JP5176562B2 - 固体表面付着物の存在量評価方法、および保護剤塗布装置の評価方法 - Google Patents

固体表面付着物の存在量評価方法、および保護剤塗布装置の評価方法 Download PDF

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本発明に係る参考手段は、像担持体を備えた画像形成装置、またはこの画像形成装置に装備されるプロセスカートリッジに用いられ、前記像担持体の表面をクリーニングブレードとの摩擦力等の力学的ストレスや、帯電による電気的ストレス等から保護するための保護剤を前記像担持体に塗布する保護剤塗布装置に関し、さらには、その保護剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ、あるいは、前記保護剤塗布装置またはプロセスカートリッジを備えた複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等の画像形成装置に関する。
また、本発明は、像担持体等の固体表面に付着する極僅かな量の付着物の存在量を評価する固体表面付着物の存在量評価方法と、その評価方法を用いて、像担持体に保護剤を塗布する保護剤塗布装置の合否を評価する保護剤塗布装置の評価方法に関する。
固体表面の極微量の付着物の存在量を評価することが多くの分野で求められている。例えば、コーティング技術分野におけるコーティング層の厚みの評価や固体表面に存在する異物である付着物の量により固体表面の電気的、機械的特性が変化したり、塗れ性や接着性が変化することから、固体表面の付着物の量の評価が必要となる。特に、画像形成等に用いられる感光体表面の付着物は、極僅かの付着物であっても形成される画像に多大な影響を及ぼすことがある。また、保護剤のように感光体上に薄く存在する事により高画質維持の機能を発揮する物質が必要量感光体上にどの程度存在しているか非常に重要である。そのため、固体表面上の薄い膜状の付着物の量を評価する方法が強く求められている。
固体表面の付着物の存在量を評価する方法としては、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析を用いた定量分析やXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)を用いた分析がなされてきた。しかし、ICP発光分析は、元素分析であるため、金属元素を含んでいない有機物は定量分析が行なえず、また、XPS分析では、分析可能な深さが数nmと固体の極表面の情報しか得られないことから、付着物が数nm以上の厚い付着物に関しては、その存在量を見積もる事はできなかった。
また、XPSを用いた感光体表面上の付着物の分析において、保護剤であるステアリン酸亜鉛の存在量を見積もった例がある(例えば特許文献1(特開2005−17469号公報)、特許文献2(特開2005−249901号公報)、特許文献3(特開2005−004051号公報)、特許文献4(特開2004−198662号公報)参照)。しかし、ステアリン酸亜鉛のXPS分析においては、全元素に対する亜鉛元素の割合で評価する方法が用いられており、付着物の評価は基本的に金属元素のような指標を持つものに限られていた。
また、付着物が溶解する溶媒に該固体が溶解しなければ、付着物を溶解により抽出し、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析、NMR等により、付着物を定量する方法もある。しかしながら、有機感光体のほとんどは付着物を溶解する溶媒に溶解してしまい、この方法を用いることはできなかった。
このように、付着物によっては、上述のような評価方法を用いる事ができないものもあり、例えば、パラフィンのような金属を含有しない単純な構造の保護剤を用いた場合、XPS分析やXRF(X−ray Flourescence)分析やICP発光分析において金属が検出されないため、感光体上に付着している量を評価することは難しかった。
一方、有機物を分析する方法としてATR(Attenuated Total Reflection)法が知られている(例えば特許文献5(実用新案登録第2597515号公報)参照)。このATR法は、赤外吸収スペクトルを測定する方法の一つで、全反射を利用するもので、高い屈折率を持つATRプリズムを試料に密着させ、ATRプリズムを通して赤外光を試料に照射し、ATRプリズムからの出射光を分光分析する。
ATRプリズムと試料との屈折率の関係からある角度以上の条件で赤外光をプリズムに入射させると、赤外光はATRプリズムから出ず、ATRプリズムと試料との接触面で全反射を起こすが、その際、赤外光が僅かの距離だけ試料側に滲みだすので、試料で赤外光の吸収があれば反射光が減衰し、試料の吸収スペクトルを得ることができる。
ATR法は、ATRプリズムと接触したごく薄い試料部分の吸収スペクトルを測定することができるため、厚い試料や透過性の低い試料であっても、ATRプリズムと密着させることができれば測定できるという利点を備えている。
ATR法を用いると、赤外光の吸収が起こる波数より官能基がわかるため、ATR法は定性分析によく用いられる。
しかし、試料を押さえる圧力によって、吸収スペクトルのピーク強度が変化するため、基本的に定量分析には用いられていなかった。
次に、電子写真プロセスを用いた画像形成装置においては、感光体に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を施すことにより画像形成が行われる。帯電工程で生成し感光体表面に残る放電生成物および転写工程後に感光体表面に残る残トナーまたはトナー成分はクリーニングプロセスを経て除去される。
一般に用いられるクリーニング方式として、安価で機構が簡単でクリーニング性に優れたゴムブレードが用いられる。しかし、ゴムブレードは感光体に押し当てて感光体表面の残留物を除去するため感光体表面とクリーニングブレード間の摩擦によるストレスが大きく、ゴムブレードの磨耗や、特に有機感光体においては感光体表面層の磨耗が生じ、ゴムブレードおよび有機感光体の寿命を短くする。また、高画質化の要求に対して画像形成に用いられるトナーは小粒径のものになってきている。小粒径のトナーを用いた画像形成装置では、残トナーがクリーニングブレードをすり抜けていく割合が多くなり、特に、クリーニングブレードの寸法精度、組み付け精度が十分でなかったり、クリーニングブレードが部分的に震動した場合にトナーのすり抜けは激しくなってしまい高画質の画像形成を妨げていた。
そのため、有機感光体の寿命を延ばし長期に渡って高画質を保持するには、摩擦による部材の劣化を低減し、クリーニング性を向上させる必要がある。
この要求に対して、実際には潤滑剤を含む保護剤を感光体に供給し、クリーニングブレードで保護剤の皮膜を形成する方法などが採用されている。感光体への保護剤の塗布により、感光体表面が保護剤によって保護されるため、クリーニングブレードと感光体の摩擦によって生じる感光体磨耗や感光体を帯電するときに生じる放電のエネルギーによる感光体の劣化が低減される。また、保護剤の塗布により、感光体表面の潤滑性が上がるためクリーニングブレードが部分的に震動する現象が低減され、すり抜けトナーの量が減少する。しかし、このような潤滑性や保護性は保護剤の塗布量が少なすぎると、感光体磨耗、AC帯電による感光体劣化、トナーすり抜けに充分な効果を発揮できないため、保護剤の塗布量を規定しておく必要があった。
保護剤塗布量の評価について、一般的に保護剤として用いられるステアリン酸亜鉛を用いた場合には、前述したように、感光体表面に塗布されたステアリン酸亜鉛の量を、感光体表面のXPS分析により検出される全元素に対する亜鉛元素の割合で評価する方法が用いられてきた(特許文献1〜4参照)。
XPS分析ではサンプル極表面の水素以外の元素全てを検出するから、XPS分析を用いてステアリン酸亜鉛が塗布された有機感光体表面を分析すると、ステアリン酸亜鉛の被覆率が増えるにつれて、有機感光体の持つ元素比率から、ステアリン酸亜鉛の持つ元素比率に近づき、ステアリン酸亜鉛の被覆率が100%になると元素比率はステアリン酸亜鉛の元素比率と理論的に一致し、検出される亜鉛量は飽和してしまう。すなわち、ステアリン酸亜鉛(C36704Zn)が感光体表面全体を全て覆っている場合、ステアリン酸亜鉛(C36704Zn)の分子中の水素以外の元素比より、XPS分析により検出される全元素に対する、亜鉛元素の割合は理論上では2.44%となる。
また、近年、帯電工程においては、直流(DC)電圧に交流(AC)電圧を重畳して帯電する帯電ローラ等によるいわゆるAC帯電が用いられるようになってきた。このAC帯電は、感光体の帯電電位の均一性が高い、オゾンや窒素酸化物(NOx)等の酸化性ガスの発生が少ない、装置を小型化できる等の優れた性能を有している反面、印加する交流電圧の周波数に応じ、1秒間に数百〜数千回もの正負放電が帯電部材と感光体の間で繰り返されるため感光体はこの多数の放電を受けて表面層の劣化が加速される。この劣化に対して、感光体に保護剤を塗布しておくとAC帯電のエネルギーは、先ず保護剤に吸収され、感光体は到達し難くなるため、感光体は保護される。
AC帯電のエネルギーにより保護剤の金属石鹸は分解していくが、金属石鹸は完全に分解し、消失してしまうのではなく、分子量の低い脂肪酸が生成し、感光体とクリーニングブレードとの摩擦力が高くなりやすくなり、また脂肪酸とともに、トナー成分が感光上に膜状に付着させやすくなってしまい、画像の解像度が低下しやすくなると供に、感光体の磨耗が生じ、濃度ムラにつながりやすい問題があった。そのため、脂肪酸が生成しても、直ぐに金属石鹸で感光体表面を覆ってしまえるよう、大量の金属石鹸を感光体上に供給するようにしている。しかし、感光体上に大量の金属石鹸を供給しても、実際に感光体表面に付着するのは、ごく一部であり、感光体上に供給された金属石鹸のほとんどは、トナーと供に転写されたり、廃トナーと供に除去されたりしてしまうため、金属石鹸が早期に枯渇してしまい、感光体の寿命より前に、金属石鹸を新しいものに変えないといけなくなっていた。
金属石鹸に変わる保護剤(潤滑剤)として、例えば、特許文献6(特開2005−274737号公報)では、炭素数20以上、70以下の高級アルコールを主成分とする潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を用いることにより、ブレードニップ部先端に高級アルコールが不定形粒子として滞留し、また、適度な像担持体表面への濡れ性を有することから、潤滑性能の持続性が発現するとしている。
しかしながら、高級アルコールによる潤滑剤では、感光体表面に濡れやすく潤滑剤としての効果は期待できるが、像担持体上に吸着した高級アルコール分子、一分子当りの占める吸着占有面積が広くなりがちであり、像担持体の単位面積当たりに吸着する分子の密度(単位面積当りの吸着分子重量)が小さいため、上述のAC帯電による電気的ストレスから感光体を保護することが難しい。
また、特許文献7(特開2002−97483号公報)では、特定のアルキレンビスアルキル酸アミド化合物の粉体を潤滑性分として使用することにより、クリーニングブレードと像担持体が当圧接される界面に粉体微粒子が存在するため、円滑な潤滑作用が長期間にわたって保持できるとしている。
しかしながら、分子中に窒素原子を含む構成の潤滑剤では、潤滑剤自体が上述のAC帯電による電気的ストレスを受けた場合に、分解生成物として窒素酸化物やアンモニウム含有化合物に類するイオン解離性の化合物を生成し、潤滑層内に取り込まれてしまい、高湿度下で潤滑層が低抵抗化し、画像ボケを発生させることがある。
一方、パラフィンを主成分とする保護剤は、AC帯電による電気的ストレスから感光体を保護し、感光体とクリーニングブレードとの摩擦力を低減することができ、また、廃トナーのクリーニング性が極めて良好になることが判ってきた。特に、パラフィンを主成分とする保護剤は、AC帯電によるストレスで酸化されたとしても、脂肪酸の生成は少なく、感光体とクリーニングブレードとの間の摩擦力の変化が非常に少なく、大変好ましい。
しかしながら、パラフィンを主成分とする保護剤を用いて画像形成を繰り返した場合、感光体とクリーニングブレードの磨耗によると思われる異常画像が発生する場合があった。特に、保護剤塗布装置を製造するロットによって、異常画像の発生確率が大きく異なることがあった。
その異常画像が発生している場所と発生していない場所とを詳細に調査したところ、スジ状の異常画像が発生した場所と異常画像が発生していない場所では、感光体の膜厚が少なくなっていたり、トナー成分が多く付着していることが分かったが、いかなる原因で、このような現象が起こるのか分からなかった。
また、金属石鹸に変わる保護剤として、パラフィンが有効であることは先に述べたが、パラフィンのような金属を含有しない単純な構造の保護剤を用いた場合、XPS分析やXRF分析において金属が検出されないため、感光体上に塗布されている保護剤の量を評価することは難しかった。また、金属石鹸のような金属を含有する保護剤では、塗布量を求める方法としてICP発光分析により、金属元素から塗布量を追うことができるが、パラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合には、ICP発光分析による塗布量の評価をすることはできなかった。
特開2005−17469号公報 特開2005−249901号公報 特開2005−004051号公報 特開2004−198662号公報 実用新案登録第2597515号公報 特開2005−274737号公報 特開2002−97483号公報 特開昭52−36016号公報
本発明に係る参考手段は上記事情に鑑みてなされたものであり、像担持体上の保護剤の存在量を評価する評価方法を用いて保護剤の塗布量を評価し、適切な塗布量の保護剤を供給できるようにして、異常画像の発生を防止することができる保護剤塗布装置と、その保護剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ、及び、その保護剤塗布装置またはプロセスカートリッジを備えた画像形成装置を提供することを目的とする技術である。
また、本発明は、像担持体等の固体表面に薄い膜状の付着物が存在する場合、または固体表面上に金属元素を含有しない薄い膜状の付着物が存在する場合の、固体表面の付着物の存在量を評価する固体表面付着物の存在量評価方法と、その評価方法を用いて保護剤塗布装置の合否を評価する保護剤塗布装置の評価方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明に係る参考手段および本発明では以下のような解決手段を採っている。
本発明に係る第1の参考手段は、像担持体の表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置において、「赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法において、ATRプリズムとしてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定を行い得られるIRスペクトルについて、保護剤塗布前の像担持体のIRスペクトルAと保護剤塗布後の像担持体のIRスペクトルBを比較したとき、前記IRスペクトルAおよび前記IRスペクトルBの両者に存在する前記像担持体に由来したピークであって、該像担持体由来ピークのうち、前記IRスペクトルB中の保護剤に由来するピークと重ならないピークが少なくとも二つ以上存在し、該二つのピークのうち前記IRスペクトルA中の波数の大きい方のピークをピークa1、波数の小さい方のピークをピークa2とし、ピークa1、a2と波数が同じ位置で検出される、波数の対応する前記IRスペクトルB中のピークをピークb1、b2とし、前記IRスペクトルA中のピークa1の高さをh(a1)、前記IRスペクトルB中のピークb1の高さをh(b1)としたとき、前記IRスペクトルAを[h(b1)/h(a1)]倍したスペクトル(IRスペクトルA’とする)を、IRスペクトルBから差し引いて得られるスペクトルをIRスペクトルCとし、該IRスペクトルC中でピークa1、a2と波数が同じ位置で検出される、波数の対応するピークをピークc1、c2とし、前記IRスペクトルB中のピークb1の面積をS(b1)、前記IRスペクトルC中のピークc2の面積をS(c2)としたとき、面積S(b1)と面積S(c2)との比(S(c2)/S(b1))を指標として、前記像担持体上の保護剤の存在量を評価する評価方法」を用い、前記ピークb1を1770cm-1のピークとし、前記ピークc2を815cm-1のピークとして前記像担持体上の保護剤の存在量を評価したとき、前記保護剤を20分塗布した後の前記像担持体における前記指標(S(c2)/S(b1))の値が0.012以上、前記保護剤を100分塗布した後の前記像担持体における前記指標(S(c2)/S(b1))の値が0.10以下となることを特徴とする。
本発明に係る第2の参考手段は、第1の参考手段の保護剤塗布装置において、前記IRスペクトルから算出される指標(S(c2)/S(b1))より、前記像担持体上の保護剤の存在量を評価する前記評価方法を用い、前記ピークb1は1770cm-1のピークとし、前記ピークc2は1250cm-1のピークとして前記像担持体上の保護剤の存在量を評価したとき、前記保護剤を20分塗布した後の前記像担持体における前記指標(S(c2)/S(b1))の値が0.10以上、前記保護剤を100分塗布した後の前記像担持体における前記指標(S(c2)/S(b1))の値が0.35以下となることを特徴とする。
本発明に係る第3の参考手段は、第1または第2の参考手段の保護剤塗布装置において、前記保護剤を塗布する像担持体は、感光体であることを特徴とする。
また、本発明に係る第4の参考手段は、第3の参考手段の保護剤塗布装置において、前記感光体は、カーボネート結合を有する有機化合物を含有する有機感光体であり、前記ピークa1は前記カーボネート結合に由来するピークであることを特徴とする。
さらに本発明に係る第5の参考手段は、第1〜第4のいずれか1つの参考手段の保護剤塗布装置において、前記保護剤はパラフィンを50重量%以上含有していることを特徴とする。
本発明に係る第6の参考手段は、第1〜第5のいずれか1つの参考手段の保護剤塗布装置において、パラフィンを主体とする保護剤バーと、該保護剤バーの保護剤を掻き取り像担持体に供給するブラシと、前記像担持体に供給された保護剤を固定するためのブレードを備え、前記保護剤バーの保護剤を前記ブラシにより掻き取り、該ブラシを前記像担持体に押し当てることによりパラフィンを主体とする保護剤を該像担持体に供給し、前記ブレードを押し当てることにより前記像担持体上に保護剤を固定することを特徴とする。
本発明に係る第7の参考手段は、プロセスカートリッジであって、像担持体と、第1〜第6のいずれか1つの参考手段の保護剤塗布装置を備えたことを特徴とする。
また、本発明に係る第8の参考手段は、画像形成装置であって、像担持体と、第1〜第6のいずれか1つの参考手段の保護剤塗布装置を備えたことを特徴とする。
さらに本発明に係る第9の参考手段は、画像形成装置であって、第7の参考手段のプロセスカートリッジを着脱可能に装備したことを特徴とする。
さらにまた、本発明に係る第10の参考手段は、第8または第9の参考手段の画像形成装置において、前記像担持体または前記プロセスカートリッジを複数備え、各像担持体上に色の異なる画像を形成した後、転写媒体に転写して多色またはカラー画像を形成することを特徴とする。
本発明の第の手段は、固体表面の付着物の存在量を評価する評価方法において、赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法により測定される、付着物の無い固体表面のIRスペクトルAと付着物が付着した固体表面のIRスペクトルBを比較したとき、IRスペクトルAおよびIRスペクトルBの両者に存在する該固体に由来したピークであって、該固体由来ピークのうち、前記IRスペクトルB中の付着物に由来するピークと重ならないピークが少なくとも二つ以上存在し、該二つのピークのうち前記IRスペクトルA中の波数の大きい方のピークをピークa1、波数の小さい方のピークをピークa2とし、ピークa1、a2と波数が同じ位置で検出される、波数の対応する前記IRスペクトルB中のピークをピークb1、b2とし、前記IRスペクトルA中のピークa1の高さをh(a1)、前記IRスペクトルB中のピークb1の高さをh(b1)としたとき、前記IRスペクトルAを[h(b1)/h(a1)]倍したスペクトル(IRスペクトルA’とする)を、前記IRスペクトルBから差し引いて得られるスペクトルをIRスペクトルCとし、該IRスペクトルC中でピークa1、a2と波数が同じ位置で検出される、波数の対応するピークをピークc1、c2とし、前記IRスペクトルB中のピークb1の面積をS(b1)、前記IRスペクトルC中のピークc2の面積をS(c2)としたとき、前記IRスペクトルB中のピークb1の面積S(b1)と、前記IRスペクトルC中のピークc2の面積S(c2)との比(S(c2)/S(b1))より、前記固体表面上の付着物の存在量を評価することを特徴とする。
本発明の第の手段は、第の手段の固体表面付着物の存在量評価方法において、前記ピークa2が検出される赤外光の波数での侵入深さは、前記ピークa1が検出される赤外光の波数での侵入深さの130%以上であることを特徴とする。
本発明の第の手段は、第または第の手段の固体表面付着物の存在量評価方法において、固体表面の付着物の存在量を評価する固体が、感光体であることを特徴とする。
また、本発明の第の手段は、第の手段の固体表面付着物の存在量評価方法において、前記感光体は、カーボネート結合を有する有機化合物を含有する有機感光体であり、前記ピークa1は前記カーボネート結合に由来するピークであることを特徴とする。
本発明の第の手段は、第または第の手段の固体表面付着物の存在量評価方法において、前記感光体表面上の付着物が該感光体を保護する機能を持つ保護剤であることを特徴とする。
また、本発明の第の手段は、第の手段の固体表面付着物の存在量評価方法において、前記保護剤は、パラフィンを50重量%以上含有することを特徴とする。
本発明の第の手段は、像担持体の表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置の評価方法において、請求項のいずれか1項に記載の固体表面付着物の存在量評価方法を用い、前記保護剤塗布装置によって前記保護剤を前記像担持体に塗布していったとき、一定の塗布時間以内で、前記存在量評価方法における付着物の存在量の指標である、前記IRスペクトルB中のピークb1の面積S(b1)と、前記IRスペクトルC中のピークc2の面積S(c2)との比(S(c2)/S(b1))が、所定の規格内の値となるときに、前記保護剤塗布装置を合格とすることを特徴とする。
本発明に係る参考手段によれば、パラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合でも、感光体等の像担持体上に塗布されている保護剤の量を評価できるような評価方法を用いて評価することにより、像担持体への保護剤の塗布を良好に行うことができ、異常画像の発生を防止することができる保護剤塗布装置と、その保護剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することができる。
また、本発明よれば、像担持体等の固体表面にパラフィンのような金属を含有しない保護剤を塗布した場合でも、固体表面に塗布されている保護剤の存在量を評価できる評価方法を提供でき、この評価方法を用いることにより、保護剤塗布装置の良否を判定することができる。
参考形態1]
まず、本発明に係る第1〜第10の参考手段に係る参考形態を説明する。
本発明者らは、像担持体として感光体を用いた画像形成装置において、異常画像が発生する原因を調べるため、異常画像が発生する場所と発生していない場所で、保護剤の存在量が異なるのではないかと考え、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて表面観察を行なった。表面観察の結果、保護剤が感光体上に付着している様子を観察することはできたが、SEM観察からは保護剤の存在量を見積もることはできず、異常画像が発生する原因は、はっきり分からなかった。
次に、本発明者らは、画像形成する画像により、異常画像の発生メカニズムが異なるのではないかと考え、さらに詳細に異常画像の発生する場所をSEM観察したところ、画像形成する画像の画像面積が少ないときには、トナー成分が感光体に付着して画像の解像度が低下することが多く、画像形成する画像の画像面積が大きいときには、感光体が部分的に磨耗し、異常画像が発生しやすいことが分かった。このように、異常画像の発生の仕方が、画像形成する画像によって異なるため、画像形成を行わず、感光体上に保護剤を塗布しただけの状態、すなわち保護剤塗布装置の保護剤塗布能力によって、異常画像が出たり出なかったりするのではないかと考え、感光体上の保護剤の塗布量を見積もることを試みた。
ここで、前述の背景技術で説明したように、保護剤にパラフィンのような金属を含有しない保護剤を用いた場合は、感光体上に塗布されている保護剤の量を従来の方法により見積もることが困難である。そこで、金属を含有しない保護剤を分析する方法として、有機物の分析に用いられる、FT−IRのATR法を用いることを試みた。
ここで、FT−IRによって得られるIRスペクトルは、赤外光源のもつ光の波数(波長)に対する強度分布が、検体試料によってどう変化するかを見たものであり、通常は波長の逆数である波数(単位cm−1)を横軸とし、縦軸には、透過率(T)や吸光度(A)をとり、曲線として描かれる。透過率は、試料を透過したエネルギーと試料に入射したエネルギーとの比であり、吸光度は透過率の逆数の常用対数である。吸光度と試料濃度が比例関係にある(Lambert−Beerの法則)ことはよく知られており、定量計算を行う場合は、吸光度スペクトルのピーク強度を利用するのが一般的である。なお、IRスペクトルのピーク強度は、透過率ではなく、定量性の良い吸光度を使用するのが好ましい。
IRスペクトルを測定するための装置としては、分散型赤外分光光度計、フーリエ変換赤外分光光度計に大別され、時間効率・光量利用率・波数分解能・波数精度が高いことからフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)が現在の主流である。測定方法としては、通常の透過法の他に、種々の測定アクセサリが有り、試料の形態や知りたい情報に応じて選択することができる。種々の測定アクセサリの中でも、ATR(Attenuated Total Reflection)法は、試料処理をほとんど行うことなくIRスペクトルを測定できることから、近年FT−IRの測定アクセサリとしてかなり普及している。
ATR法は、赤外吸収スペクトルを測定する方法の一つで、全反射を利用するもので、高い屈折率を持つATRプリズムを試料に密着させ、ATRプリズムを通して赤外光を試料に照射し、ATRプリズムからの出射光を分光分析する。
ATRプリズムと試料との屈折率の関係から或る角度以上の条件で赤外光をプリズムに入射させると、赤外光はATRプリズムから出ず、ATRプリズムと試料との接触面で全反射を起こすが、その際、赤外光が僅かの距離だけ試料側に滲みだすので、試料で赤外光の吸収があれば反射光が減衰し、試料の吸収スペクトルを得ることができる。
ATR法は、ATRプリズムと接触したごく薄い試料部分の吸収スペクトルを測定することができるため、厚い試料や透過性の低い試料であっても、ATRプリズムと密着させることができれば測定できるという利点を備えている。
また、ATR法を用いると、赤外光の吸収が起こる波数より官能基がわかるため、ATR法は定性分析によく用いられるが、試料を押さえる圧力によって、吸収スペクトルのピーク強度が変化するため、定量分析には基本的には用いられていなかった。
本発明者らは、ATR法を用いて定量分析を行なうのは困難と思われるが、おおまかな量でもよいので、感光体上の保護剤の塗布量を見積もれないものかと考え、保護剤が塗布された感光体についてATR測定を様々な条件で行い、そのスペクトルの比較および解析を行なった。
その結果、ATR法では、用いるクリスタルや入射角の条件によって赤外光の侵入深さが変化するため、同じサンプルを計測しても得られるスペクトルは異なり、用いるクリスタルや入射角条件によって、感光体に由来するピークのみしか検出されなかったり、ほぼ保護剤のみのピークしか検出されなかったり、感光体由来のピークと保護剤由来のピークが両方検出されたりと様々であった。様々な条件のうち、用いるクリスタルや入射角を細かく変化させて、感光体由来のピークと保護剤由来のピークが両方検出される条件において、得られたスペクトルから、感光体上の保護剤の塗布量を評価できないか鋭意検討を行なった。
ここで、ATR法では、試料を押さえる圧力によって強度比が変化してしまうため、スペクトルの強度を直接追うことができない。そのため、測定においてサンプルセット時に、サンプルを固定する治具とクリスタルの間のギャップを一定に保つ事ができるようにする、または、押さえつける圧力を一定にした場合、一定の条件でのIRスペクトルが得られると考え、サンプルセット時に、サンプルを押さえつける治具とクリスタルの間のギャップを一定に保つ事ができるようにして、保護剤塗布装置で塗布時間を変化させたサンプルを測定した。これにより、得られたそれぞれのスペクトルから、保護剤が塗布されていない感光体のスペクトルを基準となるピークがゼロになるように差し引いたところ、得られた差スペクトル中には、感光体に由来するピークが差し引かれきれずに存在しており、基準としたピークより低波数側のピークは保護剤塗布時間が長いほど強度が強い傾向があった。
そこで、ポリカーボネートを基準として差スペクトルを取った際の差スペクトル中のポリカーボネートのピークよりも低波数側に存在する感光体由来の差し引かれきれずに残ったピークの面積を算出し、さらに、基準としたポリカーボネートのピークの面積(ポリカーボネートのピークの面積算出に用いるスペクトルは保護剤が塗布されたスペクトル)で割ったところ、塗布時間の増加に伴ない面積の比が次第に増加していくことがわかった。
次に、上記で求めた面積の比を用いて、保護剤塗布装置で保護剤塗布した後の感光体上の保護剤の塗布量の良好な状態を規定できないか調べたところ、面積の比を好ましい範囲にすることで、高画質な画像形成を実現できることがわかり、本発明に到った。
すなわち、本発明の参考手段は、プロセスカートリッジや画像形成装置に用いられ、像担持体である感光体の表面に保護剤としてパラフィンを塗布する保護剤塗布装置において、「赤外吸収スペクトル法のATR法において、ATRプリズムとしてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定を行い得られるIRスペクトルについて、保護剤塗布前の感光体のIRスペクトルAと保護剤塗布後の感光体のIRスペクトルBを比較したとき、IRスペクトルAおよびIRスペクトルBの両者に存在する感光体に由来したピークであって、該感光体由来ピークのうち、IRスペクトルB中の保護剤に由来するピークと重ならないピークが少なくとも二つ以上存在し、該二つのピークのうちIRスペクトルA中の波数の大きい方のピークをピークa1、波数の小さい方のピークをピークa2とし、ピークa1、a2と波数が同じ位置で検出される、波数の対応するIRスペクトルB中のピークをピークb1、b2とし、IRスペクトルA中のピークa1の高さをh(a1)、IRスペクトルB中のピークb1の高さをh(b1)としたとき、IRスペクトルAを[h(b1)/h(a1)]倍したスペクトル(IRスペクトルA’とする)を、IRスペクトルBから差し引いて得られるスペクトルをIRスペクトルCとし、IRスペクトルC中でピークa1、a2と波数が同じ位置で検出される、波数の対応するピークをピークc1、c2とし、IRスペクトルB中のピークb1の面積をS(b1)、IRスペクトルC中のピークc2の面積をS(c2)としたとき、面積S(b1)と面積S(c2)との比(S(c2)/S(b1))を指標として、感光体上の保護剤の存在量を評価する評価方法」を用い、ピークb1を1770cm-1のピークとし、ピークc2を815cm-1のピークとして感光体上の保護剤の存在量を評価したとき、保護剤を20分塗布した後の感光体における(S(c2)/S(b1))の値が0.012以上、100分塗布した後の感光体における(S(c2)/S(b1))の値が0.12以下となることを特徴とするものである。
ここで、赤外光は試料界面で反射するのではなく、ある深さだけ試料側に入り込んでから全反射しているが、赤外光の侵入深さは、赤外光をサンプルに照射した際、赤外光の強度がサンプル表面における強度の1/eになる距離と定義され、下記の式1で表される。式1より、赤外光が試料に入り込む深さは、入射角やATRクリスタルの屈折率や波長(波数)によって異なり、入射角θが大きくなるほど、またATR結晶の屈折率が高くなるほど、測定波長が短くなるほど入り込む深さが小さく、より表面に近い情報がスペクトルに反映されることになる。
dp=λ/2πn1[sin2θ−(n2/n12]1/2 (式1)
但し、
dp:侵入深さ
2およびn1:クリスタルおよび試料の屈折率
θ:入射角
λ:波長
である。
本発明に係る参考手段において、感光体上の保護剤の分析には、ATR法を用い、ATRプリズムとして、屈折率が大きく、より表面に近い情報を得ることができるGeを用いる。また、サンプルへの赤外光入射角は45°を用いる。本発明の塗布装置の評価においては赤外光入射角を45°に設定することにより、より精度が高い指標を得ることができる。これらのATRプリズムと赤外光入射角の組み合わせにより、感光体上の保護剤の塗布量として好ましい状態を表現することができる。
本発明に係る参考手段において、ピークa1(b1、c1)はカーボネート結合に由来するピークであり、カーボネート結合は安定な結合であることから、劣化が起こりにくいためスペクトルへの影響が小さく、また、充分なピーク強度をもつため、差スペクトルをとる際の標準ピークとして好ましい。本発明に係る参考手段における、ピーク面積は、定量性のよい吸光度スペクトルを用いて算出する。
本発明に係る参考手段において、指標算出に用いるa2(b2、c2)のピークは、充分な強度を持ち、他のピークとの重なりがない、もしくは重なりによるa2のピークの変形が小さくいことが好ましい。また、a2が検出される波数での赤外光の侵入深さが、a1が検出される波数での侵入深さの130%〜300%の範囲であることが好ましい。ピークa2が検出される波数での侵入深さが、ピークa1検出される波数での侵入深さの130%以下および300%以上である場合、指標(S(c2)/S(b1))の感度が小さくなる
ため好ましくない。
これらのことから、ピークa1にカーボネート結合に由来するピークを選んだ場合、ピークa2としては、600cm-1〜1380cm-1で検出される感光体由来のピークを用いることが好ましく、815cm-1で検出されるピークを選ぶことができる。
a2として815cm-1に検出されるピークを選んだ場合、保護剤を20分塗布した後の感光体における(S(c2)/S(b1))の値は、0.012以上、好ましくは0.015〜0.070である。(S(c2)/S(b1))の値が、保護剤の塗布時間20分以内に0.012以上にならない場合、画像形成装置の使用初期において、保護剤が感光体を充分に保護しないため好ましくない。
保護剤を100分塗布した後の感光体における(S(c2)/S(b1))の値は、0.12以下、好ましくは0.020〜0.075である。(S(c2)/S(b1))の値が、保護剤の塗布時間100以内で0.12以上になる場合、画像形成装置を使いこんでいくと保護剤の塗布量が過剰になりすぎて、感光体に帯電が充分に乗らなかったり、ボケが生じるため好ましくない。
また、本発明に係る参考手段において、a2として用いるピークとしては1250cm-1に検出されるピークでもよい。
a2として1250cm-1に検出されるピークを選んだ場合、保護剤を20分塗布した後の感光体における(S(c2)/S(b1))の値は、0.10以上、好ましくは0.10〜0.3である。(S(c2)/S(b1))の値が、保護剤の塗布時間20分以内に0.10以上にならない場合、画像形成装置の使用初期において、保護剤が感光体を充分に保護しないため好ましくない。
保護剤を100分塗布した後の感光体における(S(c2)/S(b1))の値は、0.35以下、好ましくは0.15〜0.32である。(S(c2)/S(b1))の値が、保護剤の塗布時間100分以内で0.35以上になる場合、画像形成装置を使いこんでいくと保護剤の塗布量が過剰になりすぎて、感光体に帯電が充分にのらなかったり、ボケが生じるため好ましくない。
このように、選ぶピークによって、高画質を維持するための指標の上下限は適宜決定する必要がある。
本発明に係る参考手段の保護剤塗布装置において、保護剤はパラフィンを50重量%以上、好ましくは50〜95重量%含有していることを特徴とする。
本発明に係る参考手段における保護剤中のパラフィンの割合とは、保護剤に含有される全ての有機成分に対する割合を示しており、保護剤中に無機成分を含んでいる場合においては、無機成分は除外した全有機成分に対するパラフィンの割合を表している。
また、保護剤中のパラフィンの割合によって、指標(S(c2)/S(b1))の閾値は多少変化するが、パラフィンの割合によらず、感光体上の保護剤の塗布量の良好な状態は、前述したように、保護剤を20分塗布した後の感光体における(S(c2)/S(b1))の値が0.012以上(c2は815cm-1のピーク)、100分塗布した後の感光体における(S(c2)/S(b1))の値が0.12以下(c2は815cm-1のピーク)の閾値内に充分収まることがわかっている。
本発明に係る参考手段の保護剤塗布装置に用いる保護剤は、パラフィンを主体としている。
本発明に係る参考手段の保護剤に用いるパラフィンは、ノルマルパラフィン、イソパラフィンが例示できる。パラフィンは、一種だけでなく、異なる種類のパラフィンを混合して用いてもかまわない。
本発明に係る参考手段の保護剤に用いる保護剤中のパラフィンの割合は50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。パラフィンの割合が50重量%以下では、保護剤としての機能が低く、画像形成に伴う感光体の磨耗が生じやすく、好ましくない。また、パラフィンの割合が95重量%以上では、パラフィンが感光体表面を覆うことが難しく好ましくない。パラフィン単独では、ブラシやブレードの圧力だけでは、感光体上に薄く、膜状に広がりにくいため、他の物質を混合して用いることが不可欠となる。
本発明に係る参考手段の保護剤に用いるパラフィン以外の物質としては、両親媒性の有機化合物、脂肪族不飽和炭化水素、脂環式飽和炭化水素、脂環式不飽和炭化水素や芳香族炭化水素に分類される炭化水素類の他に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリパーフルオロアルキルエーテル(PFA)、パーフルオロエチレン−パーフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂やフッ素系ワックス類、ポリメチルシリコーン、ポリメチルフェニルシリコーン等のシリコーン樹脂やシリコーン系ワックス類、雲母等の潤滑性を有する無機化合物等が挙げられ、これらに限るものではないが、中でも両親媒性の有機化合物、脂環式飽和炭化水素が保護剤に含有することにより、保護剤の塗布性が向上し、特に環状ポリオレフィン等の脂環式飽和炭化水素が感光体上に保護剤が膜状に被覆することができ、特に好ましい。これらの、パラフィン以外の化合物は、一種類だけでなく、多種類を混合して用いても良い。
脂環式飽和炭化水素としては、シクロパラフィン、環状ポリオレフィン等が例示できる。
両親媒性の有機化合物は、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤やこれらの複合物等に類別されるが、本発明の保護剤は、上述のように像担持体上に保護剤層を形成し、像形成工程を経るため、像担持体の電気的な特性に対して悪影響を与えないようにする必要がある。
両親媒性の有機化合物として非イオン系界面活性剤を用いることにより、界面活性剤自身がイオン解離することがなくなるため、使用環境、特に湿度が、大幅に変動した場合にも、気中放電などによる電荷のリークを抑制することができ、画像品質を高度に維持することができる。
また、該非イオン系界面活性剤は、下記の化学式1のアルキルカルボン酸と多価アルコール類とのエステル化物であることが好ましい。
2n+1COOH (化学式1)
ただし、式中のnは15〜35の整数を示す。
化学式1のアルキルカルボン酸として直鎖アルキルカルボン酸を用いることにより、両親媒性の有機化合物が吸着した像担持体表面で、両親媒性の有機化合物の疎水性部分が配列しやすくなり、担持体表面への吸着密度が特に高くなるため、好ましい様態である。
1分子中のアルキルカルボン酸エステルは疎水性を示し、その数が多い方が気中放電により発生した解離性物質が像担持体表面に吸着するのを防ぎ、かつ帯電領域での像担持体表面への電気的ストレスを小さくするためには有効である。しかしながら、アルキルカルボン酸エステルの占める割合が多くなりすぎると、親水性を示す多価アルコール類の部分が覆い隠されてしまい、像担持体の表面状態によっては十分な吸着性能が発現しないことがある。
よって、両親媒性の有機化合物の1分子当りの平均エステル結合数は、1から3個であることが好ましい。
これら両親媒性の有機化合物の1分子当りの平均エステル結合数は、異なるエステル結合数を持つ複数の両親媒性の有機化合物から1種以上を選択し、混合して調整することもできる。
両親媒性の有機化合物としては、前述のように陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
陰イオン系界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸アルキル塩、長鎖脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の、疎水性部位の末端に陰イオン(アニオン)を有し、これと、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属イオン、アルミニウム、亜鉛等の金属イオン、アンモニウムイオン等が結合した化合物が挙げられる。
陽イオン系界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等の、疎水性部位の末端に陽イオン(カチオン)を有し、これと、塩素、フッ素、臭素等や、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン、水酸イオン等が結合した化合物が挙げられる。
また、両イオン系界面活性剤の例としては、ジメチルアルキルアミンオキシド、N−アルキルベタイン、イミダゾリン誘導体、アルキルアミノ酸等が挙げられる。
非イオン系界面活性剤の例としては、長鎖アルキルアルコール、アルキルポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルポリグルコキシド、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の、アルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物等が挙げられる。また、ラウリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の長鎖アルキルカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ヘキシトール等の多価アルコールやこれらの部分無水物とのエステル化合物も好ましい形態として挙げられる。
エステル化合物のより具体的な例としては、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルチミン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、ジパルチミン酸グリセリル、トリパルチミン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、トリミスチン酸グリセリル、パルチミン酸ステアリン酸グリセリル、モノアラキジン酸グリセリル、ジアラキジン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、ステアリン酸ベヘン酸グリセリル、セロチン酸ステアリン酸グリセリル、モノモンタン酸グリセリル、モノメリシン酸グリセリル等のアルキルカルボン酸グリセリルやこの置換物、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノパルチミン酸ソルビタン、ジパルチミン酸ソルビタン、トリパルチミン酸ソルビタン、ジミリスチン酸ソルビタン、トリミスチン酸ソルビタン、パルチミン酸ステアリン酸ソルビタン、モノアラキジン酸ソルビタン、ジアラキジン酸ソルビタン、モノベヘン酸ソルビタン、ステアリン酸ベヘン酸ソルビタン、セロチン酸ステアリン酸ソルビタン、モノモンタン酸ソルビタン、モノメリシン酸ソルビタン等のアルキルカルボン酸ソルビタンやこの置換物等が挙げられるが、これらに限るものではない。
また、これらの両親媒性有機化合物は単一の種類を用いても良いし、複数種類を併用しても良い。
さらに、場合により、金属酸化物、珪酸化合物、雲母等のフィラーを保護剤中に含有させても良い。
以下に図面を参照して本発明に係る参考手段の具体的な参考形態を説明する。
図1は本発明に係る参考手段の保護層形成装置を備えた画像形成装置の要部構成例を示す概略要部構成図である。
像担持体であるドラム状の感光体1に対向して配設された保護剤塗布装置2は、感光体を保護する保護剤を棒状(円柱状、四角柱状、六角柱状等)にした保護剤バー21と、この保護剤バー21と接触するブラシ状部材(ブラシ)22aを有し保護剤バー21からブラシ22aに移行した保護剤を感光体1へ供給する保護剤供給部材22と、保護剤バー21を保護剤供給部材22のブラシ22aに押し当てて保護剤を保護剤供給部材22のブラシ22aに移行させる押圧力付与機構23と、保護剤供給部材22により感光体上に供給された保護剤を薄層化する保護層形成機構24等から主に構成されている。
本発明に係る参考手段による保護剤バー21は、バネやスプリング等の押圧部材からなる押圧力付与機構23からの押圧力により、保護剤供給部材22のブラシ22aに押し当てられ、保護剤バー21からブラシ22aに保護剤が移行する。保護剤供給部材22は感光体1と線速差をもって回転してブラシ22aの先端で感光体表面を摺擦し、この際に保護剤供給部材22のブラシ22aの表面に保持された保護剤を、感光体1の表面に供給する。
また、感光体1の表面に供給された保護剤は、物質種の選択によっては供給時に十分な保護層にならない場合がある。このため、より均一な保護層を形成するために、感光体表面の保護剤は、例えばブレード状部材24aと、そのブレード状部材24aを感光体ドラム1の表面に押し当てるバネやスプリング等の押圧部材24bとを持つ保護層形成機構24により薄層化され、感光体表面の保護層となる。このように、感光体1に保護剤を適量供給するとともに、保護層形成機構24により薄層化することにより、保護剤が感光体上で保護膜となって保持されやすくなる。これにより、帯電手段(例えば帯電ローラ等)3の汚れ等による異常画像が起こらず、消耗品の交換頻度が少なく、長期に渡って高画質画像を出力可能な画像形成装置を実現することができる。
保護層形成機構24に用いるブレード状部材24aの材料は、特に制限されるものではなく、例えばクリーニングブレード用材料として一般に公知の、ウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体を、単独またはブレンドして使用することができる。また、これらのゴムブレードは、感光体1との接点部部分を低摩擦係数材料でコーティングや含浸処理しても良い。また、弾性体の硬度を調整するために、他の有機フィラーや無機フィラーに代表される充填材を分散しても良い。
これらのブレード状部材24aは、ブレード支持体24cに、先端部が感光体表面へ押圧当接できるように、接着や融着等の任意の方法によって固定される(なお、ブレード先端の当接方向は図示の例に限らず、カウンター方向でも良い)。ブレード状部材24aの厚みについては、押圧で加える力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね0.5〜5mm程度であれば好ましく使用でき、1〜3mm程度であれば更に好ましく使用できる。
また、支持体24cから突き出し、たわみを持たせることができるブレード状部材24aの長さ、いわゆる自由長についても同様に押圧で加える力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね1〜15mm程度であれば好ましく使用でき、2〜10mm程度であれば更に好ましく使用できる。
保護層形成用のブレード状部材24aの他の構成としては、バネ板等の弾性金属ブレード表面に、必要によりカップリング剤やプライマー成分等を介して、樹脂、ゴム、エラストマー等の層をコーティング、ディッピング等の方法で形成し、必要により熱硬化等を行い、更に必要であれば表面研摩等を施して用いても良い。
弾性金属ブレードの厚みは、0.05〜3mm程度であれば好ましく使用でき、0.1〜1mm程度であればより好ましく使用できる。
また、弾性金属ブレードでは、ブレードのねじれを抑止するために、取り付け後に支軸と略平行となる方向に、曲げ加工等の処理を施しても良い。
表面層を形成する材料としては、PFA、PTFE、FEP、PVdF等のフッ素樹脂や、フッ素系ゴム、メチルフェニルシリコーンエラストマー等のシリコーン系エラストマー等を、必要により充填剤と共に用いることができるが、これに限定されるものではない。
また、保護層形成機構24の押圧部材24bでブレード状部材24aを感光体に押圧する力は、感光体表面の保護剤が延展し、保護層や保護膜の状態になる力で十分であり、線圧として5gf/cm以上、80gf/cm以下であることが好ましく、10gf/cm以上、60gf/cm以下であることがより好ましい。
また、保護剤供給部材22にはブラシ状の部材22aが好ましく用いられるが、この場合、感光体表面への機械的ストレスを抑制するためには、ブラシ繊維は可撓性を持つことが好ましい。
可撓性のブラシ繊維の具体的な材料としては、一般的に公知の材料から1種乃至2種以上を選択して使用する事ができる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−ブタジエン樹脂;フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ナイロン;アクリル;レーヨン;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂);などの内、可撓性を持つ樹脂を使用することができる。
また、撓みの程度を調整するために、ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を複合して用いても良い。
保護剤供給部材22の支持体22bには、固定型と回動可能なロール状のものがある。ロール状の供給部材としては、例えばブラシ繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてロールブラシとしたものがある。ブラシ繊維は繊維径10〜500μm程度、ブラシの繊維の長さは1〜15mm、ブラシ密度は1平方インチ当たり1万〜30万本(1平方メートル当たり1.5×10〜4.5×108本)のものが好ましく用いられる。
保護剤供給部材22は、供給の均一性やその安定性の面から、極力ブラシ密度の高い物を使用することが好ましく、1本の繊維を数本〜数百本の微細な繊維から作ることも好ましい。例えば、333デシテックス=6.7デシテックス×50フィラメント(300デニール=6デニール×50フィラメント)のように6.7デシテックス(6デニール)の微細な繊維を50本束ねて1本の繊維として植毛することも可能である。
また、ブラシ22aの表面には必要に応じてブラシ22aの表面形状や環境安定性などを安定化することなどを目的として、被覆層を設けても良い。被覆層を構成する成分としては、ブラシ繊維の撓みに応じて変形することが可能な被覆層成分を用いることが好ましく、これらは、可撓性を保持し得る材料であれば、何ら限定される事無く使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂またはその変成品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成品);パーフルオロアルキルエーテル,ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂や、これらの複合樹脂等が挙げられる。
次に、図2は本発明に係る参考手段の保護剤塗布装置を用いたプロセスカートリッジの構成例の概略を説明するための断面図である。このプロセスカートリッジ11は、画像形成装置の画像形成部10として着脱可能に装備される。
図2に示すプロセスカートリッジ11は、像担持体であるドラム状の感光体1と、感光体1を帯電する帯電手段である帯電装置(図示の例では帯電ローラ)3と、帯電された感光体1にレーザー光L等を照射して静電潜像を形成する潜像形成手段(図示せず)と、感光体1上の静電潜像をトナーで現像して可視像化する現像手段である現像装置5と、感光体1上のトナー像を転写媒体(または中間転写媒体)7に転写する転写手段6と、転写後の感光体1の表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段であるクリーニング装置4と、クリーニング装置4から帯電装置3に至る部分に配置された保護剤塗布装置2等を備えた構成となっている。
図2において、帯電装置3は、例えば図示しない高電圧電源により直流(DC)電圧もしくはこれに交流(AC)電圧を重畳させた電圧を印加した帯電ローラである。また、現像装置5は、トナー粒子、またはトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤を担持搬送する現像剤担持体である現像スリーブ51と、現像剤を攪拌しながら搬送する現像剤攪拌搬送部材52,53等で構成される。
感光体1に対向して配設された保護剤塗布装置2は、図1と同様に、保護剤バー21、保護剤供給部材22、押圧力付与機構23、保護層形成機構24等から主に構成される。
また、感光体1は、転写工程後に部分的に劣化した保護剤やトナー成分等が残存した表面となっているが、クリーニング装置4のクリーニング部材41により表面残存物が清掃され、クリーニングされる。図2では、ブレード状のクリーニング部材41は、いわゆるカウンタータイプ(またはリーディングタイプ)に類する角度で当接されている。
クリーニング装置4により、表面の残留トナーや劣化した保護剤が取り除かれた感光体表面へは、保護剤バー21の保護剤が保護剤供給部材22により供給され、感光体表面に供給された保護剤は、保護層形成機構24により薄層化され、不定形な皮膜状の保護層が形成される。この際、感光体表面のうち電気的ストレスにより親水性が高くなっている部分に対して、本発明で使用する保護剤は、より良好な吸着性を持つため、一時的に大きな電気的ストレスが掛かり、感光体表面が部分的に劣化をし始めても、保護剤の吸着により感光体自身の劣化の進行を防ぐことができる。
保護層が形成された感光体1は、帯電ローラ3による帯電後、レーザー光Lなどの露光によって静電潜像が形成され、現像手段である現像装置5のトナーにより現像されて可視像化され、プロセスカートリッジ外の転写手段である転写装置(転写ローラ等)6により、転写媒体(または中間転写媒体)7へ転写される。
次に、図3は、本発明に係る参考手段の保護剤塗布装置を具備する画像形成装置100の構成例を示す概略構成図である。
この画像形成装置100は、画像形成を行う画像形成装置本体(プリンタ部)110と、この本体110の上部に設置された原稿読取部(スキャナ部)120と、その上に設置された原稿自動給紙装置(ADF)130と、画像形成装置本体110の下部に設置された給紙部200とを備えており、複写機の機能を有している。また、この画像形成装置100は、外部装置との通信機能を有しており、装置外部のパーソナルコンピュータ等と接続することにより、プリンタやスキャナとして用いることができる。また、電話回線や光回線と接続することにより、ファクシミリや複合機として用いることができる。
画像形成装置本体110内には、同じ構成で現像装置5のトナー色が異なる画像形成部(画像形成ステーション)10が4つ並設されており、該4つの画像形成部10で感光体上にトナー色の異なる画像(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像)をそれぞれ形成し、各色のトナー像を転写媒体または中間転写媒体に重ね合わせて転写して多色またはフルカラー画像を形成することができる。なお、図3の例では、4つの画像形成部10は、複数のローラに張架されたベルト状の中間転写媒体7に沿って並設されており、各画像形成部で形成された各色のトナー像は、一旦中間転写媒体7に順次重ね合わせて転写された後、二次転写装置12で紙等のシート状の転写媒体に一括して転写される。
各色の画像形成部10は図2と同様の構成であり、ドラム状の感光体1(1Y,1M,1C,1K)の周囲に、保護剤塗布装置2、帯電装置3、潜像形成装置8からのレーザー光等の露光部、現像装置5、一次転写装置6、およびクリーニング装置4が配置されている。また、図2と同様に、各色の画像形成部10には、感光体1とともに、保護剤塗布装置2、帯電装置3、現像装置5、クリーニング装置4をカートリッジ内に設けたプロセスカーリッジ11を用いている。そして、このプロセスカートリッジは、画像形成装置本体110に対して着脱自在に設けられている。
次に図3に示す画像形成装置の動作を説明する。ここでは、画像形成のための一連のプロセスについて、ネガ−ポジプロセスで説明を行う。なお、各画像形成部の動作は同じであるので、ここでは一つの画像形成部の動作を説明する。
有機光導電層を有する有機感光体(OPC)等に代表される像担持体であるドラム状の感光体1は、除電ランプ(図示せず)等で除電され、帯電部材(例えば帯電ローラ)を有する帯電装置3で均一にマイナスに帯電される。
帯電装置3による感光体1の帯電が行なわれる際には、電圧印加機構(図示せず)から帯電部材に、感光体1を所望の電位に帯電させるに適した、適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した帯電電圧が印加される。
帯電された感光体1は、例えば複数のレーザー光源と、カップリング光学系と、光偏向器と、走査結像光学系等からなる、レーザー走査方式の潜像形成装置8によって照射されるレーザー光で潜像形成(露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行なわれる。
すなわち、レーザー光源(例えば半導体レーザー)から発せられたレーザー光は、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等からなる光偏向器により偏向走査され、走査レンズやミラー等からなる走査結像光学系を介して感光体1の表面を、感光体1の回転軸方向(主走査方向)に走査する。
このようにして形成された潜像が、現像装置5の現像剤担持体である現像スリーブ51上に供給されたトナー粒子、またはトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、トナー可視像が形成される。
潜像の現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像スリーブ51に、感光体1の露光部と非露光部の間にある、適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
上記のような動作で各色に対応した画像形成部10の感光体1上に形成されたトナー像は、転写ローラ等からなる一次転写装置6にて中間転写媒体7上に順次重ね合わせて一次転写される。一方、画像形成動作及び一次転写動作にタイミングを合わせて、給紙部200の多段の給紙カセット201a,201b,201c,201dの中の選択された給紙カセットから、給紙ローラ202及び分離ローラ203からなる給紙機構で紙等のシート状の転写媒体が給紙され、搬送ローラ204,205,206及びレジストローラ207を経て二次転写部に搬送される。そして、二次転写部において、中間転写媒体7上のトナー画像が二次転写装置(例えば二次転写ローラ)12にて、搬送されてきた転写媒体に二次転写される。なお、上記の転写工程において、一次転写装置6や二次転写装置12には、転写バイアスとして、トナーの帯電極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。
上記の二次転写後、転写媒体は、中間転写媒体7から分離され、転写像が得られる。また、一次転写後に感光体1上に残存するトナー粒子は、クリーニング装置4のクリーニング部材41によって、クリーニング装置4内のトナー回収室へ、回収される。また、二次転写後に中間転写媒体7上に残存するトナー粒子は、ベルトクリーニング装置9のクリーニング部材によって、クリーニング装置9内のトナー回収室へ、回収される。
図3に示した画像形成装置100は、上述の画像形成部10が中間転写媒体7に沿って複数配置された、いわゆるタンデム型で中間転写方式の画像形成装置であり、複数の画像形成部10によって各感光体1(1Y,1M,1C,1K)上に順次作成された色が異なる複数のトナー像を一旦中間転写媒体7上に順次転写した後、これを一括して紙のような転写媒体に転写する。そしてトナー像が転写された転写媒体を、搬送装置13により定着装置14へ送り、熱等によってトナーを定着する構成である。定着後の転写媒体は、搬送装置15及び排紙ローラ16により排紙トレイ17に排紙される。また、この画像形成装置100は両面プリント機能も備えており、両面プリント時には、定着装置9の下流の搬送路を切換え、片面の画像が定着された転写媒体を両面用搬送装置210を介して表裏反転し、搬送ローラ206及びレジストローラ207で二次転写部に再給紙して、裏面側に画像の転写を行う。転写後の転写媒体は、上記と同様に定着装置9に搬送されて画像が定着され、定着後の転写媒体は排紙トレイ17に排紙される。
なお、上記の構成で、中間転写媒体を用いずに、直接紙等の転写媒体に転写する、タンデム型の直接転写方式の画像形成装置とすることもでき、この直接転写方式の場合は、中間転写媒体に換えて、転写媒体を担持搬送する転写ベルト等を用い、各画像形成部10によって各感光体1(1Y,1M,1C,1K)上に順次作成された色が異なる複数のトナー像を直接、転写ベルトで搬送される紙のような転写媒体に順次転写した後、定着装置へ送り、熱等によってトナーを定着する構成としても良い。
以上に説明したような画像形成装置では、帯電装置3は、帯電部材を感光体表面に接触または近接して配設した帯電装置であることが好ましく、これにより、放電ワイヤを用いた、いわゆるコロトロンやスコロトロンと言われるコロナ放電器と比較して、帯電時に発生するオゾン量を大幅に抑制することが可能となる。
しかしながら、帯電部材を感光体表面に接触または近接して帯電を行う帯電装置3では、前述のように放電が感光体表面近傍の領域で行われるため、感光体1への電気的ストレスが大きくなりがちである。
そこで、本発明に係る参考手段の保護剤塗布装置2を用いることにより、長期間に渡り感光体1を劣化させることなく維持できるため、経時的な画像の変動や使用環境による画像の変動を大幅に抑制でき、安定した画像品質の確保が可能となる。
次に、本発明の参考手段に係るプロセスカートリッジや画像形成装置において好適に用いられる感光体について説明する。
本発明に係る参考手段の画像形成装置に用いる像担持体である感光体は、導電性支持体の上に感光層が設けられている。感光層の構成は電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、あるいは電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、あるいは電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層の上に保護層を設けることもできる。感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また各層には必要により可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
感光体の導電性支持体としては、体積抵抗10^10Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。ドラム状の支持体としては、直径が20〜150mm、好ましくは、24〜100mm、さらに好ましくは28〜70mmのものを用いることができる。ドラム状の支持体の直径が20mm以下では、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に難しく、ドラム状の支持体の直径が150mm以上では画像形成装置が大きくなってしまい好ましくない。特に、画像形成装置がタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は70mm以下、好ましくは60mm以下であることが好ましい。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
本発明に係る参考手段の画像形成装置に用いる感光体の下引層としては樹脂、あるいは白色顔料と樹脂を主成分としたもの、及び導電性基体表面を化学的あるいは電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が例示できるが、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、中でも導電性基体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンを含有させることが最も好ましい。下引層に用いる樹脂としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂、アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂、これらの中の一種あるいは多種の混合物を例示することができる。
本発明に係る参考手段の画像形成装置に用いる感光体の電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料及び染料や、セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料を使用することができ、電荷発生物質は一種あるいは多種混合して使用することができる。下引層は、一層であっても、複数の層で構成しても良い。
本発明に係る参考手段の画像形成装置に用いる感光体の電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等の一種あるいは多種を混合して使用することができる。
上記電荷発生層、電荷輸送層の感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができ、適当な結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の光導電性樹脂など一種の結着樹脂あるいは多種と結着樹脂の混合物を挙げることができるが、特にこれらのものに限定されるものではない。
酸化防止剤としては、例えば以下のものが使用される。
・モノフェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−t−ブチル−4−ヒドロキシニソールなど。
・ビスフェノール系化合物
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
・高分子フェノール系化合物
1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェノール類など。
・パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
・ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
・有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
・有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
電荷輸送層中にレベリング剤を添加してもかまわない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
表面層は前述のように、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため設けられる。表面層としては、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが例示できる。表面層に用いる高分子は、熱可塑性高分子、熱硬化性高分子、何れの高分子であっても良いが、熱硬化性高分子は機械的強度が高く、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を抑える能力が極めて高いためたいへん好ましい。表面層は薄い膜厚であれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない表面層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、表面層中に前述の電荷輸送物質を含有させたり、保護層に用いる高分子を電荷輸送能力を有するものを用いることが好ましい。感光層と表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレードとの摩擦により保護層が磨耗し、消失すると、すぐに感光層は磨耗していってしまうため、表面層を設ける場合には、表面層は十分な膜厚とすることが重要であり、0.01〜12μm、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜8μmとすることが好ましい。表面層の膜厚が0.1μm以下では、薄すぎてクリーニングブレードとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分から感光層の磨耗が進んでしまうため好ましくない。表面層の膜厚が12μm以上では、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する高分子を用いる場合には、電荷輸送能力を有する高分子のコストが高くなってしまうため好ましくない。
表面層に用いる高分子としては、画像形成時の書き込み光に対して透明で、絶縁性、機械的強度、接着性に優れたポリカーボネートを用いるが、この他に、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂を含有してもよい。これらの高分子は熱可塑性高分子であっても良いが、高分子の機械的強度を高めるため、多官能のアクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ架橋剤により架橋し、熱硬化性高分子とすることで、表面層の機械的強度は増大し、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を大幅に減少させることができる。
表面層中には表面層の機械的強度を高めるために金属、又は金属酸化物の微粒子を分散させることができる。金属酸化物としては酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。その他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。
以上の参考形態では像担持体を感光体として説明したが、本発明に係る参考手段の像担持体は、感光体上に形成されたトナー像を一次転写して色重ねを行い、更に転写媒体へ転写を行う、いわゆる中間転写方式による画像形成を行う際に使用する中間転写媒体であってもよい。
中間転写媒体としては、体積抵抗10^5〜10^11Ω・cm の導電性を示すものが好ましい。表面抵抗が10^5Ω/□を下回る場合には、感光体から中間転写媒体上へトナー像の転写が行われる際に、放電を伴いトナー像が乱れるいわゆる転写チリが生じることがあり、10^11Ω/□を上回る場合には、中間転写媒体から紙などの転写媒体へトナー像を転写した後に、中間転写媒体上へトナー像の対抗電荷が残留し、次の画像上に残像として現れることがある。
中間転写媒体としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物やカーボンブラック等の導電性粒子や導電性高分子を、単独または併用して熱可塑性樹脂と共に混練後、押し出し成型したベルト状もしくは円筒状のプラスチックなどを使用することができる。この他に、熱架橋反応性のモノマーやオリゴマーを含む樹脂液に、必要により上述の導電性粒子や導電性高分子を加え、加熱しつつ遠心成型を行い、無端ベルト上の中間転写媒体を得ることもできる。
中間転写媒体に表面層を設ける際には、上述の感光体表面層に使用した表面層材料の内、電荷輸送材料を除く組成物に、適宜、導電性物質を併用して抵抗調整を行い、使用することができる。
次に、本発明の参考手段に係るプロセスカートリッジや画像形成装置において好適に用いられるトナーについて説明する。
まず、本発明に係る参考手段のトナーは、平均円形度が0.93〜1.00であることが好ましい。本発明に係る参考手段では、下記の式2より得られた値を円形度と定義する。この円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長 (式2)
平均円形度が0.93〜1.00の範囲では、トナー粒子の表面は滑らかであり、トナー粒子同士、トナー粒子と感光体との接触面積が小さいために転写性に優れる。
トナー粒子に角がないため、現像装置内での現像剤の攪拌トルクが小さく、攪拌の駆動が安定するために異常画像が発生しない。
ドットを形成するトナーの中に、角張ったトナー粒子がいないため、転写で転写媒体に圧接する際に、その圧がドットを形成するトナー全体に均一にかかり、転写中抜けが生じにくい。
トナー粒子が角張っていないことから、トナー粒子そのものの研磨力が小さく、像担持体の表面を傷つけたり、磨耗させたりしない。
次に、円形度の測定方法について説明する。
円形度は、東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定することができる。
具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、分散液濃度を3000〜10000個/μlとして前記装置によりトナーの形状、粒度を測定する。
また本発明に係る参考手段では、トナーの重量平均径D4が3〜10μmであることが好ましい。
この範囲では、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有していることから、ドット再現性に優れる。
重量平均径D4が3μm未満では、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象が発生しやすい。
重量平均径D4が10μmを超えると、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しい。
また、本発明の参考手段に係るトナーは、重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が1.00〜1.40であることが好ましい。(D4/D1)の値が1に近づくほど、そのトナーの粒度分布がシャープであることを意味する。
よって、(D4/D1)が1.00〜1.40の範囲では、トナー粒径による選択現像が起きないため、画質の安定性に優れる。
トナーの粒度分布がシャープであることから、摩擦帯電量分布もシャープとなり、カブリの発生が抑えられる。
トナー粒径が揃っていると、潜像ドットに対して、緻密に かつ整然と並ぶように現像されるので、ドット再現性に優れる。
次に、トナー粒子の粒度分布の測定方法について説明する。
コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。以下に測定方法について述べる。
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均径D4、個数平均径D1を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
また、このような略球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させるトナーが好ましい。この反応で製造されたトナーは、トナー表面を硬化させることで、ホットオフセットの少なくすることができ、定着装置の汚れとなって、それが画像上に表れるのを抑えることができる。
トナー作成に使用できる変性ポリエステル系樹脂から成るプレポリマーとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)が挙げられ、また、該プレポリマーと伸長または架橋する化合物としては、アミン類(B)が挙げられる。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、および(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
これらの反応により、本発明に係る参考手段のトナーに用いられる変性ポリエステル、中でもウレア変性ポリエステル(i)が作成できる。これらウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
また、本発明に係る参考手段においては、前記ウレア結合で変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、変性されていないポリエステル(ii)を結着樹脂成分として含有させることもできる。(ii)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の重量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。(i)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
(ii)のピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、10000を超えると低温定着性が悪化する。(ii)の水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10〜120、特に好ましくは20〜80である。5未満では耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。(ii)の酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
本発明に係る参考手段において、結着樹脂のガラス転移点(Tg)は通常50〜70℃、好ましくは55〜65℃である。50℃未満ではトナーの高温保管時のブロッキングが悪化し、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明に係る参考手段の乾式トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。結着樹脂の貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10000dyne/cm2となる温度(TG’)が、通常100℃以上、好ましくは110〜200℃である。100℃未満では耐ホットオフセット性が悪化する。結着樹脂の粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180℃以下、好ましくは90〜160℃である。180℃を超えると低温定着性が悪化する。すなわち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG’はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG’とTηの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましい。さらに好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜90℃であり、特に好ましくは20〜80℃である。
結着樹脂は以下の方法などで製造することができる。ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。さらに(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際および(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で(ii)を製造し、これを前記(i)の反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
また、本発明に係る参考手段に用いるトナーは概ね以下の方法で製造することができるが勿論これらに限定されることはない。
本発明に係る参考手段に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
トナー粒子は、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマー(A)からなる分散体を、(B)と反応させて形成しても良いし、あらかじめ製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いても良い。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。プレポリマー(A)と他のトナー組成物である(以下トナー原料と呼ぶ)着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、荷電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。高温な方が、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含むトナー組成物100部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
プレポリマー(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させても良いし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしても良い。この場合製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
トナー組成物が分散された油性相を水が含まれる液体に乳化、分散するための分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性荊、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及ぴその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガーフルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガーフルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及ぴ金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及ぴその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、(タイキン工莱社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F−150(ネオス社製)などが挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を右する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6一C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンSーl21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDSー202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEFーl32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF一300(ネオス社製)などが挙げられる。
水に難溶の無機化合物分散剤として、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いる事ができる。
また、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ピニル、プロピオン酸ピニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いたほうが粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましく、中でもトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒がより好ましい。プレポリマー(A)100部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。溶剤を使用した場合は、伸長および/または架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
伸長および/または架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。
また、用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
得られた乾燥後のトナーの粉体は、離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって、表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
また、該トナーに使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料が使用でき、具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドンレッド、ベンジジンイエロー、ローズベンガル等を単独あるいは混合して用いることができる。
さらに、必要により、トナー粒子自身に磁気特性を持たせるには、フェライト、マグネタイト、マグヘマイト等の酸化鉄類、鉄、コバルト、ニッケル等の金属あるいは、これらと他の金属との合金等の磁性成分を単独または混合して、トナー粒子へ含有させればよい。また、これらの成分は、着色剤成分として使用/併用することもできる。
本発明に係る参考手段で用いられるトナー中の着色剤の個数平均径は0.5μm以下であることが望ましく、好ましくは0.4μm以下、より好ましくは0.3μm以下が望ましい。
トナー中の着色剤の個数平均径が0.5μmより大きいときには、顔料の分散性が充分なレベルには到らず、好ましい透明性が得られないことがある。
0.1μmより小さい微小粒径の着色剤は、可視光の半波長より十分小さいため、光の反射、吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。よって、0.1μm未満の着色剤の粒子は良好な色再現性と、定着画像を有するOHPシートの透明性に貢献する。一方、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、入射光の透過が阻害されたり、散乱されたりして、OHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。
さらに、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、トナー粒子表面から着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こしやすいため、好ましくない。特に、0.7μmより大きな粒径の着色剤は、全着色剤の10個数%以下であることが好ましく、5個数%以下であることが、より好ましい。
また、着色剤を結着樹脂の一部もしくは全部と共に、予め湿潤液を加えた上で混練しておく事により、初期的に結着樹脂と着色剤が十分に付着した状態となって、その後のトナー製造工程でのトナー粒子中における着色剤分散がより効果的に行なわれ、着色剤の分散粒径が小さくなり、一層良好な透明性を得る事ができる。
予めの混錬に用いる結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として例示した樹脂類をそのまま使用することができるが、これらに限定されるものではない。
前記の結着樹脂と着色剤の混合物を予め湿潤液と共に混練する具体的な方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤及び湿潤液を、ヘンシェルミキサー等のブレンダーにて混合した後、得られた混合物を二本ロール、三本ロール等の混練機により、結着樹脂の溶融温度よりも低い温度で混練して、サンプルを得る。
また、湿潤液としては、結着樹脂の溶解性や、着色剤との塗れ性を考慮しながら、一般的なものを使用できるが、特に、アセトン、トルエン、ブタノン等の有機溶剤や水が、着色剤の分散性の面から好ましい。
中でも、水の使用は、環境への配慮及び、後のトナー製造工程における着色剤の分散安定性維持の点から、一層好ましい。
この製法によると、得られるトナーに含有される着色剤粒子の粒径が小さくなるばかりでなく、該粒子の分散状態の均一性が高くなるため、OHPによる投影像の色の再現性がより一層良くなる。
この他、本発明に係る参考手段の構成をとる限り、トナー中に結着樹脂や着色剤とともにワックスに代表される離型剤を含有させることもできる。
離型剤としては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。
これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。これら離型剤の融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
また、トナー帯電量及びその立ち上がりを早くするために、トナー中に、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。ここで、電荷制御剤として有色材料を用いると色の変化が起こるため、無色、白色に近い材料が好ましい。
帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的には第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
本発明に係る参考手段において荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させる事もできるし、有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
また、トナー製造過程で水系媒体中にトナー組成物を分散させるに際して、主に分散安定化のための樹脂微粒子を添加してもよい。
使用される樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
更に、トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。
この無機微粒子の一次粒子径は、5mμ〜2μmであることが好ましく、特に5mμ〜500mμであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
この他 高分子系微粒子、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
また、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
これらのトナーを用いることにより、上述の如く、現像の安定性に優れる、高画質なトナー像を形成することができる。しかしながら、転写装置にて転写媒体もしくは中間転写媒体に転写されず、像担持体上に残存してしまったトナーは、その微細さや転動性の良さのために、クリーニング装置による除去が困難で通過してしまうことがある。トナーを像担持体から完全に除去するには、例えばクリーニングブレードのようなトナー除去部材を像担持体に対して強力に押しつける必要がある。この様な負荷は、像担持体やクリーニング装置の寿命を短くするだけでなく、余計なエネルギーを使用してしまうことになる。
像担持体に対する負荷を軽減した場合には、像担持体上のトナーや小径のキャリアの除去が不十分となり、これらはクリーニング装置を通過する際に、像担持体表面を傷つけ、画像形成装置の性能を変動させる要因となる。
本発明に係る参考例の画像形成装置は、前述の如く、像担持体表面状態の変動、特に低抵抗部位の存在に対しての許容範囲に優れ、像担持体への帯電性能変動等を、高度に抑制した構成であるため、上記構成のトナーと併用することにより、極めて高画質な画像を、長期にわたって安定して得ることができるものである。
また、本発明に係る参考手段の画像形成装置は、上述のような、高品質な画像を得るに適した構成のトナーとの併用ばかりでなく、粉砕法による不定形のトナーに対しても適用でき、装置寿命を大幅に延ばすことは言うまでもない。
このような、粉砕法のトナーを構成する材料としては、通常、電子写真用トナーとして使用されるものが、特に制限なく、適用可能である。
該トナーに使用される一般的な結着剤樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン/p−クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ビニルメチルケトン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単重合体やその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル誘導体;ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオール系重合体、エポキシ系重合体、テルペン系重合体、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられ、単独あるいは混合して使用できるが特にこれらに限定するものではない。中でも、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂より選ばれる少なくとも1種以上であることが、電気特性、コスト面等から、より好ましいものである。更には、良好な定着特性を有するものとして、ポリエステル系樹脂および/またはポリオール系樹脂の使用が、一層好ましい。
また、上述の事由により、帯電部材の被覆層に含まれる前記トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものは、線状ポリエステル樹脂組成物、線状ポリオール樹脂組成物、線状スチレンアクリル樹脂組成物、またはこれらの架橋物の内、少なくとも一種を好ましく用いることができる。
粉砕法のトナーでは、これらの樹脂成分と共に、前述のような着色剤成分、ワックス成分、電荷制御成分等を、必要により前混合後、樹脂成分の溶融温度近傍以下で混練して、これを冷却後、粉砕分級工程を経て、トナーを作成すれば良く、また、必要により前述の外添成分を、適宜、添加混合すれば良い。
[実施形態
次に、本発明の第の手段に係る実施形態を説明する。この実施形態は、前述の参考形態1の保護剤塗布装置の評価等に用いられる評価方法を一般化したものであり、固体としては感光体に限らず、種々の固体表面の付着物の存在量を評価することが可能である。
本発明者らは、固体表面に薄い膜状の付着物が存在する場合の付着物の存在量を把握できないか調べるため、ATR(Attenuated Total Reflection)法を用いて固体表面上の付着物の分析を行なった。ATR法においては、用いるクリスタルや入射角の条件によって赤外光の侵入深さが変化するため、同じサンプルを計測しても得られるスペクトルは異なり、用いるクリスタルや入射角条件によって、固体表面に由来するピークのみしか検出されなかったり、付着物のみのピークしか検出されなかったり、固体表面由来のピークと付着物由来のピークが両方検出されたりと様々であった。様々な条件のうち、用いるクリスタルや入射角を細かく変化させて、固体表面由来のピークと付着物由来のピークが両方検出される条件において、得られたスペクトルから、固体表面上の付着物の存在量を評価できないか鋭意検討を行なった。
ここで、ATR法では、試料を押さえる圧力によって強度比が変化してしまうため、スペクトルの強度を直接追うことができない。そのため、測定においてサンプルセット時に、サンプルを固定する治具とクリスタルの間のギャップを一定に保つ事ができるようにする、または、押さえつける圧力を一定にした場合、一定の条件でのIRスペクトルが得られると考え、サンプルセット時に、サンプルを押さえつける治具とクリスタルの間のギャップを一定に保つ事ができるようにして、固体表面上の付着物の量を変化させたサンプルおよび付着物の付着していないサンプルを測定した。これにより、得られたそれぞれのスペクトルについて、スペクトル中のピークの帰属を行い、固体表面由来のピークの面積を算出したところ、付着物の多いサンプルほど、固体表面由来のピークの面積は小さかった。また、付着物がより多く付着したサンプルのIRスペクトルに着目して、固体表面由来のピークの面積の減少割合を算出したところ、波数のより大きいピークの面積ほどピークの面積の減少割合が大きい傾向にあった。次に、付着物が付着したサンプルのIRスペクトルと付着物の付着していないサンプルのIRスペクトルについて固体表面由来ピークのうちの任意の一つのピーク(基準ピーク)のピーク強度がゼロになるように付着物の付着していないサンプルのIRスペクトルを縮小して、付着物が付着しているサンプルのIRスペクトルから差し引き、差スペクトルを求め、差スペクトル中のピークを細かく見ていったところ、基準ピークよりも波数の小さい領域において、固体表面由来のピークが差スペクトル中でも残存していた。また、その残存する固体表面由来のピークのピーク面積は、付着物の多いサンプルほど増加していた。
さらに、差スペクトル中の基準ピークよりも波数の小さい領域の固体表面由来のピークの面積と差スペクトルをとる前の付着物が付着したサンプルのIRスペクトル中の基準ピークの面積の比(差スペクトル中に残存するピークの面積/付着物が付着したサンプルのIRスペクトル中の基準ピークの面積)をとってみたところ、付着物の量の増加に伴ない面積の比が次第に増加していくことがわかった。
すなわち、本発明は、固体表面の付着物の存在量を評価する評価方法において、赤外吸収スペクトル法のATR法により測定される、付着物の無い固体表面のIRスペクトルAと付着物が付着した固体表面のIRスペクトルBを比較したとき、IRスペクトルAおよびIRスペクトルBの両者に存在する該固体に由来したピークであって、該固体由来ピークのうち、IRスペクトルB中の付着物に由来するピークと重ならないピークが少なくとも二つ以上存在し、該二つのピークのうちIRスペクトルA中の波数の大きい方のピークをピークa1、波数の小さい方のピークをピークa2とし、ピークa1、a2と波数が同じ位置で検出される、波数の対応するIRスペクトルB中のピークをピークb1、b2とし、IRスペクトルA中のピークa1の高さをh(a1)、IRスペクトルB中のピークb1の高さをh(b1)としたとき、IRスペクトルAを[h(b1)/h(a1)]倍したスペクトル(IRスペクトルA’とする)を、IRスペクトルBから差し引いて得られるスペクトルをIRスペクトルCとし、IRスペクトルC中でピークa1、a2と波数が同じ位置で検出される、波数の対応するピークをピークc1、c2とし、IRスペクトルB中のピークb1の面積をS(b1)、IRスペクトルC中のピークc2の面積をS(c2)としたとき、IRスペクトルB中のピークb1の面積S(b1)と、IRスペクトルC中のピークc2の面積S(c2)との比(S(c2)/S(b1))より、固体表面上の付着物の存在量を評価することを特徴とするものである。
ここで付着物は、付着される固体と異なる物質であり、付着物は単一の物質でなくても良く、多種類の物質であっても良い。また、付着物が多種類の場合、均一に混合された状態であっても、多層構造であっても良い。付着物にムラがある場合は、ムラの間隔が0.3mm以下までなら問題なく評価できる。
また、ここで、IRスペクトルAおよびIRスペクトルBの両者に存在する固体に由来したピークであって、該固体由来ピークのうち、IRスペクトルB中の付着物に由来するピークと重ならないピークとは、図7に示す模式図1−1のような状態で、IRスペクトルA中のピークa(固体のピーク)が検出される波数と同じ波数で、IRスペクトルB中のピークb(該固体のピークでピークaと同じ官能基)が検出される状態で、且つ、付着物のピークMの裾が、ピークbのピークの裾と重ならない状態を示す。
ここで、IRスペクトルは、赤外光源のもつ光の波数(波長)に対する強度分布が、検体試料によってどう変化するかを見たものであり、通常は波長の逆数である波数(単位cm−1)を横軸とし、縦軸には、透過率(T)や吸光度(A)をとり、曲線として描かれる。透過率は、試料を透過したエネルギーと試料に入射したエネルギーとの比であり、吸光度は透過率の逆数の常用対数である。吸光度と試料濃度が比例関係にある(Lambert-Beerの法則)ことはよく知られており、定量計算を行う場合は、吸光度スペクトルを用いなくてはならない。なお、本発明で用いるIRスペクトルは、吸光度スペクトルを使用する。
IRスペクトルを測定するための装置としては、分散型赤外分光光度計、フーリエ変換赤外分光光度計に大別され、時間効率・光量利用率・波数分解能・波数精度が高いことからフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)が現在の主流である。測定方法としては、通常の透過法の他に、種々の測定アクセサリが有り、試料の形態や知りたい情報に応じて選択することができる。種々の測定アクセサリの中でも、ATR法は、試料処理をほとんど行うことなくIRスペクトルを測定できることから、近年FT−IRの測定アクセサリとしてかなり普及している。
このATR法においては、試料をATRクリスタルに接触させて測定を行なうため、ATRクリスタルと試料の接触状態によって、同じ試料を測定しても、ピーク強度はバラツクため定量分析は困難である。そこで近年では、接触状態を制御するために種々のアクセサリが普及してきており、アクセサリには、サンプルを固定する(押し付ける)ための治具とATRクリスタルとの間のギャップを一定に保てるようにしたアクセサリやサンプルにかける圧力が一定に保てるようにしたアクセサリ、サンプルにかける圧力用の圧力ゲージを持ち圧力が可変なアクセサリ等がある。
これらのアクセサリを使うとピーク強度のバラツキは低減されるが、サンプルを固定する治具とクリスタルの間のギャップを一定に保って、同じ試料について何度か測定を行なったところ、20%ほどのバラツキを持っていた。そのため、固体表面の付着物の存在量を見積もるためには、基準とするピークを用いて規格化を行なう必要がある。
規格化を行なうピークとしては、他のピークとの重なりがなく、ピーク強度が強く、官能基としては劣化等による変化がおきにくい官能基に由来するピークが好ましい。
また、赤外光は試料界面で反射するのではなく、ある深さだけ試料側に入り込んでから全反射している。赤外光の侵入深さは、赤外光をサンプルに照射した際、赤外光の強度がサンプル表面における強度の1/eになる距離と定義され、下記の式1で表される。式1より、赤外光が試料に入り込む深さは、入射角やATRクリスタルの屈折率や波数(波長)によって異なり、入射角θが大きくなるほど、またATR結晶の屈折率が高くなるほど、測定波長が短くなるほど入り込む深さが小さく、より表面に近い情報がスペクトルに反映されることになる。
dp=λ/2πn1[sin2θ−(n2/n12]1/2 (式1)
但し、
dp:侵入深さ
2およびn1:クリスタルおよび試料の屈折率
θ:入射角
λ:波長
である。
付着物の膜厚に応じて、ATRクリスタル、赤外光の入射角および指標として選ぶピークの波数(波長)は適宜選択されるが、その際、付着物の膜厚が選択されたピークの波数での赤外光の侵入深さの100%未満、好ましくは1〜70%、更に好ましくは2〜60%になるように、ATRクリスタル、赤外光の入射角および指標として選ぶピークの波数が適宜選択される。
付着物の膜厚が、赤外光の侵入深さに対して100%以上では、固体表面由来のピークが検出されないため、本発明の評価方法を用いた付着物の存在量評価には適さず、また、付着物の膜厚が選択されたピークの波数での赤外光の侵入深さに対して薄すぎると、感度が小さくなるため好ましくない。
ある特定のATRクリスタルおよび赤外光の入射角の条件で固体表面に付着物が付着したサンプルのATR測定を行い、得られたスペクトルのある特定のピークの波数での侵入深さを付着物の膜厚と比較して、付着物の厚みに対して侵入深さが深すぎたり浅すぎたりする場合、すなわち、侵入深さが浅すぎて付着物のみが検出され、固体表面由来のピークが検出されなかったり、侵入深さが深すぎて、付着物由来のピークのピーク強度が小さすぎる場合、侵入深さは、ATRクリスタルの屈折率、赤外光の入射角およびピークの検出される波長(波数)によって可変なため(式1)、侵入深さを変化させて、付着物の膜厚と侵入深さとの比率を最適な値に調整する事が可能である。
すなわち、侵入深さは付着物の厚みに応じて、ATRクリスタルの屈折率、赤外光の入射角および付着量算出の指標として選ぶピークの波数を変えることで適宜調整する必要がある。
一般的に使用されているATRクリスタルとしては、KRS−5(屈折率2.4)、ゲルマニウム(屈折率4.0)、AMTIR(屈折率2.5)、ケイ素(屈折率3.4)、セレン化亜鉛(屈折率2.4)、ダイヤモンド(屈折率2.4)等が挙げられる。
また、一般的にATR測定に用いられる、赤外光の入射角は30〜85°である。
前述のように差スペクトル中の基準ピークよりも波数の小さい領域で、固体表面由来のピークが残存する現象が起こるが、この現象は赤外光の侵入深さが波数に依存することに起因する。固体表面に付着物が付着すると、その分、固体表面由来のピークのピーク強度は減少するが、その減少する度合いは侵入深さに依存して変化し、侵入深さが深い低波数側ほど減少度合いは小さい。
本来なら、固体表面に付着物が付着しており、付着物が付着したサンプルと付着していないサンプルのIRスペクトルの差をとった場合、付着物(異なった物質)に由来するピークのみが差スペクトル中に出現すると考えられるが、固体表面由来のピークが減少する度合いが侵入深さ(波数)に応じて変化することに起因して、差スペクトル中の基準ピークよりも波数の小さい領域において固体表面由来のピークが見られるのである。また、この差スペクトル中で見られる固体表面由来のピークのピーク強度は付着物の膜厚が厚いほど強くなる。
まず、図8に示す[例1]の模式図を用いて、差スペクトル中の基準ピークよりも波数の小さい領域で、固体表面由来のピークが残存する現象を説明する。ここでは、下記の4つの前提を仮定し、下記のSTEP1からSTEP3の操作を行なう。
<前提1>感光体のスペクトル中に、ピークAおよびBが存在する。
<前提2>ピークBの侵入深さはピークAの侵入深さの2倍である。
<前提3>付着物がついていないときのピーク強度は、ピークA、Bとも同じである。
<前提4>ピークAおよびピークBは、付着物が付着するとピーク強度が減少するが、図8に示す[例1]においては、ピークAは、付着物があるときのピーク強度が付着物がないときのピーク強度の3/4になる(1/4減少する)こととする。なお、このピーク強度の減少割合は付着物の厚みによって変化し、[例1]における付着物の厚みは、後に説明する図9の[例2]における付着物の膜厚よりも薄い条件とする。
<STEP1>
付着物がないときとある時の状態を比較する。
<STEP2>
付着物がないときのピークA1のピーク強度が付着物があるときのピーク強度A2と同じになるように、ピークA1を縮小する。
また、ピークA1を縮小した際の係数と同じ値をピークB1にも掛ける。
<STEP3>
付着物があるときのピークA2およびピークB2から、STEP2のように縮小したピークA3およびピークB3をそれぞれ差し引く。
ここで、図8に示す[例1]中のピークA1〜A4、B1〜B4は以下を表す。
ピークA1、ピークB1:付着物がないときのピークA、ピークB。
ピークA2、ピークB2:付着物があるときのピークA、ピークB。
ピークA3、ピークB3:STEP2の操作後のピークA、ピークB。
ピークA4、ピークB4:STEP3の操作後のピークA、ピークB。
以上の前提条件を受けて、図8に示す[例1]の模式図中の各段階でのピークAおよびBについて、以下に詳細に説明する。
(1)付着物がないとき
ピークA1およびピークB1は同じピーク強度である。
(2)付着物があるとき
ピークA2の強度はピークA1の強度に対して1/4だけ減少している(ピークA2)。ピークBの侵入深さはピークAの侵入深さの2倍であるため、付着物が付着したことによるピーク強度の減少率はピークAよりBが小さく、ピークB1の強度に対して1/8減少している(ピークB2)(正確には、侵入深さが2倍違う時、影響が1/2になるわけではないが、ここでは、簡単のため1/2とした)。
(3)STEP2の操作による縮小後
ピークA1とピークA2を比較すると、ピークA2はピークA1の3/4なので、ピークA1およびピークB1の両者に3/4を掛け規格化する(ピークA3、B3)。
(4)STEP3の操作による差し引き後
ピークA2から、ピークA3を差し引くと、ピークA4はゼロになり(消失)、ピークB2から、ピークB3を差し引くと、ピークB4はピークB1の1/8のピーク強度で残る。
図8に示す[例1]におけるピークB4が差スペクトル中の基準ピークよりも波数の小さい領域に残存して見られる、固体表面由来のピークに相当する。このことから、侵入深さが違うことにより、差スペクトル中の基準ピークよりも波数の小さい領域では、固体表面由来のピークが差し引かれきれずに残ることがわかる。一方、差スペクトル中の基準ピークよりも波数の大きい領域については、固体表面由来のピークが下に凸のピークとして表れる。本発明においては、わかりやすいように、差スペクトル中に残るピークS(c2)は正の値になるような条件、すなわちa1よりb1の方が波数小さい条件になるように設定したが、c2が下に凸のピークでS(c2)が負の値になるような条件、すなわちa1よりb1の方が波数大きい条件の場合でも、(S(c2)/S(b1))は、固体表面上の付着物の存在量を評価する指標として機能する。このようなS(c2)が負の値になるような条件では、(S(c2)/S(b1))の絶対値を指標として、固体表面上の付着物の存在量を評価することが可能である。
次に、図8に示す[例1]および図9に示す[例2]を用いて、差スペクトル中に残存する固体表面由来のピークのピーク強度が付着物の膜厚が厚いほど強くなる現象を模式的に説明する。
ここで、前提1〜3およびSTEP1からSTEP3の操作は[例1]の場合と同じとし、前提4は以下の条件とする。
<前提4>ピークAおよびBは、付着物が付着するとピーク強度が減少するが、図9に示す[例2]においてはピークAは、付着物があるときのピーク強度が付着物がないときのピーク強度の2/4になる(2/4減少する)こととする。なお、先ほども触れたが、[例1]における付着物の厚みは[例2]における付着物の膜厚よりも薄い条件である。
以上の前提条件を受けて、図9に示す[例2]の模式図中の各段階でのピークAおよびBについて、以下に詳細に説明する。
(1)付着物がないとき
ピークA1およびピークB1は同じピーク強度である。
(2)付着物があるとき
ピークA2の強度はピークA1の強度に対して2/4だけ減少している(ピークA2)。ピークBの侵入深さはピークAの侵入深さの2倍であるため、付着物が付着したことによるピーク強度の減少率はピークAよりBが小さく、ピークB1の強度に対して1/4減少している(ピークB2)(正確には、侵入深さが2倍違う時、影響が1/2になるわけではないが、ここでは、簡単のため1/2とした)。
(3)STEP2の操作による縮小後
ピークA1とピークA2を比較すると、ピークA2はピークA1の2/4なので、ピークA1およびピークB1の両者に2/4を掛け規格化する(ピークA3、B3)。
(4)STEP3の操作による差し引き後
ピークA2から、ピークA3を差し引くと、ピークA4はゼロになり(消失)、ピークB2から、ピークB3を差し引くと、ピークB4はピークB1の1/4のピーク強度で残る。
図8の[例1]および図9の[例2]におけるピークB4が差スペクトル中の基準ピークよりも波数の小さい領域に残存して見られる、固体表面由来のピークに相当する。[例1]と[例2]を比較すると、付着物の厚みの厚い[例2]の方が、ピークB4のピーク強度は強くなっており、基準ピークよりも波数の短い領域において、付着物の厚みが厚い方が差スペクトル中に残存する固体表面由来のピークのピーク強度が強くなることがわかる。
また、これらの例より、ピークAとピークBの侵入深さの差が大きい(波数の差が大きい)ほど、ピークB4の強度は強くなる。例えば、前提において、ピークBの侵入深さがピークAの侵入深さの3倍である場合はピークB4のピーク強度はさらに強くなる。
本発明において、ピークa2が検出される赤外光の波数での侵入深さは、ピークa1が検出される赤外光の波数での侵入深さの130%以上、好ましくは170%以上、さらに好ましくは200%〜300%である。
ピークa2が検出される赤外光の波数での侵入深さが、ピークa1検出される赤外光の波数での侵入深さの130%以下である場合、指標(S(c2)/S(b1))の感度が小さくなるため好ましくない。また、ピークa2が検出される赤外光の波数での侵入深さが、ピークa1検出される赤外光の波数での侵入深さの300%以上である場合、指標(S(c2)/S(b1))の感度が小さくなるため好ましくない。
本発明において、固体表面は、均一な組成のものであれば、混合物であってもよい。また、IRスペクトルの侵入深さよりも十分厚い膜厚であれば、基体の上に積層された表面層であっても構わない。
また、評価する固体が有機感光体である場合、特に効果を発揮する。有機感光体は、付着物が付着すると、極僅かの付着物であっても形成される画像に多大な影響を受けるため、有機感光体上の付着物の存在量を本発明の評価方法を用いて評価し、付着量を見積もることは、高画質な画像を維持するために、非常に有益である。
本発明において、有機感光体はカーボネート結合を有する有機化合物を含有していることが好ましく、ピークa1はカーボネート結合に由来するピークであることが好ましい。カーボネート結合を有する有機化合物が含有されていると、感光体強度が高くなるため好ましく、また、カーボネート結合は、安定な結合なため劣化によるピーク強度の変化がほとんどないことから、指標として用いるピークとして非常に好ましい。
本発明において、感光体表面上の付着物は感光体を保護する機能を持つ保護剤である。保護剤は非常に薄く、高画質な画像出力を長期に渡って維持するためには、多すぎても少なすぎてもよくなく、適当な量だけ感光体上に乗っていることが好ましく、感光体上の保護剤の存在量を評価することは、高画質画像の維持に非常に重要である。
本発明において、前記保護剤はパラフィンを50重量%以上含有していることが好ましい。パラフィンは感光体の保護効果に優れ、パラフィンとしてはノルマルパラフィン、イソパラフィンおよびシクロパラフィンが、不可反応が生じ難く化学的に安定であり、実使用の大気中で酸化反応を生じにくいため、経時安定性の面で好ましく用いられる。
また、本発明において、該保護剤はパラフィンを50重量%以上、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上含有する。該保護剤中のパラフィンの割合が50重量%以下である場合、充分な感光体保護効果が見込めないため好ましくない。パラフィン以外の成分が感光体保護効果を持っている場合は、該保護剤中のパラフィンの割合は50重量%以下であってもよい。
保護剤には、パラフィンの他に環状オレフィン・コポリマー(COC)及び/または両親媒性の有機化合物を含有させてもよい。
両親媒性の有機化合物は、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤やこれらの複合物等に類別される。
非イオン系界面活性剤は、下記の化学式1のアルキルカルボン酸と多価アルコール類とのエステル化物であることが好ましい。
2n+1COOH (化学式1)
ただし、式中のnは15〜35の整数を示す。
化学式1のアルキルカルボン酸として直鎖アルキルカルボン酸を用いることにより、両親媒性の有機化合物が吸着した感光体表面で、両親媒性の有機化合物の疎水性部分が配列しやすくなり、感光体表面への吸着密度が特に高くなるため、好ましい様態である。
1分子中のアルキルカルボン酸エステルは疎水性を示し、その数が多い方が気中放電により発生した解離性物質が像担持体表面に吸着するのを防ぎ、かつ帯電領域での像担持体表面への電気的ストレスを小さくするためには有効である。しかしながら、アルキルカルボン酸エステルの占める割合が多くなりすぎると、親水性を示す多価アルコール類の部分が覆い隠されてしまい、像担持体の表面状態によっては十分な吸着性能が発現しないことがある。
よって、両親媒性の有機化合物の1分子当りの平均エステル結合数は、1から3個であることが好ましい。
これら両親媒性の有機化合物の1分子当りの平均エステル結合数は、異なるエステル結合数を持つ複数の両親媒性の有機化合物から1種以上を選択し、混合して調整することもできる。
両親媒性の有機化合物としては、前述のように陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
陰イオン系界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸アルキル塩、長鎖脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の、疎水性部位の末端に陰イオン(アニオン)を有し、これと、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属イオン、アルミニウム、亜鉛等の金属イオン、アンモニウムイオン等が結合した化合物が挙げられる。
陽イオン系界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等の、疎水性部位の末端に陽イオン(カチオン)を有し、これと、塩素、フッ素、臭素等や、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン、水酸イオン等が結合した化合物が挙げられる。
また、両イオン系界面活性剤の例としては、ジメチルアルキルアミンオキシド、N−アルキルベタイン、イミダゾリン誘導体、アルキルアミノ酸等が挙げられる。
非イオン系界面活性剤の例としては、長鎖アルキルアルコール、アルキルポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルポリグルコキシド、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の、アルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物等が挙げられる。また、ラウリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の長鎖アルキルカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ヘキシトール等の多価アルコールやこれらの部分無水物とのエステル化合物も好ましい形態として挙げられる。
エステル化合物のより具体的な例としては、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルチミン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、ジパルチミン酸グリセリル、トリパルチミン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、トリミスチン酸グリセリル、パルチミン酸ステアリン酸グリセリル、モノアラキジン酸グリセリル、ジアラキジン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、ステアリン酸ベヘン酸グリセリル、セロチン酸ステアリン酸グリセリル、モノモンタン酸グリセリル、モノメリシン酸グリセリル等のアルキルカルボン酸グリセリルやこの置換物、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノパルチミン酸ソルビタン、ジパルチミン酸ソルビタン、トリパルチミン酸ソルビタン、ジミリスチン酸ソルビタン、トリミスチン酸ソルビタン、パルチミン酸ステアリン酸ソルビタン、モノアラキジン酸ソルビタン、ジアラキジン酸ソルビタン、モノベヘン酸ソルビタン、ステアリン酸ベヘン酸ソルビタン、セロチン酸ステアリン酸ソルビタン、モノモンタン酸ソルビタン、モノメリシン酸ソルビタン等のアルキルカルボン酸ソルビタンやこの置換物等が挙げられるが、これらに限るものではない。
また、これらの両親媒性有機化合物は単一の種類を用いても良いし、複数種類を併用しても良い。
本発明における固体表面の付着物の存在量を評価する評価方法を用い、像担持体(感光体)の表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置を評価する場合においては、該保護剤塗布装置によって保護剤を感光体に塗布していったとき、一定の塗布時間以内で前記評価方法における付着物の存在量の指標である(S(c2)/S(b1))が、規格内の値となるときに、保護剤塗布装置を合格とする。
次に、本発明において好適に評価できる固体として、画像形成装置の像担持体として用いられる感光体について説明する。
本発明に係る参考技術の画像形成装置に用いる感光体は、導電性支持体の上に感光層が設けられている。感光層の構成は電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、あるいは電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、あるいは電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層の上に保護層を設けることもできる。感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また各層には必要により可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
感光体の導電性支持体としては、体積抵抗10^10Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。ドラム状の支持体としては、直径が20〜150mm、好ましくは、24〜100mm、さらに好ましくは28〜70mmのものを用いることができる。ドラム状の支持体の直径が20mm以下では、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に難しく、ドラム状の支持体の直径が150mm以上では画像形成装置が大きくなってしまい好ましくない。特に、画像形成装置が図3に示すようなタンデム型の場合には、複数の感光体1を搭載する必要があるため、直径は70mm以下、好ましくは60mm以下であることが好ましい。また、特許文献8(特開昭52−36016号公報)に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
本発明に係る参考手段の画像形成装置に用いる感光体の下引層としては、樹脂あるいは白色顔料と樹脂を主成分としたもの、及び導電性基体表面を化学的あるいは電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が例示できるが、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、中でも導電性基体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンを含有させることが最も好ましい。下引層に用いる樹脂としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂、アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂、これらの中の一種あるいは多種の混合物を例示することができる。
本発明に係る参考手段の画像形成装置に用いる感光体の電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料及び染料や、セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料を使用することができ、電荷発生物質は一種あるいは多種混合して使用することができる。下引層は、一層であっても、複数の層で構成しても良い。
本発明に係る参考手段の画像形成装置に用いる感光体の電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等の一種あるいは多種を混合して使用することができる。
上記電荷発生層、電荷輸送層の感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができ、適当な結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の光導電性樹脂など一種の結着樹脂あるいは多種と結着樹脂の混合物を挙げることができるが、特にこれらのものに限定されるものではない。
酸化防止剤としては、例えば以下のものが使用される。
・モノフェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−t−ブチル−4−ヒドロキシニソールなど。
・ビスフェノール系化合物
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
・高分子フェノール系化合物
1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェノール類など。
・パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−tーブチル−p−フェニレンジアミンなど。
・ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
・有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
・有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
電荷輸送層中にレベリング剤を添加してもかまわない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
表面層は前述のように、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため設けられる。表面層としては、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが例示できる。表面層に用いる高分子は、熱可塑性高分子、熱硬化性高分子、何れの高分子であっても良いが、熱硬化性高分子は機械的強度が高く、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を抑える能力が極めて高いためたいへん好ましい。表面層は薄い膜厚であれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない表面層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、表面層中に前述の電荷輸送物質を含有させたり、保護層に用いる高分子を電荷輸送能力を有するものを用いることが好ましい。感光層と表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレードとの摩擦により保護層が磨耗し、消失すると、すぐに感光層は磨耗していってしまうため、表面層を設ける場合には、表面層は十分な膜厚とすることが重要であり、0.01〜12μm、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜8μmとすることが好ましい。表面層の膜厚が0.1μm以下では、薄すぎてクリーニングブレードとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分から感光層の磨耗が進んでしまうため好ましくない。表面層の膜厚が12μm以上では、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する高分子を用いる場合には、電荷輸送能力を有する高分子のコストが高くなってしまうため好ましくない。
表面層に用いる高分子としては、画像形成時の書き込み光に対して透明で、絶縁性、機械的強度、接着性に優れたポリカーボネートを用いるが、この他に、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂を含有してもよい。これらの高分子は熱可塑性高分子であっても良いが、高分子の機械的強度を高めるため、多官能のアクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ架橋剤により架橋し、熱硬化性高分子とすることで、表面層の機械的強度は増大し、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を大幅に減少させることができる。
表面層中には表面層の機械的強度を高めるために金属、又は金属酸化物の微粒子を分散させることができる。金属酸化物としては酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。その他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。
ここで、上記のような感光体に保護剤を塗布する保護剤塗布装置としては、例えば図4に示すように、ブレード、ブラシおよび保護剤バーが塗布装置に装着されており、ブレードおよび感光体は図示しないギアによって所定の速さで回転しており、ブラシは、保護剤バーと接触して保護材を掻き取り、続いて、ブラシの回転によって掻き取られた保護剤が感光体表面に供給され、保護剤が供給された感光体は、感光体の回転によりブレードを通過し、供給された保護剤がブレードによって引き伸ばされて保護剤が塗布される機構を持つ装置がある。なお、保護剤塗布装置や、該保護剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ、画像形成装置の具体的な構成、動作は、先の実施形態1で説明した通りである。
次に、前述の参考形態1で説明した本発明に係る参考手段の保護剤塗布装置の評価の具体的な実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
図4は本実施例の評価に用いる保護剤塗布装置の構成の概略を示す図であり、図1の保護剤塗布装置2と同様の構成を簡略化して示したものである。なお、図4の例では、保護剤塗布装置のブレードは、感光体表面にカウンター方式で接触しているが、これに限るものではない。
なお、「実施例1」の欄において、「実施例1」を「参考例1」と読み替えることとする。
[感光体]
保護剤を塗布する感光体の製造は、以下のように行った。
直径30mmのアルミニウムドラム(導電性支持体)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を、その順に塗布した後、乾燥し、3.6μmの下引き層、約0.14μmの電荷発生層、23μmの電荷輸送層、約3.5μmの保護層からなる感光体を20本作製した。このとき、保護層の塗工はスプレー法により行ない、それ以外は浸漬塗工法により行なった。評価には11本の感光体を使用し、残りの感光体は予備として保管した。保護層の詳細については以下の通りとした。
(保護層)
Z型ポリカーボネート:10部
トリフェニルアミン化合物(下記の構造式1):7部
アルミナ微粒子(粒径0.3μm):5部
テトラヒドロフラン:400部
シクロヘキサノン:150部
Figure 0005176562
[保護剤バー(1) の製造方法]
使用する保護剤バーの製造は、以下のように行った。
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を94重量部、TOPAS−TM(チコナ社製)を6重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、160〜250℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で88℃まで放冷後、アルミ製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バー(1) を作成した。この保護剤バー(1) の底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
感光体および保護剤バー(1) について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行った。図6のグラフは吸光度スペクトルを示しており、図中のスペクトルAおよびスペクトルMはそれぞれ感光体のスペクトルおよび保護剤バー(1) の保護剤のスペクトルを示している。感光体で得られたスペクトルAでは、1770cm-1にカーボネート結合に由来するピーク(ピークa1(1770cm-1))、が見られた。
ここで、感光体をATR測定する際は、感光体の感光層をカッターを用いて1cm×1cmの大きさでアルミニウム基盤から剥がし測定サンプルとした。
参考例1−1]
感光体(1-1)および感光体(1-2)を用い、保護剤を各感光体に塗布するため、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを、図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(1) を5Nのバネ圧でブラシに押し付けるとともに該ブラシを感光体に接触させ、感光体(1-1)および感光体(1-2)に対してそれぞれ保護剤塗布を行なった(保護剤塗布装置(1) とする)。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった。
塗布時間の違う(20分間または100分間)保護剤塗布後の感光体(1-1)および感光体(1-2)について、各塗布時間の感光体についてそれぞれサンプリングを行い、サンプルをそれぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、図6のBのグラフのような保護剤塗布後の感光体のスペクトルB(塗布時間100分)(吸光度スペクトル)を得た。
そして得られたスペクトルBから、スペクトルAを差し引き、スペクトルC(図6のC:差スペクトル)を得た。ここで差スペクトルをとる際には、スペクトルAにおける1770cm-1のピーク(ピークa1)のピーク強度(h(a1))が、スペクトルBにおける1770cm-1のピーク(ピークb1)のピーク強度(h(b1))と同じになるように、スペクトルAに、係数[h(b1)/h(a1)]を掛けてから差し引き、1770cm-1のピークが差スペクトル中で消失するようにした。また、ピークb1のピークの面積S(b1)を求めた。
さらに、差スペクトルC中で815cm-1に見られるピークのピークの面積S(c2)を算出し、(S(c2)/S(b1))を求めた。
このようにして求めた塗布量の指標(S(c2)/S(b1))は0.072であった。また、同様にして塗布時間20分における塗布量の指標(S(c2)/S(b1))を求めると0.020であった。
ここで、それぞれのピークの面積を求める際のバックグラウンドの始点および終点の波数および面積の積分範囲を下記の表1に示す。
Figure 0005176562
参考例1−2]
感光体(2-1)および感光体(2-2)を用い、保護剤を各感光体に塗布するため、ブラシ(2)(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを、図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(1) を5Nのバネ圧でブラシに押し付けるとともに該ブラシを感光体に接触させ、20分間または100分間、感光体(2-1)および感光体(2-2)に対してそれぞれ保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(2) とする)。
保護剤塗布後の感光体(2-1)および感光体(2-2)について、それぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例1−1のように(S(c2)/S(b1))を算出したところ、20分塗布後で(S(c2)/S(b1))=0.022、100分塗布後で(S(c2)/S(b1))=0.028であった。
[保護剤バー(2) の製造方法]
第2の保護剤バーの製造を、以下のように行った。
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を60重量部、トリステアリン酸ソルビタン(HLB:1.5)を18重量部、ノルマルパラフィン(平均分子量640)を22重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、180℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で90℃まで放冷後、アルミ製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バー(2) を作成した。この保護剤バー(2) の底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
[比較例1−1]
感光体(3-1)および感光体(3-2)を用い、保護剤を各感光体に塗布するため、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを、図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(2)を6Nのバネ圧でブラシに押し付けるとともに該ブラシを感光体に接触させ、20分間または100分間、感光体(3-1)および感光体(3-2)に対してそれぞれ保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(3) とする)。
保護剤塗布後の感光体(3-1)および感光体(3-2)について、それぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、参考例1−1のように(S(c2)/S(b1))を算出したところ、20分塗布後で(S(c2)/S(b1))=0.064、100分塗布後で(S(c2)/S(b1))=0.12であった。
[比較例1−2]
感光体(4-1)および感光体(4-2)を用い、保護剤を各感光体に塗布するため、ブラシ(1)(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり3万本)およびウレタンブレードを、図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バー(1)を1.2Nのバネ圧でブラシに押し付けるとともに該ブラシを感光体に接触させ、20分間または100分間、感光体(4-1)および感光体(4-2)に対してそれぞれ保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(4) とする)。
保護剤塗布後の感光体(4-1)および感光体(4-2)について、それぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例1−1のように(S(c2)/S(b1))を算出したところ、20分塗布後で(S(c2)/S(b1))=0.010、100分塗布後で(S(c2)/S(b1))=0.018であった。
参考例1−3]
図3に示すような構成のリコー製のタンデム型カラー画像形成装置(IPSIO CX400)のブラックおよびシアンの感光体ユニットにおいて、それぞれ参考例1−2および比較例1−2で用いた感光体(2-2)および感光体(4-2)を組み込み、感光体の真上に帯電ローラを配置し、保護剤塗布装置(2) および保護剤塗布装置(4) と同じスプリングでそれぞれ帯電ローラを感光体に押し付け、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。ブラック感光体ユニットは保護剤塗布装置(2) の条件と同じ条件になるようにブラシ(2)およびウレタンブレードをセットし、シアン感光体ユニットは保護剤塗布装置(4) の条件と同じ条件になるようブラシ(4)およびウレタンブレードをセットした。
ブラックおよびシアンユニットについて、図5に示すようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラックおよびシアンユニットから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラックおよびシアンユニットを用いて、図5に示すようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計30000枚出力したところ、ブラックユニットから出力された画像は高画質画像であり、シアンユニットから出力された画像には薄い白スジが見られた。
ここで、指標算出に用いるピークを1250cm-1としたとき、参考例1−1および比較例1−1で得られた感光体(1-1)、(1-2)および感光体(3-1)、(3-2)から得られたそれぞれのスペクトルBを参考例1−1と同様に差スペクトルをとり、差スペクトルC中で、1250cm-1で見られる感光体由来のピーク(ピークc3)のピークの面積S(c3)を参考例1−1および比較例1−1でのS(c2)に換えて、指標(S(c3)/S(b1))算出した。
参考例1−4]
参考例1−1の感光体(1-1)および感光体(1-2)で得られたIRスペクトルについて、指標算出に用いるピークc2(815cm-1)を、参考例1−4においてはc3(1250cm-1)に変更し、差スペクトルC中のピークc3のピークの面積S(c3)を算出し、指標(S(c3)/S(b1))を求めたところ、20分塗布後の感光体(1-1)で(S(c3)/S(b1))=0.13、100分塗布後の感光体(1-2)で(S(c3)/S(b1))=0.28であった。
下記の表2に1250cm-1のピークの面積を求める際のバックグラウンドの始点および終点の波数および面積の積分範囲を示す。
Figure 0005176562
[比較例1−3]
比較例1−1で得られたIRスペクトルを用いて、実施例1−4と同じように指標算出に用いるピークc2(815cm-1)をピークc3(1250cm-1)に変更し、(S(c3)/S(b1))を算出したところ、20分塗布後で(S(c3)/S(b1))=0.27、100分塗布後で(S(c3)/S(b1))=0.43であった。
参考例1−5]
図3に示すような構成のリコー製のタンデム型カラー画像形成装置(IPSIO CX400)のブラックおよびシアンの感光体ユニットにおいて、それぞれ参考例1−1および比較例1−1で用いた感光体(1-2)および感光体(3-2)と同じ条件で塗布したものを組み込み、感光体の真上に帯電ローラを配置し、保護剤塗布装置(1)および保護剤塗布装置(3)と同じスプリングでそれぞれ帯電ローラを感光体に押し付け、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。ブラック感光体ユニットは保護剤塗布装置(1) の条件と同じ条件になるようブラシ(3)およびウレタンブレードをセットし、シアン感光体ユニットは保護剤塗布装置(3)の条件と同じ条件になるようブラシ(3)およびウレタンブレードをセットした。
ブラックおよびシアンユニットについて、図5に示すようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラックおよびシアンユニットから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラックおよびシアンユニットを用いて、図5に示すようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計30000枚出力したところ、ブラックユニットから出力された画像は高画質画像であり、シアンユニットから出力された画像には非画像部で薄い黒帯び(シアン色)が見られた。
次に、実施形態で説明した本発明に係る固体表面付着物の存在量評価方法と、その評価方法を用いた保護剤塗布装置の評価方法の具体的な実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、「実施例2」の欄において、「実施例2」を「実施例1」と読み替えることとする。
(感光体)
使用する感光体の製造は、以下のように行った。
直径30mmのアルミニウムドラム(導電性支持体)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を、その順に塗布した後、乾燥し、3.6μmの下引き層、約0.14μmの電荷発生層、23μmの電荷輸送層、約3.5μmの保護層からなる感光体を20本作製した。このとき、保護層の塗工はスプレー法により行ない、それ以外は浸漬塗工法により行なった。保護層には、電荷輸送層に、平均粒径0.18μmのアルミナを23.8質量%添加した処方のものを用いた。評価には11本の感光体を使用し、残りの感光体は予備として保管した。
(保護剤バーの製造方法)
使用する保護剤バーの製造は、以下のように行った。
FT115(日本精蝋製 合成ワックス)を84重量部、TOPAS−TM(チコナ社製)を16重量部、蓋付きのガラス製容器に入れ、160〜250℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
予め115℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、攪拌溶融した該保護剤を流し込み、木製の台の上で88℃まで放冷後、アルミ製の台の上で40℃まで冷却し、固形物を型から外し、反り防止のため重りを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して7mm×8mm×310mmの保護剤バーを作成した。この保護剤バーの底面に両面テープを貼り付け金属製支持体に固定した。
保護剤バーおよび感光体について、FT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、ThunderDome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行った。図10は吸光度スペクトルを示しており、図中のスペクトルAおよびスペクトルBはそれぞれ保護剤バーの保護剤のスペクトルおよび感光体のスペクトルを示す。感光体で得られたスペクトルBでは、1770cm-1にポリカーボネート結合に由来するピークが見られた。保護剤バーで得られたスペクトルAでは、2850cm-1および2920cm-1にメチレン基に由来するピークが見られた。
ここで、感光体をATR測定する際は、感光体の感光層をカッターを用いて1cm×1cmの大きさでアルミニウム基盤から剥がし測定サンプルとした。
[実施例−1](保護剤塗布装置(1)の評価)
保護剤バーの保護剤を感光体に塗布するため、ブラシ(2)(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを図4のように保護剤塗布装置に装着し、ブラシは4.8Nのバネ圧で感光体に押し付け、感光体(1-1)〜感光体(1-5)へ塗布時間を変えて保護剤塗布を行なった(保護剤塗布装置(1)とする)。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった。
保護剤塗布装置(1) を用いて120分間保護剤を塗布した感光体(1-4)をウルトラミクロトームを用いて薄くスライスし、TEM観察を行なったところ、TEM写真より、感光体上の保護剤の膜厚は20〜50nmであった。
塗布時間の違う(2、10、20、40、120分)保護剤塗布後の感光体(1-1)〜感光体(1-5)について、各塗布時間の感光体についてそれぞれサンプリングを行い、サンプルをそれぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行った。塗布時間120分におけるIRスペクトルは、図11に示すスペクトルC(保護剤塗布後の感光体の吸光度スペクトル)のようになった。
得られたスペクトルBおよびスペクトルC中で1770cm-1に見られるポリカーボネートのピークの高さをそれぞれh(b)およびh(c)とし、スペクトルCからスペクトルBを[h(c)/h(b)]倍したものを差し引き、図12に示すスペクトルD(差スペクトル)を得た。得られたスペクトルD中の815cm-1に見られる感光体に由来するピークの面積S(815cm-1)を求めた。また、スペクトルC中の1770cm-1のピークの面積S(1770cm-1)を求めた。
これらの面積の比S(815cm-1)/S(1770cm-1)を、塗布時間2、10、20、40、120分について求めると、比の値は塗布時間が増加するに伴ない増加する傾向が見られ、20分で0.017、120分で0.028であった。また、保護剤を40分塗布した感光体(1-5)について、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて、同様の解析行いS(815cm-1)/S(1770cm-1)を算出したところ、比S(815cm-1)/S(1770cm-1)の誤差が19%であった。
[実施例−2](他のピークを利用した場合)
実施例−1で得られた、スペクトルCおよびスペクトルDを用いて、実施例−1と同様の解析を行なった。実施例−1では、スペクトルD中の815cm-1のピークの面積を算出したが、実施例−2においては、スペクトルD中の1250cm-1のピークの面積を算出した。また、スペクトルC中の1770cm-1のピークの面積S(1770cm-1)を求めた。
実施例−1と同様に、面積の比S(1250cm-1)/S(1770cm-1)を、塗布時間2、10、20、40、120分について求めると、比の値は塗布時間が増加するに伴ない増加する傾向が見られ、20分で0.23、120分で0.25であった。また、保護剤を40分塗布した感光体(1-5)について、周方向に近接した5枚のサンプルを用いて、同様の解析行いS(1250cm-1)/S(1770cm-1)を算出したところ、比S(1250cm-1)/S(1770cm-1)の誤差が26%であった。
実施例−1および実施例−2より、差スペクトル中の感光体に由来するピークの面積と差スペクトルをとる前のスペクトル中の感光体に由来するピークの面積(差スペクトル中で選んだピークとは別のもの)の比は、保護剤の付着量の良い指標となることがわかった。
ここで、それぞれのピークの面積を求める際のバックグラウンドの始点および終点の波数および面積の積分範囲を下記の表3に示す。
Figure 0005176562
(実施例−1の評価方法を用いて合否判定)
実施例−1のように、815cm-1のピークの面積と1770cm-1のピークの面積の比S(815cm-1)/S(1770cm-1)を指標として保護剤塗量を見積もり、保護剤塗布装置を評価する方法において、保護剤を30分間塗布した時のSb/Saが閾値0.015以上で、120分塗布したときの閾値が0.10以下となったときに、保護剤塗布装置を合格とし、以下のような評価を行なった。
[実施例−3]
感光体(3-1)および感光体(3-2)を用い、保護剤を各感光体に塗布するため、ブラシ(2)(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを、図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バーを5Nのバネ圧でブラシに押し付けるとともに、該ブラシを感光体に接触させ、30分および120分間、感光体(3-1)および感光体(3-2)に対してそれぞれ保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(2)とする)。
保護剤塗布後の感光体(3-1)および感光体(3-2)について、それぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例2−1のようにS(815cm-1)/S(1770cm-1)を算出したところ、30分塗布後でS(815cm-1)/S(1770cm-1)=0.023、120分塗布後でS(815cm-1)/S(1770cm-1)=0.032であり、保護剤塗布装置(2) は合格と評価した。
[実施例−4]
感光体(4-1)および感光体(4-2)を用い、保護剤を各感光体に塗布するため、ブラシ(3)(太さ:20デニール、密度:1平方インチ当たり5万本)およびウレタンブレードを、図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バーを5Nのバネ圧でブラシに押し付けるとともに、該ブラシを感光体に接触させ、30分および120分間、感光体(4-1)および感光体(4-2)に対してそれぞれ保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(3) とする)。
保護剤塗布後の感光体(4-1)および感光体(4-2)について、それぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例2−1のようにS(815cm-1)/S(1770cm-1)を算出したところ、30分塗布後でS(815cm-1)/S(1770cm-1)=0.025、120分塗布後でS(815cm-1)/S(1770cm-1)=0.070であり、保護剤塗布装置(3) は合格と評価した。
[実施例−5]
感光体(5-1)および感光体(5-2)を用い、保護剤を各感光体に塗布するため、ブラシ(1)(太さ:10デニール、密度:1平方インチ当たり3万本)およびウレタンブレードを、図4のように、保護剤塗布装置に装着し、保護剤バーを2Nのバネ圧でブラシに押し付けるとともに、該ブラシを感光体に接触させ、30分および120分間、感光体(5-1)および感光体(5-2)に対してそれぞれ保護剤塗布を行った。感光体およびブラシの線速度はそれぞれ125mm/s、146mm/sで行なった(保護剤塗布装置(4) とする)。
保護剤塗布後の感光体(5-1)および感光体(5-2)について、それぞれFT−IR Avatar370(サーモエレクトロン株式会社、Thunder Dome(1回反射ATR、Ge、入射角45°))を用いてIR分析を行い、実施例2−1のようにS(815cm-1)/S(1770cm-1)を算出したところ、30分塗布後でS(815cm-1)/S(1770cm-1)=0.010、120分塗布後でS(815cm-1)/S(1770cm-1)=0.021であり、保護剤塗布装置(4) は不合格と評価した。
[実施例−6]
図3に示すような構成のリコー製のタンデム型カラー画像形成装置(IPSIO CX400)のブラックおよびシアンの感光体ユニットにおいて、それぞれ実施例2−3および実施例2−5で用いた感光体(3-2)および感光体(5-2)をそれぞれ組み込み、感光体の真上に帯電ローラを配置し、保護剤塗布装置(2)および(4)と同じスプリングでそれぞれ帯電ローラを感光体に押し付け、感光体の線速を125mm/秒とし、感光体と帯電ローラの間に、−600Vの直流電圧に周波数1450Hz、振幅1100Vの交流電圧を重畳印加して評価を行った。ブラック感光体ユニットは保護剤塗布装置(2) の条件と同じ条件になるようブラシ(2) およびウレタンブレードをセットし、シアン感光体ユニットは保護剤塗布装置(4) の条件と同じ条件になるようブラシ(1) およびウレタンブレードをセットした。
ブラックおよびシアンユニットについて、図5に示すようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ出力して評価したところ、ブラックおよびシアンユニットから出力された画像は高画質画像であった。
続いて、ブラックおよびシアンユニットを用いて、図5に示すようなA4サイズ紙の1by1のハーフトーン画像を5枚ずつ計20000枚出力したところ、ブラックユニットから出力された画像は高画質画像であり、シアンユニットから出力された画像には白スジが見られた。
実施例−6より、実施例−3や実施例−5のように閾値を設定する事で、保護剤塗布装置の合否の判別ができることが確認できた。
尚、実施例−1〜−6で示したFT−IR(ATR)法による分析の他に、ICP発光分析およびXPS分析を用いて、感光体上の保護剤の量を見積もることを試みたが、ICP発光分析およびXPS分析の結果から保護剤の量を評価することはできなかった。
本発明に係る参考手段の一参考形態を示す保護層形成装置を備えた画像形成装置の要部構成例を示す概略要部構成図である。 本発明に係る参考手段の一参考形態を示す保護層形成装置を備えたプロセスカートリッジの概略断面図である。 本発明に係る参考手段の一参考形態を示す保護層形成装置を具備する画像形成装置の概略構成図である。 評価時に用いる保護層形成装置の構成例を示す概略構成図である。 評価用の出力画像の例を示す図である。 吸光度スペクトルを示す図であって、保護剤塗布前の感光体表面のスペクトルAと、保護剤単独のスペクトルMと、保護剤塗布装置によって保護剤を塗布した後の感光体のスペクトルBと、差スペクトルCを示す図である。 付着物の無い固体表面のIRスペクトルAと、付着物が付着した固体表面のIRスペクトルBに存在するピークの例を示す模式図である。 本発明の評価方法を説明するための例を示す模式図である。 本発明の評価方法を説明するための別の例を示す模式図である。 吸光度スペクトルを示す図であって、保護剤単独のスペクトルBと、感光体のスペクトルAを示す図である。 吸光度スペクトルを示す図であって、保護剤塗布後の感光体のスペクトルCを示す図である。 図11のスペクトルCと図10のスペクトルBの差スペクトルDを示す図である。
符号の説明
1(1Y,1M,1C,1K):感光体(像担持体)
2:保護剤塗布装置
3:帯電装置(帯電手段)
4:クリーニング装置(クリーニング手段)
5:現像装置(現像手段)
6:一次転写装置(転写手段)
7:中間転写媒体(または転写媒体)
8:潜像形成装置
9:ベルトクリーニング装置
10:画像形成部(画像形成ステーション)
11:プロセスカートリッジ
12:二次転写装置
13:搬送装置
14:定着装置
15:搬送装置
16:排紙ローラ
17:排紙トレイ
21:保護剤バー
22:保護剤供給部材
22a:ブラシ状部材(ブラシ)
22b:支持体
23:押圧力付与機構
24:保護層形成機構
24a:ブレード状部材
24b:押圧部材
41:クリーニング部材
42:クリーニング押圧機構
51:現像スリーブ
52,53:現像剤攪拌搬送部材
100:画像形成装置
110:画像形成装置本体(プリンタ部)
120:原稿読取部(スキャナ部)
130:原稿自動給紙装置(ADF)
200:給紙部
201a〜201d:給紙カセット
202:給紙ローラ
203:分離ローラ
204,205,206:搬送ローラ
207:レジストローラ
210:両面用搬送装置

Claims (7)

  1. 固体表面の付着物の存在量を評価する評価方法において、
    赤外吸収スペクトル法のATR(Attenuated Total Reflection)法により測定される、付着物の無い固体表面のIRスペクトルAと付着物が付着した固体表面のIRスペクトルBを比較したとき、
    IRスペクトルAおよびIRスペクトルBの両者に存在する該固体に由来したピークであって、該固体由来ピークのうち、前記IRスペクトルB中の付着物に由来するピークと重ならないピークが少なくとも二つ以上存在し、該二つのピークのうち前記IRスペクトルA中の波数の大きい方のピークをピークa1、波数の小さい方のピークをピークa2とし、ピークa1、a2と波数が同じ位置で検出される、波数の対応する前記IRスペクトルB中のピークをピークb1、b2とし、
    前記IRスペクトルA中のピークa1の高さをh(a1)、前記IRスペクトルB中のピークb1の高さをh(b1)としたとき、前記IRスペクトルAを[h(b1)/h(a1)]倍したスペクトル(IRスペクトルA’とする)を、前記IRスペクトルBから差し引いて得られるスペクトルをIRスペクトルCとし、該IRスペクトルC中でピークa1、a2と波数が同じ位置で検出される、波数の対応するピークをピークc1、c2とし、
    前記IRスペクトルB中のピークb1の面積をS(b1)、前記IRスペクトルC中のピークc2の面積をS(c2)としたとき、
    前記IRスペクトルB中のピークb1の面積S(b1)と、前記IRスペクトルC中のピークc2の面積S(c2)との比(S(c2)/S(b1))より前記固体表面上の付着物の存在量を評価することを特徴とする固体表面付着物の存在量評価方法。
  2. 請求項1記載の固体表面付着物の存在量評価方法において、
    前記ピークa2が検出される赤外光の波数での侵入深さは、前記ピークa1が検出される赤外光の波数での侵入深さの130%以上であることを特徴とする固体表面付着物の存在量評価方法。
  3. 請求項1または2記載の固体表面付着物の存在量評価方法において、
    固体表面の付着物の存在量を評価する固体が、感光体であることを特徴とする固体表面付着物の存在量評価方法。
  4. 請求項3記載の固体表面付着物の存在量評価方法において、
    前記感光体は、カーボネート結合を有する有機化合物を含有する有機感光体であり、前記ピークa1は前記カーボネート結合に由来するピークであることを特徴とする固体表面付着物の存在量評価方法。
  5. 請求項3または4記載の固体表面付着物の存在量評価方法において、
    前記感光体表面上の付着物が該感光体を保護する機能を持つ保護剤であることを特徴とする固体表面付着物の存在量評価方法。
  6. 請求項5記載の固体表面付着物の存在量評価方法において、
    前記保護剤は、パラフィンを50重量%以上含有することを特徴とする固体表面付着物の存在量評価方法。
  7. 像担持体の表面に保護剤を塗布する保護剤塗布装置の評価方法において、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体表面付着物の存在量評価方法を用い、前記保護剤塗布装置によって前記保護剤を前記像担持体に塗布していったとき、一定の塗布時間以内で、前記存在量評価方法における付着物の存在量の指標である、前記IRスペクトルB中のピークb1の面積S(b1)と、前記IRスペクトルC中のピークc2の面積S(c2)との比(S(c2)/S(b1))が、所定の規格内の値となるときに、前記保護剤塗布装置を合格とすることを特徴とする保護剤塗布装置の評価方法。
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