JP5200548B2 - ポリ乳酸短繊維およびその製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸短繊維およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高品位な耐加水分解性に優れたポリ乳酸短繊維に関するものである。
近年、地球規模での環境に対する意識が高まる中で、生分解性を有するポリ乳酸が注目を浴びている。ポリ乳酸は植物から抽出したでんぷんを発酵させることにより得られる乳酸を原料としたポリマーであり、バイオマス利用の生分解性ポリマーとしては、力学特性、耐熱性、コストのバランスが最も優れている。そして、これを利用した樹脂製品、繊維、フィルム、シート等の開発が急ピッチで行われている。
ポリ乳酸繊維の開発としては、生分解性を活用した農業資材や土木資材が先行しているが、それに続く大型の用途として衣料用途、インテリア用途、車両内装用途、産業資材への応用が期待されている。しかしながら、ポリ乳酸繊維は生分解性であるために製品寿命が短く、用途展開に制約があった。
この問題を解決するために、特許文献1では、ポリカルボジイミド化合物を添加して耐加水分解性を向上させたポリ乳酸樹脂・フィルムを記載している。しかし、ポリカルボジイミド化合物はポリ乳酸への分散性が低いこと、ならび反応性が高いために過剰反応によって高分子量化したゲルが発生しやすい。従って、耐加水分解性が不十分であるばかりか、製糸性が不安定であり工業的な繊維生産に適用が困難であった。また、特許文献2ではカルボジイミド化合物等の末端封鎖剤でポリ乳酸の末端カルボキシル基を封鎖する手法が提案されている。この場合、ポリ乳酸の耐加水分解性は向上するが、得られるポリ乳酸は末端封鎖剤の影響による黄色着色が生じ、衣料を中心とした染色用途への展開に大きな制約が生じているのが現状であった。また、これらポリカルボジイミドならびカルボジイミド化合物を添加した場合、紡糸時に人体に有害なイソシアネート系のガスが発生し、作業環境への影響が著しく、生産機と作業スペースとの分離・ガス廃棄設備の強化等の作業者の安全性確保のために設備投資が必須である。
また、衣料用途、インテリア用途、車両内装用途では長繊維も用いられるが、不織布や紡績糸などに加工される形で短繊維が利用されることが非常に多い。しかしながら、ポリ乳酸繊維の開発において、長繊維開発が先行しており、所望の機能を有するための技術が各種提案されている。しかしながら、短繊維については長繊維と同様の機能を有するものは必ずしも得られていなかった。
例えば、長繊維では強度を高めるための試みがいくつか検討されている。特許文献3では多段延伸による高品位のマルチフィラメントの製造方法に関する技術が開示されているが、これは総繊度の小さいマルチフィラメント状にて延伸する長繊維の製造技術を基本に設計されており、例えば総繊度が10〜100ktexのトウ状で延伸を行う短繊維の製造において同様の技術を適用しても高品位のポリ乳酸短繊維を得ることは不可能である。また特許文献4では、延伸温度を高温化することで高品位・高強度のポリ乳酸繊維の製造方法について開示されているが、これもフィラメント状にて延伸する長繊維の製造技術を基本に設計されているに過ぎない。短繊維の製造においてローラーによる加熱は熱ムラが著しいため、一般的に液浴延伸が採用されている。従って、特許文献4で提案されている延伸温度を得るためには、有機溶媒を採用する必要があり、これは安全・環境・コストなど様々な面で問題が多い。これらのように一般的な短繊維の製造設備で安定して高品位なポリ乳酸繊維を得る現実的な技術が見出されていないのが現状である。
特開平11−80522号公報 特開2002−180328号公報 特開2000−248426号公報 特開2000−136435号公報
本発明は、上記の問題点を克服し、高品位な耐加水分解性に優れたポリ乳酸短繊維を提供することを目的とする。
そこで、本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に達した
すなわち本発明は、3官能以上のエポキシ化合物ならびに脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型脂肪酸モノアミドを含有したポリ乳酸組成物を溶融紡糸し、得られたトウを総繊度が10〜100ktexになるように収束させ、80〜95℃の液浴中にて延伸し、その後機械捲縮を付与して所定の繊維長に切断するポリ乳酸短繊維の製造方法である
本発明により、耐加水分解性に優れるばかりか、染色性などにも優れた高品位なポリ乳酸短繊維を得ることができる。このようなポリ乳酸短繊維は、多くの用途に展開可能であり、展開幅を大きく拡大することができる。
また、本発明のポリ乳酸短繊維の製造方法により、前記したようなポリ乳酸短繊維を再現性良く安定して製造することができる。
本発明でいうポリ乳酸とは、乳酸やラクチド等の乳酸のモノマーやオリゴマーを重合したものをいい、L体またはD体の光学純度が90%以上であると、融点が高く好ましい。L体あるいはD体の光学純度はより好ましくは97%以上である。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、上記モノマーならびオリゴマーの成分を共重合してもよい。共重合する成分としては、ポリエチレングリコールなどのポリエーテル、ポリブチレンサクシネートやポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル、ポリエチレンイソフタレートなどの芳香族ポリエステル、およびヒドロキシカルボン酸、ラクトン、ジカルボン酸、ジオールなどのエステル結合形成性の単量体が挙げられる。
本発明に用いられるポリ乳酸の製造方法は、特に限定されるものではない。具体的には、特開平6−65360号公報に開示されている製造方法がある。すなわち、乳酸を有機溶剤および触媒の存在下にてそのまま脱水重合する直接脱水縮合法である。また、特開平7−173266号公報に開示されている少なくとも2種類のホモポリマーを重合触媒存在下にて共重合ならびエステル交換反応させる方法がある。さらには、米国特許第2,703,316号明細書に開示されている方法がある。すなわち、乳酸をいったん脱水し、環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法である。
また、ポリ乳酸繊維の製造工程としては、前記のような方法で製造されたポリ乳酸のペレタイズ、乾燥、更に溶融紡糸を経て延伸を施すのが一般的である。しかしながらポリ乳酸繊維において、延伸時の過剰な応力や熱不足によって構造破壊が進行し、延伸異常糸が発生することがある。この延伸異常糸では構造破壊による繊維表面の凹凸化や繊維内部のボイドやクラックの発生により繊維の透明性が失われている。このことより、この延伸異常糸は「失透糸」と呼ばれる。この失透糸は正常糸対比、低強度・低伸度であり、また正常糸との染色能に差があるため染色した場合、濃淡ムラが発生するなど、著しくポリ乳酸短繊維の品位を損ねる。
また、耐加水分解性を向上させるためにポリカルボジイミドを初めとした末端反応物質を添加する技術が開示されているが、これら末端反応物質の多くはその添加によって、失透糸の発生頻度を高めることが発明者らの調査によって判明した。この原因については詳細不明だが、末端反応物質のポリ乳酸への分散性が低いこと、ならび反応性が高いことにより局所的に反応ムラが発生すると考えられる。これによりポリ乳酸に局所的な分子量の差が生じ、固有粘度(以下、IVと略記する)にも変動を生じる。この低IV領域に延伸時に応力が集中し失透化すると考えられる。
この局所的なIV変動を緩和させるためには、末端反応物質として3官能以上のエポキシ化合物を選択することが重要である。さらに3官能以上のエポキシ化合物をポリ乳酸の少なくとも一部に反応させること、望ましくはポリ乳酸の末端の少なくとも一部に反応させることが耐加水分解性の向上の観点から非常に重要である。3官能以上のエポキシ化合物とは、1分子中にエポキシ基を3個以上有する化合物である。
ポリ乳酸に添加させる物質をエポキシ化合物とする理由は、エポキシ化合物は他の末端反応性物質、例えばカルボジイミド、と比較して反応速度が遅く、ポリ乳酸との溶融混練時の過剰反応を抑えることができ、十分な分散と緩やかな反応によって局所的なIV変動を抑えることができるところにある。
また、エポキシ化合物において、3官能以上のものを選択することが重要である。化合物1分子に対してエポキシ基を2個以下のエポキシ化合物を末端反応性物質として選択した場合、溶融混練の反応性に乏しく、期待する耐加水分解性を保有させるためには過剰量のエポキシ化合物が必要となるため反応性を制御できなくなり、大幅なIV変動を招いてしまう。
また、本発明で用いる3官能以上のエポキシ化合物としては、イソシアヌル酸骨格を基本骨格としたものが好ましく、3個以上のエポキシ基のうちの少なくとも1個はグリシジル基を構成するものであるのが好ましい。具体的には、3官能以上のエポキシ化合物としては、次の一般式(1)で表されるエポキシ化合物を用いるのが、反応性、耐熱性ならび分散性の観点からより好ましい。
Figure 0005200548
(ここで、R〜Rはエポキシ基を含む官能基であり、それらのうち少なくとも1つはグリシジル基である)
エポキシ基を含む官能基としては、エポキシ基、グリシジル基をはじめ、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミン基などを挙げることができる。
上記一般式(1)で表されるエポキシ化合物は特に限定されるものではないが、トリグリシジルイソシアヌレート、トリメチルグリシジルイソシアヌレート、トリエチルグリシジルイソシアヌレート、トリプロピルグリシジルイソシアヌレート、ジエチルグリシジルメチルグリシジルイソシアヌレート、エチルグリシジルジメチルグリシジルイソシアヌレート、ジエポキシシクロペンチルメチルグリシジルイソシアヌレート、エポキシシクロペンチルメチルジグリシジルイソシアヌレート、ジエポキシシクロブチルメチルグリシジルイソシアヌレート、エポキシシクロブチルメチルジグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。また、末端封鎖物質として用いられる3官能以上のエポキシ化合物は1種の単独使用であっても複数種を混合して使用してもよい。
更に、失透糸がなく高品位なポリ乳酸繊維を得るために、長繊維においてはいくつかの改善策が提案されているが、これらはフィラメント状で延伸する長繊維の製造方法に関するものであり、総繊度の大きいトウ状で延伸を行う短繊維の製造では、同様の技術を施しても十分な効果は得られない。発明者らが調査した結果、短繊維ではトウ状にて延伸するため繊維の絡まり・摩擦によって局所的な応力集中が発生し、これにより失透が発生することを突きとめた。
局所的な応力集中を緩和させるには、本発明のポリ乳酸繊維において、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型脂肪酸モノアミド(以下、総称として本脂肪酸アミドと略す)を含有させ、繊維表面にブリードアウトによる被膜を形成させることが重要であることを突きとめた。尚、ブリードアウトとは、ポリ乳酸と本脂肪酸アミドを同時に溶融吐出した際に本脂肪酸アミドが繊維表面に析出される現象を指す。
本発明でいう脂肪酸ビスアミドは、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族系脂肪参ビスアミド等の1分子中にアミド結合を2つ有する化合物を指し、例えば、メチレンビスカプリル酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスイソステアリン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N′−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N′−ジステアリルテレフタル酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
また、本発明でいうアルキル置換型の脂肪酸モノアミドとは、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置き換えた構造の化合物を指し、例えば、N−ラウリルラウリン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ヘベニルヘベニン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。該アルキル基は、その構造中にヒドロキシル基等の置換基が導入されていても良く、例えば、メチロースステアリン酸アミド、N−ステアリル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド等もアルキル置換型の脂肪酸アミドに含むものとする。
本発明では脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを用いるが、これらの化合物は、通常の脂肪酸モノアミドに比べてアミドの反応性が低く、溶融成形時においてポリ乳酸との反応が起こりにくい。また、高分子量のものが多いため、一般的に耐熱性が良く、昇華しにくいという特徴がある。特に、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いためポリ乳酸と反応しにくく、また、高分子量であるため耐熱性が良く、昇華しにくいことから、より好ましく用いることができる。例えば、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミドが好ましい。また、これら脂肪酸ビスアミドならびアルキル置換型の脂肪酸モノアミドは単一成分でも良いし、複数の成分が混合されても良い。
本発明における3官能基以上のエポキシ化合物および本脂肪酸アミドの短繊維全体に対する含有量は特に限定されないが、失透糸の存在率が10%以下ならびポリ乳酸分子鎖のカルボキシル末端基量が10当量/ton以下となるように含有させることが好ましい。失透糸の存在率が10%を超えると、高次加工にて糸切れ・毛羽の多発による安定操業性の不良ならび正常糸との染色能差による染色ムラが発生する。また、カルボキシル末端基量が10当量/tonを超える場合、十分な耐加水分解性を保持することができない。
以下に本発明におけるポリ乳酸短繊維の製造方法について説明する。
3官能以上のエポキシ化合物および本脂肪酸アミドをポリ乳酸へ含有させる方法は特に限定されるものではないが、例えばポリ乳酸チップと前記のエポキシ化合物および本脂肪酸アミドをそれぞれ個別に乾燥した後、混練機によりマスターチップを作製しておき、マスターチップとポリ乳酸チップとをチップブレンドして溶融紡糸するマスター方式や、溶融紡糸時に前記のエポキシ化合物および本脂肪酸アミドを直接添加する添加方式などが挙げられる。また、混練および溶融紡糸の際にはポリ乳酸の酸化分解を抑制するため、装置内を窒素でシールすることが好ましい。また、口金より吐出された糸条は油剤付与・収束され、一度保管され、延伸される際は、保管されていた糸条を束ね、トウ状として用いられる。
延伸に供するトウの総繊度は10〜100ktex、好ましくは20〜80ktexとする。10ktex未満では生産効率が悪く、100ktexを超えると、繊維の相互作用が強くなり、失透糸改善効果が十分でなくなる。
また、延伸時の液浴の温度は80〜95℃、好ましくは85〜90℃とする。80℃未満では延伸時にかかる応力が大きいため、繊維全体が失透してしまうし、95℃を超えると、浴液に水を用いる場合に沸点に近いため温度制御が困難であると共に、一部沸騰による気泡が液浴中に発生し、均一な延伸を阻害する。
延伸後には、スタッファーボックスなどを用いて、例えば6〜15山/25mm程度の機械けん縮を付与して、所定の、例えば10〜76mmの繊維長になるように、ECカッターなどを用いて切断することにより、ポリ乳酸短繊維を得る。
本発明のポリ乳酸短繊維は衛生材料、土木資材、農業資材、生活資材、工業資材、中入れ綿用途、衣料用途、インテリア用途に好ましく用いられる。
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。なお、本実施例で用いた特性の測定方法は次の通りである。
[繊度]
JIS L−1015(1999年改正)に示される方法により繊度(dtex)の測定を行った。
[強度]
JIS L−1015(1999年改正)に示される方法により強度(cN/dtex)の測定を行った。
[けん縮数]
JIS L−1015(1999年改正)に示される方法によりけん縮数(山/25mm)の測定を行った。
[けん縮率]
JIS L−1015(1999年改正)に示される方法によりけん縮率(%)の測定を行った。
[カルボキシル基末端量]
特開2001−261797号公報記載のように、秤量したサンプルを含水率5%に調整したo−クレゾールに溶解し、ジクロロメタンを適量添加した後、0.02規定の水酸化カリウムメタノール溶液で滴定し、求めた。
[失透糸の存在率]
ポリ乳酸短繊維を同方向に重なり合わないように試料台に置き、実体顕微鏡(ニコン実体顕微鏡HFX型)を用いて観察する。それぞれの短繊維に対し、ランダムに10点観察を行い、失透(白化)している領域があるか観察する。1点でも失透部があれば失透糸とする。水準に関しては、製造した短繊維からランダムに5点から採取し、各点の20本の短繊維を確認する(5点×20本= 100水準)。
失透糸の存在率(%)=(失透糸本数)/(測定短繊維数;100本)×100
[繊維強度低下率]
ポリ乳酸短繊維を温度70℃、湿度90%に調整された恒温槽内にて300時間処理を行い、処理前後の繊維強度より算出した。尚、強度の測定はJIS L−1015(1999年改正)に示される方法にて行った。
繊維強度低下率(%) =(処理後繊維強度)/(処理前繊維強度)×100
[染色性]
ポリ乳酸短繊維を開繊後、染色加工を行い、染色性を目視にて確認した。評価方法として、染色サンプルを任意で選んだ10人が観察し、染色ムラの有無についてチェックを行った。
○:9人以上が染色ムラなしと判断
△:5〜8人が染色ムラなしと判断
×:0〜4人が染色ムラなしと判断
なお、染色加工は、染料としてKayalonPolyesterRubineBL−S200[日本化薬社]を使用し、染料濃度2重量%、pH4.5に調整した染液にて染色温度100℃、染色時間60分にて行った。
(実施例1)
融点170℃であるポリ乳酸チップ[ネイチャーワークス社;6201D]と、脂肪酸ビスアミドであるエチレンビスステアリン酸アミド(EBA)[日油社;アルフローH−50S]と、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)[日産化学社;TEPIC−S]を、それぞれ個別に乾燥させた後、85:5:10の重量比になるように混合し、220℃にて溶融混練ならびチップ化し、マスターチップを作製した。前記と同様のポリ乳酸チップと作製したマスターチップとを重量比90:10(EBA0.5%、TGIC1.0%含有)で混合し、エクストルーダー型紡糸機にて、紡糸温度230℃にて溶融紡糸し、この紡糸糸条を冷却させ、油剤付与、収束した後、1000m/分で引き取り、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を更に収束して25ktexのトウとして、85℃の温水浴中で2.00倍に延伸した後、もう一度90℃の温水浴にて1.75倍に延伸した。その後、スタッファーボックスで機械けん縮を付与し、145℃×10分間弛緩熱処理後、アルキルエステル系油剤成分を繊維に対して0.5重量%になるようにスプレー方式にて付与し、繊維長38mmに切断し、ポリ乳酸短繊維を得た。得られた短繊維の特性を表1に示す。
(実施例2)
実施例1で用いたものと同様のポリ乳酸チップ、EBAならびTGICをそれぞれ個別に乾燥させた後、82:8:10の重量比になるように混合し、220℃にて溶融混練ならびチップ化し、マスターチップを作製した。前記と同様のポリ乳酸チップと作製したマスターチップとを重量比90:10(EBA0.8%、TGIC1.0%含有)で混合し、エクストルーダー型紡糸機にて、紡糸温度230℃にて溶融紡糸し、この紡糸糸条を冷却させ、油剤付与、収束した後、1600m/分で引き取り、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を更に収束して100ktexのトウとして、90℃の温水浴中で2.40倍に延伸した後、もう一度90℃の温水浴にて1.20倍に延伸した。その後、スタッファーボックスで機械けん縮を付与し、145℃×10分間弛緩熱処理後、アルキルエステル系油剤成分を繊維に対して0.5重量%になるようにスプレー方式にて付与し、繊維長38mmに切断し、ポリ乳酸短繊維を得た。得られた短繊維の特性を表1に示す。
(実施例3)
EBAをN−ステアリルステアリン酸アミド(SS)[日本化成社;ニッカアマイドS]に変更し、マスターチップの作製の混合比を表2記載のものに変更するとともに、延伸条件を80℃の温水浴中で2.00倍、更に80℃の温水浴にて1.75倍させることに変更する以外は実施例1と同様の方法にてポリ乳酸短繊維を作製した。得られた短繊維の特性を表1に示す。
(実施例4)
EBAをSSに変更し、マスターチップの作製の混合比を表2記載のものに変更するとともに、延伸条件を95℃の温水浴中で2.00倍、更に95℃の温水浴にて1.75倍させることに変更する以外は実施例1と同様の方法にてポリ乳酸短繊維を作製した。得られた短繊維の特性を表1に示す。
(比較例1)
実施例1で用いたものと同様のポリ乳酸チップを乾燥させ、その後エクストルーダー型紡糸機にて、紡糸温度230℃にて溶融紡糸し、この紡糸糸条を冷却後、油剤付与・収束させ、1000m/分にて引き取り、80ktexのトウとし、85℃の温水浴中で2.00倍に延伸した後、もう一度90℃の温水浴にて1.75倍に延伸した。その後、スタッファーボックスで機械けん縮を付与し、145℃×10分間弛緩熱処理後、アルキルエステル系油剤成分を繊維に対して0.5重量%になるようにスプレー方式にて付与し、繊維長38mmに切断し、ポリ乳酸短繊維を得た。得られた短繊維の特性を表1に示す。
(比較例2、3、4)
マスターチップを表2の記載の混合比のものに変更する以外は実施例1と同様の方法にてポリ乳酸短繊維を作製した。得られた短繊維の特性を表1に示す。尚、比較例4で使用した末端反応物質はポリカルボジイミド化合物(PCI)[日清紡績社;カルボジライトLA−1]である。
(比較例5)
収束トウを150ktexとして延伸を行う以外は実施例3と同様の方法にてポリ乳酸短繊維を作製した。得られた短繊維の特性を表1に示す。
(比較例6)
延伸条件を75℃の温水浴中で2.00倍、更に75℃の温水浴にて1.50倍させることに変更する以外は実施例1と同様の方法にてポリ乳酸短繊維を作製した。得られた短繊維の特性を表1に示す。
(比較例7)
延伸条件を98℃の温水浴中で2.00倍、更に98℃の温水浴にて1.50倍させることに変更する以外は実施例1と同様の方法にてポリ乳酸短繊維を作製した。得られた短繊維の特性を表1に示す。
Figure 0005200548
Figure 0005200548

Claims (4)

  1. 3官能以上のエポキシ化合物ならびに脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型脂肪酸モノアミドを含有したポリ乳酸組成物を溶融紡糸し、得られたトウを総繊度が10〜100ktexになるように収束させ、80〜95℃の液浴中にて延伸し、その後機械捲縮を付与して所定の繊維長に切断するポリ乳酸短繊維の製造方法。
  2. リ乳酸分子鎖末端のカルボキシル基が3官能以上のエポキシ化合物で封鎖されるとともに繊維表面が脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型脂肪酸モノアミドで被覆されてなる請求項1に記載のポリ乳酸短繊維の製造方法
  3. 前記のエポキシ化合物が次の一般式(1)で表される請求項1または請求項2に記載のポリ乳酸短繊維の製造方法

    Figure 0005200548
    (ここで、R〜Rはエポキシ基を含む官能基であり、それらのうち少なくとも1つはグリシジル基である)
  4. カルボキシル末端基量が10当量/ton以下である請求項2または3に記載のポリ乳酸短繊維の製造方法
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