、前記密着層の付着量は、0.1g/m2以上5.0g/m2以下であり、前記最上層の付着量は、0.1g/m2以上5.0g/m2以下であることを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[3]前記[1]または[2]において、前記アルキレンビス脂肪酸アミドは、前記最上層のポリエステル樹脂層に対し、1mass%〜10mass%含有することを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記アルキレンビス脂肪酸アミドはエチレンビスステアリン酸アミドであることを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記密着層のポリエステル樹脂層中に、着色剤を含むことを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかにおいて、前記中間層のポリエステル樹脂層は、ポリエステルの構成単位の93mass%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であり、かつ、面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであり、式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下であり、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10mass%含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
まず、本発明で用いる金属板について説明する。
本発明の金属板としては、缶用材料として広く使用されているアルミニウム板や軟鋼板等を用いることができる。特に、下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(以下、TFSと称す)等が最適である。
TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量については、特に限定されないが、加工後密着性、耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m2、クロム水酸化物層は10〜30mg/m2の範囲とすることが望ましい。
本発明では、ポリエステルを主成分とする複層構造の樹脂層を、少なくとも片面に有する。
密着層は、ポリエステルを主成分とするポリエステル樹脂層からなる。なお、ポリエステルを主成分とするとは、ポリエステルを50mass%以上100mass%以下含む樹脂であり、ポリエステル以外の樹脂として、例えばポリオレフィンなどを、本発明で規定する機能を確保できる範囲内であれば添加しても構わない。
樹脂被覆金属板が保管・運搬される際には40℃程度の温度で長時間保持される可能性があるため、ガラス転移点は50℃以上であることが必要である。一方、ガラス転移点の上限は85℃に規定する。ガラス転移点が85℃を超えるポリエステルポリマーは、軟化点が上昇してしまい、本発明で規定する軟化点200℃以下の範囲を維持し難くなるためである。
また、食缶用のレトルト殺菌処理は、100℃以上の高温で1時間以上に及ぶことがあり、100℃以上の温度域で耐熱性を有することが求められる。よって、JIS K2425に定める軟化点を100℃以上、望ましくは150℃以上に規定する必要がある。一方、軟化点の上限は、200℃に規定する。軟化点が200℃超となると、樹脂の熱流動性が低下してしまい、金属板とのラミネート時や、製缶加工時などの工程で、樹脂の柔軟性が不足することになる。ラミネート時の柔軟性不足は金属板との密着性に影響を及ぼし、製缶加工時の柔軟性不足は缶高さ方向への伸び変形を抑制し、缶胴部を破裂させる原因となる。
なお、ここでいう残存配向度とは、X線回折法により求められた値であって、以下により定義されるものとする。
(1)ラミネート前の配向ポリエステル樹脂(もしくは配向ポリエステルフィルム)及びラミネート後の該樹脂(もしくは該フィルム)について、X線回折強度を2θ=20〜30°の範囲で測定する。
(2)2θ=20°、2θ=30°におけるX線回折強度を直線で結びベースラインとする。
(3)2θ=22〜28°近辺にあらわれる最も高いピークの高さをベースラインより測定する。
(4)ラミネート前のフィルムの最も高いピークの高さをP1、ラミネート後のフィルムの最も高いピークをP2とした時、P2/P1×100を残存配向度(%)とする。
一方、味特性を損ねない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。
一方、グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の指環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
耐摩耗性、加工性、味特性等の点から面積換算平均粒子径は0.005〜5.0μmであることが好ましい。さらに好ましくは0.01〜3.0μmである。
また、耐摩耗性等の点から、上記式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.3以下である。
粒子の長径/短径比としては、フィルムに成形したときの突起形状、耐摩耗性などの点から、1.0〜1.2であることが好ましい。モース硬度としては、突起硬さ、耐摩耗性などの点から7未満であることが好ましい。そして、これらの効果を十分に発現させるには、上記からなる粒子を0.005〜10mass%含有することが好ましい。
また、有機粒子としては、さまざまな有機高分子粒子を用いることができるが、その種類としては、少なくとも一部がポリエステルに対し不溶の粒子であれば、いかなる組成の粒子でも構わない。また、このような粒子の素材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂などを使用することができるが、耐熱性が高く、かつ粒度分布の均一な粒子が得られやすいビニル系架橋高分子粒子が特に好ましい。
また、本発明の効果を妨げない範囲において、他の粒子、例えば各種不定形の外部添加型粒子、及び内部析出型粒子、あるいは各種表面処理剤を添加しても構わない。
本発明に規定するポリエステルを主成分とする樹脂層の厚みとしては、全体として5μm以上100μm以下であることが好ましく、更には8μm以上50μm以下、特に10μm以上25μm以下の範囲であることが好ましい。
また、疎水性を阻害しない範囲で、ポリエステルポリオールを添加することができる。この場合、疎水性ポリオールとして、全ポリオール重量の50%以上の範囲が好適である。ポリエステルポリオールとしては、1、6ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール成分と、マレイン酸、アジピン酸、オレイン酸、これらのダイマー酸等のエステル、を用いることができる。特に好ましくは、オレイン酸のダイマー酸を用いたポリエステルポリオールである。
容器表面に光輝色を望む場合には、アゾ系顔料の使用も好適である。透明性に優れながら着色力が強く、展延性に富むため、容器成形後も光輝色のある外観が得られる。本発明で使用できるアゾ系顔料としては、カラーインデックス(C.I.登録の名称)が、ピグメントイエロー12、13、14、16、17、55、81、83、139、180、181のうちの少なくとも1種類を挙げることができる。特に、色調(光輝色)の鮮映性、レトルト殺菌処理環境での耐ブリーディング性(顔料がフィルム表面に析出する現象に対する抑制能)などの観点から、分子量が大きく、PET樹脂への溶解性が乏しい顔料が望ましい。例えば、分子利用が700以上の、ベンズイミダゾロン構造を有するC.I.ピグメントイエロー180がより好ましく用いられる。
アゾ系顔料の添加量は、対象樹脂層に対して、10〜40PHRとすることが望ましい。添加量が10PHR以上であれば、発色に優れるので好適である。40PHR以下の方が、透明度が高くなり光輝性に富んだ色調となる。
本発明の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板は、まず、最上層及び密着層となるポリエステル樹脂層を中間層となるポリエステルフィルムの両面に形成する。次いで、複層構造となったポリエステルフィルムを金属板表面にラミネートする。
また、本発明で規定するブロックフリーイソシアネート化合物や、長鎖アルキル基を側鎖に有する疎水性ポリオール樹脂、着色剤としてカーボンブラック、アゾ系顔料などの添加剤は、有機溶剤中に分散させて使用するのが望ましい。この際、分散剤を併用すると、添加剤の均一性が付与できるため、好適である。
まず、容器内面側の密着層と最上層、および、容器外面側の密着層と最上層となるポリエステルフィルムを各々製造する。ジオール成分とジカルボン酸成分を、表1〜表4に示す比率にて重合したポリエステル樹脂を乾燥、溶融、押し出しし、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
ラミネートロール3は内部水冷式とし、ラミネート中に冷却水を強制循環し、フィルム接着中の冷却を行った。樹脂フィルムを金属板にラミネートする際に、金属板に接する界面のフィルム温度がフィルムの融点以上になる時間を1〜20msecの範囲内にした。
粒子をポリエステルに配合し、0.2μmの厚みの超薄片にカッティング後、透過型電子顕微鏡で、少なくとも50個の粒子について観察し粒子径の測定を行なった。相対標準偏差σ、数平均粒子径の計算式は下記の通りである。
ダイアモンド・砥石などで平滑な平面に仕上げた順位にある標準鉱石を用意する。各々の面を合わせ、その間に、粒子を挟んで擦り動かし、下位の基準鉱石にキズがつき、上位の基準鉱石にキズがつかない場合、その粒子の硬さは両基準鉱石の中間にあるものとした。
ポリエステルフィルムをラミネートした金属板にワックスを塗布後、直径200mmの円板を打ち抜き、絞り比2.00で浅絞り缶を得た。次いで、この絞り缶に対し、絞り比2.20で加工し、更に、絞り比2.50となるよう、再度、絞り加工を行った。この後、常法に従いドーミング成形を行った後、トリミングし、次いでネックイン−フランジ加工を施し深絞り缶を成形した。このようにして得た深絞り缶のネックイン部に着目し、フィルムの損傷程度を目視観察した。
(評点について)
◎:成形後フィルムに損傷が認められない状態
○:成形後フィルムに損傷が認められないが、部分的に白化が認められる状態
△:成形可能であるが、部分的にフィルム損傷が認められる状態
×:缶が破胴し、成形不可能
(4)成形後密着性
上記(3)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶の内部に水道水を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施し、缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(5)耐白粉化性
レトルト殺菌炉内に、ポリエステル樹脂被覆金属板を配置し、125℃、90分間のレトルト処理をおこなった。処理後、該樹脂被覆金属板の表面に析出したオリゴマー量を、以下の方法により測定し、耐白粉化性を評価した。
4×4cmに切断したラミネート鋼板のフィルム表面を、メタノールを所定量含浸させた脱脂綿により拭き取り、この脱脂綿をアセトニトリル10mlで洗浄した。この洗浄液の一部をフィルターでろ過し、ろ液を逆相高速液体クロマトグラフィーによりエチレンテレフタレートの環状三量体を定量した。
(評点について)
◎:環状三量体の析出量が、0.5μg/cm2未満(肉眼では、環状三量体の析出が確認できないレベル)
○:環状三量体の析出量が、0.5μg/cm2〜1.0μg/cm2未満(肉眼で、環状三量体の析出がほとんど確認できないレベル)
×:環状三量体の析出量が、1.0μg/cm2以上(環状三量体の析出が顕著で、表面が白粉化)
(6)耐レトルト白化性
上記(3)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶の、底部(缶外面側)を対象とした。缶内に常温の水道水を満たした後、蓋を巻き締めて密閉した。その後、缶底部を下向きにしてレトルト殺菌炉の中に配置し、125℃で90分間、レトルト処理を行った。処理後、缶底部外面の外観変化を目視で観察した。
(評点について)
◎:外観変化なし
○:外観にかすかな曇り発生
×:外観が白濁(白化発生)
以上により得られた結果を表5および表6に示す。
2 金属帯加熱装置
3 ラミネートロール
4a、4b フィルム
5 金属帯冷却装置
Claims (6)
- ポリエステルを主成分とする複層構造の樹脂層を、少なくとも片面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、前記複層構造の樹脂層は、以下(A)〜(C)を特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
(A)金属板との密着層となるポリエステル樹脂層は、ブロックフリーイソシアネート化合物を含有し、該ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基のモル数が前記ポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の0.5倍以上20.0倍以下である。
(B)密着層の上層であり中間層を形成するポリエステル樹脂層は、残存配向度が2%〜30%の範囲である。
(C)最上層となるポリエステル樹脂層は、ブロックフリーイソシアネート化合物を含有し、該ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基のモル数が前記ポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の0.5倍以上20.0倍以下であり、アルキレンビス脂肪酸アミドを含有する。 - 前記密着層の付着量は0.1g/m2以上5.0g/m2以下であり、前記最上層の付着量は0.1g/m2以上5.0g/m2以下であることを特徴とする請求項1に記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
- 前記アルキレンビス脂肪酸アミドは、前記最上層のポリエステル樹脂層に対し、1mass%〜10mass%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
- 前記アルキレンビス脂肪酸アミドはエチレンビスステアリン酸アミドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
- 前記密着層のポリエステル樹脂層中に、着色剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
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