[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る回転磁界センサの概略の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る回転磁界センサの概略の構成を示す斜視図である。図2は、本実施の形態における方向と角度の定義を示す説明図である。
図1に示したように、本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、基準位置における回転磁界MFの方向が基準方向に対してなす角度を検出するものである。図1には、方向が回転する回転磁界MFを発生する手段の例として、円柱状の磁石5を示している。この磁石5は、円柱の中心軸を含む仮想の平面を中心として対称に配置されたN極とS極とを有している。この磁石5は、円柱の中心軸を中心として回転する。これにより、磁石5が発生する回転磁界MFの方向は、円柱の中心軸を含む回転中心Cを中心として回転する。回転磁界センサ1は、磁石5の一方の端面に対向するように配置される。なお、後で、他の実施の形態で説明するように、方向が回転する回転磁界MFを発生する手段は、図1に示した磁石5に限られるものではない。
回転磁界センサ1は、第1の位置において回転磁界MFを検出する第1の検出部10と、第2の位置において回転磁界MFを検出する第2の検出部20とを備えている。図1では、理解を容易にするために、第1の検出部10と第2の検出部20を別体として描いているが、第1の検出部10と第2の検出部20は一体化されていてもよい。
ここで、図2を参照して、本実施の形態における方向と角度の定義について説明する。まず、図1に示した回転中心Cに平行で、磁石5の一方の端面から回転磁界センサ1に向かう方向をZ方向と定義する。次に、Z方向に垂直な仮想の平面上において、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向と定義する。図2では、X方向を右側に向かう方向として表し、Y方向を上側に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を−X方向と定義し、Y方向とは反対の方向を−Y方向と定義する。
基準位置PRは、回転磁界センサ1が回転磁界MFを検出する位置である。基準位置PRは、例えば、第1の検出部10が配置されている位置とする。基準方向DRは、Y方向から時計回りに30°回転した方向とする。基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度を記号θで表す。回転磁界MFの方向DMは、図2において時計回り方向に回転するものとする。角度θは、基準方向DRから時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに負の値で表す。
第1の検出部10は、第1の位置P1において、回転磁界MFの第1の方向D1の成分と、回転磁界MFの第2の方向D2の成分とを検出する。第2の検出部20は、第2の位置P2において、回転磁界MFの第3の方向D3の成分と、回転磁界MFの第4の方向D4の成分とを検出する。本実施の形態では、第1の方向D1と第2の方向D2は直交し、第3の方向D3と第4の方向D4も直交している。第1の位置P1と第2の位置P2は、回転磁界MFの回転方向について同じ位置であり、基準位置PRと一致している。第1の方向D1と第3の方向D3は、回転磁界MFの回転方向について60°だけ異なっている。
また、本実施の形態では、第2の方向D2は、基準方向DRから−30°回転した方向であり、Y方向と一致している。ここで、第1の位置P1において回転磁界MFの方向DMが第2の方向D2に対してなす角度を第1の角度と呼び、記号θ1で表す。角度θ1の正負の定義は、角度θと同様である。本実施の形態では、角度θ1は角度θよりも30°だけ大きい。第1の方向D1は、第2の方向D2から90°回転した方向である。
第3の方向D3は第1の方向D1から60°回転した方向であり、第4の方向D4は第2の方向D2から60°回転した方向である。また、第4の方向D4は、基準方向DRから30°回転した方向である。ここで、第2の位置P2において回転磁界MFの方向DMが第4の方向D4に対してなす角度を第2の角度と呼び、記号θ2で表す。角度θ2の正負の定義は、角度θと同様である。本実施の形態では、角度θ2は、角度θよりも30°だけ小さく、角度θ1よりも60°だけ小さい。第3の方向D3は、第4の方向D4から90°回転した方向である。
次に、図3ないし図5を参照して、回転磁界センサ1の構成について詳しく説明する。図3は、回転磁界センサ1の構成を示す回路図である。図3に示したように、回転磁界センサ1は、信号生成部2と角度検出部3とを備えている。信号生成部2は、回転磁界MFを検出する複数の磁気検出素子を含み、複数の磁気検出素子の出力信号に基づいて、回転磁界MFの互いに異なる方向の成分の強度に対応した第1および第2の信号を生成する。角度検出部3は、信号生成部2によって生成された第1および第2の信号に基づいて、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する角度検出値を算出する。
第1の信号は、第1の理想成分と第1の誤差成分とを含んでいる。第2の信号は、第2の理想成分と第2の誤差成分とを含んでいる。第1の理想成分と第2の理想成分は、互いに等しい信号周期で、理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する。第2の理想成分の位相は、第1の理想成分の位相と異なっている。第1の理想成分の2乗と第2の理想成分の2乗との和は一定値である。
図4は、角度検出部3の構成を示すブロック図である。図4に示したように、角度検出部3は、第1の演算部31、第2の演算部32および第3の演算部33を有している。第1の演算部31は、第1の信号の2乗と第2の信号の2乗との和よりなり、後で説明する信号周期の1/2の周期の2乗和信号を生成する。第2の演算部32は、2乗和信号に基づいて、第1の誤差成分の推定値である第1の誤差成分推定値と、第2の誤差成分の推定値である第2の誤差成分推定値とを算出する。第3の演算部33は、第1の信号から第1の誤差成分推定値を減算して第1の補正後信号を生成し、第2の信号から第2の誤差成分推定値を減算して第2の補正後信号を生成すると共に、第1および第2の補正後信号に基づいて、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する角度検出値θsを算出する。第1および第2の信号と、角度検出値θsの算出方法については、後で詳しく説明する。
信号生成部2は、前述の第1の検出部10と第2の検出部20とを備えている。第1の検出部10は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する第1の検出回路11と、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する第2の検出回路12とを有している。第2の検出部20は、回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する第3の検出回路21と、回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する第4の検出回路22とを有している。第1ないし第4の検出回路11,12,21,22は、それぞれ、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。
第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の出力信号は、互いに等しい信号周期Tで周期的に変化する。第3の検出回路21の出力信号の位相は、第1の検出回路11の出力信号の位相と異なっている。第4の検出回路22の出力信号の位相は、第2の検出回路12の出力信号の位相と異なっている。本実施の形態では、第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の出力信号の位相の関係は、特に以下のようになっていることが好ましい。
第2の検出回路12の出力信号の位相は、第1の検出回路11の出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。第4の検出回路22の出力信号の位相は、第3の検出回路21の出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。ただし、磁気検出素子の作製の精度等の観点から、第1の検出回路11の出力信号と第2の検出回路12の出力信号の位相差と、第3の検出回路21の出力信号と第4の検出回路22の出力信号の位相差は、それぞれ、信号周期Tの1/4の奇数倍から、わずかにずれていてもよい。
第3の検出回路21の出力信号の位相は、第1の検出回路11の出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍だけ異なっていることが好ましい。なお、「信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍」というのは、信号周期Tの1/6の整数倍となる複数の位相差であって、そのうち、信号周期Tの1/2の整数倍(0倍を含む)となる複数の位相差を除いたものを指す。以下の説明では、第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の出力信号の位相の関係が上記の好ましい関係になっているものとする。
第1ないし第4の検出回路11,12,21,22は、それぞれ、少なくとも1つの磁気検出素子として、直列に接続された一対の磁気検出素子を含んでいてもよい。この場合、第1ないし第4の検出回路11,12,21,22は、それぞれ、直列に接続された第1の対の磁気検出素子と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子とを含むホイートストンブリッジ回路を有していてもよい。以下、第1ないし第4の検出回路11,12,21,22が、それぞれ上記ホイートストンブリッジ回路を有している場合の例について説明する。
第1の検出回路11は、ホイートストンブリッジ回路14を有している。ホイートストンブリッジ回路14は、電源ポートV1と、グランドポートG1と、2つの出力ポートE11,E12と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R11,R12と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R13,R14とを含んでいる。磁気検出素子R11,R13の各一端は、電源ポートV1に接続されている。磁気検出素子R11の他端は、磁気検出素子R12の一端と出力ポートE11に接続されている。磁気検出素子R13の他端は、磁気検出素子R14の一端と出力ポートE12に接続されている。磁気検出素子R12,R14の各他端は、グランドポートG1に接続されている。電源ポートV1には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG1はグランドに接続される。
第2の検出回路12は、ホイートストンブリッジ回路16を有している。ホイートストンブリッジ回路16は、電源ポートV2と、グランドポートG2と、2つの出力ポートE21,E22と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R21,R22と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R23,R24とを含んでいる。磁気検出素子R21,R23の各一端は、電源ポートV2に接続されている。磁気検出素子R21の他端は、磁気検出素子R22の一端と出力ポートE21に接続されている。磁気検出素子R23の他端は、磁気検出素子R24の一端と出力ポートE22に接続されている。磁気検出素子R22,R24の各他端は、グランドポートG2に接続されている。電源ポートV2には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG2はグランドに接続される。
第3の検出回路21は、ホイートストンブリッジ回路24を有している。ホイートストンブリッジ回路24は、電源ポートV3と、グランドポートG3と、2つの出力ポートE31,E32と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R31,R32と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R33,R34とを含んでいる。磁気検出素子R31,R33の各一端は、電源ポートV3に接続されている。磁気検出素子R31の他端は、磁気検出素子R32の一端と出力ポートE31に接続されている。磁気検出素子R33の他端は、磁気検出素子R34の一端と出力ポートE32に接続されている。磁気検出素子R32,R34の各他端は、グランドポートG3に接続されている。電源ポートV3には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG3はグランドに接続される。
第4の検出回路22は、ホイートストンブリッジ回路26を有している。ホイートストンブリッジ回路26は、電源ポートV4と、グランドポートG4と、2つの出力ポートE41,E42と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R41,R42と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R43,R44とを含んでいる。磁気検出素子R41,R43の各一端は、電源ポートV4に接続されている。磁気検出素子R41の他端は、磁気検出素子R42の一端と出力ポートE41に接続されている。磁気検出素子R43の他端は、磁気検出素子R44の一端と出力ポートE42に接続されている。磁気検出素子R42,R44の各他端は、グランドポートG4に接続されている。電源ポートV4には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG4はグランドに接続される。
本実施の形態では、ホイートストンブリッジ回路(以下、ブリッジ回路と記す。)14,16,24,26に含まれる全ての磁気検出素子として、MR素子、特にTMR素子を用いている。なお、TMR素子の代りにGMR素子を用いてもよい。TMR素子またはGMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、回転磁界MFの方向に応じて磁化の方向が変化する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。TMR素子またはGMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。以下の説明では、ブリッジ回路14,16,24,26に含まれる磁気検出素子をMR素子と記す。図3において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は、MR素子における自由層の磁化の方向を表している。
第1の検出回路11では、MR素子R11,R14における磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向D1に平行な方向であり、MR素子R12,R13における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R11,R14における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。従って、第1の方向D1は、第1の検出回路11が回転磁界MFを検出するときの基準の方向であり、第1の検出回路11は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。具体的には、出力ポートE11,E12の電位差が、第1の検出回路11の出力信号である。図3に示した例では、MR素子R11,R14における磁化固定層の磁化の方向はX方向であり、MR素子R12,R13における磁化固定層の磁化の方向は−X方向である。この例では、第1の方向D1は、X方向と同じ方向になる。
第2の検出回路12では、MR素子R21,R24における磁化固定層の磁化の方向は、第2の方向D2に平行な方向であり、MR素子R22,R23における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R21,R24における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。従って、第2の方向D2は、第2の検出回路12が回転磁界MFを検出するときの基準の方向であり、第2の検出回路12は、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。具体的には、出力ポートE21,E22の電位差が、第2の検出回路12の出力信号である。図3に示した例では、MR素子R21,R24における磁化固定層の磁化の方向はY方向であり、MR素子R22,R23における磁化固定層の磁化の方向は−Y方向である。この例では、第2の方向D2は、Y方向と同じ方向になる。
第3の検出回路21では、MR素子R31,R34における磁化固定層の磁化の方向は、第3の方向D3に平行な方向であり、MR素子R32,R33における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R31,R34における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度に応じて、出力ポートE31,E32の電位差が変化する。従って、第3の方向D3は、第3の検出回路21が回転磁界MFを検出するときの基準の方向であり、第3の検出回路21は、回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。具体的には、出力ポートE31,E32の電位差が、第3の検出回路21の出力信号である。図3に示した例では、MR素子R31,R34における磁化固定層の磁化の方向は、図2に示した第3の方向D3と同じ方向であり、MR素子R32,R33における磁化固定層の磁化の方向は第3の方向D3とは反対方向である。
第4の検出回路22では、MR素子R41,R44における磁化固定層の磁化の方向は、第4の方向D4に平行な方向であり、MR素子R42,R43における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R41,R44における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度に応じて、出力ポートE41,E42の電位差が変化する。従って、第4の方向D4は、第4の検出回路22が回転磁界MFを検出するときの基準の方向であり、第4の検出回路22は、回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。具体的には、出力ポートE41,E42の電位差が、第4の検出回路22の出力信号である。図3に示した例では、MR素子R41,R44における磁化固定層の磁化の方向は、図2に示した第4の方向D4と同じ方向であり、MR素子R42,R43における磁化固定層の磁化の方向は第4の方向D4とは反対方向である。
なお、検出回路11,12,21,22内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
ここで、図5を参照して、MR素子の構成の一例について説明する。図5は、図3に示した回転磁界センサ1における1つのMR素子の一部を示す斜視図である。この例では、1つのMR素子は、複数の下部電極と、複数のMR膜と、複数の上部電極とを有している。複数の下部電極42は図示しない基板上に配置されている。個々の下部電極42は細長い形状を有している。下部電極42の長手方向に隣接する2つの下部電極42の間には、間隙が形成されている。図5に示したように、下部電極42の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR膜50が配置されている。MR膜50は、下部電極42側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53および反強磁性層54を含んでいる。自由層51は、下部電極42に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層53の磁化の方向を固定する。複数の上部電極43は、複数のMR膜50の上に配置されている。個々の上部電極43は細長い形状を有し、下部電極42の長手方向に隣接する2つの下部電極42上に配置されて隣接する2つのMR膜50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。このような構成により、図5に示したMR素子は、複数の下部電極42と複数の上部電極43とによって直列に接続された複数のMR膜50を有している。なお、MR膜50における層51〜54の配置は、図5に示した配置とは上下が反対でもよい。
信号生成部2は、更に、演算部30を備えている。図3に示したように、演算部30は、第1の演算回路131と第2の演算回路132とを有している。第1の演算回路131は、第1および第3の検出回路11,21の出力信号に基づいて、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度と回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度の両方と対応関係を有する第1の信号を生成する。第2の演算回路132は、第2および第4の検出回路12,22の出力信号に基づいて、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度と回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度の両方と対応関係を有する第2の信号を生成する。第1および第2の演算回路131,132と角度検出部3は、例えば、1つのマイクロコンピュータによって実現することができる。
演算部30は、更に、8つの入力ポートIN1〜IN8と、2つの出力ポートOUT1,OUT2とを有している。入力ポートIN1〜IN8は、それぞれ、出力ポートE11,E12,E21,E22,E31,E32,E41,E42に接続されている。
演算部30は、更に、8つのアナログ−デジタル変換器(以下、A/D変換器と記す。)AD1〜AD8と、8つのスイッチSW1〜SW8とを有している。スイッチSW1〜SW8は、それぞれ、第1のポートと第2のポートとを有し、第1のポートと第2のポートとの間における導通状態と非導通状態が選択されるようになっている。A/D変換器AD1〜AD8の入力端は、それぞれ、入力ポートIN1〜IN8に接続されている。A/D変換器AD1〜AD8は、それぞれ、出力ポートE11,E12,E21,E22,E31,E32,E41,E42に現れる電位をデジタル信号に変換して出力する。スイッチSW1〜SW8の第1のポートは、それぞれ、A/D変換器AD1〜AD8の出力端に接続されている。
演算部30は、更に、4つの差分回路111,112,121,122を有している。差分回路111,112,121,122は、それぞれ、第1および第2の入力端と出力端とを有している。差分回路111の第1の入力端は、スイッチSW1の第2のポートに接続されている。差分回路111の第2の入力端は、スイッチSW2の第2のポートに接続されている。差分回路112の第1の入力端は、スイッチSW3の第2のポートに接続されている。差分回路112の第2の入力端は、スイッチSW4の第2のポートに接続されている。差分回路121の第1の入力端は、スイッチSW5の第2のポートに接続されている。差分回路121の第2の入力端は、スイッチSW6の第2のポートに接続されている。差分回路122の第1の入力端は、スイッチSW7の第2のポートに接続されている。差分回路122の第2の入力端は、スイッチSW8の第2のポートに接続されている。
第1および第2の演算回路131,132は、それぞれ第1および第2の入力端と出力端とを有している。第1の演算回路131の第1の入力端は、差分回路111の出力端に接続されている。第1の演算回路131の第2の入力端は、差分回路121の出力端に接続されている。第1の演算回路131の出力端は、出力ポートOUT1に接続されている。第2の演算回路132の第1の入力端は、差分回路112の出力端に接続されている。第2の演算回路132の第2の入力端は、差分回路122の出力端に接続されている。第2の演算回路132の出力端は、出力ポートOUT2に接続されている。
角度検出部3は、第1および第2の入力端と出力端とを有している。角度検出部3の第1の入力端は、出力ポートOUT1に接続されている。角度検出部3の第2の入力端は、出力ポートOUT2に接続されている。
通常時には、スイッチSW1〜SW8は導通状態になっている。このとき、差分回路111は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1の演算回路131に出力する。差分回路112は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第2の演算回路132に出力する。差分回路121は、出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号を第1の演算回路131に出力する。差分回路122は、出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号を第2の演算回路132に出力する。
また、回転磁界センサ1は、フェイルセーフ(Fail safe)機能を有している。回転磁界センサ1は、更に、フェイルセーフ機能を制御する制御部4を備えている。制御部4は、スイッチSW1〜SW8を制御する。制御部4は、第1および第2の演算回路131,132ならびに角度検出部3と同様にマイクロコンピュータによって実現することができる。フェイルセーフ機能については、後で詳しく説明する。
次に、図3、図6ないし図8を参照して、検出回路11,12,21,22の各出力信号について説明する。図3に示した例では、理想的には、第2の検出回路12におけるMR素子の磁化固定層の磁化方向は、第1の検出回路11におけるMR素子の磁化固定層の磁化方向に直交している。理想的には、差分回路111の出力信号の波形は、第1の角度θ1に依存したサイン(Sine)波形になり、差分回路112の出力信号の波形は、第1の角度θ1に依存したコサイン(Cosine)波形になる。この場合、差分回路112の出力信号の位相は、差分回路111の出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4すなわちπ/2(90°)だけ異なっている。
第1の角度θ1が0°よりも大きく180゜よりも小さいときは、差分回路111の出力信号は正の値であり、第1の角度θ1が180°よりも大きく360゜よりも小さいときは、差分回路111の出力信号は負の値である。また、第1の角度θ1が0°以上90゜未満のとき、および270°より大きく360°以下のときは、差分回路112の出力信号は正の値であり、第1の角度θ1が90°よりも大きく270゜よりも小さいときは、差分回路112の出力信号は負の値である。以下、差分回路111の出力信号をS11と表し、差分回路112の出力信号をS12と表す。出力信号S11は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を表す信号である。出力信号S12は、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を表す信号である。
また、図3に示した例では、理想的には、第4の検出回路22におけるMR素子の磁化固定層の磁化方向は、第3の検出回路21におけるMR素子の磁化固定層の磁化方向に直交している。理想的には、差分回路121の出力信号の波形は、第2の角度θ2に依存したサイン波形になり、差分回路122の出力信号の波形は、第2の角度θ2に依存したコサイン波形になる。この場合、差分回路122の出力信号の位相は、差分回路121の出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4すなわちπ/2(90°)だけ異なっている。
第2の角度θ2が0°よりも大きく180゜よりも小さいときは、差分回路121の出力信号は正の値であり、第2の角度θ2が180°よりも大きく360゜よりも小さいときは、差分回路121の出力信号は負の値である。また、第2の角度θ2が0°以上90゜未満のとき、および270°より大きく360°以下のときは、差分回路122の出力信号は正の値であり、第2の角度θ2が90°よりも大きく270゜よりも小さいときは、差分回路122の出力信号は負の値である。以下、差分回路121の出力信号をS21と表し、差分回路122の出力信号をS22と表す。出力信号S21は、回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度を表す信号である。出力信号S22は、回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度を表す信号である。
上述のように、本実施の形態では、検出回路11,12,21,22の各出力信号(2つの出力ポートの電位差)に対応する差分回路111,112,121,122の各出力信号の波形は、理想的には正弦曲線(サイン(Sine)波形とコサイン(Cosine)波形を含む)となる。しかし、実際には、MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪むことによって、差分回路111,112,121,122の各出力信号は、正弦曲線から歪む。MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪む場合としては、例えば、MR素子の磁化固定層の磁化方向が回転磁界MF等の影響によって変動する場合や、MR素子の自由層の磁化方向が、自由層の形状異方性や保磁力等の影響によって、回転磁界MFの方向と一致しない場合がある。正弦曲線から歪んだ出力信号は、理想的な正弦曲線の成分の他に、誤差成分を含んでいる。
図6および図7は、正弦曲線から歪んだ出力信号の波形の一例を示している。図6には、差分回路111の出力信号S11の波形の一例を示している。図7には、差分回路112の出力信号S12の波形の一例を示している。図6および図7において、横軸は角度θ1を示し、縦軸の「信号値」は、理想的な正弦曲線の成分の最大値が1になるように表した信号の値を示している。符号60,70は、理想的な正弦曲線を示している。符号61で示す波形は、出力信号S11に含まれる誤差成分の波形を示している。符号62で示す波形は、MR素子に起因して歪んだ出力信号S11の波形を示している。符号71で示す波形は、出力信号S12に含まれる誤差成分の波形を示している。符号72で示す波形は、MR素子に起因して歪んだ出力信号S12の波形を示している。なお、図6および図7に示した各波形は、シミュレーションによって作成したものである。
図6に示したように、出力信号S11に含まれる誤差成分の変化は、出力信号S11の変化に依存している。また、図7に示したように、出力信号S12に含まれる誤差成分の変化は、出力信号S12の変化に依存している。同様に、出力信号S21に含まれる誤差成分の変化は、出力信号S21の変化に依存している。また、出力信号S22に含まれる誤差成分の変化は、出力信号S22の変化に依存している。各差分回路の出力信号の波形が図6および図7に示したように歪む場合には、各差分回路の出力信号に含まれる誤差成分は、図6および図7において符号61,71で示す波形から分かるように、信号周期Tの1/3、すなわち2π/3(120°)の周期で各差分回路の出力信号に同期して変化する。以下、この誤差成分を第3の誤差成分と呼ぶ。
なお、MR素子に起因して各差分回路の出力信号が正弦曲線から歪む例は、図6および図7に示した例に限られない。図6および図7に示した例では、各差分回路の出力信号は、理想的な正弦曲線から三角波形に近づくように歪んでいる。しかし、図6および図7に示した例とは逆に、各差分回路の出力信号は、理想的な正弦曲線から矩形波形に近づくように歪んでいてもよい。この場合にも、各差分回路の出力信号は、第3の誤差成分を含むことになる。いずれの場合にも、各差分回路の出力信号に含まれる第3の誤差成分の周期(以下、第3の誤差成分周期と言う。)は、信号周期Tの1/3、すなわち2π/3(120°)となる。
上述のように、MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪むために、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する角度検出値θsは、回転磁界の方向が理想的に回転する場合に想定される角度検出値θsの理論値に対する角度誤差を含む可能性がある。この角度誤差は、回転磁界の方向の変化に伴って周期的に変化し、且つ角度誤差の変化は角度検出値θsの変化に依存する。
もし、回転磁界センサが、第1の検出部10と第2の検出部20のうち、第1の検出部10のみを備えている場合には、角度検出値θsは、出力信号S11,S12に基づいて算出される。具体的には、例えば、角度検出値θsは、下記の式(1)によって算出される。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
θs=atan(S11/S12) …(1)
式(1)におけるatan(S11/S12)は、θsを求めるアークタンジェント計算を表している。なお、360°の範囲内で、式(1)におけるθsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S11とS12の正負の組み合わせにより、θsの真の値が、式(1)におけるθsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。すなわち、S11が正の値のときは、θsは0°よりも大きく180゜よりも小さい。S11が負の値のときは、θsは180°よりも大きく360゜よりも小さい。S12が正の値のときは、θsは、0°以上90゜未満、および270°より大きく360°以下の範囲内である。S12が負の値のときは、θsは90°よりも大きく270゜よりも小さい。θsは、式(1)と、上記のS11とS12の正負の組み合わせの判定により、360°の範囲内で求められる。
図8は、図6に示した出力信号S11の波形(符号62)と、図7に示した出力信号S12の波形(符号72)に基づいて、式(1)によって算出された角度検出値θsに含まれる角度誤差dθ1を示している。図8において、横軸は角度θ1を示し、縦軸は角度誤差を示している。図8に示したように、差分回路111,112の出力信号の波形が図6および図7に示したように歪む場合には、角度誤差dθ1の周期は、信号周期Tの1/4、すなわちπ/2(90°)となる。
次に、検出回路11,12,21,22の各出力信号に対応する差分回路111,112,121,122の各出力信号が第3の誤差成分を含む場合における角度検出値θsの算出方法と、本実施の形態に係る回転磁界センサ1の作用および効果について説明する。
まず、図9ないし図11を参照して、通常時における第1および第2の信号の生成方法について説明する。第1の演算回路131は、差分回路111の出力信号S11および差分回路121の出力信号S21に基づいて、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度と回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、出力信号S11,S21に比べて、第3の誤差成分が低減された第1の信号S1を生成する。例えば、出力信号S11と出力信号S21を加算して、規格化前の第1の信号S1を生成し、これを規格化して規格化後の第1の信号S1とすることができる。
本実施の形態では、特に、出力信号S11の位相と出力信号S21の位相は、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)、すなわちπ/3(60°)だけ異なっている。これを実現するために、本実施の形態では、第1の方向D1と第3の方向D3を、回転磁界MFの回転方向について60°だけ異ならせている。本実施の形態によれば、出力信号S11に含まれる第3の誤差成分と出力信号S21に含まれる第3の誤差成分とを相殺することが可能になる。このことを、図9を参照して説明する。図9において、(a)は、図6と同様に、差分回路111の出力信号S11の波形の一例を示している。なお、(a)は、図6に示した波形に対して位相がπ/6だけ異なる波形を示している。図9において、(b)は、差分回路121の出力信号S21の波形の一例を示している。図9(a)、(b)における横軸は、角度θを示している。符号65は、理想的な正弦曲線を示している。符号66で示す波形は、出力信号S21に含まれる第3の誤差成分の波形を示している。符号67で示す波形は、MR素子に起因して歪んだ出力信号S21の波形を示している。ここで、出力信号S11と出力信号S21を加算して、第1の信号S1を生成する場合を考える。この場合、第1の信号S1を生成する際に、出力信号S11に含まれる第3の誤差成分の位相と出力信号S21に含まれる第3の誤差成分の位相は、互いに逆相になる。これにより、出力信号S11,S21に含まれる第3の誤差成分が相殺される。
図9に示した出力信号S11,S21に含まれる第3の誤差成分の振幅の大きさは、互いに等しくてもよいし、等しくなくてもよい。特に、出力信号S11,S21に含まれる第3の誤差成分の振幅の大きさが互いに等しい場合には、第1の信号S1を生成する際に、出力信号S11,S21に含まれる第3の誤差成分が相殺されて、第1の信号S1に含まれる第3の誤差成分は、理論上、0になる。以下、これについて説明する。出力信号S11,S21に含まれる第3の誤差成分の振幅をpで表し、θ1,θ2を、それぞれθ+π/6,θ−π/6と表すと、規格化前の第1の信号S1は、下記の式(2)によって表される。
S1=S11+S21
=sinθ1−p・sin3θ1+sinθ2−p・sin3θ2
=sin(θ+π/6)−p・sin3(θ+π/6)
+sin(θ−π/6)−p・sin3(θ−π/6)
=sinθ・cos(π/6)+cosθ・sin(π/6)
+sinθ・cos(−π/6)+cosθ・sin(−π/6)
−p{sin(3θ+π/2)+sin(3θ−π/2)}
=2sinθ・cos(π/6)−p(cos3θ−cos3θ)
=1.73sinθ …(2)
式(2)において、sinθ1は、出力信号S11に含まれる理想的な正弦曲線の成分を表している。sinθ2は、出力信号S12に含まれる理想的な正弦曲線の成分を表している。−p・sin3θ1は、出力信号S11に含まれる第3の誤差成分を表している。−p・sin3θ2は、出力信号S21に含まれる第3の誤差成分を表している。式(2)から理解されるように、出力信号S11と出力信号S21を加算すると、出力信号S11,S21に含まれる第3の誤差成分が相殺されて、第1の信号S1に含まれる第3の誤差成分は、理論上、0になる。
また、第2の演算回路132は、出力信号S12と出力信号S22に基づいて、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度と回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、出力信号S12,S22に比べて、第3の誤差成分が低減された第2の信号S2を生成する。例えば、出力信号S12と出力信号S22を加算して、規格化前の第2の信号S2を生成し、これを規格化して規格化後の第2の信号S2とすることができる。本実施の形態では、第1および第2の演算回路131,132は、振幅が等しくなるように規格化された第1および第2の信号S1,S2を生成する。
本実施の形態では、特に、出力信号S12の位相と出力信号S22の位相は、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)、すなわちπ/3(60°)だけ異なっている。本実施の形態によれば、出力信号S11,S21と同様に、出力信号S12に含まれる第3の誤差成分と出力信号S22に含まれる第3の誤差成分とを相殺することが可能になる。このことを、図10を参照して説明する。図10において、(a)は、図7と同様に、差分回路112の出力信号S12の波形の一例を示している。なお、(a)は、図7に示した波形に対して位相がπ/6だけ異なる波形を示している。図10において、(b)は、差分回路122の出力信号S22の波形の一例を示している。図10(a)、(b)における横軸は、角度θを示している。符号75は、理想的な正弦曲線を示している。符号76で示す波形は、出力信号S22に含まれる第3の誤差成分の波形を示している。符号77で示す波形は、MR素子に起因して歪んだ出力信号S22の波形を示している。ここで、出力信号S12と出力信号S22を加算して、第2の信号S2を生成する場合を考える。この場合、第2の信号S2を生成する際に、出力信号S12に含まれる第3の誤差成分の位相と出力信号S22に含まれる第3の誤差成分の位相は、互いに逆相になる。これにより、出力信号S12,S22に含まれる第3の誤差成分が相殺される。
図10に示した出力信号S12,S22に含まれる第3の誤差成分の振幅の大きさは、互いに等しくてもよいし、等しくなくてもよい。特に、出力信号S12,S22に含まれる第3の誤差成分の振幅の大きさが互いに等しい場合には、第2の信号S2を生成する際に、出力信号S12,S22に含まれる第3の誤差成分が相殺されて、第2の信号S2に含まれる第3の誤差成分は、理論上、0になる。以下、これについて説明する。前述のように、出力信号S12,S22に含まれる第3の誤差成分の振幅をpで表し、θ1,θ2を、それぞれθ+π/6,θ−π/6と表すと、規格化前の第2の信号S2は、下記の式(3)によって表される。
S2=S12+S22
=cosθ1+p・cos3θ1+cosθ2+p・cos3θ2
=cos(θ+π/6)+p・cos3(θ+π/6)
+cos(θ−π/6)+p・cos3(θ−π/6)
=cosθ・cos(π/6)−sinθ・sin(π/6)
+cosθ・cos(−π/6)−sinθ・sin(−π/6)
+p{cos(3θ+π/2)+cos(3θ−π/2)}
=2cosθ・cos(π/6)+p(−sin3θ+sin3θ)
=1.73cosθ …(3)
式(3)において、cosθ1は、出力信号S12に含まれる理想的な正弦曲線の成分を表している。cosθ2は、出力信号S22に含まれる理想的な正弦曲線の成分を表している。p・cos3(θ+π/6)は、出力信号S12に含まれる第3の誤差成分を表している。p・cos3(θ−π/6)は、出力信号S22に含まれる第3の誤差成分を表している。式(3)から理解されるように、出力信号S12と出力信号S22を加算すると、出力信号S12,S22に含まれる第3の誤差成分が相殺されて、第2の信号S2に含まれる第3の誤差成分は、理論上、0になる。
図11は、図9に示した出力信号S11,S21を加算して得られた第1の信号S1の波形(符号81)と、図10に示した出力信号S12,S22を加算して得られた第2の信号S2の波形(符号82)を示している。図11における横軸は、角度θを示している。図11に示したように、出力信号S11,S21に含まれる第3の誤差成分が相殺されて、第1の信号S1の波形は、歪みが低減された、すなわち第3の誤差成分が低減された正弦曲線となる。同様に、出力信号S12,S22に含まれる第3の誤差成分が相殺されて、第2の信号S2の波形は、歪みが低減された、すなわち第3の誤差成分が低減された正弦曲線となる。
次に、第1の信号S1が後述する第1の誤差成分を含まず、第2の信号S2が後述する第2の誤差成分を含まないと仮定した場合における角度検出値θsの算出方法について説明する。この場合には、以下の式(4)によって、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する角度検出値θsを算出することができる。なお、式(4)中のS1,S2は、規格化後の第1および第2の信号である。
θs=atan(S1/S2) …(4)
より詳しく説明すると、前述の式(1)におけるθsの求め方と同様に、式(4)と、S1とS2の正負の組み合わせの判定により、360°の範囲内でθsを求めることができる。
なお、規格化前の第1および第2の信号S1,S2がそれぞれ式(2),(3)によって表される場合には、式(4)におけるS1/S2はsinθ/cosθと等しくなり、式(4)で算出されるθsはθと等しくなる。この場合、角度検出値θsに含まれる角度誤差は、理論上、0になる。このように、本実施の形態によれば、MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪み、各出力信号が第3の誤差成分を含む場合であっても、MR素子に起因した角度検出値θsの誤差を低減することが可能になる。
なお、本実施の形態において、出力信号S11,S21の位相差は、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)に限らず、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の奇数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)であればよい。この場合に、出力信号S11,S21を加算して第1の信号S1を生成する際に、出力信号S11,S21に含まれる第3の誤差成分が相殺されて、角度検出値θsの誤差を低減することができる。同様に、出力信号S12,S22の位相差は、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)に限らず、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の奇数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)であればよい。この場合に、出力信号S12,S22を加算して第2の信号S2を生成する際に、出力信号S12,S22に含まれる第3の誤差成分が相殺されて、角度検出値θsの誤差を低減することができる。
本実施の形態では、第1の位置P1と第2の位置P2は、回転磁界MFの回転方向について同じ位置である。この場合、第1の方向D1と第3の方向D3を、回転磁界MFの回転方向について、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の奇数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)に相当する空間上の角度だけ異ならせることにより、出力信号S11,S21の位相差を、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の奇数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)とすることができる。図2に示した例では、第1の方向D1と第3の方向D3を、回転磁界MFの回転方向について、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)に相当する空間上の角度すなわち60°だけ異ならせている。
また、出力信号S11,S21の位相差は、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の奇数倍に限らず、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の偶数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)であってもよい。この場合、出力信号S11に含まれる第3の誤差成分の位相と出力信号S21に含まれる第3の誤差成分の位相は、第1の信号S1を生成する際に、同じ位相になる。この場合、例えば、出力信号S11から出力信号S21を減算して、これを規格化して第1の信号S1とする。これにより、出力信号S11,S21に含まれる第3の誤差成分を相殺することができる。同様に、出力信号S12,S22の位相差は、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の奇数倍に限らず、第3の誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の偶数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)であってもよい。この場合、出力信号S12に含まれる第3の誤差成分の位相と出力信号S22に含まれる第3の誤差成分の位相は、第2の信号S2を生成する際に、同じ位相になる。この場合、例えば、出力信号S12から出力信号S22を減算して、これを規格化して第2の信号S2とする。これにより、出力信号S12,S22に含まれる第3の誤差成分を相殺することができる。
出力信号S11,S21の位相差、ならびに出力信号S12,S22の位相差は、信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍であることが好ましい。しかし、第1の信号S1において、出力信号S11,S21に比べて、信号周期Tの1/3の周期の第3の誤差成分が低減され、第2の信号S2において、出力信号S12,S22に比べて、信号周期Tの1/3の周期の第3の誤差成分が低減される範囲内であれば、出力信号S11,S21の位相差、ならびに出力信号S12,S22の位相差は、信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍からずれていてもよい。
また、本実施の形態では、MR素子における磁化固定層の磁化の方向以外は全く同じ構成の2つの検出部10,20を用いて角度検出値を求めている。そのため、各差分回路の出力信号に含まれる第3の誤差成分が温度の関数であったとしても、温度による第3の誤差成分の変動分も含めて各差分回路の出力信号に含まれる第3の誤差成分を相殺して、角度検出値を求めることができる。そのため、本実施の形態によれば、最終的に、温度による誤差の変動の少ない角度検出値を得ることが可能になる。
次に、第1の信号S1が第1の誤差成分を含み、第2の信号S2が第2の誤差成分を含む場合における角度検出値θsの算出方法と、本実施の形態に係る回転磁界センサ1の作用および効果について説明する。
まず、第1の信号S1が第1の誤差成分を含み、第2の信号S2が第2の誤差成分を含む場合について説明する。前述のように、MR素子の自由層の磁化方向と回転磁界MFの方向の不一致は、MR素子の出力信号波形を歪ませる。その原因としては、前述のMR素子の自由層の形状異方性と保磁力の影響の他に、自由層の誘導磁気異方性の影響がある。この誘導磁気異方性は、例えば、回転磁界センサ1を所定の箇所に設置した後に、MR素子に特定の方向の外部磁界が印加されたままで、MR素子を含む回転磁界センサ1の設置箇所の温度が一旦上昇した後、下降した場合に生じる。自由層が誘導磁気異方性を有していると、自由層の磁化の方向が回転磁界の方向に正確に追従しなくなり、その結果、MR素子の出力信号波形が正弦曲線から歪む。この場合、正弦曲線から歪んだ出力信号は、理想的な正弦曲線の成分の他に、回転磁界MFの方向の変化に依存する誤差成分を含む。
図12および図13は、正弦曲線から歪んだ出力信号の波形の一例を示している。図12において、(a)は、差分回路111の出力信号S11の波形を示している。図12において、(b)は、差分回路121の出力信号S22の波形を示している。図12(a)、(b)において、横軸は角度θを示し、縦軸は、図6および図7と同様の「信号値」を示している。なお、図12では、図9に示した波形と同じ波形については、図9と同じ符号を用いて示している。符号60,65は、理想的な正弦曲線を示している。符号61,66で示す波形は、各出力信号に含まれる第3の誤差成分の波形を示している。符号63,68で示す波形は、各出力信号に含まれる回転磁界MFの方向の変化に依存する誤差成分の波形を示している。符号64,69で示す波形は、MR素子に起因して歪んだ出力信号の波形を示している。なお、図12に示した各波形は、シミュレーションによって作成したものである。図12に示したように、出力信号S11に含まれる符号63で示した誤差成分の変化と、出力信号S21に含まれる符号68で示した誤差成分の変化は等しい。符号63,68で示した誤差成分は、前述の自由層の誘導磁気異方性に起因して生じる。
図13において、(a)は、差分回路112の出力信号S12の波形を示している。図13において、(b)は、差分回路122の出力信号S22の波形を示している。図13(a)、(b)において、横軸は角度θを示し、縦軸は、図6および図7と同様の「信号値」を示している。なお、図13では、図10に示した波形と同じ波形については、図10と同じ符号を用いて示している。符号70,75は、理想的な正弦曲線を示している。符号71,76で示す波形は、各出力信号に含まれる第3の誤差成分の波形を示している。符号73,78で示す波形は、各出力信号に含まれる回転磁界MFの方向の変化に依存する誤差成分の波形を示している。符号74,79で示す波形は、MR素子に起因して歪んだ出力信号の波形を示している。なお、図13に示した各波形は、シミュレーションによって作成したものである。図13に示したように、出力信号S12に含まれる符号73で示した誤差成分と、出力信号S22に含まれる符号78で示した誤差成分の変化は等しい。符号73,78で示した誤差成分は、前述の自由層の誘導磁気異方性に起因して生じる。
図12に示したように、符号63で示した誤差成分と符号68で示した誤差成分は、互い同期して変化し、且つそれらの周期は信号周期Tの1/3、すなわち2π/3(120°)である。同様に、図13に示したように、符号73で示した誤差成分と符号78で示した誤差成分は、互い同期して変化し、且つそれらの周期は信号周期Tの1/3、すなわち2π/3(120°)である。このように、符号63,68,73,78で示す誤差成分の周期は、第3の誤差成分の周期(第3の誤差成分周期)と等しい。しかし、符号63,68,73,78で示す誤差成分の位相は、符号60,65,70,75で示す理想的な正弦曲線の位相とは必ずしも一致せず、第3の誤差成分の位相とも必ずしも一致しない。それは、前述のように回転磁界センサ1の設置後に自由層の誘導磁気異方性が生じる場合には、誘導磁気異方性による磁化容易方向が任意の方向になるためである。以下、符号63,68,73,78で示す誤差成分を非同位相誤差成分と呼ぶ。非同位相誤差成分によって生じる角度検出値θsの誤差は、前述の第3の誤差成分を低減する方法では低減することができない。そこで、本実施の形態では、それぞれ第3の誤差成分が低減された第1および第2の信号S1,S2を、角度検出部3において、以下で説明する方法によって補正することにより、非同位相誤差成分によって生じる角度検出値θsの誤差を低減する。
なお、符号63,68,73,78で示した各非同位相誤差成分の振幅の大きさは、互いに等しくてもよいし、等しくなくてもよい。以下の説明では、説明を簡単にするために、符号63,68,73,78で示した各非同位相誤差成分の振幅の大きさは、互いに等しいものとする。
まず、第3の誤差成分と非同位相誤差成分とを含む出力信号S11,S12,S21,S22について説明する。第3の誤差成分の振幅をpとし、非同位相誤差成分の振幅をfとし、θ=0における非同位相誤差成分の位相である初期位相をφとすると、出力信号S11,S12,S21,S22は、それぞれ、下記の式(5)〜(8)によって表される。φの値は任意である。
S11=sinθ1−p・sin3θ1+f・sin(3θ+φ) …(5)
S12=cosθ1+p・cos3θ1+f・cos(3θ+φ) …(6)
S21=sinθ2−p・sin3θ2+f・sin(3θ+φ) …(7)
S22=cosθ2+p・cos3θ2+f・cos(3θ+φ) …(8)
θ1,θ2を、それぞれθ+π/6,θ−π/6と表すと、第1の信号S1は、下記の式(9)によって表される。
S1=S11+S21
=sinθ1−p・sin3θ1+f・sin(3θ+φ)
+sinθ2−p・sin3θ2+f・sin(3θ+φ)
=sin(θ+π/6)−p・sin3(θ+π/6)
+sin(θ−π/6)−p・sin3(θ−π/6)
+2f・sin(3θ+φ)
=1.73sinθ+2f・sin(3θ+φ) …(9)
図9および式(2)を参照して説明したように、出力信号S11と出力信号S21を加算すると、各出力信号に含まれる第3の誤差成分が相殺される。しかし、各出力信号に含まれる非同位相誤差成分は相殺されず、第1の信号S1は、非同位相誤差成分に起因した誤差成分を含んでいる。以下、非同位相誤差成分に起因した第1の信号S1の誤差成分を第1の誤差成分と呼ぶ。
また、式(9)と同様に、第2の信号S2は、下記の式(10)によって表される。
S2=S12+S22
=cosθ1+p・cos3θ1+f・cos(3θ+φ)
+cosθ2+p・cos3θ2+f・cos(3θ+φ)
=cos(θ+π/6)+p・cos3(θ+π/6)
+cos(θ−π/6)+p・cos3(θ−π/6)
+2f・cos(3θ+φ)
=1.73cosθ+2f・cos(3θ+φ) …(10)
図10および式(3)を参照して説明したように、出力信号S12と出力信号S22を加算すると、各出力信号に含まれる第3の誤差成分が相殺される。しかし、各出力信号に含まれる非同位相誤差成分は相殺されず、第2の信号S2は、非同位相誤差成分に起因した誤差成分を含んでいる。以下、非同位相誤差成分に起因した第2の信号S2の誤差成分を第2の誤差成分と呼ぶ。
次に、本実施の形態における角度検出値θsの算出方法について説明する。第1および第2の演算回路131,132は、回転磁界の互いに異なる方向の成分の強度に対応した第1および第2の信号S1,S2であって、振幅が等しくなるように規格化された第1および第2の信号S1,S2を生成する。この規格化後の第1および第2の信号S1,S2は、角度検出部3に入力される。角度検出部3では、まず、第1の演算部31によって、第1の信号S1の2乗と第2の信号S2の2乗との和よりなり、信号周期Tの1/2の周期の2乗和信号S12+S22を生成する。より詳しく説明すると、第1の演算部31は、第1および第2の信号S1,S2に基づいて暫定的角度検出値θtを算出すると共に、2乗和信号S12+S22を暫定的角度検出値θtの関数として表す。
ここで、図14および図15を参照して、2乗和信号の生成過程と2乗和信号の性質について説明する。図14は、図12および図13に示した各出力信号の波形に基づいて生成された第1および第2の信号S1,S2の波形を示している。図14において、(a)は、規格化前の第1の信号S1の波形(符号91)と、規格化後の第1の信号S1の波形(符号92)と、第1の補正後信号の波形(符号93)を示している。図14において、(b)は、規格化前の第2の信号S2の波形(符号94)と、規格化後の第2の信号S2の波形(符号95)と、第2の補正後信号の波形(符号96)を示している。図14(a)、(b)において、横軸は角度θを示し、縦軸の「信号値」は、規格化後の信号の最大値を1として表した信号の値を示している。なお、第1および第2の補正後信号については、後で詳しく説明する。図14に示したように、規格化後の第1の信号S1と第2の信号S2は、それぞれ第1の誤差成分、第2の誤差成分を含んでいるため、正弦曲線から歪んでいる。
第1の演算部31は、第1および第2の信号S1,S2に基づいて、下記の式(11)によって、暫定的角度検出値θtを算出する。暫定的角度検出値θtは、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θの暫定的な検出値である。
θt=atan(S1/S2) …(11)
第1の演算部31は、2乗和信号S12+S22を暫定的角度検出値θtの関数として表す。図15は、暫定的角度検出値θtの関数として表した2乗和信号S12+S22の波形を示している。図15における横軸は暫定的角度検出値θtを示し、縦軸は2乗和信号S12+S22の値を示している。
第1の信号S1は、第1の理想成分と第1の誤差成分とを含んでいる。第2の信号S2は、第2の理想成分と第2の誤差成分とを含んでいる。第1の理想成分と第2の理想成分は、互いに等しい信号周期で、理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する。第2の理想成分の位相は、第1の理想成分の位相と異なっている。具体的には、第2の理想成分の位相は、第1の理想成分の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっている。第1の理想成分の2乗と第2の理想成分の2乗との和は一定値である。
もし、第1の信号S1が第1の誤差成分を含まず、第2の信号S2が第2の誤差成分を含まないとすると、2乗和信号S12+S22は、第1の理想成分の2乗と第2の理想成分の2乗との和と等しくなり、一定値になる。第1の信号S1が第1の誤差成分を含み、第2の信号S2が第2の誤差成分を含む場合には、2乗和信号S12+S22は、図15に示したように、信号周期Tの1/2の周期で変化する信号となる。2乗和信号S12+S22の振幅と初期位相は、第1および第2の誤差成分の振幅と初期位相に依存する。この性質を利用して、本実施の形態では、第2の演算部32によって、2乗和信号S12+S22に基づいて第1の誤差成分推定値と第2の誤差成分推定値とを算出する。
第1の信号S1が第1の誤差成分を含み、第2の信号S2が第2の誤差成分を含んでいる場合、第1の信号S1は、sinθ+F・sin(3θ+φ)と表すことができ、第2の信号S2は、cosθ+F・cos(3θ+φ)と表すことができる。Fは、第1および第2の信号S1,S2に含まれる第1および第2の誤差成分の振幅を表し、式(5)〜(8)で表した出力信号S11,S12,S21,S22に含まれる非同位相誤差成分の振幅fと対応関係を有する。具体的には、F=2f/1.73となる。理論的には、2乗和信号S12+S22は、下記の式(12)によって表される。
S12+S22
={sinθ+F・sin(3θ+φ)}2
+{cosθ+F・cos(3θ+φ)}2
=sin2θ+cos2θ
+F2{sin2(3θ+φ)+cos2(3θ+φ)}
+2F{cosθ・cos(3θ+φ)+sinθ・sin(3θ+φ)}
=1+F2+2F・cos(θ−3θ−φ)
=1+F2+2F・cos(2θ+φ) …(12)
式(12)から理解されるように、理論的な2乗和信号S12+S22の振幅は2Fであり、理論的な2乗和信号S12+S22の初期位相はφである。このように、理論的な2乗和信号S12+S22の振幅と初期位相は、第1および第2の誤差成分の振幅Fと初期位相φに依存する。第2の演算部32は、図15に示したような暫定的角度検出値θtの関数として表した実際の2乗和信号S12+S22の波形から、実際の2乗和信号の振幅2Ftと、実際の2乗和信号の初期位相φtとを検出する。初期位相φtは、θt=0における実際の2乗和信号S12+S22の位相である。2Ftは、式(12)における2Fの推定値に相当し、φtは、式(12)におけるφの推定値に相当する。この場合、実際の2乗和信号S12+S22は、1+Ft2+2Ft・cos(2θt+φt)と表される。ここで、式(9)で表される規格化前の第1の信号S1をSaで割って規格化後の第1の信号S1が生成され、式(10)で表される規格化前の第2の信号S2をSbで割って規格化後の第2の信号S2が生成されたものとする。この場合、Ftは、f/(Sa+Sb)となる。これは、2f/1.73から求まるFとほぼ等しい。
ここで、実際の2乗和信号の振幅2Ftおよび初期位相φtの検出方法の具体例について説明する。第2の演算部32は、例えば、実際の2乗和信号S12+S22の波形から、2乗和信号S12+S22の最大値と最小値を検出し、最大値と最小値との差の1/2を振幅2Ftとして検出する。また、第2の演算部32は、実際の2乗和信号S12+S22の波形から、0以上2π未満の範囲内で、2乗和信号S12+S22が最大となる暫定的角度検出値θtの値を検出する。そして、検出した値が0以上π未満の場合には、その値をθmaxとし、検出した値がπ以上2π未満の場合には、その値からπを引いた値をθmaxとする。2θmax+φt=2πのときに2乗和信号S12+S22が最大となることから、第2の演算部32は、2π−2θmaxを初期位相φtとして検出する。
第2の演算部32は、実際の2乗和信号の振幅2Ftおよび初期位相φtと暫定的角度検出値θtとを用いて、第1および第2の誤差成分推定値et1,et2を算出する。具体的には、第1の誤差成分推定値et1はFt・sin(3θt+φt)として算出され、第2の誤差成分推定値et2はFt・cos(3θt+φt)として算出される。第2の演算部32は、2乗和信号S12+S22の1周期毎に、2Ftおよびφtを検出して第1および第2の誤差成分推定値et1,et2を更新してもよいし、2乗和信号S12+S22の複数の周期につき、1回、2Ftおよびφtを検出して第1および第2の誤差成分推定値et1,et2を更新してもよい。
角度検出部3では、次に、第3の演算部33によって、第1の信号S1から第1の誤差成分推定値et1を減算して第1の補正後信号St1を生成し、第2の信号S2から第2の誤差成分推定値et2を減算して第2の補正後信号St2を生成する。より詳しく説明すると、第3の演算部33は、信号生成部2より与えられる最新の第1の信号S1から、第2の演算部32において最後に更新された第1の誤差成分推定値et1を減算して第1の補正後信号St1を生成し、信号生成部2より与えられる最新の第2の信号S2から、第2の演算部32において最後に更新された第2の誤差成分推定値et2を減算して第2の補正後信号St2を生成する。そして、第3の演算部33は、第1および第2の補正後信号St1,St2に基づいて、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する角度検出値θsを算出する。図14において符号93で示す波形は、第1の補正後信号St1の波形を示し、図14において符号96で示す波形は、第2の補正後信号St2の波形を示している。角度検出値θsは、下記の式(13)によって算出される。
θs=atan(St1/St2)
=atan{(S1−et1)/(S2−et2)} …(13)
図16は、図14に示した第1および第2の信号S1,S2の波形(符号92,95)に基づいて、式(11)によって算出された暫定的角度検出値θtに含まれる角度誤差dθtと、図14に示した第1および第2の補正後信号St1,St2の波形(符号93,96)に基づいて、式(13)によって算出された角度検出値θsに含まれる角度誤差dθを示している。図16において、横軸は角度θを示し、縦軸は角度誤差を示している。図16に示されるように、角度誤差dθは、角度誤差dθtに比べて小さくなっている。
このように、本実施の形態によれば、第1の信号S1が非同位相誤差成分に起因した第1の誤差成分を含み、第2の信号S2が非同位相誤差成分に起因した第2の誤差成分を含む場合であっても、2乗和信号S12+S22の性質を利用することによって、第1および第2の誤差成分推定値et1,et2を算出することができる。本実施の形態によれば、第1の信号S1から第1の誤差成分推定値et1が減算されて生成された第1の補正後信号St1と、第2の信号S2から第2の誤差成分推定値et2が減算されて生成された第2の補正後信号St2に基づいて、角度検出値θsを算出することによって、角度検出値θsの誤差を低減することが可能になる。
以上のことから、本実施の形態によれば、磁気検出素子の出力信号に含まれる誤差成分の位相が任意になる場合であっても、検出角度の誤差を低減することが可能になる。
次に、実際の測定結果を参照して、本実施の形態によれば検出角度の誤差が低減されることについて説明する。図17は、差分回路111,112の出力信号S11,S12の実測値を示している。図17において、横軸は角度θを示し、縦軸は、図6および図7と同様の「信号値」を示している。なお、図示しないが、差分回路121,122の出力信号S21,S22の実測値は、出力信号S11,S12に対して位相がπ/3(60°)異なっている点を除いて、出力信号S11,S12の実測値と同じである。前述のように、第1の演算回路131は、出力信号S11,S21に基づいて、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度と回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、出力信号S11,S21に比べて、第3の誤差成分が低減された第1の信号S1を生成する。第2の演算回路132は、出力信号S12,S22に基づいて、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度と回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、出力信号S12,S22に比べて、第3の誤差成分が低減された第2の信号S2を生成する。第1の信号S1は、第1の理想成分と第1の誤差成分とを含んでいる。第2の信号S2は、第2の理想成分と第2の誤差成分とを含んでいる。
第1の演算部31は、2乗和信号S12+S22を生成する。第1の演算部31は、第1および第2の信号S1,S2に基づいて暫定的角度検出値θtを算出すると共に、2乗和信号S12+S22を暫定的角度検出値θtの関数として表す。図18は、2乗和信号S12+S22の実測値を示している。図18において、横軸は暫定的角度検出値θtを示し、縦軸は2乗和信号S12+S22の値を示している。
第2の演算部32は、図18に示した2乗和信号S12+S22に基づいて、第1および第2の誤差成分推定値et1,et2を算出する。第3の演算部33は、第1の信号S1から第1の誤差成分推定値et1を減算して第1の補正後信号St1を生成し、第2の信号S2から第2の誤差成分推定値et2を減算して第2の補正後信号St2を生成すると共に、第1および第2の補正後信号St1,St2に基づいて、角度検出値θsを算出する。
図19は、上述のようにして算出された角度検出値θsに含まれる角度誤差dθを示している。なお、図19には、第1および第2の信号S1,S2に基づいて算出された暫定的角度検出値θtに含まれる角度誤差dθtも示している。図19において、横軸は角度θを示し、縦軸は角度誤差を示している。図19に示されるように、角度誤差dθは、角度誤差dθtに比べて小さくなっている。図19に示した例では、角度誤差dθtの振幅は±0.15°であり、角度誤差dθの振幅は±0.07°であった。
このように、本実施の形態によれば、第1の信号S1から第1の誤差成分推定値et1が減算されて生成された第1の補正後信号St1と、第2の信号S2から第2の誤差成分推定値et2が減算されて生成された第2の補正後信号St2とに基づいて、角度検出値θsを算出することによって、角度検出値θsに含まれる角度誤差を小さくすることができる。
次に、回転磁界センサ1のフェイルセーフ機能について詳しく説明する。フェイルセーフ機能は、第1ないし第4の検出回路11,12,21,22のいずれかが故障した場合であっても、角度検出部3が角度検出値θsを出力できるようにする機能である。以下、図3を参照して、フェイルセーフ機能の動作、すなわち制御部4の動作について説明する。通常時、すなわち第1ないし第4の検出回路11,12,21,22がいずれも正常に動作している場合には、制御部4は、図3に示したスイッチSW1〜SW8を導通状態にする。この場合、角度検出部3は、式(5)〜(13)を参照して説明した方法によって角度検出値θsを算出する。
第3および第4の検出回路21,22の一方または両方が故障した場合には、制御部4は、スイッチSW1〜SW4を導通状態にすると共に、スイッチSW5〜SW8を非導通状態にする。この場合、第1の演算回路131には、差分回路111の出力信号S11のみが入力され、第2の演算回路132には、差分回路112の出力信号S12のみが入力される。この場合には、規格化前の第1の信号S1は出力信号S11と等しくなり、規格化前の第2の信号S2は出力信号S12と等しくなる。角度検出部3は、下記の式(14)によって、角度検出値θsを算出する。
θs=atan(S1/S2)−π/6
=atan(S11/S12)−π/6 …(14)
なお、出力信号S11が理想的な正弦曲線の成分sinθ1のみを含み、出力信号S12が理想的な正弦曲線の成分cosθ1のみを含む場合、式(14)におけるS11/S12はsinθ1/cosθ1と等しくなり、式(14)で算出されるθsはθ1−π/6と等しくなる。
また、角度検出部3は、式(5)〜(13)を参照して説明した方法によって角度検出値θsを算出してもよい。すなわち、この方法では、第1の演算部31は、規格化後の第1の信号S1すなわち規格化後の出力信号S11の2乗と、規格化後の第2の信号S2すなわち規格化後の出力信号S12の2乗との和よりなり、信号周期Tの1/2の周期の2乗和信号S112+S122を生成する。第1の演算部31は、規格化後の出力信号S11,S12に基づいて暫定的角度検出値を算出すると共に、2乗和信号S112+S122を暫定的角度検出値の関数として表す。第2の演算部32は、2乗和信号S112+S122に基づいて、第1および第2の誤差成分推定値を算出する。第3の演算部33は、規格化後の出力信号S11から第1の誤差成分推定値を減算して第1の補正後信号を生成し、規格化後の出力信号S12から第2の誤差成分推定値を減算して第2の補正後信号を生成すると共に、第1および第2の補正後信号に基づいて、角度検出値θsを算出する。
第1および第2の検出回路11,12の一方または両方が故障した場合には、制御部4は、スイッチSW1〜SW4を非導通状態にすると共に、スイッチSW5〜SW8を導通状態にする。この場合、第1の演算回路131には、差分回路121の出力信号S21のみが入力され、第2の演算回路132には、差分回路122の出力信号S22のみが入力される。この場合には、規格化前の第1の信号S1は出力信号S21と等しくなり、規格化前の第2の信号S2は出力信号S22と等しくなる。角度検出部3は、下記の式(15)によって、角度検出値θsを算出する。
θs=atan(S1/S2)+π/6
=atan(S21/S22)+π/6 …(15)
なお、出力信号S21が理想的な正弦曲線の成分sinθ2のみを含み、出力信号S22が理想的な正弦曲線の成分cosθ2のみを含む場合、式(15)におけるS21/S22はsinθ2/cosθ2と等しくなり、式(15)で算出されるθsはθ2+π/6と等しくなる。
また、角度検出部3は、式(5)〜(13)を参照して説明した方法によって角度検出値θsを算出してもよい。すなわち、この方法では、角度検出部3における第1の演算部31は、規格化後の第1の信号S1すなわち規格化後の出力信号S21の2乗と、規格化後の第2の信号S2すなわち規格化後の出力信号S22の2乗との和よりなり、信号周期Tの1/2の周期の2乗和信号S212+S222を生成する。第1の演算部31は、規格化後の出力信号S21,S22に基づいて暫定的角度検出値を算出すると共に、2乗和信号S212+S222を暫定的角度検出値の関数として表す。第2の演算部32は、2乗和信号S212+S222に基づいて、第1および第2の誤差成分推定値を算出する。第3の演算部33は、規格化後の出力信号S21から第1の誤差成分推定値を減算して第1の補正後信号を生成し、規格化後の出力信号S22から第2の誤差成分推定値を減算して第2の補正後信号を生成すると共に、第1および第2の補正後信号に基づいて、角度検出値θsを算出する。
制御部4は、第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の故障を、例えば、以下のようにして判定する。制御部4は、図3に示したブリッジ回路14の抵抗値、出力ポートE11,E12の電位、A/D変換器AD1,AD2の出力値のうち、少なくとも1つを監視する。なお、ブリッジ回路14の抵抗値とは、電源ポートV1とグランドポートG1との間の抵抗値を言う。制御部4は、制御部4によって監視される値が、予め決められた正常値の範囲内であるか否かによって、あるいは異常値であるか否かによって、第1の検出回路11が故障しているか否かを判定する。一例として、制御部4が出力ポートE11,E12の電位を監視する場合、電源ポートV1に入力される電源電圧が5Vであり、出力ポートE11,E12の電位が0Vまたは5Vである場合には、制御部4は、出力ポートE11,E12の電位が異常値であると判定し、第1の検出回路11が故障していると判定する。制御部4は、第1の検出回路11の故障の判定方法と同様の方法によって、他の検出回路12,21,22についても、故障しているか否かを判定する。
[変形例]
次に、図20ないし図22を参照して、本実施の形態における第1ないし第3の変形例について説明する。始めに、図20を参照して、本実施の形態における第1の変形例について説明する。図20は、第1の変形例における演算部を示す回路図である。第1の変形例における回転磁界センサは、図3に示した演算部30の代りに、図20に示した演算部130を備えている。第1の変形例における回転磁界センサのその他の構成は、図3に示した回転磁界センサ1と同じである。
演算部130は、図3に示した演算部30と同様に、第1および第2の演算回路131,132と、入力ポートIN1〜IN8および出力ポートOUT1,OUT2とを有している。また、演算部130は、図3に示した演算部30におけるA/D変換器AD1〜AD8、スイッチSW1〜SW8および差分回路111,112,121,122の代りに、A/D変換器AD11,AD12,AD21,AD22、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22および差分検出器(差動増幅器)311,312,321,322を有している。スイッチSW11,SW12,SW21,SW22は、それぞれ、第1のポートと第2のポートとを有し、第1のポートと第2のポートとの間における導通状態と非導通状態が選択されるようになっている。差分検出器311,312,321,322は、それぞれ、第1および第2の入力端と出力端とを有している。
差分検出器311の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN1,IN2に接続されている。差分検出器312の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN3,IN4に接続されている。差分検出器321の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN5,IN6に接続されている。差分検出器322の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN7,IN8に接続されている。A/D変換器AD11,AD12,AD21,AD22の入力端は、それぞれ、差分検出器311,312,321,322の出力端に接続されている。スイッチSW11,SW12,SW21,SW22の第1のポートは、それぞれ、A/D変換器AD11,AD12,AD21,AD22の出力端に接続されている。
差分検出器311は、図3に示した出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を出力する。A/D変換器AD11は、差分検出器311から出力された信号をデジタル信号に変換して出力する。差分検出器312は、図3に示した出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を出力する。A/D変換器AD12は、差分検出器312から出力された信号をデジタル信号に変換して出力する。差分検出器321は、図3に示した出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号を出力する。A/D変換器AD21は、差分検出器321から出力された信号をデジタル信号に変換して出力する。差分検出器322は、図3に示した出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号を出力する。A/D変換器AD22は、差分検出器322から出力された信号をデジタル信号に変換して出力する。理想的には、A/D変換器AD11,AD21の出力信号の波形は、それぞれ角度θ1,θ2に依存したサイン波形になる。理想的には、A/D変換器AD12,AD22の出力信号の波形は、それぞれ角度θ1,θ2に依存したコサイン波形になる。以下、A/D変換器AD11,AD12,AD21,AD22の出力信号を、それぞれ、S11,S12,S21,S22と表す。
第1の変形例では、第1の演算回路131の第1の入力端は、スイッチSW11の第2のポートに接続されている。第1の演算回路131の第2の入力端は、スイッチSW21の第2のポートに接続されている。第2の演算回路132の第1の入力端は、スイッチSW12の第2のポートに接続されている。第2の演算回路132の第2の入力端は、スイッチSW22の第2のポートに接続されている。
通常時には、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22は導通状態になっている。このとき、A/D変換器AD11は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号(S11)を第1の演算回路131に出力する。A/D変換器AD12は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号(S12)を第2の演算回路132に出力する。A/D変換器AD21は、出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号(S21)を第1の演算回路131に出力する。A/D変換器AD22は、出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号(S22)を第2の演算回路132に出力する。
第1の変形例では、通常時、すなわち図3に示した第1ないし第4の検出回路11,12,21,22がいずれも正常に動作している場合には、制御部4は、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22を導通状態にする。図3に示した第3および第4の検出回路21,22の一方または両方が故障した場合には、制御部4は、スイッチSW11,SW12を導通状態にすると共に、スイッチSW21,SW22を非導通状態にする。図3に示した第1および第2の検出回路11,12の一方または両方が故障した場合には、制御部4は、スイッチSW11,SW12を非導通状態にすると共に、スイッチSW21,SW22を導通状態にする。
また、第1の変形例では、制御部4は、図3に示した第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の故障を、例えば、以下のようにして判定する。制御部4は、図3に示したブリッジ回路14の抵抗値、出力ポートE11,E12の電位、差分検出器311の出力値、A/D変換器AD11の出力値のうち、少なくとも1つを監視して、第1の検出回路11が故障しているか否かを判定する。制御部4は、第1の検出回路11の故障の判定方法と同様の方法によって、他の検出回路12,21,22についても、故障しているか否かを判定する。
次に、図21を参照して、本実施の形態の第2の変形例について説明する。図21は、第2の変形例における演算部を示す回路図である。第2の変形例における回転磁界センサは、図3に示した演算部30の代りに、図21に示した演算部230を備えている。第2の変形例における回転磁界センサのその他の構成は、図3に示した回転磁界センサ1と同じである。
演算部230は、図20に示した演算部130と同様に、第1および第2の演算回路131,132と、入力ポートIN1〜IN8および出力ポートOUT1,OUT2と、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22と、差分検出器311,312,321,322とを有している。演算部230は、図20に示した演算部130におけるA/D変換器AD11,AD12,AD21,AD22を有していない。
第2の変形例では、差分検出器311の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN1,IN2に接続されている。差分検出器312の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN3,IN4に接続されている。差分検出器321の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN6,IN5に接続されている。差分検出器322の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN8,IN7に接続されている。スイッチSW11,SW12,SW21,SW22の第1のポートは、それぞれ、差分検出器311,312,321,322の出力端に接続されている。
差分検出器311は、図3に示した出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を出力する。差分検出器312は、図3に示した出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を出力する。差分検出器321は、図3に示した出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号であって、第1の変形例における差分検出器321が出力する信号とは正負の符号が反対の信号を出力する。差分検出器322は、図3に示した出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号であって、第1の変形例における差分検出器322が出力する信号とは正負の符号が反対の信号を出力する。以下、差分検出器311,312,321,322の出力信号を、それぞれ、S11,S12,−S21,−S22と表す。
また、第2の変形例では、第1の演算回路131は、差分検出器313と、A/D変換器AD31と、規格化部314とを有している。差分検出器313は、第1および第2の入力端と出力端とを有している。A/D変換器AD31は、入力端と出力端とを有している。規格化部314は、入力端と出力端とを有している。差分検出器313の第1の入力端は、スイッチSW11の第2のポートに接続されている。差分検出器313の第2の入力端は、スイッチSW21の第2のポートに接続されている。A/D変換器AD31の入力端は、差分検出器313の出力端に接続されている。規格化部314の入力端は、A/D変換器AD31の出力端に接続されている。規格化部314の出力端は、出力ポートOUT1に接続されている。
通常時には、スイッチSW11,SW21は導通状態になっている。このとき、差分検出器311は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号(S11)を差分検出器313に出力する。差分検出器321は、出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号(−S21)を差分検出器313に出力する。差分検出器313は、差分検出器311の出力信号から差分検出器321の出力信号を減算した信号(S11+S21)を出力する。A/D変換器AD31は、差分検出器313から出力された信号をデジタル信号に変換して出力する。規格化部314は、A/D変換器AD31から出力された信号を規格化して出力する。
また、第2の変形例では、第2の演算回路132は、差分検出器323と、A/D変換器AD32と、規格化部324とを有している。差分検出器323は、第1および第2の入力端と出力端とを有している。A/D変換器AD32は、入力端と出力端とを有している。規格化部324は、入力端と出力端とを有している。差分検出器323の第1の入力端は、スイッチSW12の第2のポートに接続されている。差分検出器323の第2の入力端は、スイッチSW22の第2のポートに接続されている。A/D変換器AD32の入力端は、差分検出器323の出力端に接続されている。規格化部324の入力端は、A/D変換器AD32の出力端に接続されている。規格化部324の出力端は、出力ポートOUT2に接続されている。
通常時には、スイッチSW12,SW22は導通状態になっている。このとき、差分検出器312は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号(S12)を差分検出器323に出力する。差分検出器322は、出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号(−S22)を差分検出器323に出力する。差分検出器323は、差分検出器312の出力信号から差分検出器322の出力信号を減算した信号(S12+S22)を出力する。A/D変換器AD32は、差分検出器323から出力された信号をデジタル信号に変換して出力する。規格化部324は、A/D変換器AD32から出力された信号を規格化して出力する。
第2の変形例では、制御部4は、図3に示した第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の故障を、例えば、以下のようにして判定する。制御部4は、図3に示したブリッジ回路14の抵抗値、出力ポートE11,E12の電位、差分検出器311の出力値、差分検出器313の出力値、A/D変換器AD31の出力値、規格化部314の出力値のうち、少なくとも1つを監視して、第1の検出回路11が故障しているか否かを判定する。制御部4は、第1の検出回路11の故障の判定方法と同様の方法によって、他の検出回路12,21,22についても、故障しているか否かを判定する。
次に、図22を参照して、本実施の形態の第3の変形例について説明する。図22は、第3の変形例における演算部を示す回路図である。第3の変形例における回転磁界センサは、図3に示した演算部30の代りに、図22に示した演算部330を備えている。第3の変形例における回転磁界センサのその他の構成は、図3に示した回転磁界センサ1と同じである。
演算部330は、図21に示した演算部230と同様に、第1および第2の演算回路131,132と、入力ポートIN1〜IN8および出力ポートOUT1,OUT2と、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22と、差分検出器311,312,321,322とを有している。差分検出器311,312,321,322の各入力端には、図20に示した第1の変形例と同じ入力ポートが接続されている。第1の演算回路131は、差分検出器313と、A/D変換器AD31と、規格化部314と、3つの抵抗器R51,R52,R53とを有している。第2の演算回路132は、差分検出器323と、A/D変換器AD32と、規格化部324と、3つの抵抗器R61,R62,R63とを有している。
第3の変形例では、スイッチSW11,SW21の第2のポートは、それぞれ、抵抗器R51,R52を介して差分検出器313の第1の入力端に接続されている。また、差分検出器313の出力端は、抵抗器R53を介して差分検出器313の第1の入力端に接続されている。差分検出器313の第2の入力端は、グランドに接続されている。通常時には、スイッチSW11,SW21は導通状態になっている。このとき、差分検出器311は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号(S11)を差分検出器313に出力する。差分検出器321は、出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号(S21)を差分検出器313に出力する。差分検出器313は、差分検出器311の出力信号と差分検出器321の出力信号を加算した信号(S11+S21)を出力する。
また、第3の変形例では、スイッチSW12,SW22の第2のポートは、それぞれ、抵抗器R61,R62を介して差分検出器323の第1の入力端に接続されている。また、差分検出器323の出力端は、抵抗器R63を介して差分検出器323の第1の入力端に接続されている。差分検出器323の第2の入力端は、グランドに接続されている。通常時には、スイッチSW12,SW22は導通状態になっている。このとき、差分検出器312は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号(S12)を差分検出器323に出力する。差分検出器322は、出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号(S22)を差分検出器323に出力する。差分検出器323は、差分検出器312の出力信号と差分検出器322の出力信号を加算した信号(S12+S22)を出力する。
第3の変形例では、制御部4は、図3に示した第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の故障を、例えば、第2の変形例と同様の方法によって判定する。
[第2の実施の形態]
次に、図23を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図23は、本実施の形態に係る回転磁界センサの構成を示す説明図である。図23には、方向が回転する回転磁界を発生する手段の例として、1組以上のN極とS極が交互にリング状に配列された磁石6を示している。図23に示した例では、磁石6は、2組のN極とS極とを含んでいる。本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、磁石6の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。図23に示した例では、図23における紙面がXY平面となり、紙面に垂直な方向がZ方向となる。磁石6のN極とS極は、Z方向に平行な回転中心を中心として対称な位置に配置されている。磁石6は、回転中心を中心として回転する。これにより、磁石6が発生する磁界に基づいて、回転磁界が発生される。回転磁界は、回転中心(Z方向)を中心として回転する。図23に示した例では、磁石6は時計回り方向に回転し、回転磁界は反時計回り方向に回転する。
図23に示した例では、第1の検出部10が検出する回転磁界の一成分の方向を表す第1の方向D1を、磁石6の半径方向に設定している。第2の検出部20が検出する回転磁界の一成分の方向を表す第3の方向D3は、XY平面内において、第1の方向D1から、回転磁界の回転方向について60°回転した方向である。従って、第1の方向D1と第3の方向D3は、回転磁界の回転方向について60°だけ異なっている。なお、第3の方向D3は、XY平面内において、第1の方向D1から回転磁界の回転方向について−60°回転した方向であってもよい。
第1の方向D1と、第1の検出部10が検出する回転磁界の他の一成分の方向を表す第2の方向(図示せず)の関係は、第1の実施の形態における図2に示した第1の方向D1と第2の方向D2の関係と同じである。同様に、第3の方向D3と、第2の検出部20が検出する回転磁界の他の一成分の方向を表す第4の方向(図示せず)の関係は、第1の実施の形態における図2に示した第3の方向D3と第4の方向D4の関係と同じである。なお、第1の方向D1の代りに、第2の方向を磁石6の半径方向に設定してもよい。この場合、第4の方向は、XY平面内において、第2の方向から、回転磁界の回転方向について60°回転した方向である。
[変形例]
次に、図24ないし図26を参照して、本実施の形態における第1ないし第3の変形例について説明する。始めに、図24を参照して、本実施の形態における第1の変形例について説明する。図24は、本実施の形態における第1の変形例の回転磁界センサの構成を示す説明図である。第1の変形例における回転磁界センサ1の構成は、基本的には、図23に示した回転磁界センサと同様である。図24に示した例では、第1の方向D1と第3の方向D3を、回転磁界の回転方向について60°だけ異ならせながら、第1の方向D1と第3の方向D3を共に、XY平面内において、磁石6の半径方向に対して傾けている。磁石6の半径方向に対して第1の方向D1と第3の方向D3の各々がなす角度は、絶対値が等しい値すなわち−30°と30°(回転磁界の回転方向を正とする)であることが好ましい。それは、この場合には、検出部10と回転磁界との位置関係と、検出部20と回転磁界との位置関係とが同様になり、これらの位置関係が異なることによる補正が不要になるためである。
次に、図25を参照して、本実施の形態における第2の変形例について説明する。図25は、本実施の形態における第2の変形例の回転磁界センサの構成を示す説明図である。図25には、方向が回転する回転磁界を発生する手段の例として、複数組のN極とS極が交互に直線状に配列された磁石7を示している。第2の変形例における回転磁界センサ1は、磁石7の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。図25に示した例では、図25における紙面がXY平面となり、紙面に垂直な方向がZ方向となる。磁石7は、対象物の直線的な運動に連動して、その長手方向に直線的に移動する。これにより、磁石7が発生する磁界に基づいて、回転磁界が発生される。回転磁界は、Z方向を中心として回転する。
図25に示した例では、第1の方向D1を、XY平面内において、磁石7の移動方向に直交する方向に設定している。第3の方向D3は、XY平面内において、第1の方向D1から、回転磁界の回転方向について60°回転した方向である。従って、第1の方向D1と第3の方向D3は、回転磁界の回転方向について60°だけ異なっている。
次に、図26を参照して、本実施の形態における第3の変形例について説明する。図26は、本実施の形態における第3の変形例の回転磁界センサの構成を示す説明図である。第3の変形例における回転磁界センサ1の構成は、基本的には、図25に示した回転磁界センサ1と同様である。図26に示した例では、第1の方向D1と第3の方向D3を、回転磁界の回転方向について60°だけ異ならせながら、第1の方向D1と第3の方向D3を共に、XY平面内において、磁石7の移動方向に直交する方向に対して傾けている。第1の変形例と同様に、磁石7の移動方向に直交する方向に対して第1の方向D1と第3の方向D3の各々がなす角度は、絶対値が等しい値すなわち−30°と30°(回転磁界の回転方向を正とする)であることが好ましい。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、図27を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図27は、本実施の形態に係る回転磁界センサの構成を示す説明図である。本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、第2の実施の形態における図23および図24に示した例と同様に、磁石6の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。本実施の形態に係る回転磁界センサ1では、第1の検出部10が回転磁界を検出する位置である第1の位置P1と、第2の検出部20が回転磁界を検出する位置である第2の位置P2を互いに異なる位置としている。すなわち、本実施の形態では、第1の検出部10と第2の検出部20は、異なる位置に配置されている。第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、信号周期Tの1/2整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍に相当する。
図27に示した例では、磁石6は、2組のN極とS極とを含み、磁石6が1回転する間に、回転磁界は2回転する。この場合、第1の実施の形態における図3に示した差分回路111,112,121,122の出力信号における1周期すなわち電気角の360°は、磁石6の1/2回転すなわち磁石6の回転角の180°に相当する。各差分回路の出力信号に含まれる第3の誤差成分の周期(第3の誤差成分周期)は、信号周期Tの1/3であり、これは、電気角の120°、磁石6の回転角の60°に相当する。本実施の形態では、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、信号周期Tの1/6の整数倍、すなわち第3の誤差成分周期の1/2(電気角の60°)の整数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)に相当する。図27に示した例では、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、磁石6の回転角の30°の整数倍(回転角の90°の整数倍となる場合を除く)である。図27には、特に、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、磁石6の回転角の30°とした例を示している。
また、図27に示した例では、第1の検出部10が検出する回転磁界の一成分の方向を表す第1の方向D1と第2の検出部20が検出する回転磁界の一成分の方向を表す第3の方向D3を、共に磁石6の半径方向に設定している。第1の方向D1と、第1の検出部10が検出する回転磁界の他の一成分の方向を表す第2の方向(図示せず)の関係は、第1の実施の形態における図2に示した第1の方向D1と第2の方向D2の関係と同じである。同様に、第3の方向D3と、第2の検出部20が検出する回転磁界の他の一成分の方向を表す第4の方向(図示せず)の関係は、第1の実施の形態における図2に示した第3の方向D3と第4の方向D4の関係と同じである。これにより、第1の位置P1における回転磁界の第1の方向D1の成分の強度を表す信号である出力信号S11と第2の位置P2における回転磁界の第3の方向D3の成分の強度を表す信号である出力信号S21の位相差、および第1の位置P1における回転磁界の第2の方向の成分の強度を表す信号である出力信号S12と第2の位置P2における回転磁界の第4の方向の成分の強度を表す信号である出力信号S22の位相差は、いずれも、信号周期Tの1/6の整数倍、すなわち第3の誤差成分周期の1/2(電気角の60°)の整数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)となる。
なお、第1の方向D1と第3の方向D3の代りに、第2の方向と第4の方向を磁石6の半径方向に設定してもよい。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、出力信号S11,S21の位相差が、第3の誤差成分周期の1/2の整数倍であることから、第1の信号S1を生成する際に、出力信号S11,S21に含まれる第3の誤差成分が相殺される。また、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、出力信号S12,S22の位相差が、第3の誤差成分周期の1/2の整数倍であることから、第2の信号S2を生成する際に、出力信号S12,S22に含まれる第3の誤差成分が相殺される。これらのことから、本実施の形態によれば、角度検出値θsの誤差を低減することができる。
[変形例]
次に、図28を参照して、本実施の形態における変形例の回転磁界センサについて説明する。図28は、本実施の形態における変形例の回転磁界センサの構成を示す説明図である。変形例の回転磁界センサ1は、第2の実施の形態における図25および図26に示した例と同様に、磁石7の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。図28に示した例では、磁石7が、1ピッチ分すなわちN極とS極の1組分だけ移動すると回転磁界が1回転する。この場合、差分回路111,112,121,122の出力信号における1周期すなわち電気角の360°は、磁石7の1ピッチに相当する。出力信号に含まれる第3の誤差成分の周期(第3の誤差成分周期)は、信号周期Tの1/3であり、これは、1/3ピッチに相当する。本実施の形態では、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、信号周期Tの1/6の整数倍、すなわち第3の誤差成分周期の1/2(電気角の60°)の整数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)に相当する。図28に示した例では、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、磁石7の1/6ピッチの整数倍(1/2ピッチの整数倍となる場合を除く)である。図28には、特に、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、1/6ピッチとした例を示している。
また、図28に示した例では、第1の方向D1と第3の方向D3を、共にXY平面内において、磁石7の移動方向に直交する方向に設定している。これにより、出力信号S11,S21の位相差と出力信号S12,S22の位相差は、いずれも、信号周期Tの1/6の整数倍、すなわち第3の誤差成分周期の1/2(電気角の60°)の整数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)となる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、図29を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図29は、本実施の形態に係る回転磁界センサの構成を示す回路図である。本実施の形態に係る回転磁界センサ1では、ブリッジ回路14,16,24,26における全ての磁気検出素子として、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子を用いている。この場合には、回転磁界が1回転する間に、検出回路11,12,21,22の出力信号に対応する差分回路111,112,121,122の出力信号は2周期分変化する。従って、本実施の形態における差分回路111,112,121,122の出力信号の周期は、回転磁界の1/2回転に相当し、第1の実施の形態における差分回路111,112,121,122の出力信号の周期の1/2となる。また、本実施の形態では、出力信号に含まれる第3の誤差成分の周期(第3の誤差成分周期)も、第1の実施の形態における第3の誤差成分周期の1/2となる。
図29には、第1の検出回路11が回転磁界を検出するときの基準の方向である第1の方向D1と、第3の検出回路21が回転磁界を検出するときの基準の方向である第3の方向D3も示している。図29に示した例では、第3の方向D3は、XY平面内において、第1の方向D1から、回転磁界の回転方向について30°回転した方向である。第1の方向D1と第3の方向D3は、回転磁界の回転方向について30°だけ異なっている。なお、本実施の形態において、第3の方向D3は、XY平面内において、第1の方向D1から、回転磁界の回転方向について−30°回転した方向であってもよい。また、第2の検出回路12が回転磁界を検出するときの基準の方向である第2の方向(図示せず)は、第1の方向D1から、回転磁界の回転方向について−45°回転した方向である。また、第4の検出回路22が回転磁界を検出するときの基準の方向である第4の方向(図示せず)は、第3の方向D3から、回転磁界の回転方向について−45°回転した方向である。
第1の実施の形態と同様に、本実施の形態においても、出力信号S11,S21の位相差は、第3の誤差成分周期の1/2の整数倍であり、第1の信号S1を生成する際に、出力信号S11,S21に含まれる第3の誤差成分が相殺される。また、第1の実施の形態と同様に、本実施の形態においても、出力信号S12,S22の位相差は、第3の誤差成分周期の1/2の整数倍であり、第2の信号S2を生成する際に、出力信号S12,S22に含まれる第3の誤差成分が相殺される。これらのことから、本実施の形態によれば、角度検出値θsの誤差を低減することができる。
本実施の形態において、方向が回転する回転磁界を発生する手段として、第2の実施の形態における図23および図24に示した磁石6を使用する場合、または第2の実施の形態における図25および図26に示した磁石7を使用する場合を使用する場合には、第1の方向D1と第3の方向D3を、回転磁界の回転方向について30°だけ異ならせる。図24に示した例のように第1の方向D1と第3の方向D3を傾ける場合には、磁石6の半径方向に対して第1の方向D1と第3の方向D3の各々がなす角度は、絶対値が等しい値すなわち−15°と15°(回転磁界の回転方向を正とする)であることが好ましい。同様に、図26に示した例のように第1の方向D1と第3の方向D3を傾ける場合には、磁石7の移動方向に直交する方向に対して第1の方向D1と第3の方向D3の各々がなす角度は、絶対値が等しい値すなわち−15°と15°(回転磁界の回転方向を正とする)であることが好ましい。
また、本実施の形態において、第3の実施の形態と同様に、第1の検出部10と第2の検出部20を異なる位置に配置して、第1の位置P1と第2の位置P2を互いに異なる位置としてもよい。この場合には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、信号周期Tの1/6の整数倍、すなわち第3の誤差成分周期の1/2の整数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)に相当する量とする。この場合、図27に示した磁石6の外周部から発生する回転磁界の方向を、回転磁界センサ1によって検出する場合には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、磁石6の回転角の15°の整数倍(回転角の45°の整数倍となる場合を除く)である。また、図28に示した磁石7の外周部から発生する回転磁界の方向を、回転磁界センサ1によって検出する場合には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、磁石7の1/12ピッチの整数倍(1/4ピッチの整数倍となる場合を除く)とする。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態、第2の実施の形態または第3の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態において、AMR素子の代りに、ホール素子を用いてもよい。
[第5の実施の形態]
次に、図30ないし図32を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図30は、本実施の形態に係る回転磁界センサの構成を示すブロック図である。図31は、本実施の形態に係る回転磁界センサの構成を示す説明図である。図32は、本実施の形態における変形例の回転磁界センサの概略の構成を示す斜視図である。始めに、本実施の形態に係る回転磁界センサ201の構成について説明する。図31には、方向が回転する回転磁界を発生する手段の例として、第2の実施の形態における図23および図24に示した磁石6を示している。回転磁界センサ201は、第2の実施の形態における図23および図24に示した例と同様に、磁石6の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。
図30に示したように、回転磁界センサ201は、第1および第2の複合検出部210A,210Bを備えている。第1の複合検出部210Aは、第1の基準位置PRAにおける回転磁界の方向が第1の基準方向DRAに対してなす角度θAを検出するものである。第2の複合検出部210Bは、第2の基準位置PRBにおける回転磁界の方向が第2の基準方向DRBに対してなす角度θBを検出するものである。図31には、第1および第2の基準位置PRA,PRBと、第1および第2の基準方向DRA,DRBも示している。図31に示したように、第2の基準位置PRBは、第1の基準位置PRAに対して、回転磁界の回転の周期の1/4すなわち電気角90°に相当する量だけずれている。また、第1および第2の基準方向DRA,DRBを、いずれも、磁石6の半径方向に設定している。第2の基準位置PRBにおける回転磁界の方向が第2の基準方向DRBに対してなす角度θBは、第1の基準位置PRAにおける回転磁界の方向が第1の基準方向DRAに対してなす角度θAに対して、電気角90°に相当する角度だけ異なっている。
複合検出部210A,210Bの構成は、それぞれ、第1の実施の形態に係る回転磁界センサ1の構成と同様である。具体的には、第1の複合検出部210Aは、信号生成部2、角度検出部3および制御部4と同様の構成の信号生成部2A、角度検出部3Aおよび制御部4Aを備えている。信号生成部2Aは、第1の検出部10、第2の検出部20、第1の演算回路131、第2の演算回路132と同様の構成の第1の検出部10A、第2の検出部20A、第1の演算回路131A、第2の演算回路132Aを有している。同様に、第2の複合検出部210Bは、信号生成部2、角度検出部3および制御部4と同様の構成の信号生成部2B、角度検出部3Bおよび制御部4Bを備えている。信号生成部2Bは、第1の検出部10、第2の検出部20、第1の演算回路131、第2の演算回路132と同様の構成の第3の検出部10B、第4の検出部20B、第3の演算回路131B、第4の演算回路132Bを有している。なお、図30では図示を省略しているが、第1および第2の複合検出部210A,210Bは、それぞれ、上記の構成要素の他に、図3に示したA/D変換器AD1〜AD8、スイッチSW1〜SW8、差分回路111,112,121,122を有している。第1の検出部10Aは第1の位置に配置され、第2の検出部20Aは第2の位置に配置され、第3の検出部10Bは第3の位置に配置され、第4の検出部20Bは第4の位置に配置されている。
第1および第2の検出部10A,20Aの、磁石6に対する相対的な位置関係は、第2の実施の形態における第1および第2の検出部10,20の、磁石6に対する相対的な位置関係と同様である。第3および第4の検出部10B,20Bの、磁石6に対する相対的な位置関係も、第2の実施の形態における第1および第2の検出部10,20の、磁石6に対する相対的な位置関係と同様である。第3および第4の検出部10B,20Bは、第1および第2の検出部10A,20Aに対して、回転磁界の回転の周期の1/4すなわち電気角90°に相当する量だけずれた位置に配置されている。
第1の検出部10Aが配置された位置が第1の位置であり、第2の検出部20Aが配置された位置が第2の位置である。第1の基準位置PRAと第1および第2の位置の関係は、第1の実施の形態における図2に示した基準位置PRと第1および第2の位置P1,P2と同じである。第1の基準位置PRA、第1の位置、第2の位置は、それぞれ、図2に示した基準位置PR、第1の位置P1、第2の位置P2に対応する。第1の位置と第2の位置は、回転磁界の回転方向について同じ位置であり、第1の基準位置PRAと一致している。
第1の検出部10Aは、第1の位置において、回転磁界の第1の方向の成分と、回転磁界の第2の方向の成分とを検出する。第2の検出部20Aは、第2の位置において、回転磁界の第3の方向の成分と、回転磁界の第4の方向の成分とを検出する。第1の基準方向DRAと第1ないし第4の方向の関係は、第1の実施の形態における図2に示した基準方向DRと第1ないし第4の方向D1〜D4の関係と同じである。第1の基準方向DRA、第1の方向、第2の方向、第3の方向、第4の方向は、それぞれ、図2に示した基準方向DR、第1の方向D1、第2の方向D2、第3の方向D3、第4の方向D4に対応する。第1の方向と第2の方向は直交し、第3の方向と第4の方向も直交している。第1の方向と第3の方向は、回転磁界の回転方向について60°だけ異なっている。第2の方向は、第1の基準方向DRAから−30°回転した方向である。第4の方向は、第1の基準方向DRAから30°回転した方向である。
また、第3の検出部10Bが配置された位置が第3の位置であり、第4の検出部20Bが配置された位置が第4の位置である。第2の基準位置PRBと第3および第4の位置の関係は、第1の実施の形態における図2に示した基準位置PRと第1および第2の位置P1,P2と同じである。第2の基準位置PRB、第3の位置、第4の位置は、それぞれ、図2に示した基準位置PR、第1の位置P1、第2の位置P2に対応する。第3の位置と第4の位置は、回転磁界の回転方向について同じ位置であり、第2の基準位置PRBと一致している。
第3の検出部10Bは、第3の位置において、回転磁界の第5の方向の成分と、回転磁界の第6の方向の成分とを検出する。第4の検出部20Bは、第4の位置において、回転磁界の第7の方向の成分と、回転磁界の第8の方向の成分とを検出する。第2の基準方向DRBと第5ないし第8の方向の関係は、第1の実施の形態における図2に示した基準方向DRと第1ないし第4の方向D1〜D4の関係と同じである。第2の基準方向DRB、第5の方向、第6の方向、第7の方向、第8の方向は、それぞれ、図2に示した基準方向DR、第1の方向D1、第2の方向D2、第3の方向D3、第4の方向D4に対応する。第5の方向と第6の方向は直交し、第7の方向と第8の方向も直交している。第5の方向と第7の方向は、回転磁界の回転方向について60°だけ異なっている。第6の方向は、第2の基準方向DRBから−30°回転した方向である。第8の方向は、第2の基準方向DRBから30°回転した方向である。
第1の検出部10Aは、第1の検出回路11Aと第2の検出回路12Aとを有している。第1の検出回路11Aおよび第2の検出回路12Aの構成は、第1の実施の形態における第1の検出回路11および第2の検出回路12と同じである。第1の検出回路11Aは、回転磁界の第1の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第2の検出回路12Aは、回転磁界の第2の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第1の方向は、第1の検出回路11Aが回転磁界を検出するときの基準の方向である。第2の方向は、第2の検出回路12Aが回転磁界を検出するときの基準の方向である。
第2の検出部20Aは、第3の検出回路21Aと第4の検出回路22Aとを有している。第3の検出回路21Aおよび第4の検出回路22Aの構成は、第1の実施の形態における第3の検出回路21および第4の検出回路22と同じである。第3の検出回路21Aは、回転磁界の第3の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第4の検出回路22Aは、回転磁界の第4の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第3の方向は、第3の検出回路21Aが回転磁界を検出するときの基準の方向である。第4の方向は、第4の検出回路22Aが回転磁界を検出するときの基準の方向である。
第3の検出部10Bは、第5の検出回路11Bと第6の検出回路12Bとを有している。第5の検出回路11Bおよび第6の検出回路12Bの構成は、第1の実施の形態における第1の検出回路11および第2の検出回路12と同じである。第5の検出回路11Bは、回転磁界の第5の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第6の検出回路12Bは、回転磁界の第6の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第5の方向は、第5の検出回路11Bが回転磁界を検出するときの基準の方向である。第6の方向は、第6の検出回路12Bが回転磁界を検出するときの基準の方向である。
第4の検出部20Bは、第7の検出回路21Bと第8の検出回路22Bとを有している。第7の検出回路21Bおよび第8の検出回路22Bの構成は、第1の実施の形態における第3の検出回路21および第4の検出回路22と同じである。第7の検出回路21Bは、回転磁界の第7の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第8の検出回路22Bは、回転磁界の第8の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第7の方向は、第7の検出回路21Bが回転磁界を検出するときの基準の方向である。第8の方向は、第8の検出回路22Bが回転磁界を検出するときの基準の方向である。
図31に示した例では、磁石6は、2組のN極とS極とを含み、磁石6が1回転する間に、回転磁界は2回転する。この場合、検出回路11A,12A,21A,22A,11B,12B,21B,22Bの出力信号における1周期すなわち電気角の360°は、磁石6の1/2回転すなわち磁石6の回転角の180°に相当する。また、第1ないし第8の検出回路11A,12A,21A,22A,11B,12B,21B,22Bの出力信号は、互いに等しい信号周期Tで周期的に変化する。第3の検出回路21Aの出力信号の位相は、第1の検出回路11Aの出力信号の位相と異なっている。第4の検出回路22Aの出力信号の位相は、第2の検出回路12Aの出力信号の位相と異なっている。第7の検出回路21Bの出力信号の位相は、第5の検出回路11Bの出力信号の位相と異なっている。第8の検出回路22Bの出力信号の位相は、第6の検出回路12Bの出力信号の位相と異なっている。本実施の形態では、第1ないし第8の検出回路11A,12A,21A,22A,11B,12B,21B,22Bの出力信号の位相の関係は、特に以下のようになっていることが好ましい。
第2の検出回路12Aの出力信号の位相は、第1の検出回路11Aの出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。第4の検出回路22Aの出力信号の位相は、第3の検出回路21Aの出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。ただし、磁気検出素子の作製の精度等の観点から、第1の検出回路11Aの出力信号と第2の検出回路12Aの出力信号の位相差と、第3の検出回路21Aの出力信号と第4の検出回路22Aの出力信号の位相差は、それぞれ、信号周期Tの1/4の奇数倍から、わずかにずれていてもよい。第3の検出回路21Aの出力信号の位相は、第1の検出回路11Aの出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍だけ異なっていることが好ましい。
第6の検出回路12Bの出力信号の位相は、第5の検出回路11Bの出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。第8の検出回路22Bの出力信号の位相は、第7の検出回路21Bの出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。ただし、磁気検出素子の作製の精度等の観点から、第5の検出回路11Bの出力信号と第6の検出回路12Bの出力信号の位相差と、第7の検出回路21Bの出力信号と第8の検出回路22Bの出力信号の位相差は、それぞれ、信号周期Tの1/4の奇数倍から、わずかにずれていてもよい。第7の検出回路21Bの出力信号の位相は、第5の検出回路11Bの出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍だけ異なっていることが好ましい。以下の説明では、第1ないし第8の検出回路11A,12A,21A,22A,11B,12B,21B,22Bの出力信号の位相の関係が上記の好ましい関係になっているものとする。
第1の演算回路131Aは、第1および第3の検出回路11A,21Aの出力信号に基づいて、回転磁界の第1の方向の成分の強度と回転磁界の第3の方向の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、第1および第3の検出回路11A,21Aの出力信号に比べて、信号周期Tの1/3の周期の第3の誤差成分が低減された第1の信号を生成する。第2の演算回路132Aは、第2および第4の検出回路12A,22Aの出力信号に基づいて、回転磁界の第2の方向の成分の強度と回転磁界の第4の方向の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、第2および第4の検出回路12A,22Aの出力信号に比べて、信号周期Tの1/3の周期の第3の誤差成分が低減された第2の信号を生成する。第1および第2の信号の生成方法は、第1の実施の形態における第1および第2の信号の生成方法と同じである。
角度検出部3Aは、第1の信号および第2の信号に基づいて、第1の基準位置PRAにおける回転磁界の方向が第1の基準方向DRAに対してなす角度θAの検出値を算出する。以下、角度検出部3Aによって算出された検出値を第1の角度検出値と呼び、記号θAsで表す。第1の角度検出値θAsは、誤差を考慮しなければ、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度との差が一定値(0を含む)になるという関係を有している。従って、第1の角度検出値θAsは、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度と対応関係を有する。第1の角度検出値θAsの算出方法は、第1の実施の形態における角度検出値θsの算出方法と同じである。
第3の演算回路131Bは、第5および第7の検出回路11B,21Bの出力信号に基づいて、回転磁界の第5の方向の成分の強度と回転磁界の第7の方向の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、第5および第7の検出回路11B,21Bの出力信号に比べて、信号周期Tの1/3の周期の第3の誤差成分が低減された第3の信号を生成する。第4の演算回路132Bは、第6および第8の検出回路12B,22Bの出力信号に基づいて、回転磁界の第6の方向の成分の強度と回転磁界の第8の方向の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、第6および第8の検出回路12B,22Bの出力信号に比べて、信号周期Tの1/3の周期の第3の誤差成分が低減された第4の信号を生成する。第3および第4の信号の生成方法は、第1の実施の形態における第1および第2の信号の生成方法と同じである。
角度検出部3Bは、第3の信号および第4の信号に基づいて、第2の基準位置PRBにおける回転磁界の方向が第2の基準方向DRBに対してなす角度θBの検出値を算出する。以下、角度検出部3Bによって算出された検出値を第2の角度検出値と呼び、記号θBsで表す。第2の角度検出値θBsは、誤差を考慮しなければ、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度との差が一定値(0を含む)になるという関係を有している。従って、第2の角度検出値θBsは、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度と対応関係を有する。第2の角度検出値θBsの算出方法は、第1の実施の形態における角度検出値θsの算出方法と同じである。
図30に示したように、回転磁界センサ201は、更に、角度検出部3Aによって算出された第1の角度検出値θAsと、角度検出部3Bによって算出された第2の角度検出値θBsとに基づいて、回転磁界センサ201の基準位置における回転磁界の方向が回転磁界センサ201の基準方向に対してなす角度と対応関係を有する角度検出値θsを算出する第5の演算回路211を備えている。第5の演算回路211は、例えばマイクロコンピュータによって実現することができる。なお、回転磁界センサ201の基準位置と基準方向は、それぞれ、第1の基準位置PRAと第1の基準方向DRAと一致していてもよいし、第2の基準位置PRBと第2の基準方向DRBと一致していてもよいし、これらの位置および方向と異なる任意の位置と方向であってもよい。
次に、図32を参照して、本実施の形態における変形例の回転磁界センサ201の構成について説明する。図32には、方向が回転する回転磁界を発生する手段の例として、第2の実施の形態における図25および図26に示した磁石7を示している。変形例の回転磁界センサ201は、第2の実施の形態における図25および図26に示した例と同様に、磁石7の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。
図32には、第1および第2の基準位置PRA,PRBと、第1および第2の基準方向DRA,DRBも示している。図32に示したように、第2の基準位置PRBは、第1の基準位置PRAに対して、回転磁界の回転の周期の1/4すなわち電気角90°に相当する量、すなわち磁石7の1/4ピッチだけずれている。また、図32に示した例では、第1および第2の基準方向DRA,DRBを、いずれも、XY平面内において、磁石7の移動方向に直交する方向に設定している。
第1および第2の検出部10A,20Aの、磁石7に対する相対的な位置関係は、第2の実施の形態における第1および第2の検出部10,20の、磁石7に対する相対的な位置関係と同様である。第3および第4の検出部10B,20Bの、磁石7に対する相対的な位置関係も、第2の実施の形態における第1および第2の検出部10,20の、磁石7に対する相対的な位置関係と同様である。変形例では、第3および第4の検出部10B,20Bは、第1および第2の検出部10A,20Aに対して、回転磁界の回転の周期の1/4すなわち電気角90°に相当する量、すなわち磁石7の1/4ピッチだけずれた位置に配置されている。
次に、第5の演算回路211における角度検出値θsの算出方法について説明する。本実施の形態では、複合検出部210Aの角度検出部3Aによって算出された第1の角度検出値θAsと、複合検出部210Bの角度検出部3Bによって算出された第2の角度検出値θBsとに基づいて、第5の演算回路211によって、角度検出値θsを算出する。図31および図32に示した例では、複合検出部210Bの第3および第4の検出部10B,20Bは、複合検出部210Aの第1および第2の検出部10A,20Aに対して、電気角90°に相当する量だけずれた位置に配置されている。そのため、複合検出部210Aによって得られる第1の角度検出値θAsの位相と、複合検出部210Bによって得られる第2の角度検出値θBsの位相は、電気角90°だけ異なる。これらの例では、第5の演算回路211は、下記の式(6)によって、θsを算出する。
θs=(θAs+θBs+π/2)/2 …(6)
次に、回転磁界センサ201の作用および効果について説明する。回転磁界センサ201では、第1および第3の検出回路11A,21Aの出力信号に基づいて生成された第1の信号と、第2および第4の検出回路12A,22Aの出力信号に基づいて生成された第2の信号とに基づいて、角度検出部3Aによって、第1の角度検出値θAsが算出される。また、回転磁界センサ201では、第5および第7の検出回路11B,21Bの出力信号に基づいて生成された第3の信号と、第6および第8の検出回路12B,22Bの出力信号に基づいて生成された第4の信号とに基づいて、角度検出部3Bによって、第2の角度検出値θBsが算出される。そして、第1の角度検出値θAsと第2の角度検出値θBsとに基づいて、第5の演算回路211によって、式(6)を用いて、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度と対応関係を有する角度検出値θsを算出する。
本実施の形態に係る回転磁界センサ201は、回転磁界に起因して発生する角度誤差を低減するのに適している。ここで、図31ないし図33を参照して、回転磁界に起因して角度誤差が発生する理由について説明する。図示しないが、図31に示した例では、回転磁界は、それぞれ、磁石6の半径方向の成分Hrと、XY平面内において、Hrに直交する方向の成分Hθとを含んでいる。また、図示しないが、図32に示した例では、回転磁界は、XY平面内において、磁石7の移動方向に直交する方向の成分Hrと、XY平面内において、Hrに直交する方向の成分Hθとを含んでいる。
ここで、図31または図32に示した例において、第1および第2の検出部10A,20Aによってそれぞれ回転磁界を検出し、これら検出部10A,20Aの出力信号に基づいて第1の角度検出値θAsを得る場合を考える。図33は、この場合におけるHr、Hθ、θAsならびに第1の角度誤差dθAの関係の一例を示している。図33において、横軸は、角度θAを示し、縦軸は、Hr、Hθ、θAs、dθAを示している。なお、図33では、便宜上、縦軸における角度θAsの値については、実際の角度が90°〜270゜の範囲では180°を引いた値で表し、実際の角度が270°〜360゜の範囲では360°を引いた値で表している。これ以降の説明で使用する図33と同様の図においても、図33と同様の表し方を用いる。また、理解を容易にするために、図33における第1の角度誤差dθAの波形は、振幅を実際よりも大きく描いている。図31または図32に示した例では、回転磁界の方向や回転磁界の一方向の成分の強度が正弦関数的に変化しない場合がある。この場合、第1の角度検出値θAsは、回転磁界の方向が理想的に回転する場合に想定される第1の角度検出値θAsの理論値に対する第1の角度誤差dθAを含むことになる。同様に、第3および第4の検出部10B,20Bによってそれぞれ回転磁界を検出し、これら検出部10B,20Bの出力信号に基づいて第2の角度検出値θBsを得る場合も、第2の角度検出値θBsは、回転磁界の方向が理想的に回転する場合に想定される第2の角度検出値θBsの理論値に対する第2の角度誤差dθBを含むことになる。第1および第2の角度誤差dθA,dθBは、回転磁界の方向の変化に伴って互いに等しい角度誤差周期で周期的に変化し、且つ第1および第2の角度誤差dθA,dθBの変化は、回転磁界の方向の変化に依存する。角度誤差周期は、回転磁界の方向の回転の周期の1/2である。
次に、図34および図35を参照して、回転磁界センサ201によって、回転磁界に起因して発生する角度誤差を低減できることを説明する。図34において、(a)は、第1の角度検出値θAsと、第1の角度検出値θAsに含まれる第1の角度誤差dθAとの関係を示している。図34において、(b)は、第2の角度検出値θBsと、第2の角度検出値θBsに含まれる第2の角度誤差dθBとの関係を示している。図34に示した例では、第1の角度誤差dθAおよび第2の角度誤差dθBの振幅は±0.17°である。本実施の形態では、第3の位置と第4の位置は、それぞれ、第1の位置と第2の位置に対して、角度誤差周期の1/2(電気角90°)に相当する量だけずれており、角度検出値θAs,θBsの位相は、角度誤差周期の1/2(電気角90°)だけ異なる。従って、角度検出値θsを算出する際に、第1の角度誤差dθAの位相と第2の角度誤差dθBの位相は、互いに逆相になる。これにより、第1の角度誤差dθAと第2の角度誤差dθBとが相殺される。
図35は、上述のようにして算出された角度検出値θsと、この角度検出値θsに含まれる角度誤差dθとの関係を表している。図35では、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度を記号θで表している。図35に示されるように、角度誤差dθは、第1の角度誤差dθAおよび第2の角度誤差dθBに比べて、大幅に小さくなっている。図35に示した例では、角度誤差dθの振幅は±0.03°である。
なお、本実施の形態では、第3の位置と第4の位置は、それぞれ、第1の位置と第2の位置に対して、角度誤差周期の1/2に相当する量だけずれている。しかし、第3の位置と第4の位置は、それぞれ、第1の位置と第2の位置に対して、角度誤差周期の1/2の奇数倍に相当する量だけずれていればよい。この場合に、角度誤差dθAと角度誤差dθBが相殺されて、角度検出値θsに含まれる角度誤差dθを大幅に低減することができる。
また、本実施の形態では、第1の角度検出値θAsと第2の角度検出値θBsの位相差は、電気角90°に限らず任意の大きさでよい。第1の角度検出値θAsと第2の角度検出値θBsの位相差をβとすると、第5の演算回路211は、下記の式(7)によって、θsを算出する。
θs=(θAs+θBs+β)/2 …(7)
また、本実施の形態では、第1の角度検出値θAsの算出方法は、第1の実施の形態における角度検出値θsの算出方法と同じである。従って、第1の実施の形態で説明したように、MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪み、各検出回路の出力信号が第3の誤差成分を含む場合に、第1の検出回路11Aの出力信号に含まれる第3の誤差成分の位相と第3の検出回路21Aの出力信号に含まれる第3の誤差成分の位相は、第1の信号を生成する際に互いに逆相になり、第2の検出回路12Aの出力信号に含まれる第3の誤差成分の位相と第4の検出回路22Aの出力信号に含まれる第3の誤差成分の位相は、第2の信号を生成する際に互いに逆相になる。そのため、本実施の形態によれば、第1の実施の形態における説明と同じ理由によって、MR素子に起因した第1の角度検出値θAsの誤差を低減することが可能になる。
また、第1の実施の形態で説明したように、各検出回路の出力信号が非同位相誤差成分を含む場合には、第1の信号は、非同位相誤差成分に起因した第1の誤差成分を含み、第2の信号は、非同位相誤差成分に起因した第2の誤差成分を含む。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、第1の信号の2乗と第2の信号の2乗との和よりなり、信号周期Tの1/2の周期の2乗和信号の性質を利用することによって、第1の誤差成分の推定値である第1の誤差成分推定値と、第2の誤差成分の推定値である第2の誤差成分推定値が算出される。本実施の形態によれば、第1の信号から第1の誤差成分推定値が減算されて生成された第1の補正後信号と、第2の信号から第2の誤差成分推定値が減算されて生成された第2の補正後信号に基づいて、第1の角度検出値θAsを算出することによって、第1の角度検出値θAsの誤差を低減することが可能になる。
同様に、本実施の形態では、第2の角度検出値θBsの算出方法は、第1の実施の形態における角度検出値θsの算出方法と同じである。従って、第1の実施の形態で説明したように、MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪み、各検出回路の出力信号が第3の誤差成分を含む場合に、第5の検出回路11Bの出力信号に含まれる第3の誤差成分の位相と第7の検出回路21Bの出力信号に含まれる第3の誤差成分の位相は、第3の信号を生成する際に互いに逆相になり、第6の検出回路12Bの出力信号に含まれる第3の誤差成分の位相と第8の検出回路22Bの出力信号に含まれる第3の誤差成分の位相は、第4の信号を生成する際に互いに逆相になる。そのため、本実施の形態によれば、第1の実施の形態における説明と同じ理由によって、MR素子に起因した第2の角度検出値θBsの誤差を低減することが可能になる。
また、第1および第2の信号と同様に、各検出回路の出力信号が非同位相誤差成分を含む場合には、第3の信号は、非同位相誤差成分に起因した第1の誤差成分を含み、第4の信号は、非同位相誤差成分に起因した第2の誤差成分を含む。本実施の形態では、第1および第2の信号と同様に、第3の信号の2乗と第4の信号の2乗との和よりなり、信号周期Tの1/2の周期の2乗和信号の性質を利用することによって、第1の誤差成分の推定値である第1の誤差成分推定値と、第2の誤差成分の推定値である第2の誤差成分推定値が算出される。本実施の形態によれば、第3の信号から第1の誤差成分推定値が減算されて生成された第3の補正後信号と、第4の信号から第2の誤差成分推定値が減算されて生成された第4の補正後信号に基づいて、第2の角度検出値θBsを算出することによって、第2の角度検出値θBsの誤差を低減することが可能になる。
このように、本実施の形態によれば、MR素子に起因した角度検出値θAs,θBsの誤差を低減することが可能になることから、最終的に得られる角度検出値θsについても、MR素子に起因した誤差を低減することが可能になる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、各実施の形態における複数の検出部の配置は一例であり、複数の検出部の配置は、特許請求の範囲に記載された要件を満たす範囲内で種々の変更が可能である。